外伝その284『日本連邦の旭日』


――2019年は日本。改元もつつがなく行われ、『日本連邦』体制下で次の年号を迎えた事になった。実在が確認された歴代プリキュア達がル・マン24時間耐久レースへ出場することが巷で評判になっていたが、政治的には扶桑へ『主導権』を握りたがる警察庁と警察官僚を総理大臣や防衛省がどうにかして抑えるという構図で暗闘が行われていた。その暗闘の弊害がダイ・アナザー・デイで顕著に表れ、陸軍参謀本部は参謀たちの大量左遷で業務に支障が生じ、軍令部も艦政本部などの兵器開発・管理部門の統制が日本連邦軍の手に渡り、その関係で海援隊との有機的連携が日本の政治家と海保の横槍で崩れてしまうパニックが巻き起こった。海保は学園都市とロシア連邦の戦争で大量の巡視船を喪失し、その補充に焦っており、海援隊の海保への編入を目論んだ。海保は民間軍事会社を解体せよと迫ったが、海援隊はあまりにも巨大な組織と化しており、坂本龍馬の遺産という箔もあり、組織の完全な解体は海軍の異常な肥大化を招くために非現実的とされた。取れる手段は一つ。海援隊を公営組織として再編成し、坂本/才谷家の私兵との陰口を無くす事。実質、第二海軍の設立に近いが、日系国家『太平洋共和国』との防衛契約を安全保障条約とする事も決められた事、海援隊を海軍の一部にするには、保有装備の年式が統一されていない不都合もあったが、坂本/才谷家の政治的影響力も作用しての決定だった。2017年から水面下で日本と扶桑で交渉され、2019年度に日本側で手続きが始められた事になる。いずも型護衛艦の実質的な空母化もすでに決定されており、日本本土に残るいずもから着手の予定となった。これは大和型が21世紀基準を上回る超近代化により、海自のまや型を上回る近代戦遂行能力を有しつつ、戦艦本来のポテンシャルを発揮する事への対抗心も含まれていた。また、余った雲龍型航空母艦の輸送艦/揚陸艦への改装(中には、扶桑で完成後直ぐに曳航されて改装される艦もあった)、扶桑向けの新空母の建造なども行われ、軍事目的とは言え、造船業界は久しぶりに好景気に沸いた。ただし、戦艦と重巡洋艦は船体の保守点検が限界だった。軽巡洋艦は21世紀の速射砲に載せ替える作業も行われたが、重巡は建造中の伊吹(軽巡洋艦と違い、ズムウォルト用の155ミリ速射砲をライセンス生産し、載せる案が最優先で検討されているが、史実では調達されなかった『Mk.71 8インチ砲』の改修型の売り込みもあったし、砲戦での防御力の問題との兼ね合いで、デモインが搭載するMk.16を扶桑型巡洋艦も搭載する案も出ている)が8インチ砲のテストベットとされてはいた。大規模改修に入った利根型も航空巡洋艦枠でテストベッドとされているが、アメリカでさえ、ノウハウの再取得中の戦艦は日本が手を触れられるものではなかった。(扶桑の大和型は史実と違い、将来的な砲塔換装を前提にターレットやバーベット周りの設計がされており、日本側の設計と細かな差異が存在したのも大きい)地球連邦軍が改装したために、日本の技術では手を触れられるレベルになく、戦艦の砲術というもののノウハウが当時の日本になかったのもあり、扶桑と地球連邦軍の交渉が日本の頭越しに行われていた。のけもの扱いを良しとしない勢力もいたが、海自の誰も第二次世界大戦以前の戦艦の砲術を知らぬという重大な問題があり、甲斐や三河の砲術を見ることしか出来なかった。また、扶桑軍は日本軍と異なり、冶金技術に優れる国情を背景に、45口径でテストの後、50口径砲を実用砲としていたため、日本での事情が必ずしも当てはまらない事もあった。しかし、扶桑でのウィッチ閥と艦隊派の軋轢もあり、砲身命数が少なくなる60口径砲への換装へは実戦データが送られるまで反対論が優勢であったりする。ウィッチ閥は連射速度の維持を主張してはいたが、大和型の船体規模は51cm砲を積むには規模が足りないし、ウィッチ閥は戦艦を『支援用の浮き砲台』扱いして憚らず、日本からも問題視されている。時代は今や、艦隊の防空能力が鉄壁になったがために、大戦艦が雌雄を決する時代に戻りつつある。空母機動部隊のあまりの運用コストの上昇ぶりが戦艦を冥府から蘇えらせたのだ。また、M粒子の存在によるミサイルの必中性の低下、ラ級戦艦達が証明した『重装甲は正義』の風潮もあり、日本連邦は戦艦を象徴としていく。(空母機動部隊の数量の低下もあるが)2019年はジェーン海軍年鑑などに『日本、バトルシップの運用ノウハウを再取得』と記され、キングス・ユニオンなどで戦艦のレンタルなどが盛んになった年であり、ルチユニバースゲートの技術開示が有った年として記録されたという。


――その年の野比家――

ウィッチとプリキュア達からル・マン24時間レースのための旅券が送られた30歳ののび太としずか夫婦。ノビスケを出木杉英才夫妻に預け、二人はフランスへ発った。28歳ののび太が前線で活躍している中、それから二年ほど経った時間軸ののび太は30代を迎えて、落ち着きを身につけ始めていた。のぞみと響に会いたいと、はーちゃんが言ったので、はーちゃんも同行している。表向きはのび太の養女(のび太が20代を迎えた以降の表向きの扱い)という事にしており、野比家の戸籍謄本にも、養子扱いでことはの名が載っている。のび太の実子のノビスケの義姉弟という扱いだ。

「ママ、旅券は持ったかい?」

「ええ。ばっちり」

「ノビスケは出木杉君のところに預けて来たし、はーちゃんの用意が出来たら、成田へ行くよ」

「わかったわ。はーちゃん〜、用意できたー?」

「できたよ〜」

「よし!行くよ〜」

当時はまだ年少のノビスケを出木杉英才夫妻に預け、のび太(30歳)、しずか(30歳)、ことはの三人は成田空港からフランスへ発った。前線は28歳の自分と調に任せ、30歳の自分はバカンスを楽しむ。裏稼業も続けているが、この頃には夫婦でやるようになったため、この頃にはしずかもG機関へ就職していたのが分かる。その収入で野比家の暮らしはだいぶ裕福になり、居候を含めればかなりの人数が野比家に住んでいる。しかし、ダイ・アナザー・デイで皆が出払っている。(本来は30歳のび太が参戦すべきだったが、28歳ののび太が引き受けたというのが裏事情だったりする)はーちゃんはのび太の養女であり、ノビスケの義姉にあたるが、みらいとリコの死によるショックでの精神状態の懸念から、ダイ・アナザー・デイへの参戦は見送られ、りんのみが戦線に加わった。このように、のび太自身、あまり細かい時系列は気にしておらず、『僕たちに時系列は意味をなさない』と言ったのは、タイムマシン技術で各年代の自分自身のネットワークがあり、南光太郎や仮面ライダーWのような状態での共闘すらあるからであった。黒江たちに力をいつでも貸せると言うのは、『ピンチの時に、タイムマシンでどこまでも必ず助けに行く』という約束を黒江たちの最初の転生の際に交わしていたからであり、時間の壁は『仮面ライダー電王みたいな感覚』で乗り越えられるからであった。はーちゃんも20年あまりの野比家での生活で傷を癒やしつつあり、ドラえもんがある時に発見し、黒江と智子が被験体として実験に関わり、はーちゃんも協力して、ウィッチ世界の21世紀の頃には軍事利用されている軍事理論『カップリング理論』の構築に尽力していたりする。(この理論は本来、ウィッチのペアとしての戦闘値を黒江たちが往年に発揮した値に近づけるためにウィッチ世界で1942年から基礎研究されていたものだが、実効性のある理論としては、G機関が数十年をかけて完成させた理論で、きっかけの発見者がドラえもんなのだ)ウィッチはペアを組む相手で戦闘値が大きく変動する事があるため、戦闘力の均一化を図るため、ペアの確立後はなるべく変更しない慣例があったが、ウィッチとしての寿命は個人差に左右されるため、ウィッチを兵科とみなすことに、連邦を組む側の省庁が抵抗する傾向があった。それを緩和させるために研究が始まったものの、各国のウィッチ研究の興味が薄れていくにつれて予算が減らされ、研究は放棄された。その資料を得たG機関が長い年月で研究し、大戦世代が定年を迎える1980年代に扶桑で確立に成功するのである。)完成した理論は二代目レイブンズによって1945年に持ち込まれていたが、当時は大戦世代が戦間期世代に代わって、第一線を張る時代に入りつつあった事もあり、顧みられる事は殆どなかった。だが、Y委員会委員であった高官達は大戦世代が去った後の質の低下を懸念しており、扶桑で研究がされ始めた。そのデータには、仮面ライダーW、仮面ライダービルドのデータ、プルシリーズの共鳴に関するものも含まれていた。また、ことはを中心にする形での歴代プリキュアの連携、ライダー一号と二号の連携も大いに参考にされた。ダイ・アナザー・デイはその研究の基礎の土台を確立させるための戦でもあった。




「ねぇ、のび太。のぞみさんたち、フランスで何してるの?」

「ん、チーム組んで、カーレースに出るのさ。24時間の。綾香さんが数年前から出てるバイクのマン島レースよりは安全だそうだ」

「綾香さん、去年、後続車に追突されてもピンピンしてたよね」

「聖闘士が時速300キロくらいのバイクの衝突でダメージを負うかい?」

「確かに」

黒江に取って、時速300キロは『鈍い』。黄金聖闘士にとっては、そんな速さはなんてことはないものである。オートバイから放り出されても、一瞬で受け身を取れるため、マン島レースに出れる腕を持ってからは毎年、レースに出ているのだ。また、黒江の持ち込むマシーンは改造サイクロン号と同規格の部材で改造されているために頑丈であり、ぶつかりあったほうが大破するほどの強度だ。また、シャーリー(北条響)と組んで、ニーラー(側車付きのオートバイの事)部門にも出場するなど、本格的に二輪モータースポーツに取り組んでおり、軍人でありながら、モータースポーツに本格的に取り組む姿から、本職にも高く評価されている。のび太は2018年のレースで黒江が練習中に後続車に追突された時に『あちゃー』としか声を発しなかったのは、黒江は死ぬことはないし、追突した相手を逆に救助できるだけの余裕があることを知っていたからである。こういうトラブルの回避のため、黒江はレース用マシーンをライダーマシンの部材で制作しているのだ。

「今年も出るそうだし、その前に24時間耐久レースに出る。フランスに行くのはその観戦のためだよ、はーちゃん」

2019年にもなると、すっかり、のび太の『娘』と言った感じが板についていることは。時間軸がかなり錯綜するものの、ことはは野比家で長期に渡って療養し、いずれは戦線への参加を目指しているのが分かる。これはタイムマシンがあるからこその芸当であると同時に、はーちゃんが肉体的には成長しきった後の外見的変化を起こさない大地母神であったことの恩恵でもある。つまり、はーちゃんは2001年から2019年までの野比家をタイムマシンで定期的に行き交っている事になる。三人で乗っている空港行きの電車でのび太が読んでいるネットニュースには、『カールスラントの潜水艦ライン、XXT型が主流になり、扶桑の伊号400潜、前線の要請で近代化改修へ』と報じられていた。これは日本連邦の対潜戦術をティターンズも有するため、カールスラントの潜水艦部隊と扶桑の伊号潜水艦の活動が封殺された影響である。特に伊号400潜は静粛性能を理由に、退役の内定がされたほどだった。ウィッチ閥の猛抗議を受け、近代化改修でGウィッチ専用にされることで生き永らえたが、ウィッチ部門の縮小が加速度的に進んでいる証でもある。整備マンアワーが戦闘機よりも高く、その割に費用対効果の低いG/Rウィッチ以外のウィッチの魅力は軍上層部にとっては低く見られるようになり、彼女らのサボタージュも結果的に、それまで許されていた『特権』が通常ウィッチから剥奪され始めた理由となった。

「ふうん、伊400型の改良ね。綾香さんが言ってたコマンド母艦の潜水母艦ってのはこれか?M級潜水母艦を連邦海軍から回すって話なんだけどな」

「綾香さん、もうM級を回したって言ってたわよ、貴方」

「これは扶桑の面子だな。晴嵐降ろしてまで改装したら、『役立たず』って罵倒されて退役内定だよ?連邦に泣きついたはずだ」

しずかとニュースを見る壮年のび太。黒江は深海での移動を前提に、M級潜水母艦を地球連邦海軍から得ていたが、些か大きすぎるため、手頃なサイズのコマンド母艦を求めていたため、扶桑が完成させていた伊号400型潜水空母の改修型を地球連邦海軍に開発を依頼し、改修艦が二隻、既に64へ配備されていたが、極秘扱いであるため、表向きはこの扱いであった。

「M級はデカすぎて探知されやすいし、自衛用の水中戦用MSも必要だから、隠密作戦向けじゃない。綾香さんの事だ。裏で手を回して、伊号400の改修をもう進めてるはずだよ」

のび太の予測通り、日本側に極秘で、伊400、伊401潜を既に改修済みであった。コードネーム『蒼き鋼』。それが黒江が進めた伊400型延命計画だ。既存の伊号潜水艦を日本を誤魔化すデコイに使い、伊400型を改修した。しかしながら、内閣府の情報局のみは総理大臣の統制の下に計画を承知済みで、財務省と左派を誤魔化すための意味合いが既存の伊号の解体と払い下げにはあった。潜水艦の戦が起こるようになり、高静粛性能の潜水艦が必要にされた事も、カールスラントの異常な傾倒の理由であるし、日本連邦海軍における潜水艦の型式統一である。しかし、ウィッチが存在する世界では軍事的不都合が多いため、日本連邦海軍は伊号400潜と伊13型潜水艦のみを改修の上で使い続ける。これはウィッチ部門の縮小が起こるものの、Gウィッチを戦線へ送る選択肢としての潜水艦は必要にされ続けていくからだ。輸送用潜水艦が航空機の高性能化で運用廃止にされていくため、こうした改修艦が兼任で細々と使用される。また、ティターンズがレーザー核融合弾、地球連邦軍が反応兵器と次元兵器を有するために忘れられているが、怪異はリトルボーイとファットマン程度の出力ではコアの破壊はできず、再生は可能という結論が出てもいた。つまり、1945年当時の科学力では、通常兵器はどの道、怪異へは決定打にならない証明である。また、リベリオンは元は連合軍に加盟していなかったが、アメリカが政治力で自由リベリオンを加入させ、理事国に仕立て上げたので『連合軍』が史実通りに使われている。また、国際連合の常任理事国にもねじ込まれたため、国情に見合わぬ規模の軍隊を維持せねばならなくなってしまう。実質、アメリカの現地政府という体裁で取り込まれ、21世紀中の米国の覇権の維持に利用されてしまったのだ。

「自由リベリオンは分裂政権だから、正統性の担保にアメリカの力がいるんだよねぇ。実質、22世紀の前半まではフロンティア扱いだろうな」

実質、アメリカ政府が援助と引き換えに、南洋第一新島の自由リベリオンの租借権を勝ち取ったため、自由リベリオンの政略にアメリカが介入する口実が出来てしまい、兵器市場の維持を狙うアメリカの動きがウィッチ世界に悪影響を及ぼしてしまう。その結果が東西冷戦時代なのだ。また、本来は『連盟軍』とされた多国籍軍を日本連邦の国際連合創設の動きを察知したアメリカが自由リベリオンを源加盟国として、常任理事国としたため、アメリカとの兼ね合いで『連合軍』という表記に落ち着いたのである。また、21世紀国家群が大量に特許を申請したため、それを介さずに軍事技術を共有するため、23世紀の地球連邦政府が21世紀国家群の上位組織として動くことになるのだ。また、カールスラントのドイツ主導での強引な軍縮と軍縮条約による技術者の離散によるノウハウ喪失を恐れた扶桑と自由リベリオン、キングス・ユニオンがそれらを抱え込むことになるため、その三国が1947年以降の世界での強国とされていく。ただし、自由リベリオンは元から財政難である上、自前の生産能力に限界がある事から、扶桑が自由リベリオン向けのストライカーと兵器の60%を生産することになっていくのだ。その関係で日本連邦は超大国化していくことになる。元々、怪異との生存競争が前提の世界であったため、軍備予算は豊富である世界。それに目をつけた日独の財務/厚生労働勢力はあれこれの軍縮をしようとするが、ドイツは結局、ナチ残党のバダンのつけ入る隙を与えてしまう失敗を犯し、日本は太平洋戦線の長期化を1945年の段階で予想する将校の出現を招く。これらの事実から、扶桑は早期にウィッチの存在意義は薄れないことを予期しつつも、軍ウィッチ組織の維持に多額の予算を割けなくなる事を悟っていた。それ故のGウィッチの優遇措置であった。しかし、当時に部内で迫害に近い扱いであった『転生者』である者達の優遇には反対論も存在した。しかし、黒江の支援者である山本五十六と井上成美は、『日本から持ち込まれた反戦と厭戦の空気で軍の人気は下がり、また、遅くても来年に起こると見込まれている内乱で厳罰を厳格に適応すれば、ウィッチの志願は壊滅するのは目に見えている。源田くんの構想を更に進めた精鋭部隊はどの道、確かに存在した方が日本への予算確保のいい方便にできる』とし、64Fの設立を公式化した。その反対論者達がクーデターを準備し、完膚なきまでに敗れ去るのは、のび太夫婦にとっては既定路線であった。

「扶桑は45年の夏から46年秋までのどこかで内乱が起こるのは既定路線だけど、今回は事前に規模縮小に手を尽くしたって聞いてる。だけど、64の肥大化に陸軍飛行部隊からも反対意見出てるからなあ」

「仕方がないわ。名うての8割でしょ?予備人員を含めて」

「整備兵やエンジニアも入れてね。日本の意向もあって、実戦部隊の精鋭を全方面からとにかく引き抜きまくったから、それも陰口の標的にされる理由なんだよなぁ。あの東二号作戦の頓挫の代替に、最強の部隊を一個おくって発想はジオン的だけど、一般大衆受けするからなぁ」

「日本軍の終戦間際の時期のイメージが生んだ最強の部隊ってのは皮肉なものね?」

「実質、陸海のオールスターズになってるからね。教官してたのも連行して異動させたらしいし」

「戦線の取捨選択を強引にしないと、末端の隊員まで精鋭は実現しないわよ?」

「北極圏戦線やアリューシャン諸島の戦線は熟練兵を根こそぎだって話だしね」

結成時点の64Fは全戦線から精鋭を引き抜いての実働部隊の二つのみが実働していた。新選組と維新隊だ。その二つがダイ・アナザー・デイでの傘下人員の集積所として機能しており、プリキュア関係者含めた転生者はこの時点では、新選組に一本化されていた。(後に、天誅組の林大尉の要請で、三つの部隊の隊長は出張での持ち回り制に移行したが)のび太夫婦の見る新聞は大手ではない分、そういった内容が異様に充実しており、64の陣容を称賛する内容のコラムがある。343空にハッタリとする悪評があったのに対し、日中戦争以来の古豪を網羅した陣容なので、太平洋戦争のエースパイロットに詳しければ、感涙モノの陣容であると褒めている。もちろん、黒江達は『今は部隊の実績がないから、リップ・サービス半分に受けとっておくぜ』とコメントしている。

「これ、扶桑向けのコラムじゃない?貴方」

「かなり甘口だしね。そうでないと、レイブンズへの陰口や嫌がらせが減らないって、軍の当局から依頼されたんだろうね。転生者は『一度の生を生きてる者』にとっては迫害の対象にしかならないし」

扶桑向けの内容であるので、日本人が見ると『身内贔屓』に見えるコラム。レイブンズを始めとした転生者への風評被害対策のため、また、戸籍年齢が20代に達する者達の居場所づくりの一環で書かれたと、のび太夫婦は読み取る。魔導師と違い、ウィッチは20代に入るとお局様という認識が『近年』は強い。そんな逆風と戦う宿命なのがG/Rウィッチである。

「でも、信じられないわね。輪廻転生の輪には乗ってるんだから、一度の生を生きて、逝っても生まれ変わる可能性が有るのに、迫害するなんて。過激派よりタチが悪い人種ね」

「普通はそういうものさ。神様に必要とされて、同一人物に生まれ変わる奇跡は、当事者にならないと有り難みがわからないものだよ、ママ」

のび太は妻を普段はママと呼ぶ。ノビスケの教育のためでもある。ノビスケ生誕後に見られる癖であり、もちろん、公の場では歳相応に『家内』と言っている。『しずかちゃん』と呼ぶ事も続けているが、子供時代からの戦友と親友ら向けである。いっぱしの家庭人としての幸せを得た証と言えよう。

「綾香さんが一番、喜んでるんだよな。僕たちがすべての記憶を持ってて、前と変わらない関係を築けてることに。あの人たちとの関係に陰口は叩かれているけど、ぼくはたいそれた人物評でなくてもいいんだけどね。おばあちゃんの遺言や、お袋の言う通りに『のびのび』と生きて死ぬ。英霊にしたいんなら、死んでからにしてくれって、ね」

のび太は銃が武器なので、異能が飛び交う場での戦力価値にかなり疑義が呈されているが、実際は全ての『射撃武器』に才能が適応されるため、生きながらにして英霊のクラスにして、アーチャーの能力を行使しているのに等しい存在と化している。モルグシティを救った際に使用していた『コルト・リボルバー』が彼の実質的な宝具の扱いになるだろう。同じ異能生存体のゴルゴと違い、彼の使用した道具が伝説と化している点で、デューク東郷とは一線を画している。のび太が少年時代に町を救った際に使用したコルトSAAの一つは現地に残され、『町を救った、流れ者の東洋人ガンボーイの使用した拳銃』ということで伝説じみて語り継がれている。これがのび太が英霊の有資格者と神々にみなされる理由の一つで、『如何な射撃武器でも相手を必ず射抜き、ワイアット・アープ真っ青のクイックドロウは、ゴルゴのみが対応できる』点は英霊としての能力の発露とも取れる。つまるところ、のび太は生前の時点で既に、技能が異能に昇華した半英霊的な存在であり、異能が飛び交う戦場での彼の威力の証明と言えた。



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