―さて、ドラえもん達は「御坂美琴」という思いがけない強力な援軍を得て勇躍、行動を開始していた。(いきなり行動を起こしたのは美琴の発案によるもの。ドラはいきなり殴りこむのに躊躇していたが、美琴が「私に任せなさいって」と太鼓判を押し、他の4人の同意を取り付けた)行動を起こすに当たって、ドラえもんはメンバーを2つに分けた。兵団を直接叩く攻撃メンバーと情報収集に専念、もしくは予備戦力とするメンバーに振り分けた。攻撃メンバーはかつてのピシアとの戦い同様、ドラえもん・のび太とジャイアン。それと超能力者としての力を見せつけた事でドラとのび太の信頼を得た美琴。メンバーは早速、毎度お馴染みとなっている武器のショックガン」、空気砲などを携えて、兵団の前線拠点が置かれているとされるミッドウェー島に足を運んだ。




―ミッドウェー島。

ここ、ミッドウェー島は歴史的にもターニングポイントとなった戦いの舞台ともなった古戦場――ミッドウェー海戦――太平洋戦争で大日本帝国海軍が劣勢に転じるキッカケともなった開戦時の主力四空母が一気に葬り去られた出来事。その骸が未だに眠るこの地は再び血に染まろうとしていた。80年代までのSFで見られた、未来的デザインの建物がずらりと並ぶ駐屯地がここには築かれていた。それはかつてドラえもんとのび太が鏡面世界のススキヶ原で見た光景をソックリそのまま再現したものだが、規模は幾分か小規模になっていた。やはり太平洋の真ん中に浮かぶ島では敷地や資材に余裕が無かったらしく、幾つかはまだ未完成のままで放置されているか、地球人の残した施設が流用されていた。

「ん?あれは」

いきなりのび太が何かを発見した。それは兵団の建設用ロボットの一団だった。広場に資材を運搬しているようで、
あたりに複数のコンテナが重なる形で置かれている。

「建設用のようだよ……どうするドラえもん」

「かくれマントで姿を消してからタケコプターで尾行して向かおう。武器のセーフティは解除出来てるね?」

「もちろんだよ」

「取り敢えず即席落とし穴を塹壕にして戦おう。それと、あらかじめ改良型山びこ山をあちらこちらに置いておこう」

―改良型山びこ山とは、かつての戦いで兵団に一人相撲を取らせるためにドラえもんが用意した道具で、山びこの原理で音をこだまさせる山びこ山に光や熱も反射させる機能を加えたもの。兵団の勢力を減じさせたり、ドラえもん達の反撃を、“軍隊の大部隊による要撃”と錯覚させるのに貢献した。それをドラえもんが周辺の地面に絨毯爆撃のごとく落としてゆく。

「一番槍は美琴さん。あなたに任せます」

ドラえもんは古風な言い回しを用いて先陣を切る役割を美琴に一任したので、美琴は「私は時代劇の騎馬隊かぁ!?」と面食らったように言った。もう少し後の時代の言葉で言って欲しいと愚痴をこぼしつつも了承。得意の電撃を持ってして攻撃の狼煙をあげた。


美琴が発した電撃の槍が炸裂するのを合図にどこぞの誰かドイツ武装親衛隊少佐の台詞を借りるならば「‘戦争‘を!一心不乱の大戦争を!!」と形容すべき闘争の幕が開けた。


「なんだ敵の襲撃か!?」
「状況は!状況はどうなっている!?」
「ハッ!敵の攻撃です!!」
「何ッ!!馬鹿な!!ここの存在は敵には知られていないはずだ」

兵団の駐留部隊の指揮官は対応に追われていた。敵に襲われたのなら応戦すべきだが、突然の襲撃で統制が乱れている現状では下手に動けない。

「C区間の先任士官を呼び出せ!!襲撃されたのなら敵はまだそこにいるはず。部隊を編成し、迎撃させろ!!」

矢次ぎに命令を発し、基地の機能を発揮させ始める。地球人の残した物の再利用だが、レーダーサイトが索敵を始め、防衛用火砲も動力に火が灯されていく。幸いにも通信回路は健在のようで、各区間より報告が入る。

「こちらB区間!敵は一人の女だ!それもガキだ!!」

この報告に彼は自身の集音回路の正常さを疑う。仮にも銀河に覇を唱える兵団が辺境の田舎である地球の住民に遅れをとるハズはないと思わず聞き返す。
雷鳴にも似た轟音が響きわたる。彼は大慌てで「状況は!状況はどうなっている!?」と叫んでいた。

「信じられん!地球人はあのような能力を……グアアアアアアッ!?」

雷が落ちた音のような耳をつんざく音が響くと同時に通信が途絶えた。呼びかけてもウンともスンとも通じない事からおそらくは通信回線が寸断されたのだろうか? 状況のつかめぬまま彼は確認のために建物の外に出た。


「ドラえもん!空気砲は!!」

「ある!ただし数はそんなにないから気をつけてくれ」

「わかった!もうちょい用意しといてよ!」

「バカ言うな!空気砲、4000円くらいするんだぞ!!」

のび太はドラえもんから空気砲を受けとるとそのまま連射する。ジャイアンもショックガンを乱射する。

「相変わらず撃っても撃っても出てくるぜ!」

相変わらずの悪態をついて兵団の物量への嫌味とも取れる言葉を言いながらとにかくエネルギーが尽きるまで撃って美琴の進撃の露払いを行う。ドラえもんは、もし以前のように工作用ロボットが派遣されているのならと美琴の開いた血路をひたすら突き進んだ。空気砲とショックガンを乱射しながらそれがあるであろう建物に向かう。

「格納庫にガキどもを近づけるな!!」

兵団はドラえもんの行く手を阻むように弾幕を貼り、建物に近づけんとする。ここで兵団の本領が発揮された。かつての地球連邦軍のように物量にものを言わせた攻撃が彼らの真骨頂である。物量による、持久戦に持ち込まれたら完全に兵団側が有利であり、かつての戦いでも最終的に彼らの前に膝を尽きかけた。
美琴とて無限に能力を振るえる訳では無い。体力などが尽きれば能力はしばし使えなくなる。この兵団の優位を覆すには工作用ロボットとして派遣されているはずのジュド(ドラえもんらの物言いならばザンダクロス)の同型機を奪取しなければならない。最も前線の一駐屯地でしかないここにあれば、だが。改造は道具でなんともなる。なんとしても、とひらりマントを片手に突撃を続ける。

「ドラえもん!いつもの道具じゃキリがないよ!!」

「所詮は安物の護身用だからね……」

「どうすんだよ!!これじゃ前と同じじゃねぇか」


皆、空気砲を乱射しているが、物量には抗しきれないとばかりに悲鳴を上げる男三人衆。だが、空気砲とてそこそこの火器程度の破壊力はあるが、相手が多すぎるのだ。先程から美琴の撃破数と合わせると千は超えているはずだが、底なしと思うかと言うくらいに雲霞の如く湧き出てくる。

「相変わらず撃っても撃っても出てくるぜ!」
「空気砲のエネルギー……、持つかな」
「わからない。とにかく打撃をあたえるだけ与える!撃ちまくれ!!」

3人は即席落とし穴で作った塹壕に潜って持久戦に持ち込んだ。格納庫は目の前だが、ここに来て足止めを食らっていた。ドラえもんの道具の中に兵器は少ない。いつもの道具で長期戦に持ち込むが、護身用でしかない道具ではやはり火力が絶対的に不足していた。改良型山びこ山のからくりも読まれつつある。正にピンチである。美琴も圧倒的物量を段々と捌き切れなくなってきているらしく、疲労を隠せないようである。

「こんな時、テレビとかだとヒーローか何かが来るんだけどな」

射撃を続けるのび太がこう漏らすとジャイアンは「そう都合がいい事が起きるかよ」と返す。

「そんなバカげたことか?救いのヒーローをアテにするのが。ヒーローはどこからともなく助けに来てくれるんだよ?」

ジャイアンはのび太のこの一言に多少の同意は示した。それほどに兵団の物量は圧倒的であり、それをアテにしたくなる気持ちも分からない訳では無かった。そんな彼らの気持ちは思わぬ形で叶う。塹壕を挟んで対峙していた兵団のロボットが不意に強力な放電を受け、倒れていく。

「な、何だ!?」

四人は驚いた声で思わず当たりを見回す。電撃は明らかに美琴がいる場所とは完全に別方向から放たれたものだ。すると、一筋の雷鳴と共に一人の男の声が響きわたった。

「中々面白ぇ事になってんじゃねーか。久しぶりに腕がなるぜ!!変んんっ身ッ!!ストロンガー!!」

その声はまるで世界に救いをもたらす救世主のようにドラえもんには思えた。まるで本当のTVのヒーローが助けに来てくれたような光明が差し込んだようにも感じた。大げさだが、雷鳴が轟き、電光が当りに散る。そしてその場に不釣合いなバイクのエンジン音の爆音を響かせながら一人の声が戦場に轟いた。その名はも……!

「天が呼ぶ……地が呼ぶ……人が呼ぶ……悪を倒せと俺を呼ぶ……」

時代劇のような名乗りが響く。そしてその声の主が颯爽と姿を現す。

「俺は正義の戦士…、仮面ライダーストロンガー!!」

彼も、この世界の正義を人知れず守ってきた異形の体となった男達の内の一人。その内で唯一無二の電気の力を扱える改造電気人間として改造を受けた7番目の男。その名も仮面ライダーストロンガー。彼もまた、永き眠りから目覚め、鉄人兵団の基地を破壊すべく馳せ参じたのである。

「喰らえっ!エレクトロファイヤー!!」

ストロンガーは両腕をこすり合わせ、強力な電流を発生させ、地面に右腕を叩きつけて電流を放電する。その威力は兵団の回路をショートさせるには十分である。これがストロンガーの代名詞となっている攻撃。電撃により兵団を蜘蛛の子を散らすかのように蹴散らす。ちなみに彼の放つ攻撃に蓄えられている電気の量は 美琴のそれに比べると、小規模に思えるが、それでも十分に強力である。ちなみに美琴が放てる電撃の最大出力は10億ボルト。この数値はスーパーロボットの代表的なモノである「グレートマジンガー」の必殺技「サンダーブレイク」、「UFOロボグレンダイザー」の「スペースサンダー」をも上回る驚異的なものだが、
ストロンガーの最後の切札「超電子ダイナモ」の発する超電子エネルギーには一歩及ばない。最も普通の人間でありながら、スーパーロボットよりも強力な攻撃が出来るのは瞠目に値するが。ドラえもんたちにとっては思わぬ援軍であった。

「見たかいジャイアン!!」

「あ、ああ。まさかのび太の言うとおりになるなんてな。神様を信じたくなったぜ……!」

まさかの仮面ライダーストロンガーの登場に狂喜乱舞するのび太は思わず即席落とし穴から飛び出て、ジャイアンとハイタッチを交わす。ドラえもんは思わぬ援軍に唖然とし、立ち尽くす。空気砲の衝撃はで鉄人兵団の兵士たちから飛び散る機械部品、仮面ライダーストロンガーと御坂美琴の電撃で黒焦げになって行く者……恐れのあまり逃げ出す兵団達。正に戦場は地獄だと言う事を体現する光景だったと後に地球連邦軍に投降した生存者は口を揃えて言ったと言う。美琴も、自分が放っている以外にも電撃が放たれているのに驚愕した。ドラえもん達からからは遠く離れたはずだし、都合よく軍隊だとかの組織がやってくるわけはない。遠くで爆発が連鎖的に起こり、雷が迸る。そしてその現象を起こしている張本人の姿が見えた。

「な、何よあれ!?漫画じゃあるまいし」

彼女が目にしたのはまるでどこかの特撮ヒーローのような姿をした一人の男―歴代の仮面ライダーの中でも、美琴に最も近い能力を持つ7人目の仮面ライダーの勇姿であった。雷を背に敵を蹴散らすその姿はまるで古の雷神のようにも思えた。

「ん?あいつは……まさか」

ストロンガーは遠くに見える人影が、彼ら仮面ライダーが過去に組織から救出した、能力者のクローンに酷似する外見をしているのを見抜いた。彼、ストロンガーこと、城茂は主な悪の組織の活動が沈静化したあとは、日本を主な活動場所にしていたため、21世紀初頭頃に学園都市を訪れる機会があった。そこで彼はカエルに似た顔の医者から「学園都市最強の発電能力者の細胞を用いたクローン人間が存在する」と知らされ、調査を行った。資料の多くは散逸、あるいは紛失していたが、医者のもとにいた何人かの個体からの証言もあり、どうにか過去に量産化計画が立てられていたのを知った。その後に大戦が勃発した際に何人かの個体が`組織`の残党の手に渡ったが、その時は自分やX、アマゾンなどが救出したハズだと振り返る。それではあれはいったい誰なのか。あの計画の基になった人物「御坂美琴」はとっくのとうに亡くなっているし、100年たって同等の発電能力を備えた人間が出現したとしても無理がある。どういうことなのか。ストロンガーは兵団を蹴散らしつつもその少女のもとに足を運んだ。


「おい、そこのお前!」

「何よアンタ。そんなコスプレみたいな格好して、何してんのよこんな所で。死にたいの?それとも目立ちたがりのバカ?」

「フゥ……さっきのアレ見たろう?伊達や酔狂で、こんな格好してねえっーの」

ストロンガーはカブトムシを思わせる、その一昔か二昔前の特撮ヒーローを連想させるような姿とは裏腹の荒々しい言動を見せる。ヒーローかしらぬ言動ではあるが、その力は「伊達ではない」とばかりに上空から襲ってきた兵士に応戦しようとした美琴を制し、自らが応戦する。

「トウ!!」

パンチやチョップ、蹴りなどを織りまぜた素手で薙ぎ倒して見せる。攻撃も軽く受け流すか、ビームが当たっても平然とした姿を見せる。

「……言ったろ?伊達じゃねえって。御坂美琴よぉ」
「あたしの名前はご存知なわけね。」

「そういうこった。ところで……本人だよな?」
「何、当たり前な事……っと待って。あんた、まさかあの子達、妹達のことを?」

「前に……って言っても随分昔の事だがな。俺達が戦っていた相手から助けたことがある。説明すると長いけどな」


ストロンガーは美琴に何故自分が美琴やそのクローンらの事を









――軍は付近の海域で哨戒活動を行っていた、情報処理能力を備えた駆逐艦秋月の通報よって敵の駐屯地の一つのミッドウェー島で戦闘が勃発したとの情報を入手していた。確認のためにただちに太平洋方面軍のウェーク島に駐留している空軍の空挺部隊に情報が伝えられ、確認のために5機の量産型Zが飛び立った。(ちなみにこの量産機はZプラスとは別の量産計画で量産された空軍・宇宙軍両用の機体。オリジナルの機体とそう外見は変わらないが、火器が実体弾主体になっている、装甲が一部省略されているなどの細かな違いがある。つまり、より本格的に量産するためにコストダウンがなされた廉価版Zといった趣を呈している)彼等は、ウィングに積んでいる爆弾やミサイルのセーフティを解除。何時でも戦闘に入れるようにした。そして付近にいた空母の艦載機も護衛のために合流。9機ほどの編隊を組んで飛行し、防空圏に差し掛かっていた。

「上は何と言っている?」

「場合によっては爆撃で基地機能を奪えとの事だ。クラスター爆弾の使用も許可されている」

「大げさじゃないか?」

「アレがあれば俺たちが行くまでも無いんだがな……」

「ダブルゼータか。たしかにあれがあればミッドウェーなんか粉砕出来るが……贅沢言うな」

彼等の言うダブルゼータとは、かつての戦争でジュドー・アーシタという少年の駆ったそれではない。「サイコガンダム」と呼ばれる兵器の運用思想を一部取り入れた、要塞攻略を前提に開発された、スーパーロボットの穴埋め用として計画され、一定数生産された大型化仕様機の事だ。強大な力を持つもの、高コスト機ゆえの弊害で配備数は少ない。このような機体が作られたのは連邦軍の中で根強いガンダムへの信仰の賜物だ。

「こうもガンダムばかりだと飽きるぜ。たまにはギャプランくらい寄越せよな…」

彼はZ系が大半を占める可変機の現状に飽きていた。過去にティターンズが配備していた機体はジオン系のような外観が多かったが、性能のいいものも多かったのにとぼやく。

「政治的判断って奴はやだよな。バーザムは結構よかったぜ」

連邦軍の中ではエゥーゴ系の機体ばかりが主力に選ばれるMSの選定や配備の現状に不満を持つものも少なくない。彼等もその内の一人だ。今度の会議で司令に意見具申をするかと
ため息をつきつつ、任務を遂行する。それが彼等の役目であった。数十分後、兵団の防空圏に浸入した編隊はミッドウェー島に差し掛かったところで、彼らはミッドウェー島に一機の兵器が立っているのを視認した。

「ん…おい!あれを見ろ!!」

その機体は白亜のカラーリングで、背中のバックパックが「百式」に酷似している。どういう事かと高度を下げ、確認のために地上に降り立つ。

「ドラえもん、ザンダクロスと同じような形だけど何か違うよね?これ」

「ああ。多分同型の機体が何機かあったんだろう。リルルによれば土木工事用なんだったろう?あの時みたいに一つの駐屯地を作れば事足りるって訳じゃなくなったらしいから、
より多くのロボが駆り出されたっておかしくない」

ドラえもんは自らの推測を話しつつ、仮面ライダーストロンガーの乱入による混乱に乗じ、ザンダクロス(……と同型の機体。人工知能は搭載前と思われる)と思しき機体を強引に奪取し、以前と同じように脳波コントローラ(奇しくもこの技術はかつてのアクシズが自身のフラッグシップ機の一つ「キュベレイmk‐U」に組み込んだサイコ・コントローラに通じる物である)で操縦する。かつて、グリプス戦役でカミーユ・ビダンがガンダムmk−Uを奪取したのと同様に格納庫を強引に突き破って、戦場に乱入する。ズウウウンと地響きを立ててザンダクロス(正確には別の機体だが、便宜上こう呼称する)が歩き出す。まるで大魔神の如く唸りを立てて。

「ド、ドラえもん!!ちょっと強引すぎない?」

「強引がどうこういってる場合かぁ〜ええい、ポチッとな!薙ぎ払え!」


おもむろにザンダクロスの胸部に備えられているビーム砲が火を吹き、兵団をこれでもかとなぎ払う。

『ウフフフ……ウヒラウヒラ』

スピーカーで思わず高笑いしするドラえもん。日頃のストレス解消か、どこか気持ちよさそうである。もし、この場にブライト・ノアがいたのなら激しいデジャブに襲われただろう。このドラえもんのはっちゃけた行為はかつて、カミーユ・ビダンが初戦闘でティターンズのMPに対して行った行為と全く同じだったからだ(何の因果か、台詞まで一緒)。のび太は思わず(ねずみにどら焼きを食われたの?)と心の中で思ったそうな。

「……って何、ナ◯シカの巨神兵みたいな事してるんじゃい!!」

このドラえもんの行為には、美琴も思わずツッコミを入れたのは言うまでもない。そこに連邦軍のZ部隊が到着する。地球におけるスーパーロボットのような図体をしているザンダクロスと違い、空力的に洗練されたスマートな姿をするZはボディビルダーとアスリート位の体格の差があった。


「……敵?」

ビーム砲のボタンを押そうとしたドラえもんを制止する声が響いた。仮面ライダーストロンガーのものだ。

「待て!あれは軍ののモビルスーツだ」

「地球の……?」

ストロンガーに言われて、よくよく見てみると飛行機型から人型に変形した機体の肩に地球をモチーフにしたマークと「U.N.T. SPACY」と書かれたマーキングが記されている。

「ねえドラえもん……あれって、なんて読むの?」

「U.N.T. SPACY……英語で地球連邦宇宙軍って読むんだ。……地球連邦軍…?」

ドラえもんは飛来した量産型Zにマーキングされていた「U.N.T. SPACY」という文字に驚きを隠せなかった。そしてそれがドラえもん達の旅の第二幕の始まりを告げる福音。この瞬間こそがドラえもん達とこの時代とが交わる事を決定的にした瞬間であった。




――こうして、ミッドウェー島は炎に包まれた。ドラえもん達がザンダクロスの同型機を奪取した事に加え、御坂美琴と仮面ライダーストロンガーの2面の電撃、さらには偵察に訪れた、連邦空軍の編隊も自らの目的のために、攻撃を加えたために兵団は蜘蛛の子を散らすが如く、蹴散らされ、消え失せていった。必死の抵抗をみせたもの、元が土木作業用とは言え、大火力を誇るザンダクロスのビーム砲の一撃に巻き込まれ、いたずらに兵の数を減らすだけであった。そして指揮官と思しきマントを羽織った一体がまだ兵に余裕があるにも関わらず撤退命令を発した。

「総員撤退だ!!ハワイに転進する!!」

「何故です!隊長!」
「このままでは敵にいいようにされるだけだ。悔しいが……ハワイで戦線を立て直す!総員退避!!」

兵団で無事なものは最前線拠点のオワフ島に順次撤退。兵団は思わぬ蹉跌を余儀無くされる事になる。この敗北は今次大戦における、人類側の反抗の始まりと戦史に刻まれた。ここに「ミッドウェー〜ハワイ間遭遇戦」は地球側の勝利に終わった。







「……逃げたのかな?」

「いや、ここの駐屯地を放棄しただけだよ。本拠地からの援軍が望めなくなったんだろう」


ザンダクロスのコックピットでドラえもんは普段はあまり見せない冷静な態度で淡々と言った。こちらの戦力が思わぬ援軍のおかげで増強されたためとは言え、わずか数人と数機程度の攻撃でこうもあっさりと兵団が基地を放棄するはずがないからだ。他の戦略的目的があるのでは、と感くぐってしまう。実際、過去の戦いでは主力部隊による猛攻が待ち構えていたのだ。油断は禁物である。コックピットのモニターにザンダクロスを取り囲むように5機の量産型Zが佇んでいるのが見えた。もちろん何時でも火器を放せるように。ドラえもんは敵意が無いことを示すため、ひとまずコックピットのハッチを空けて姿を見せ、白旗を揚げる。彼等が味方であることは仮面ライダーストロンガーが説明し、ドラえもんら及び美琴と連邦軍との間を取り持った。過去の人間とはいえ、元々何も変哲もない、ただの民間人であったドラえもんらはともかく、美琴は仮にも学園都市で7人しかいない、最高レベルの超能力者の一人(クローンが生産されるほどの)として記録が残っており、連邦軍側は当初その可能性を疑った。(この時代に彼女……オリジナルの御坂美琴)が生きているわけはないので) しかし美琴本人が「あんたらねぇ……どこからどう見ても本人でしょうが!」と怒ったのと、クローン達とは異なる口調であったのですぐに本人であることが確認された。

「いやあ〜すまない。君に関する記録はほとんど残ってなくってね。こちらとしても判断がつかなかったんだ」

小隊長と思しき士官が笑いながら謝意を示す。美琴は若干不満げな顔だ。

「どういう事?」

「第3次大戦が終わってからしばらく経ってから―と言っても60年位間は空いていたが―また戦争があったんだ。『統合戦争』って言う大戦がね。その際のゴタゴタで第3次大戦前の学園都市の資料が散逸してしまったんだ」

「統合戦争?」



――統合戦争。それはかつての資本主義国家陣営が「外宇宙への脅威」に備えるのを名目に連邦政府設立を強固に推し進め、それにロシアなどの共産系勢力が反発して起こった長い戦争。宇宙移民が開始されていたのも統合の一因なのだが、当時修復が進んでいた異星人の宇宙戦艦(後のSDF‐1 マクロス)から得られたオーバーテクノロジーを巡って各国で争いが起こった。そのオーバーテクノロジーは学園都市の科学力の優位性を一気に減退させ、地位を失墜させるのに有効に働いた。日本政府はオーバーテクノロジーを餌に、学園都市を正式に傘下(と、言うよりは監視下)に収め、戦力を反統合勢力の掃討に使った。その最中に行われた某国の学園都市への特殊弾頭を用いた爆撃によりWW3以前の資料が失われた。学園都市には無論強力な対電磁波対策が施されていたが、それをも凌駕する威力を発揮する爆弾が一発投下された結果、学園都市のデータベースに一部欠損が生じた訳である。

「その後のゴタゴタや戦争で当時のレベル5の能力者がほぼ戦死した影響で、学園都市もガタガタになって、21世紀頃ほどの力は奮えなくなったのさ。その証拠に君たちの世代より何世代か後からは強力な超能力者も現れてない。」

「なるほどね……」

美琴は学園都市の衰退をまじまじと聞かされ、なんとなく納得したようにうなづいている。彼女は既に元の時代で学園都市の暗部の一端を知り、都市そのものに半ば失望していた。それが的を得ていた事への完全なる絶望と「やはりそうだったのか」と言う諦めも多分に含まれているだろう。

「悪いが、君たちには我々と一緒に来てもらう事になると思う。君たちが本当に20〜21世紀頃の人間かどうか確かめる必要もあるが……」
彼とは別の兵士の一人がドラえもん達の処遇をどうするかを隊長と話しあっているのが見える。よほどイレギュラーな出来事だったらしく、隊長らしき人物が時頼頭をかいたり、ため息をついている。それをカブトムシのような仮面を被った男―仮面ライダーストロンガーが慰めているのが見える。


話し合いが終わったらしく、隊長が兵士たちに『基地に大人数が乗れる飛行機を寄こすように連絡するように』と命令し、その指令を受けた兵士が暗号通信でウェーク島に通信を入れる。
それから20分ほどでウェーク島から中型輸送機(一年戦争時に運用されていたミデア輸送機の流れを組む改良機)が送られてきた。軍人たちに促されるように乗り込んだ輸送機のキャビンでドラえもんとのび太はため息をついていた。ドラえもんはどういうつもりで軍隊が自分たちを保護したのか?と疑ったような気持ちで、のび太は「僕たち……どうなるんだろう?」と言う気持ちの、そして美琴は。

「どういう事になってもあの子達は守る。なんで私がこの時代に召喚されたのかは分からないけど、人間、何か役目があるのなら……!」

彼女はこの時代での自分の役目を自覚し始めていたのかもしれない。この言葉はドラえもん達を守ることを自らに課した事を意味していた。彼女が史実でどの様な人生を送り、どのようにして死んでいったのか。この時代の人間ならば知っているのかもしれないが、それを抜きにしても、美琴は兵団と命をかけてでも戦うと言ったドラえもん達を放っておく事などできない。それが例え自分の力が軍隊に利用される事になっても、だ。美琴は決意を新たにし、凛とした顔でキャビンから見える空を見つめていた。その瞳に映るものは何であろうか。近くにいたのび太は不思議そうな顔で美琴の後ろ姿を見つめていた。それは美琴の逞しさがかつて出会った満月美夜子の姿とダブったからか、憧れとも取れる眼差しで見つめていた。それほどに美琴は戦う女性の強さを持っていたからだ。
















――なのはら3人が日本に繋留されているラー・カイラムに乗艦してから4週間が経過していた。この日は3人揃って、この世界の歴史に関する講義を受けていた。戦乱に満ちた時代、崇高なる魂達の輝き―そして国家の大義に殉じた数多の撃墜王達、人類の生き残りをかけた星間戦争…。なのはは話には聞いていたが、改めて目の当たりにした戦争の記録映像(それぞれの戦後に民間の手によって造られた記録フィルム)に息を飲み、フェイトは「別の世界でこんな戦争が起こってたなんて……」と強いショックを受けていた。

ヴィータは自身が造られた古代ベルカ時代(彼女は元々プログラム体であり、古くからの多くの戦争を経験してきた。)の戦乱を彷彿とさせる、映像の数々に嫌気がさしているようである。3人が目を奪われたのは近代の歴史上、有名なターニングポイント。特に現在に繋がる戦乱の幕開けになった一年戦争でのジオン軍総帥、ギレン・ザビの演説などだ。
なのはたちはここで、連邦に対し戦いを挑んで敗れ去った者達の執念−ジオンの残光−を目の当たりにした。それはガルマ・ザビ戦死の際の国葬の際の映像。ギレン・ザビの巧みな演説が映し出される。その雄弁さになのはも、フェイトも、ヴィータも引き込まれるような、惹きつけられる何かを感じた。



――まるで、かつて、ドイツを破滅させた独裁者のアドルフ・ヒトラーを彷彿とさせる、聞いている人々を思わず奮い立せられる劇的かつ勇ましい演説、そして21世紀ごろの政治家では到底持ちい得なかった、圧倒的なまでのカリスマ性。ギレン・ザビこそ、今日まで続くアースノイドとスペースノイドの戦いの幕を開いた張本人。その政治的手腕から、歴史上最も優れた政治家の一人としても記憶されているらしい。この演説の巧さならジオン軍の構成人員達の中に信奉者を出したのも頷けると、映像を見ながらなのはは思った。(ちなみにギレンの信奉者として有名なものに当時、特殊部隊「サイクロプス」隊の上司であったキリング中佐、親衛隊の隊長(階級は大佐)であり、後のデラーズフリートの蜂起の首謀者であったエギーユ・デラーズがいる)。
−演説は人々を熱狂させる。歴史上でもヒトラー率いるナチス党の躍進に一役買った。彼は熱弁を奮い、巧みに国民を魅了した。ギレンもその素養を十二分に持っていたのだろう。
そして画面は切り替わり、デラーズ紛争でのデラーズフリートの行ったガンダム試作2号機による核攻撃が映し出される。(視点は当時、核攻撃をすんでのところで生き延びたペガサス級強襲揚陸艦の一隻からだ)


『ソロモンよ!!私は帰ってきたぁ―――ッ!!』

この声は、一年戦争当時に『ソロモンの悪夢』として畏れられたアナベル・ガトー少佐のもの。彼は自らの信念に基づき、コンペイトウ鎮守府へ核攻撃を実行した。だが、それは連邦にとっては大量殺戮を伴うテロでしか無い。
宇宙空間すらを包み込む、まばゆい光と共に爆心地にあった全てが飲み込まれ、消滅していく。格の地獄の業火に焼かれていく宇宙戦艦、戦闘機、MS……そして人間。2人はあまりにも凄惨かつ衝撃的な光景に思わず目を背けてしまう。いや、直視できなかったと言ったほうがいい。悲鳴と怒号、罵りなどが入り交じった交信の音声と相まって、言葉に出来ないほどの悲惨さを醸し出していた。


「グレイファントムには連絡はとれんのか!?」

「ダメです!応答ありません!!……ちくしょう!!ジオンめ!!」

戦艦の艦橋がパニックに陥っているのが一目で分かった。声が明らかに上ずっていたり、震えているのが大多数を占めていたからだ。コンソールをいじる通信士などは指が震えてうまく操作ができなくなっていた。―核の業火は宇宙でさえこのような地獄を出現させるのか。爆心地にいた全ての物が消滅し、後に残ったのは威容を誇った大艦隊『だった』物の残骸でしかなかった。その中には連邦軍が日頃から不沈艦と寛伝していたペガサス級も含まれていた。これが彼等の「崇高なる理想」を実現させるための犠牲と言うのか?フェイトはこみ上げてくる感情を押えきれず、拳を握り締めていた。その姿になのはも心を痛めた。彼女―フェイトがここまで分かりやすく怒りを露にするのは珍しいが、このような光景を目にしてしまっては、当然であると思える。それだけ残虐な事態が巻き起こったのだから。

「この時に失われた艦艇は少なく見積もっても数十隻、死傷者は数え切れないほどだったとされている。だが……これでもまだ軽いほうさ。前の`大戦`に比べれば……」

解説役のブライトは前大戦に比べればこの程度の事など序の口であると告げた。そう。余りにも大きな犠牲だった、白色彗星帝国との戦いに比べれば……。



ブライトは語り始めた。人類史上最も凄惨かつ生死を問わないで地球の存亡のために全人類が一つになって戦った一つの戦争を。そして地球のために一人の女性が命を投げ出して地球を救った事を……


 「アレは今から2年前のことだ……」

彼は当時のことをなのは達に語った。2年前の時点では「ロンド・ベル」は軍閥同士の内乱に打ち勝った派閥「エゥーゴ」の面影がまだ色濃い、結成されたばかりの新参部隊だったが、既に悪の軍団をいくつか打ち破って来た事で人類の`切り札`と目されていた。

「ある時、上層部から命令が下った。それは“宇宙戦艦ヤマトと共に白色彗星帝国に最後の戦いを挑め。玉砕も覚悟されたし”という指令だった」

「それって`特攻`じゃないですか!」

なのははすぐさまその指令の内容が特攻であることを見ぬいた。ロンド・ベルの僚艦として名前が上がった「大和」と言う名がその後の内容を暗に示していたからだ。戦艦大和と言う単語は彼女の母国「日本」では特別な意味を持っていた。

――かの有名な戦艦大和は米軍の占領した沖縄に向かって、生還の望みなど無い出撃に赴き、その途上で航空攻撃の前に屈した。戦艦としては史上最強でありながら新時代の兵器たる航空機に葬り去られた悲劇の軍艦。その最期は余りにも有名で、何度も映画で描かれている栄華を誇った大日本帝国海軍のその終焉の一幕。

「なのは、特攻って?」

フェイトは特攻という聞き慣れない言葉に首をかしげながらなのはに尋ねた。21世紀ごろまでの小学校の歴史の授業は太平洋戦争などに到達できないで終わるか、サラッと流してしまっていたのが常識だった。なのはは以前、家の近所に住んでいた老人達から話を聞いていたので、ピンと来たのだろう。その老人達は皆、太平洋戦争(彼等は大東亜戦争と呼んでいたが)の従軍経験者で、中には戦艦武蔵の乗員の生き残りだとかが含まれていた。その中でも長老は支那事変以来の航空戦を戦った元搭乗員であったとか。彼等は日本軍の快進撃とその悲惨な敗退の様子を目にしていた。そしてそのうちの一人が語った「神風特別攻撃隊」の事を思い出したのだ……。

「特攻っていうのは……飛行機や船で相手に体当たりする事だよ。乗った人たちは決して生きて帰れない。命と引換えに敵を倒すのが目的の……戦法だよ」

「そ、そんな……!!信じられない……自分の命と引換えだなんて……!」

なのはの声のトーンが暗くなった。自身の死をも厭わない戦いなど、戦後民主主義のもとで育ったなのは達の価値観からは特攻は到底受け入れることは出来ないからだ。彼女はゆっくりと老人たちとの会話を思いだしていった。



『俺達は若い頃、帝国陸海軍の敗退の様子を見てきた。そりゃ悲惨だったさ……ガ島の転進、マリアナ、レイテの大敗北……。』

『確かに日本軍の負け方は悲惨だったけど……悪いことをしたせいだよね?』

『学校で教えている事は勝者のGHQが当時の米国の価値観で造り上げた一方的な見方さ。確かに帝国陸海軍のした事は確かに悪どいかも知れない。俺達に言わせれば、彼等だって似たような事をしているさ。ドレステン大空襲や名古屋大空襲じゃ国宝級の文化財を躊躇なく破壊してるしな』

連合国側の戦略爆撃は文化財さえ躊躇なく廃墟とした。その点は断罪されてしかるべきだと、一人の元陸軍航空兵は吐き捨てるように言った。

『当事者さえ今の日本の価値観でモノを言うようになってしまった時代だからな……日本が侵略者として弾劾されるのはしょうがないが……。しかし嬢ちゃん達には覚えておいてもらいたい。日本ばかりが一方的に悪いと言われるが、彼等だって相応の報復はしてる。当時前線で戦った俺達も44年あたりにはもう気づいていたのさ。戦争に負けることを』

『だったら何で……?」

『陸軍のお偉いさん方、特に東條英機の一派は精神論だけで勝てると思ってたし、反対の世論は憲兵や特高警察が封じ込めてしまっていた。何よりも開戦の時には無敵だった帝国海軍航空隊がどうしてマリアナ沖で負けたのか?レイテで不沈戦艦と言われた武蔵が沈んだのか?例を上げるとキリが無いしな」

当事者、それも当時に帝国軍人として戦線に身を投じた者達にしか分からない事。21世紀が始まって10年以上の歳月が経過した時代での貴重な元・日本陸海軍人の生き残り達の証言は、当時、既に管理局武装隊航空部隊の士官となっていたなのはの考え方に影響を与えた。

『戦いで重要なのは勝つことじゃない。とにかく生き残れ』。

なのはにそう教えを伝えた彼等をして、忌み嫌っていたと言う「神風特別攻撃隊」。開戦時からの生き残り兵士も特攻を拒んだという逸話も残っているほどの忌むべき愚策。

『末期になると、飛行機の性能も搭乗員の平均的な腕の差もどんどん開いていくばかりだった。そこで考え出されたのがアレ……特攻だ。回天、桜花……震洋……神龍……そして伏龍……』


彼等から聞かされた特攻の話は思わず、眼を覆いたくなる様な悲壮な物だった。多くの若者達は家族の未来を守るために、愛する者のために、後世の人間たちに後を託すように作戦に身を遠じ、その若い命を散らしていった。そしてその極めつけが戦艦大和の最期であったという。最後に彼等は『アレは最大にして最悪の愚策だ。だが、そうでもしなければ米軍に一矢報いる事が出来なくなった事が情けない……』と言っていた。一般に特攻隊第一陣として知られる関行男大尉も、




「僕には体当たりしなくても敵空母に50番を命中させる自信がある。日本もおしまいだよ、僕のような優秀なパイロットを殺すなんてね。僕は天皇陛下のためとか日本帝国のためとかで行くんじゃないよ。KA(当時の帝国海軍内の隠語。意味は妻)を護るために行くんだ。最愛の者のために死ぬ。どうだ、すばらしいだろう!」

……との言葉を残している。なのはもフェイトも彼の事を管理局勤めをしている内に知った。―自分は大切なモノの為に死ねるのか?なのはとフェイトはその事が頭から離れなかった。……そう。国力に絶対的差がある国の軍隊の宿命なのか、1944年〜1945年までの日本と同じような経緯でジオン公国も地球連邦政府に敗北を喫した。なのははその事や一年戦争の記録映像を思い出し、それと同じ運命を今度は地球連邦が辿ったというのか、と拳を握りしめて感情を露にする。憤激するなのはを落ち着かせるように、ブライトはこうも付け加えた。「地球には最後にして、最大戦力が残っていた」と。それは日本が建造していた、錚々たるスーパーロボット達。マジンガーZ、ゲッターロボなど、その他はコン・バトラーVやボルテスV、軍が唯一持ったスーパーロボットであったダンクーガ、はるばると宇宙からはせ参じたダンガイオーなど。しかしその最後の切り札たる、スーパーロボット達も敵との戦いで多くが稼働不能に追い込まれたという。それを示すように、映像が映し出される。

「これは終戦直後の映像だ。その時の様子がこれなんだが……心してみてくれ」

映像にはボロボロになった戦艦―ロンド・ベルの当時の旗艦だった「ネェルアーガマ」に搭載機達が帰還してくる様子が映るのだが、
無傷で帰ってきたのは「ZZガンダム」や「Zガンダム」、「ゴッドガンダム」など、機動性に優れるとされる機体くらいであった。
大火力と重装甲なため、最も過酷な最前線に投入されたスーパーロボットで、ほぼ無傷で帰還できたのはごく少数に過ぎず、軍団の大半が体のどこかかしらが破壊されている。
最初にカメラに映った機体―コン・バトラーVはゲッターロボGに肩を借りて、ようやっと飛行している。悲惨なことに片腕がもげた無残な姿を晒している。よほど十字砲火の激しい前線で戦ったらしく、装甲もボロボロだ。どうにか自力で帰還に成功したのはダンクーガやボルテスV、グレートマジンガーの3体のみ。他には、悲惨なことに、コックピットブロックだけが回収された機体もあった。なのはやフェイトさえも一目で見ただけで強そうと思える、超兵器の塊とも言える、スーパーロボット軍団をここまでボロボロに追い込んだ敵とはいったい何者であろうか?
「彼等をここまで追い込んだのは`白色彗星帝国`。恐ろしい奴らだった……」
この時、既に多くの人類同士の戦争を経験済みであったブライトをして、『恐ろしい』と言わしめた白色彗星帝国とは……?


 そしてロンド・ベルとともに戦った宇宙戦艦ヤマトの姿が映る。それはなのは達の世界にもあった、古典的SFアニメの主役艦とほぼ同一のものだったのにさらに驚かせられた。
ただしアニメと違う点が多々あった。380mの大きさを持つネェル・アーガマの有に2倍はあり、下部にも主砲などの攻撃武装が備えられているのが最大の違いであった。この宇宙戦艦とロンド・ベルが白色彗星帝国に最後まで抗った連邦軍の部隊の一つであったと聞かされると、妙に納得させられる。

「たしかにヤマトって敢闘精神ありそうだなぁ……名前から言って。」

フェイトがそう言うと、なのはもブライトもうなづいた。ヤマトの名を持つ宇宙戦艦は変な威力を発揮していた。実際、宇宙戦艦ヤマトの武勇伝は2人をして感嘆とさせるほどの凄さであったからだ。単艦で当時の地球連邦軍外惑星艦隊を全滅に追い込んだ「ガミラス帝国」を崩壊させ、「イスカンダル」まで「コスモクリーナーD」という放射能除去・惑星の浄化再生促進機能を持つ装置を取ってきたこと、
アンドロメダ星雲を制覇し、宇宙に覇を唱えた「白色彗星帝国」にロンド・ベル隊と共に最後まで戦い抜いた偉大な宇宙戦艦。


――古くは日本の別名であった「大和」。その言葉はこの時代においては『宇宙の希望』を表す意味も加えられている。それをなのは達は認識したのであった。



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