――フェイトとスバルは改めてティアナの`手際の良さ`に関心させられていた。アフリカ戦線で、かのトップエースと謳われる「ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ」と共に戦っていただけあって戦略的・戦術的判断力にさらに磨きがかかっている。他のウィッチから受け取った40mm機関砲をウィッチとしての力を行使して撃ちまくった。

「いっけぇぇぇっ!!」

当然ながら使い魔の耳と尻尾が出現している状態で撃ちまくっているので、それを見ているフェイトは目が点となってしまっている。無論彼女にとってウィッチは最早見慣れた存在だが、ミッドで直接でないとはいえ部下(ティアナ・ランスターは機動六課在籍時にはなのはの直接の部下である)であったティアナが魔女(ウィッチ)へ転身したのを改めて目の当たりにし、開いた口がふさがらない思いであった。弾を撃ち尽くすと瞬く間に弾倉を取り替えていく。

「さすがティア。慣れてるね〜」

「アフリカ戦線でマルセイユ大尉やライーサさんに色々仕込まれたからね。このくらいは軽いもんよ」

ティアナはスバルにそう返す。それは激戦地であるアフリカ戦線で生き残ってきたティアナの自負であった。転身後は戸惑う所が多かったが、ウィッチとして戦ううちに自分の力に自信もついたし、稲垣真美という相棒と出会うこともできた。

――アフリカに行ったことで自分は`変れた`と思う。行かなければ今頃あたしは相変わらず力を求めて無茶して、なのはさんに徹底的に打ちのめされただろうな。

闘いながらそう述懐するティアナ。転移前になのはが行った事がよほど堪えているのだろう。最もそれは前大戦時の歴史改変前のことであり、今はなのは自身も11歳時の経験で、更に強い力に打ちのめされる怖さと、自分が築きあげてきたものが否定される事の気持ちを痛いほどよく分かる(なので、なのはには19歳になった今でも、ゲッターロボ號との交戦で負った左手の傷が生々しく残っている)。なのはがティアナになんとなくバツの悪い想いがあるのは、『自分が懲罰的行為をしてしまった』事への罪悪感があるのかもしれない。そんな彼らに最高の知らせが届く。

「おい、今、南原コネクションやビックファルコンからモールス信号での打電があって、ようやく終わったそうだ、レストアが!」

「おお!ついに完了したのか!」

「南原コネクションって、確かコンバトラーVの基地じゃ?」

「ああ。レストアに時間がかかっていたが、間に合ったそうだ」

兵士達は一様に歓喜している。ついにコンバトラーVとボルテスVのレストアが完了したのが判明したからだ。レストア自体は白色彗星帝国戦直後から開始されたが、度重なるテロなどで妨害され、この年にまでずれ込んだのだ。延べ数年の歳月がかかったことになるが、二機はバッチリ改修されていた。両機は直ちに発進、横須賀に向かっていた。





――コンバトラーVは多すぎた武装の一部統合による間引きも行われ、より効率化している。追加パーツの新造と同時にジェネレーター出力、装甲強度、運動性能の改善も行われていた。これはあまりにも武器を積み過ぎた弊害が白色彗星帝国戦で生じ、同機の中破を招いた事への反省に基づくもので、同時に兵器として見た場合、『合体後に一人でも脳波が乱れたら分離する』というのは、精神攻撃も多い昨今に置いては『重大な弱点である』と見られたからだ。ちなみに新造パーツは追加装甲となるもので、俗に言うパワーアップキットの類に分類される。ボルテスも同パワーアップキットとなる新マシーンの調整が終わっていないため、素体での出撃となった。それと合流したのは、箒、鈴、シャルのIS組であった。




「まさかコンバトラーVやボルテスVと隊列組んで飛ぶなんて思いませんでしたよ、ええと、豹馬さん」

『おうよ。まさか俺だって、お嬢ちゃん達みたいなパワードスーツが持ち込まれるなんて思ってもみなかったぜ』

バトルチームのリーダー『葵豹馬』が答える。彼はコンバトラーVのメインパイロットであり、最近はチームメイトの南原ちずると恋仲であり、メカトピア戦争には参戦できなかったものの、そちらの方で進展があったため、甲児からはからかわれている。戦いの中で彼は腕を失うものの、クローン技術の応用による再生医療で事なきを得た。

「でも、なんでレストアに数年もかかったんですか?しかも二体とも」

シャルが尋ねる。戦局を左右する存在であるスーパーロボットのレストアに述べ、数年もの月日がかかったのか。普通に考えて最優先で行われるはずなので、それにしては長すぎるからだ。それにはちずるが答えた。豹馬では説明不能だからだ。

『ああ、それはね。コンバトラーVって武器多いでしょ?』

「ええ」

『どんどん新しい武器を積んでいくうちに、内部構造が複雑化しちゃって、直すのに配置を把握する必要が出ちゃったのよ。その上で強化改造していったんだけど、テロでマシンが爆破されたり大変だったわ。そういうアクシデントがあった後に強化改造したから、数年もかかったの』


「あ、あ〜〜。確かに」

「知っているのか、シャル?」

「ラウラから聞いたんだけど、コンバトラーVってね、武器だけで20近くあるんだ。」

「20近くぅ!?」

『ええ。どんどん新しい兵器積み込んでたから、まるで歩く武器庫だったわ。私達も把握するのに苦労したわ』

『おかげで俺のオツムはフル回転よ。操縦法自体は脳に叩きこまれたからいいんだけど、武器の種類はそうもいかねえから、ノート作って暗記してたぜ』


――そう。コンバトラーVは別名、『歩く武器庫』とも言われる。今回の強化改造はその武装の整理も兼ねているのである。ボルテスはその傾向が抑えられた設計であること、天空剣という絶対的な武器があったからである。

『豹馬、そこはお前らしいよ』

『け、健一、お前なぁ』

「でも、ボルテスは天空剣が必殺技なのに、健一さんは射撃の名手じゃないですか。それはちょっと変じゃ?」

『ああ、それはなんでも、ボルテスを設計して、建造していた頃に設計変更が急にされたからな。その名残だよ』

――ボルテスは知られざる逸話がある。建造中に剛健一がメインパイロットに選ばれたが、彼は射撃の名手であり、当初はボルテスバズーカをメイン武器にする計画だった。ところが、途中で天空剣が完成、そちらがメインになってしまったため、固定モーションとして、Vの字斬りを入れたというものだ。その後、健一も剣を修行し、色々と応用技を考えだしたのである。

「いろいろあるんですね」

『まぁな。シャルちゃん……だったかな?これからよろしく』

「こ、こちらこそ」

『健一、もうすぐ戦場よ』

『よし、行くぞ!!箒ちゃん達は一端距離を取れ。合体で起こる超電磁エネルギーに巻き込まれるぞ』

「は、はいっ!」

箒達が距離を取ったのを確認すると、バトルチームとボルテスチームは合体コードを叫ぶ。久方ぶりの超電磁の兄弟の登場である。

『レェェェツ・コォォンバィィン!』

『Vトゥギャザー!!レェェェツ・ボルトイィィィン!!』


ここで、ついに歴史で燦然と輝く二大超電磁ロボが声高らかに復活した。超電磁エネルギーが迸り、10機のメカがそれぞれ一つに合体していく。身長は50mを有に超え、550トンから600トンのメカとなる。箒達は圧巻の光景に、言葉もなかった。

『コォォンバトラーV!!』

『ボォォォルテェェェス・ファイィィブ!!』

地面に地響きを立てて、その雄姿を見せた二大ロボ。正にその圧倒的な巨体は『大地を揺るがす』とマスコミに評された通りである。

『お、豹馬と健一か!?』

『お待たせ!ただいま戦線に復帰するぜ!ツインランサー!』

『おう!!天空ゥゥゥ剣!!』

ボルテスVの胸の装甲板が外れ、剣の柄となり、並みのMSと同等以上の長さの刀身が迫り出す。ボルテスはこれで無敵を誇り、後に対策がなされた後も超電磁ボールとの併用で乗り切った。暗黒星団帝国相手には気持ちいいくらいの切れ味を見せる。

『天空剣・十文字斬りぃぃぃ!』

天空剣そのものはオーソドックスな西洋剣である故、様々な応用技が開発された。これもその一つである。跳躍し、敵を十文字に斬り裂く。これは健一がこの二年で編み出した技の一つだ。

『ガトリングミサイル!!』

左手を別方向に向け、指からミサイルが連続発射される。量産型MS程度であれば一発で粉微塵になる破壊力を持つが、ボルテスにとっては牽制用武装である。この絶大な力が過激派スペースノイドから危険視された所以である。これまでの鬱憤晴らしとばかりに、大暴れする。

「綾香さん!」

「お、お前らか!」

「あなたのISを真田さんから受け取っておきました!受け取ってください!」

「サンキュー!!」

箒から投げられた待機状態の旋風を受け取る黒江。オーバーホールと第四次改修があった(武装追加と展開時間の更なる短縮目的)ため、彼女のもとを離れていたが、戻ってきたのである。受け取ると、すぐに展開する。(新武装は兼ねてより要望していた斬艦刀である。とあるゲームに登場するスーパーロボットに着想を得た開発チームが『なんでもいいから、戦艦ぶった斬れる実体剣おくれ〜!』と切望する黒江に応える形で制作した。刀身に液体金属を使用する事で、形状はある程度変化可能である。ちなみに液体金属を使ったために予算がかかったので、ものはついでとばかりに数本ほど制作しており、その内の一本は赤椿に搭載されている)

「さて、コイツを試すか!」

ビームサーベル系統がどうにもしっくり来なかった黒江は実体剣を更にとっつける事を望んだ。この度、開発チームがつけたモノはバッチリ要求に合致しており、掃討三脚戦車を綺麗サッパリ斬り裂く。

「思った通りだ。こいつらは人型兵器やパワードスーツへの対処は想定外だ!!接近戦に持ち込んで撃破しろ!」



『OK!超電磁タ・ツ・マ・キぃぃぃぃ!!』

コンバトラーVが腕から超電磁エネルギーを放射し、残った戦車を絡め取る。そして腕を超電磁ギムレットへ変形させ、コンバトラーVそのものを超高速回転させながら突撃する。これぞ『電磁の必殺技』と名高い超電磁スピン』である。

『超電磁スゥピィィィィィィン!!』

轟音とともに身長57メートル、体重550トンの巨体が音速を超越する早さで突撃し、貫く。この技は人気が高く、マスコミもコンバトラーVと言えばこの技と評を持つ(実際は他に、グランダッシャーがあるが)。

『おお、相変わらずだな!』

『たりめーよ!コンバトラーV、未だ健在なりだ!』

意気軒昂の豹馬。だが、このままゲリラ化するには目立ちすぎるが、母艦がない。ラー・カイラムもシナノもドックが制圧されてしまい、出せないという事情もあり、一同は悩んだ。二隻の空母の艦載機は満杯に詰まっていると報告が入っているので、とてもコンバトラーVやボルテスのマシーンにマジンカイザーを収容するスペースはない。と、そこへ通信が入る。武子が指揮するグローリアスからのものだ。一同は安堵し、ドックに係留した二隻を起動させつつ、スーパーロボット達をグローリアスに入れさせた。

――グローリアス 艦橋

「え、た、武子!?何してんのよ!?」

「臨時で指揮する事になったのよ。この艦は三沢にいたから難逃れたのよ」

「へぇ〜あなたがねぇ……。で、これからどーすんの?」

「レビル将軍は横須賀を奪還次第、ここを拠点にするつもりよ。私達はその合流のために来たの」

「それにはまず、横須賀を完全に奪還しねーといかんぞフジ。ペガサス級じゃ撃ちあいじゃ勝負にならんし……」

「解ってるわ。いくらペガサス級が内惑星巡航用で高性能でも、恒星間航行用とでは差があるもの。移動司令部代わりに使う。元々は艦隊旗艦を想定してるって言うし」

武子の言う通り、ペガサス級強襲揚陸艦は設計時には艦隊旗艦を想定されていた。そのために司令部に使えそうな設備は保有している。戦闘では地力に差があるため、砲撃支援目的にしか使えないが。

「んじゃ私は皆に伝えてくるぜ」

「頼んだわ」

こうして、艦は手に入れたパルチザンであったが、各地で独自に蜂起したために兵力不足が玉に傷だった。そして、統制を誰が取るかが問題であったが、それはすぐに解決した。レビル将軍自らの統制により、自身とジョン・コーウェン中将と藤堂平九郎軍令部総長を最高責任者に添え、あとは軍人には階級が適応される構成であった。そして、藤堂平九郎が、ある一人の人物を呼び寄せていた事が判明する。宇宙戦艦ヤマト初代艦長の沖田十三である。ここで、沖田の生存が伝えられたわけだが、皆、佐渡酒造の世紀の誤診にむかっ腹が立ったのは言うまでもない。

「私は宇宙戦艦ヤマト初代艦長、沖田十三である!諸君には辛苦を強いるが、今日の屈辱に耐え、明日のために戦うのだ。それが地球圏を守護する者の勤めである」

沖田十三はこの時、56歳。白髪であるのと、某警部を連想させるだみ声であるために老年に見られがちだが、実はまだ壮年である。宇宙放射線病の新治療法の治験者として選ばれ、見事に成功。蘇生した。脳死ではなかったためだ。以後は公的には死亡した事を隠れ蓑にして療養しつつ、時期を見計らって生存を発表する手はずであったが、この事態に立ち上がったのである。

「沖田艦長、対策はあるのですか」

「幸いこちらには人型兵器という優位性がある。それらを活用してのゲリラ戦法を行うのだ。大昔からゲリラ戦法に正規軍は対応に苦慮してきた」

沖田は既にヤマト艦長としてのイメージが強まっていたため、兵たちからは「沖田艦長」と呼ばれていた。沖田自身もそれを自認しているため、その呼び方を了承している。

「横須賀でペガサス級のグローリアスが行動している。同地で空母二隻も奪還できたと報告が入った。私らは直ちに彼らと合流する事を命題とする」

「了解です」

こうして、復活した超電磁の兄弟と、かつての名提督にして、宇宙戦艦ヤマト初代艦長『沖田十三』。パルチザンは強力な味方を得、活動を活発化させていくのである。





――奇襲で61式を圧倒して見せる同車両も、人型機動兵器や最新の22式戦車の前にはいささか圧倒され気味である。更にISなどがパルチザンにあるため、暗黒星団帝国はMS師団や22式装備の機甲師団を優先して排除、もしくは武装解除させることに血眼となっていた。だが、予想外の威力に、パルチザンへ合流されてしまう事例が続出。暗黒星団帝国が地球連邦軍の機動兵器に対する対応策に困窮している証拠として、パルチザンの正当性を訴える放送に利用されてしまった。


――暗黒星団帝国 地球占領軍オフィス(連邦空軍士官学校校長室)

「カザン司令、パルチザンの奴らへの対応策を兵たちが要望しております」

「うぅむ。地球連邦軍の例のロボット兵器だろう。厄介なものを使いおるわ……」

その時、ドアをロックする音が響き、入ってもいいかという声が聞こえた。カザンは了承する。

「意見具申に参りました」

「君は?見たところ尉官のようだが?」

「ハッ、技術少尉のアルフォンであります」

その青年、アルフォン少尉はカザンの前に現れた。地球の基準で言えば『イケメン』の部類に入る容姿を持つ男で、新進気鋭の技術将校であった。彼が歴史に名を刻んだのは、その容姿もさることながら、その兵器開発能力と、後に起こる、ある出来事がきっかけであった。

「少尉ということは任官間もないのではないか?まぁよい。聞いてやろう」

「ありがとうございます。市街地戦用戦車の開発を意見具申しに参りました次第です」

「ほう」

「現在、我軍は地球連邦軍の有する数々の人型機動兵器に手を焼いております。そこで思い切ってダウンサイジングを行い、市街戦に最適なサイズを持つ戦車の開発を行ってはどうでしょう」

――この時にアルフォンが掲示した開発プランは地球平定に手間取るカザンには魅力的であった。政府上層部からの不況を買いたくない彼は、新米士官にも寛容なところを示さんと、このプランを採用した。これは暗黒星団帝国地球占領軍にとって福音の一つとなり得る兵器であり、後日に大量生産指令が下されたという。



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