外伝その311『日本軍の残光3』


――扶桑海軍は内乱の主因になる事もあってか、ダイ・アナザー・デイ中から航空要員は冷遇され、空母搭乗員の多くを義勇兵が担う、海軍の精神性の殆どを否定した割に、義勇兵の大日本帝国海軍時代の精神は特段の否定はしないなどの固有人員の引き抜きによる弱体化の状況に陥った。水上艦隊要員がこの世の春を謳歌していたのに対し、航空隊は空軍への統合が試みられていた事もあり、悲観したウィッチ達の移籍を招いた。そのため、海軍航空ウィッチは海軍航空冷遇の元凶と見做したGウィッチと対立するが、彼女たちのあまりの暴走は国家から危惧されるに至る。MATは自衛隊内部の害獣駆除部署にあたるが、人同士の戦争への従軍を嫌う多くの扶桑ウィッチが移籍し、戦線は新兵と古参が残される事態になった。その結果、陸海の区別ができるほどには空戦ウィッチは軍隊に残留せず、Gウィッチと古参を一纏めにした64F以外の扶桑系空戦ウィッチ部隊は三週間でほぼ消失するに至った。扶桑海軍上層部はこの報を危惧し、残っている海軍航空ウィッチを直掩にのみ使用し、攻勢にはGウィッチを用いるドクトリンを確立させ、それまでの攻撃ウィッチの陳腐化への対応としていた――








――ルシタニア攻略への布石としての海戦も繰り返され、海戦を繰り返す内にブリタニアの参加艦は減り、ついには扶桑単独での海戦になっていた。それにも関わず、200機を超える艦上機を毎回毎回、用意してくるリベリオンに扶桑は恐怖し、それが艦上機の重戦闘機化を促進させた。紫電改と同時期に開発され、開発x凍結状態だった陣風も、紫電改のバージョンアップ扱いで緊急に開発され、零戦に代わる最後のレシプロ艦戦の一翼を担った。設計は紫電系と統合されたが、陣風は山西航空機系レシプロ戦闘機の最終型式として完成し、20ミリ砲六門、あるいは25ミリ砲四門の戦闘機として日の目を見た。これは紫電改の開発資産を流用してのもので、パーツの尽きた零戦各型の代替機としての配備とされた。烈風の戦闘爆撃機化は陣風の制式化も理由であった。あくまでも『ジェット機と、それを運用する空母の量産までの繋ぎ』の扱いとされたが、紫電のバージョンアップが限界点に達していたのは日本側も把握しており、烈風の性能特性に一抹の不安があったため、極秘で紫電改の血を継ぐ『陣風』を造らせていたのである。陣風は紫電改より高次元の性能を持つため、繋ぎ扱いとされつつも、多くの生産機が投入された。雲龍型で輸送された動悸は『F6F』、『F2G』、『F8F』といった高性能レシプロ戦闘機に扶桑航空隊が対抗する手っ取り早い『手段』とされつつも、義勇兵へ優先供給されたことは扶桑固有の搭乗員には屈辱と捉えられた――


――空母『龍鶴』(旧プロメテウス級)――

「揺れませんね、この船」

「正確には感じないだけだ。500mもありゃ、それだけ安定してるんだ。上下には細かく揺れてるぞ」

64Fは総出でプロメテウス級に乗艦し、船旅を楽しんでいるように見えるが、ルシタニア周辺の制海権を捕るための移動中である。この艦は23世紀の船であるため、MS、VF、スーパーロボットの運搬も軽いものである。そのため、甲板にはそれらが並んでいる。中には、ゲットマシン状態の真ゲッターやゲッタードラゴン改の姿もある。米軍の原子力空母よりも大型であるため、ひときわ目立つ空母である。大戦型正規空母が小さく見える大きさであり、艦載機も多種多様である。

「でも、バラバラですよね、機種」

「ウチの機材を手当たり次第に積んだからな。格納庫はカオスってるぜ。烈風や紫電改から、ジェット戦闘機、TMS、VF、特機までなんでもござれだ。昨日のケーキ批評は面白かったが、それどころじゃないからな。戦況は」

ここ最近、黒江はのぞみを一人前にするため、自分に帯同させており、重点的に育成していた。プリキュア勢の最古参リーダー格であるため、プリキュアを束ねるための訓練を積ませているのだ。錦の軍事知識を引き継いだとは言え、当人に実感を持たせなくてはならないからだ。

「こんな500mもある空母が戦艦大和とかを引き連れてるのに、攻撃してこないなんて」

「パルスレーザーを持ってる戦艦にレシプロで空襲する馬鹿はいねぇよ。それにイージス艦がいるのに、レシプロで攻撃したら、1000機で攻撃しても割が合わねぇ」

「敵はなんで、水上艦でバカ正直に艦隊決戦を?」

「普通はそう考えるだろうが、潜水艦があまり攻撃用途で用意されてない世界な上、こっちには対潜ヘリとアスロックがある。大戦型潜水艦じゃ、潜水艦でアイアンボトムサウンドになる。だから、艦隊決戦なんだよ」

艦隊決戦。古来からの水上艦の花形である。21世紀の常識では古臭いドクトリンと切り捨てられていたが、ウィッチ世界ではポンポン起きる。その差が日本の困惑である。如何にアイオワ級とモンタナ級が徒党を組もうが、超大和型戦艦がいる艦隊にはうかつに攻撃はできない。古来から格上の戦艦が相手にいる場合はよほどでないかぎりは戦闘を避けるのが鉄則である。いくら物量で来ようが、質が上の兵力は並の質の物量を打倒し得る。近代史では『日本海海戦』で示されたことだ。

「日本海海戦、知ってるな?」

「東郷平八郎元帥が戦った戦、たいていの世界で日露戦争の決定打になった近代史上稀に見るパーフェクトゲーム」

「そうだ。五十六のおっちゃんは嫌ってるが、あの人が日本海海戦の英雄である事には変わりはない。こっちが近代兵器を得たことで潜水艦を封殺したから、奴らが取れる戦術が艦隊決戦に限定されたんだ。その分、こっちも対応が楽にはなるが、敵は空母四隻で有に300を超える数を出してきやがるからな。ティターンズが艦載機の更新に努力を払ってるらしいから、注意はしとけ。それと、学園都市があった世界のティターンズだから、お前らだけが空を自由に飛べるわけじゃない事は覚悟しろ」

「なんか、ア○ター能力者とか出そうなフリじゃないですか」

「世紀末系拳法がある以上は、けしてあり得ないこともないだろ?お前らの力も、英霊の宝具も、人の意思がそれを上回る事がある。それが進化ってもんだ。なら、お前らも『進化』させろ。意志の力でプリキュアとしての自分を。力の根源が奪われただけで使えなくなるのは、お前らの力じゃない。自分の意志で制御することで始めて、自家薬籠中の物になるんだ」

「力を制御する……?」

「そうだ。ゲッター線も光子力も野生も、制御するには意志の力が必要だ。かつての東方不敗マスター・アジアがDG細胞を抑え込んだように。俺は数回の転生で小宇宙に目覚め、光子力とゲッター線の力を制御するに至った。生前を超えたいのなら、俺達の行き着いた次元に上がってこい。」

「は、はいっ!」

多大な副作用も伴うが、神と戦える力を得られる事がGウィッチのメリットである。(ゴルゴやのび太のように『神殺しを素でできる人間』は全次元世界を見回しても超弩級に希少な存在だ)かつてはプリキュアであり、Gウィッチとして転生したのなら、自分達と同じ次元に立てるはずだと。のぞみに示す黒江。(実際に、はーちゃんはガイアで生まれし髑髏の魔神皇帝のように、『トールハンマーブレーカー』などを特訓の末に撃てるようになっている。のぞみ自身も、後々に『真シャインスパーク』、『ストナーサンシャイン』をシューティングスターとソリューションに代わる、新たな決め技とするようになり、プリキュアの後輩達を大いに驚かす事になる)

「あ、クロから確認しといてくれって事を言われてたんだった。俺の部屋に来い」

「?」



――10分後の艦での黒江の個室――

「確認って?」

「なのはとフェイトが平行世界に飛ばされた事があるって話したろ?」

「ええ」

「その事前確認だ。段取りもあるんでな」

タイムテレビを出して、スイッチを入れ、なのは達一行が今回の歴史におけるその事件の『当事者』になった様子を映し出す。前史がなのはが19歳当時の頃のミッドだったのに対し、今回はなのはが小学校当時の地球であり、闇の書事件の真っ只中に転移してしまい、当時のヴィータに襲われるという状況になってしまっていた。ヴィータの実力がどうであれ、既に、その当時と比較にならない能力を有している大人のなのはとフェイトには力押しだけでは勝てず、ものの数回の会敵だけでヴィータがズタボロにされる有様だった。

「あ、フェイトの奴も手加減しないな。ライトニングプラズマなんて、普通は死ぬぜ」

ヴィータは並の魔導師とは比較にならない防御力を持っていたが、既に色んな意味で反則な大人フェイトには触れることもできず、思いっきり涙目で、命乞いでもやりそうな勢いで怯えている。それだけ実力差がある事でもある。

『…俺とツレの魔力が欲しいようだが、貴様の実力では、この俺に触れることもできんぞ』

フェイトはヴィータをわざと煽っている。映像で見て、大笑いの黒江。今回は闇の書事件の頃の時間軸なので、いろいろと出来事がおかしくなりそうである。黒江とのぞみはそこと別の時間軸を見てみる。

「おおっ!?真ゲッタードラゴンだ……」

予想以上に呼び寄せるゲッターロボがインフレしたようで、真ゲッターよりもものすごいゲッターである、ドラゴンの進化体『真ゲッタードラゴン』であった。闇の書の闇を『理すら崩す』真シャインスパークの一発で消滅させている。次元すら貫く真シャインスパーク(ゲッタードラゴン系の最終兵器。威力はストナーサンシャインをも超える)はその世界にいる時空管理局関係者を大いに畏怖させただろう。

「真ゲッタードラゴン?」

「これから生まれる、ゲッタードラゴンのオリジナル版が進化したゲッターロボで、最強のゲッターエンペラーの二段階前の姿にあたるゲッターロボだ。(真ゲッタードラゴンはどこかでゲッター聖ドラゴンへ進化し、そこからの真ゲッターとの融合進化でエンペラーに至る)この姿でも、23世紀のスーパーロボットで最強クラスの実力を持つ。その世界のなのは達の出番は無くなったな。真ドラゴンの力は理も崩すからな」

真ドラゴンの力はシャインスパーク一発で、闇の書の闇を再生の間すら与えずに粉砕する。魔力を伴わない攻撃が一発で、歴代の高位の魔導師が犠牲を払いつつ封印してきたものを見事に粉砕するという光景は闇の書事件当時の時空管理局(黒江達の知る時空管理局と別の時空管理局であるが)を震撼させただろう。

「パイロットは竜馬さん、隼人さん、弁慶さんだろうから、悪人面だろ?子供のなのは達、ションベンちびるかもな」

「初代ゲッターチーム、子供が見たら怯える強面ですからねぇ」

「超光速の真ドラゴンでピンピンしてるから、クロノが腰抜かすな、こりゃ」

初代ゲッターチームは成人後は『悪人面』(弁慶は比較的に大人しめ)と揶揄される強面であり、普通にPT事件と闇の書事件を経ている場合のなのはとフェイトが見れば、怖がるだろうと踏む黒江。(実際は竜馬と弁慶に関しては子供に好かれるのだが…)それはそれとして、また異なる時間軸でのシグナムと大人なのはのある意味ですごい対決が映し出された。シグナムとと互角に渡り合うまでに成長した場合の未来がなのはに存在した。闇の書事件前後には、管理局入りの暁には教導隊に誘われていたので、それほど不思議ではない。シグナムはそれを知り、嬉しそうである。そして、なのははのぞみからラーニングしたあろう新技を披露した。

『スターライトぉぉぉ!!ソリューション!』

「えー!?なのはちゃん、いつの間に!?」

「今からこの映像の事態に至るには時間がある。それまでにラーニングしたんだろう。あいつの実力なら可能だ。プリキュア・スターライト・ソリューションを再現するなんてな。あいつもやるもんだ」

シグナムはソリューションの光で蜂の巣にされ、ノックアウトされる。なのはは子供の頃は魔法少女に憧れ、本当になってしまった経緯があるため、プリキュアに憧れている節がある。もっとも、なのははキュアアムールに声が似ているので、ある意味では『なれる素質がある』と言える。なのはは意外にファンシーな趣味のところが残っており、ゲッター線を浴びて闘争本能が引き出されて、ガサツになろうとも自宅の調度品のセンスに関しては子供の頃からあまり変わっておらず、むしろ、フェイトのほうが質実剛健なシンプルさを好んでいる。

「なのはの奴、変わってるようで、変わってないとこも多いからなぁ。ただ、フェイトみたいに年齢操作を覚えてねぇってポカしてたから、ヌケてるとも言える。フェイトはどうした?」

「フェイトちゃん、元に戻るのも面倒だから、ここ数日はバリアジャケットの姿で、しかも子供姿でいますからね。映画撮影中って言ってましたし」

「なんでも、三部作予定が、もう一作増えたんだそうだ。それを知らされて、二人共ひっくり返ってた。そのストレス発散で、子供の姿になってるそうだ」

「なのはちゃんは?」

「ブートキャンプ終えて、それを知らされたんで、フェイトから年齢操作教わったそうだ。今は子供の姿になってると思うぜ。手当がでるそうだから、割り切ったそうな」


「意外に管理局もセコいですね…。予定変更なんて」

「動乱で資金不足だしな、あそこ。かなりの管理世界に離反されて、資金繰りでヒーヒー言ってるのが現状だし、地球の影響下に置かれるって事自体が屈辱のハズだが、あそこの世界の時空管理局は地球からの移民や漂流者が作ったものだ。それを考えれば、当然の帰路だろ。他の世界はそうではないけど。まあ、資金確保のためと、続編希望が多かったんだろう。映画なんてのはそういうもんだ」

「ヴィヴィオちゃんは?」

「実家に預けてあるとか聞いたぜ。長くなりそうだし、あの子もまだ小さいしな」

「あ、アリシアが迎えに来たところでも見るか。つまり、花咲つぼみでもあるが」

「わたし、気になります!」

「どこのあれだ」

アリシア・テスタロッサ/花咲つぼみが迎えに来た時の映像が移る。

『やっほ〜い、迎えに来たよ〜』

「ね、姉さん…」

頭を抱えるフェイト。アリシア・テスタロッサはフェイトと違い、元の人格が明るいため、花咲つぼみとしての人格が目覚めても、あまり変化は無かった。研究者であるためか、白衣を着込んでおり、12歳当時のフェイトとほぼ瓜二つである。

「え…、お姉……ちゃん?」

「別の世界での、ね。貴方の知る私は五歳の頃に死んでるけど、色々と事情があって生き延びたんだ。だから、フェイトは正真正銘、私の妹というわけ」

アリシアは魔導師としての才能は無いが、研究者としての母親の才能は受け継いでおり、第2世代宮藤理論の確立は彼女の功績である。見かけは12歳前後のままだが、実年齢は20代であり、れっきとした姉である。アリシアが生き延びたため、プレシアは普通にフェイトを出産したという事になり、クローンであった元々の出自は上書きされている。また、歴史改変の帳尻合わせか、プレシアの生年月日もズレが生じていたりする。

「アリシアちゃん…、でいいのかな?お仕事は何をしてるの?」

「研究者だよ。母さんの後を継いだから。それともう一つ。魔法とは関係ない力を持ってる。それを見せてあげる。」

「に、にゃ?」

「プリキュア・オープン・マイハート!!」

アリシアは9歳のなのはにサービスし、キュアブロッサムに変身する。魔力は低く、才能も無いが、プリキュアとしては中心的なピンクである。所属はハートキャッチプリキュアである。ダイ・アナザー・デイに参戦できないが、覚醒し終えているので、プリキュアとして公式に認定されている。

『大地に咲く一輪の花!キュアブロッサム!!』

バシッと名乗りも決めるキュアブロッサム。完全に魔法関係なしの変身である。

「にゃっ!?ね、ねぇ、大人の私!どうなってるのぉ!?」

「見てのとおりだ。アリシアちゃんは生き延びた代わりに、『プリキュア戦士』になったんだ。少なくとも50人いるうちの一人になったっていうか。この姿なら、普通にザフィーラさんをを倒せるよ」

「嘘っ!?」

なのはは涼しい顔の大人と驚き、狼狽する子供とで軽妙な掛け合いを見せる。当の子供フェイトは固まっている。

「姉さん、ノリノリで悪いんだが、子供の俺が固まっている」

「ちゃっー、刺激が強すぎたかな」

子供のフェイトは固まっているが、直ぐに正気に戻り、パニックに陥る。と、そこへ。

「お前、子供の頃はこういうのに弱いな?」

「メロディさん、変身してきたんですか?」

「ブロッサムがノリノリでよ。変身してきた。流れ的に名乗ったほうがいいか?」

「どうぞ」

『爪弾くは荒ぶる調べ!キュアメロディ!!』

流れで名乗るキュアメロディ(シャーリー)。大人フェイトがブロッサムの先代にあたるプリキュアの一人であると説明し、変身ヒロインぶりを見せつける。ものはついでに連れて来られていたのぞみも、キュアドリームとしての姿を見せる。

「これ、響に連れて来られたって言うべきですか?」

「二人だけじゃ寂しいからだろ?最低でも三人いないとな。初代とスプラッシュスターしかできんだろ、二人での名乗り」

映像を見る黒江とのぞみはノリノリなシャーリーに若干閉口気味だが、のぞみ自身、その事態に巻き込まれていたようで、通常形態での名乗りを映像の中で久しぶりに見せている。

『大いなる希望の力!!キュアドリーム!!」

「お姉ちゃん、この人達……は?」

「私の先輩と後輩。戦士としてのね。前世で一緒に戦ってた仲間だよ。生まれ変わって、戦うために集まってる途中なんだ」

「詳しくは言えないけど、ヒロインの宿命って奴だぜ、はっはっはっ」

メロディは生前と違い、シャーロット・E・イェーガーの性格が色濃く、紅月カレンの好戦的な面も作用している複雑な性格だが、基本はシャーリーの気さくさを保っている。そのため、ドリームと意外に馬が合うらしい。

「そうそう。宿命ってやつだよ、フェイトちゃん。貴方のお姉さんも背負ってるんだ。それをね」

「宿命……?」

「フッ、宿命ってんなら、俺達も同じだがな」

「リョウさん。子供を泣かせないでくださいよ?」

「それを言うなら隼人に言え。白衣とフライトジャケットだぞ」

道着姿で真ドラゴンのシャインスパークを撃っていた竜馬。成人後なので、高校生時代より凄みの増した風貌だが、彼はまだマシなほうだ。

「この姿のお前たち見るのも久しぶりだぜ」

「ま、本当に子供の俺達と会うのは久しぶりですからね。隼人さんは?」

「隼人なら、クロノ執務官に質問攻めにあってるぜ。いきなりシャインスパークでぶっ飛ばしたからな」

「この人は?」

「俺は流竜馬。あの怪物をぶっ飛ばした真ゲッタードラゴンのパイロットチームの一人だ」

「真ゲッター…ドラゴン」

「お前の言う質量兵器になるかもしれねぇが、ドラゴンの力は見ただろう?あれがスーパーロボットってもんだ」

「今までの管理局の努力はなんだったんだろうって考えるくらいのあの攻撃…。ここ数ヶ月の私達の努力はなんだったの?……」

「極限まで科学を煮詰めれば、世界の理も超える機械も生み出される。それをどういう風に扱うのかは、その人達次第ってことだよ、なのは、フェイト」

ブロッサムが言う。マジンガーZERO、それに対抗できる力を持つ真ゲッタードラゴン、ダブル魔神皇帝を念頭に置いての発言であった。また、はやてとの三人で決めるはずの見せ場を真ゲッタードラゴンが持っていったからか、ショックが大きいようだ。また、自身の姉(オリジナル)(たいていの世界では、子供のフェイトはアリシアのクローンである)であるアリシアが生き永らえ、未知の力を司る戦士になっていたりと、平行世界での出来事とは言え、あまりに衝撃が大きいようだ。

「そういうことだ。俺達も神と悪魔の2つの力を持つマシーンを動かしてるが、要は扱う人間次第だぜ」

「そういう事。管理局が批判されるのは、自分が世界の調律者とか調停者を気取って、上から目線で他の世界に接してきた事だったからだよ。次元世界を見回せば、ミッドチルダを超える科学を持つ世界は地球だけじゃないからね」

ブロッサムの言う通り、時空管理局は全次元世界の管理者/調停者のように振る舞ってきたが、23世紀の地球がたどり着いた次元世界の真理を考えるに、数ある『時空管理局』のうちの一つが23世紀/21世紀の知る時空管理局である。それを基準として考えると、如何にスーパーロボットの製造に至った場合の地球が精強であり、その地球が敗北の味を味わう事になるイルミダスの強大さ、それが更に精神崩壊ものなほどに強いゲッターエンペラーの力がゲッターロボとして、無比なのがわかる。映像でブロッサムが現役時代と異なり、『身内』がいるためか、元々のフェイトに近い中性的口調になっているのに驚きの表情ののぞみ。時たま、花咲つぼみとしての芯の強さも覗かせるため、アリシアとして転生したのも納得である。ここでのぞみが黒江に質問をぶつける。

「管理局はなんで、偉そうに他の世界に接してきたんですか?」

「古代ベルカが解体した時にナンバー2になってたからだろうな。全次元世界を見回せば、そうとは言えないんだがな。自分自身の派生世界も多いしな」

「あそこは複雑ですね」

「古代ベルカの解体後に台頭してきた国だしな。色々とあそこも考えたんだろうけど、自分達以上の軍事力を考えなかったのが仇になったんだよ。調が言ってたが、ベルカの健在当時はミッドはミソッカス扱いだったそうな。ベルカの解体で、自分が甘い汁吸って成長したから、自分達以上の存在に思い至らなかったんだろう。お前の覚醒が動乱に間に合わなかったのは残念だが、なのはは大喜びだぞ」

「うーん。喜んでいいのか」

「ま、プリキュアだし、普通になのはと戦えるって時点で普通に凄いぜ?ティアナは、転生してようやくって感じだし」

「経験が上ですからね。ナイトメアとエターナル相手に死線潜ってきてるし、オールスターズで戦ったのを勘定に入れれば」

「仮面ライダーたちほどでないにしろ、お前らも死線はくぐり抜けてきたからな。ウチの国もそうだ。事変の時以外は負けがこんだことはなかった。日本が拘ってるのは、『敗北の味』だ。扶桑に敗北の味を覚えさせて云々だが、大陸側領土の何割かは事実上、喪失してるんだぜ?扶桑からすれば『もう沢山だ』だよ。意図的に太平洋戦線で戦力を数十万はすり潰そうとする勢力もいるから、第二次事変でも起きないと、喪失した領土の奪還の大義名分は立たんだろうな」

「そんな、自分勝手じゃないですか」

「日本の野党の政治屋なんてのはそういうもんだ。与党と違って、国防を戦争ごっことしか見てないんだよ。内務系の官僚と同じだ」

日本は『国防』を扶桑国民から遠ざけ、政治の段階で片付けようとする世論が存在し、それが扶桑ウィッチ暗黒期の招来を招き、『大戦世代に生涯現役の者が多かった』とする歴史の裏付けがされた事になる。シビリアンコントロールの名のもとに扶桑軍を上から押さえつけようとしたら、各国軍の疲弊が顕著になり、カールスラントの部隊の撤退と規模縮小に伴い、扶桑がカールスラントの担っていた役目を引き継ぐ流れになるので、野党はますます発言権を失うのだ。

「悪影響で世代交代の速度も信じらんねぇくらいに鈍化するだろうから、多分、この先何十年かは前線だろうな。リベリオンとの戦争に10年かかるのも覚悟しとけ。日本はリベリオンの五大湖の工業地帯破壊、真珠湾壊滅、ワシントンに旭日旗が翻るのを最終目標にしてるが、すんなりとはいかんだろう。リベリオンが南北戦争でも再開すれば、焦土作戦もされちまうだろうし」

黒江の言う通り、日本は太平洋戦争の開始の暁には、『文字通りにリベリオンをダウンフォールさせる』と、夢のような目標を掲げる。その事での混乱で戦争目的も定まらない状態が数年は続く。ダイ・アナザー・デイ中に内々で定められたその方針は議論を呼び、結局は戦争の途中で電撃的に決まる有様だったという。

「そうなると、この戦いでボコボコにしないと、時間が稼げないって事じゃ」

「そうだ。日本がこの時代の米国の工業力を恐れるのは、鉄鋼を一年で10万トン製造できる工業力が理由だ。それに本気を出されるのを恐れてる。だから、グレートマジンガーやゲッタードラゴンで町ごと消しちまえっていう提案出してくるんだよ。日本はどうやら、第二次世界大戦の復讐を望んで、リベリオンの主要都市すべてを瓦礫の山に変えたいみたいだ。西部開拓の時代に逆戻りさせたいんだろうよ」

「太平洋戦争の復讐ですか?」

「統合戦争末期もそうだが、日本はどこかで復讐を望む。太平洋戦争で誇りを打ち砕かれたことへのな。多分、リベリオンの人口を700万は殺すつもりだろ」

「どうしてそこまで…」

「リベリオンが途中で白旗上げる質に見えるか?フロンティアスピリッツで必ず勝とうとする。日本はリベリオンの国家機能を崩壊させてでも、完全な屈伏を望んでるのさ」

それは全てで無いにしろ、日本がウィッチ世界で太平洋戦争の復讐を目論みつつ、戦争で扶桑陸軍を半減させようとする思惑を一部勢力が持つ事は黒江は見抜いていた。そのため、ウィッチ世界の主要国の疲弊ぶりをアピールし、それでも『せざるを得ない』状況であると啓蒙するしかない。日本の恐怖もあり、リベリオンとの戦争は凄惨な殲滅戦の様相になっていく。核兵器を使わないものではあった故に長期化し、リベリオン合衆国の成立が白人種の他人種への弾圧なり迫害に根ざした事もあり、リベリオン合衆国が派閥ごとに途中で分裂していったからだ。

「リベリオンは白人優位の国だったからな。成立過程からして、ガンフロンティアじみてやがる。多分、西海岸とかの州はこっちに寝返ってくれるかもしれないが、南部は頑強に抵抗するだろう。10年戦争することもあり得るかもな。攻勢を半年維持できるだけの物資の備蓄は困難だし、休養その他も入れると、その間に立ち直られる場合も考えられる。この戦の損害も、二年もあればチャラになっちまうだろうよ」


「リベリオンは群雄割拠に?」

「そうなる可能性が大きい。下手すると、古代中国の戦国時代みたいになるかもな。ティターンズの統治は恐怖政治に近い。その統制を外れる州が出てくるだろうさ」

「なるほど」

「生前がアホの子の割に、分かってんな」

「ここで言います〜?そりゃ、フライ返し持ってきちゃったりしましたけど…」

「いいだろ?子供の頃のあの二人にカッコいいとこを見せられるんだし」

「ま、私達が介入すると、色々ややこしくなるから、これはこれで正解かも」

「調の奴はまだ帰れねぇそうだし、お前達も忙しくなるぞ。キラキラプリキュアアラモードの二人は正面戦闘向けじゃないから、正面戦闘ができるプリキュアのお前たち『初期世代』が要になるぞ」

「クラッシュイントルードを覚えようかな…。シューティングスターの応用でできそうだし」

「それがいい。資料はみゆきから借りろ。あいつ、結構アニオタらしいから」

「……」

開いた口が塞がらないのぞみだが、星空みゆき(芳佳)は飄々とした振る舞いを見せつつ、資料と言い訳して、アニメソフトを買い揃えている事がここで明言された。そのため、のぞみやラブ、響の現役時代の事はバレているのである。

「みゆきちゃん、生前は仲間内で、わたしの二号みたいな扱いだったのに、すっかり変わったなぁ」

「あいつは戦車道世界で海千山千を潜り抜けた経験を持ってる。それで変わっていったんだろう。それに、芳佳としては、お前に似てる性質だったよ。プリキュアに戻れたのも分かる」

「先輩……」

「お前もくよくよするな。なのはとフェイトを見てみろ。今じゃ、昔の自分を笑い飛ばせるようになってる。お前も錦の性質が混ざり始めてるんだ、割り切れ」

「それはそうですけど、りんちゃんの手前…」

「いや、お前。頭に血がのぼると、俺って言うようになってるから、驚かれてるぞ」

「……」

「その顔だと、自覚ねぇな?りんとラブには俺から説明してあるが、後の二人のガキには自分から言え。共闘の機会が少なかったんなら、お前のことをよく知らんはずだし」

「振り返ってみても、あの辺の代の子とは共闘した記憶、あまりないですからねぇ〜…。わたしの口から言わないとダメかぁ」

「綾香さん。そろそろ講義の時間…、のぞみ、ここにいたの」

「おう、りん。今行く。こいつに確認させたい事があったんで」

「軍服姿も悪くないよ、りんちゃん」

「生前は実家は花屋、若い頃はスポーツ選手だったり、ビーズの講師とかしたけど、まさか日本軍の軍人になるとは思っても無かったわよ。空軍になるって聞いたんですけど、なんで陸軍の軍服を?」

「まだ正式には発足してないからだ。ウチの部隊は陸軍のエース部隊が出自だからな、編成上はまだ陸軍なんだよ。空軍になったら、空自のモノを宛行う予定だから、それまで我慢しろ」

「これで日本の町中は出歩けないよね…色んな意味で」

「俺も、半ボケ老人に絡まれた事があるからな、そのへんは上手くやれ。政治的理由で陸自のに変える予定だそうだが」

「政治ですか」

「軍隊は巨大なお役所でもある。本当はいちいち申請書類書くんだが、戦時に書類なんて書いてられないから、俺たちにはスクランブルで出て、事後報告の権限が与えられているんだ」

64Fは343空を吸収する立場であり、かつての勇名という点では、ウィッチ世界ではそのほうが通りがいい。343空の組織を引き継いだのは、日本へのリップ・サービスであるのが半分である。扶桑は日本の財務省に予算を削られるのを警戒し、矢継ぎ早に施策を実行し、大和型戦艦以降の新戦艦を国民にアピールし、Gウィッチに特権を授与した。大義名分は『戦果での昇進に限界が出たから、特権は特進の代わりである』というものだ。実際、現場に留めるために昇進させない慣習が扶桑の悪習と指摘されたため、『准将』を大慌てで制定し、大佐で留め置かれていた者たちを昇進させた経緯は扶桑の一般層にも知られており、黒江が自衛隊で『空将』になっていたための帳尻合わせに苦労した裏事情も公然の秘密と化していた。海軍にそこまで出世した機械化航空歩兵が少なかった(クロウズの世代以降は、まだ尉官が大多数であった)事もあり、強い劣等感を抱いたのもクーデターの理由である。また、64Fは遊撃部隊と化した事もあり、書類は殆ど事後報告だけになり、ローテーションで要撃、制空、爆撃、陸戦に駆り出されている。機材は連合軍でも最優先で最新鋭のそれが割り当てられていたが、扶桑の既存機の生産ラインが日本の誤解で止められてしまったこともあり、現在は未来のジェットストライカーとISで任務に対応している。そのため、連合軍は戦果での昇進に限界点を設ける事になり、准将を『戦果で到達する最高階級』に定め、少将以上は高級幕僚課程の受講で資格を得ると定められた。ただし、元々は他組織で最高位に登りつめてしまった黒江の待遇問題と自衛隊への体面の都合で緊急に制定された階級であるため、前線に浸透していない。その都合もあり、便宜的に中将待遇になっている。そのため、黒江の階級は表向きは『中将』で通されており、作戦後には『特進』ということで、正式に中将にする手筈である。海軍空母ウィッチの少なからずが敵対意識を持ったのは、『元が陸軍なのに、自分達以上の海軍通である』という嫉妬から来るものだ。

「空自の隊員なのに、海自で本職顔負けの教育受けてるからなぁ、先輩」

「そんな事できるの?」

「俺は空自の幕僚長にはなれんが、その代わりに統括官なんて身分を宛てがわれたからな。2010年代になってからは暇だから、海自の現場に視察名目で顔を出してたのさ。それで幹部学校の講義を聴講してたから、海自から褒められた事あるぜ」

「つまり、陸海空の知識は本職と同じくらいって事ですか?」

「防大の同期も2010年代に入ると、佐官になってるからな。そいつらから聞いたりもしてるるよ。ガチで職業軍人なんてやってると、同期も年月の経過や家庭の事情とかで除隊していくしな。女の身でガチでパイロットしてるとな、日本は褒めるのと、貶めようとするかの両極端が出てくるんだよ。お前らを軍に入れた事に未だに文句つける奴がいるようにな」

専門教育を江田島(海自の幹部学校の隠語)で受け、船にも乗艦し、海軍提督の個人レッスンを受けている。れっきとした海軍軍人としての教育コースは統括官拝命後に辿っており、黒江のやりすぎ伝説を彩っている。陸海空宙と、考えられるだけのフィールドを制覇している事から、2010年代からは『万能超人』というあだ名も得ている。陸自、海自、空自の各分野を制覇したためでもあり、本職が空自の戦闘機搭乗員でありつつ、船舶免許なども取得済みであるなど、一度手を出すと、その分野のプロ級になれるほどに極めてしまう求道的な特性からついた渾名である。また、プリキュアをウィッチ枠で、どんどん雇用していることに未だに抗議が来ていることにも触れる。

「戦う大義名分に、軍人の身分を使ってるだけだけなんだがな。民間人が戦って許される時代は、統合戦争で人手不足になってからだし、正当防衛とかで警察がうるさいからでもある。さて、今日は艦内の道場だったな。お前らに格闘のイロハを教えてやる。経験則だけじゃ、ガンダムファイター崩れや世紀末系の連中には勝てないからな」

戦いの合間に講習という形で、歴代プリキュアに格闘のイロハを仕込んでいく黒江達。プリキュア達は代が下ると、肉弾戦技能が下がる傾向があり、敵にプリキュアを平均戦闘能力値で上回る超人がゴロゴロいる以上、プリキュアの名にかけてでも、その超人たちを更に超えなくてはならない。その事は、歴代のピンクのプリキュア達が一番に自覚している。切り込み役かつリーダー格である分、その危惧は大きい。のぞみは特にそれが大きい。『最古参である』事はプレッシャーのがかかる事でもある。後輩達への体裁もあり、自分を律する必要に迫られている。のぞみは生前に仲間に頼ることを躊躇した結果、散々たる晩年を過ごした。りんも出身世界で、のぞみと似た選択の結果、最愛の弟を失った事を匂わしており、似た者同士であると黒江は感じていた。親子二代で友人になり、そして、似た選択で後悔する。そういう点でもだ。



――のぞみはやがて、その意志の強さでゲッター線に見出されていく。その結果、はーちゃん(ことは)が光子力を制御したのと対を成す『可能性の光』であるゲッター線の力を手に入れる事になる。そして。やがては圭子と同じ領域へ突入する。公には『加東圭子のオカシイところの後継者』扱いになっていくのである。圭子は事変中からやらかしまくり、問題児で通っているため、そのやりたい放題の後継者と周囲に目されたからだ。ゲッター線に見出された影響か、素体になった中島錦が持っていた好戦的な面が徐々に表出していく。激昂する時限定だが、一人前が『俺』になるけど、生前と異なる特徴を得ていく。制御に至った後は『真シャインスパーク』を行うなど、プリキュアから多少離れた『龍の戦士』としての姿に目覚めていく。その点で言えば、圭子に続く者と言えた――



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