運命の時は来た 備えは出来ている

未来は変わり始めている この先は大きく変わるだろう

不安はあるが怖くはない 何故なら俺は一人じゃなく

共に戦う仲間がいて 帰る場所があるからだ



僕たちの独立戦争  第七話
著 EFF


「火星の工場の方は間に合いそうもないか、戦力に問題が出そうだな」

『そうですね、このままでは第一次火星会戦で木連の攻撃を防ぐのは難しいですね。

 技術者にしても相転移エンジンに関してはネルガルの社員が来るまではどうする事もできませんよ』

「問題だらけだな、クロノ。出来る所から始めていくしかないな、パイロットの確保は何とかなりそうだが」

『いえそれも数は足りませんよ、守備隊の人員ではアクエリアコロニーを防衛できても、

 他のコロニーの救援はできません。現状ではブレードの無人機でフォローするしかないですね』

「俺が出撃すれば大丈夫だろう、それなら何とかならないか、ダッシュ」

『それは出来ません、マスター。木連との戦闘を経験しているのはマスターだけなので指揮官として、

 戦況の分析など大局的に見てもらう必要があります』

「経験者が足りないんだな、アクエリアではグレッグさんとレイ・コウランの二人だけか、軍関係者は。

 ダッシュの言う通りクロノが前線に出るのは当分は無理みたいだな」

資料を見ながらエドワードはアクエリアコロニーの人員不足に悩み始めていた

『はい、マスターには悪いですが当面はパイロットの養成に全力を注いで下さい。

 ブレードストライカーはエステバリスと違って訓練にはかなりの時間が必要です』

「そうだな、大量のバッタとジョロに対抗するにはエステでは無理だからな。ブレードなら対抗出来るな」

『対艦装備があれば戦艦にも対抗出来ますよ、一機では難しいですが数機でなら落す事も可能です』

「仕方がないな、パイロットの育成に全力を注ぐか。俺としてはパイロットとして戦いたかったんだが」

「残念だが諦めてくれ、指揮官不在の軍などありえんからな。戦艦の艦長としても必要だからな」

クロノの肩に手を置いてエドワードはそう告げた

『その通りですよ、マスター。一人ではそれでも良かったんですが、これからはそれは許されませんよ。

 火星の住民の生存がかかっているのですから、復讐者のままでは何も変わりませんよ』

「ダッシュの言う通りだな、未来を変えると決めた以上は覚悟するしかないか」

「ダッシュ、現状の戦力でアクエリア以外のコロニーの救援は無理ですか」

『前の歴史ではマーズ、ヘリオスコロニーの二つは攻撃目標から外れていました。

 木連は遺跡の確保を考えてコンロン、アルカディアコロニーを最初に陥落させて、

 オリンポス、北極冠を孤立させてから攻撃しました。今回もそうなるのでマーズ、ヘリオスは無事でしょう。

 ですが何が起きるか分かりませんから防衛用にブレードを送る必要はあります。

 コンロンとアルカディアには救援を送るにはマスターがパイロットを養成できるかが鍵になります』

「責任重大だな、俺にコンロンとアルカディアの命運がかかってくるのか………時間との戦いだな」

『目標は500人です、最低でもこの数は必要です。増えるほど負担は軽くなります、

 アクエリアには無人機とマスターで防衛しますので人員の全てを救援に向かわせる事になりそうです』

「では準備を始めますか、秘書官には例のテンカワファイルを見せて協力させるが良いかな」

「秘書には悪いが火星の現実を知ってもらわないとエドの仕事を理解できないから仕方ないかな」

『そうですね、エドワードさんの秘書官には知って貰いましょうか、ですが耐えられますか』

「大丈夫だな、タフな男だからな。事態の深刻さを知れば協力を惜しまないさ」

二人の心配に苦笑するエドワードであった


―――アクエリアコロニー実験施設―――


―――ストライカーシリーズ―――

ダッシュが設計した機動兵器で空中戦時の高機動形態と陸戦時の機動形態の二つの姿を持つ機体

後に火星で活躍するエクスストライカーの基に成る機体である

今はその時を待ち続ける………………………ただ静かに

 
プシュ―――――――

6台のシミュレーターが開き、訓練中のパイロットが降りたち

そこから一人の女性の呟きが静かな部屋に響いた

「………悔しいな、試作とはいえエクスストライカー六台で、

 一機のブレードストライカーに三分もたないなんて」

「………………………………そうですね、隊長。何か別次元の腕前です、クロノさん。」

隣にいるパイロットが重い口を開いた時 一つのシミュレーターが開いた

「経験の差だよ、エリス。」

現れたパイロット――クロノ・ユーリ――はそう告げた

「絶対違うと思います、クロノさん。

 クロノさんと私達には経験以上に……そう覚悟と言えばいいような絶対的な差があると思います」

辺りにいるパイロット達は、エリス・タキザワの言葉に頷いていた

「実際、接近戦では勝てないし、射撃も正確でこちらの動きは全部読まれるし、

 長距離の狙撃はフィールドで跳弾させて味方にあたるから迂闊に撃てないし、手が出ませんよ」

「………………そうだな。そうしなければ生き残れない状況ばかりだったからな」

苛酷な環境を思い出すクロノを見てエリスは謝った

「……………すいません。余計な事を聞きました」

「気にしなくてもいいよ、エリス。そのおかげで君達を鍛える事が出来るんだ、気にするなら強くなれ。

 そうしてくれるなら、俺は嬉しいよ。………ん、誰か来たようだな」

開かれた扉から一人の少年が、クロノに飛び込んできた

「お父さん!!とっても強いんだね♪ ぼくもお父さんみたいになれるかな」

「そうだな、守りたいものが出来たら、クオーツだって強くなれるよ」

「守りたいものって何、お父さん教えてよ」

「守りたいものはね、クオーツ。人それぞれ違うんだよ、だからクオーツも見つけないとな」

「じゃあ、お父さんの守りたいものは何か教えて」

「お父さんの守りたいものは、家族と仲間たちさ」

「家族と仲間」

「ああ、アクアとラピスにセレスにクオーツに島のみんなと、

 エドおじさんとその家族とここにいるみんなだよ」

「ぼくもみんな大好きだから、強くなれるかな」

「ああ、強くなれるさクオーツ。だけど、強くなっても人をいじめる事はしちゃダメだぞ」

「……………………………あの研究所の人みたいなこと」

「そうだ………あんな大人にはならないでくれよ約束だ、クオーツ」

「うん!! お父さん、ぼくあんな大人にはならない。お父さんみたいな人になる」

優しく頭を撫でるクロノに、クオーツには目を細めて微笑んでいた

その微笑ましい光景にエリス達パイロットは、クロノの強さの一端を感じていた

守るものがあれば人は強くなれるのだと

「よし、今日はここまで解散。各自練習をするのはいいが、無理をしないように

 ただし使用するのはブレードストライカーだぞ、エクスは最終的には複座がメインになるからな」

クロノの声に、エリスは疑問の声をかけた

「何故ですか、クロノさん。エクスは十分戦えるし複座にする意味がないですよ」

エリスの疑問に他のパイロットも頷いていた

「エクスには単座と複座の2タイプがある。そのため訓練は複座で行う必要があるんだ、

 実戦配備には後8ヶ月ほどかかる為、シュミレーターはブレード用の単座には使えないんだが、

 今回はお前たちに次の火星軍主力機の使い心地を聞く為に単座用にした、後で報告書を出してくれ」

「…………………クロノさん、複座にするのは何故ですか。新兵器があるのですか」

「そうだ、その為に複座にする必要があった。

 言っとくがこの装備は半端じゃないからな、おそらく一つは火星軍独自の装備で、

 もう一つはやがて標準の装備になるだろうな、ただし地球では後2、3年はかかるだろう」

「………クロノさん、それだけの兵器が火星に必要なんですか」

エリスの問いはここにいる全ての者に共通の物だった

「……………………………………………そうだろうな、昔の俺もそう思っていたよ。

 あんな事が起きなければ此処にはいなかったし、アクアに会うこともなかっただろうな」

クロノの重い独白に誰も声を出す事が出来なかった

実際この人物が現れてから、アクエリアコロニー守備隊は大きく変化した

コロニーの治安維持ではなく、完全な軍隊への変化が始まっていた

一部の者は疑問を持っていたが、作戦内容が救出作戦などの人命救助が中心の為強く反発できずにいたが

市長のエドワード・ヒューズの指示により、仕方なく動いている者も大勢だった

―――――その言葉の意味が理解出来る日は近づいていた、運命の日まで後わずか



―――ネルガル会長室―――


「……………………………………………エリナ君、本当なんだね。その件は」

アカツキは普段と違う真剣な表情でエリナに聞くと、エリナも真面目に伝えた

「………………………ええ、冗談ではなく事実です会長」

「そうか、戦争が始まるんだね。100年前の亡霊によって」

「………ええ、ネルガルが片棒を担いだ事になるから、その高官と重役は処理したわ」

「………やられたな、クリムゾン襲撃はこれを隠す為か、悪あがきにも程があるな。

 この事はプロスくんは知ってるのかい。」

「いえ、ネルガルの癒着が表に出そうだから処理するように言っといたわ」

「そう、それでいいよエリナ君。プロス君は怒るだろうが……これはチャンスだからね」

「そうね、ボソンジャンプと相転移エンジンを含む技術の独占が可能だわ」

「ならしょうがないな。火星には悪いけど、僕達にもどうしようもないしね」

「フレサンジュ博士を失うのは痛いけど、今からじゃ間に合わないし無理ね」

「とりあえず僕達の船が完成するまで生き残ってくれるといいんだが」

「ええ、この船ができれば軍のシェアも独占できるし、元は十分とれるわよ」


彼等は自分達のした事を、理解していなかった

どれだけの血が流れるのかを知らなかった、命の重さを完全に理解していなかった

やがて彼等は理解する、どれだけの負債を払うのか

だがその時には遅いと言う事を



―――オーストラリア メルボルンシティー郊外 クリムゾン邸―――


「お久しぶりです、お爺さま」

「…………うむ、久しぶりだなお前が来るとは意外だなアクア。」

中庭で初夏の日差しの中、ロバート・クリムゾンとアクア・クリムゾンの会食が始まった

食事を終えアクアは、祖父ロバートに話を切り出した

「お爺様、戦争が始まるそうですね。それも100年前の死者が相手だそうで」

「……………………………アクア。何処で知ったその事を」

「ふふ、知り合いが教えてくれましたの、この戦争の結末も答えてくれましたわ。

 クリムゾンの未来も細かく聞きましたわ。なかなか面白い内容で私もどう動くか迷いますわ、お爺様」

アクアがロバートの静かな恫喝に臆する事無く笑顔で答えた

「……………ほう、聞かせてくれんかアクア。何か面白そうな事もあるのかな」

探るように聞くロバートに、アクアは愉快に囁くように答えた

「嫌です、教えたら今のクリムゾンが残りますから、だから秘密です。お爺様」

「……………アクア、そんなにクリムゾンが、わしが憎いか」

ロバートの搾り出す声に、アクアも声を変え

「………………………ええ、クリムゾンが嫌いです。

 でも…………………………………………………………お爺様を恨んではいません」

「だがな今更クリムゾンを捨てる事は出来ん、社員に死ねというのか。アクアよ」

「では何故血を求めるのですか、

 大企業たるクリムゾンがいまさら二流の真似事をする必要があるのですか、

 必要なのは優秀な人材であって、血に飢えた人殺しでは無いはずです。

 お爺様はその事に気付きながらも、変えなかった。それが怠惰であり、罪です」

アクアが静かに告げる事にロバートは渋い顔で答える

「随分言うようになったなアクア。昔のお前はクリムゾンから逃げていたのにな」

ロバートはアクアの変化に戸惑いながらも、心の何処かで喜んでいた

「ええ、クリムゾンの紅を血ではなく別の物に変える覚悟が出来ましたの、お爺様。

 でも今の私が言っても小娘の戯言に過ぎませんが、お爺様には告げておくべきだと思いましたから」

「…………………………そうか、リチャードやシャロンが喜ぶよ。お前が戻ってくる事を」

「…………本気でおっしゃてますか、お爺様。」

「…………………………………………………………………………………………………………」

アクアの問いかけにロバートは返事が出来なかったが、アクアはそれを無視して続けた

「お父様は権力に溺れ、お姉様はクリムゾンを名乗らず、クリムゾンの力を使い放題、

 それもお爺様のやり方の真似事、実際お姉様はこのままだと誰かの傀儡になりますわよ、お爺様。

 急がないと不味いですわ、今のクリムゾンはお爺様があっての物です。

 ワンマンのツケが今になって問題になって来てます。後継者の育成が必要なのにそれが出来ない。

 その意味が分かりますでしょう、お爺様」

「………………………耳が痛いな、アクア」

「当然です。誰も何も言えない様な企業にしたのはお爺様です。

 お爺様は不死身ですか、そうではないでしょう。墓場に財産を入れますか」

「………ではアクア、お前がクリムゾンの後継者になるかね」

「嫌ですわ、お爺様。私がするのはクリムゾンを情報公開による健全化をして楽隠居、

 後は火星で家族と一緒に暮らすことですわ、最も10年から20年はかかるでしょうから大変ですわ。

 お姉様がしっかりして下されば、いいんですけどね」

アクアの言葉にロバートは呆然とし、理解すると笑い出した

「可笑しいですか、お爺様。私のプランは何か問題でもありますか」

アクアの拗ねる声にロバートは苦笑して答えた

「リチャードはどうするのかな、アクア。あやつはお前の父親だぞ」

「………今更父と言われても、私にはグエンやドクターがお父様と言えますわ。

 1年も顔を会わさず、お母様を見捨てるような人を救う気はないですわ。

 今も誰か愛人を囲っているのでしょうから、それに情報公開をすれば自ずと切る事になりますわ。

 ただお爺様は守りますわ。いつも遠くから見守ってくれましたから、だから…………………」

「…………………………いやわしも切り捨てよ、アクア」

「! お爺様!! 嫌です、出来ません、そんな事は!!」

「その覚悟が出来なければ、後継者にはなれんぞ、アクア。わしを踏み潰して行け、

 お前の未来の為にはそれが必要だぞ、何、老い先短い老人だ。気にせんでいい」

「…………………………………………………………………………………………………………」

「わしより大事なものが出来たのなら、それを守ることが全てでそれが無ければ意味はないぞ。

 わしの様な冷たい玉座に座る気はないのだろう。アクア」

この時アクアは更なる覚悟を決めたと、後にクロノに話した

「さてアクア、これからどうする何かわしに出来る事はあるか」

「……………はい、技術者をお借りしたいのです。

 火星に行ってもらうので志願制で家族持ちはできれば外して欲しいです。

 そしていったんクリムゾンから離れてもらいます。無論安全は保障しますし、

 この事はクリムゾンにとって必要な事になります」

「つまり今ではなく、後の為の布石になるのか」

「はいこのまま戦争が始まるとネルガルの一人勝ちになります、

 それを防ぐ為に社員の身分を隠して貰う事になりますが、

 再契約時は厚遇する事を約束する誓約書を書きます」

「………………それは相転移エンジンからなる技術の事か、アクア」

「この戦争相手の木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑星国家反地球共同連合体、

 略して木連でしたか、

 彼等がこの技術を持っている事を交渉相手であるクリムゾンは知らないのですか、お爺様」

「…………いや、そこまでは知らなかったが、それほどの物なのかアクア」

「はい、ディストーションフィールドを見ましたが、質量兵器以外の効果はありません。

 このため火星駐留軍は無事には済みませんし、ビッグバリアのある地球まで負け続けます。

 ただ一つ火星住民の部隊のみ抵抗出来ます」

アクアが告げる事にロバートは信じられない思いで聞くが、アクアが嘘を言ってない事に気付き考える

「………………………………………………そこまでの差があるのか」

「はい、このままだと現在実用化が出来かけているネルガルの独占を許してしまいます。

 そうなれば戦後、お姉様やお父様がどんな暴挙に出るか分かるでしょう、お爺様」

「……………………………そうだな、あやつらならやりかねんし危険だな」

「はい、それは避けなければなりません、この事で私のクリムゾンでの立場の強化につなげます」

「なるほどな、だが技術者達はどうする今からでは火星に行けんぞ、安全はどうするのだ」

「………………お爺様、この事はわたしとお爺様の秘密にして下さい。よろしいですか」

声を潜めて話すアクアにロバートは重要な事だと思い聞く事にした

「…………………………わかった、アクア。」

「では言います。火星は生体ボソンジャンプを特定の条件下での実用化に成功しました」

「なっ何だと確かかアクア!! それは事実か!!」

ロバートは椅子から立ち上がりアクアに問い質した、アクアは愉快に微笑みながら

「ええ火星まで一瞬でしたわ、お爺様。退屈な船の旅が無いのはいいですわ♪」

「まっまさかアクア、お前はジャンプしたのか、火星まで」

「地球人、最初のジャンプ経験者か、いい響きですわね♪。お爺様もそう思いませんか」

信じられないという表情のロバートを愉快に見ていた

「……しかし、良くそんな事が出来たな生体ボソンジャンプはネルガルでさえ失敗しているのに」

「………ネルガルは9年前に最大のミスを火星で犯しましたの、今からそのツケを払う事になりますわ。

 そしてクリムゾンはそのミスにつけ込んで、実利を奪いますわ」

アクアの話を聞いてロバートはある事を思い出し聞く事にした

「それは火星のクーデター、テンカワ博士暗殺の件かな、アクアよ」

「そうですよ、お爺様。証拠があればくださいませんか、有効に使いたいのですが」

「いや、軍が一枚咬んでるくらいで詳しくは分からん。調べるか、アクア」

「いえ、警戒させるので止めときましょう。既に火星はその事を知っていますし、

 今回の戦争の事も知っています。

 ネルガルが裏で糸を引いた事も、それに木連と連合政府が相乗りした事も知っています」

「どういう事だ、何故連合政府が絡んでくる。それに木連もだ、アクア」

「ネルガルは相転移エンジンからなる技術の独占、木連は火星への移住、

 連合政府は来るべき火星の独立の阻止、3者の利害が見事に一致した結果、

 火星の住民320万人の殲滅戦、気分が悪くなる話ですね。

 どうです、お爺様すごい事になりますわ」

アクアが笑いながら告げる事実にロバートは考え込んだが事態の深刻さに気付いて問いかけた

「…………………………………冗談ではなさそうだな、信じられんがな」

「ええこの際、クリムゾンは全てを白日の下に曝け出して、火星を独立させようと思います。

 現在の木連は軍部による情報統制下の独裁政権に国民は気付かず、

 火星に殲滅戦をしかけ血の海に酔いしれ、

 連合政府過去の罪を暴かれるのを恐れ、そして起きるか分からない独立に怯え火星を見捨て、

 ネルガルはボソンジャンプの甘い夢に溺れ、足を踏み外し地獄へ堕ちて、

 クリムゾンと他の企業は正しき道で潤い、この世の春を謳歌し、

 火星は独立して、平和に暮らしました。

 こういうシナリオはいかがですか、お爺様。ワクワクしませんか」

アクアのイタズラが成功した時の愉快な笑顔が、ロバートには痛快に思えた

「ふふ、いいだろう。すぐに準備をしよう、アクア此処に滞在するか」

「いえ島に帰ります。子供達が待ってますから」

「子供達、どういう事だ!! いっいつ作った、アクア!!」

ロバートの狼狽する声に、アクアは静かに優しく母の笑顔で囁いた

「事情があって引き取り保護しました。とっても可愛い子達ですわ、お爺様」

「………………そうか、守るべき家族はそれだな。アクア」

「ええ、もっともクリムゾンは継がせませんから、安心して下さい。

 これは私がする苦労であって、子供達には背負わせません。誰よりも幸せになって欲しいですから」

アクアの慈愛に満ちた笑顔を見て、ロバートはこの子の苦労を減らす事を誓った

「では、整い次第連絡する。それでいいかな、アクア」

「はい、ですが面接には立ち会いますので連絡して下さい。クリムゾンの命運を担ってますから、

 時期的には来年の2月頃に連絡をお願いします。条件の詳細はメールで送ります、お爺様」

「うむ、面接はテニシアン島で行うか、決めてくれ」

「分かりました、それでは失礼します。お爺様」

玄関へむかうアクアの背を見ながら、ロバートはアクアが継ぐ為の方法を模索していた



―――アクエリアコロニー 会議室―――


ここにはオリンポス、北極冠を除く全てのコロニーの市長を含む責任者が集まっていた 

「本日お集まりの皆様に、重大な事をお伝えしなければなりません」

エドワードが沈痛な表情で告げた言葉に、全メンバーは何事かとか不思議に思っていた

「…………………エドワード、お前さんがそこまで言うならかなり深刻な事態が起きてるな」

全メンバーで最年長のユートピアコロニー市長コウセイ・サカキが口を開いた

他のメンバーは二人の会話を聞くことにした

「はい、コウセイさん。先日クリムゾンから連絡があり確認しましたが事実のようです」

「クリムゾンに知り合いがおったのか、エドワード。それで何が起きた」

「はい、火星全土を巻き込んだ大規模な殲滅戦が始まります」

エドワードの爆弾発言に会議室はどよめいた

「どういう事だ、何故分かる最初から説明してくれ。でないと理解できん」

コウセイの発言に会議室は静寂を取り戻した

「先週連合政府と木連との交渉が決裂した。

 この為まず木連は火星に無人兵器を送り込んでくる事になる。

 この事をアクア・クリムゾンから連絡が入り確認の為、探査機を飛ばしたら

 木星方面から大規模のチューリップ型の戦艦群を発見、後2日後には来る事確認した」

エドワードの後ろにいたバイザーを付けた青年――クロノ・ユーリ――が答えた

「木連とは何だ。人類は火星までしか進出してないはずだが」

コウセイの発言にエドワード以外の者達が頷いたが、それにクロノが答えた

「木星圏ガニメデ・カリスト・エウロパ及び他衛星小惑星国家反地球共同連合体、略して木連、

 100年前、月の独立派の子孫達が木星に辿り着き生き延びた者達が来るだけだ」

「すまんが、歴史では独立は平和に解決したはずなんだが違ったてことかな、誰だなお前さんは」

「………クロノ・ユーリだ。オブザーバーとしてこの会議に参加している、よろしくな、爺さん」

「コウセイだ。それでクロノ、お前さんは真相を知っているんじゃな」

「ああ、当時、月の独立派はマスドライバーと核による武力での独立を掲げたが、

 連合政府の介入により分裂、武力派は火星に逃げ込んだが連合政府はそこに核を撃ち込んだが逃げ延び、

 木星で遺跡、奴等はプラントと呼んでいたな、それを発見し生き延びたが

 やはり過酷な環境なので地球と仲直りをして、火星に移住したいのだが地球がその交渉を潰し、

 その結果怒った木連が戦争を選択して、火星の住民を皆殺しにして火星を我が物にする事になった。

 連合政府はやがて独立しかねない火星を切り捨てようとしているので、

 アクアが俺にエドワードに連絡するようにと言って来たので、確認し此処にいる」

淡々と告げられるクロノの言葉にメンバーは理解すると、慌て始めたがコウセイの言葉に落ち着きだした

「クロノ、戦争が始まるのに逃げない所を見ると何か策があるのか、あるのなら協力するぞ」

この瞬間、アクエリアコロニーのエドワードを除く者はクロノの目的を理解した

「今更、軍に言っても信じてもらえませんし、制宙権は向こうに奪われるでしょう。

 我々は軍とは独自に行動するしかないです。軍の開戦と同時にシェルターへの避難を始めてください。

 現在アクエリアコロニー守備隊に新型機動兵器を配備中、終了次第各都市に救援に向かいます」

「そうか準備が出来ているのは予想していたのかな、クロノ」

「交渉決裂の裏でネルガルが動いていたそうです。

 『もう少し早く気付けば良かったのに』と本人が言ってました」

「………それでオリンポスと北極冠を呼ばなかったんだな。彼等はネルガル系列だからな」

「おそらく彼等は、避難民の受け入れも認めないでしょう。ですから呼びませんでした、

 上層部はネルガルですから………一般の人には悪いんですが、知られると不味いので」

辛い事を話すクロノにコウセイもそれに気付き

「確かにそうなるな、お前さんはこれからどう予測する」

クロノは大画面のスクリーンにタイムスケジュールを見せ答えた

「おそらく進入角から第一波がコンロン、アルカディアのコロニー来ると推測します。

 このため両コロニーの住民は救援後アクエリア、マーズに避難して貰います。

 おそらく未曾有の混乱があるので注意してください。各コロニーもその点を注意して下さい。

 時間との戦いになります。

 手元の資料で不備がないか確認後それぞれコロニーに戻り、作業を開始して下さい以上です」

「そういう事ですので、分からない事があれば私に聞いてください。

 クロノはグレッグさんと直ちに救援準備を始めてください。時間がありません」

「ああ、エド任せてくれ。グレッグさん急いで編成を始めよう早いほど助かる人が増える」

「おう、クロノ急ごう。お前が来た理由が分かった以上全面的に協力するぞ」

「すまん、言えれば良かったんだが誰も信じんだろうし、俺も起きない事を願ってたからな」

「…………………………そうだろうな、私も今なら信じるが以前なら信じん」

二人が退出する中、コウセイがエドワードに尋ねた

「のうエドワード、あやつは何者じゃかなりの修羅場を潜っているようだが」

「詳しい事はいずれ話しますが、今は内密にして下さい」

「わかった聞かんが、わしはあやつとアクア嬢を最後まで信じるぞ。

 あの二人は得にもならんのに、わし等に協力してくれる。だから信じるそれだけじゃ」

その声に周囲の者が頷き、会議を進めていった



いま此処に火星の生き残りを賭けた、戦いが始まった







―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです
第一次火星開戦が始まります
変わりつつある未来にクロノは何を思うか
クリムゾンをアクアは変えていくのか

次回を期待されるのも怖いですが頑張ります


感想

むぅ、今回は沢山新キャラ登場ですね。

しかし、ロバートは孫可愛がってますな〜アクアは確かにロバートに可愛がられてそうなキャラですね。

ロバート・クリムゾン何れは私のSSにも登場させたいな〜と思っています。

とはいえ、八月中にできるかな?(爆死)

会社は盆休みがあるので、少し進められるかも?

って、まあその辺は兎も角、次の話を見てみましょう。

こんな調子で感想続けられるんで しょうかね? それと、自作の宣伝は出来てからにしなさい。

ごめんなさい…(泣)


押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.