― ドラえもんは考えていた。何故、この時代の地球は兵団を相手にがっぷりと組み合って『相撲』
が取れる力を持っているのか。自分の時代での地球は道具こそあれぞ、兵団と比べれば矮小な軍事力
しか無かったはずだと。

VF、MS、スーパーロボット……どれも自分の時代では実現は「まだまだ」とされていたSFの兵器であり、
人型兵器などはまだどの国も作ろうとする範疇に無かったと。

『だが、実際は違った』。1980年代には既に宇宙からのオーバーテクノロジーが齎され、地球は数百年の時を経て
それらを手中に収め、独自に進化を重ねていった。その成果がドラえもんらも見てきたあの超兵器群なのだ。
地球連邦軍はそれらを主力に兵団を追い込んでいる。奇襲で機先こそ取られたが、体勢を立て直した地球連邦軍の
攻勢は次第に兵団を追い込んでいる。

(本国から増援が来ないのか?それとも……?)

ドラえもんは知らなかったが、地球連邦軍はこの時既に兵団のワープ反応を探知し、出現する瞬間に爆雷や殲滅用
兵器を撃つ事で兵団の増援を封じ込めていたし、その探知手段も確立させていた。
だが、段々とその頻度も減ってきている。それはメカトピア本星でレジスタンス運動が活発になっていたからであった。

 

―メカトピア 首都

ここ、メカトピアは3万年ほど前にある文明の科学者が人間に絶望し、ロボットによる「理想郷(ユートピア)」を建設しようと
移民し、2体のロボット「アムとイム」を創りあげた。そのタイミングでしずかの介入が行われ、歴史の流れは変えられ、のび太
達の時代に行われるはずの「人間狩り」は無くなった。だが、鉄人兵団という存在そのものは別の理由で生まれた。
それは「共和国軍を指揮系統の明確化を名目に再編する」という理由。軍事ロボット達の行動を無暗に阻害しないように。
だが、それが共和国の命取りとなった。軍事ロボットは『戦うため』に生まれた。それ故に無暗に戦うことを禁ずる他の
ロボットが疎ましかった。その思考はやがて「軍事クーデター」という行動で顕在化し、国の体制を専制軍事国家と
変える事に繋がった。軍は「鉄人兵団」と名を変え、彼等の思うがままの闘争を行い、周辺の星を「労働力確保」を名目に
侵略していった。その専制軍事体制は万全では無かった。内部には極秘裏に革命運動に関わる軍人もいるほどで、
一部のロボット達による支配は内部でも疑問視されていたのだ。

「閣下、レジスタンス共がB地区でテロを!!」
「ええい、わかっておるわ!!」

閣下と呼ばれたその金色のロボットは鉄人兵団を統括する総司令官であり、現体制での「元首」であった。
その姿はかつてドラえもんが対峙した司令官と同一の姿であり、その生まれ変わりである事を示唆していた。

「レジスタンス共が……いい気になりおって」

彼はレジスタンスに手を焼いていた。『労働階級のロボット達が人間と同じように雑多な武器を持って戦闘用
ロボットである自分らに挑む』。最初は馬鹿にしていたが、元は同じロボを祖に持つ彼等は次第に知恵を付け、
自分らに対抗してきている。

その中心にいる「民衆を導く自由の女神」が彼が手にもつ写真に写る、赤毛の人型ロボットだ。労働階級の出身ながら
その人心掌握術、指揮能力は軍事ロボットにも劣らない。彼はこの人物を最優先ターゲットと位置づけ、
血眼になって殺そうと躍起になっていた。それは`因果応報`と言えた。そのレジスタンスの中心人物の
姿はかつてドラえもんらが心を通わせた「リルル」そのものであったからだ。ドラえもん達が知らないこの事実。

今、彼女はレジスタンスを率いて、開戦劈頭にメカトピアに連行された元連邦軍将兵と共に戦っていた。

「B部隊は敵右翼を牽制して!私たちは敵の指揮系統を断つ!!」
「了解!!」

しずかが見れば感動のあまりむせび泣くであろうその姿はまごうことなく「リルル」のそれである。のび太が
『事変後』に見た人物と同一人物であるかは定かでないが、彼女の出自は労働階級である事は確かであった。
彼女は神話や歴史で語られたメカトピアの精神と国の現状の剥離と軍によって進む迫害に耐えられなかった。
だが、労働階級の出自であった彼女には人心掌握術などは叩きこまれていても戦闘のノウハウは無かった。
転機は牢獄から脱出した地球連邦軍の将兵と出会った事。

彼等は軍事政権打倒を狙い、メカトピア国民に決起を呼びかけるための前段階として「カリスマ性のあるメカトピア国民」を
求めた。それで彼女に白羽の矢を立て、彼女に戦闘ノウハウを教え込み、抵抗運動を始めた。この運動は次第に波及し、
ゲリラ攻撃が公然と行えるにまで規模が大きくなるに至った。これは兵団の横暴な統治に国民の多くが不満を抱いている
事の現れでもあった。戦闘員の中核は今のところは地球連邦軍出身者が占めているにしても、主力は市民である事は大きかった。
この運動を、武器援助などのを行う地球連邦諜報部は「自由メカトピア」と呼称。武器などを送り込み、兵団を追い込むために
彼等の奮戦を期待していた。

彼等が主力としている火器は地球製のもので、主に整備が楽な実弾兵器を使っていた。その主力は旧ロシア軍制式の「AK-47」
である。地球連邦軍でさえ「骨董品」と自嘲するそのアサルトライフルは1947年という開発年次でありながらも
その利便性から未だに予備装備として残っている。兵団のメカトピアでは数百〜千年前の「古い兵器」と言われたが、
『枯れた』技術の実弾はビーム兵器やレーザーを基準防御とする兵団の盲点を突き、思わぬ戦果を挙げていた。

「これじゃまるでシルベスター・スタ◯ーンが大昔にやってた映画だぜ!うぉぉぉ〜!!」

レジスタンスの中核を担う「元・地球連邦陸軍欧州方面軍兵」達は「AK-47」を手に持ち、乱射しまくる。そのいでだちは
まるで大昔のアクション映画を思わせるワイルドなもの。弾はいくらでも製造されているのでこの場で使い切っても何ら問題はない。
それはかつての地球でよく見られた地域紛争、あるいは第二次大戦時のフランスによるナチへのレジスタンスを彷彿とさせる光景。

−ドラえもんらが変えた未来はここに確かに生きていた。彼等が変えた事実は死んではいないのだ。

しかし。歴史・神話というものはどうとでも解釈される。例え当時の大義名分がどうであろうと、生き残った方に都合がいいように書かれる。
例えばアメリカは第一次世界大戦、第二次世界大戦で勝者として君臨したが、その後の地球連邦設立後の戦争で敗北した
結果、地位を失墜したが、メカトピアの場合はドラえもん達による改竄前と改竄後も「神が自分らを創造し、ロボットに寄る理想郷を作れと
命じられた」までは細部は違うにせよ、同じであり、軍事政権樹立後は軍によって改竄前と似たような強引な解釈がまかり通っている。
ギリシア神話の神々が解釈の違いと民族の違いで複数の名を役割が与えられたように、なんとでも解釈出来るのだ。

だが、「運命は切り開くもの」。ドラえもん達は自らの窮地をそうやって切り開いていったように、
メカトピアの人々も己の信ずるもののために戦っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−仮面ライダー1号に守られながらも、しずかから以前に聞いた戦いの結末を思い出すドラえもん。
それはどこかで反映されているはずだが、今のところは兵団へのリルルの不在以外はその傾向は見られない。
兵団は地球連邦とがっぷりと戦争やる事でその兵力をすり潰している。記憶に残る数十万もの物量も地球連邦軍にとっては
「常識的」の範囲内で、巨万、例えて云うなら天文学的単位の数の物量でも対抗出来るという。

「地球は僕の……いや民間人の知らないところで、どうやって文明を飛躍的に……?それも
兵団も問題にしないほどの力なんて……」
「その理由を教えてあげよう。1980年頃の事だ。宇宙から持ち込まれていたオーバーテクノロジーが齎され、それを使って侵略者と
戦ったヒーローがいた。`電子戦隊デンジマン`と俺達は呼んでいる」

一号ライダーは地球にオーバーテクノロジーが齎された最初の事例をドラえもんに説明する。電子戦隊デンジマンは元々、
デンジ星と呼ばれた星の文明が滅んだ後、そこから脱出した星人の遺産がその星人の末裔である5人の若者を選び出して
電子戦隊を結成し、戦った事を。戦いが終わった後、地球にその技術が齎されたこと。

「ええっ!」

ドラえもんは驚く。1980年代初頭にはもうそんな事になっていた事を。そして日本(学園都市含め)で研究されていた
技術とを組み合わせて80年代以降のスーパー戦隊の勃興に繋がる事を。

「ああ。世界を守った者は俺たちだけじゃない。彼等もまた俺達の同志なのさ」

それは仮面ライダー達にとって、スーパー戦隊は同じ正義の心を、人類の自由のために戦うという目的を共有できる同志であることを
暗に示していた。彼等の暗闘で地球は悪から守られていたという事実を。
のび太達も顔を見合わせる。『TVの中のヒーローは決して絵空事ではない』事を、そして1999年頃にはもはや「チープで陳腐な偶像」
とも言われだしていた「愚直に正義のために戦うスーパーヒーロー」はまだ死んではいない事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−欧州 ヌーボパリ

ここではRX=南光太郎とボスガンの死闘が繰り広げられていた。と、言ってもボスガン側は「ガイナギンナム」がメインだが。
RXに変身した光太郎は2人と渡り合うもの、ガイナギンナムに不意を突かれ、目を負傷してしまう。

「ぐああっ……目が!!」

RXの目「マクロアイ」はBLACK時代の「マルチアイ」より能力が飛躍的に向上したが、面積の拡大により、目潰し攻撃の的にも
しやすい事でもあった。だが、歴代仮面ライダーもそうだが、ライダーの目を直接攻撃するのはある種のタブーとされているのか、
バダンも、ブラックマグマを始めとするスーパー戦隊の敵も行わなかった。だが、ボスガンはそれを平然と行った。
それは卑劣な戦法で、光太郎は怒りのあまり、こう言い放った。

「卑怯だぞボスガン!!貴様は誇り高き剣士だと思っていたが……所詮はクライシス、邪悪の塊だ!!」と。

それにボスガンはこう言い返す。

「私は貴様らに度々と屈辱を受けてきた。特にRX、貴様にはな。もはや正攻法では貴様には勝てん、どのような手段も使ってでも倒してくれる!!」

歴代ライダー有数の防御力を誇るRXのボディもボスガンが誇る秘策「怪魔稲妻剣」の前に無残に切り裂かれていく。もはやRXのままでは無理だと
悟った光太郎は防御力重視の「ロボライター」へ二段変身を敢行した。

「無駄だ、RX。たとえロボライターに変身してもこの剣を弾くことはできん!!」

ボスガンは自信満々に言い放つと、稲妻剣を見事な剣さばきでロボライターに突き刺した。
ロボライターの装甲を斬り裂くために造られた剣はその目的通りの働きを見せ、「ロボフォーム」すら貫いた。ロボライターは目を負傷した状態ながら
稲妻剣を何とか直撃から逸らしたが、凄まじい大ダメージであるのには変わりなく、更に胸を袈裟懸けに着られ、二段変身が解けてしまう。

「アクロバッター!!」
「ぬ、RX!逃げるのか!!」

不利を悟ったRXはアクロバッターでとりあえず撤退に成功したもの、目を負傷し、身体にも傷を負うほどのダメージを負ったため、
なんとか基地に帰還した時には変身解除時に着ていた服の胸の部分が赤く染まるほどであった。

「あ、兄貴!?」
「こ、光太郎さん!どうしたんですか!?その傷は!?」
「ボスガンの剣に斬られてね……凄まじい剣だった……」

ガクッと崩れ落ちる光太郎。それを霞のジョーがなんとか支える

「く、那佳!!衛生兵を!急いで!!」
「り、了解!!」

光太郎は見るも無残な負傷ぶりで、目にも傷を負っている。圭子は黒田に急いで衛生兵を呼ぶように指示。
衛生兵により応急処置が施された後、医務室へ運ばれ、診察を受けた。
彼はキングストーンと太陽エネルギーによる自己治癒を狙い、窓側のベッドに寝かされた。

軍医は光太郎の負傷具合を普通の人間なら瀕死になってもおかしくないほどの負傷であったが、
仮面ライダーであることで、自己修復機能によって傷は数時間もあれば癒えるだろうと説明するが、目に関しては
ライダーである彼を以てしてもそう簡単に癒えないだろうと圭子達に告げる。

「それにしてもボスガンの奴……RXになった兄貴を斬るなんて、いったいどんな剣を……」
「RXの装甲は歴代のライダーの中でも硬い部位に入るはず……それを一撃で斬り裂くなんて。ボスガンのあの自信満々さは
その剣を造ったからなのね…」
「どうします少佐」
「うぅ〜ん」

圭子も内心は信じられない気持ちであった。あのRXの強靭な装甲をも斬り裂くほどの剣など……。なんとか手段はないのか。
彼女はボスガンに対し、内心で毒づきながら手段を模索した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

−地球連邦軍本部 ギアナ高地 執務室

「そうか、F−Xのモックアップが完成したか」
「見学しますか」
「ああ」

F−X計画はいよいよ第二段階に移行しようとしていた。「コスモパルサー」、「コスモファルコン」、
「コスモミラージュ」の実物大モックアップが軍へのアピールも兼ねて航空ショーで展示されるからだ。

レビル将軍とその幕僚はさっそく横須賀基地(横須賀に第二次世界大戦以来、航空隊が設置された事で、航空施設が増設された)
へ赴き、航空ショーを見学した。

「この戦闘機はサイコミュ兵器の搭載も考慮に入れる予定か……」
「はい。40ミリパルスレーザーを固定武装としていますが、ニュータイプパイロットの搭乗も想定に入れています」

レビル将軍は見学に訪れた横須賀でモックアップを見学し、担当者による説明を受けた。

コスモミラージュは説明によればサイコフレームを構造材に使い、小型化されたサイコミュを使うことで「ファンネルミサイル」
をオプション装備として使えるとのことだが……YF−29が予想以上の高価格化で軍予算を圧迫してしまった以上、あまり高価格の機体を
採用すると、政府議員から「高い!節約しろ」と文句が出て、他装備の採用に悪影響が出る恐れがある。
40ミリパルスレーザー砲の攻撃力は魅力的だが……。

−どうにも装備一式を採用すると値段が……。

レビル将軍は頭の中で勘定していた。攻撃力などは魅力的だが、装備一式と併せた値段が高いのだ。それは小学生がおもちゃを買うのに
お小遣いと格闘する光景とにていた。サイコミュは高額なのでそれが値段を高騰させているのだ。戦時とはいえ、予算のことを頭に入れなくては
ならぬのが軍の悲しい性である。レビル将軍らは予算という見えざる敵とも戦っていた。

 

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