富も名誉もいらない

ただ純粋に願うものは、その手から零れ落ち

その手に残るのは、血塗られた紅

それでも足掻き続けるしかない、いつか叶う日を信じて



僕たちの独立戦争  第二話 
著 EFF


太平洋赤道直下の島 テニシアン島

どこまでも続く蒼い空、青い海と珊瑚礁に囲まれた美しい島は、

たった一人の少女を幽閉する牢獄でもあった。

アクア・クリムゾン、オーストラリアを拠点に地球の五指に入る

クリムゾン・グループの会長ロバート・クリムゾンの孫娘の一人で半年前ヨーロッパの、

社交界にデビューしたわけありの姫君であった。

来場者に痺れ薬を飲ませ、

全員が痺れる中でただ一人踊り続けるという恐怖と戦慄を上流階級の方々に植え付けた。

クリムゾンの狂える姫と呼ばれていた。

「マリー退屈ですわね、何か面白い事はないかしら」

その声にそばで控えていた老メイドのマリー・メイヤは

「ありません。アクア様がデビューの時以来ここにいる為、何も起こりようがないです」

「………そうね、軽い冗談だったんですけど、皆様に受けなかったかしら」

「………アクア様、そんなにクリムゾンがお嫌いですか」

「…………………………………………………………………………………………………………」

「…………………………………………………………………………………………………………」

「………………そうね、嫌いだわクリムゾンが、

 そしてそんなクリムゾンから出られない、私がもっと嫌いですわ」

「………アクア様、そんなにロバート様を嫌わないで下さい。

 ロバート様も好きでアクア様を此処に閉じ込めているわけではないのです。」

「そうじゃないの、マリー分かるでしょう。

 クリムゾンが血塗られてるのを、沢山の屍の上に立っている。

 そんな自分の一族が嫌なの……時々、夢に見るの……………私の体が血の海に溺れていくのよ」

「…………………お嬢様」

「……………ごめんなさいマリー、………ここにいる時くらいは言わせて」

マリー・メイヤは考える、アクアは優しすぎるのだとそして誰かがアクアを支えてくれないだろうかと

思考の海にいたマリーを呼び戻したのは、南国の日差しにはない光であった。

「アクア様! お下がりください!」

マリー・メイヤはアクアとその光の間に立ち、SSのメンバーへの連絡を入れた。

その光はやがて人の形を成し一人の人物を部屋の床に降ろした。

SSのメンバー部屋に入った時には、すでに光はなく床に人が倒れているだけだった。

「アクア様! お怪我はございませんか!」

この島のガードを統括する、グエン・カリンガムは部屋に入ると同時にアクアの安否を確認し

部屋の状況を確認し床に倒れている人物に銃を向けた。

「お待ちなさい、グエン!」

アクアの声に動きを止めたが銃は依然その人物に向けられている。

「ドクターを呼んで、診察して下さい。もしかすると生きてはいないかもしれません」

「どういう事ですか、アクア様」

グエンの声にアクアはこの人物が出現した経緯を伝えた。

「もしかしたらボソンジャンプかもしれません、

 その場合ネルガルかクリムゾンの人体実験の可能性があります。

 ですから緘口令を出して下さい。この方はアクア・クリムゾンの名において保護します、いいですね」

「しかしアクア様、危険かもしれません。せめてロバート様に連絡を」

「ダメです、もうクリムゾンの犠牲者は見たくありません! いいですね!」

グエンは、隣にいるマリー・メイヤに目を向けるがマリーは首を振るだけだった。

ため息をつき、グエンは

「いくつかの条件次第ですがよろしいですか、アクア様」

「………分かりました、仰ってください」

「まずドクターの診察を受けて安全の確認をしてもらます、

 当面は私とマリー・メイヤの立会いの下で彼と接してもらいます、

 よろしいですね、決してお一人ではないようにして下さい。それが条件です」

「分かりました………………ごめんなさいグエン」

「いえ、私の仕事はアクア様をお護りする事ですので、お気になさらないでください。それでは」

ドクターと共にグエンは部屋を跡にした。

部屋にはマリー・メイヤとアクアだけが残され、時折窓から聞こえる波の音しかなかった。

マリー・メイヤは願う、アクア様にとってよき出逢いになる事を………


―――土星衛星軌道上―――


「……………マスター、ご無事ですかマスター」

「………………………………………………………………………艦内には居られないようですね。

 おや、このメッセージはまさか、そしてこのプレートは、………それにこの船体は一体」

「マスターは必ず帰ってこられるでしょう、ならば私の役目はその時に備えて準備をする事でしょう」

ダッシュはアキトの無事を信じて状況を把握する為に動き出した

そして導き出された結論に自分の目的を考え、ある計画を実行した

願うはマスターであるアキトの幸せを作る為に


―――テニシアン島 医務室―――


「それでドクター、そいつの具合はどうだ」

診察台に横たわる青年を見ながらグエンはドクターに聞いた

「………正直言ってお手上げだなグエンよ、どっから拾ってきたこのマシンチャイルド」

「はぁ、どういう事だドクター、マシンチャイルドと言えばまだ10にもならない子供じゃないのか?」

「確かにな、公式上……人類研究所のホシノ・ルリだったか、

 それが最初のはずなんだがこの青年はそれを上回る量の、ナノマシンがあるぞ。

 ざっと調べてみたがパイロット用、オペレーター用、対毒、治療用、他にも筋力強化、神経強化はあるは、

 この施設では分からんものが10はゆうにある。

 はっきり言って戦闘用マシンチャイルド、ここにいるSSメンバーが総がかりで戦っても10分もてば、

 良い方だろうな」

告げられた事実にグエンは信じられなかった、青年に視線を向けて

「そんな馬鹿な、それだけの戦闘能力がそいつに有るのか、信じられんよ」

「………事実だ。今言ったのはそいつに戦闘技術がない場合であって、有ればもっと短くなるぞ。

 それにしても、良く生きているなそいつ、普通なら死んでるぞ」

「………どういう事だ? ドクター」

「普通の人間だったら、これだけのナノマシンを体に入れられたら補助脳が脳を圧迫、

 もしくは脳を突き破り即死だよ。だがそいつの場合、きちんと制御されておそらく無事だろうな。

 天才なんて言葉じゃ説明できんよ、奇跡の領域だな………それは」

「………そうか、敵に回すと百パーセント死ぬな俺たちは」

「それは、保証してやるよ。絶対に敵にするな、殺すのなら今のうちだな」

「………それは出来ん、アクア様のお願いだからな」

「………そうかそれじゃぁ仕方がないな、そいつの資料は全て破棄するぞ。

 正直反吐が出そうじゃ、誰がやったか知らんがな」

「そんなにひどいのか、そいつは……………」

ドクターの嫌悪する顔を見てグエンは青年の状態に気付いた

「ああ、全身を診たが切りきざまれてるわ、頭には直接ナノマシンが打たれているは、

 おおよそ人間が味わう苦痛を一通り経験して、さらに二、三周はしてるんじゃないかな、

 普通の人間なら狂い死にしとるわ。」

「………………………そうかアクア様に報告するべきか」

「………やめておけ、アクア嬢ちゃんにゃきつすぎる。

 優しい娘じゃからの………これでクリムゾンのだったら」

「そうだなドクター、済まんがカルテを偽造してくれ、アクア様にはそれをお見せする」

「わかったそう「ダメです!」」

「ア、アクア様いつの間にこちらへ」

グエンが振り向いたその先にアクアが青い顔をして立っていた

「先ほどから居ました、………やはりこの方はクリムゾンの犠牲者なのですか?」

「………………………わからん、そいつが目覚めん事にはな」

「そうですか………何か身元を証明するものはないですか?」

「それも調べたが、かえって分からんようになったんじゃ」

「どういう事ですか、ドクター?」

「それがな、そいつの時計の時刻がな2203年なんじゃ、

 それにそいつが装備してた物には2202年作られた物があったんじゃ」

「はぁドクターちょっと待ってくれ今は2195年だぞ、8年も先じゃないか」

「だから分からんと、言ってるんじゃ服の素材といい、

 まるで未来から来たとしか言いようがないんじゃよ」

ドクターが告げた言葉にアクアは考え込んで話した

「……………………そうですか、もしかするとボソンジャンプは時空間移動なのかもしれませんね。

 ドクター、グエンこの事は内密にお願いします」

「「分かりました」」

「………ん、どうやら目を覚ましたようじゃな」

「ここは何処だ?、俺はどうして此処にいるんだ?」

起き上がり周囲に目を向ける青年にアクアは話しかける

「目を覚ましたようですね、

 私はアクア・クリムゾン、もしよければ貴方のお名前を教えて下さいますか?」

「………アクア、俺の名は………………………………ダメだ分からない」

「どうやら一時的な、記憶喪失かもしれんな。いずれ戻ると思うがな」

「そうですか、とりあえず貴方のお名前は………………………クロノとします、よろしいですか?」

「………………ああそれでいい。何が出来るかわからんが出来る範囲で手伝おう、それでいいか」

「いえ、貴方は我が家のお客人ですので別にかまいません。記憶が戻るまでゆっくりくつろいでください」

「いや、そうもいかん。出来る事があるなら手伝いたい」

「なら、わしの手伝いをしてもらおう、それでいいな」

「分かった世話になる、じーさん」

「ドクターじゃ、爺と呼ぶな」

「わ、わかったドクター」 「うむ、それでいい」


―――ネルガル会長室―――


ネルガル会長アカツキ・ナガレはネルガルシークレットサービスリーダ−、

プロスペクターの報告を聞いていた。

「それでどうだいプロス君、ゴミ掃除の方は順調かい」

「それがなかなか尻尾を掴めず、困っています」

「そうか………父上にも困ったモノだな、潰しても潰しても出てくるから参るよねぇ」

「はい、先代が残された施設は、ほぼ処理しましたが社長派が隠している施設に関しては未だ不明です」

「人体実験か………、どうしてだろうねぇそんな下らん事をするんだろう。

 する方は何も感じないんだろうねぇ、どれほどの痛みを伴うのかを、命の重さを、

 プロス君、僕にもパイロット用のIFSが有るんだけど、

 これ付けてるだけで改造人間だよ、分かるだろう。

 これだけで化け物扱いなのに、何でそんな化け物を造りたがるんだろうねぇ」

手の甲のタトゥーを見ながらアカツキは愚かな行為に疑問をぶつける

「………………………会長」

「………………すまないプロス君、僕も兄さんがいなかったら彼らと同じだったかもね。

 面倒をかけるけど、発見次第処理してくれるかい、ああマシンチャイルドの子供の保護を優先で」

「分かりました会長、ですが………………」

プロスの返答にアカツキは苦渋を見せて話す

「………………分かってるよ、それでもだよ。

 例えダメでもだよ、頭が痛いよ保護できず死体しかなくてもね。

 それにボソンジャンプの事もあるし、ウンザリだよ」

「そうですな、マシンチャイルドに続き、今度はボソンジャンプ、ネルガルも業が深いですな」

「……………全くこんな椅子の何処がいいんだろうねエリナ君も、さっさと降りたいよ僕は……」

「そういえば話は変わりますが、クリムゾンの姫君の事はご存知ですか?」

「ああどっかの島に閉じ込められたって話かい、案外僕と同じで家がきらいなんじゃないかな」

アカツキ・ナガレとプロスペクターの会話を中断するかのように、

会長秘書のエリナ・キンジョウ・ウォンが、会長室に飛び込んできた。

「し、失礼します会長、緊急事態です」

「どうしたんだエリナ君、仕事ならキチンとしてるよ」

「あら珍しいわね、じゃなくて社長派に不穏な動きがあります。

 NSSを使わず傭兵を使っていた為、発見が遅れました」

「な、何だって傭兵なんか使って一体何をする気なんだい、まぁ碌な事をしないんだろうけど」

「現在分かっているのは、クリムゾンへの牽制に使う事ぐらいですが、どうしますか」

「うーんプロス君、どう思う」

「そうですなぁ。おそらく非合法の実験施設への、攻撃だと思われます。

 まずアシが付きにくい者を使い、それからNSSを使うのだろうと思います」

「そうかぁ、成功してもよし、失敗してもよしって所かい………………………………」

「そうですが出来れば、失敗してNSSを使う時にその人物を処理と云うのがいいんですが」

「な、何いってんのよ、そんなノンキな事を言ってる場合じゃないでしょ!!」

「でもねぇもう遅いよ、止められない以上次善の策を考えるしかないだろう、違うかいエリナ君」

「そうですな会長、では先ほどの件と併せて調査しておきます。それでは失礼します」

「では頼むよプロス君、エリナ君も詳しく調べてくれないかい」

「分かりました会長、では失礼します。それとちゃんと仕事しなさいよね!」

二人が会長室を退出して、アカツキは外の景色に目を向け呟いた

「………………………………兄さんが生きててくれたら、いや言ってもしょうがないか」

アカツキ・ナガレ………死んだ兄に代わりネルガル会長に就いた青年

誰もが羨む立場にいる青年だが

その肩には自身を押し潰すような重圧がかかっていた



―――テニシアン島 医務室―――


「おーいドクター、荷物はここでいいのか。」

「おう、そこでいいからついでに整理してくれんか」

「………わかったやっとく、しかし人使いが荒いぞドクター」

「何をいっとるんじゃ、若いんだから働かんか、クロノ」

「しかも都合のいい時には年寄りになるし」 「なんか言ったか、クロノ」

「………いや何でもない」

「それより記憶の方はどうじゃ、何か思い出したか?」

「ダメだな、………………全く思い出せん、以前言われたことが原因かもしれん」

「補助脳の事か、だがなぁお前さんの五感がある以上、それは関係ないと思うんじゃが」

「そうかもしれないな、心の何処かで記憶が戻るのを拒んでいるのかもしれん」

「そうじゃな、此処で初めてスープを飲んだ時泣いていたからな。アクア嬢ちゃんが驚いてたがな」

「その話はやめてくれドクター、自分でも何で泣いたのかわからんのだ」

「多分、お前さんは五感、特に味覚がダメになっていたんじゃろう。

 ………だから嬉しくて泣いたんじゃろう」

「………………………………そうかもな」

「………お前さんは記憶が戻らん方が幸せかもしれんな、………………アクア嬢ちゃんの為にもな」

「………何でそこでアクアの名が出るんだ、分からんぞ」

「とぼけるな、分かっているはずじゃアクア嬢ちゃんの気持ちを………………そうじゃろ、クロノ」

「………………………………………………………………」

「アクア嬢ちゃんにはお前さんのような人間が必要なんじゃ、支えてやれる者がな……………」

「だが俺には何かやらなければならない事があるんだ。………だからいつまでも此処にいる訳には」

「わかっておる! だから行く時はアクア嬢ちゃんも連れて行けばいい」

「そんな事は出来るか、……………多分俺の行く所は地獄だろう、そんな所にあの娘を連れて行けるか

 あの娘には誰よりも幸せになって欲しいんだ。俺は誰も幸せに出来ない」

「違うなクロノよ、それはお前さんの気持ちで、アクア嬢ちゃんの答えじゃない。

 アクア嬢ちゃんはお前と共にあることを望んでいるんじゃ、………………例えそれが地獄でもじゃ」

「………………………………………………………………だが俺は」

「後はお前さんの覚悟次第じゃ、地獄だろうが命を懸けて守ってやればいい……そうじゃろクロノ」

「…………………………ドクター」

「人はそんなに弱くはない、お前さんのように覚悟があればな………ん、どうしたクロノ」

外を見ているクロノにドクターが聞くとクロノは走りながら答えた

「……………銃声が聞こえた。ドクター! 俺はアクアの元に行く気を付けてくれ!」

「わかった! クロノ! お前こそ気を付けるんじゃぞ!」



「アクア様、お茶の用意が出来ました此方へどうぞ」

「えぇ、すぐに参ります。ありがとう、マリー」

南国の陽射しを避けるように作られたバルコニーで、

アクア・クリムゾンは口元に笑みを浮かべてお茶を楽しんでいた。

その様子を見てマリー・メイヤはクロノとの出会いを喜んでいた。

クロノがこの島で暮らし初めて三ヶ月、

アクア様の表情が変わられている事はこの島にいる者たちは気付いている。

アクア・クリムゾンではなくアクアという一人の女性としてクロノは接している。

その事がアクアにとって嬉しい事なのだろうとドクター言っていた。

クリムゾンの姫君としてのフィルター越しで見られていた事が、アクアにとって苦痛なのだと。

(やはりアクア様には、私たちクリムゾンの者たちではない存在が必要だったのでしょうね)

ただ問題もあるドクターが言うには、クロノは実験体としてクリムゾンにいた可能性がきわめて高い事、

それもかなり過酷な状態で生きていた事、

記憶が戻った時、アクアに対してどんな行為に及ぶか分からない事、

グエンがその事を懸念しているが、どうしようもない事だと、

『戦闘用マシンチャイルド』その言葉の意味がどうしても重くのしかかる。

『ボソンジャンプ』この事も気にかかる火星で発見された新しい移動手段の技術、

ネルガルが現在躍起になって研究している技術だと、

だが生物の移動は困難と言われていたが、それをクロノが為しとげたと、

この事が知られたら、クロノは再び実験体にされるだろうと、それもネルガル、クリムゾンからも、

そうなればアクアの心にどれだけの傷がつくか分からないと、

「……………マリー、聞こえてましてマリー」

「はっ、申し訳ありません、アクア様」

「何かあったの、……………心配事でもあるのマリー」

「………いえ、なんでもありません、お気になさらないで下さい、アクア様」

「……そぅ、ならいいんだけど…………………………」 「はい、アクア様」

「………………………………………………………………………………」

「………………………………………………………………………………」

沈黙し波の音を聞く二人だったが、やがてアクアが話した

「でもね………………………どうしようもならないわ、マリー」

(!!やはり気付かれている。聡明な方ですから、ならば私のする事はひとつですね)

「ではクロノをこの島より別の場所に移動させて、二度と会わないようにしますか?」

「!!そんなこと出来ません。そんなこと………………」

動揺するアクアにマリー・メイヤは続ける

「何故クロノにこだわるのですか、クリムゾンの被害者だからですか、それとも…………」

「………………………………分かりません、ですが側にいて欲しいんです。ただそれだけです」

「ならクロノを信じましょう。記憶はないですが、クロノの本質は今のままです、

 記憶が戻っても、アクア様を嫌いにはなられません」

「………そうでしょうか、怖いんです。記憶が戻るのが、クロノが私の元を離れていくのを」

「でしたら付いて行けばいいんです、どこまでも」

「………………でも、足手まといになって迷惑になるんじゃ」

「いいんです迷惑をかけても、その分クロノを支えてさしあげればいいんです。

 どうもクロノは一人で抱え込んでしまうみたいですし、その負担を支えてさしあげればいいんです」

「でも………………………………」

「クロノが居なくなってもいいんですか?」

問いかけるマリーにアクアは直ぐに否定する

「イヤです!! あ………………」

「なら付いて行くしかないですね」

「………………マリーの意地悪」

拗ねるようにマリーを見つめるアクアに、マリーは微笑んで話す

「ええ、イタズラ好きのお嬢様付のメイドですから、たまにはいいでしょう」

「………………………………」

「……これはただのおせっかいですよ、アクア様。クロノの側にいたいのなら、覚悟を持つ事です」

「………………覚悟ですか」

「はい、全てを捨てても後悔しないか。それともクリムゾンを背負ったままクロノを守り続けるか」

「!そ、それは………………」

マリーが告げる言葉に動揺し答える事が出来ないアクアに、マリーは話し続ける

「前者は全てを失います、後者はクリムゾンの紅を持つ事です、

 後はアクア様の心次第で流される血の量を減らせるでしょう」

「……………………マリー」

「いつまでも逃げてはいられません。未来を作るのはアクア様次第です」

「………………………………………………………………………………………………」

考え込むアクアにマリーは更に別の問題を話す

「………………ただ問題もありますが」

「何かしら、マリー」

「クロノは、無自覚のそう……天然の女たらしです。それだけが心配です」

「………………治らないかしら」

「おそらく無理だと思います、ドクターが言うには本人が自覚できんからとのことです」

「………………………………そうね、自覚できないでしょうね、アレは」

「ただ浮気が出来ないところが、救いだろうと………………」

「そう、………………………………でもイヤだわ」

南国のテニシアン島に微妙な空気が漂い始めた時、アクアの元にグエンが現れた。

「失礼します、アクア様!(む、何だこの空気は、出来れば逃げたいが………)」

「どうかしましたか、グエン」

「は、侵入者ですアクア様。現在ガードが対処していますが、数が多いので避難して下さい」

「わかりました、で「グエン! 銃声が聞こえたが、侵入者か!」クロノ!」

「そうだ、すまないがアクア様のガードを頼む、クロノ」

「イヤ、俺が出た方がいいんじゃないか」

「イヤ、客人であるお前に行かせるわけにはいかない。それに万一の時はアクア様を頼む」

「………グエン、な、い、いかん」

その時クロノの視界にスナイパーライフルの銃身の反射する光が見えた!

「ク、クロノどうしキャアァ――――――――」

「「アクア様!!」」

「グ、グエン、アクアは無事か?」

「ああ、無事だよ、お前のおかげでな」 「そ、そうか………………」

「お、おいクロノしっかりしろ! クロノ!」

薄れゆく意識の中で、クロノはアクア無事を喜んでいた

あとに残された二人は血だまりに倒れるクロノとアクアに何もいえなかった。



感想

むぅ…

どうしました?

いや、なんといっていいのかな…

まあ、本人が異色と言っている作品 ですし、変わっているのは当然ですよ?

そこは問題ないけどね、アクアも可愛い性格になっちゃっているのが凄いね…

ふう、確かに、私をおいて無理やりヒロインに駆け上がった方ですし、そうでなく ては困りますが…

確かに、恋愛をさせるには性格も必須かな?

もう一つの言いたい事も分かります が…それはメールで知らせることとしましょう。

ははは(汗)

作品は面白い展開だと思いますが、後々しんどくなりそうな事をしていますからね…

せめて、そのことは言って置こうと思います(汗)

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