異世界召喚物・戦略ファンタジー
王 国 戦 旗
作者 黒い鳩


第三話 【アルテ】


「今日も十分な収穫でござったな!」
「ああ、こう言う方法はなかなかいいな」

俺達がこの世界に来て、いやカトナの村に世話になって一週間が経っていた。
ここの所、薬草取りと西の森の中に生えている果物を手に入れて持って帰るのが今の日課になっている。
視界内なら1kmくらい先のモンスターのアイコンも表示されるため、
モンスターは近付く前に分かるので、早々捕まらない。
俺達が日々の糧を得るには非常に有効だった。

それと同時に森の中にまだ清四郎や静がいないか探す事も出来る。
とはいえ、俺達が日帰り出来る範囲では見つける事が出来なかった。
次第に、森から出てどこかの町に向かった可能性の方が高いだろうという結論に達しつつあった。
清四郎のチートっぷりを考えるならいつまでも危険な場所にいる事はありえないだろう。

因みに、失せ物探しはかなり喜ばれたが、そもそも失せ物がそれほど多くなかったため数日で開店休業状態になった。
こっちだって無料で引き受けていた訳じゃないので対価に合わないと思われたのかもしれない。
そもそも20件程度の小さな村だ、1日であらかた片付いてしまった。
そう言う訳で、現状の仕事と相成った訳である。

「拙者も荷物持ち以外に大した事は出来ないでござるが……」
「魔法に関してはもう少し時間をくれ。
 定期巡回してくれている商人が2〜3日後には付くらしいからな。
 この村から出る支度はその時しよう」
「は……村を出るのでござるか!?」

メルカパは驚いて声をあげた。
理由は分からなくもない、色々と不自由も多いが、時期がいい事もあり水浴び等も出来るため生活は安定している。
村の人達とも仲良くなったし、遊びを多く知るメルカパは子供達の人気者でもある。
その上、食べ物は果物に関して言えば俺が安定供給できるし、薬草と交換で穀物の類は粗方手に入る。
そして何より村長の家で食事をお世話になれるという特典がある。
食材の提供はしているものの、料理が出来ない俺達にとってみればかなり嬉しい話しだ。
しかも、リディはメルカパの事を気に入っているのか、良く話している所を見かけるのだ。
ここまで揃えば、メルカパがこの村から動きたくないのも仕方のない所だろう。

「メルカパが村に留まりたいっていうなら止めはしない。
 だけど、俺は清四郎や静を探す事を諦めたくないしな」
「そうでござったな……」
「それに、この村……。このままだと迷惑になると気付いているか?」
「それは……、しかし、役に立っているでござるよ! 主に達也氏がでござるが」

メルカパはもう直ぐ村が見えてくる場所でそんな事を話し始めた俺に振り返る。
だが、本当はメルカパも気が付いているはずなのだ。
最初村に来てすぐに聞いた話、そして、現状の生活。
俺達は果物をかなり多めにとって交換の時は気をつけているが、明らかに穀物が少ない。
今年は不作と言う訳ではないらしいから、恐らく節約しているのだろう。
つまり……。

「彼らは備蓄の一部を隣の村に送っている」
「それがどうかしたのでござるか?」
「隣の村は凶作だったらしい、理由は知らないがな」
「拙者もそのくらい聞いているでござるよ」
「そして領主はどうにも融通の効かない相手だと言う話だよな」
「それがどうしたのでござるか!?」
「その後の税金を納めたらこの村はどうなる?」
「そっ、それは……かなり厳しいのでござろうな……」
「更に、今年は税が上がると言う話もしてたよな?」
「……それは」

この村の備蓄は半ば隣村に送られた、そして、領主は税収を諦めるタイプには思えない。
そんな時、俺達をわざわざ歓待すればどうなるか。
はっきり言って俺達はお荷物だ、確かに果物や薬草で貢献してはいるが、税収として持っていかれるのは畑の作物。
それらが無くなった時、果物で村を支えられるかと言われればNOだろう。
20件とはいえ、貧乏人の子だくさんじゃないが、それぞれ家族は多い。
100人近い人達をモンスターも出るような森の果物で養ってなどいけない。
村人のレベルもせいぜい1〜6くらいの間なんだから戦って勝つなんて考えてはいけないだろう。
川で魚を取る、草を食べる、それで上手く行くのかは飢饉など体験した事も無い現代っ子の俺に分かる訳も無いが。
恐らくは無理じゃないかと想像する事は出来る。

「重荷にならない為にも早めにここを離れたほうがいい」
「それは……、そうでござるが……」

もちろん、メルカパがここを離れたくない気持ちもわかる。
ここ一週間で体重が10kg減るほど動き回って村人達と仲良くなったのだ。
それが無駄になるという思いもあるだろうし、この状況を何とかしてあげたいという思いもあるだろう。
だが、俺達に出来る事はたかが知れてる。
食べ物を召喚する魔法でもあればいいんだが……。

「少し考える時間をもらえないでござろうか?」
「もちろん構わない、あくまで出発準備をするのは商人から買い物をしてからだからな」
「そうでござったな」

互いに考え事をしながら、村へと戻る。
薬草や果物を頼まれていた人達に渡し、対価を得てから借りている村長宅の離れへと向かう。
元々倉庫として建てられたらしいが、別に隙間風が吹く訳でもないし、掃除はしたのでベッドで寝る分には問題ない。
ベッドも、いわゆる藁ベッドであり、シーツを乗せる事でどうにかベッドになっている。
シーツは毎日洗濯する必要はあるが、水汲みやら、洗顔もあるので川にいくから手間は同じようなものだ。
ただまあ、冬場を考えると怖いのではあるが。

食事を済ませた後は寝るだけなのだが、俺は少し外を散歩する事にした。
村の外に出るつもりはなかった、流石に街道沿いや畑の周辺には出ないがモンスターがいる可能性もある。
数年に一度モンスターよけの結界を張っているらしいが、絶対ではないそうだ。
それはともかく、もう日が暮れているため、見れるものはあまりない。
日本と違い月明かりがなければ何も見えなくなるほど暗い。
街灯なんてあるはずもなく、だからこそ外を歩く者もいない。
俺はステータスウィンドウがあるのでそれほど警戒しなくてもいいとはいえ、やはり怖い気もする。
だが、その日は少し一人で考え事をしたかったのだ。

「この世界が王国戦旗の世界である可能性か……」

ポツリと口に出して言うと実感がある。
実際、ステータス表こそ王国戦旗のものだが、
ランダム生成されるマップやシナリオまでは予測できるものじゃない。
あのゲームは国名すらランダムなのでむちゃくちゃな事が多い。
それにシナリオがあるとすれば清四郎を主人公にしている可能性が高いだろう。
今頃勇者として迎えられているかもな……。
いやいや、いくらなんでもそれはないか。

ただ、例えここが王国戦旗の世界だとしても、この世界で生きている限りゲームの世界なんて事はない。
実際、俺たちはこの世界の食べ物を食べ、この世界の人たちと話をしている。
なにより、モブと違って村人は、迷いもすれば怒りもする感情のある人だ。
それに、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚全てがリアルに感じられる。
これらが全てゲームだとすれば世界中のスパコンを用意してもできないだろう。
だが同時に、全てに王国戦旗のステータスが振られている。
俺は手近にあった雑草を引き抜く、だが生命力は0になっていない。
根をバラバラにしたとき、ようやく0の値が出た。
こういった事から、王国戦旗のやり方とは違う事、しかし、適用されたパラメーターは正しい事が分かる。

「まあ、今考えても答えが出るわけじゃないんだが……」

そうしてまた散歩を続ける。
考えごとが多くつい街道沿いをかなり進んでしまった。
そろそろ引き返すかと踵を返そうとした時、視界の端にアイコンが点灯した。
1km以内に人型の生物か動物か魔物がいる証。
取り敢えず検索範囲はこれ以上になっていると多すぎて何が何やら判らなくなるためこうしている。
そして、1km先にあるのは東の森、確か妖精族の国のある森だったはず。
もしかしてあのエルフがまた射殺そうと追ってきたんじゃないかと俺は気が気じゃなかった。
早速ウィンドウを開いてみる。


+++++
名前:アルテナー・ヴィスラ・ネーテファスト
種族:エルフ
職業:???
強者度:4
生命力:18/18
精神力:26/26
筋力:10
防御力:8
器用度:14
素早さ:18
魔力:??
抵抗力:18
耐久性:6
<<術・技>>
精霊魔法:熟練度:2
????
<<装備>>
森のドレス
??指輪
<<物品>>
ハンカチ
++++++

それほど無茶な強さではないようだ、それに武装はしていないようにも見える。
しかし、レベルも俺より上だし(俺より上しかいないとも言う)魔力が見えないのが気になる。
精霊魔法を使うのは間違いない、警戒しておかないとやばいな。
そう考えていると、いつの間にか視界からアイコンが消えていた。
まずい!?
こんなに素早いのか!
俺はキョロキョロと目をさ迷わす。
すると俺の服の袖をくいくいっと引っ張る感覚がした。
俺は慌てて目を斜め下に向ける。

「レディがいるのにまるで見えないように振舞うのは失礼なのです」
「えっ?」
「むぅー! 貴方はとても失礼な人なのです!!」

目の前で怒りの視線を向けているのは、10歳前後にしか見えない。
しかし闇の中でも尚光輝く金色の髪の少女だった。
その割には俺の視界から見事にステルスするあたり侮れない。

「その目は、ちっちゃくて見えなかったよ。
 路傍の石以下じゃねぇか、こりゃ話す価値もないなって目です!」
「そこまで思ってない!?」
「ちょっとは思ってたんですね!?」

ちっちゃいエルフの子は怒っているのは分かるのだが、
頬を膨らましながら顔を赤くする様は可愛いとしか言えない。
服装から察するに別に前のエルフのように戦いをするタイプには見えないが……。
ともあれ、毒気を抜かれた俺は頭をかきながら。

「いやーまー、ちっちゃいなってくらいは……」
「くっ、ひよこボーロのごとく小さいからって、食べないでください!」
「いや食べないから!! っていうかひよこボーロ?」
「アルテのおやつが何だったか分かるなんて!? さてはストーカー!?」
「全部自分で言ってるだろ!!」

金髪エルフ少女は、俺のツッコミを聞くと怒り顔からいつの間にか笑い顔に変化していた。
ニヤっというかニタァっというか、まるっきり別人っぽい顔つきだ。
いや、信じたくはないしかし……。

「おにーさんグッっジョブです♪」

一通り話して疲れた頃、エルフの少女は親指を突き出し俺にドヤ顔をしてみせた。
もしかして……いや、間違いなくからかわれてたのか俺!?
くそう、小さいからって侮った……。

「森にはツッコミの人が少なくて。ボケてもボケ倒しで寂しかったんですよ。
 やっぱりツッコミは愛ですね!」
「いや愛も何も、君とは初対面なんだがね」
「そう! そのツーといえばカーの打てば響く感じが欲しかったんです!」
「えーっと」
「あっ、アルテの事はアルテって呼んでください。おにーさんのお名前は?」
「渡辺達也(わたなべたつや)」
「ワタナベ? 変わった名前ですね?」
「いや、名前は達也の方ね。渡辺は苗字」
「ふむふむ、変わってますね。まさにツッコミに相応しい味のある名前です」
「えー」
「アルテはじゃあ旦那様って呼びますね♪」
「さっきのと関係ないだろ!」
「うーんそれじゃー、マスター?」
「なぜに疑問系!? というか、別に雇用した覚えはないから! 後飲み屋の親父になった覚えもない!」
「恐ろしいツッコミの冴えなのです。
 これはたつにーさんと呼びするしかないのです」

なんというか、違う。
こーエルフとの接触で考えていた俺のイメージと全然違う。
というか、前のエルフが本来のそれなら明らかに今日のエルフは危険球だ。
安全かもしれんが、幼女、漫才、ボケ担当。
うん、意味不明。
俺は踵を返して帰る事にした。

だが、現実はある意味甘くなかった。
いや、甘いのか? いやボケてるのか?

「どこまで付いてくるつもりだ?」
「やっと相方を見つけたというのにもう帰るのです?」
「俺はお前の相方じゃないし、君にも帰る家があるだろう?」
「アルテって呼んで欲しいのです」
「じゃあアルテ、家には帰らないのか?」
「アルテは実は家なき子なのです……」
「……」

うっ、嘘っぽい……。
可愛い子だし、神妙にしてるので本当のことを言っているようにも見えるが、
さっきまでの調子を考えるとこの子はかなりの食わせ者だ。
俺はそう簡単に騙されないぞ。

「だいたい、人間の国にエルフが入れるのか?」
「其の辺は大丈夫なのです!」
「へ?」

あっという間に見事な金髪はくすみ栗毛というか暗いので何色かイマイチわからなくなり、
耳がトンガったものから丸い人間の耳に変化した。
どうやら装備している指輪の力のようだが、差し詰め変化の指輪といったところか。

「肉体構造を少しいじる事が出来る指輪なのです。
 髪の毛、目の色、耳の形程度なら1日持つのです」

「いじる?」
「幻覚等ではないので、変化している間は維持する魔力は必要ないのです。
 今のアルテは本当にこの姿なのです」
「そんなことが出来るのか……」

俺は戦慄した、だってその指輪を持っていれば他人のフリをして近づいたり出来る。
戦闘的にはあまり意味は大きくないが、泥棒や殺人といった裏の意味では凄まじく便利な代物だ。

「何より、魔法を使っている事を察知されないので人に紛れ込みやすいのです。
 ただ、これはアルテの家の家宝なので妖精の国の住人でもそうそうは持っていないのです」
「なるほど、しかしそれだけの物を持ってる君は何者だ?」
「アルテなのですよー」
「いやそうでなくて……」

髪の色や瞳の色が茶色系になり、耳も丸くなったが変わらず愛嬌のある表情で俺に微笑むアルテ。
正直凄まじく胡散臭いのではあるが、何故か放り出す事が出来ず結局村までついてしまった。
まあ、悪意があるように感じられないだけマシだが……。
本当にこの子何者なんだろう?
このままメルカパに会わせてもいいものかどうか……。

「どうしたのです? 家に帰らないのです?」
「いや、そもそもお前を連れて行っていいものかどうかと」
「お前……既に旦那気取りです!?
 すると今晩はお帰りなさい、ご飯にします? お風呂にします? それともワ・タ・シ?なのです!?」
「てい!」
「あひゃん!?」


俺は思わず背後からチョップを喰らわせていた。
アナログの旧いTVのアンテナとの接触が悪い時にやっていたアレと同じように。
右斜め四十五度から綺麗に入ったその打撃は、少女の意識を狩り取るに十分だったらしい。
俺は気付けとばかり、もう一発入れるべきか考える。

「さて、もう一発行くか」
「ちょ!? 待つのです!? コメントなしの突っ込みはよろしくないのですよ!?」
「やっぱタヌキ寝入りじゃねーか」
「流石は我が合い方なのです! 気絶寝入りを見抜かれたのは初めてなのですよ!」
「合い方じゃないから」
「ここまで息がぴったりでは、本当に嫁入りするしか!?」
「お子様が何を言ってるんだか」
「ふっ、甘いのです」
「ッ!?」

さっきまでのリアクション芸かた立ち直った(?)アルテは、
俺にふっふっふと言う感じの人の悪い顔をしながら近づいてくる。
何か自信ありげなその顔は、しかし幼さと相まって微笑ましいというレベルにしか見えない。

「エルフの成長は人間の倍は時間がかかるのです! だから、たつにーさんとアルテは同年代なのです!」
「ナンダッテーッ!?」

創作物におけるロリババァは俺も知っている、エルフはそうなる事が多いのも。
しかし同時に、アルテは申し訳ないが同年代とは思えないハイテンションな娘だ。
全く持って信じられなかった。

「あ、その目はどう見ても年相応の性格してるじゃないか、へっサバ読みやがってって顔ですね!?」
「うん」
「少しも否定しないとは流石我が合い方なのです! ちょっとは遠慮しやがれなのです!」

怒ってるのか褒めてるのか分からないリアクションをして一歩下がるアルテ。
まあ確かに、こんなに芸人じみた10歳の乙女はそういないだろう。
エルフという幻想が本当にバラバラに崩れてしまった俺は半眼のままアルテに背を向ける。
村まで来てしまったのは仕方ない、家の中にはいる事も許そう。
ただし、ただで済むとは思うなよ。
メルカパは正真正銘のロリコンだぜ!

「なんだかたつにーさんが邪悪な顔なのです!?」
「まあな!」
「やっぱり否定しないのです!? 全くもって失礼なのです!!」

邪悪な顔になっていた俺は、借りている小屋の扉を開ける。
多分一人ならメルカパは寝ているだろうという思い込みもあった。
起こしてアルテを見せたらどう反応するのかちょっと楽しみでもあったが、
本格的にヤバそうなら止めないととも思ってはいた。
しかし、事態は予想のさらに斜め上を突っ走っていた……。

「メッ……メルカパ……?」
「おおう、ラブシーンを目撃なのです!?」
「あ……」
「キャッ!?」

小柄で人懐っこそうな少女がアホ毛を揺らして俺たちの横を走り抜けていった。
それは真っ赤になっていることからも、その状況をまざまざと俺に痛感させる。
訂正すればラブシーンというほどのものじゃなかった。
キスまではいっていない、しかし、2人きりで体を寄せ合って話していた事は事実だろう。
つまりはまーそういう事らしい。

「メルカパ……おめでとう」
「話が飛躍しすぎでござる!?」
「メルカパ君っていうんだー、おめでとう!」
「見知らぬ幼女からも祝福されたでござる!?」

一度呆然としたメルカパだったが俺たちの祝福にツッコミを入れている間に徐々に冷静になってきたらしい。
何か取り繕う理由でも探しているようだ、しかしまあ、今更何を言っても遅いんだが。
しかし、俺より先に彼女持ちになるとは、やるなメルカパ。
見た目は、いわゆるオタクそのものだし、横幅が広くお世辞にも格好いいとは言えない。
だが、コイツのコミュ力は俺よりもかなり上だと痛感させられる。

「ちょっと待ってくだされ、別に拙者とリディ殿は付き合っている訳では……。
 というか、そのょぅι゙ょを紹介するでござるよ!!」
「そっちに食いついたか!?」
「ふっ、よくぞ聞いてくれたのです!
 たつにーさんの運命の相方とはアルテの事なのです!」
「これは、ツーホーですね有難うございました」
「待てい!」

なんだろう、この疲れる展開は……。
いじろうと思っていたらいつの間にかいじられる側に回っていた。
立場逆転とか、罠とかそんなチャチなゲフンッ、ゲフン……。
いやいや、まあそれは置いておいてこのままでは立場が逆転しかねない。

「ちょっとした上方漫才芸人のスカウトだ気にするな」
「そんな指向性のフェチは初めて聞くのでござるよ」
「たつにーちゃんと組めばきっと世界を狙えるのです!!」
「……本気だったのでござるか!?」
「……マジらしい」

というか、本当のことなんて俺には分からないが彼女がその気なら俺は既に死んでいてもおかしくない。
魔法を使えるという事のアドバンテージはそれくらいの差だろうからだ。
その上、俺を陥れる意味がまるでない事も間違いない、つまり彼女は家出に俺を利用したのだろう。
漫才の方はそのついでか、本気なのか微妙なラインだが。
俺としては親御さんのためにも帰って欲しいと思うが、俺が送っていくとどうなるかは見えている。
この前のエルフのよーな警備隊に撃ち殺される可能性大だった。
だからまーこの際諦める方向で連れてきたというのが正しい。

「しかし、拙者達も小屋を借りている身、大丈夫でござろうか?」
「俺たちもこの子も流れ者って意味じゃ同じだろうさ」
「流れ者……というか、そのょぅι゙ょはどこから来たのでござる?」
「アルテは妖精の国からやってきたのですー」
「妖精って、あの射撃エルフのいた森でござるか!?」
「そうなのですよー」
「知ってるのかアルテ?」
「ええ、というかエルフの何割かは射撃が得意なのです。
 けどこの村の西にある森なら恐らく、リーフなのですよ」
「リーフね」

そういえばパラメーターの表示ではリフティとかいう名前になっていた。
略称ならおかしくはない、だがそれだけ親しいのだとするとそれなりに高い地位にいるエルフじゃないのか?
彼女が兵士だとしてアルテが兵士とは思えない、となれば親類かというと今の話し方からすると違うだろう。
それに呼び捨てである事も鑑みれば、守られる側である可能性が高い。
アルテの服からは想像できないが、ありうることとは考えておいたほうがいいな。
だが、今はエルフに見えないように擬態してるってのにいいのかね?

「ところで(*´Д`)ハァハァ、アルテたん! 拙者の事もよしにーたんと呼んで欲しいでござるよ!!」
「ダメなのです!!」
「そこをなんとか呼んで欲しいでござるよー」
「違うのです!! そんなやり方ではダメなのですよ!!」
「なんでござる?」
「何事も中途半端はダメなのです!! 同じやるなら!!
 (*´Д`)ハァハァ・・・(*´Д`)ハァハァ・・・たつにータソ!!
 せっしゃをせい(ピー)にしてま(ピー)をくぁwせdrftgyふじk!??!」

俺は右斜め四十五度チョップを首に叩き込みアルテを止める。
さっきよりいい感じに入ったので今度は本当に気絶したかね?
いやマジで、なんだこいつ?

「ちょ!? 達也氏!? ょぅι゙ょになんて事を!?」
「いや、いくらなんでもアレはないだろう……」
「確かにさすがの拙者もあれだけの豪の者とは思わなかったでござるが……」

メルカパは顔を真っ赤にしつつうつむいている。
実際、オタクはシャイボーイなのだ。
少女から見れば気色悪いと思われがちだが、
それはまあ不摂生と人付き合いの少なさによる見た目の問題であって、
本人が変な事を常に考えているわけではない。
例外もいるにはいるが、俺やメルカパは例外ではない事を明記しておこう。
とりあえず、アルテを俺の寝床に寝かせ、俺達はメルカパの藁布団に2人で寝た。 
いやまーなんというか、落っことされまくったので、
翌日俺は新たに藁と毛布やシーツをなんとか調達し3人寝られるように改造したのだった。




あとがき
メインヒロインその1という事になるでしょうかw
お笑い系を目指したいと思うのですがネタばかりもやっていられず困っていますw
時々上手い事入れていければいいなと考えておりますが、今後どうなる事やら?


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