外伝その388『海軍の不穏分子』


――扶桑海軍は育成していた基地航空隊を空母航空団ごと引き抜かれた。これで単独での洋上作戦を行えなくなったわけで、日本側の思惑はどうであれ、扶桑海軍の一部の青年将校はこれに強い不満を持った。富嶽の開発費の請求もしようとした海軍だが、昭和天皇の叱責でそれらは抑え込まれる。だが、過激派はクーデターの準備を進める。それが皮肉な事に、海軍航空の形骸化を進める事となった。空母航空団は空軍の厚意もあり、なんとか組織としては存続したが、時代の転換期にぶち当たった事もあり、生え抜きが再び生まれるのは年月を必要とし、しばらくは空軍の空母乗艦時の便宜上の組織扱いされる事になる。ジェット戦闘機の普及でそれまでの常識が覆ったからだ――




――統合参謀本部――

「提督、過激派はクーデターを強行するつもりだぞ」

「馬鹿どもめ。国難が迫っとるというのに、呑気に政変を諦められないのか」

「戦線では、国産戦車が寄ってたかって旧式扱いされて回収され、日本が望むMBTに切り替えられ、なんとか砲戦車が支援車両扱いで生き延びたが、155ミリ榴弾砲に換装される車両が続出している。それを屈辱と捉える者が多いということだろう」

「戦車戦は90ミリ砲どころか、105ミリ砲に飛躍しつつある。国産車が時代遅れになった事に不満が出るのは承知していたが、お上の御心知らずとは、よく言ったものだ」


山本五十六は45年当時には62歳。史実より長命を保っていた。身長は当時としても『小男』と表現される160cmちょうどだが、彼が生まれた時代を考えれば、むしろ長身に属する。史実では軍政では有能、軍令では無能とされるが、山本自身は『俺は軍政家だよ』と自嘲気味に語っており、望み通りに政治の世界に転身が叶った世界では『有能な大臣』で通っている。彼は極秘裏にY委員会を設立。英国の円卓会議に習い、政財界の重要人物で構成される秘密結社を表向きは『軍部の外部監査委員会』として設立し、公然と活動を開始。日本連邦の国防方針は実質的にY委員会に最終決定権がある。

「委員会は活動を開始しているが、問題は日本の介入だ。これ以上の政治的介入を受ければ、外征能力を下手すれば失うやもしれん。それを避けるためにも、叛乱はすぐに鎮圧せねばならん。わかるな、長門」

「ああ。陸奥に内偵を急がせる。欧州に神通、矢矧、摩耶、それと秋月型を送り込むが、いいか?」

「ついでに伊勢と日向も連れて行け。戦車と砲の不足で火力投射が続かんらしい」

「連絡しておく」

山本は配下に艦娘部隊を抱えている。日本も存在を最近になって把握した。艦娘は陸戦も可能なため、その火力で支援砲撃が期待されており、先行して送り込まれた大和はその成果を概ね達成している。だが、大和一人では効果は限定的であるので、増員が図られたわけだ。戦車と火砲の不足は大問題であったが、日本防衛装備庁が19式装輪自走155mmりゅう弾砲の配備を目論んだり、旧軍式戦車から自衛隊式戦車への切り替えを性急に行ったことで現実問題化した。そのため、メカゴジラやメーサータンクを持ってきたが、数はたかが知れている。艦娘を陸で戦わすのは、そんな兵力不足を補うためである。

「お前たちに畑違いのことをさせるのは心苦しいが、今は東郷平八郎元帥の時代ではない。陸の連中をガンガン支援しなけりゃならん。そうしないと、向こう側の白襷隊の二の舞だ」

「わかってるさ。ガ島のこともある。大和、伊勢、日向にはぶちかませと発破をかけておく」

「武蔵の艤装の調子はどうだ?」

「対空兵器の噴進砲が不調でな。本土で調整させる」


艦娘は艤装が別個に整備可能だが、実艦の逸話通りの稼働率だったりする。例えば、武蔵は射撃方位盤の故障率が高く、そこが山本の頭痛の種だ。これについては職にあぶれた学園都市の技術者達が改造を加え、改善された。以後は火砲を持つ艦娘の多くがその仕様に強化される事になった。その技術は23世紀以降の宇宙戦艦の艦砲の照準装置の基礎となったという。

「わかった。大和に森下くんや有賀君への挨拶を忘れるな、と」

「メールで伝えるよ」

艦娘は基本的に関係の深い提督(艦長)と仲がいい場合があり、大和は新旧二代の史実での艦長と仲がいい。山本は長門に大和のお目付け役を頼んでおり、その関係もあり、長門は大和のメールアドレスを知っている。大和は史実での引きこもりぶりの反動でウォーモンガー気味であり、リバウ攻防戦での『マリンウィッチ』の噂の大本でもある。43年当時の天皇への直訴は長門を青ざめさせたほどで、当時の連合艦隊司令長官の古賀峯一をして『場の空気的に諌められなかった』ほどの勢いだった。昭和天皇の勅で参陣した大和は『病気を理由にリバウにわざと留まっていた』坂本と共に天下無双の活躍を見せ、坂本の対外的な『全盛期の終わり』に華を添えている。坂本は501にその時の戦果を引っさげて着任し、それ以降はアニメと同じような行動を取り、黒江達の覚醒を待っていたという。黒江の覚醒が確認された後は圭子と共謀し、お膳立てを始め、三将軍を抱き込んで、Gウィッチを集めさせたのである。

「坂本くんにもよろしくと」

「注文多いぞ〜」

「あとでアイスをおごってやる」

長門と山本は親子のような関係である。太平洋戦争開戦時には長門に乗艦していた史実が反映されていると言える。山本は北郷を部下にしていた経験があるため、その弟子の坂本の後見人でもあり、山本が現場を退いた後も関係は続いている。坂本の政治的後ろ盾とも言えるが、坂本は政治に興味がないため、その代わりに竹井が政治的な動きを代行している。その竹井はプリキュアにジョブチェンジしたために余計に多忙になった。また、竹井醇子としても良家の出身であるためか、GO!プリンセスプリキュアであっても驚かれないのは残念がっているらしいが、キュアマーメイドとしての名乗りは竹井の姿でも、淀みなく言えるとのこと。これはペリーヌも同様だが、ペリーヌはペリーヌで、トワとキャラがかぶっているので、人格の違いがわからないと愚痴られているとの事。




――戦線では、一部の飛び抜けて強い者達がティターンズの超人を抑える構図が常態化していた。のび太が仕留めた者も幾人にも上った。如何に身体的に超人であろうと、反応する間もない内に銃弾を打ち込まれてはどうしようもないのだ――

「敷島博士特性の高速弾。如何に超人でも、認識する間もない内に撃ち込めば堪らないでしょ?」

「き、貴様…、どうやって…撃ち込んだ…」

「弾は少なめ、狙いは正確に、だよ」

のび太は腕っぷしの弱さ(ネタにしているが、青年時代以降は一応、不意を突けば相手を倒せる程度の拳は持つ)はあくまでネタにしているだけで、青年時代には一定水準には向上している。また、少年時代に輪をかけてのクイックドローは称賛の一言で、普段は少年時代の雰囲気を残しているが、戦闘では大長編ドラえもんモードに任意に切り替えられる。

「どんな速度で動いても、角速度が小さくなれば見えるし、当てられるからね」

「それがキサマの能力か…」

「違うさ、ガナーの常識じゃないか」

のび太は少年時代から更に鍛えた射撃は神技の領域であり、クイックドローに限れば、デューク東郷をも上回る。見越し射撃にも天性の才能がある。鍛錬が実り、2020年東京五輪のメダリストになるというが、どのメダルかは統合戦争の混乱もあり、記録が散逸し、不明である。青年時代にはスーパーレッドホークを愛用しているのだが、弾は敷島博士の特別製であるため、既成の弾より綺麗に相手を始末できる。必殺仕事人のように『殺る時は殺る』精神があるからで、ドラえもん達はそこに関してはシビアである。

「ふう。これで、少しはネットギーク達を黙らせられるかな」

のび太はすかさず銃を連射し、次いで襲いかかる南斗聖拳の下級流派の継承者達を返り討ちにする。

「如何に南斗聖拳だろうと、下級の雑魚程度は敵じゃないね。伊達に修羅場を潜ってきてないよ」

のび太はこの日、単独で南斗聖拳の使い手を豪語する筋肉自慢のティターンズの兵士や下士官らを20人ほど始末した。のび太は未訓練の状態でも、前科100犯の凶悪犯より早く銃を撃てる。如何に南斗聖拳と言えど、六聖拳以外の大半は文明の利器たる銃には弱い。ましてや、ギャグ補正も持ち合わせるために生存能力はピカイチののび太相手では、下級の南斗聖拳程度では『肉塊生産機』行きも同然である。のび太は愛車のクーパーSに乗り、その場を去る。走っていると、ガリアと駐屯地を往復している途中のキュアスカーレットとばったり遭遇した。

「スカーレットじゃないか」

「のび太さん」

「あれ、その姿でバイクかい」

「ええ。今日も怪異が途中で出たもので」

「欧州から人は避難させてるから、もう少し行ったところで食事にしよう。グルメテーブルかけを借りてきてるから」

この日、彼女はペリーヌ・クロステルマンとして、ガリア軍部の抑え込みをするためにド・ゴールと会談したが、その帰りにまたも怪異と遭遇。プリキュア・プリンセスエンゲージを敢行。変身するタイミングで主人格はトワにバトンタッチしている。両者の性格に殆ど差異がない上、言葉づかいも同じようなものなので、融合した節もある。ただし、乗り物の趣向はモードレッドの好みが出ており、ハーレダビッドソンの大型バイクに乗っている。モードレッドは生前は荒馬などを乗りこなすのが趣味の一環だったため、騎乗スキルはあるものの、荒いの一言。それはキュアスカーレットの乗り方にも影響しており、レーサー並に攻める。電気・給排気系は日本の高精度品に取っ替えており、モードレッド好みのセッティングもされている。キュアスカーレットはそれを乗りこなしているのである。更に10分ほど走行した二人は食事にありついた。のび太はブロックハムのバーベキューにターキッシュコーヒー。キュアスカーレットは腹がすいていたか、そこそこ量が多めだ。

「ふう。この姿で戦闘すると、カロリーを多く使いますから、量が多くて」

「いいじゃない。カロリー燃焼で太らないんだし」

「それはそうですけれど」

キュアスカーレットはその高貴な佇まいと衣装との相乗効果で、歴代プリキュアでも特に目立つ。彼女の場合は修行ができる環境にはなっていないが、できるだけ変身を維持している。キュアエースとのキャラ被りが自衛隊のコアなオタク連中から指摘されているが、成長変身であるエースと違い、スカーレットのほうが年相応の姿での変身なので、人気が高い。


「自衛隊のコアな連中から、君はエースとキャラが被ってると指摘があるけど」

「60人もいれば、似た傾向の人物は出てきますわ。イエロー系はレモネード以来、あざとさで売っていますし」

プリキュアはコスチュームの色でおおよその傾向が分かるとされる。ピンクが中心格、青が初期メンバーなら参謀(マリン除く)、イエローはあざとさ中心、紫は追加戦士、緑は防御かスピード担当、赤が情熱と言った具合だ。ピンクが戦隊における赤に相当するとされ、イエローは幾人かはプリキュアでも、キレンジャー以来の伝統に則り、カレー好きである。また、大食と力持ちもキレンジャー以来の伝統とされるが、戦隊でステレオタイプ通りのイエローは三人しかいない。80年代以降は二代のイエローフォー以降、イエローは女性が担う事も多いからだ。プリキュアはそのうち、カレー好きと大食を受け継いでいる者も多い。なお、カチューシャに転生している黄瀬やよいはディープな特撮オタクであり、戦車道以外はオタクそのものだ。

「キュアピースから仮面ライダーやスーパー戦隊の写真を送れって催促されたけど、どう返事すればいいのか」

「ぴぃぃ〜すぅぅぅ…」

頭を抱えるスカーレット。キュアピースこと黄瀬やよいは中学生になっても、ヒーローショーに欠かさずに通った程の本物のオタク。それはカチューシャを素体にしても変わらなかったのか、キュアコスモを困惑させている。自分がスーパーヒロインになっても、ヒーローのファンは続けていたため、転生して余計に悪化したらしい。なお、スーパー戦隊主体の仮面ライダーも嗜むのが彼女の流儀なので、カチューシャとしての傍若無人な口調でのび太に頼むこむという芸当を行ったとの事。

「ヒーロー達も協力してくれてるけど、君達の現役時代のヒーローは人脈の都合で平成ライダー以外はまだ会ってない。戦隊は90年代前半以前だけどって断りは入れたよ」

黒江達はビッグワンの影響下にある戦隊との交流はあるため、忍者戦隊カクレンジャーまでの戦隊とは面識がある。その内の太陽戦隊サンバルカン、大戦隊ゴーグルファイブ、電撃戦隊チェンジマン、光戦隊マスクマン、超獣戦隊ライブマン、高速戦隊ターボレンジャーとは連携協定を結んでいる。その中でもマスクマン、サンバルカン、ライブマンは七勇士の内の五人が個人的に親交があるため、武器の貸し借りもしてくれる。彼らとの関係が後々の黒江達の戦に影響を及ぼしたのは言うまでもなく、『一年後』のオールスターズ戦への参戦の際、黒江がシャイニングドリームの姿で『ゴッドハンド』と『鉄拳オーラギャラクシー』、『飛羽返し』を、智子がエンジェルピーチの姿で『ファルコンブレイク』を行うに至る。特に黒江は、圭子からいつの間にか教わっていたようで、オーラパワーにも開眼、鉄拳オーラギャラクシーを隠し玉の一つにしていた。奇しくも、プリキュアの姿になった時に初お披露目となり、キュアブラックとキュアブルームを唖然とさせる程の鮮やかな手刀での一撃を披露する事になる。

「一応、マスクマン、ライブマン、ターボレンジャーの写真は送るよ。昭和ライダーは七人ライダーのね。それと、ハートとラブリーには見せたんだけど、一年後に綾香さんと智子さんが第一期プリキュアオールスターズの二回目の戦に混ざるんだけどね、暴れてるんだよね」

「〜……」

面食らい、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするスカーレット。ドラえもんの音声付きの写真を造る機械で撮影した『一年後の事態』の写真。のび太が吹いたと言う通り、ドリームとピーチの姿を借りた二人が大暴れしているのだ。

『徹剣・エクスギャラクシーカリバー!!』

『飛羽返し!!』

黒江はエクスカリバーをオーラギャラクシーに重ねた合せ技を放ち、智子が飛羽返しを放つ。完全に姿を借りた状態であるのを忘却の彼方である。特にオーラパワーを発動させた黒江の姿を見たブラックとブルームは完全に目が飛び出る勢いのギャグ顔で固まっているのがわかる。ブラックのおなじみの台詞『ぶっちゃけぇぇ…ありえなーーい!!』の切実な叫びも録音されていた。

「5とフレッシュの皆さんはどうして指摘なされないのでしょう?」

「戦闘中だし、百鬼帝国も絡むようだから、言えると思う?」

「た、確かに…」

のび太がコーヒーを口に入れながら言う。写真から分かることは、ハートキャッチがフルメンバーでない当時のオールスターズでは、未熟なブロッサムとマリンをカバーするだけでも精一杯であり、黒江と智子が暴れたところでどうにかなるわけではないが、フェリーチェ、メロディ、ラブリー、ハートの四名が援軍で参戦しているのも分かる。時間軸を思いっきり無視しているが、オールスターズの歴史に敗北の世界線が生じかねない事態なので、ディケイドが参戦させたのだろうと目星をこの時点でつけていたのび太。

「な、この時点でメロディ達はプリキュアにはなってないはず!いいんですの!?」

「負ける世界線が生まれるのがかなり濃厚だし、百鬼帝国はどうせ、ウザーラを自慢する。ディケイドは世界の理を破壊した上で参戦させたんだろうね、」

ディケイドが事に絡んでいること、オールスターズの物語を破壊し、本来はまだ生まれていないプリキュアを参戦させた理由を推察し、解説するのび太。オールスターズ第二戦では力の根源を奪われ、弱まったところを畳み掛けられ、ピンチになったというが、黒江と智子は三大スーパーロボットと共にそれを救ったが、今度は守護聖竜ウザーラ率いる百鬼帝国と大戦争になった事を明確に告げる。ディケイドは一年後、プリキュア達の前に現れた際にこう述べた。

『俺が壊す前に、この世界は壊されてんだ、更に壊したところで大して変わらん、気に入らない方向に壊されるなら、壊す奴ごと壊すだけだ』と。


彼のポリシーを明確に示している。最後の一枚は消耗し、キュアレインボー形態を気力だけで維持するオールスターズ、それを守ろうとする黒江と智子の前に颯爽登場した門矢士のワンショットだ。

「つくづく、門矢士という方は美味しい場面を持っていきますわね」

「それが彼の存在意義だもの。通りすがりの仮面ライダーを自称して、後輩のジオウより目立ってたって話」

「…」

「でも、ハートやメロディ、ラブリーを参戦させるのは分かるのですが、どうしてフェリーチェを?」

「多分、その時間軸の僕がお目付け役代わりに送り込んだんだろうな。それに、ピンクだけじゃ説明がね」

「あー……、なるほど」

写真のBGMはディケイドお馴染みのものである。ドラえもんが意図的につけたのだろうが、これでは『仮面ライダーディケイド・プリキュアオールスターズ編』になってしまう。ディケイドはそれだけの存在感を放つ存在であるし、世界の破壊者はプリキュアの世界でも健在らしい。

「あの鳴滝って人がみたら、こう言うよ。プリキュアオールスターズの世界も破壊されてしまった!!おのれディケイドォォ…って」

門矢士が変身する前に通りすがりの〜と口上をいう一瞬の写真であるため、BGMをつけると、主役がディケイドになる。狂言回しのような立ち位置と言いつつ、黒江達に力を貸す義理堅い面もある。スカーレットは事前にのび太を通し、事を知ったわけだが、自分も誘って欲しかったのか、若干拗ねたような表情を見せる。

「……」

「誘って欲しかったの?」

「あ、そ、その、……そ、そういうわけでは!?」

図星なようだ。レアなテレ顔のスカーレットを満喫するのび太。

「タイムマシンで混ざりなよ。決着付く前にさ。この分だと長期戦になりそうだし、先輩達の前でカッコよく、『お覚悟決めなさい!』できるよ」

「……☆※くコ:彡…」

気恥ずかしさのため、顔を真赤にして湯気まで出すスカーレット。フローラが見たら萌えるのは間違いない。プリンセスプリキュアは歴代でも雰囲気が異質なので、第二期プリキュアの出現前の時点では異端に近い。

「落ち着いて、コレでも飲んで…」

コーヒーーを差し出すのび太。スカーレットは受け取るなり、一気に煽ったため、むせてしまう。彼女にしては珍しいワンシーンだ。基本的にシリアス担当の彼女だが、のび太のギャグ補正はスカーレットをも巻き込んだらしい。スカーレットは暇を見つけ次第、こうした変身の修行を重ねていく。なお、ハーレーダビッドソンに乗った姿は自衛隊のオタク連中を興奮させ、かがの海上自衛官達の間で駐車されたハーレーダビッドソンに腰掛けるスカーレットの一枚は高値で取引されたという。メロディが紅蓮聖天八極式のコックピットに乗り込むというのが『ベタすぎる』とされる一方、スカーレット×ハーレーダビッドソンは予想外の人気を博したという。棚からぼた餅な発想だが、プリキュア×本格派の乗り物は人気シリーズとなり、そのアイデア捻りに苦労する羽目となったのは当然であったが、アイデアマン・のび太のひらめきで、火星からレギオスまで持ってくることになったのは後日のこと。地球連邦・火星方面軍から借りるのは骨だったが、黒江がモスピーダを個人所有していた縁で、火星のアナハイム・エレクトロニクス支社の協力が得られ、新作として刷られ、自衛隊のPXでの懸賞に使われたという。






――扶桑軍は結局、21世紀基準の近代化を性急に行うを得なくなった影響で、その新式兵器の供給にまったくの目処が経たないという本末転倒の状態に陥った。戦後型のハイテク兵器は扶桑が望むような短時間の大量生産には向かないため、戦後第二世代戦車相当までがその限界という事が判明した(21世紀の生産技術水準による)。飛行機は21世紀の生産技術でも、数年もあれば100機単位の生産が可能だが、戦闘車両については世代が進むと、政治的都合もあってスローペースそのものであり、扶桑から旧軍系車両や火砲を性能不足として回収したのが裏目に出、Gウィッチやのび太、デューク東郷を始めとする猛者たちで支えている状況に堕ちた。これに日本防衛装備庁は自衛隊に保管されている旧式装備の再利用を目論んだが、使用が取りやめられた自衛隊の装備は経年劣化などもあり、スクラップにするのがお約束だったため、彼らは面子丸潰れの状態が継続した。供与できたのは小銃などが中心であり、扶桑が望む重装備は米軍やキングス・ユニオンの有償提供で賄われた。そのため、太平洋戦線開戦前の時点での扶桑の重装備は世界各国製の機甲兵器や火砲が複雑に入り交じる状態になり、扶桑の兵器行政当局から睨まれる事になった。日本の戦後製機甲兵器や火砲の生産ラインの完成の遅延は五輪と万国博覧会という国家イベントを時間稼ぎに使うことで補われる予定である。その過程で扶桑は米軍製装備の導入を進める事になるが、クーデターに加担した者達への見せしめの意図も含まれた。結局、扶桑の培った独自の航空資産の遺産として、震電を祖とする戦闘機の系譜がその後の時代に一定の輝きを残すのみになるが、史実との帳尻合わせとも取れる経緯とされた。専守防衛が通用しない世界にそれを適応させようとした政治の失敗であり、その禊として、日本側はハイテク技術の輸出を促進した。その結果、カールスラントの衰退を促進させたのは皮肉そのものであり、カールスラントはドイツによる過剰な抑え込みもあり、数十年は人材供給センターも同然の窮状に堕ちていく。モチベーションである本土奪還を自らの手で行えなかった事が衰退の最大の理由であると後世に記録される。軍事的再建がガリアの政治的都合で必要とされ、正式に開始されたのが1989年では、手遅れに近かった。21世紀まで1936年の練度水準には回復したが、第一次大戦終結時や二次大戦初期のレベルには程遠い状態で、百戦錬磨の日本連邦軍とは比べるべくもなかったという。また、太平洋戦争と冷戦で国家が正式に分裂し、敗戦後にミリシャが乱立していたリベリオンは再統一後も混乱が続き、かつての繁栄の見る影もなかった。ただし、軍事的には世界の兵器産業に君臨し、文化面でも史実通りに繁栄し、それで国家再建のための資金を得るという歪な状態であるが、その甲斐あり、2010年代には『目処が立った』状態にまで回復する。日本連邦は超大国として君臨せざるを得なくなる一方、宇宙進出で継続的に金属・エネルギー資源を確保する思惑があり、そこまで技術が発達すると、水を得た魚のように急ピッチで進めるが、そこでも『困難』が待ち構えていたりする。その際に二代レイブンズが活躍する事となり、後継者としての地位を盤石にする。その裏にドラえもとのび太の影があり、彼らの指導が二代レイブンズの強さの安定化に寄与したと言える――



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.