機動戦艦ナデシコ 逆行のミナト

第十三話 『秘密』は一つじゃない 巻の一
 
 
 
 
《第三者(神)SIDE》
 
 
 
ナデシコが火星から帰ってきて約一年。
世界中で独立遊撃部隊として戦い続けてきたナデシコとクルーたち。
※注:話になっていないだけで各地で戦闘していたのである。ライカの教会のある街にも行っていたがその際には、件の『九郎』が『アル』とイチャイチャしているのを見た一部整備員が襲い掛かり返り討ちに遭うと同時に辺り一帯を火の海にしたりもしたが……街の皆は慣れた様子で避難、あるいは観戦していたのがナデシコのクルーには印象的だった。緑の髪で白衣を着てギターを持ったアホ毛の男が吹っ飛ばされていたりもしたが、それすらも日常茶飯事らしい……。
その戦闘の厳しさから、元々『能力一流』で集められていた各クルーの能力は飛躍的に上がっていたのだった。
また『性格は二の次』に関してはナデシコと言う戦艦が『類は友を呼ぶ』的な状況であった事から、『全く』問題になっていなかったのは巡り合わせの妙と言うべきだろうか?
 
 
そんなこんなでクリスマスも近くなってきたころ、ようやくナデシコの全面改修が可能となったため横須賀のドックに向かうナデシコ。
ミナトの出したアイデアが元で建造が遅れに遅れていたカキツバタがようやく完成・量産され始め、ナデシコの改修を行う時間が出来たのである。
ちなみにカキツバタではコスモスと同様にオモイカネ級のAIを搭載せず、通常型のAIと通常のオペレーターIFS装備者を複数配置する事で運行できるようになっている。その為、ナデシコよりも性能は高いがコストが安く、かつ軍でも受け入れやすかった。
またそう言ったAIの事情により、ナデシコ級のアドラミル・コードはナデシコが所有していた。
オモイカネを越えるAIが無い以上、半端なAIにアドラミル・コードを与える事はオモイカネの反乱を招きかねず危険だとアカツキが判断したためでもある。
 
 
 
《ミナト SIDE》
 
 
 
……やれやれ、ようやく改修かぁ……。
オモイカネの反乱からこっち、色々あったわねぇ……。
 
そう、本当に色々あったのだ……。
私は横須賀に向かうナデシコの舵を取りながらそれを思い出していた……。
 
 
 
オモイカネの反乱から二週間後━━━
ナデシコの恒例、朝のブリーフィング。
軍からの連絡で、さらに提督がやって来ると言うことだった。
「ミナトさん、何で提督がまた来るんですかね?」
「さぁ? あのキノコが役に立たないからじゃないかしら?」
ヒソヒソと話すメグちゃんと私。
ちなみにそのキノコは先日から姿を見ていない。オモイカネによると艦内にはいるらしいけど……。
フランクなナデシコではジュースや駄菓子を食べながら参加する人が多い。
かくいう私も牛乳を飲みながら参加しているし……。
「え〜、では新しい提督と副提督を紹介いたします……。ちなみに今回の提督ならびに副提督は民間企業からのナデシコの運用に対する監査の意味も込められています。ナデシコは八ヶ月のブランクはありますが現在でもキルスコアは連合内でトップと言う事もあり同業他社に行動を監視させる事で先日のオモイカネのようにナデシコの暴走が発生しない様にするということです。……私としましては機密の塊であるナデシコに他企業の人間が入ってくるのは非常に心苦しいのですが、ここは一つ寛大なお気持ちで迎えて頂きたいと思います、ハイ」
非常に胃が痛くなるような表情で言ってくるプロスさん。前はこんな事無かったけど……歴史が変わっている証拠かしら(汗)。
ため息を一つついたプロスさんは私と隣に並んでいるアキト君に視線を向ける。
「それから……テンカワさん、ミナトさん……」
「「はい?」」
「ご愁傷様です」
「「「「「「「?」」」」」」」
私とアキト君を含め、ブリッジにいるクルー全員が首をかしげた。
「では入っていただきましょう。アスカインダストリーから監査役兼提督としていらっしゃいましたオニキリマル・カグヤさんとクリムゾングループから監査役兼副提督としていらっしゃいましたアクア・クリムゾンさんです」
ブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
思わず飲んでいた牛乳を噴いてしまう私。
何でよりによってクリムゾンのトップの関係者が乗り込んでくるのよ!?
しかも『オニキリマル・カグヤ』ってもしかしてあのカグヤちゃん!?
隣のアキト君はなにやら首を捻っている。よく見ると艦長も似たような表情だけど……一体?
そして全員が注目する中、開くブリッジのドア。
「お姉さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
そう言って飛び込んでくる金髪が一つ。
その後ろから優雅に歩いてくる黒髪の人影が一つ。
「やっぱり……」
両方とも見知った顔だった。
「お姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまっ!!」
抱きついてくるアクアちゃんは言わずもがなだけど……やっぱりもう一人も良く知っている人物だった。
「お久しぶりです、ミナトお姉様」
予想通り、もう一人は高校の後輩で同じ寮に住んでいたカグヤちゃんだった。
「はい、お久しぶり……、ってアクアちゃん、胸にグリグリは止めてくれないかしら?」
そう。アクアちゃんは私の胸に顔を埋めてグリグリしていたのだった。
(ウリピーが何故か血の涙を流していたけどそれは無視)
「うう……。お姉様に会える日を一日千秋の思いで待ち続けていましたのに……」
そう言って嘘泣きするアクアちゃん。でも胸から顔を外さない(ハァ……)。
その両肩を持って引き剥がす私。
「あぁん……。お姉さまのいけず……」
「『いけず』じゃないでしょ、まったく……」
そんな私たちを見ながら微笑を浮かべてカグヤちゃんが近づいてきて……アキト君の前で立ち止まる。
「アキト様……お久しぶりです……。オニキリマル・カグヤです。私を覚えておいでですか?」
「カグヤ、カグヤ……って、ああ!! もしかしてウチの向かいのオニキリマルさん家のカグヤちゃん!?」
「はい!」
嬉しそうに微笑むカグヤちゃん。
だけど私にはもっと重要な事があった。
「え!? アキト君、カグヤちゃんの事を知ってるの!?」
驚いてアキト君に尋ねる私。
「ええ。幼馴染みなんですよ。ウチの向かいに住んでいたんですけど十年ほど前に地球に引っ越しちゃって……。カグヤちゃん、おじさんたちは元気?」
「ええ、勿論です。……そのテンカワのおじ様たちは……」
「仕方ないさ。もう……。でもまさかこんなところで会えるなんて驚いたよ」
「私もナデシコのニュース映像にアキト様が映っていたのを見た時は心臓が止まるかと思いましたよ。……火星への襲撃で絶望的って言われてたんですから……」
そんな会話を続ける二人をルリルリとラピスが睨んでいる。
でもカグヤちゃんが火星出身とは私も知らなかった……っていうことはもしかしてカグヤちゃんもA級ジャンパー!?
……早急に確認しないとマズイわね……。
「そういえば、ミナトさんもカグヤちゃんを知ってるんですか?」
そんな事を考えていた私にアキト君が尋ねてくる。
「ええ。高校の時の後輩で同じ寮に住んでいたからね〜」
そんな事を言っていると、視界の片隅にそろそろと逃げ出しているアカツキ君を捕らえた。
まあ、クリムゾンのトップが来ている以上、うっかり正体がバレるワケにもいかないか。
「アキト様とミナトお姉様がこのナデシコにいると聞きまして、お父様にお願いしてここへ来たんです」
ポッ、と顔を赤らめながらここへ来た理由を話すカグヤちゃん。
「あ〜……、そういえばカグヤちゃんのお父様ってアスカの重役だったっけ?」
「先日、社長になりました。そのおかげでここへ来れました」
……なるほど。それじゃ余計に逃げるわよね、アカツキ君。
二人に後で釘を刺しておかないとダメかしらね……。
ついでにこの事で恩を売って、また何かやらせようかしら?
アキト君の左右にしがみつくルリルリとラピスに勝ち誇ったような顔をしているカグヤちゃんを見ながら、私はそんな事を考えていた。
 
 
なお、何故かエリナがアクアちゃんを睨んでいたけど……何とかしないとヤバいわね(汗)。
というわけでエリナとアクアちゃんの諍いを止めた後、カグヤちゃんも呼んでアカツキ君のことは黙っておくように釘を刺す事に成功し……悪巧みのメンバーを強化する事に成功した(笑)。
そしてムネタケ提督は副提督補佐(いわゆる丁稚)に降格しちゃったけど……自業自得ということでクルーの中ではとりあえず放置が決定した。
 
 
……ちなみに艦長が幼馴染みであるカグヤちゃんの事を思い出したのは、就寝直前だったと言う……。
カグヤちゃんが昔言っていた『超天然自分中心天動説女』って艦長の事だったワケね……。納得だわ……。
 
 
 
その後、カキツバタの調整が終了したキラちゃんとハーリー君が遊びに来てさらに賑やかになった。
けど……、その賑やかさに乗じてルリルリに告白したハーリー君はあっさりルリルリに振られてしまい……なぜかウリピーと意気投合することに(汗)。
そんな中、キラちゃんは久しぶりにアキト君に会えたので添い寝してもらっていた。最近してもらっていないラピスも一緒だったのでベッドはかなり狭かったらしく、二人はアキト君に密着して眠れてご満悦だったらしい。
ただし……先日のホワイトデーに引き続いて寝ぼけたアキト君がラピスとキラの幼いワレメを弄くって絶頂まで導き、潮を吹かせたのでルリルリからお仕置きを受ける事になった。
まったく……ウチの娘たちにへんなクセがついたらどうするつもりなのかしら? きちんと責任を取ってもらわないとね? ふふふ……。
ただ、なぜかアキト君にその時のお仕置きの内容について尋ねると青い顔をしてブツブツと呟きながら怯えるようになってしまったのだけれど……ルリルリ、貴女一体何をしたの!?
 
 
 
 


あとがき
 
ども、喜竹です。
一ヶ月ぶりなのにこの短さで申し訳ありません。
ここのところスランプ気味だったのですが、どうやら睡眠時無呼吸症候群による睡眠不足から来る疲労の蓄積が原因らしいとの事。
入院一歩手前らしいので要注意だそうです。
おかげで酒禁止・夜更かし禁止・間食禁止となってしまいました(涙)。
夜の時間を執筆に割きづらくなったので、また投稿が遅れるかもしれません。
平にご容赦願います……。
 
追伸
先日買った「戦場の絆PSP」のジオン軍CPUプレイヤーに『ホクシン』なるキャラがいて驚き。……『近距離得意』なのに『格闘苦手』(笑)でしたが。
 
追伸2
先日Arcadiaに別PNにてマヴラブ作品(短編)を投稿しました。
まあ、感想(粗探し)だけ書いて自分は作品を出さない、ということをやりたくなかっただけなのですが。
『ミナト』と同じように普通ではない捻くれたコンセプトなので私の作品と気づかれる方もいらっしゃるかも知れません。その時は駄作と笑ってください。
 
追伸3
上記のマヴラブがらみでテックジャイアンに戦術機の写真投稿実施と、ボークスアキバ店が五月二十三・二十四日にアキバで行う『A3交流会』なるものにオリジナルカスタムの戦術機を出品予定です。
こちらもある意味捻くれた作品となっています。

 

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