外伝その145『鋼鉄のDreamer2』


――戦闘を開始したアルトリア。その援護を行うヒーロー達。彼らも負けてはいない。次々と必殺技を炸裂させていく。

『大反転スカイキィ――ック!!』

反転を三度繰り返して加速力を倍化させ、敵に蹴りを放つスカイライダー99の技の一つ。彼は質の良い戦闘用改造人間ではあるが、助命目的での改造なため、防御力に難があった。その後の特訓で人工筋肉などがしなやかになったなどの理由で防御力を上げたが、筑波洋が元はハンググライダー部の大学生だったので、ストロンガー以前のような打たれ強さは無い。そのため、技で不利な点を補うようになり、パワーアップで99の技を身に着けたのだ。

『スカイフライングソーサー!!』

スカイライダーは技の豊富さでは歴代随一であるので、まさに技のデパートである。歴代仮面ライダーが持つ技はあらかた、その発展形を持つが、ダイナモの出力の兼ね合いか、稲妻キック系統は持っていない。属性で言えば空と風の戦士なので、スカイライダーは一号の正統後継(ボディ的意味でも)であることが分かる。そのスカイライダーは対照的な後輩の沖一也/スーパー1とコンビを組む。現役時代は二号の弟分に見られていたので、彼も成長したのだろう。

「沖、子供達の前だ。あまりヘマは見せるなよ」

「分かってますよ。伊達に赤心少林拳の継承者じゃありませんよ」

沖一也/スーパー1はスカイライダー/筑波洋からは名字で呼ばれている。見かけの年齢は一也の方が7歳以上も上だが、洋のほうが仮面ライダーとして先輩なので、一也は洋を『筑波さん』と呼んでいる。洋も見かけが一也より10歳近く若いながら、一也には先輩として接している。その関係は変身を解除しなければ窺い知れないが。

『赤心少林拳・諸手打ち!』

小気味いい打撃音と共に、蝙蝠男が倒される。赤心少林拳は北派少林拳の流れを組むが、空手と混じり合ったらしき要素も多いので、中国拳法と日本古武術のハイブリッドと取れる拳法であり、黒江、同調していた調はその心得がある。響はこれにすぐ反応する。

「あの動きは空手?うぅん、少林寺拳法にも似てる…?」

スーパー1は宇宙開発用サイボーグだが、拳法に必須の気功を出せるように、沖一也の神経系がそのまま機械の体に埋め込まれている、ZXの一歩手前の高度な技術が用いられている。その一也の使う赤心少林拳は長年の内に空手の実戦的な要素が本来の少林拳要素を上書きしたところが多分にあり、赤心少林拳・梅花の型は合気道の要素もあり、日本の武術としての体裁が強い。少林拳+空手+柔術が赤心少林拳であるのだろう。

『スーパーライダー月面キィ――ク!』

「あ、あの技は!あの時に綾香さんが私に食らわせた飛び蹴りだ!?この人の技だったの!?」

スーパー1の得意技『スーパーライダー月面キック』。響の口ぶりから、黒江がどこかのタイミングで響に食らわしていたらしいのが分かる。黒江は一也のそれと全く同じ威力を出せるので、見よう見まねとは言え、完コピに近い精度だった。天高く月の近くまでジャンプし、超高度から一気に急降下して敵の体を蹴り貫く技。響が中国拳法の心得があり、直撃の衝撃を緩和するための方策がなければ、間違いなく死んでいた。もちろん、格闘に向いていない構造のギアでそんな芸当をギミック無しでやってのけたのは、黒江の資質に寄るものなので、これが切歌の思い込みを強固にしてしまったという不覚もあるが。(調当人は黒江の成り代わりの前は、蹴り技にギミックを用いていたので、その時点での資質の違いによるものでもあったが)

「うぅ。気まずいデス。冷静になって見れば、あの時のあんな事も説明付いたのに…」

「あとで謝るんだな、ガキンチョ。あいつは一年はお前の面倒見てたんだからな」

黒江は一年間、切歌の面倒を見る羽目になったため、智子には爆笑されるわ、レヴィ(圭子)には同情されたが、高校生生活は悪くはなかったらしく、ちょっと名残惜しいとも述べている。黒江は12歳を過ぎると、否応なしに大人の世界で生きてきたので、日本の十代のような甘酸っぱい青春とは縁が無かった上、転生後は常に、アイドルのように、自分のおっかけがいるので、それらから開放された生活は本当に楽しかったと公言している。ただし、『調だけが国際法廷で死刑を求刑されなかった』事が、切歌への精神的なトドメとなった事は悪いと思っている事は述べている。

「でも、調はどうして、国際法廷で死刑を求刑されなかったデスカ?」

「多分、マリアが宣戦布告した時にその場にはいなかったし、その後すぐに師匠と入れ替わったから、事情が分かるまで、皆、師匠を私と思ってたでしょう?そういう事だよ、切ちゃん。師匠は好き勝手してくれたから、色々」

「シンフォギアでバイトしやがるし、おまけにその姿で学園祭に来て、FIRE BOMBERとかいうロックバンドのナンバーをメドレーで歌いやがって。おかげで、あたしの学園祭の歌唱大会の優勝がパーだ」

黒江の好き勝手は町内にも知れ渡っており、シンフォギア姿でバイトしていた事もあるが、地域のお祭で普通に買い食いするわ、893の事務所をぶっ潰す、生活で普通に善行を積み重ねていた事もあり、調がテロリストの一員であることは、歴史の闇に葬られた形になった。学園祭では普通に姿を見せ、普通に優勝するなど、クリスの見せ場を奪うばかりか、風鳴翼に酷似した声色で『ETERNAL BLAZE』という曲を歌って見せ、多芸ぶりを見せている。もちろん、翼は驚天動地であったし、メドレーを歌っている内に、自然にギアを限定解除状態に持っていく『フォニックゲイン』(サウンドエナジーのシンフォギア世界での名称)の高さなど、格の違いを見せつけている。黒江は帰る前、『母親に英才教育を受けた』と言っていたが、作詞の才能まであるのは卑怯である。その気になれば、シンガー・ソングライターとしてデビュー出来るほどの才覚であるからだ。

「ばーちゃん、作詞の才能まであるから、普通に音楽で食っていけたよな…。素養があったからって、軍人になるなんて。これが時代って奴なのか?」

「あ?作詞の才能?んなもん有るわけねーだろ、言葉を韻踏んで並べるだけだ、国語よりも数学に近いんだよ、あれは。あいつはそういう才能があったから、ウチの隊歌を作ったんだが、いい加減に作ったから、『いい加減に作って後悔してる』って言ってたぜ?」

「なぁ!?嘘だろ!?レヴィのばーちゃん!」

「本当だよ。それに、軍人になったのは素養があったのと、おふくろさんへの反骨精神、それと『力を持った者の義務』って奴だ。あたしらはそういう教育を受けた世代だしな」

レイブンズは戦前日本よりは露骨ではないが、生活に軍隊が密接に関係している時代の教育を受けて育っている。その教育は前史では雁渕ひかりが孝美と確執を持ってしまう要因ともなっている。孝美は転生後、その点にようやく気づき、シスコンである事を隠さなくなったし、黒江達に再会した際に、目を合わせるなりのスライディング土下座をしているが、そのような教育のままに育ったため、感受性がひかりは特に強かったのだ。孝美は自分のエゴが妹との確執になり、別の世界では、最悪の結果に終わったのを、黒江達が修復したという経緯を知り、黒江達に恩義を感じると同時に、前史で反発した事の愚かさを悟った。このように、転生で黒江達に恭順したGウィッチは多い。この教育は黒江達のような使命感の強いウィッチを量産するにはちょうど良かったが、本人に素養があまりないのに、やる気だけあるウィッチを多数生み出す土壌ともなった。レヴィは『その事が悪いわけではないが、時として、ウィッチ姉妹の仲を引き裂く結果となる事の弊害がある』を語る。

「お前らの力は素養の差はあれど、だいたいは訓練すれば、戦闘力を上げられるだろ?あたしらの本来の力だった魔力って奴は、シンフォギア以上にな、個人の持つ素養に大きく依存するんだ。姉妹で発現しても、姉と妹で素養に大きく差がある事も珍しいことじゃねぇ。そういう例がダチにいるんだ」

「そう言えば、ばーちゃんがそんな事言ってたな。あんたらはその中でも特別な存在なのか?」

「そうだ。本来、あたしらの魔力は『有限の貯水タンクから水を使う』ように、最大で10年くらいしか奮えねぇ時間制限ありの力だ。本当なら近代の軍隊にゃ不向きな力だ」

「ああ、それは聞いたよ。若いうちにしか奮えねぇから、その後の処遇で軍隊が嫌がってるんだろ?」

「まぁ、宮藤んトコロみたいに条件付きに魔力を一生使えるようなのも居るが、それは例外中の例外みてぇな特権だ。あたしらは何度か人生を繰り返して、神様になって始めて、魔力の永続性を担保できたが、あたしらの世界だと、色々と制約が多かったのさ」

クリスにレヴィが言う。ウィッチは魔導師と違い、魔力量などで制約も多く、レイブンズがその制約から完全に解放されるには、昇神と数回の転生を必要とした。また、ウィッチの身分の問題でウィッチ界は大きく揺れている事も付け加える。

「年齢の枷が外れると、勤務条件や身体保護の目的で高めの階級になってたウィッチは定年まで働く普通の軍人とに軋轢が生まれたんだよ。ドラえもんの道具で年齢的枷を外した途端に、だ。参るぜ」

ウィッチは勤務日数が長くて10年だったからこそ、特権階級のような扱いを受けていたが、年齢の壁が壊されれば、平時の士官教育を受けた世代はともかく、戦時の促成教育組では物の役にも立たない事実も明らかになった。戦場の時代を進めるほどの高度化で、求められる知識も高度化した事もあり、高度な士官教育を受けた世代が引退させられなくなったのだ。更に、武器の急激な高度化、専門教育も必要になる時代を迎えたので、これまでのような一年と数ヶ月で前線に出せるような時代では無くなったのだ。

「そりゃそうだろ。10歳からの10年働きゃ、優雅に年金暮らしできたのが、いきなり専門教育受けろなんて、嫁入り前の勉強感覚で入れてた親からすりゃよ、溜まったもんじゃねーだろうが」

「それが問題になってるんだよ、この世界の各国で。同じ部隊の部下にも、一族の義務ってだけで軍に入った奴がいてな。思いっきり悩んでやがる」


それはリーネのことだ。芳佳がGとなり、角谷杏としての黒幕ぶりを発揮し始めると、Gウィッチではないリーネは、戦う理由は見出だせたものの、軍隊に骨を埋めるつもりは元々無かったのもあり、今後の身の振り方に悩んでいる。MAT設立に関わったので、移籍の声もかかってはいるが、芳佳への裏切りになることに異常に怯えている。モードレッドの覚醒でペリーヌに仕える意義も薄れてしまったため、リーネは悩んでいたのだ。ティターンズの出現により、世相が『力あるものは戦え』という苛烈な風潮になり、リーネのようなタイプは居心地が悪い時代となったのも不幸だった。

「全部が、あんたらみて〜な戦闘狂なわきゃねーからな。ばーちゃん、あんたらはなんで、こういう状況に笑ってやがるんだよ!」

「あいにく、あたしはこういう血と硝煙の匂いに滾るんでな」

「ざけんな!」

「戦場で仲間割れしてる場合じゃねぇだろ?ガキンチョ」

「……!?」

レヴィは掴みかかってきたクリスの手を払いのける。これもまたクリスには衝撃だった。

「やれやれ。お前、この状況下で仲間割れ起こすなんぞ、正気か?」

レヴィは殺意を織り交ぜた三白眼で睨みつける。その目は成り代わり当時の黒江が、見せるのを控えていた『修羅』としての目である。

「いいか、良く聞け。ガキンチョ。テメェのトラウマが理由だか知らねぇが、戦いの場に立ちゃ、デッド・オア・アライブの世界だ。紛争地帯で両親が死んでりゃ、そんくらい分かるだろ?」

クリスはその目で本能的に恐怖を抱いたのか、シンフォギアが自然と解除され、その場に崩れ落ちる。強烈な返しと同時に三白眼の殺意を向けられたので、心が折れたのだ。つまり、心理的要因でシンフォギアを維持できなくなり、気絶した瞬間に……。

「あ、やべ。やっちまった」

「馬鹿、ガキを脱糞させやがって。ドラえもんに回収頼まきゃな」

ストロンガーに呆れられる。レヴィの口の悪さは天下一品だが、子供には刺激が強すぎたのだ。

「レヴィさん、これ、あとでクリスちゃんに銃撃されますよー?」

「ハッ、あんな青っちょろいガキに遅れは取らねーよ。トゥーハンドの渾名持ちだからな」

響がクリスに同情するが、レヴィは一蹴する。この後、クリスは公衆の面前での屈辱を晴らそうとするが、のび太に止められる羽目になり、銃使いとしてこれ以上ないほどの屈辱を味わう羽目となるのである。

「ああ、こいつは二丁拳銃の名手だ。勝てないのはのび太にだけだよ」

「えぇ!?」

「ぼくは0.5秒もあれば、ガンを撃てますから」

「それがおかしーってんだ」

レヴィも、のび太の常軌を逸した早打ちにはぼやく。子供時代の時点で0.5秒という事は、青年期には更に速くなっている事を意味する。

「抜き打ちなら、0.1秒で事足りますよ」

「あたしは0.3秒だ。つまり、こいつは日本で平凡な小学生してんのに、それだけの才能があるんだよ」

「僕は早い時はコンマ一秒で抜けるし、一秒で全弾撃ち切るよ、リボルバーなら」

「なんかもう実感ないなぁ」

「のび太くんは西部開拓時代でも通用しますから。ワイアット・アープやビリー・ザ・キッドもかくやの実力ですよ」

調が自慢げに語る。のび太を兄としてすっかり認識しているのが丸わかりであり、切歌はジェラシーの炎を燃え上がらせる。

「お待たせ〜、フォボスを整備に出したら遅れちゃって」

「お、智子か。その姿も久しぶりだな」

智子は固有魔法を久方ぶりに使い、青髪と銀色の瞳、青い炎のオーラを身に纏う姿を披露した。聖闘士になってからは使用機会が減っていた力だ。

「聖闘士になってから、あんまなってなかったけど、併用できるようになったから、してみたのよね。神様になった甲斐があったわ」

智子は子供達に見栄を張りたいのか、久方ぶりに固有魔法を使用した。容姿の変化が伴うので、見栄えもいいからだが。

「その声、もしかして、智子さんですか!?」

「久しぶりね、響。これがあたしの全力の姿よ」

「日本刀持って、巫女装束で、炎使い。10年くらい前に流行ってたラノベみたいですね」

「あ、やっぱ分かる?」

智子はそのラノベのコスプレが不思議と似合うようになり、芳佳からセーラー服を借り、メロンパンをかじると、あら不思議状態なほど似ていた。智子がテンプレなツンデレであるのも重なり、スネ夫に『声と背丈以外は完璧だ』と言わしめるほどだ。

「さあて、伊達や酔狂でこんなナリしてないってとこ見せてあげるっ!」

智子は剣術も強い。かつては黒江、武子と並び称されたほどの実力を持ち、後輩達の台頭後も『歴代トップ10に入ってる』と豪語する。(智子は剣術の鍛錬が中々出来なかったので、相対的意味ではランキングが下がっており、この時点では黒田や芳佳に追い抜かれている。ただし、立場的には今後は暇になるので、まだまだ黒江に追いつける余地はある)しかし、この時点では彗星のようにハルトマンが現れたため、剣術使いウィッチの撃墜スコアランキングで言うと、11位ほどに落ちているが、トップ20は維持していた。また、剣術屋といえる英霊達も現れているので、それらを考慮すると、智子は相対的にランキング順位が下る。ハルトマンは総合ランキングで一位をマルセイユと争っていたが、剣術ランキングでも食い込んできたので、智子の立場は意外に危うかったりする。(いらん子中隊当時の大半が記憶封印期であった不幸もあり、スコアが伸びない上、江藤が未確認にしていたため、公認スコアは伸びていなかった)そのため、智子は江藤に恨み節を漏らしており、江藤も『そんなに睨むな。先輩方に脅され…もとい、公認を促されて認めたし、これで今度の部隊で嘗められんだろう?』と電話で告げている。赤松と若松が説得と言う名の恫喝を行った結果、自宅兼店舗を半壊された江藤は、作戦に自ら参加することでの慰労手当を期待しているのだが。


『穴拭。お前のおかげで我が家は半壊だぞ?先輩方が暴れてくれたせいで、店部分と自宅部分が半分消し炭だ』

「まっつぁんはともかく、若松大先輩を怒らせちゃ不味いですって。あの人、可愛がってる後輩のことになると、怒りが頂点になるんで」

「あの人は私の教官でもあったからなー…。おかげで失禁しそうになるわ、怖くて、赤松大先輩に泣きついたんだぞ、こっちは」

「隊長、ドラえもんをあとで行かせますよ。黄泉平坂に行かなかっただけいいじゃないですかー」

「事変の時に行かされた。あの人おっかなくて…」

江藤も若松の教え子であるため、未だに頭が上がらず、本気で赤松に泣きついたと告白する。扶桑はこのように、叩き上げ組が絶対的権力を持った風土なのだ。

「下着洗うのは、大人になってからは初陣だけで沢山だよ…」

扶桑はウィッチという存在のため、叩き上げの士官や下士官は強い権力を握っている。黒江の場合、赤松の『娘』を自認しているので、自分で判断がつかない時は赤松に最終判断を仰いでいる。江藤が折れたのも、その中でも最高実力者の二人が出向いてきたからで、しかも、若松は自らの師であった。そのため、若松の剣幕に本気で怯え、赤松が『若、江藤が壊れるからこれ以上はやめとけ』と諌めるほどだった。その時に、若松が黒江に入れ込んでいるという衝撃の事実を知ったのだが。

「あの人、黒江に入れ込みすぎだ……。あいつを軽んじたような事を言うと、黄泉比良坂にいかされそうになるし…もーやだ!」

江藤はぼやく。積尸気冥界波を浴びせられ、黄泉比良坂の光景を見させられたせいだろう。黒江への入れ込みようはすごく、赤松曰く、『あいつの妹にボウズが激似なんじゃよ』とのこと。その大失態でも、江藤が参謀になれたのは、ひとえに、過去の縁でレイブンズを上手く抑えられる立場であったり、総力戦研究所の成果に肯定的(東條英機がこの世界でも低評価なのは、扶桑海事変の様相が研究所の研究と合致する様相であった事で、一気に天皇の不興を買った事による)であった数少ないウィッチであった事に由来する。

「お前らの上官だったおかげで、同期の多くが中央からいなくなっていったのに対して、私は参謀になったが、これからの戦争はどうなるんだ?」

「見りゃ分かるだろ?破壊と殺戮の嵐だよ。騎士道精神なんてのは、第一次世界大戦で消えたよ。ミサイルとビームが飛び交うようになれば、MSが出ねぇ限りは復活しねぇよ」

MS乗りの中には、トレーズ・クシュリナーダやゼクス・マーキス(ミリアルド・ピースクラフト)のように、騎士道精神に富む者、東方不敗マスターアジアのような武侠精神旺盛なもの(ガンダムファイター)が出るが、それらはボタン戦争に飽いた人類が生み出した逸材だが、この世界でMSが造られるにしても、遠い未来の事だろう。

「この世界でMSが造られるかは分からねぇが……造られるにしろ、ロボット工学が相応に発達するのを待たないとならねぇだろうな」

ウィッチは通常兵器発達を結果として歪めていたが、ティターンズとの戦争がそれを正した結果、『史実の数十年分』の進歩が5年もあれば達成する。レヴィ(圭子)はそれを見越していたが、MSやVFは遠い未来でなければ、自主製造は不可能だろうと予測している。これはウィッチ世界の技術力はいいところ、史実の1943年と同程度。人間の頭はノモンハン事件相当以前から大して進歩のない者も多い。それを勘案してのものだ。

「兵器の進歩?」

「ええ。私達の世界では、今の時点で核兵器もジェット機もコンピュータも、第一世代のモノが現れているはずだし、潜水艦も相当に進歩していた。それがこの世界の技術はそれよりも数年遅れている……。それどころか、研究されていても、貴方方の派閥抗争で具現化していないモノも多い」

マリアはウィッチ世界では『必要とされていない』ため、未だに現れていなかったいくつかのモノに言及する。カールスラントの次期潜水艦候補と目されていた『UボートXXI型』は皮肉にも、ミッドチルダ動乱で扶桑海軍をきりきり舞いさせた『功績』で緊急生産されるという事態を起こしたし、対空誘導弾は地球連邦軍によって有効性が既に証明されているし、コンピュータは宇宙戦艦の装備として持ち込まれている

「確かに。君達の世界は通常兵器が主役だったから、それらが一挙に現れた。だが、この世界では、ウィッチが主役と見られていた。私達はその意識で驕り高ぶっていた。それが君らの持ち込んだ知識や意識で打ち砕かれた。それだけだ。核兵器が未来人が持つもの以外にないのが救いだが、未来人はそれすら霞むような破壊兵器を持つからな」

タバコを吸いながら、江藤はマリアに答える。これから一挙に立場が苦しくなるであろうウィッチとしての立場から、未来人が一気に戦場を変えたと考えている。『緊密な連携による三次元戦闘』が主流になる事は、アフリカ戦線帰り以外は理解しにくい事でもあり、未来人が好む『事前の砲撃と同時の地形を変えるほどの空爆』からの侵攻を卑怯だと嫌う陸戦ウィッチも多い。それが苦戦の理由でもある。

「未来人の兵器で恐れられているのが『バンカーバスター』だ。どんな地下要塞に立てこもっても、あれでぶち抜かれるから、シェルショックになる連中が続出だからな」

「仕方がないわ。バンカーバスターはこの時代に造られていたグランドスラムやトールボーイの戦訓から造られたものよ。この時代の地下要塞くらいじゃ、弾薬庫まで貫通されて当然よ」

「うーむ。おかげで陸の連中は戦々恐々としていてな。おまけに、この時点で一番強力な装甲師団を誇ったはずのドイツ陸軍も肝心の戦車が陳腐化してしまった」

「戦後型の主力戦車が持ち込まれば、自然とそうなるわ。この時点で一番強力な装甲を持つティーガーUでも、主力戦車が使う『APFSDS』にはいとも簡単に貫かれてしまうもの」

「おかげでドイツ軍は大パニックで、戦車の量産予定がメチャクチャだそうだ」

「当たり前と言えば当たり前ね。数十年も後に実用化された理論による徹甲弾だもの。この時代のどんな戦車も、一撃で車体正面を貫かれるわ。ドイツには信じられないでしょうけど」

マリアは蜂起の前段階の訓練で高度な軍事訓練を積まされていた経緯があるので、江藤にAPFSDSの事を教える。この徹甲弾は23世紀でも使われているし、61式戦車(地球連邦軍)が撃った場合、当たりどころによるが、ザクUの正面装甲を撃ち抜ける。江藤がカールスラント陸軍から聞かされた愚痴ももっともである。

「ん?穴拭はどこだ?」

「参謀、智子さんは加速したんで、銃撃の援護は無理ですよ」

「ああ、話は聞いたが、クロックアップと言うやつか」

調が江藤に智子がクロックアップした事を教えた。智子が悪ノリし始めたのだ。智子も、黒江がそうであるように、クロックアップ(ハイパークロックアップ)が使用可能になった。それに伴い、仮面ライダーカブトの世界の仮面ライダーがそうであるように、タキオン粒子を破壊エネルギーに転化可能となっている。智子はクロックアップ能力を黒江より使用するため、アクセルフォーム相当の瞬間加速能力を常用する黒江と対になっている。

「クロックアップ?」

「ある平行世界の仮面ライダーが持つ加速能力だよ。宇宙戦艦ヤマトのエネルギーでもあるタキオン粒子を使って、時間の流れそのものに干渉して加速するんだ。私は同じ能力持ったから見えてるけど、切歌ちゃんじゃ何が何だかも分からないよ。ほら、師匠が成り代わってた時に、いきなり吹き飛んでたなんて事があったって言ってたでしょ?そのタネがクロックアップなんだ」

智子は変身した状態でクロックアップを発動し、怪人軍団が『停止』してるに等しい状態であるのを良いことに切り刻み、タキオン粒子を纏った回し蹴りを食らわせる。これはウィッチというよりは神としての力の披露だ。

「智子さん、ああ見えて、もう22歳なんだけど、師匠と同じで悪ノリするとこあるから。

「仮面ライダーって、あの11人だけじゃないのデスカ?」

「彼らの故郷にまだ二人いるし、他の世界にはいくつもの独立した存在としての仮面ライダーがいるんだ。師匠と智子さんが使うのは、その内の加速能力を持つ二人の仮面ライダーの能力だよ。平行世界の同位体纏めても確認できただけで仮面ライダー名乗ってるの40~50くらい居るみたいだし」

智子はよく、『NEXT LEVEL』という曲を聞いている。のび太の世界での特撮番組としての仮面ライダーカブトの主題歌だ。レイブンズは基本的に昭和仮面ライダーを慕うが、仮面ライダーディケイド/門矢士と前史で出会った事から、平成の時代に活躍している仮面ライダーの存在を知った。ディケイドは元々、バダン(大ショッカー)が平成ライダーの能力を再現し、昭和仮面ライダー最強の戦士たる『仮面ライダー一号』と『仮面ライダーBLACKRX』を倒すために生まれし存在なので、平成ライダーの能力を再現出来る。そのツテと記憶から、黒江と智子は『仮面ライダー555』と『仮面ライダーカブト』の能力をコピーできたのだ。その点で言えば、ディケイドは『世界の破壊者』と言える。

「それはしょうがないって。師匠や私、それにアルトリアさんはエクスカリバー持ちだし、師匠の友達(ガイちゃん)はデュランダルで、モードレッドさんは『燦然と輝く王剣』だし」

この時点では、イガリマの『絶体鋭利』という謳い文句は以前ほどの迫力は無くなっている。それ以上の位の聖遺物がZ神によりバーゲンセール状態なので、聖遺物としての有効性が薄れてしまったのだ。もっとも、響のガンニグールすらも宝具たるゲイ・ボルグに打ち負けたので、黒江が神聖衣で防ぐ事は造作もない事であり、イガリマへの過信が切歌の精神崩壊の直接的原因の一つであるのは皮肉でしかないが。

「うぅ。イガリマは絶対鋭利のはずなのに、その黄金聖衣には弾かれたし、あの人の手刀にも……。エクスカリバーは何なのデス!?」

「約束された勝利の剣。聖剣の中でも最高位に近い剣。師匠や私はその霊格を腕に宿してる。師匠の娘さんはアロンダイトと草薙剣を。神様が与える力ってのが正しいかも」

基本的にイガリマとの相性は良く、戦えばイガリマを容易に組み伏せられる。これはイガリマが鎌である故に、扱いにくい武器(グレンダイザーのダブルハーケンのように扱いやすいというわけではない)であるのもある。

「フェイトさんみたいに鎌から剣に出来る機能があるわけでもないし、ガンダムデスサイズヘルの映像貸すから、参考にして」

「あれはそんなに参考にできないデス。…なんか落ち込むデス……」

「あ、グレンダイザーも鎌使いだよ?」

フェイトはシグナムの影響で、青年期以降はバルディッシュを剣で固定して運用するようになったように、鎌という武器を扱えているのは、ガンダムデスサイズヘルとグレンダイザーくらいだろう。

「あのロボ亀はハーケンじゃないデスか…」

「切ちゃん、それ、何気に酷いって」

「亀と言うよりビックリ箱なのよね、グレンダイザー。一応、地球製スペイザーとも合体出来るから、拡張性あるし」

「なんかかっこ悪いデスよ、智子さん」

「そりゃ、あれは地球製じゃ無いしね。マジンガーに近いようで、マジンガーじゃないのよ」

「そうなんだよね、ダイザーは。フリード星の守護神みたいなロボだったから、地球のと違うし、設計思想」

「え!?」

「これ話すと長くなるけど、概ねグレートマジンガーより強いってのが本当ね」

グレートマジンガーよりもグレンダイザーはパワーで上回る。装甲強度などは互角だが、パワーではグレンダイザーが上回るため、マジンカイザーやゴッドを除けば、最強のマジンガーというのも嘘ではない。

「それじゃあの、グレートマジンカイザーって言うのは…?」

「グレートマジンガーがマジンカイザーの次元に進化した代物。応急処置的なものだったから、マジンエンペラーが造られたのよ」

グレンダイザーとグレートマジンガーなどを比べるのは意味がない。光速宇宙船の戦闘ユニットと言えるグレンダイザーと、戦闘ロボットとして完結したグレートマジンガーでは色々と差があるのだ。

「それに、グレンダイザーは光速宇宙船の戦闘ユニットみたいな代物だから、戦闘ロボとして完結してるマジンガーと比べるのは意味ないわよ?動力もパワーソースも違うし、そもそも異星人の最終兵器よ?」

「そ、そうなのデスカ」

「貴方はこのスーパーヒーロー大戦を見て勉強することね」

「あ、智子さん、後ろ、後ろ!」

「問題ないわ」

クロックアップし、襲い掛かってきたマグマ怪人ゴースターを倒す。今回は刀で一刀両断する。クロックアップを多用するあたりは仮面ライダーカブトのリスペクトのつもりなのだろう。それと門矢士も使い勝手の良さから、カブトの能力を度々使っているためだろう。

「伊達に、巴御前の呼び名持ってないわ」

「智子さん、今度は『剣』のロイヤルストレートフラッシュでもやったらどうです?」

「ちょっと趣向を変えてカイザかなー?とか準備してるんだけど」

「あれですか。ゴルドスマッシュするんですか?」

「えー?カイザスラッシュのほう考えてるけどー」

「仮面ライダー龍騎は?」

「あれはもう覚えたわ。炎出してライダーキックすりゃいいんだし。こういう風にね」

智子は仮面ライダー龍騎のドラゴンライダーキックは概ね覚えている事を、調に自慢しつつ実践した。一部の過程は省いているが、足に炎を纏わせて片足での飛び蹴りを食らわせる。

「智子さんは足技を?」

「あたしはオールマイティーよ。炎と氷を操るけど、雷も出来ないわけでもないわ」

「ぐぬぬ……今度、手合わせできますか?」

「音速に対応出来てからいらっしゃい」

響は智子の闘技に興味があるようだが、発揮できる速度の差から相手にされない。いくらイグナイトやエクスドライブを用いようと、物理的加速は出来ても、感覚的な加速は不可能である。その点がこの時点でのシンフォギア装者の大半とレイブンズとに横たわる力の差であった。

「感覚的な加速?」

「要は小宇宙よ。それに目覚めればいい」

かつて、牡羊座のムウが星矢たちに言ったのと同じセリフを言う智子。

「それに目覚めれば、シンフォギアを纏うのに何の制限もなくなるし、綾香が普段着代わりにしてた理由も分かるわよ」

智子は響へその一言を残すと、今度は聖闘士としての闘技を見せる。

『ホーロドニースメルチ!!』

コークスクリューパンチから凍気を撃ち出すこの技、水瓶座の継承技でもある。サーニャ曰く、意味は『冷たい竜巻』だそうである。

「再生怪人くらいであたしを止められると思わないことね」

不敵に笑うが、多少中二病じみているのはお愛嬌だ。また、フォボスに乗った事で、ダイモスのロボットガールズとしての素養もあったらしく、動きが空手になっている。

「必殺!烈風!せぇぇけんづきぃぃぃ!!」

風で吹き飛ばして、ジャンプしてのアッパーカットでイソギンジャガー(ゲルショッカー怪人)をまっ二つにして倒す智子。充分にロボットガールズの素養がある証拠である。響は強力なライバル出現と見たのか、若干悔しそうである。元々、智子は自由人の姉から護身術を習っていたので、空手の素地はあったが、転生でそれが完全なものになったらしい。

「さあて、おまけでこれもセットよ!サンダーブレーク!!」

「その技、貴方も!?」

「一応ね。あの子には及ばないけど、撃てることは撃てるのよ」

「な、なんというずるさッ!」

「こっちは神様だしー」

マリアも流石にぶーたれるが、智子はこの調子で、江藤は呆れる。レイブンズは『成人したら悪ノリが悪化した』例であり、しかも実力は本物であるので、周りから文句がつかない。第一次現役時代に後釜を期待されたクロウズがパッとしなかったと言われるのは、クロウズが転生後の技能を使うのを必要最小限に押さえていたのと、黒江達ほど見栄えする技能を特段誰も持っていない事も関係している。黒江達は惜しげなく使った事で、結果として閑職であったり、飼い殺しに合っていたが、戦時では英雄として持て囃される。それへの反発が作戦後のクーデター事件や、太平洋戦争時のエース制度反対の動きに繋がってゆく。黒江達は連邦軍やジオン軍のプロパガンダ戦略を見てきたので、エースとしての二つ名に肯定的で、自ら名乗ることも多い。坂本と若本が呆れるように、この時に活躍した元・七勇士達への海軍航空隊ウィッチの反発は海軍上層部を悩ます程のもので、結局、空軍移籍組に海軍軍人としての名誉を与える事態にまで陥ってゆくのだった。この時に海軍が七勇士組の多くの復活で対抗心を持ち、『技能特優』章を創設することが検討されたが、部内の猛反対で潰えた。結局は太平洋戦争勃発後に『戦果に伴う褒章の明確化』という題目で空軍主体で制度が出来上がるが、MATに中堅組が移籍した事で資格者が二名、現役者はたった一名の緊急事態になり、坂本にも名誉的に授与され、空軍の元海軍組にも授与資格が与えられたという。この時の中堅組は後の世代に「メンツにこだわって赤っ恥かいた愚かな世代」と罵られ、後の世代と先の世代に睨まれる事になる。中堅組の代表者の一人の志賀少佐は後に、武子にこう申し開きを行ったという。

「若気の至りでした。坂本先輩にご負担をかけ、国家の大事なのに、軍内部にいらぬ対立を引き起こした。同世代を代表してお詫び致します」と。


志賀のように、後で謝りに来た『1945年中堅組』は珍しかった。志賀は『海軍航空隊の伝統』とエースが必要とされる実情の間で苦悩した中堅ウィッチの代表格であり、源田も気にかけていた事もあり、戦後は64Fの戦友会に招かれるなど、穏やかな日々を送ったという。これは343空からの改組当初は飛行長の任を続ける予定であった事が理由で、訓練学校の一期後輩の雁渕孝美へ『俺の苦しみは貴様には分かるだろう…』という置き手紙を残している。志賀などは『プロパガンダに精出す暇があったら訓練をして、敵を撃滅すべし』と考えていたが、実情はエースが日本連邦には必要だった。それが悲劇となった。志賀は同じ小学校の先輩である坂本に自分の役目を押し付けた事を気に病んでおり、黒江達へ感情的に反発していた事を若気の至りとし、それ以後は64Fを隊の外で支え、戦争の終戦で退役する。それが志賀なりの源田への償いであり、黒江達への罪滅ぼしであった。



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