ドラえもん のび太とスーパーロボット軍団 第二部


――ムーンクライシス事変とは、後の世の記録での『ネオ・ジオンが最後に引き起こした軍事行動』であり、デザリアム戦役と同時期に起こった第三次ネオ・ジオン戦争の一環の戦いである。時間軸はダイ・アナザー・デイの後にあたり、ラプラスの箱にまつわるネオ・ジオン内部の対立とも関係している。その時間軸では、転生したプリキュア達の力は元の次元での『プリズムフラワー』に紐付けられていたものとは別の力が根源になっている事が判明していた。その力こそがアテナの加護も絡むセブンセンシズである。つまり、生前の限界を超えられたのは、本質的な存在としては、本来のプリキュアよりも聖闘士に近くなったために起こったパワーアップなのだ。デザリアム戦役が始まってしばらくした頃、月には影響があまり生じていないため、フォン・ブラウン駐留の地球連邦軍の部隊で研修中だったのぞみ、りん、ラブ、響は動員がかけられ、原隊復帰指令を受け、地球に戻ることになった。その一週間前に、のぞみの生前での誕生日がやってきたため、りんは買い物ついでに、そのプレゼントに入れる便箋を買っており、手紙を書き終わり、フォン・ブラウン滞在中の住居になっているマンションに帰ろうとしたその時だった。爆発と閃光が彼女を包む。彼女はとっさにメタモルフォーゼを敢行し……――




――りんはフォン・ブラウン市街地でも有数に大きいデパートを標的にした爆破テロに巻き込まれたのだ。それを最初に知ったのは、北条響と調アコこと、アストルフォである。響はアコに確認を取らせ、病院近くにいた桃園ラブに真偽を確かめさせ、それからのぞみへ連絡を入れたのである。



「のぞみか?いいか、落ち着いてよく聞け。……りんが爆破テロに巻き込まれた」

「……そ、そんな!?うそ、嘘だよね、響!?」

「アコに確かめてもらったが、病院に担ぎ込まれた。ラブが今、病室で付き添ってる。だけど、酷な結果になったとしか言えない…。とにかく、病院に来てくれ。医者から聞いたほうが早い」

のぞみと響(北条響)は素体が同年齢だった事、現時点の立場が『同じ』ことから意気投合し、この時点では、お互いに呼び捨てする仲であった。電話の内容が内容であるため、勤務先での軍服姿のままで病院に駆けつけたのだが……。

「アコちゃん、どういう事!?りんちゃんに何があったの!?」

「りんは……爆発のショックで記憶喪失になったんだ。医者の言うところによれば、タイムマシンで傷は治ったんだけど……」

「治ったんだけど…って!?」

「ボク達のことや、君のことはもちろん、自分がプリキュアだって事も忘れてるんだ。記憶喪失だよ」

アストルフォはこの時は素の姿だが、キュアミューズになれるため、『彼女』(今回はロボットガールズのVちゃんが素体なので、本当に女性枠である)はのぞみからは『調辺アコ』と同一と見なされている。実際にアストルフォから調辺アコに転生した後で、アストルフォに戻っているので、間違いではない。

「嘘……でしょ…?」

「ラブが病室にいるから、話を聞いてきな。医者の診察が終わる頃さ」

病室に駆け込むと、集中治療室から出て間もないのか、生気のない虚ろな瞳のりん、医師から話を聞き、顔色を失っているラブと響の姿があった。のぞみも理由を言って、話に加わる。医師から知らされた『解離性健忘症』。つまり、りんは爆発のショックで記憶喪失になってしまったのである。ショックのあまり、のぞみはその場で崩れ落ちてしまう。りんをこんな状態にしたのが、ネオ・ジオンと手を組む『ヌーベル・エゥーゴ』というテロ組織である事を知らされると、怒りが頂点に達したのか、病室の外に出た途端に語気を荒げるという珍しい姿を見せる。元々、自分の大切な誰かが傷つけられると、昂ぶる感情を抑えられなくなる気質だったため、りんの記憶喪失はその一面を久しぶりに表出させた出来事であった。


「のぞみちゃん、落ち着いて!ここで荒れてもどうにかなるわけじゃないんだよ!」

「でも、ラブちゃん!野郎共の、野郎共のせいで!りんちゃんがぁ!」

錦との人格融合の影響か、『野郎』という荒い言葉も普通に使うようになったのぞみ。表情も完全に憤怒の炎が燃えているもので、ラブと響も見たことがないほどの激情だった。普段が優しく、温厚な者ほど、本気で怒ると手がつけられなくなるというが、のぞみの場合は普段が能天気なほどに明るい反動か、激昂すると前後の見境がなくなるらしい。怒りに燃える影響か、小宇宙の蒼い炎のようなオーラを滾らせている。ラブが抑えているが、憤怒の炎を滾らせているのぞみを抑えるのに必死だ。

「この馬鹿!ちった頭冷やせっての!」

響(北条響)がビンタして、のぞみを落ち着かせる。りんがいない時のツッコミ役は彼女だ。

「ったく。地上の様子を見に行って、戻ったらこんなことになりやがった。ヌーベル・エゥーゴめ。デザリアムが侵攻してるってのに、内輪もめしてる場合じゃねーぞ!」

「連中はなんで急にこんなテロを?」

「ネオ・ジオンが緩やかに解体に向かい始めたから、反連邦のテロリスト連中が焦り出したんだろうよ。連邦がスペースノイドへの融和策を取れば、ジオンに集まってる不満のはけ口は意味が無くなる。記録によれば、一年戦争ン時のコロニー落としは『自分達の大地』を弾道ミサイル代わりにぶつける作戦だから、他のサイドの支持を失ったけど、今までやってこれたのは、地球に首都があるままだったからって、不満があったからだしな」


ラブに響が解説する。ジオンに集まる支持の多くは地球至上主義への反発に根ざしている。その施策が方向転換されれば、ジオンは支持層の離反が起きる。ガンダムファイトで時限付きの自治権を与える施策がすっかり根付いた時代にあっては、ジオニズムは支持を失いつつあるのだ。

「ガンダムファイトやる時代に、ジオニズムもあったもんじゃないぜ」

「競技用のガンダムでコロニーの自治権の争いかぁ…。昔の五輪みたいな位置付けなの?」

「ある意味じゃ跡継ぎ扱いだよ。歴史は割に新しいんだけど、コロニーの代理戦争とスポーツの両方の面があるから、金かかってんだ」

――響の言う通り、コロニー同士の統制と独立の気分を両立させるため、ある時のシャッフル同盟が立案し、MSが実用化され、一年戦争も終わった直後の戦後の機運に乗った、ある科学者の提唱でガンダムファイトは始まり、数年ごとに行われてきた。このシステムは後に、『限定戦争』へと発展するが、その初期段階といえる形態がガンダムファイトである。東方不敗マスターアジアも、病気などで老いる前の若き日は初期の大会で『シュウジ・クロス』として、ネオジャパン代表で出場経験がある。その弟子のドモン・カッシュは東方不敗が若いうちには成し遂げられなかった『ネオジャパンの優勝』を成し遂げ、今では修行に出かけたり、圭子達の格闘の師匠である。また、東方不敗以後、ネオジャパンは伝統的に強豪であり、かのウルベ・イシカワも人間であった頃はガンダムファイターであり、東方不敗以外には負け無しの天才だった事で名が残っている。そんな解説をしていると、どこでもドアがパッと現れて開き、圭子がやってきた。

「病院でなーに騒いでやがる、ガキ共」

「あ、ケイ先輩!」

「どこでもドアで迎えに来たんだが、予定変更だ。ネオ・ジオンが動いた」

「こんな時に!?」

「レウルーラとムサカ、サダラーン級とかがネオ・ジオンの領域のコロニーから出港した。あたしは広報の仕事もあるから、ベクトラに出向する」

「ベクトラって、衛星軌道にいる大型宇宙空母?」

「そうだ。デザリアムとの戦争中だから、ロンド・ベルと、ベクトラとその護衛艦隊だけが動ける戦力だ。第三次ネオ・ジオン戦争が始まったわけだ」

圭子が開口一番で言ったネオ・ジオンの軍事行動。今回の歴史では、デザリアム戦役と第三次ネオ・ジオン戦争がバッティングしてしまったのだ。それに従い、デザリアム戦役の予定が狂ってしまったと愚痴る。更に、ユニコーンガンダム関連の出来事も起こったというので、ラプラス戦争と前史で呼ばれた紛争が今回のムーンクライシス事変と一体の戦争として扱われてしまう事を意味する。りんがテロを身を挺して最小限に食い止めたその時まさに、あるスペースコロニーでユニコーンガンダムが目覚めていたとも告げる。

「りんの事は残念だけどよ、思い出が消えるわけじゃねぇんだ。膨れてると、お前のダンナに顔向けできないぜ?」

「こ、ココはダンナじゃ…いや、その、あの…」

「フフ、お前も二年後の伯爵みたいにしてやろうか?」

「そーいう趣味はないですってば〜!ラブちゃんも離してよ〜!」

「あ、ゴメン。忘れてた」

ラブはのぞみを羽交い締めにしていたのをやっと思い出して、のぞみを開放する。圭子は今回の歴史では『テクニシャン』であり、本人曰く、『戻れなくなるぞ?』と冗談めかして公言している。また、マルセイユもGへの覚醒で、美遊の保護者『ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト』を定期的に演ずるようになり、ブリタニアの爵位を得ている。そのため、クロ(ルッキーニ)と併せて、日本の自衛官の萌えの宝庫と親しまれている。マルセイユの素が素であるので、優雅さが元ネタより7割引きであり、遠坂凛の人格に覚醒めた八神はやてとは、性格やノリの近さで、いい勝負である。

「お遊びはここまでだ。ベクトラが月に向かった。港にベクトラのコスモパルサーの救難機があるから、とりあえず向かうぞ」

「待ってください!これだけは言わせてください」

「おい、外に行ってからにしろ。病院に来てる患者に迷惑かかるだろ」

「はいっ」

時刻は夜の7時を回り、病院の周りに人通りはなくなっている。外に出て、エレカに乗った段階で、圭子は許可を出した。

『思い出は無くならない!必ず思い出すからその時まで私は戦う!仲間を傷付けられた借りは必ず返す!!けってーい!!』

のぞみなりの決意表明であった。変身前であるので、普段の能天気さも入っているが、キュアドリームとしての凛々しさが六割、のぞみとしての明るさが三割の割合での決意表明であった。

「相変わらずだね、のぞみちゃん」

「これ言わないと、私じゃないもんー!まあ、時々、俺って言うことあるけど〜…」

「カットバックドロップターンでもしたらどうだ、お前?」

「せんぱーい!……だけど、小遣い稼ぎにサーフィン大会に出てみるのもいいかも」

「この戦が一段落ついたらな。りんの回復を願ってやれ。それにディケイドに調べさせたが、りんは記憶を無くす前、2018年の『HUGっと!プリキュア』を知らなかった。つまり、出身世界がお前と違うってことになる。お前も感応の時に見ただろ?」

「はい。はなちゃんとはぐたんの事を、りんちゃんは知らなかった。それに私自身の顛末も『違ってた』…」

「野乃はなも世界線によっては、未来で何らかの要因でバッドエンドを迎えた世界もあるように、お前たちにも、バッドエンドを迎えた世界がどこかにある。マジンガーZEROは、その僅かにある世界の因果を紡いで、魔法つかいプリキュアの世界を滅ぼした。奴が干渉出来るのは基本的に派生世界で、基本世界じゃない。だが、罪もないマホウ界とナシマホウ界を『ファイナルブレストノヴァ』で、カスも残らないほどに消し去ったのには変わりはねぇ。だから、綾香とあたしは『それ』に抗うための特訓をテメーらに課してきた。意味はわかるな、ガキ共」

「はい、ケイさん。あたし達に先頭に立てって事ですよね」

「そうだ、ラブ。お前とのぞみ、響。お前らはリーダー格として矢面に立つ。それがお前らに与えられた役目だ。綾香ははーちゃんにも声をかけた。戦車道世界からの増援にもプリキュアは紛れ込んでる。ダイ・アナザー・デイん時にみゆきに連絡が入ったが、春日野うららがパルチザンと合流してるぜ」

「うららが!?」

「あとは相田マナ、蒼乃美希、黄瀬やよい、緑川なお、四葉ありすの五人が合流してくれた。これで、プリキュア・プロジェクトは第三段階に駒を進める事ができる」

「マナちゃんたちが来てくれたんだ!美希たんも!やった〜!」

「うららが来てくれたなんて……!もう……、会えないって思ってたのに……!」

「良かったやん〜!ま、ボクもエレンや奏が来たら、なんて言おうか困ってるけどさ」

「ハ、お前、その姿でシラを通そうって腹だろーが。」

「まーね♪」

呆れた声の響と能天気な調辺アコこと、アストルフォ。のぞみはりんという幼馴染を理不尽に奪われたも同然の絶望からの春日野うららの来訪という明るいニュースに声を震わせ、ラブは幼馴染の蒼乃美希の登場に歓喜する。のぞみはりんの記憶喪失で、心に傷を負ったのは間違いなく、ラブと響、それと合流したうららと美希は、激しくショックを受けているのぞみの心のケアに心を砕いていくことになる。





――戦車道世界とIS世界から来訪した形の七人のプリキュア。戦車道世界の場合、表向きは各学校からの選抜留学だが、実質はプリキュアとして従軍させるための方便である。それぞれ表向きは戦車道の見識を広げるための留学だが、プラウダ高校が現地で手引きして実現した。カチューシャが黄瀬やよいの転生体、聖グロリアーナ女学院のダージリンが蒼乃美希の転生体であった幸運もあり、ノンナが全ての手引きを行い、そこからの人脈で実現にこぎつけた。西住みほ/四葉ありすは完全に巻き込まれ型だったが、プリキュアとしての使命を優先させ、一同に加わった。また、『緑川なお』のみはIS世界からの来訪で、素体がラウラ・ボーデヴィッヒだったため、鈴との交代という形で呼集に応じてくれた。また、前世が妖精だったミルキィローズは大洗女子学園の『カエサル』に転生しており、驚かせたいので、うららに頼んで、自分の存在は伏せてもらっていた。のぞみを驚かせたいらしい。彼女達は地上で第二陣のプリキュアとして奮戦している。地上でデザリアム帝国相手に抵抗戦を繰り広げるパルチザン。その新たな戦力として。当時、暗黒星団帝国は電撃作戦で地球の制圧を成功させたが、政治中枢の制圧に失敗したり、首都は既に月面に移転済みであるなど、思い込みと事前調査の情報の古さで大チョンボをやらかしていた。これがパルチザンの抵抗の大規模化に繋がっており、地球の占領維持にかなりの戦力を張り付かせる必要があるという状況だった。ヤマトと宇宙艦隊はその隙を見事に突いた格好だ。更にその隙をネオ・ジオンとヌーベルエゥーゴは突いたわけで、地球連邦軍は暗黒星団帝国への抵抗戦と、ネオ・ジオンとの最終決戦を同時に遂行せねばならなくなったのである。――


――スウィートウォーター――

(おそらく、この戦いがジオン最後の戦になる。アムロと合法的に戦うには、ヌーベルエゥーゴに利用されようと、ジオン共和国の自治権返上までに間に合わす必要があった。次元震が起こり始め、何が起こるか分からん以上、今、行動を起こす必要があった。共和国がナンセンスな行為を働いていたのは気に入らんが…)

スウィートウォーターの行政府で、シャア・アズナブルは自分の不在時に、共和国が自分を模した強化人間にネオ・ジオンを統率させようと目論んだ事を『ナンセンス』と断じつつ、『ジオン共和国の消滅』までに合法的にアムロ・レイと一戦を交えたいとする心情を吐露する。ジオン共和国は地球連邦と穏健派の交渉で『近い内の自治権返上』が内々に決まったため、ネオ・ジオンの存在意義が失われる前に、なんとしても軍事行動を起こす事が周囲から求められた。ジオンの勢力版図にいるスペースノイドは日系も多いが、反統合同盟構成諸国の出身、先祖がイスラム教徒だった故に西洋諸国から常に弾圧を受けてきた人々も多い。また、支配層にドイツ系の人々も多いため、全体的にドイツかぶれながら、日系の文化もかなり色濃く残るのがジオンの特徴であり、ネオ・ジオンの頃になっても、概ね変化はない。ジオンの旗のもとで23世紀を過ごしたい者はサイド1やサイド3には、かなり多く、シャアとしても無視できるものではない。

(Mr.東郷が始末したという、共和国の作った私に似せた強化人間。おそらく、まだ予備の個体があるだろう。共和国の極右勢力は私の存在を『ネオ・ジオンを存続させるための器』として見ている。そのような事は私は望んでいないのだがな。周囲に求められたシャア・アズナブルの理想像は21世紀頃のアニメで言うところの『フル・フロンタル』に違いあるまい。だが、彼は私の空似であっても、私そのものではない。もし、何らかの要因で現れれば、私とアムロの手で決着をつけなくてはならんだろう…。ララア、私を導いてくれ…)

シャア・アズナブル(キャスバル・レム・ダイクン)の行動原理は意外と個人的かつ、青二才的なもので、アムロに『器量の小さい』と罵倒されている。だが、その青さこそが幼い頃に母親のアストライアを理不尽に奪われたキャスバル・レム・ダイクン個人の人間性とも取れる。また、未だにララアの事が忘れられないのも純粋さ故で、彼の本心からの言葉『ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!そのララァを殺したお前に言えた事か!』、『結局、遅かれ早かれこんな悲しみだけが広がって、地球を押しつぶすのだ。ならば人類は、自分の手で自分を裁いて、自然に対し、地球に対して、贖罪しなければならん!アムロ、なんでこれがわからん…!』は有名だ。それを経た後のシャアの行動原理はアムロとの最終決戦。これだけで、ネオ・ジオンの再興は表向き、周囲へのポーズ、外向きに取り繕っている大義名分にすぎない。それ故に、周囲が自分に求める理想像を具現化したような『フル・フロンタル』の存在を警戒し、その出現を危惧しているのだろう。

『脆弱は美徳ではないのだ、アムロ!大衆を見ろ、官僚を見ろ! 連中は狂うか! 何が起こっても平然として、生き長らえている! 才能があることで脆弱なのは、才能ある者の美徳だと思っている連中は大衆に呑み込まれて行く。それが現実だ!』

シャアが反乱を起こす要因の一つがカミーユ・ビダンの悲劇である。カミーユ・ビダンの精神崩壊がシャアの心に暗い影を落とし、アムロと袂を分かつ原因になってしまった。ブライトは『奴もジュドーと出会っていれば…』と惜しんでいるように、カミーユが崩壊しても、直後にジュドーと出会っていれば、反乱という選択肢を取らなかっただろうとしている。シャアは父性が求められる立ち位置なのに、彼自身は自分を癒す母性をひたすら求めるという、なんとも言えないジレンマを抱えている。それ故に、強いバイタリティを誇ったジュドーと出会ってさえいれば…と惜しまれているのだ。レウルーラが出港する数時間前、グラスに注いだブランデーを飲み干しつつ、スウィートウォーターの夜景を見ながら、アムロ、カミーユといずれ戦う宿命を悟り、自分の『ダイクンの血筋』故に起こっていく出来事を嘆く素振りを見せる。


(あの時、地球を汚染する怖さを償いたい気持ちもあった。それをアムロ、お前の力に賭けたのだ。平和よりも、理想よりも、ララア。君だけが真実を掴んでいたのかもしれん…)

シャアは今は亡きララア・スンを想う気持ちを捨てられず、そう独白する。アムロの力に一縷の望みを賭けていたなどの青さもひっくるめての彼の人間性である。

(ジオンの葬送役をミネバ・ラオ・ザビにやらせるにしろ、彼女は若すぎるし、ザビ家最後の生き残りという箔があるにしろ、荷が重い。ダイクンの子である私がやらなくてはならん……。それがせめての父上への手向けだろう)

彼の実父であったジオン・ダイクンはプロパガンダで聖人君子のように扱われているが、実際はかなり下衆で、『狂的な自己愛を露わにしたカリスマ指導者』ともされる。ただし、ニュータイプ論だけは本質を見抜いていた。それは地球連邦の憲章の理想にも表れている。『地球圏外の生物学的な緊急事態に備え、地球連邦は研究と準備を拡充するものとする。そして将来、宇宙に適応した新人類の発生が認められた場合にはその者たちを優先的に連邦政府運営に参画させることとする』。これが封印されていた地球連邦憲章の第15条。ニュータイプによるオールドタイプの粛清を恐れた当時の人間等によって抹消された一文。ジオン・ダイクンの思想が恐れられた理由だが、今や、そういう時代ではない。役目を終えつつある『ジオニズム』。その葬送をダイクンの実子であるキャスバル・レム・ダイクンがやろうとするのは、運命の皮肉であった。






――歴代のプリキュアも、仮面ライダー達やスーパー戦隊と同じように、次第に集結していく。地球という星を守るために。デザリアムに続く者はこの後、更に未来の時代のイルミダスまで現れず、そのイルミダスもゲッターエンペラーの力で滅ぼされていくことになる。イルミダスは地球人を地球に封じ込めるつもりだったが、その政策が仇となり、覚醒めたゲッターエンペラーによって蹂躙され、本星を滅ぼされる。ゲッターエンペラーが覚醒め、イルミダスが駆逐された地球で起こったのは、イルミダスに媚を売っていた者達への吊し上げと虐殺であり、『大地球』へ逃れていた徹底抗戦派が実権を握る流れが醸成され、イルミダスはゲッターエンペラーによって、自分達が逆に地獄へ落とされる羽目となった。それを見ていた『マゾーン』は政府からの地球の無気力化を目指すことになるが、アースフリートの抵抗を受けている。それが30世紀の状況だ。その間に、外敵に地球そのものが制圧されたケースは23世紀初頭のデザリアム、その数百年後のイルミダスしかなし得ていない。つまり、1000年に一、二回あるかないかの事態が23世紀と27世紀以降に起こった。当時の地球圏は戦乱期の真っただ中である幸運があったが、数百年後の不幸は人類が停滞期に入った頃に起こったのが原因だろう。イルミダスは結果としては、キャプテンハーロック、ゲッターエンペラー、クイーン・エメラルダス、宇宙戦艦ヤマトの末裔『宇宙戦艦Gヤマト』、『超時空戦艦まほろば』、『海底軍艦ラ號』らの反攻によって、種族そのものの命運を絶たれてしまう。また、地球の勢力図はイルミダスの版図が縮まるにつれ、27世紀までのものに回帰し始める。ゲッターエンペラーが活動を開始した頃にはエデンとの連絡が回復し、23世紀時点の勢力に戻る。地球の版図は次第に回復し、ゲッターエンペラーの強大さを得た地球はイルミダスを瞬く間に駆逐し、25世紀当時の勢力を回復する。そんな歴史の大河の第一の急流が23世紀の戦乱期なのだ。ハーロックはイルミダスに媚びる人間の卑しさを嫌悪していたため、30世紀の技術を23世紀の地球へ流している。実際、ハーロックが23世紀へ技術を流すのを決心するまでに、旧徹底抗戦派による報復的な処罰や民衆によるハト派への吊し上げと虐殺が起こっており、それを過去の段階で流れを変えて防止するのが、彼の意図である。このような『未来を変えようとする動き』をジャンヌ・ダルクが止めなかったのは、自分もまた、転生で幸せを掴んでいたり、平行世界の真理へたどり着いたからである。また、それぞれ使命を遣わされて転生してくる歴代のプリキュア達と英霊の存在を鑑みての決断だった。マジンガーZEROに蹂躙されていく人々の願いが求める存在の転生と復活。それこそが人々の切なる願い、オリンポス十二神が長『Z神』の意思であったからだ。平成と昭和の仮面ライダー達がライダー大戦へ突き進む情勢であったのも併せ、23世紀は銀河大航海時代でありつつ、戦乱期なのだ――





――出港から数時間後、レウルーラに座乗するシャアのもとへ、一枚の写真が届けられる。それはヌーベルエゥーゴから『要注意人物』とされた、歴代のプリキュアの中で中心人物とされる者達である。いずれも10代半ばほどの少女である。シャアの立場からすれば、意に介さないはずの少女たち。その少女たちが自分とアムロの対決に水を差す可能性も考えられる。

「ふむ……。この少女たちをマークする必要があるようだな」

「何故です、大佐」

「彼女らはプリキュアだ。我々とロンド・ベルが雌雄を決する時に水をさされかねん。タウ・リンに恩を売る必要はあるからな。プリキュアに対抗するには『常識を超える』必要がある」

シャアはティターンズがプリキュアに対抗するため、ダイ・アナザー・デイでガンダムファイター崩れを大量に投入した事を知っている。そうけしかけたのは彼だからだ。シャアはティターンズ残党を取り込む過程で、古代中国の格闘術『華山流』、『泰山流』の存在を知り、ティターンズがその使い手を引き入れた記録があるのを確認していた。ダイ・アナザー・デイの際には『華山獄握爪』、『華山鋼鎧呼法』がティターンズの幹部により使われ、プリキュアを大いに苦戦させたという。また、『天狼凍牙拳』も確認され、かの神拳の使い手がいない場合、それらはプリキュアには脅威そのものであったという。どこかにはかの神拳の伝承者や南斗と呼ばれし108の流派の伝承者もいるはずと黒江は言う。また、『あの世界の雑魚い拳法だぞ、あれ』というが、プリキュア達の当時の実力では攻略が至難の業であった。特に、華山鋼鎧呼法は身体を鋼としてしまうため、スターライトフルーレの刃を通さず、スターライトソリューション、ラブサンシャイン・フレッシュの同時攻撃にも堪えなかった。その体を打ち破ったのが流竜馬であり、彼が如何に凄まじいのかの表れでもある。

「わかりました、大佐」

こうして、のぞみ、響、ラブの三人はネオ・ジオンからマークされることになり、否応なしにムーンクライシス事変に深く関わる流れが出来上がる。その流れを悟ったはーちゃんは自分も戦う決意を固め、ドラえもんにせがんで、戦線に合流する。こうして、体よく夏木りんの記憶をぶっ飛ばしたテロ組織『ヌーベルエゥーゴ』だったが、そのことで、プリキュアの介入を招いてしまう。のぞみの激怒ぶりは相当なものであり、周囲を戸惑わせるほどであったという――



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