行間『シンフォギア世界の珍道中2』


――黒江はシンフォギア世界で入れ替わった後、シンフォギアを持ち出す形で逃げたが、黒江が小宇宙でシンフォギアのエネルギー反応を抑えた事でステルス効果が生じていた事、適合係数が桁違いな事と心象の違いでギアのカラーリングが当時の調と異なる事、その姿で堂々とコスプレ喫茶で日賃を稼ぐために働いた事で、シンフォギア世界の関係勢力の捜索を尽く逃れた。黒江はその気になれば、21世紀以降に生きる人間を演じられるためもあり、リディアン音楽院にほど近い地点のコスプレ喫茶でバイトしていながら、響達がそれと無縁の生活であったのと、『堂々としているわけはない』とする先入観、バイト先の勤務時間という偶然の要素とが絡み合い、響達が気づくことはなく、また、黒江が基本的にあちらこちらを転々としていた事で噂は立つが、各勢力が調べるほどの余裕がなかった事から、次なる出会いまでは何事もなかった――



――黒江は入れ替わった時に着ていた服しか持っていなかったため、各地を転々としていた時は基本的にシンフォギア姿で過ごしていた。シンフォギアの機能を使わなくとも、素で装者を圧倒する力を持っている事もあり、出会う度の戦闘では常に圧倒していた――


――戦闘にて――



「御庭番衆式小太刀二刀流『陰陽交叉』ッ!」

黒江は風鳴翼の天羽々斬の上段からの一撃をいなし、『陰陽交叉』を叩き込む。エンペラーブレードの峰の部分に、もう一本を垂直に叩き込む。翼はこれでギアを貫通され、負傷する。

「ぐあっ……!お、御庭番衆だと!?」

「江戸時代の頃、幕府が太平の世で食い扶持を無くした忍びに仕事を与えていたが、かの徳川吉宗の時代に新設された役職というのは、歴史をかじってればわかるだろう?その中でいざという時の戦闘術として伝えられていて、維新後は失われた闘技さ」

空中元素固定能力で作ったエンペラーブレードを二刀流で構える黒江。ギアとは不釣り合いな武器である。(よく見てみると、ブレードの刃が立ち上がり、鋸のようになっている)翼は修羅場は潜ってきたが、自身に匹敵するような剣技の持ち主とは出会っていない。黒江はエンペラーブレードを『二天一流』の流れを組む構えで構え、そこから御庭番衆式に切り替えるという戦法で対応した。この時の出会いが後に、自分の義娘(血縁では大姪にあたる)に『翼』と名付ける理由の一つであった。

「ムウン!」

黒江は御庭番衆式小太刀二刀流で天羽々斬を防御する。使い手の四乃森蒼紫も言っていたが、小太刀は防御面では太刀より小回りが効くので、使い手によっては、明治期のライフル弾をも防げる。身軽になった黒江のフットワークもあり、翼は翻弄される。

「ならばっ!」

飛び上がり、翼は『千ノ落涙』を発動する。大量の剣を具現化し、上空から落下させ広範囲を攻撃する技だが、同種の技を持つフェイトを弟子に持つ黒江は対抗策を練っている。

「ほう…。数でくるか。なら、こっちは……!ライトニングファング!!」

剣を電撃で空中爆破し、その隙を突いて、獅子の大鎌を叩き込む。

『断て、獅子の大鎌!!ライトニングクラウン!!』

聖闘士としての闘技も披露する。これらはギアとは関連がないので、映像を解析しても、その場にいても、『ただの手刀を鎌のように振るった』ようにしか見えない。だが、ギアをも斬り裂く衝撃波が奔る。そして。

「そっちが数撃ちゃって考えなら、数の違いを見せてやる!」

「何!?」

「ハァッ!!」

その時、翼は目の前の装者に黄金の翼が生えたような錯覚に囚われた。そして、光の矢を番えるようなポーズから大技を放った。射手座の最大奥義の一つ。その名も。

無限破砕(インフィニティ・ブレイク)ッ!!』

無数の黄金の光矢が翼を貫く。その威力は加減してはいるが、本気であれば、太陽神の軍隊を滅するほどの威力である。翼はこの攻撃をモロに食らったわけだ。天羽々斬でとっさに防御したのが幸となり、なんとかノックアウトは免れた。だが、ズタボロであり、吐血するほどのダメージを負っていた。が、まだ闘志は失っておらず、両手に構えたアームドギアから火炎を放出、自身を青い火の鳥と化して突進する。『炎鳥極翔斬』という技だ。黒江はそれに対抗し、シグナムの『シュツルムファルケン』と、とあるゲームの技、それと鳳翼天翔をヒントにして、矢から鳳凰を放った。

『不死鳥は炎の中から蘇るって、相場が決まってるんだよ!!フェニックスバァ――スト!!』

矢が光の鳳凰となる。翼は炎鳥極翔斬で押し切ろうとするが、フェニックスバーストのエネルギー量はそれを上回った。青い炎は赤い炎に侵食され……。やがて、双方のエネルギーの相乗効果で大爆発が起こる。

「やれやれ。ちっと、やりすぎだったか?」

闘技の片鱗を見せ、装者を完全に圧倒する。

「馬鹿な、一度ならず、二度までも……こうも一方的に…!!」

「悪いな、お嬢ちゃん。俺はお前らにあまりかまってやれるほど暇でもねぇんだ」

「どういう……事だ?」

「ほら来た」

呆れ気味の黒江。

「お前は何者なんデス!?調の姿とギアだけど、お前は、お前は…調じゃないデス!」

「あたり前田のクラッカー…って、いつの時代のギャグだっけ、これ」

「ふざけるなデス!!この偽物!!調を返せぇ――ッ!」

「俺もできれば返したいとこだが、込み入った事情があるんでな」

切歌は黒江の一言がきっかけで、思い込みから暴走しており、黒江との間に横たわる実力差を認識できずに突っかかるが、ギアの背部にあるバーニアの噴射を全開にしても、黒江をその場から動かすことも叶わなかった。

「……!?ば、バーニアを全開にしているのに、1cmも押せない!?ありえ…!?ぐぬぬぅ…!」

「さあて、ガキンチョ。勢いは買うが…」

黒江は切歌の顔面を掴み、空中へ投げ飛ばす。これで通算、二回目である。

「今回は手荒にはしたくねぇからな。これでいくか。クロックアップ!」

この時期には昭和ライダー達がその技術力で平成ライダーの最速候補である仮面ライダーカブトの持つ能力『クロックアップ』を起こす原理を解析し、自身の加速装置にクロックアップ機能を組み込んでいて、その作動原理が黒江に伝わっていたため、能力でタキオン粒子を生成する事で、自前でのクロックアップを達成していた。クロックアップの原理は『タキオン粒子を使い、時空空間に干渉する事で『通常と異なる世界に身を置く』事であり、厳密な意味では高速移動と異なる。発動中は発動者の周りの物体や生命体の動きはスローモーションに見え、切歌の動きは『止まっているも同然』である。(ちなみにその上位互換のハイパークロックアップは時間移動すら可能で、クロックアップもスローモーション扱いの速さである)

「さあて、一発で決めるか」

黒江は空中へ投げ飛ばした切歌を手刀で地面に向けて落とすと、その間に足にタキオン粒子を蓄積させ、仮面ライダーカブトと同じように、待ち伏せての回し蹴りによるライダーキックを行った。

「ライダー…キック!」

発音の仕方を仮面ライダーカブト/天道総司に寄せている掛け声で、回し蹴りでのライダーキックを浴びせた。タキオン粒子の破壊力は波動砲で証明済みであるので、オーバーテクノロジーで改造されし昭和ライダーに平成ライダーが伍する戦力と評価される一因である。外的衝撃には、かなりの強さの核爆発にも耐えるほどに強いはずのシンフォギアだが、面積あたりの破壊力では核兵器もを超えるタキオン粒子による攻撃は流石に許容ダメージを超えたのか、切歌はわけも分からぬままにイガリマのギアが解除された状態で倒れ伏す。他の装者にとっては一瞬すぎて、わけが分からなかった。

「悪いな、今、テメーに事情を言ってもわからないから、あの時に立ち去る時に言わなかったのさ、お嬢ちゃん」

黒江はこの時、切歌へ同情的な言葉をかけた。その事から、二課側の装者は善性をなんとなく感じ取ったものの、漠然としすぎていて、その時は確証がなかった。黒江の力が自分らの想像を超えている事を否応なしに示されたのは、そこから数日後の事。

「青髪のお嬢ちゃんか。単独で来るとはな、舐められたもんだ」

「何を!その強がり、今日こそは成敗してくれる!!」

「ん、今、何時だ?」

「なっ、こんな時に!」

「何時だと聞いている」

黒江はそこで一瞬だが、強い殺気を発する。翼は思わず気圧され、その時の時刻を思わず教えてしまう。

「バイトのシフトが近い。わりぃが、嬢ちゃんと遊んでる余裕は無くなった。一発で潜水艦ごと、しばらくおねんねしてな。この雷がお前を討つ!!」

『必殺パワー!サァンダァァブレェェィク!!』

グレートマジンガーのそれと遜色ない威力のサンダーブレークが放たれ、二課の仮設本部となっている潜水艦は電子装備が機能不全を起こし、更に翼は命は助かったが、数日は昏睡状態に陥った。黒江は装者から売られた喧嘩は買うが、基本的にバイトの時間には厳しいため、翼を一瞬で昏倒させ、二課の仮設本部を機能不全にさせるのも躊躇しない。黒江はこの後、まんまとバイトのシフトに入り、ぬけぬけとコスプレ喫茶の店員をしているので、大胆不敵である。そこが黒江の策でもある。


――その様子をタイムテレビで確認しているのび太と二大プリキュア――

「先輩、ぬけぬけとバイトするって大胆不敵ぃ〜…」

「ドリーム、君がナッツハウスで変身したままで接客するのと同じようなものだよ」

「そう言われるとそうかも…」

「そう言えば、ドリームのところはココとナッツがかれんさんの協力で店を開いてたんだっけ。咲さんと舞さんから聞いたけど」

「そうなんだ。あの二人が地球にいた時期だけだけどね。ココは教師をして、ナッツは店の切り盛り。現役時代の頃はあそこが私達のたまり場だったよ」

ドリームは懐かしそうに言う。ドリームにとって、プリキュアとしての現役時代はずいぶんと遠い昔だからだろう。

「うん。もう、遠い昔になるけどさ、あそこでなぎささんや咲さん達と出会って、それから腐れ縁だよ」

「そうなんだ〜。ドリームの頃はスマホあったっけ?」

「ハート、あたしとピーチの頃はまだガラケー時代だよ…」

「へっ、本当!?」

「ハッピーの頃から普及しだしたんだよ、スマホは。あたしとドリームはガラケーが現役のモバイルアイテムだよ」

「な、なんかゴメン…」

「ま、スマホはボクが大学を出るか出ないかの2010年代前半から普及したしね。2000年代まではガラケーが最も身近なモバイルアイテムだったから、仕方ないさ」

「うぅ。ハートとはたった三、四年くらいなのに、ジェネレーションギャップだよ〜…」

「五年で一昔というからねぇ」

のび太も大笑いだが、キュアドリームとキュアハートの間には数年の開きがあり、代替わりはその間に四人前後が挟まる。そのためにたった数年でもジェネレーションギャップは起こってしまうのだ。

「そうそう。これがきっかけで綾香さんと智子さんがプリキュアになるの画策してね。君たちが来たことで予定変更になったけど、智子さんは特に乗り気でね」

「智子先輩、興味なさそうな感じなんだけどなぁ。堅物そうだし」

「いや、隠れてコスプレする質なのよね、智子さん」

のび太がいうには、智子はプリキュアの存在を知ると、芳佳を使って、DVDを買わせるなど、職権乱用の毛がある。芳佳の覚醒はそれが原因である。

「芳佳ちゃん、それが原因でキュアハッピーに戻ったんだ。で、智子さんは黄金聖闘士だから、当然、通常フォームじゃ手も足も出ないだろ?あの子、それでツッコミ役に」

智子の使い走りの末にキュアハッピーに戻った芳佳は『プリキュア・ハッピーシャワー』を智子にかましたが、智子は既に黄金聖闘士、それも水瓶座であったために歯が立たなかったことが語られ、智子のファンシーな一面はこうして暴露された。

「先輩、何を買ってるの?」

「なかよし、マーガレット、花とゆめ……、少女フレンド。少女趣味だよ、全体的に。正反対に綾香さんは少年誌と青年誌さ。それとホビーマガジン」

黒江は智子と打って変わって、少年誌と青年誌、それとホビー雑誌の愛読者である。調が帰還直後に苦労したのはその事でもある。(調は元々、少年誌には興味がなく、興味を持ったのは出奔後のことである)立花響は切歌の精神の安定のことしか考えていなかったため、調の心情にまったくと言っていいほどに配慮がなく、機械的に黒江がやっていたことを強いたのが間違いのもとで、小日向未来をして『調ちゃんのことを考えてないよ、響…』と懸念され、彼女が出奔の手引を行うに至った。なんとも言い難いが、これが立花響のやらかしである。ちなみに黒江は退職した防大同期が家業のプラモショップを継いだと聞くと、ショーウィンドウに飾る作品を提供(制作はなのは)するなど、男のホビーに入れ込んでおり、麻雀牌も良いものを持っているという。麻雀ははやて(精神的にはほとんど遠坂凛化していたが)の仕込みであり、はやて曰く、『おっさん連中との人付き合いにいいわよ』とのこと)

「なんか面白い。まるで正反対だね」

「智子さん、表向きはストイックを装ってるけど、どうもね、レズビアンの毛があるんだ。かの糸川博士と危ない関係に行きかけたことも…」

「わ〜!のび太、すとぉーーーーぷ!!」

「ほら、噂をすれば」

「うわわっ!?先輩、急に来ないでくださいよ、これから…」

「うるさいわね、若い時の…その、一夜の過ちを…」

息を切らせている智子。虫の知らせでやってきたのだが。

「うんにゃ、智子さん。あなたがレズなのバレてます。ほら、最近に再販された…」

「先輩、こうなったらバラしたほうが」

「あたしは巴御前のイメージで売ってんのよ、レズビアンの毛があるなんて…」

「むしろ、良いじゃないですか。愛に性別は不問ですよ」

「そーいう問題じゃないのよ、ハート…」

「自分から貞操捨てかけてたくせに」

のび太にからかわれる智子。智子がレズビアンの毛がある事は既にに知れ渡り、実は日本のコミケのサークルでカップリングも出来ている。逆にストイックなイメージが強いのは黒江のほうだ。

「いいじゃないですか、明智光秀の金柑頭だって、ハゲと言われた上に、信長が蘭丸を侍らせたから反乱したなんて噂もあるんですよ」

「それは戦国の頃の話でしょ!?」

「先輩、抵抗は見苦しいですよ」

「あんた、オーロラエクスキューション食らいたいの?」


「わたしも草薙の炎で抵抗しますからね?」

ドリームも草薙流古武術を身に着けつつあるので、智子に為す術がないわけではない。

「錦ちゃんの遠い先祖に使い手がいたみたいで、その隔世遺伝かも」

錦の遺伝子に刻まれていた草薙流古武術。のぞみはそれを目覚めさせたのだ。

「この炎は2000年近い歴史があるのを先輩もご存知でしょ?そう簡単には消せませんよ?」

「あんた、ずいぶんと通な技能を得たわね」

「響(キュアメロディ/シャーリー)とこれで釣り合うでしょ?」

ドリームは指から炎を出してみせる。シャーリー/キュアメロディが不知火流忍術であるため、のぞみ/ドリームが草薙流古武術であるのは、偶然の産物にしては出来すぎているが、とにかく、技的意味での釣り合いはとれたわけだ。

「格ゲー界の両巨頭を私達で極めちゃうとはね」

「え、先輩も?」

「綾香、真空波動拳撃てるらしいわよ」

「気をある程度極めれば、ああいう類の闘技は撃てるようになるからね」

「うっそぉ…」

「うーん、あたし達、現役時代より強くなってるはずなんですよね?なんか実感がないけど…」

「敵がそれ以上に超人だしね。僕はこれから北米大陸に偵察に行かなきゃならない。どうも敵がラ級を運び込んだらしいし」

「例のフリードリヒ・デア・グロッセ?」

「うん。バダンが運び込んだらしいのよね。リバティ用の波動エンジンや重力炉と一緒に」

「なにそれ?」

「ドイツ海軍にビスマルクやティルピッツって戦艦がいたろ?その強化発展型にあたる戦艦さ。50cm台の主砲を積んで、ラ號に対抗できると言われるライバルさ」

のび太はかなり端折った説明をする。連合軍系のラ級は主砲は従来品の流用で済ませたりしたが、枢軸国系のラ級は起死回生の超兵器であるため、専用品をわざわざ開発して(表向きは建造中止の戦艦からの流用)まで載せる手筈であった。ただし、ラ號もまほろばのほうが優先された影響で信濃に使われるはずの砲を流用せざるを得なくなった末に終戦であるが。ラ號が主砲を新造のショックカノン砲塔(後にプラズマ化され、更にパルサーカノン式の二代目に切り替えられるが、実体弾発砲可能な構造は貫く)に換装されている理由でもある。

「戦艦は昔は軍事技術と国力の象徴だったからね。第二次世界大戦型戦艦は20キロ圏内の範囲で撃ち合う想定で設計されてるけど、ラ級は空中戦を想定してるから、通常より頑丈な構造になってる。今、扶桑にソビエツキー・ソユーズが回航されて、調査されてるとこだけど、21世紀の空対空ミサイルくらいじゃびくともしない事に日本やイギリスが驚いてるよ」

「戦艦が空を飛べばねぇ」

「ま、ソビエツキー・ソユーズはイタリアの建艦技術力で作られてるから、額面割れしてるほうなんだけどね」

ソビエツキー・ソユーズの基本構造はイタリアのリットリオ級と同規格であるが、イタリアよりも建艦能力の落ちるソ連が建造したので耐弾能力は装甲の品質などの問題で額面割れしており、大和型戦艦の45口径46cm砲で容易く貫かれる程度である。だが、戦後世界の主流となったミサイル兵器には抜群の耐弾能力であり、弾頭そのものを弾くという脅威的強度を試験で見せているという。(この試験結果が戦艦の軍事的復権に一役買ったという。日本連邦が核兵器の軍事的陳腐化に戦艦を政治利用したかったからでもあったが、地球連邦軍が大艦巨砲主義に奔った遠因でもある)

「戦艦は21世紀の核兵器みたいなものだって例えを聞くけど、本当?」

「ガキの頃にドラえもんから聞いたことの受け売りだけど、大量破壊兵器が出る前は戦艦が軍事技術のシンボルだったんだ。最も、宇宙戦争じゃ、核兵器なんて些細なものだからね。波動砲や惑星破壊プロトンミサイルとかが飛び交うような戦場じゃ、核兵器は玩具も同然さ。だから、23世紀以降は波動砲が究極兵器扱いなんだよ」

地球連邦軍はタキオン粒子による波動砲を長らく愛好し、30世紀までに技術発展でモノポールとの複合エネルギーになったり、タイムマシンとの複合も作られるに至る。そして、ゲッターロボの究極進化『ゲッターエンペラー』が生まれるのだ。

「ゲッターエンペラーも宇宙戦艦型ゲットマシンが合体して生まれるし、つまりはそういうことだよ」

「なるほど……」

「君等はまだ聖闘士クラスの実力者と本格的には戦ってない。その日までに相応の実力を持たないとならないよ。スーパープリキュア状態でやっと、まともに拳を打ち合えるレベルなんて、基礎が弱いってことにもなるしね」

「どのくらい?」

「そうだね。赤松中尉相手に3分持つレベル?」

「……冗談だよね?」

「こればかりはマジだよ。白銀聖闘士史上最強レベルの実力だしね、あの人。祭壇座(アルター)に推されたんだけど、孔雀座についたって人だし」

赤松貞子は聖闘士としても類まれな才能を持ち、黄金聖闘士入りも囁かれたか、蘇った前教皇『シオン』の意向で白銀の穴埋めに回された。その実力から、白銀の最高位と言える祭壇座を打診されたものの、辞退し、孔雀座を継いだ。本人曰く、『教皇補佐は柄ではなくてのぉ』とのこと。その実力は間違いなしに黄金聖闘士級であり、当時のあらゆるスーパープリキュアを凌ぐという。(教皇補佐に推されるほどの実力であるので、当然だが)

「あの人、そんな強いの?」

「ハート、ピーチ。大先輩は黒江先輩を育てた海軍系ウィッチの最古参で、柔道、剣道、弓道、相撲合わせて十五段なんだよ?戦技、赤松の右に出るもの無しとまで言われた猛者だからね?互角なの、若松大先輩くらいなもんだよ」

赤松は元から真に扶桑最強を謳われていたため、聖闘士としても最高レベルの実力になるのは不思議がられていない。ドリームが若干、怯え気味なのは錦の記憶によるものだが、扶桑最高レベルの実力者なのは疑いようがなく、航空自衛隊でも教導群に属した経験がある。そんな実力を持つからこそ、公の場には知られていなくとも、裏世界で有名なゴルゴやのび太に敬意を持っているのだが。

「僕は表の世界でも一定の地位を持ってるけど、東郷は裏世界の評判だけで飯が食えてるからね。彼の武勇伝は裏世界じゃ伝説だよ」

ゴルゴの実力は『暗殺で飯を食う一流のプロが三人がかりで同時に抜き打ちしようと、容易く返り討ちに出来る』ものである。ゴルゴはアメリカ大統領や旧ソ連書記長といった名だたる権力者でさえもコントロールを諦め、歴代の国連事務総長もその存在を黙認してきた。ゴルゴの過去は一切が不明だが、『日本軍最高のアサシンとすべく、陸軍中野学校によって育てられていた東郷平八郎の係累ではないか?』とする推測も囁かれている。

「Mr.東郷の出自はわからないの?」

「友人の僕も詳しくは知らないさ。わかるのは東郷が日系人だってこと、偽名が東郷だから、東郷平八郎元帥の係累って説があるくらいさ」

G機関でもそこまでしかわからないあたり、デューク東郷の過去や出自は闇のベールに包まれているのがわかる。のび太は東郷が友情を示す数少ない(故人含め)男だが、そののび太にも過去のことは一切、口にしていないという。

「一言でいうなら、彼は慎重な男だよ。若い頃にM16を狙撃に使用してから、多くの場合は使用してる。そのM16のモデルチェンジにも数十年かけるくらいにね」

21世紀になると、M16のモデルチェンジも進んでいるが、ゴルゴはA2からのモデルチェンジにも慎重な姿勢である。のび太が臨機応変に銃をその場で調達する事もあるのに対し、ゴルゴは事前に銃を用意する事があるという点で異なる。

「彼にはかなりキツイ仕事を引き受けてもらっているよ。僕は倅の事があるから、今はあまり無理ができなくてね」

ノビスケの事があるため、のび太は裏の仕事をセーブする時期に入っていると明言している。

「息子さんが?」

「ぼくとカミさんはできちゃった婚でね。25歳位の頃には倅が生まれてるんだ」

のび太の息子のノビスケは2019年前後で幼稚園児ほど。やんちゃ盛りの年頃である。のび太の唯一の実子である事から、テロの標的にされることが多く、歴代プリキュアが警護についている。

「2019年の日本は扶桑から金をせしめようと躍起になってるから、自国のテロに無関心でね。倅が狙われるけど、一般的な警備会社や警察じゃ役に立たないから、君たちに頼んでいるんだ」

のび太は裏世界で名が知られている都合上、日本警察では息子の警護がままならないことを把握しており、キュアマーチを始めとする歴代のプリキュアなどに警護を頼んでいる。その慧眼は2018年頃の幼稚園バス襲撃事件で証明され、プリキュアの『実在』も示された。対応が後手後手に回りがちの日本警察より、迅速に対応できる歴代のプリキュアは仮面ライダーや宇宙刑事、スーパー戦隊より身近にいる『スーパーヒロイン』として脚光を浴びており、そのプリキュアを裏で操るフィクサーと解釈されたことも、のび太やGウィッチへの誹謗中傷に繋がったのも事実だ。

「なるほど…」

「ん、海軍が政治的に追い詰められてる?」

「メール?」

「うん。長門さんから。扶桑では、二度のクーデターで海軍は嫌われててね。おまけに今次大戦の主戦力を基地航空隊とする決定を出してた事が日本からめちゃんこに叩かれてて、航空参謀の多くがアッツやキスカに左遷されたんだ。おまけに陸上に揚げてた航空隊は空軍行きだから、大パニック。空母航空団の立て直しは数年がかりだろうね」

「空母航空団の自前の運用は諦め?」

「政治的にね。ただ、組織自体は存続したから、出し惜しみはされるだろうね。あ号作戦のトラウマがあるから。空軍の君等を使い倒そうとするだろうね」

「ま、天測航法と空母着艦技能持ちのパイロットやウィッチは全軍通しても少ないから。世代交代で余計に」

「智子さん、隊の練度の具合は?」

「新選組は問題なし。維新隊に多少のバラツキがあるけど、視察で平均を引き上げるわ。天誅組の連中は林に任せる」

維新隊は新選組から多少の人員融通もあり、平均練度は上がっていた。同じ部隊だが、別行動を取っており、りんといおなはこの日から数日前にそちらへ出向した。パイロット資格を正式に取得させるためである。新選組は戦闘担当なため、きちんとした訓練がさせられないとする海藤みなみ(竹井醇子)と坂本の進言で、比較的に訓練の時間が取れる維新隊に出向させたのである。

「みなみちゃんも忙しそうだよねぇ」

「副長の一人だしね。本土の連中を入れると大所帯になるし、七勇士の一人だから、求心力もある。坂本少佐より人望あるよ」

坂本は特訓担当である事もあり、本人の思いとは裏腹に、この当時の若手からの人望はあまりない。七勇士の一人だが、昔語りをしすぎたこと、個人戦果そのものはリバウ攻防戦の後は殆ど挙げていない事も要因である。(坂本自身がスコアへの興味を失ったこともあるが)実力自体は最盛期のそれを維持しているが、501への着任以降は機会が減ったことで、披露する機会に恵まれなかった事もある。

「坂本先輩はスパルタだから、若い連中から嫌われてるんだよ。リバウでも、それでちょっと揉めてるの見たっけ」

「少佐は変に昔気質だからね。おまけに口下手と来てる。だから、老害って言われるの気にしてるんだよ。ただ、七勇士の生き証人にはなるって言ってるけどね」

坂本は昔気質に育った上、口下手になったため、ウィッチ教官に正式になるつもりはなく、空母の管制官の道を選んだ。前史での黒江とのいざこざへの反省だろう。七勇士では最初に現役から退く事になるが、裏方に回ることの意義を問うと述べている。

「上の一部はあたしらを疎んじてるのも事実なのよね。戦力の平均化よりも『能力が尖った部隊のほうが有能』って証明しちゃったから」

「平均化は悪く言えば、エースを活かせないやり方だしね。日本軍はそういうおんぶにだっこで多くのエースを死なせたから、エースは精鋭部隊に有無を言わさずにぶっこむやり方が大衆に好まれるのさ。343空や64Fの例もあるし、ドイツの44JVも有名だよ。だからだよ」

ドイツの44戦闘団は良くも悪くも、日本に影響を与えた。その日本が扶桑の64Fのメンバー構成に縛りを与えた結果、後の世の地球連邦政府とジオンに影響を及ぼすのである。

「巡り巡って、キマイラ隊やロンド・ベルに影響を与えていくってのは因果なの?」

「平たく言えばそうなるね。結果論になるけど、ジオンは時空融合で失われた日本連邦のファイルを見つけ、それをキマイラ隊に応用したってのが推測されてる。連邦も軍縮で民間軍事会社に人材が流れまくって、その対策でロンド・ベルを拡大したからね。で、君たちはガンダムをたんまり使えてる」

「半分は在庫処分に近いけどね」

「ゼータク言わない。辺境の基地なんて、ジムU以前のポンコツがまだ現役なんだよ?それに比べりゃ」

「まぁ、ねぇ」

「歯切れ悪いですね」

「色々な戦争での試作品の押し付けに近いもの。いくら軍縮の名残で量産品の在庫が確保されてないったって、新型量産品のテストはやらされるのはね。例のジェイブス、正式なRGMナンバーはないんでしょ?」

「RGM-153が予定されてるって聞いたよ。ま、あまり普及はしないでしょ。ミッションパックは聞こえはいいけど、母艦のスペース食うからね。F90のミッションパックの多くが実験装備に終わったのはそういうわけだし」

のび太のいう通り、F90のミッションパックは連邦軍は『良好な成績のミッションパックを単一機能の機体として再構築して量産する思惑があったが、軍縮と重なったり、事態の急変で軍の再建が決まった後には、より年式が新しく、総合的に高性能であるF91の量産が決まった事などで計画そのものが立ち消えとなった。これはロンド・ベルなどに予算をかける一方、正規部隊の装備更新は遅々として進まない地球連邦軍にとって、ミッションパックは『母艦の搭載スペースを圧迫する』とされ、不評を被る。結局、ジェガンの再改装かつ、新型ジェネレーターと電装品の更新でビームシールドを持たした場繋ぎのはずの『フリーダム』のほうが安価、機体構造が大型である故に頑丈であった事、警備に払い下げの進むサラミス級巡洋艦などにもそのまま搭載可能な点から、後にハイローミックスのローの方の主力機として普及する事になる。連邦軍はエリート部隊のみが小型MSのジャベリンを保有する有様であるため、そのジャベリンを含めての機材更新のためにジェイブスが開発されたが、Fシリーズを意識しすぎていて、セールス的に『コケそう』だとはアムロの談。

「連邦軍はミッションパックより、MS自体の汎用性を選んだの?」

「伝統だしね。それに、歴代ガンダムがオーバーテクノロジーで近代化改修されれば、小型量産機の利点は殆ど消える。それに、外宇宙戦闘じゃ、質量は武器になるからね」

それはバスターマシンやゲッターエンペラーにも通ずる理論である。悪く言えば、同程度の力なら、質量が大きければ勝てるという暴論に近いが、ガンバスターなどの活躍で一定程度は正しい事は判明している。それと、キャプテンハーロックからもたらされたオーバーテクノロジーで地球連邦の技術は長足の進歩を遂げ、VFと市場を食い合う上、高性能化でV系以外の小型機の製造工程の高度化が問題になった。小型機に敢えて執着する意義は消え、星間戦争時代に適応するため、MSは一定の大きさの維持に方向性が戻った。

「それはそうなんだけどねぇ」

「仕方がない。小型機はガンダムタイプでもないと、実体弾への耐久性はむしろ落ちるんだ。だから大型機のほうが星間戦争の時代には合ってるんだ」

実際、数回の星間戦争で少なからずの小型機がガミラスやガトランティスの集中砲火で撃墜されているため、戦闘機形態が取れるVFのほうが生還率が高かったという戦訓がある。

「ま、アナハイム社とサナリィの首根っこはジョン・バウアー議員が掴んでくれてるんだ。この機会に使ってみるんだね」

愚痴る智子を宥めるのび太。ロンド・ベルに属せること自体、23世紀以降はエリートの証とされている。有事が続いた事で存在意義が政府にまで認識されたからだ。

「でも、先輩、MSを動かせるんですか?」

「あら、こう見えても、TMSとVFの資格は取ってるわよ、ドリーム」

「ぐぬぬ…、こちとら、最近までテスパイだったのにぃ〜…」

すごく得意げに自慢する智子。それに悔しがるドリームだが、錦の体験を自分の経験として語るので、人格が混じり合ったのは本当である。

「いいなぁ、ドリームは。あたしもスピード好きだし、時間取れたら、可変MSの資格取ろうかなぁ…」

「あたしはその前に戦車兵だなぁ…。」

ドリームは錦の持つ資格を受け継いだため、実はこの時点でMSの搭乗資格を保有している。キュアハートは『MSの前に戦車兵の講習を受講する』事を考え、キュアピーチは『TMS(可変MS)の資格を目指すのを検討するのだった。



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