変わり始めた未来で 俺達は真実を告げる

知らされた真実に 彼らは考えるだろう

この事態の深刻さに

だが誰もこの事態を変える事は出来ない

何故なら戻る事は出来ないからだ

俺達は自分の力で成し遂げなければならない

どれ程の困難があろうとも



僕たちの独立戦争  第二十五話
著 EFF



ナデシコは欧州戦線に到着し戦いを始めようと準備を進めていた。

ブリッジも作業を始める中、パイロットは静かに待機していたがブリッジの隅に突然光が現れた。

「おやお客さんですね、予定では来週から来られるのに何かありましたかな」

プロスが騒がず落ち着いて話すとアクアが姿を見せた。

「ご無沙汰してます、皆さんお元気ですか」

「久しぶりね〜元気だったアクアちゃん、ルリちゃんも元気にしてる〜」

「ええ、みんな火星で元気にしてますよ。ルリちゃんもお姉さんとして頑張っていますよ、ミナトさん」

「お久しぶりです、アクアさん。火星の戦況はどうですか」

「アオイさんも立派な艦長になれそうですね、実は一万隻の艦隊が来る事になって忙しくなるので、

 予定を早める事になりました、すいませんプロスさん」

自然に話すアクアに事態を知ったブリッジは慌てだした。

「ええ―――!大丈夫なんですか、そんな大艦隊を相手に火星は勝てるんですか」

「まあ、反則技を使えば楽勝ですね、出来れば使いたくないので大変ですよ、メグミさん」

「そうなんですか、やはり私達が見てない艦が切り札ですかアクアさん」

「分かりますかプロスさん、実は相転移エンジンから得た技術で造った武器があるんです。

 ただ大量殺戮兵器になるので使いたくないのが火星の考えです。…………有人艦隊ですから」

アクアが告げる事実にブリッジも静まりかえるが、パイロット達はアクアに尋ねた。

「まあ物騒な武器は使わずに勝てばいいけどな、火星なら出来るだろう違うかアクア」

「そうですね、勝率は80%ありますから普通に戦いますよ。

 今日は地球はこの艦隊戦に参加するか確認する為に来たんです、プロスさんこれを会長に渡して下さい」

アクアはプロスにディスクを渡した。

「確かに受け取りましたよ、責任を持って渡し連絡を入れます。今日はこの後どうされるのですか」

「時間はありますし、パイロットの皆さんと対戦しようかと思ったんですが問題ありますか」

「実は作戦が始まる所なんです。申し訳ありません、折角来て頂いたのに忙しくて」

「そうですか、プロスさん。新しいAIの調整は出来ましたか、良ければ手伝いますよ。

 火星のオモイカネシリーズの調整で慣れていますから、オペレーターの皆さんが良ければですけど」

「よろしいのですか、助かりますがオペレーターの皆さんは良いですか」

プロスに聞かれたオペレーター達は考えて了承した。

「全員賛成だよ、その実力を見せてもらおうかな。

 あのホシノ・ルリと同等の力を持つと言われる貴女の力を知りたいわね」

グロリアが挑むように席を空けてアクアを招いた、アクアは静かに近づいて席に座り作業を始めた。

「プロスさん、ナデシコを着陸させますが良いですか、エンジンも一時停止させますが問題はありますか」

「そうですな、一時間なら大丈夫です。それ以上は時間をかけられません」

「そんなに時間はいりませんよ、30分で最適化出来ますよ」

笑顔でアクアは答えたがグロリア達は信じられない事を言われて絶句していた。

ナデシコが着陸しエンジンが止まるとアクアは作業を開始した。

その瞳はナノマシンの輝きを放ち、アクアの周囲には無数のウィンドウが円を描くように回り、

全身にナノマシンの輝線が現れ、そこだけが別の場所に感じられた。

アクアの雰囲気が変わり神聖なものに見えて誰も声が出なかった。

やがて全てのウィンドウが閉じられAIが再起動すると信じられない事が起きた。

『おはようございます、私の名はオモイカネ・シオンと申します。シオンとお呼び下さい』

「初めましてシオン、アクアよ。よろしくね」

『はい、マスター。こちらこそよろしくお願いします』

「アッアクアさん、この短時間にAIの基礎プログラムを作ったんですか。信じられませんが………事実ですな」

「三回目ですから大分慣れてきましたし、ネルガルで基礎が作られていたので楽でしたよ。

 これでナデシコの作戦効率も上がりますから大丈夫ですね」

プロスに微笑みながら答えるアクアにグロリア達は呆然としていた。

「助かりますよ、ナデシコは最前線に出ますからクルーの負担は軽くなります。

 これは本社に連絡してボーナスを出しますよ、これでどうですか」

プロスがアクアに電卓を見せて、話し始めるとクルーも落ち着き始めた。

「いいのですか、これは多いですよ。これでどうですか」

「いやいや、それでは少ないのではないでしょうか。どうもアクアさんはお金に疎いように見えますよ。

 それではいけませんよ、お金は無いよりはあった方が良いですよ、まああればあったで大変ですが」

「そうかも知れませんね、多分家族が慎ましく暮らせる分があれば十分なんですよ」

「それが一番大事な事ですな、私もそう思いますよ。これでクロノさんと生活するには十分でしょうが、

 お子さん達の万が一の時の為に残しておくのも必要でしょう」

プロスに言われてアクアは考え込んでその申し込みを受け入れた。

「ではそれでお願いします。すいません勝手な事をしまして申し訳ありません」

グロリア達に頭を下げるアクアにグロリアは謝った。

「ごめんなさい、見せたくなかったのに挑発して悪かったわ。本当は隠しておきたかったでしょう」

「大丈夫ですよ、全部見せた訳じゃないですよ。奥の手は隠してますから」

あっさりと話すアクアにグロリアは笑いだした。

「降参するわ、貴女には勝てそうもないわね。グロリア・セレスティーよ、よろしくね」

「はい、アクア・ルージュメイアンです。グロリアさんよろしくお願いします」

仲良く握手する二人にクルーは呆れていたがアクアの実力を初めて見た事に気が付いた。

「すみません、アクアさん。セイジュウロウ・アリマという人物を知っていますか」

カスミから声をかけられアクアはよく分からなかったので聞く事にした。

「すいません、誰の事でしょうか。よく分からないのですが」

「私の叔父です。おそらくアクアさんがいたラボの研究員の筈ですが覚えていませんか」

アクアは驚いて万が一の為に考えていた説明をする事にした。

「申し訳ありません、度重なる過酷な実験で精神的に壊れかかっていたので、

 その頃の人物の事は殆ど記憶に無いのです。実は保護してくれた人もよく覚えていないのです」

アクアが告げた事にクルーも何も言えずにいたが、カスミは話し続けた。

「知りたかったのです、自殺した叔父が何故そんな研究に参加したのか。

 優しかった叔父が狂うほどの状況を知りたかったのですが教えてくれませんか」

「聞かないほうがいいですよ、人体実験なんてまともな人間のする事ではありませんよ。

 あれは地獄を作る作業です、人が係わるものではありません。

 貴女の叔父さんが逃げたのは人として当然の事ですから誇りにするべきです」

アクアが話す事にカスミは泣き出し、アクアが頭を撫でて慰めていた。

「叔父様は苦しんでいました、それは正しかったのですね」

「そうですよ、貴女の叔父さんは人の誇りを持っていたのです。それを大切にする事です」

クロノが受けた実験を思い出しアクアはカスミに話しかける。

「まあ、クロノも昔の事は良く覚えていないので聞かないであげて下さい。

 私よりクロノのほうが酷かったのです、クロノには聞かないで下さい。

 彼はまだ傷ついてますからこれ以上苦しめないで下さい、お願いしますね」

アクアの願いにカスミは頷いて答えた、クルーもこの件は黙っておく事にした。

プロスがブリッジの雰囲気を変えるべく話そうとしたが、先にジュンが話し出した。

「シオン、発進準備を始めて欲しいがいいかな」

『はい、艦長準備はいいです。これよりナデシコの管制の補助を私が行います、よろしいですか』

「ああ、君に任せるよクルーの名簿はいるかな」

『大丈夫です、既に把握しています。まだ対応が不十分かも知れませんが、

 おかしい点は直しますので出来る限り教えて下さい、私はまだ良く分からない事が多くあります。

 これから皆さんより学ぶ事になります、仲良くしましょう』

「何か前のオモイカネとは違うな、大人の対応に見えるな」

「ゴートさんもそう感じますか、実は僕もそうかなと思うんです」

「そうよね〜これはルリちゃんとアクアちゃんの違いかな〜。そうでしょうアクアちゃん」

「その通りですよ、ミナトさん。AIは教育した人物によって変化するのです。

 ルリちゃんは優秀ですが人生経験の差でこのように性格が変わるのですよ、でも能力は変わりません。

 後は経験を積む事でまた変化しますよ、人間と変わりません。シオンもナデシコのクルーですよ」

アクアがフォローするようにクルーに話すとシオンも応える。

『はい、私はマスターに生み出され此処に存在します。私もクルーの一人だと主張します』

「よろしくね〜いい子ね、アクアちゃんはいい子を作るのが上手ね〜」

「そんな事はないですよ、ミナトさん。これからシオンと仲良く付き合って下さい友人として」

微笑んでミナトに答えるアクアにクルーもシオンをクルーの一人として認める事にした。

ナデシコの補充されたクルーの最後のメンバーが今ナデシコに着任した。


―――クリムゾン会長室―――


「それでは月の攻略戦の準備が終わり次第、火星との協力を始めます」

「今はそれしかないな、これ程の暴挙に出るとは呆れるな。………木連も終わりかな」

ロバートの呟いた言葉を聞いた秘書は答えた。

「ですがプラントの無限の生産力を考えると数で押し潰す作戦は効果がありますが」

「いや、プラントも老朽化している筈なのだ、だから木連は火星に移住しようと計画したのだ。

 まあ、独裁者草壁のせいで全ては無駄になるが、この無理は木連の命取りになるぞ」

「そうですね、プラントがなければ木連は自滅しますよ。

 過酷な環境で生存出来たのはプラントのおかげですから、失えば生存は難しいですね」

「地球も気を付けないとな、恵まれた環境で生活しているから痛みを知らないから問題が出てくるな」

「はい、政府もこの戦争では馬鹿な事をしました。

 火星の件は公になりましたが被害を知って市民から政府の信用が落ちていきますし、

 木星の件で政府も潰れそうです」

「この際完全に改革するべきだな、市民に信頼される政府にしないと火星と戦争が始まりかねんな。

 火星は地球を滅ぼす事など簡単に出来るからな、まあ友人として仲良く出来るからいいがな」

「まず勝てませんよ、火星はこちらの戦略拠点に攻撃をいつでも出来ますから」

「火星に着くまでに攻撃を受け続けて戦力の維持も難しいな、そして火星の総攻撃を受ければ勝てんな。

 ボソンジャンプの攻撃は凄いものだよ、火星は独占しないからいいが木連が押さえれば、

 最悪な事態になるな。テンカワ博士のおかげだな、火星が無事で良かったよ」

「ネルガルも大変な失策をしましたね、クリムゾンは助かりましたが」

「そうだな、我々も気をつけよう。独占する危険を考えないと、そして企業の本質を見直さないとな」

「大丈夫です、クリムゾンも変わり始めてます。社員も意識改革が進んでいますから、

 順調に行けば平和な社会でも信頼される企業になりますよ」

誇らしく語る秘書を見て、ロバートもクリムゾンの変革を嬉しく思った。

信頼される企業へとクリムゾングループは連合市民から認められ始めていた。



―――木連作戦会議室―――


「現在の作戦の進行状態はどうかね、高木少将」

「はっ作業は順調に進んでいます、予定通り作戦を始める事が出来ます」

誇らしく胸を張って答える高木に草壁は頷いて、

「吉報を待っているよ、木連は君の艦隊に命運を預ける事になるだろう。

 正義は我に在り、そして君が英雄になるのだ」

その言葉に高木は感動し、草壁に敬礼した。

二人を見る秋山は考える。

(馬鹿な事を言ってるな、勝てる訳が無いだろう。火星は無人艦隊に負ける事は無いだろう。

 どうやら閣下は裏で何か計画しているな、自分が支配者になる為に火星から何かを奪うのだろう。

 だがそれは成功しないな、火星はわざと奪われた振りをして騙す事だろう

 まあ都合のいい事ばかり考えるのが独裁者の末路かな、注意を促すか)

「閣下、防宙艦隊の準備をしたいのですがよろしいですか、

 火星が艦隊を無視して先に市民船や港湾施設を攻撃するかも知れません。

 死なば諸共など認める事など出来ません、火星の悪あがきに付き合う事は無いでしょう」

秋山が告げる言葉に士官達が頷き、草壁も考えて話した。

「その通りだな、秋山中佐が中心になって準備したまえ。我々の勝利は完全なものでなければならない。

 まず火星を陥落させ、その勢いで地球に進むぞ。やはり正義が勝つのだ」

草壁の宣言に士官達は浮かれるが秋山達は醒めたふうにその光景を見ていた。

「では閣下の完全な勝利の為の準備を始めます。失礼します」

高木とその部下達が席を立ち火星を攻める準備を進める為に退室すると、草壁も退室した。

士官が次々と退室する中で秋山達は防宙艦隊の再編成を始めた。

最悪の事態が来る事がないように犠牲を減らすべく準備を進めた。

木連の未来を変える為に、その事を知る者はまだ僅かであった。


―――ナデシコ ブリッジ―――


「皆さん、腕を上げられましたね。すこし苦戦するかも知れませんね、まだ私の方が上ですけど」

スクリーンに映し出される映像を見ながらアクアは呟いた。

「そうなんですか、ナデシコのパイロットはエースばかりですよ。それでも勝てますか」

セリアがアクアの声を聞いて尋ねるとアクアが、

「ええ、これでも火星では二番目くらいの実力がありますよ。ただクロノには勝てませんね、

 ジャンプ戦では連続のジャンプが出来るクロノには誰も勝てませんし、通常の戦闘でも差がありますよ。

 おそらくエステバリスとエクスストライカーで戦えばいい勝負になりますが、

 そんな戦いは無意味ですから………やっぱり経験の差が大きいですね」

アクアが話す事の意味を理解するとクルーは信じられない顔をした。

「プロスさん、格納庫に一台スペースを空けてもらえませんか、ある機体を置きたいのですが」

「アクアさん、その機体は火星の機動兵器ですか」

「違います、エステバリスです。ただ特殊な機体ですね、

 追加装甲を付けた普通のパイロットでは操縦できない欠陥機ですね。使えるのは私かクロノだけです」

アクアが話す事にジュンが尋ねる。

「でも火星にそんな機体があるのですか、エステバリスはネルガルの製品で地球で製造されています。

 火星でも簡単に製造は出来ないでしょう」

「その通りです、ある事故で発見した機体です。これが火星の機動兵器の基になったと言えますね。

 分解すれば全ての答えが出ますよ、ネルガルが希望のないパンドラの箱を開放した事が分かりますよ」

アクアが真剣な顔でただ真実を告げるとクルーも大変な事をネルガルがしたのだと考えた。

「それはボソンジャンプの事ですか、ただの移動技術ではないのですか」

「違います、取り扱いを間違えると人類が滅びますよ。それ程の危険があります、

 ネルガルはその事に気付かずただ自分の利益を上げる事を考えて事態を悪化させています。

 このまま行けば、未来は絶望しかありません。かなり深刻な状況になっていますよ」

プロスの問いかけにアクアは事態の深刻さを語った。

プロスはアクアが話す事に嘘はないと判断し、調べる決意を固めた。

「ではその機体を預かる事にします、分解し調査してもよろしいですか」

「はい、その為に持ち込む事にしました。意外な事が分かりますよ、多分信じられない事が出ます。

 ウリバタケさんは真実に気付くでしょう、それだけの実力と洞察力がありますから」

微笑んでプロスに話すアクアにクルーもその機体に興味を持った。

「では格納庫にその機体のスペースを確保します。次の時でいいでしょうか」

「いえ、この戦闘が終われば私が運びますよ。機体の名称はブラックサレナと言います、

 今存在するエステより高性能で、追加装甲で更に戦闘力がありますがパイロット殺しの異名を持つ、

 最悪の機体でもあります。使用は控えて下さい、危険ですから」

告げられた言葉に誰も何も言えなかったが、アクアがそのまま戦況を見て話す。

「シオン、主砲の準備を始めなさい。目標はチューリップに向けなさい、

 各パイロットは主砲の範囲より離脱して、発射後弱まったフィールドを干渉して撃沈するように」

『分かりました、マスター。パイロットの皆さんに通信を入れます』

「ええ、準備が完了次第始めなさい。まずチューリップを潰し増援を出さないようにする事が大事です。

 敵はチューリップに頼りすぎていますから、今はその作戦が効果があります。

 いずれ有人部隊が来るまでは、まずチューリップの破壊を優先しなさい」

『分かりました、ナデシコ一隻では大軍には勝てませんね。勝てるように敵を誘導すればいいのですね』

「そうです、自分と相手の戦力を分析し有利な方向へ誘導して戦いなさい。

 それは基本です、大事なのは諦めない事です。時には逃げる事も考えなさい、

 ただ退けない時もありますが、生き残る事が大事な事です。

 生き残れば勝てる事も出来ます、死ねばそれまでです。分かりましたか、シオン」

『一部不明な事もありますが、大体は理解できます。

 生き残る事を優先します、クルーの安全を確保する事が私の使命ですね』

「そうですよ、アオイさんも聞いてますね。すいません、余計な事をしました」

アクアがジュンに謝るとジュンが、

「とっとんでもないこちらこそ申し訳ありません。戦場で他の事に注意を向けてしまい、艦長失格ですね」

「そうでもないですよ、私が余計な事を話したのが問題ですよ。後は任せますよ」

「はい、シオン準備は出来たかい」

『はい、艦長いつでもいけます。始めますか』

「よし、パイロットの通信を。目標はチューリップ、主砲発射後直ぐに攻撃して下さい。

 ミサイルによる援護、レールガンの準備を」

ジュンの声にオペレーターの動き始めた、ナデシコは本格的な戦闘を開始した。

やがてチューリップが撃沈され、戦艦の掃討戦が始まった。

それを見てアクアがプロスに話しコミュニケでウリバタケに連絡を入れる。

「では準備を始めます。ウリバタケさん新型の機体を持ち込みますから、分解しますか」

『当然だな、見せてもらうぜ。その機体をな』

「ええ、吃驚しますよ。矛盾のかたまりですから、分解の楽しみがありますよ」

『いいね〜〜、面白いぜ。アクアちゃんがそこまで言うなら俺も楽しめそうだな』

「正解したら、お仕置きはなしにしますよ。ウリバタケさんも懲りませんね」

『なっ何の事かな〜、俺は知らないが何かあったのかな〜〜』

動揺するウリバタケにミナトが、

「まさか、また風呂場に覗き穴でも作ったのかしら」

『そっそんな事はしてねえよ。俺は無実だ――――!』

「そうですね、フィギュアの製作もいいですがラピスやセレスのは問題がありますよ。

 まさかそっちの趣味に目覚めましたか、危険ですね」

『どうしてそうなる、萌えの良さが理解出来ないのか!』

ウリバタケの叫びにアクアが、

「まあ少しは分かりますが、それでも子供達に内緒で作るのはダメです。

 せめて連絡を入れて許可を取って下さい」

「何か、ずれてるような気がするのは僕の考えがおかしいのかな」

「そんな事はないわよ〜アクアちゃんも微妙に変だから〜〜」

ジュンの呟きにミナトが返すがアクアが反論する。

「どうしてですか、可愛い女の子に綺麗な洋服を着せて記録する事が変ですか。

 似合うのですから問題はありませんよ、ミナトさん」

アクアの反論にミナトは考えて答えた。

「確かにそうかもね〜、あれだけの美少女だもんね〜、着せ替えの楽しさがあるでしょうね」

「そうですよ、これなんかどうですか。いいでしょう、ルリちゃんも似合うんですよ〜」

アクアがミナトに見せる映像はミナトも納得できた。

「いいわね〜、この恥じらいの表情がいいわ〜〜最高ね」

「そうでしょう、流石ですよミナトさんも分かってますね。これなんかどうですか」

「見事ね、これはいいわよ〜やっぱりルリちゃんも着せ替えがいがあるわね〜」

「でも嫌がるんですよ〜、素材はいいのに服には無頓着で機能性にしか興味がなくて困るんですよ」

「もう〜ルリちゃんも、もう少し女の子らしくすればいいのにね〜。大変ねアクアちゃんも」

残念がるアクアをミナトが慰める様子にブリッジは、

(いや、流石に着せ替えはまずいんじゃないでしょうか)

と考えたが二人の様子に何か言えば危険な感じがするので戦況を見る事にした。

戦場においてもナデシコは何も変わらなかった、………タフなクルー達であった。

こうして戦いを終えたナデシコの格納庫にアクアがブラックサレナを配備した。

この機体がもたらす意味をクルーはまだ何も知らない。

見る者に存在感を見せ付ける様に格納庫に立っていた。


―――ネルガル会長室―――


『今回のアクアさんの訪問で持ち込まれた機体ですが、矛盾が出てきました』

「どういう事かしら、ただの高性能な機体じゃないのかしら」

『エリナさんの言う通りカスタムの倍に近い出力がありますし、バッテリーも現存するモノより上です』

プロスの報告にアカツキは不思議な思いに囚われたので聞く事にした。

「つまり火星の技術ならエステをここまでの機体に作り上げる事が出来るのかな」

アカツキの質問にエリナも頷いてプロスを見たが、プロスが告げたのは信じられない事だった。

『違います、この機体は2201年にネルガルで製造された機体です。パイロットの資料はないですが、

 その意味が分かるでしょう、ウリバタケさんも驚いていましたよ。

 何度調べても結論は変わらないそうです、未来から来た機体だと言われました』

「そっそんなことある訳ないでしょう!どうして未来から来るのよ!」

動揺するエリナを見ながらアカツキはボソンジャンプの意味を理解し始めた。

「つまりボソンジャンプは時空間移動の技術なんだね、プロス君」

『そう結論するしかないなとウリバタケさんも言われました。………分かりますか事態の深刻さが』

問いかけるプロスの声にアカツキはネルガルのした事に動揺を隠せなかった。

『火星はこの事態の深刻さに気付いているから対応に苦労しているみたいです。

 これが木星に独占されるとどういう事態になるか解るでしょう、会長』

「ああ、そうだね。大変な事をしてしまったよ………希望のないパンドラの箱か。

 僕達はそれを開けてしまったんだね、自分達の欲深さで」

『そうみたいです、アクアさんもこれが言いたかったのでしょう』

アカツキは隣に目を向けると蒼白な顔で立ち尽くしているエリナを見て、

「エリナ君、ボソンジャンプの研究は凍結するよ。

 リスクが大きすぎるよ、迂闊にジャンプさせると何が起きるか予測出来ない」

アカツキの声にエリナは気付き頷いて話しかけた。

「止めさすわ、こんな事になるなんて………………どうすればいいの」

「分からないよ、ただ事態は深刻な状況になりそうだ。木星は知らずに使っているのだろう。

 火星が陥落すればどうなるか、この件はクリムゾンも知っているのかな」

『おそらく知っているのでしょう。ロバート会長もそれで動かれているのかも知れません。

 独裁者にこの力を与える危険を知っているから行動しているのでしょう』

「きっ危険よ、自分の都合の良い未来なんて創られたらどうなるか」

『エリナさんの言う通りですな、我々も大変な事をしましたよ。使い方を間違えれば人類は滅びますな』

プロスのセリフに二人は自分達の考えのなさに気付き落ち込み始めた。

『落ち込む暇はないですよ、火星は今重要な局面に立っているのですから』

プロスの声に二人もこれからの事を考え始めたが、与えられた情報に良い考えが出なかった。

『まだ時間はありますから、この件はもう少し後にしましょう。今は無理でしょうから』

「そうだね、この状態じゃ何も考える事が出来ないよ。事態の深刻さは理解したよ。

 必ず返事を出すと火星に知らせて欲しい」

『分かりました、また連絡します。それでは失礼します』

通信を終えた二人は呆然としていた。

まだ軽く考えていた事に二人は事態の深刻さが重く圧し掛かってきた。










―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです。

今回のお題は
ウリバタケ、ブラックサレナを分解する。
アカツキ、ボソンジャンプの意味を知る。
アクアさんの意外な趣味が分かる(爆)でした。

では次回にお会いしましょう。



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