外伝その140『鋼鉄のDフォース3』


――ダイ・アナザー・デイ作戦はいよいよ鋼鉄の艨艟達が咆哮を本格的に発する戦況へ移行した。モンタナとラ號がラ級戦艦同士の戦を有視界戦でおっ始め、海でも連合艦隊とティターンズの援助に乗り出したバダン艦隊が増援で出現。規模はH42級が2隻と護衛艦が数隻と小規模であるが、モンタナ級よりも全体的に重装甲であり、油断ならぬ相手である。

「戦艦が空中で戦ってるのかよ!?しかも戦闘機みてーな動きで!?」

「そりゃ、両方が宇宙戦艦なんだよ?あれ。三次元空間戦闘になるのは当然さ」

アストルフォがクリスに言う。ラ號とモンタナは空中で砲撃戦を展開する。それも音速で。連邦軍もバダン/ティターンズ連合も、ラ級の事はガンシップ的運用を行うことが運用状況なのだが、モンタナはラ號に対抗するため、米軍が日本の降伏までの残された時間で急速に設計したラ級であるので、欠陥が残っている。それは艦底の装甲が薄いのだ。モンタナの体躯にはふさわしくないほど。ラ號は大和型戦艦の構造を更に強化した構造なので、魚雷や機雷対策で底部の構造が三重構造になっていた。空中で戦う場合は、当時最高の防御を誇った大和型戦艦の強化で生み出されたラ號の方が有利なのである。

「うわっ!すごい爆炎ですね、アストルフォさん」

「46cm砲を12門撃ってるからね。近いうちに51cm砲に変えるっていうけど、壮観だね、こりゃ」

響とアストルフォが会話を交わす。ラ號はこの時点でも、46cmショックカノンを12門搭載し、准同型艦扱いの宇宙戦艦ヤマトを上回る砲撃能力を誇るため、投射重量もヤマト(大和)を上回り、アンドロメダ級並の投射重量となる。ヴァイタル・パートの防御力では大和型戦艦とタメを張るモンタナといえど、それらが数発命中すれば、揺らぐ。

「これが古来の戦艦同士の戦いと言うの?何だがおかしい気持ちになるわ……」

「仕方がない。君達の時代には、アイオワ級も全艦が退役して久しい。俺達にとっては、宇宙戦艦が当たり前だから、そうでもないが」

RXもマリアのコメントに反応する。仕方がないことだが、戦艦同士の砲撃戦は21世紀の人間にとっては『歴史上の光景』でしかないのだ。

「TVで『大艦巨砲主義が飛行機に負けた…』というのは良く見るけど、あんな化物が空を飛ぶなんて反則デス!!」

「そういう目的で作られたんだぜ?あの戦艦共は。特に、あの戦艦大和の姉妹は『日本の起死回生』のために全てを注ぎ込んで生み出されて、その後に宇宙戦艦ヤマトと同じ規格に大改造されて生まれ変わった、『超戦艦』だ。同じ艦級として作られたとは言え、戦中のモノを持ち出したところで、ラ號は撃沈されねーよ」

ストロンガーもゾル大佐と戦いつつ、切歌に返す。ラ號はもはや戦争中のラ級でもない。宇宙戦艦ヤマトと同じ力を持つ波動エンジン搭載の恒星間航行艦、改ラ級なのだ。

「そうだ。波動機関は宇宙そのものからエネルギーを得ている、使い方によっては宇宙を破滅させられる力だからな!ヤンキーの連中は我々の言ったスペックを鵜呑みにしているが、アレでは真価は発揮できんだろうさ」

ゾル大佐/黄金狼男も、モンタナの改造はあくまで『急ごしらえ』で、船体構造も含めると、実験艦にすぎないという観点から、撃沈は織り込み済みらしいぶっちゃけぶりを見せた。その辺りは第三者として冷静な批評を見せた。

「悪の組織の幹部なのに、なんデス、その開き直り方」

「俺は一度、仮面ライダー二号に敗れている。つまり一度死んでおるのでな」

ゾル大佐は一文字隼人に敗れ去っている事を踏まえ、その辺りは開き直っていた。改造人間はたとえ倒されても、遺体の機械部の損傷を直せば蘇生するように出来ている。俗に言う再生怪人の内、生前の記憶持ちはこの場合である。バダンは魔方陣での蘇生も可能だが、機械的手法での再生もコスト削減の問題で行う。ゾル大佐はその方法で復活したのだ。ゾル大佐は幹部であったので、生前の全能力を持つが、一般怪人は数合わせの再生である事が常態であり、別個体を造られる場合も多い。ライダーが再生怪人を一撃で倒せるのは、再生怪人は再生前より能力が落ちる個体になっているか、ライダーが強くなったなどの要因による。ライダーの経験値が倒した怪人の弱点を確実に攻撃出来る動きになることも大きいだろう。ただし、それは一般怪人の場合で、幹部級の蘇生は念入りに行われるため、強敵のままであることも多い。アポロガイストがそれだ。

「余裕だな、ゾル大佐」

「フッ、伊達に一文字隼人と死闘を繰り広げてはおらんのでな」

ゾル大佐はドイツ軍在籍時代はその残虐さで、かのアウシュビッツの管理人に名を連ねた経歴を持ち、ユダヤ人への非人道的実験に死神博士共々、深く関与していた。ネオショッカーのゼネラルモンスターはゾル大佐の指揮下にあった下級将校の一人で、デストロンのドクトルGは軍の同僚であった。このように、過去の組織の幹部はナチス・ドイツの将校が多い。これまでの組織の幹部で一番高齢なのは、ゲルショッカーを率いていたブラック将軍で、改造時にはかなりのヨボヨボだった。何せ日露戦争当時にもう将軍であった世代なので、山本五十六(当時、少尉候補生)よりもかなり上、下手すれば東郷平八郎と同世代だ。そのため、本郷猛や一文字隼人を小僧と呼べる年齢であるのは想像に難くない。空中でラ號とモンタナ、地上でライダーストロンガーと黄金狼男の死闘が展開され、拳のぶつかり合いでいちいち爆発が起きる。高速な格闘により、空気の断熱圧縮と解放により、爆音が轟くからだ。そして、ストロンガーからの通報により、ストロンガーとRX以外の仮面ライダー達が到着し始める。

「ん!この独特のエンジン音は!!」

バイクのエンジン音がした方角に調(天秤黄金聖衣装着状態)が振り返ると、歴代の仮面ライダー達がマシンの爆音を轟かせながら、続々と現れた。最初に現れたのは、ヘルダイバーを駆る仮面ライダーZX/村雨良だった。群がる怪人をヘルダイバーのレーザーバルカンで蹴散らしつつ、見事なバイクテクニックで颯爽と到着した。

「先輩!」

「村雨、やっと来やがったか。遅いぞ」

「すみません、城さん。再生怪人を片付けるのに手間取りまして」

「ほう。ようやく現れたか、ムラサメ。いや、今はこう呼ぶべきかね、仮面ライダーZX」

「そうだ。俺は10号、仮面ライダーゼクロス!」

ファイティングポーズを決めるZX。元は大首領の器として造られしボディを持つ『パーフェクトサイボーグ』。脳以外に村雨良としての生体部分がない最新最強テクノロジーで構築される機械式サイボーグの仮面ライダーである。

「だが、今更、貴様が来たところで、この軍団相手にはどうにもなるまい!」

『そいつはどうかな?』

その声と共に残りの仮面ライダー達がマシンの爆音を轟かせながら登場する。ライダーマンマシーン、クルーザー、ジャングラー、スカイターボ、ブルーバージョン、新サイクロン、改造サイクロン、そして、ハリケーンの勇姿が爆煙と共に現れ、それを率いているのは仮面ライダーV3=風見志郎だ。彼がライダー達の中央に位置し、この戦いでの立ち位置を明示する。一号は新サイクロンがオーバーホール中なので、保管してあった改造サイクロンを使用している。

「き、貴様ら!いったいどうやってここに!」

「生憎だったな、ゾル大佐。俺たち仮面ライダーはリアルタイムで脳波通信が可能なのを忘れたか!」

「ぬぬぬ……」

「俺たち仮面ライダーが揃ったからには、貴様の思い通りにはならん!」

「世界に邪の栄えた試しはないという事、貴様とて知らんはずはなかろう、ゾル!」

レジェンドと言えるトリプルライダーが啖呵を切る。未来世界で、『伝説』と言える昭和仮面ライダー、その中でもレジェンド級の三人が揃い踏みという光景はヒーローに憧れていれば、誰でも感涙でむせび泣くような光景である。黒江の感情をコピーした形となった調は、マリアたちでさえも見たことがないほどに『ヒーローに純粋に憧れている子供』の目をしていた。救いの神を見るように、安堵に満ち溢れつつも、心強い味方を得たような。黒江がライダーに対して抱いている憧れ、信じる心、感情を、調はわかりやすい形で表していると言える。黒江が成り代わった事で、調に生じた変化であった。黒江はヒーロー大好きっ子である事を公言していたが、まさかそれが調当人まで、ここまで濃厚に影響を受けたとは考えていなかったのか、唖然とする装者たち。そもそもは『偽善』を激しく嫌っていたはずの調が、こうもわかりやすく、『正義のヒーロー』している仮面ライダー達ヘは憧れと安堵が入り混じった笑顔を見せたという事自体、マリアと切歌、調当人に痛罵された経験がある響には驚きなのだ。

「ここからは俺たちも共に戦おう。そのために俺たちは来た」

一号がいう。重みのある言葉であった。神格化した黒江が、自分もこうありたいと願う『憧れの象徴』として信仰し、その影響を濃密に受けた調も自然と仮面ライダー達などのヒーロー達の事を信ずるようになり、このダイ・アナザー・デイ作戦では『黒江の妹分』と仮面ライダー達には認識されている。

「たとえ偽善と言われようが、自分の信じる正義を貫く、ヒーローと呼ぶ者も居るが力で正義を押し通す悪党である事も自覚しているさ。俺も、かつては奴らに加担していた身だからな。洗脳されていたとは言え、多くの人々を死に追いやった罪を償う。そのために俺はこの体で生きているようなものだからな」

ZXが自嘲気味に言う。一時、バダンの幹部候補生として悪事を働いた時期があるZXならばの言葉である。響は彼らの背中にとてつもなく大きい何かを感じ取り、圧倒される。揃い踏みの11人の仮面ライダー(イレブンライダー)。その勇姿は調にとっては安心と『人を信じる事の大切さ』を再認識させる。その勇姿にも関わず、ゾル大佐は余裕を崩さない。

「ハハハ!!如何に貴様らが11人揃い踏みしようとも、この大軍勢を相手に戦い抜けるかな!?」

ゾル大佐の合図で、それまで戦っていたクライシスの再生怪人、ショッカー、ゲルショッカーに加え、更にデストロンとGOD神話怪人、悪人軍団の全てが姿を見せる。途方のない怪人の群れである。更に各組織の戦闘員があたりを埋め尽くす勢いで現れる。仮面ライダーが11人と、この軍勢とではあまりに数の差があるのだが。

「俺たちが昔のままと思うな!」

「それに、ヒーローは俺達以外にもいるという事を忘れたか!」

「何!?」

「その通り!!」

その声と共に、ビッグワンが颯爽登場する。ビッグワンは更に勇士達を引き連れていた。歴代のレッド達で構成された『オールレッド戦隊』を。

『秘密戦隊ゴレンジャー、アカレンジャー!!』

『太陽戦隊サンバルカン、バルイーグル!!』

『大戦隊ゴーグルファイブ、ゴーグルレッド!!』

『科学戦隊ダイナマン、ダイナレッド!!』

『電撃戦隊チェンジマン、チェンジドラゴン!』

『光戦隊マスクマン、レッドマスク!!』

『超獣戦隊ライブマン、レッドファルコン!!』

『高速戦隊ターボレンジャー、レッドターボ!!』

歴代でも戦闘力に長けるレッドをビッグワンとアカレンジャーが選抜した『オールレッド戦隊』。ダイナレッドがメンバーにいるせいか、名乗りの際の爆発がやたらとド派手である。これで援軍は終わらない。まだまだ到着する。

『俺達もいるぞ!』

「ぬ!?そうか、貴様らも来ていたのか!」

『そうだ!!……蒸着!!』

『焼結!!』

『結晶!!』

飛来した三色の光の球が怪人軍団に穴を開け、そこから上昇して、建物の屋上で人の形になる。彼らこそ、銀河連邦警察の派遣した最強の援軍。

『宇宙刑事ギャバン!』

『宇宙刑事シャイダー!』

『時空戦士スピルバン!』

時空戦士スピルバンとは、かつては宇宙刑事シャリバンを名乗り、『マドー』を倒した伊賀電その人だった。先祖の星であったイガ星の復興に伴い、その守護となる宇宙刑事としての地位をイガ星出身の次代の若者に託す事にし、自分が見出した銀河連邦警察の若き警察官『日向快』にシャリバンとしてのコードネームとコンバットスーツなどを譲渡したのだが、デスクワークが増えた影響で、肉体年齢が加齢を重ね、壮年期に差し掛かった一条寺烈と違い、電は往時とさほど変わらぬ若い肉体を保っていたこともあり、烈の肝いりで開発していた新型のコンバットスーツ『ハイテククリスタルスーツ』の被験者に選ばれ、バビロスの路線を継承、洗練させた最新鋭超次元戦闘母艦『グランナスカ』を与えられ、特命機動員として、『時空戦士スピルバン』のコードネームを与えられたのだ。従って、人的意味では、三大宇宙刑事揃い踏みであると言える。


――この日本の誇るスーパーヒーローの大盤振る舞い。それに一番喜んだのが調である事を、黒江からのフィードバックで人格に影響が大きく出た事の表れだと、マリアは捉えた。調は黒江が成り代わる前の自分たち、即ち『フィーネ』の名を使って蜂起する前の時点では、アメリカンコミックのヒーローに興味を示さなかったように、正義のヒーローという存在に疑問を抱いていたが、帰還後は一転して、ヒーローに憧れを懐き、その背中を追いかけるような言動や態度を見せる。その要因が黒江にあることを見抜いていた。

『よし、みんな、行くぞ!!』

『おう!!』

11人の仮面ライダー、選抜されたスーパー戦隊のレッド達、そして宇宙刑事達が一斉に怪人軍団に立ち抜かう。その光景は壮観ですらあった。雲霞の如くやってくる怪人と戦闘員相手にそれぞれが入り乱れ、激しい戦闘を繰り広げる。徒手空拳主体の仮面ライダー、剣技主体のスーパー戦隊、双方のハイブリッドである宇宙刑事達。正に戦闘の見本市のような様相だ。

「ニューレッドビュート!!」

アカレンジャーがニューレッドビュートを使い、ショッカー怪人を六体ほど捕縛し、超高圧電流で倒す。アカレンジャーは剣を持っていない。一応、ニューレッドビュートの先端部があらゆる武器に変形するが、基本的には鞭として使用している。元祖レッドは伊達ではなく、スーツの着用時に高圧電流が流れるのに耐えられる頑健な体を持つので、後発の戦隊の多くより身体能力では上を行くのがアカレンジャーだ。

「秘剣・流れ十文字!!」

二代目バルイーグルは初の個人武器が剣であるレッドであるので、後発のレッドの基本形を確立した先駆者でもある。剣技に絞ると、彼が有数に強い事になる。怪人を十文字に斬り裂いてみせるが、この技は黒江もよく真似していた技でもあり、そのオリジンが彼である事を悟るマリア。流れ十文字から繋げるこの技。

「新・飛羽返し!」

太陽をバックに斬り返しを決めるこの新・飛羽返し。黒江も成り代わっている時期に用いていた必殺技である。これは響達の味方についたタイミングで使用し始め、風鳴翼を常にこの技で模擬戦で下していた。黒江曰く、『お前みたいなガキンチョ相手に本気は出さねぇよ』とのことである。黒江は飛羽返しの動きは真似できるが、極みには至っていないので、実戦ではあまり用いていない。マリアは模擬戦で黒江が翼を倒す際の動きは、バルイーグルを真似たものであるのを悟り、妙に安心する。


「トウ!!」

ゴーグルレッドは剣技も強いが、ロープを用いる事が多いので、デスギラー将軍との一騎打ちなどの場面でゴーグルサーベルで使っていた。バルイーグルとダイナレッドに挟まれ、目立たないと揶揄されるが、実はライバルがいたので、剣技は強い。ゴーグルサーベルで雑魚を散らし、レッドロープで捕縛する。新体操を思わせる動きなので、変身する赤間健一は体が意外なほど柔らかい。ゴーグルファイブがその動きに新体操を取り入れていた証だが、他の戦隊との明確な違いを表している。


「ダイナ剣・夢の翼!!」

ダイナレッドは二代目の剣技を明確に持つレッドである。難点は科学戦隊の名がそうさせるのか、技を決めると、いちいち大爆発が起きるのである。その分、戦闘員が減るので、味方としては大助かりである。

「うわぁ!?なんで、技決める時にいちいち大爆発するデスカ!?」

「そりゃ、別名が火薬戦隊だもの、ダイナマン」

「科学は爆発だーなんて言葉があった気がするけど、これはやり過ぎデスよ〜!」

「清々しいくらいだよ?ダイナマンの爆発は。爆発でも、このくらい突き抜けないとねぇ」

のび太のコメントに呆然とする切歌。のび太はその間にも、スーパーレッドホークを早撃ちし、戦闘員を倒していく。のび太は拳銃の早撃ちでは、ロボットであるドラえもんよりは遅いが、人としては最高クラスの早撃ちを誇る。零コンマ数秒で銃を抜く事が可能だ。のび太は人体の限界を超えており、0.1秒未満で銃を抜ける。シンフォギアで身体能力が常人より遥かに強化されていて、しかもリボルバーを用いていない雪音クリスすらも問題外の速さだ。

「その気になれば、ファニング撃ちも出来るけど、シングルアクションでの技だし、ダブルアクションだと、殆ど無用の長物な技能なんだよね」

のび太は大人になるとオートマチックもやむなく使用するものの、少年期は西部劇に被れているため、リボルバーを一貫して使用している。ファニングはリボルバーでは連射に必須と言える技能で、のび太も1880年前後の西部開拓時代真っ只中にタイムマシンで行った際に、当時最新のリボルバー『コルトSAA』でファニング撃ちを行い、悪党をなぎ倒している。のび太はファニング撃ちでも全弾を正確に命中させたため、当時のならず者達から恐れられた。のび太の世界における西部開拓時代で唯一の『アジア人』ガンマンの『ガンマン壊し』、『サンドマン』、『アンキリング(殺さず)』とは、のび太の事だ。のび太はモルグシティという街に流れ着き、怯えつつも、最終的に30人をドリームガンで眠らせた。伝説によれば、そのガンマンの容貌がアジア人であるため、中国系かと思われたが、当時の町長の子孫らが言い伝えてきた容貌が日本人の特徴であった事で、謎が深まったとされる。伝説にはいくつかのバリエーションがあり、ネイティブ(原住民)に似たような面差しだが肌は白く、眼鏡をかけた線の細い少年ガンマン『ノヴィータ』という少年ガンマンがいたというのが町長の子孫らに言い伝えられていたともされる。それらは全てのび太の事だ。モルグ街では、『ガンマン壊し』や『アンキリング』。そして、相手を眠らせて捕らえた事から『サンドマン』等と二つ名を送られ、守護者として語り継がれてきた。その時の戦いはのび太に拳銃の腕に絶対の自信を抱かせる要因になっており、のび太の自慢の種だ。

「おい、テメェ!なんで、そんなリボルバーでアタシより早く撃てるんだよぉッ!あたしはシンフォギアのアームドギア使ってんのによぉ〜!」

「君はまだまだだよ、クリスちゃん。ぼくが撃ってるのはマグナム弾だからね?」

「なんだってぇッ!?嘘だろ!?」

のび太はシンフォギアで身体能力が強化されているはずのクリス以上の速さでリボルバーを連射し、瞬時にリロードする。しかも怪人相手でも効く特殊弾頭(敷島博士作)を使用している。敷島博士が弾頭などを制作し、銃もカスタマイズした『スーパーマグナム弾仕様』であり、普通の人間に撃ったら当たった箇所がエライことになるとは、彼の談。23世紀では、敷島博士が最高のガンスミスの一人となる。その散弾弾仕様が竜馬がかつての戦いで使用した銃になる。

「それも普通のマグナムよりもっと強力で、普通の子供なら、反動でぶっ飛ぶこと間違い無しの銃だよね?」

「ドラえもんの道具で強化するのが前提条件なんだけどね」

調がのび太の銃について説明する。のび太は自分に改良型のグレードアップ液をかける事で、銃の反動に耐えられるボディを手に入れている。そのためにスーパーマグナム弾をコルトSAAと同じ感覚でバンバン撃てるのだ。子供ののび太は年を考えても線が細いので、スーパーマグナムにはとても耐えられないが、グレードアップ液をかけて強化する事で、この芸当を可能にしている。

「敷島カスタムは.357口径だから、普通のマグナムや.38SPみたいな通常弾も打てるから、必要に応じて弾丸変えてるよ、マグナムバンバンばら蒔いてもしょうがないし、弾薬代も節約しないとね」

「妙に現実的だな、おい」

「そりゃ、弾もタダじゃないし。敷島博士にかなり無理言ってカスタマイズしてもらう代わりに、実験してこいって言われたんだから。大人のぼくなら、『派手に撃ちまくるとかみさんに叱られてね、ふふっ…』とか言うのは間違いないね」

「確かに。静香さん、オートマチックでスマートにやれとか注文つけるクチだし」

「しっかし、あの人達は本当に強すぎだろ!?こっちが二体蜂の巣にする間に何体……って、おい!お前になんか、クモみてーなのが襲い掛かってきてんぞ!?」

「問題無いですよ、先輩」

「どういうこった!?」

「私がこの聖衣を纏ってるって事は、師匠と同じ力があるって事ですよ?」

「!?」

「えーと、なんだったっけ……アー○パーンチ??」

曖昧な記憶で放ったが、それは廬山昇龍覇であった。この時、廬山系の必殺技は廬山龍飛翔は会得していたが、真髄たる廬山昇龍覇はまだ習っている途中で、不完全であった。だが、黄金聖衣を纏っているため、威力については初期の紫龍ならば、充分に超えていた。

「え、なにそれーっ!!」

「え、アン○ンマンのア○パンチみたいなものですって。パンチはあまり得意じゃないんで、今は足技に切り替え途中なんですけど」

このダイ・アナザー・デイ作戦の時間軸では、調は足技主体に切り替え始めたばかりであった。響が驚くのはここからだ。

『じゃ、ここから私がみんなと別行動を取ってまで鍛えた結果を見てもらいますよ。疾・風・神・雷ってやつです』

調は黄金聖衣を纏った恩恵もあり、瞬時に加速した上で、回転蹴りで竜巻を発生させ敵を拘束し、巻き上げ、真上から叩き落す蹴りを食らわす。

『ライトニングフォ――ルッ!』

凄まじい破壊力であり、ヒーロー達が関心するほどの芸当であった。響が拳の可能性を極限まで突き詰めたのなら、調は蹴りを極限まで突き詰めた。従って黄金聖衣で可能なら、シンフォギアでも可能という事になる。これにより、調は黒江の戦闘技能を受け継ぎ、更に独自の方向性を見出した事実を仲間たちに示し、自らの力の無さへのコンプレックスを無くしたのだ。調は切歌との共依存を脱却し、のび太と擬似的な家族になる事で成長した。だが、切歌にとっては『自分の愚かな行為が調と自分に壁を作った』と感じ、本来の歴史の流れとは全く異なり、切歌が調との関係や距離に思い悩んでゆく事になる。その悩みは武者修行先の『惑星ゾラ』を訪れた伝説のロックシンガーとの出会いが解決する事になるが、それはまだ先のこと。

『ライジング・メテオ!!』

怪人を数回蹴った後、相手を蹴り上げ空中で連続蹴りを行い、留めの一撃で蹴り砕く。調はシュルシャガナのギアを和装にした場合、くノ一の格好となるためか、この技のオリジナルであるスーパーロボットと妙にマッチングしていた。戸隠流の修行もしているので、そう遠くない未来の時間軸では、山地闘破から『真っ向両断』を伝授されてもいる。忍者属性があるのだ。戦闘者として見た場合、この場にいる調は全次元の同一存在で最強であるかもしれない。

「嘘だろ!?鋸で攻めるしか能が無かったはずのあいつが……」

「調は接近戦闘は苦手だったはず……それをここまで引き上げるだなんて……!黒江綾香、貴方はあの子に何を齎したというの……!?」

「凄いよ、調ちゃん!あの人たちに負けてないよ!」

はしゃぐ響、驚くマリアとクリス。呆然とライジングメテオの様子を見つめるだけの切歌。それにのび太が優しい視線を送っている事にただ一人気づき、悔しそうな、尚且つ二人の関係に感づき、哀しげに俯く。切歌は自らが『一番身近にいた事で』黒江の成り代わりに気づけず、調の姿をした別人に殺意を向けてしまったという自己嫌悪、黒江に一年も演技を強要してしまった事実に打ちのめされていた。それをなんとなく察したのび太は心配そうに覗き込む。

「ねぇ、どうかしたの?」

「なんでもないデス、なんでも……」

場を取り繕うとするが、やはり調への事は隠しきれない。のび太は全てを察し、こういった。

「あの子は妹のようなものさ」

「妹…?」

「前にも言ったろ?ぼくは1988年の生まれ。君達よりだいぶ年上になる。調ちゃんは家族の温かさを求めてた。綾香さんのフィードバックがあってからは特に、ね。ぼくとドラえもんはそれになってあげただけさ」

のび太は調の『家族』になったと明言した。のび太は誰にでも優しい。切歌へも同じだ。黒江から事情は聞いていたので、切歌のフォローを頼まれていたのだ。それをごく自然にできるのも、のび太の人徳だろう。

「家族なら、多少離れた所に居ても何処かで繋がってるって安心感がもてるからね」

「家族…」

「そう……あの子はそれを求めていたのね、野比のび太。私よりもだいぶ年上なのは変な感じね」

「仮面ライダーや戦隊の皆さんに比べりゃ、ぼくなんて、まだまだ子供ですよ」

のび太は1980年代生まれで、装者の誰よりも年上である。その上、無人島で生き延びた経験すらあるので、経験値はどの装者よりも高い。それに裏打ちされた『強さと優しさ』に調は惹かれているのだ。



――そして、仮面ライダー一号の電光ライダーキックが炸裂する。着地する一号ライダー。『男の背中』というのを妙実に表しているその背中。全ての始まりの男の背中は、黒江が、智子が、圭子が、調が追いかけるべき道であるかのように語っていた。本郷猛、全ての始まりにして、最初の仮面ライダー。その重みはアカレンジャーと並び、なんとも言えない迫力を醸し出していた――



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