戦争とは何か それは正義の為と言うがそれは嘘である

何故なら歴史は 勝者によって作られるからだ 

正義が勝つのでは無い 勝者が正義になるのだ

そして勝者が正義ではない 悪が勝者になる事もある

そしてそれは歴史が教えてくれる 



僕たちの独立戦争  第十話
著 EFF


―――木連 作戦会議室―――

「これは何かの冗談かね、それとも火星は気でも違ったのかね」

白い軍服をきた将校が冷ややかな目で聞いてきた

『いえ、本気ですが問題でも有りますか。有れば聞きますが』

カズヒサ・タキザワが当たり前のように聞いてきた

「ふざけているのか、お前達は敗戦国なのだぞ。降伏ならともかくこんな要求をするとは何事だ」

将校の隣にいた軍人が叫び、それに合わせるように周囲の軍人も声を荒げた

タキザワはそれを冷ややかに見つめながら思った

(どうやら自分達が何をしたか本当に理解してないみたいだな)

以前クロノが行った事が事実であった事に驚き、そんな彼等に呆れた

『何を言うかと思えば、呆れますな。

 あれだけ火星の住民を虐殺しておいて謝罪もしないとは、さすが木星蜥蜴と呼ばれなすな』

タキザワの言葉に軍人の一人が叫ぶ

「栄えある木連軍を木星蜥蜴などと言うな、この無礼者が!!」

その言葉に他の軍人達が続いて、タキザワに罵声を浴びせる中、将校が声を出した

「木星蜥蜴とは何だね、我々は人類の軍人なんだが」

『草壁さんでしたね。地球ではアナタ達を木星からの侵略者、木星蜥蜴と呼んでますよ。

 実際、私もアナタ達は人間なのかと疑ってますしね』

タキザワの発言に軍人達が吠えるように叫ぶが、草壁が落ち着かせ、タキザワに問うた

「随分な言い様だな、正直呆れてものの言えないが」

『そうでしょうか、陸戦協定も知らずに無人兵器などと言う下劣な物で、

 火星の住民105万人を虐殺する様な人達を人間と呼んで良いものか、疑問ですね』

タキザワの一言が理解出来ないのか、軍人の一人が言い放った

「あれは我々の正義を知らしめる聖戦なのだよ、無礼な口を叩くな悪の地球人め」

その言葉に続くように周囲の軍人達がタキザワに罵声を浴びせていた

(呆れたな、ここまで酷いとは事前に聞いていなければ冷静になれなかっただろうな)

『そうですか、聖戦ね。アナタ達は何も知らない一般市民を無差別に殺しておきながら、

 自分達は正義の味方とでも言うのですか、憐れというか無様ですね』

タキザワの冷ややかな声に木連の軍人達が声を詰まらせた

「とにかく我々はこのような要求を受け入れる気はない。交渉は決裂だな」

『そうですか、ですが火星はいつでも対話の用意が出来ていますので、

 クリムゾンを通じて連絡して下さい。いつでも良いですよ、泣きついてきても』

ボソン通信が切れた後、軍人達がタキザワを罵倒する中、一人が草壁に意見を述べた

「閣下、火星の奴等に思い知らせてやりましょう。我々の正義を」

「うむ、目標はこの二つにする。我々の正義を侮辱した火星に正義の鉄槌を落とそうではないか」

草壁の声に周囲の軍人が次々に声をあげ、ゲキガンガーの正義の言葉を口にした



一方クリムゾンの通信機の前でタキザワにロバート・クリムゾンが声をかけた

「よろしいのかな。あそこまで言っても、おそらく奴等の事だ。軍を動かすぞ」

側に居たロバートの秘書とクリムゾンの木連担当官は頷いた

「いずれ彼等は軍を動かします。ならばこちらの都合に合わせて貰ったほうがいいので」

「そうか、出来れば教えてくれんか。奴等の攻撃目標を………」

ロバートの問いにタキザワはスクリーンに状況を説明した

「おそらくこの二つのコロニーですね。奴等はまずコンロンとアルカディアを落としました。

 うちの戦略研究者は木連がまず北半球を制圧すると見ています」

「なるほどオリンポスと北極冠の二つだな、ある意味火星には邪魔だからな」

「………アクアさんから何処まで聞いていますか。ロバート会長」

「あの子は口が堅くてな、

 最初からわしが知っていたのはネルガルの悪巧みだけだよ。そこから推測してな」

「そうですか。…………話は変わりますが技術者の皆さんにメールなどのお土産があるのですが、

 面会しても良いですか、色々こちらの事も話したいのですがよければ会長も如何ですか」

「ええよろしいよ。こちらも助かっていますな、新型船のノウハウを学べて高機動艦でしたか」

「はい、いきなり戦艦はマズイと思うので試験艦にする事にして申し訳ありません。

 代わりにそれを先に使って機動データーをお取りになって下さい」

「……外装の変更は向こうですか、出来れば見たい物ですな」

「その頃にはお預かりした技術者の皆さんがこちらでその外装を作られますよ」

「なるほど、彼等は今武装のノウハウを学んでいるのかな、彼等が戻るのが楽しみだ。

 では担当者に案内をさせよう。彼等の状況を確かめるといいですな」

(流石に、木連とは違うか。だが今は信用するしかないかな)

「ありがとうございます。ではお世話になります」

タキザワの声にロバートは秘書に指示を出し、タキザワと共に部屋を後にした




―――アクエリアコロニー 作戦指令所―――


「タキザワ木連交渉官より連絡がありました。交渉は予定通り決裂、木連は動くだろうとの事です」

「そうですか、残念です。両コロニーはこちらの救援を受け入れましたか」

「ダメでした。救援は要らない、自分達でやるから余計な事はするなとの事です」

レイの発言にエドワードは顔を顰め、尋ねた

「市民の避難に関してはどうでしたか」

「それも断られました。おそらく情報の流出を恐れての事でしょう」

「馬鹿な事を、住民を道連れにするのか。愚かな事を………大統領、ご命令を!」

グレッグの声にエドワードは首を振り答えた

「こうなる事は分かっていました。ならばこちらは生き残る為に行動しましょう」

「………………そうですな、申し訳ありません大統領。直ちに準備を開始せよ!」

グレッグの声に指令所は活気を帯び、オペレーター達の声が響き始めた

(いやな決断をしなければならないとは、だが彼らの死を無駄にしない事が我々にできる事だ)

苦悩する火星コロニー連合政府、初代大統領エドワード・ヒューズの姿があった

「大統領、火星宇宙軍旗艦ユーチャリスより連絡『準備はできた、連絡をまつ』以上です」

レイの声に大統領は頷き

「木連は知らないのだろう、戦争の恐ろしさを。

 ならば我々が木連に教えてやろうではないか、遊びで戦争はするなと、死の意味を、命の尊さをな」

大統領の発言に全員が頷き、グレッグが宣言した

「これより衛星フォボス、ディモス開放作戦を開始する、我々は宇宙への道を切り開く。

 開放部隊、順次発進せよ」

グレッグの命令からアクエリアコロニーよりブースターユニットを装着したブレードストライカーが発進した

火星の未来を懸けた作戦が始まった



―――ユーチャリス ブリッジ―――


「始まったか、プラス。火星の状況とこちらのを教えてくれ」

『はーいマスター、現在火星は予定通り作戦を始めてるよ。

 ただね、両コロニーはこっちの言う聞かなかったよ。

 それとキャンサーはね準備オッケーだって』

プラス――ユーチャリスに搭載されたオモイカネ・ダッシュより枝分けされたA・I――が答えた

キャンサー ――火星宇宙軍 最初の艦として土星で造られた高速輸送艦、後に空母に変更される――が、

現在木星の衛星群に潜んでいた

彼等は第一次木星攻略戦の為、木連が戦略的に放棄していた衛星にジャンプしていた

キャンサーにはオリンポス研より接収したクシナダヒメを改修してアクア達が再教育していた

その為、短時間で稼動できる様になり現在無人工作機で木連を監視する無人基地を建設していた

この基地が後の火星の戦略に大きな影響をあたえる事になる

「イネスさん、ジャンパーの数について聞いても良いですか」

「ええ、現在160万人の内18歳以上の成人が検査を受けたわ、

 結果A級が約4万人、B級が約20万人、残りがC級になるわ、

 でもこれから検査する子供達にはC級はいないし、生まれる子供はほぼA級になると思うわ」

イネスの発言にブリッジのメンバーは息をのんだ

「驚く事はないわよ。火星の人はナノマシンと共に生きてる様なものだから、親和性が高いし、

 IFSのせいで抵抗もないし増える事はあっても、減る事はないわね」

イネスの冷静な発言で納得は出来たが、未来を思うと沈みこむ者がほとんどだった

「ただジャンパー処理が実用出来れば、多少は緩和されるかもね」

オペレーターの一人がイネスに尋ねた

「ジャンパー処理とは何ですか」

「ナノマシンを使ってC級の人をB級にする技術を今開発中なの、それと……これはここじゃ無理か」

「じゃあ、火星で独占はしないんですか」

「独占はしない、テンカワファイルにもそう書いてあるしな。

 いずれは地球からの移民もあるだろう、木連と和解出来れば木星からの移民もあるからな」

クロノの発言に士官の一人が反発した

「地球はいいですが、木星は許せません。彼等が火星にした事は許される事ではありません」

「そうだな、でも今の木連と和解は無理だと思うがな。軍の情報統制で住民は嘘で動かされているからな、

 軍の独裁状態を打開し、民主主義にならない限り和平は全て嘘だろうな」

「そうですか、だからこんな作戦になるんですね。

 プラントへの核攻撃、コロニー船への攻撃はしないのはこの為ですか」

「俺達は木連とは違う。命の重さを知っている、だから遠回りかも知れないがこのやり方で行く。

 だが奴等が気付かなければ、いずれはコロニー、市民船への攻撃も辞さないつもりだ」

「………分かりました。艦長の言う通り従います」

クロノの発言に全員が納得して、作業を再開したが

「ですがテンカワ博士には感謝しないといけませんね。

 博士がファイルを残してくれたおかげで、火星の未来が変わるかもしれませんから」

副長のエリック・レナードが答えた

「………そうだな、エリック。それから作戦の状況はどうだ、順調か」

「はい、問題はありません、艦長。すべて予定通りです」

まだ23歳の青年を見ながら、クロノは

「お前もいずれ戦艦の艦長になるだろう。

 いまは多くの経験を積みながら多くの艦に乗り込み、その艦のクセを知りそれを使いこなす事が重要だ。

 まずこのユーチャリス、次はいきなり艦長になるかも知れんが、それを覚えていれば大丈夫だろう。

 後は乗組員を信頼し信頼される事だ。それが名艦長と言われる者たちの条件だ」

「はっはい、肝に銘じます、艦長」

「ではキャンサーに通信を入れてくれ」

『おうクロノ、準備は出来たし後は待つだけだな』

「そうですね、サワムラさん。キャンサーはどうですか、問題が出ましたか」

『特にないぜ。いい艦だな、高速輸送艦だが前の船とは比べもんにならんな。

 相転移エンジンがこれ程の物とは驚いたよ』

「キャンサーはいずれ空母に改修しますし、その頃にはサワムラさんも戦艦の艦長ですよ」

『俺はただの船乗りでいいんだがな、まあしょうがないか』

「そうですね、今は人手が足りないし経験者が一人でも欲しいですから」

『そうだな、子供を戦場に出す気は無いしな』

「苦労するのは俺達だけでいいですよ、アクアはちゃんと仕事してますか」

『おう助かってるよ、実際艦ごとジャンプ出来るのがクロノとイネス博士以外は彼女だけだし、

 負担をかけてるのが悪いがな』

『そうでもないですよ。その内ジャンパーが増えれば楽になりますよ』

「すまんな、苦労をかけて。1年持たせれば楽になると思うよ、幸いエリックに期待しているしな」

「はっはい、艦長!必ず戦艦規模のジャンプを可能にしますよ。弟達を戦場に出したくはないですから」

「ジャンプの基本にして奥義は意思の強さだ。後は体力を使うがこれは大丈夫だろう。

 慣れると負担は軽くなるからな」

『そうですね、最初は私もキツイなと思いましたが、今はそうでもないですしね。

 でもクロノみたいに連続のジャンプは無理みたいね』

『そりゃ無理だよ、クロノは人体実験という地獄に落とされ、其処から這い上がってきた強いやつさ。

 アクアさんもタフだけど、まだ差は大きいな。

 しかし二人ともよく似てるな、似合いの夫婦になるぜ。俺が保障するぜ』

『そうだと良いんですが、私でいいんでしょうか』

「俺はお前がいいんだが、アクアが嫌なら他はいらないが」

『あう、とっとにかくキャンサーは問題ありませんからいいですね』

「何か怒らせる事いいましたか、サワムラさん」

慌てるアクアを不思議に思い、クロノはサワムラに聞いたがサワムラは沈痛な顔で答えた

『……気付いてないのか。…………エリックよ、これだけは真似するなよ。

 とりあえず通信を切るぞ、クロノ』

訳が分からず、首を捻るクロノに

「話があります、お兄ちゃん。ちょっとこちらに来てください」

何故か殺気を振りまいてイネスがクロノを睨んでいた

「いや作戦中なんで後でいいかな、アイちゃん」

その様子に動揺しながら逃げようとするクロノにイネスはクロノの手を取りエリックに話しかける

「ダメよ、エリックくん。艦長借りるわね」

「りょ了解しました。作戦前には返して下さい、イネス博士」

「ええもちろん返すわ。心配しなくてもいいわ、ではお兄ちゃん行きましょうか」

「………………俺何かしたか、エリック」

イネスに引き摺られながら医務室に向かうクロノにクルーは

(朴念仁の女たらしは怖いですね。アクアさんもイネス博士も苦労しますね)

と複雑な思いで二人を見ていたエリックは

「あのような地獄を耐えられるから、ジャンプが出来るのかな」

と見当違いのセリフを出していたが、クルーも何故か納得出来るような気にさせられた

…………概ね作戦は順調に進んで行った



―――ネルガル会長室―――


集まった二人を前に、アカツキは発言した

「オリンポスと北極冠が落ちてしまったねぇ、エリナ君、プロス君」

「笑い事じゃないんですが会長。ドクターは無事なんですか」

「ああ、それは大丈夫なんだけどね、プロス君。エリナ君から聞いてないのかな」

「いえ、何も聞いていませんが」

「あっ、言い忘れたわ。イネス博士と技術者は火星の政府に徴用されたのよ。

 だから安全は保障されてるから多分大丈夫かしら」

エリナが告げた状況を考え、プロスは話す

「厄介な事になりましたな、会長。これではどうする事も出来ませんよ」

「ああ、それは大丈夫よ。スキャバレリプロジェクトが承認されたから、何とかなるわよ」

「つまり力づくですか。問題になりますよ、最悪、火星軍と戦闘になりますよ」

「そうだねぇ、プロス君。交渉で何とかならないかな、まあ生き残っていたらだけどね」

「そうよ、多分生き残れないわよ。いくらエステ並の兵器があってもね」

「エステ並の機動兵器があるのですか火星には、信じられませんが」

「ブレードストライカーという名の機体があるのよ。でも戦艦が無いからダメね」

「それでプロス君はその戦艦に乗ってもらい、火星に行ってもらう人材をこれから集めて欲しいんだよ」

「はぁ、分かりました会長。人材の条件はどうしますか」

「そうだねぇ、能力は一流で、性格は問わないよ。これ位しないと不味いような気がするんだよ」

アカツキの考えにプロスも納得して話した

「そうですな、火星に一隻で向かう訳ですし、能力は一流でないと危険な気もしますね」

「そうなんだよ。それにクリムゾンの事もあるしね」

「何よ、クリムゾンがどうかしたのかしら、会長」

「うん、試作艦なんだけど、相転移エンジンの船を発表したんだよ」

アカツキの言葉を信じられずにエリナは否定する

「嘘よ!! だってまだネルガルも出来てないのにそんな訳…………」

慌てるエリナを落ち着かせるように、アカツキは資料を二人に見せた

「確かに相転移エンジンの船ではありますが、巡航艦ですか、会長」

「そうね、スペックは判らないし、これだけでは何もいえないわね」

「どちらにせよ、そう甘くは無いと言うことですね。会長」

「そうだね、プロス君。だからスキャバレリプロジェクトは成功させないとね」

「ええそうね。でもしばらくは相転移エンジンはネルガルの独占状態だと思ったのにね」

ネルガルの独占を考えていたエリナは不満な顔で話した

「プロス君、人材に関しては任せるよ。12月には集めてくれたまえ」

「判りました。では失礼します、会長」

プロスが退出した後、アカツキはエリナに聞いた

「エリナ君、この船どう思う。専門家の意見を聞きたいんだけど」

「そうね、エンジンが多分2基あって機動力がうちの船位はあると思うけど、

 武装が無いからこれ以上は言えないわ」

「そうか、ブレードストライカーの空母にはなるかな。この艦は」

「えっ………無理ね。スペースが無いから4機も入らないわ。でもどうして」

「いや、エステバリスをクリムゾンは使わないし、使うのならブレードかなって思うんだ」

「そうね。まだそうと決まった訳じゃ無いし、気にしすぎじゃないかしら」

「…………だといいけどね」

アカツキは仕事を再開し、エリナは珍しく仕事をするアカツキを見ながら会長室を退出した

(何故か気になるんだよ、ひどく気になるんだよ)

アカツキの疑問に答える者はいなかった

その答えはいずれ火星で明らかになる



―――木連 会議室―――


「決心したかね、我々に降伏する事を」

勝ち誇った顔をする将校と士官達を見て、カズヒサ・タキザワは失望を覚えた

(こいつ等は何を喜んでいるんだ。自分達のした事の意味を判ってないのか、

 いや判っているなら、こんな事は出来ないだろうな)

『そうですな。アナタ達が狂っている事が判りましたよ』

「この期に及んでまだそんな口を開くか、悪の地球人が」

口々に罵りの声を上げる軍人達をタキザワは冷ややかに見つめていた

「これで君達の現状は理解出来ると思うのだが、言うべき事があるかね」

『そうですな、我々火星の住民はアナタ達木連軍を許す事は無いでしょう』

「まだそんな口を叩くか、これ以上我々を怒らすなよ地球人め」

『ふざけているのはアナタ達でしょう。何をしたのか判らないのか、

 あの二つのコロニーには約20万人の住民が生活していたのだぞ。

 それをアナタ達は虐殺したのだぞ、正義と言う自己満足の為に。

 アナタ達の手は血だらけだ。

 その服には血が付いてないが、私にはアナタ達が火星の住民の血を浴びているのがよく見えるよ』

タキザワの静かだが怒りに満ちた声に軍人達が退いた

『我々はアナタ達に報復する。必ずアナタ達の今回の暴挙に対して報復する。

 我々はここに木連に対して宣戦布告する』

「出来るものならしてみるがいい、出来るものならな」

『その時になって知ればいい、命の重さを、命の尊さを』

タキザワはそう言い残し席をあとにした

「無礼な口を叩く地球人が、我々の正義が負ける事は無い」

周囲の者達が声を上げる中、草壁は発言した

「我々の正義は知らしめた、彼等の悪あがきに耳を貸す気はない」

草壁の声に勇気付けられた者達が、次々と正義の声を上げていた




―――アクエリアコロニー 作戦指令所―――


「タキザワさんからの報告です。

 『彼等は自分達のした事を理解していない。予定通り宣戦布告した』以上です」

指令所に沈黙が降りる中、エドワードが指令を発した

「ユーチャリスに連絡を『報復作戦を開始せよ』以上だ」

「エドワード、痛みを知らない事は悲しい事だな。」

コウセイの呟きに指令所が静まり返った

「でもコウセイさん、木連を許す事は出来ませんよ。正義のという名の免罪符があっていい訳が無い。

 彼等は約130万人の火星の住民を殺した。だから……………すみません、言いすぎました」

「いや、わしもお前と同じだ。むしろこの命令はわしが出したかった。

 わし等が住んでいたユートピアコロニーの住民の無念を晴らす為にな。

 だがそれでは奴等と変わらん。だからわしは…………………………」

コウセイの苦しみは指令所にいる者たちよりも、深いのだとエドワードは感じた

「それでは木星報復核攻撃を開始します。

 ユーチャリスに連絡『攻撃目標、プラント及び港湾施設』以上」

レイの声が静かに指令所に響いた



―――ユーチャリス ブリッジ―――

「艦長、『作戦を開始せよ、目標プラント及び港湾施設』との連絡が入りました」

エリックの声にクロノは頷くとプラスに指示を出した

「プラス、聞いての通りだ。準備はいいかい」

『まーかせて、いつでもいけるよ。無人機から座標が送られているし、絶対外さないよ』

「よし、キャンサーに連絡せよ

 『機動爆雷を同時に投下後、ジャンプで監視衛星基地へ帰還そのまま監視を続ける』以上だ」

クロノの声にオペレーターが応え、ブリッジが慌しくなり

「キャンサーより了解との事です、艦長」

「では、機動爆雷を投下せよ。そしてキャンサーには先にジャンプして帰還するように連絡を」

クロノの指示で機動爆雷を投下したキャンサーはそのままジャンプした

「我々はステルスモードで作戦の成功を確認した後、帰還する。

 状況は指令所にも伝えるので、細かく調査せよ。奴等は防御の大切さを知らないだろう。

 今回は成功するが次からは厳しくなるだろう。

 エリック、覚えておけ木連は勝ち続けてきた、それは守る事が必要ではなかったからだ。

 チューリップを使い安全な後方で無人機に任せてきた。手を汚さずにだ。

 今そのツケを払う事になるが、火星もいつかこうなる時が来るかも知れない。

 力を持つ事は覚悟を持つ事でもある。軍が動くのは最悪の事態でもある事を覚えておけ。

 安易に力を振るう事の危険を、今ここで胸に刻み込んでおけ」

副長のエリックにクロノが告げた言葉を、エリックを含むブリッジのメンバーは静かに聴いていた


――そして1時間後、プラスの報告が始まった

『マスター、報告するね。プラント自体の損害は軽微、港湾施設はほぼ消滅したよ。

 ただプラントに放射能汚染が無いみたいだから、

 港湾施設の再建までの時間次第で消耗の規模が変わるかな。

 後は交渉で時間が稼げると良いね、作戦成功だよ、マスター♪』

「そうか、ユーチャリスも帰還する。ジャンプ準備開始、目標は木連監視衛星基地。

 プラス、みんなお疲れさま」

クロノの命令にブリッジは直ちに行動を開始した

ジャンプフィールドに包まれたユーチャリスは基地へとジャンプした




正義に酔う時間は終わりを告げる

これからは現実の戦争が始まる

その事の意味を彼等は理解出来るだろうか

自分達の犯した罪の深さを知った時

その苦しみに耐えられるか

それは誰にも判らない








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EFFです。

火星の反撃が始まりましたね。
クリムゾンの協力によって火星はどうなるのか。
クロノの女難は続くのか、アクアの怒りは発動するのか(爆)
ご期待ください




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