銀河英雄伝説 十字の紋章


第六話 十字、士官学校卒業す。






宇宙暦773年の春、ファン・チューリンが亡くなったらしい。

これで、同盟屈指の730年マフィアはアルフレッド・ローザスを残すのみとなった。

俺も接触しようとはしたが、やはり偏屈な爺さんだったこともあり、まともに会う事もできなかった。

ローザスに関してはもう諦めている、何せ彼は既に現在に興味がないだろうからだ。


第一回イゼルローン攻略作戦はそもそも、イゼルローンの基礎知識がなく、悲惨な終わり方をした。

薔薇の蕾を通じてその手の情報をリークできないかバーリさんに相談した事はあるが、無理だった。

そもそも、現在の薔薇の蕾は直接帝国とのパイプを持っていない。

そして、俺がイゼルローンの情報を知っている事をバーリさん達に明かせないのが致命的だった。


そんな中アレクサンドル・ビュコック准将は順当に生き残ったようだ。

だが、英雄となったのはラザール・ロボス少将だ。

以前より頭角を現していた彼だが、今は一躍有名人だ。

敗戦の時こそ英雄が必要であるの言葉通り、同盟政府はロボスを祭り上げ中将に昇進させた。



個人的な事で言えば、アニメ会社は順調に成果を出している。

しかしやはり、日本と同じように社会現象になったりはしないようだ。

まあフルポリゴンなので安上がりだということもあり、利益率が高いのが救いか。

ポリゴンの製作者達は四苦八苦しているが、システムが大分整ってきたため初期投資の段階は終わった。


そして、実はこちらの方が社会現象なのだが。

地球教とブルースフィアのテロ合戦により、両方の宗教が危険宗教であるという認識が広まっている。

流石に頻度は多くないため、禁止になるほどではないようだが。

回帰教のほうは順当に信者を増やしているとか、相変わらず地球教の取り込みもしているらしい。

そして、十字教なんだが……。


順調に変人が集まっているようだった……。

いやま、大司教がアレだものな。

俺の漫画のファン等を中心としたある種のオタクの巣窟。

今までの、献身的な宗教観はそのままに。

オタクとして進化というか退化したようだった。

その代わり、信者数は500万人を突破。

同盟内地球教の半分近い信者数を獲得している。


まあ、同盟内地球教は本来敗戦と共に増えていくので今の段階ではそれほど多くないというのもあるが。

内部分裂による指導力の低下も効いているし、ブルースフィアの分裂によるテロ合戦も良い感じだ。

ドヴィリエ涙目である。

まあ、今の同盟内大司教が誰かは知らないが。


ともあれ、そういった外の色々な出来事とは別に。

俺はどうにか進級を果たし、二回生となることができた。

そして、ようやく戦略研究科らしい授業が中心になってくる。


現在の俺は全体で100位クラス、学科上位にはいるものの1000人ぐらいの中の40番台だ。

俺自身も頑張ったが、バグダッシュの情報のおかげであることは否定できない。

教師に対する対策、付け届けの必要性の有無等、そしてコネづくりの情報も。

バグダッシュ様様である。

もちろん、そのために50万ディナール(5500万円)近くつぎ込んでいるわけだが。

これが一億円になろうと二億円になろうと、金で解決できるなら徹底的に利用するつもりだ。

どうせ今の俺の資産は1億ディナール(110億円)を越えている。

いや、アニメはようやく軌道に乗ったところだが、漫画の売れ行きがすごい事になっているせいだ。

十字教のおかげで……。



「十字教がオタクの受け皿になるとは……」



ともあれ、士官学校の高等部と言っていいのかな。

今俺のいるこの士官学校は3年制であり、その後20倍の倍率を抜けて大学部に進む。

今いる高等部の5万人はいるだろう同級生のうち5千人しか抜けられないのだ。

20倍なのに5万人とはこれいかにだが、実際飛び込みもかなりの数になる。

一般のハイスクールからやって来るのだが、合格率は微妙な所。


ヤンはこの試験を高等部の教育なしで受かってるんだから凄まじい。

ともあれ、分かり切っている事ではあるが、俺の才能は全くないとまでは言わないが。

9割バグダッシュ情報のおかげなのは間違いない、対戦相手の癖すら把握できているのだ、それで負けたら恥である。

まあ実際それでも勝率は8割強といったところだが。


幸いシミュレーターは、特異な艦隊運動等を仕掛けてきた時の隙等も再現されるため、堅実なほうが勝ちやすい。

特に、電撃戦をかけてくる相手を除き、案外補給が決めてになる事が多い。

そのため、俺は補給線の維持には気を払っている。

そして、相手が仕掛けてきた時にカウンターで動き仕留めるのが必勝パターンだ。

こちらから、相手の補給線を叩くのは相手が突貫タイプの時に限る。

突貫を仕掛けてきたら鶴翼で受けつつ、小部隊を分けて補給線をつぶしている。


基本的に100戦して100勝できるような堅実さだが、難点はある。

タイミングの見切りがやたらうまい奴もいるのだ。

全体でもごく少数だが、こちらの艦隊運動の隙間を縫うような動きをする相手もいた。

そういう相手はとにかく、こちらの艦隊運動に先手を取るのだ。

こちらが旋回しはじめればその旋回運動の頂点に艦体が現れ。

こちらが対応して防御陣形や逆襲に出た場合は鶴翼で包囲し。

こちらが突破をかければ、その尻に食らいついてくる。

ようは、こちらの動きを先読みしているという事。


ヤンやラインハルト以外にもそういうのがいるという事に俺は戦慄した。

奴の名はライオネル・モートン。

士官学校を卒業していない事を悔やんでいた云々と描写があるが、高等部には来ていたらしい。

原作勢でもいぶし銀の一人だ。

アムリッツァ以後、ヤンの指揮下で何度も戦っている。

指揮能力は高く、ワーレン艦隊をしのぐ等、ヤン艦隊でない割にかなりの活躍を見せている。

ただ、ただミュラーの奇襲で撃破されているので、一流とまでは行かないようだ。


俺の将器はつまりモートン以下という事だろう。

飛びぬけてはいないがそこそこ、補正とかないわりにいい線行ってるとも言える。

だが、相手が相手だからな……いい参謀つけないとすぐ死にそう……。


しかし、そうだな……モートンとお近づきになるのは悪くないかも。

アンリ・ビュコック先輩はもう大学部に行ってしまってるし、そもそも出世で追い抜けるかは微妙だ。

少なくとも、彼が死ぬ戦場に出るまでには、戦場に影響力を持つ存在になっておきたいが。

モートンなら上手くすれば出世するだろう。

士官学校出ていないという事は下士官から少将まで出世したという事だからな。



「バグダッシュ、モートンの情報を知りたいんだが」

「おっ、また利用してくれるのか。細かく調べてるぜ。今回は1万ディナールだ」

「買った」

「まいどあり! ほんと。俺もう一生くいっぱぐれないくらい稼いでるな。端末にデータ送っておいたぞ」

「ありがとな」



こうしてまたバグダッシュ情報を参考にモートンの事を調べた。

奴がどうして士官学校の大学部に行けなかったのか。

それを調べておいて損はない。


結果として出てきたのは彼の家庭環境だ。

ライオネル・モートンには病状の安定しない母がいる。

彼女の見舞いを欠かさない彼は、士官学校を途中でやめざるを得なくなる可能性が高い。

既にその兆候はあり、どうにも休みがちになっているようだ。



「ふむ、彼はそういう……」

「また、何かする気か?」

「まーな、現状。優秀な軍人になりそうなやつなのは事実だし」

「そりゃな。お前を負かすくらいだしな」

「俺?」

「お前、今10年に一人の逸材だって言われてるぜ」

「ぶっ」



それはマルコム・ワイドボーンの冠言葉じゃねーか。

まあ、俺が彼と同じくらいやれるならそれもうれしいが。

実際は恐らく勝率を見ての曇った目だろう。

ワイドボーンはなんだかんだで、この時代の常識的な艦隊運動に関しては天才的だった。

対して俺は、原作知識とバグダッシュ情報による対戦相手の知識を使ってかなり下駄をはいている。

その上で全勝出来てないのだ、とてもワイドボーンと互角にやれるとは思えない。



「まあ、俺の天才っぷりは人材発掘だからな。ほんとバグダッシュのおかげだよ」

「全く人を使うのが上手い奴だな。知ってるぜ。外にも内にもお前のシンパがかなりいるんだろ?」

「シンパかどうかは知らないが。味方は多いに越したことないだろ?」

「計画的に味方を作ろうってんだからな。怖い奴だよお前は」



確かに、今や俺は自分の集団のリーダー的存在となっている。

群れたから強いというものじゃないが、リーダーであることによる色々な特典はあった。


先ず教師が一目置いてくれる、それ自体はさほど大きな特典ではないが。

それにより生徒間における諍いに巻き込まれなくなるという点が大きい。

また、上手くいけば今後、俺が艦隊を手に入れたときに部下を選べる可能性が出て来る。

もっとも、それほど優秀なのはまだ少ないが。



「じゃあ、俺は行ってくるわ」

「おう! また面白い結果を期待してるぜ!」



ともあれ、今直接会っても仕方ない。

やるなら、先ずは母親の側からだろう。

そちらはバーリさんに任せておくべきだな。

連絡だけ入れて、俺は次の授業の準備をする。



「流石にトップまでは無理だが、合格圏内じゃないと不味いからな」

「まっ、俺も被らない程度に頑張るさ」



バグダッシュに別れを告げ、その日は授業に専念した。

2週間ほど後、外出日にバーリさんから告げられた内容は。

モートンの母親の病気は、過労と免疫力の低下からくる合併症のようだった。

はっきり言えば、モートンの家は貧乏だったのだ。

彼の母親の病気そのものは治るものだが、こういう状態が続くとするならモートンは気が気じゃないだろう。

結果として、勉強をする時間を無くすという事かもしれない。



「という事は、つまり」

「ええ、可能であると思われます」



元々下士官上がりで少将まで行けるような高い能力を持っているモートンだ。

枷が無ければもっと上に行けるだろう、しかし……。

問題はどうやって金を渡すかだな。

まさか、行き成り金を渡して解決ってわけにもいくまい。

足長おじさんでも気取るか?

いや、そうだな……。



「どうせなら、恩を売りつけておくか」

「流石若様、悪辣ですね」

「そりゃな」



それもこれも、同盟が勝つため。

そもそも、同盟が勝たないと俺みたいなのはやっていけない。

結局そこに行きつく。

もっとも、この先憂国騎士団が躍進するような国になれば民主政治とは言えなくなる。

出来れば、その抑えとして十字教が働けばいいのだが。


ともあれ、先ずはモートンと接触しない事にははじまらない。

モートンは俺より学年が一つ上なので、滅多に接触出来ないのが難点だ。

次の学年合同授業までは、2ヶ月くらいある。

先に母親の方にアプローチすべきか。

しかし、行き成り知っているのもおかしな話。

警戒されない接触法はないものか。



「やっぱ使うならアレかな……」



医療関連に直接影響力があるわけじゃないが。

間接的には孤児院や介護の関係で以外に強い団体がいる。

ただ……俺が十字教関係者だと知られたくはないんだよな。

いやもうダメかもしれんが。



「しゃーないか」



直接的に恩を売るより、ライオネル・モートンという才能に翼を与える事にする。

恐らく、彼が士官学校を出ればその才能から原作開始時に中将にはなれるだろう。

生え抜きの中将が一人増えればそれだけ同盟の層が厚くなる。

やらない手はなかった。


神託じゃないが、彼女に分かるようにお告げをしておく。

ライオネルの母親だけではなく、母子家庭や父子家庭にも施しができるように。

そして、ついでに3000万ディナール(33億円)ほど寄付しておいてやった。

金銭感覚おかしくなってるのは自覚しているが、この程度では一時しのぎなのも事実だ。

とはいえ、この金実質彼女らが漫画とかグッズとかアニメを買った金から出てるんだがね。

いやマジで。



「そのうちオタクの祭典も再現できるんじゃねーだろな……」



まあ、流石に10年やそこらで再現はされないと思うが……。

既に予備軍が十字教に集まってきているのが気になる所だ。

別にオタクの神になりたいわけじゃないんだが……。


ともあれ、勢いそのものはある十字教のおかげで俺のやりたいことが通り安くなってるのはありがたい。

地球教のイメージ悪化と合わせてフェザーンにも多少は打撃を与えているだろう。

とはいえ、今だ同盟国債や企業買収によるフェザーンの権力は大きい。

面と向かって影響力を行使はしていないものの。

勝率に影響を与えているのは間違いないだろう。

もっとも、イゼルローン要塞のおかげでこちらは勝ってもイゼルローンまでしか行けなくなってしまったが。



そういった情報を集めている間にも時間は立ち。

アニメの一般への普及も進み始めた。

アニメ映画等もそれなりの人気を博しているようで、数年はこれで儲けられるはず。

半年もするころには、TVの枠を固定でとれるようになってきた。

それも、ハイネセンのだ。

正直、士官学校での成績維持とアニメの普及でほぼいっぱいいっぱいだった俺はその間他の事はあまりしていない。

ただ、ライオネル・モートンの家庭事情はマシになったらしく、彼の成績はまた上がり始めている。

だが、俺にとっては結構厳しい状況でもあった。

俺とモートンの戦術シミュレーション対戦数は4回、うち勝利は1回のみだ。

俺の提督としての性能はまだまだという事だろう。

彼と互角にやりあえてモブ提督をようやく卒業できるということだからな。


今の俺では帝国の綺羅星の皆さんの誰かに当たったらすぐさま爆発四散するだろう。

いい参謀ほしいよう……。

いっ、いずれラップを参謀にしてやる!

とはいえ、今7歳のラップに唾つけても仕方ないが。


必死こいて艦隊運動やら、相手の先読みを勉強しつつ謀略も考える今日この頃。

とかやっているうちに士官学校高等部の2年目も終わりが近づいてきた。



「今度こそ、圧倒的に勝利して見せる!」

「ふっ、熱い男だなジュージ」



いつの間にかライオネル・モートンは俺をライバルとして認めてくれるようになった。

とはいえ、勝率が全然追いついてないので、寂しい限りではあったが。

5戦目も結局負けた。1度だけ勝ったのも補給潰しが上手く当たっただけに過ぎない。

ヤンの鮮やかさはないため、俺は1割だけ遊軍として、相手後方に回していたのだ。

次からは対処されてしまい、使いづらくなった。


結局、対応スピードの差が決定的な差になっている。

かといって、急ぐあまり検討を怠った策を使えば自滅しかねない。

ここがモブと脇役の境目なんだろう。


こちらが艦隊を分ける行動をしようとした場合、艦隊を分けた瞬間、その片側に全力攻撃をされる。

つまり、こちらの動きを先読みしてこちらを誘導しているのだろう。

そう、つまり先読みと誘導の能力が高い者だけが生き残れるという事だ。



「自信無くすな……」



実際、かなり色々な戦術の練り方、そして判断スピードの上昇を狙っているんだが。

なかなか、人間そうそうスピードアップ等できないもので、勝利はおぼつかない。

パーッと判断処理能力が上がる方法はないんだろうか?



「誰か師匠になる人でもいないものか?」



ない事もないのかもしれない。

この艦隊戦は、兆候の先読みというより、相手の動きの先読み。

つまりは、心理学の領域だ。

相手の癖を素早く読み解き、艦隊運動に応用する。

それこそが、恐らくは一線級になるために必要な事だろう。


10年に一人の天才マルコム・ワイドボーンが一線級に及ばなかったのはそこだ。

ワイドボーンは相手のどんなパターンに対しても有利になる計算された動きで戦った。

だが、同時に艦隊を分けずに塊で対処しようとした。

ヤンに負けた直接の原因は補給の寸断だが、ヤンはワイドボーンがそうすると読んで対処したのだ。

つまり、心理学によって相手の動きを特定したという事。

それ以外にもタイミングの取り方やいくつかの要因はあるが、最低限こなす必要のある事だ。



「心理学も勉強するしかないか」



そうして、俺は心理学の勉強を始める事になった。

もちろん、他にも色々な事をやりながらなので、休日に心理学の講師を雇って教えてもらう。

やはり金持ちはそういう意味では得だ。

時間の短縮になる。

だがもちろん、週一程度なのだから一年やそこらで覚えきれるものでもなかったが。


その間にもアニメ会社を大きくしたり、関連グッズを売り出したり。

アニメ映画の企画のチェックをしたりと色々やりながら十字教も時折見ていた。

実際、十字教は勝って気軌道に乗っているので気楽だが。

その分、ブルースフィアと地球教の状況はなるべく把握に努めていた。

幸い、回帰教が穏健派をやってくれているので多少マシかもしれない。


2年から3年となり、どうやらモートンが士官学校の大学部に無事受かったので安心した。

同時にアンリ・ビュコック先輩が特殊着任で一年早く卒業したので家に押しかけてお祝いをしつつも。

不味い流れを感じてもいた。

彼は間違いなく優秀だ。

少なくとも、モートンより人間的な魅力は上だろう、艦隊戦の能力はモートンほどではないようだったが。

それこそしっかりした参謀をつければいい。

彼は参謀の考えを頭ごなしに否定するタイプじゃない。

だが、問題はそこまで出世する前に死ぬ可能性が高い事。

もっと言えば、長男のアンドレ・ビュコック大尉はいつ死んでもおかしくない。


両者の死亡がカウントダウンに入ったという事だ。

どこで死ぬのか、原作では語られていない以上、ずっと気を張る必要が出て来る。

アンドレ・ビュコック大尉も優秀であるという話はアンリ先輩から聞いている。

出来る限り両方助けたいものだ。


だが、卒業して影響力のある階級になるまで手出しが難しいのも事実。

彼らを階級で追い抜くのが大前提になるからな……。

追いつけるかどうかすらまだ判然とはしないのに。


上手くいかせるために、士官学校の高等部及び大学部の教員はあらかた把握し、階級も知っている。

そして、高位階級にいる人たちにはできうる限りアピールしておいた。

いざという時、俺や俺の知り合いを優遇してもらうために。

それは、階級の事もあるが場合によっては部下になる事で生き残れる確率が上がるかもしれない。


そうした涙ぐましい努力をしているうちに、その年はくれ。

とうとう士官学校高等部を卒業する事となる。

小賢しく動き回り、味方を増やして来た俺だが、これがこの先どの程度生かされるのかわからない。

だが、無駄ではないとは思っている。

走り回った分だけ俺の生き残る確率や同盟の勝率に貢献していると。


そうして、大学部の方に入学する事に成功した俺だったが、意外な事が起こった。

コランタン、フロリモン、ロズリーヌら3人の護衛達の事だ。

結局大学部に進級出来たのはフロリモンのみで他の二人は合格できなかった。

彼らは薔薇の蕾として教育されたいわば諜報と護衛のエリート、士官学校に受かるくらい簡単だと思っていた。

しかし、20倍はなかなか狭き門であったようだ。



「コランタンとロズリーヌはリディアーヌ・クレマンソー大司教の護衛を頼む」

「了解しました」

「拝命します」



俺はそうしてフロリモンを引き連れ、士官学校の大学部に進む。

だんだんと俺の周りの人間も増えていたが、振るいに掛けられて半分以上が脱落している。

バグダッシュもきちんと上がってきてくれたのは助かる。

バグダッシュの内部情報は頼りになるからな。



「よう、今年もよろしくな」

「ああ。よろしく頼む」



大学部では基本的な教育はあまりしない。

高等部に行かなかった人も一定数いるためただ士官学校というとこちらの事を指すのだが。

ここには入れた事で既に左官クラスは約束されている。

士官学校をれば少尉、1年ないし2年で中尉、その後3年で大尉、10年経つ頃には少佐だ。

生き残るだけでそこまではいける。

それ以上を望むなら、何らかの手柄が必要になってくるわけだが。


バグダッシュには大学内の情報集めを依頼しつつ、適当に話をする。

シドニー・シトレ元大将が来年から校長として赴任してくる話がやはり気になった。

降格人事だよなー、元がつくのは士官学校の校長に階級はないからだそうだ。


しかし、俺も色々やりながらではあるが少しは成長しているはず。

原作が始まる前には一線級になるか、それ以上の事ができる参謀をつけておきたい。

士官学校で捕まえられればいいが……。







あとがき


あけましておめでとうございます!(書いてる時点ではまだ12月)

今回はほとんど箇条書きみたいな流れになってしまっております。

起伏がない話で申し訳ないのですが、士官学校を飛ばすのもどうかと思い。

出来るだけ早回しで終わらせていこうとは思っています。

次回は着任まで行きたいですね。


それと、お話のストックをほぼ使い切ったという事もあり。

この先ストックが貯まるまで2週間に一回ペースくらいに落とす予定です。

ある程度貯まったらまた週一でやりたいのですが。

何分遅筆なので申し訳ない。

でも止まらずやっていきたいと思います。

今後ともよろしくお願いしますね!



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