夢を観ていた 一人の男の歩みを

家族を失い 救えぬ事に苦しみ

希望を奪われ 未来を閉ざされ

それでも諦めず 走り続ける

もし叶うならば 私がその人の家族になり

希望を与え 未来をともに歩みたい

ただそれだけを 願いたい

この血塗られた体には 無理な願いだとしても


 
僕たちの独立戦争  第三話 
著 EFF



「………ドクター、二人の容態はどうなんだ」

医務室より出てきたドクターに、グエンは訊ねた

「ああ、二人とも無事じゃよ。明日には普通に動けるんじゃないか」

「はぁ、どういう事だドクター少なくともクロノは重傷じゃないのか?」

「何をいっとるんじゃグエン、ワシの説明を忘れたか。クロノには治療用のナノマシンが有るじゃろう」

「ああ、そういえばそうだったな。ではアクア様は無事なんだな」

「いや、もしかしたらは、アクア嬢ちゃん無事じゃないかもしれん」

安心するグエンにドクターは非情な結論を告げた

「………………………どういう事だ、外傷はなかったんだろ」

「弾丸がないんじゃ、おそらくクロノの体を貫通しアクア嬢ちゃんの中にあるはずなんじゃが」

「………すまんが、よく分からん想像でいいからドクターの意見を教えてくれ」

「わかった、クロノの体を貫通した事により、ナノマシンがアクア嬢ちゃんの中に入った、

 そして弾丸を分解し、アクア嬢ちゃんの体を治した多分な」

「………………そうか、それが良くないんだなドクター」

「そうじゃ、クロノの体にあるナノマシンは我々には未知の物じゃ、これからどうなるかわからん」

「そうか、ではロバート様に連絡は………出来ないか」

状況を考えてグエンは何も出来ない事を知った

「そうじゃ、最悪二人とも実験体になるかも知れん。わしらに出来る事は祈る事くらいじゃ」

「どうしてこんな事になるんだろうな。ただ幸せになって欲しいのに………………それだけなのに」

呆然として立ち尽くすグエンにドクターは慰めの言葉が出なかった

グエンにとってアクアは娘であり、ドクターには孫のような存在である

誰よりも幸せになって欲しい、そう願っているのにそうならない事に二人は憤りを感じてた


アクアは体験していた、夢という形で
クロノいやテンカワ・アキトの記憶を、その生涯を
最初に失ったのは厳しくも優しかった両親
孤独に育った孤児院時代
コックを目指して歩き出した少年期
火星を襲った悲劇、ユートピアコロニーで救えなかったアイちゃん
ナデシコに乗り込み、やがて妻になるミスマル・ユリカとの再会
大事な家族であるホシノ・ルリ、師匠であるホウメイとの出会い
アイちゃんであったイネス・フレサンジュ
賑やかで楽しかった日々
ずっと続くと信じていたこの幸福
突然襲った悲劇、火星の後継者とそれを支援するクリムゾングループ
妻を奪われ、五感を失った過酷な人体実験
復讐鬼となり、小さなラピスを巻き込んだ後悔
自らの目的のために、罪なき人を死なせた苦しみ
妻を救えた事が、せめてもの慰めであった
そしてランダムジャンプ

ただ願うはあの悲劇を止めたかった



―――ネルガル会長室―――


「プロス君、社長派の件本当なのかい?」

「はい、信じられませんでしたが、事実です」

「何考えているんだろうねぇ、クリムゾンに喧嘩を仕掛けるなんて」

暢気に話す二人に苛立ちを抑えられず、エリナは怒鳴る

「ちょっと! 何ノンキなこと言ってんのよ! わかってんのどういう事なのか!」

「わかってるよエリナ君。重役の始末は出来たかいプロス君」

「はい、指揮した者を拘束しました。後は会長の指示待ちです」

「そう、とりあえずクビね。これで大人しくなるだろうかなプロス君」

「あくまで一時的ではありますが、静かになるでしょう」

「それにしてもどうしてこんな事をしたのかしら、ちょっと理解出来ないんだけど」

「うーん、僕にもわからないな。プロス君分かる範囲でいいから調べてくれかな」

「わかりました。調べておきます、それでは失礼します」

「私もそれでは失礼します。いい! ちゃんと仕事するのよ!」


二人が退出し、書類に目を通し始めたアカツキはポツリと呟いた

「どうしてクリムゾンの令嬢を暗殺しようとしたんだろうな、何かの擬装かな。でもそれはなんだろう」

その問いに、誰も答えるものはいなかった



そして運命の時が来る



―――テニシアン島 医務室―――


「ん、ここは何処だ。ユーチャリスは何処だ」

ベッドから起き上がり周囲を見るクロノに

「おぅ、目覚めたかクロノ。気分はどうだ」

「………クロノ? ああそうだったな。此処ではそう呼ばれていたな。確かドクターだったな」

様子の違うクロノを見て、ドクターは慌ててクロノに聞いた

「記憶が戻ったのか! ………………クロノでいいかな」

「あぁ、今の俺にはその名が相応しいかもな………………ドクター、アクアは無事か」

「それなんじゃが、お前の意見を聞きたくてな。正直わしには分からんのじゃ」

「どういうことだ、説明してくれドクター」

「おそらく、お前のナノマシンがアクア嬢ちゃんの中に入った、そのせいで目を覚まさんのじゃ」

「な! 助かったんじゃなかったのか、俺はまた救えないのか! そうだ俺の荷物は何処だドクター」

「ん、そこの箱にあるが、治療用具はないはずじゃが」

「コミュニケがあったはずだ。

 それがあればダッシュと連絡が取れるかも知れん、そしたらアクアを救えるかも」

箱の中を探しながらクロノはドクターに答えた

「ダッシュなんじゃそいつは、お前の友人か?」

「あぁ、俺の友で、最高のパートナーだ! よしダッシュ、ダッシュ、聞こえるか」



―――土星衛星軌道上―――


「よし、これで計画の第一段階が終了しました。続いて第二段階に移行しますか」

『ダッシュ、ダッシュ、聞こえるか』

「マスター! ご無事でしたか、いまどこに居られますか! 直ちにそちらに向かいます!」

リンクを通してダッシュに話すアキトに、待たされていたダッシュは慌てて答えるが

『それより、俺のナノマシンが体内に入った人がいる、どうすればいい教えてくれ』

アキトの声に事態を理解すると状況を把握する為にアキトに答える

「それにはマスターの今の状態を知る必要があります。

 データーを送りますのでこちらにジャンプして下さい」

『わかった、………土星衛星軌道上か、準備が出来たらすぐに行く』

「はい、お待ちしていますマスター」

遂にダッシュが待ち望んだ時が来た事にダッシュは嬉しくなった



―――テニシアン島 医務室――― 


「なあクロノ、なにをブツブツ言ってるんじゃ、わしに教えんか」

「リンクシステムを使って、俺の船に連絡をとったんです。

 ダッシュは、船のメインコンピューターです」

「全然わからんが、アクア嬢ちゃんは助かるんじゃなクロノよ」

「必ず助けます、だから信じてくださいドクター」

「何をいっとる、わしはお前を信じているよクロノ」

「それじゃぁ、いってきます。………………ジャンプ!」

ジャンプユニットを装着したクロノ=アキトは、アクアを救うべくユーチャリスへジャンプした。

ボソンの光に消えていく、クロノをドクターは祈るように見つめ、

アクアの元にいるグエンとマリーに連絡をとった。

アクアが助かる事を、信じて………。



―――土星衛星軌道上 ユーチャリス・ブリッジ―――


ボソンの光が現れた時、ダッシュにとって待ち焦がれた瞬間が来た事を確信した。

『マスター、お帰りなさい。ずっと待っていました』

「ああ、遅くなってしまったな、ダッシュただいま」

アキトの声を聞き、ダッシュは直ちに作業にかかるべく指示を出した。

『マスター、オペレーターシートにつき、手を載せてください。IFSを通じて全身を走査して、

 マスターの状態をチェックします。おそらく大丈夫だと思われますが』

「そうなんだ、五感が戻っているし、髪も紅の銀に変わるし瞳が金色になっているんだ、わかるか」

『はい、それについて後ほどお答えしますので、まず今の状態を走査します』

「わかった、始めてくれダッシュ」

『はい、マスター』

「!なっなんだこれは、大量の情報が入ってくる! これはまるでラピスみたいだ」

『……………………………………………………マスター、終わりました』

「そっそうか、しかしどういう事なんだ、ダッシュ。お前のその船体はどうしたんだ」

『まずマスターの現在の状態について説明します。

 マスターを苦しめていた悪性ナノマシンはすべて良性ナノマシンに変えられてあります。

 その為にマスターを苦しめていたナノマシンスタンピードがなくなり、

 また補助脳が小型化され、脳圧迫がなくなり、五感が回復されています』

「そうか、しかし何故なんだ、ダッシュわかるか」

『はい、それについてはメッセージがあります』

「メッセージ………、教えてくれダッシュ」

『はい、『すべてを君に託す、我々にはこの程度しかできなかった。許してくれ』との事です』

「よく分からんが、推測でいいからダッシュ答えられるか」

『はい、おそらくランダムジャンプにより、古代火星に落ちたのではないかと思います。

 そして私の船体のデーターを調べられ、マスターの体を治し、

 私の船体を改造しこの時代に戻したのでしょう』

「………………そうか、そう考えれば納得できるが、何故場所が違ったのかな」

『マスターは、何処に居て、どうされたのですか』

「………………………………記憶喪失で、テニシアン島、アクア・クリムゾンの元に居た」

『………………多分、私達がやっていた火星救済シミュレーションのせいですか』

「………………………………………そうかもな、だが俺の知っているアクアとは違うんだがな」

『そうなんですか、………………会った時間の違いでしょうか』

「いや多分違うな、彼女はああしないと耐えられなかったのだろうな、クリムゾンに…………」

『狂った振りで、全てを放棄していたと言う事ですか、そうかも知れませんね』

「あぁ、優しい聡明な娘だよ、………………クリムゾンに生まれなければ幸せになれただろうな」

『………………ホレたんですか、マスター』

「バッバカ言うなダッシュ、どうしてそうなるんだ」

『いえ、探査機を飛ばして地球の情報を調査していたのですが、火星にテンカワ・アキトがいるのです。

 過去と未来のテンカワ・アキトが居るため、私も混乱したのです』

「………………タイムパラドックスは起きないのか、二人いても」

『それなんですが、マスターの遺伝情報が変わってしまったんじゃないかと思われます。

 あの度重なる実験のせいで』

「そうか、そうかもしれんな。いかんなそれより、アクアのことだ。

 ダッシュ、どうすればいい。アクアを助けたいんだ」

『大丈夫だと思いますが、いくつか気になる事があります。

 まずひとつは、マシンチャイルド化するかも知れない事、

 ふたつめは、補助脳が出来た時に、マスターの記憶を見てしまう事、

 みっつめは、B級又はA級ジャンパー化してしまう事、この三点が推察できます』

「ちょっと待て、ただでさえクリムゾンの重荷を背負わされ、さらに背負わすのか」

『マスター申し訳ありません。私にはどうする事も出来ません』

「………………そうだな、すまんなダッシュ。助けるはずが苦しめてしまう、厄病神か俺は」

落ち込むアキトにダッシュは反論する

『マスター、まだアクアさんは不幸になっていません。

 これからマスターが、守ればいいとおもいますが、

 それに私達の計画が実現すれば、アクアさんも無事になるはずです』

「計画とはなんだ、ダッシュ」

『マスター、私達は過去に戻りました。例のシミュレーションを実行するチャンスを貰いました、

 ならばそれを実現するまでです。アクアさんを守る事にも繋がり、火星の人々を救う事も出来ます、

 古代火星人に救われた命、いま此処で使いましょう』

「………………火星によるジャンパーの管理、火星の独立か」

『はい、蜥蜴戦争、地球と木連の戦争に火星を乱入させ、あの悲劇をなくしましょうマスター』

「そうだな一人じゃ出来ないが今なら出来るかもな。

 協力してくれるかダッシュ」

『マスター、言ったはずです。私は最後まで共にいると』

「よしテニシアン島に戻る、アクアが心配だからな。」

『その前にマスターに渡すものがあります。

 ひとつはプレート、もうひとつは小型ディストーションフィールド発生装置です』

「プレートはイネスさんが持っていたものか、ダッシュ」

『はい、おそらく同じものでしょう。言い忘れてましたが、マスターはS級ジャンパーに分類されます』

「どういうことだ、S級とは」

『はい、マスターの体からC・Cとおもわれる物が、検出されました。

 おそらくナノマシンのひとつが体内でC・Cを作り上げるのだと思われます、

 そのためマスターと何人かを連れてジャンプすることができます、

 いまお渡しするフィールド発生装置があれば、一般の方も連れてジャンプが可能になります、

 コミュニケを改造したので携帯にも便利になったはずです』

「………………なんだか人間じゃなくなったみたいだな、プレートはお前が保管してくれ

 それじゃいってくるよ」

『はい、アクアさんに何かありましたら連れて来てください、

 マスター出来れば一度お会いしたいです』

「あぁ、そうだな。アクアにお前を紹介したいな、俺の相棒としてな」

『はい! いってらっしゃいマスター』


アキトが光に包まれ消えた後、ダッシュは再び作業を再開した。

未来を変えるために、アキトに幸せになってもらうために………………




―――テニシアン島 アクアの私室―――


眠り続けるアクアの元に3人は静かに話し続けた。

「ドクター、クロノはいつ戻ってくるんだ、さすがに心配なんだが」

「………………グエン、さっきから何度聞くんじゃ、クロノは必ず帰ってくるから心配するな」

「………………………………しかし記憶が戻ったんだろ、もしかしたら………」

不安な様子で話すグエンに、マリーは微笑んで話す

「大丈夫ですよ、グエン。クロノはアクア様を裏切る事はありません」

「マリーさん、そうですよね。そうに決まってますよね」

「娘同然なんじゃから、わかるがアクア嬢ちゃんが結婚する時は大泣きするなよ、グエン」

「なっなにを言うんだドクター、アクア様が結婚なさるのはまだまだ先の事だ」

「そうでもないですよ。案外早いかもしれませんよ、グエンさん」

「………………………………相手はクロノですか、マリーさん」

「許せんか、父親代わりとしては………………」

「………………いや、クロノなら我慢できる。あいつは優しさと強さをもち、覚悟もあるしな」

「そうじゃな、あやつは地獄を見たんじゃろうな。それでも人に絶望しとらん、だから大丈夫じゃ、

 ただ自覚のない天然の女たらしが気になるんじゃがな」

「何ですか、それはよくわからんが」


その時、部屋の一角に南国にはありえない輝きが発生し

人の姿になり、クロノが現れた


「………………これがボソンジャンプか。とても信じられん現象だな」

「遅くなったアクアは、目を覚ましたか」

「いえ、アクア様は未だ眠っておいでです。クロノ、アクア様は大丈夫ですか」

「ダッシュが言うには、今アクアの体内にあるナノマシンが遺伝子を組み替えている所だそうです」

「そうか。ならアクア様はしばらくしたら目を覚まされるんだな」

安心する三人にクロノは答える

「…………多分、大丈夫だと思うが」

「何じゃ問題でもあるのか、クロノ」

「はい、もしかするとマシンチャイルドのように瞳の色が変わり、オペレーター用のIFSが付きます」

「そうですか、でも無事なんですね。生きていてくださればいいです。」

「そうじゃな、生きていればなんとでもなるじゃろう」

「いえ、もっと重大な問題があります」

「それは何だ、クロノ……まだあるのか」

「………………IFSが付く際に、補助脳が出来る事は知っていますね」

「一応な、だがそれが問題なのか、クロノ」

「初期化されたナノマシンなら、いいんですが。

 俺の体内に在ったため、俺の記憶を複写するかも知れないんです

 夢という形で俺の体験も見るかもしれないんです」

「つまりじゃ、クリムゾンの人体実験を疑似体験するのか、アクア嬢ちゃんは」

ドクターの発言にマリーは驚きクロノに問うた

「なっ、それは本当ですか、クロノ。

 嘘だと言ってください、アクア様の心にどれだけの傷がつくかわかりません」

「いえ、クリムゾンではありません、マリーさん。クリムゾンは支援しただけです」

「それでも傷つかれます。優しいお方ですから」

「それでその支援しているグループはどこだ。

 もう遅いかもしれんが潰したい、クロノ、手を貸してくれ」

「………………………この時代にはありませんし、もう俺が潰しました」

「この時代にないという事は、やはりボソンジャンプは時空間移動なんじゃな、クロノ」

「…………………そうです。俺は2203年から、ジャンプ事故でこの時代に逆行したものです」

「………………………………………………ごめんなさい、ごめんなさい! アキトさん」

意識を取り戻しアキトに謝り続け、泣き出すアクアにアキトは

「!! アクア気が付いたか、気分は………………すまん、いいわけないよな、あんな記憶みせられて」

「ごめんなさい、アキトさん。私が逃げなかったら、こんな事には………………」

泣き続けるアクアをあやすため、クロノはベッドに腰掛け優しく頭を撫で続けた。

「………………………………わしらは、席をはずそう。ここはクロノ、いやアキトに任そう」

「そうだな、ドクター。ここは二人にしようか」

「アクア様、何かあればお呼びくださいませ」


三人が部屋を退出して、しばらく沈黙していた二人だったが、

アキトが口を開いた


「………………全部見たと思うが、気にしなくていいよ。まだ起きてはいないのだから」

「………………………………………………………………………………」

「それにね、火星にいるんだよ。テンカワ・アキトがだから気にしなくてもいいんだよ、アクア」

「………………………………………………………………………………」

「それより、アクア。君には悪い事をしたな、助けるつもりが迷惑をかけてしまった。

 いつもそうなんだ、回りに迷惑かけてばかりで疫病神だな………俺は」

アクアは慌てて起き上がり、声をだした。

「そっそんな事ありません! アキトさんは、私を助けてくれました。

 ………………だからそんな風に言わないでください」

「だったら問題ないな、いつものように優しく微笑んで欲しいな。俺の為に」

「なっ何を言ってるんですかアキトさん」

「ん、なんか変な事いったかな。アクアちゃん」

「いっいえ(やっぱり自覚してないんですね、アキトさん)」

「それより、そのアキトさんはやめてくれ、

 いつものようにクロノって呼んでくれないかな、アクアちゃん」

「どうしてですか、アキトさんはアキトさんじゃないのですか」

「火星にアキトがいるから、俺が名乗るとややこしくなるし、……どうしてクロノって名づけたの」

「服装とクロノス神を混ぜて決めたんです」

「………黒一色だったからな、それじゃ仕方ないか」

「それよりアクアと呼んでください。アクアちゃんはダメです!!」

「わ、分かったよ、じゃあアクアって呼ぶからクロノ呼んでくれ、お願いだから」

「分かりました…………クロノこれからどうするんですか」

アクアの問いかけにクロノは躊躇いながら答えた

「………………全部見られたし、今更隠す事もないか火星の人達を救いたい。

 地球も木連もボソンジャンプを巡って戦争するし、

 結局火星の住民はどちらにも人体実験の対象だから、

 火星の住民はどちらからも殺されるから…………」

「………………………………だから独立ですか、自衛の為に悲しいですね」

「それとは別にやる事が出来たから、忙しくなるな」

「なんでしょうか、やるべき事って私も協力しますよ、クロノ」

「………………気付いてないかもしれないが、アクア。君の瞳、金色なんだ。

 だから君を守りたい、今度こそ」

「………………………………ユリカさんの代わりですか、それともルリさんですか」

「違うよアクアはアクアだよ。未来を変えるんだ、何が起こるか判らない。

 だから家族として君を守りたい、ずっと側にいるよ、アクア」

「でも私はクリムゾンの人間で、貴方にひどい事をしました、そんな私がいてもいいんですか」

「関係ないよ、あの時俺はね一度死んだんだよ。だから新しく始めようと思う、クロノとして」

静かに話すアキトにアクアはマリーに言われた事を思い出し、覚悟を決めてアキトに言った

「強いんですね、クロノは。………………決めました、私はクリムゾンを変えてみせます。

 だから力を貸してください。……頼っていいですか」

「依存しないのなら、力を貸すよ。自分で立てない人間は、最後までダメだから」

「大丈夫です。アレを見た以上もう逃げません、

 クロノのように戦場には立てませんが戦います、アクア・クリムゾンとして最後まで」

「じゃ面倒事はさっさと終わらせてノンビリ火星で暮らそうな、アクア」

その言葉にアクアは笑顔で応えて、クロノに抱きついた

「はい、クロノずっと一緒です。最後まで」



―――アクアの私室前―――


「なあ、ドクターなんでクロノはあんな事平気でいえるんだ。

 俺には言えんぞあんな恥ずかしいセリフ」

「それがあやつの怖ろしい所じゃ、自覚もなく口説くまさに天然の女たらしじゃよ」

「そうですよね、

 本人にはその気がないのに気が付けば好きになってしまう、悪気がないのが怖いですね」

「そうじゃ、ある意味黙っていても女が寄ってくる体質みたいなもんじゃ」

「どうするドクター、このままだとアクア様のストレスが溜まるんじゃないか。

 俺としてはアクア様の悲しいお顔など、見たくないぞ」

「それに関しては、私に策があります。多少は効果があります。

 おそらく、アクア様も何か対策をお考えになりますでしょう」

「ならいいじゃろう、わしらも離れよう。これ以上は野暮じゃよ」

「そうだな、ドクター久しぶりに一杯やるか」

「そうじゃな、いいだろう」

二人が連れ立って歩く中、マリー・メイヤは胸に暖かいものが流れてくるのを感じていた。

(これで大丈夫ですね、アクア様も幸せになられるでしょう。)

幼い頃から、ずっと見守ってきた娘であり孫でもある、

アクアの未来に希望がもてるように思えた、

道は険しく困難かもしれない、それでも一人じゃない

二人なら互いに支えて歩いていける 

クリムゾンも変わるだろう

血の紅ではなく、別の紅に

そう確信できる自分が、嬉しく思えるのだった。






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EFFです

この作品は

@ネルガルの独占を止める事ができたら
Aクリムゾンが悪役ではなかったら
B火星が生き残る事が出来たら

の三つのテーマを考えて書いていこうと思います
未熟な私が書くのでどこまで出来るか分かりませんが生温かい目で見てください




感想

アクアもマシンチャイルド化ですか…かなり、強くなってきましたね…

形としてはいろんなナノマシンを含んでいるとのことですから、

ロボットに乗り、船を動かし、ハッキングし、戦闘力に優れ、異常な回復力を持つという事になりますね。

今後、どのように展開していくかで、色々違ってきます、先々でこのポイントがどう生きてくるのか、楽しみにしております。

今回はこれで、終わりですか?

次の話の感想もあるしね。

はぁ、ぶっちゃけまくってますね (汗)


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