銀河英雄伝説 十字の紋章


第十一話 十字、冷や汗をかく。






今は宇宙暦778年の半ばを過ぎた頃、俺は去年からフェザーンに駐在武官として来ている。

ここは情報が早い、笑える話だがインターネット等は光の速度だから惑星外の情報は入らない。

超空間通信もあるものの、高いため一般向けではない。

1分で3000ディナール(約33万円)とかいう一部の金持ち向けだ。

俺の全資産を持ってしても10日も超空間通信を使えば無くなる。


ともあれ、先ずは戦争の状況だが、前回の任務にあったティアマト星域の会戦において勝利。

とはいえ痛み分けに近く、イゼルローンまで進軍はせずに帰っている。

次の会戦は来年になるとの見解がフェザーンでは出ていた。

イゼルローンに攻め込めば同盟は大抵負けるので、帳尻が合うとフェザーンは見ているのだろう。


同盟の状況は相変わらずだ、徐々に景気が悪化してきている。

まだ軍に圧迫されてプロがいないとかそこまでは来ていないが。

こういった社会事情はこれといった特効薬がないのが辛い所でもある。

戦争をやめればいいというが、流石に帝国に攻め込むなとも言えない。

だが、フェザーンをどうにか押さえれば戦争の回数を減らす事は可能だろう。


何故、同盟と帝国がアホみたいに百年以上戦争しているのか考えてみればわかる。

そのほうが利益になるシステムがあるからだ。

少なくとも国を動かす人間にとって。

それをしているのがフェザーンなのだ。

そうでなければ、誰かが停戦ないし休戦協定でも結んでいただろう。

人的被害が馬鹿にならない上に経済も圧迫している。

互いにそれほど腹に据えかねる事情があるわけでもない。

同盟の初代にとっては確かに憎むべき敵だが、今はもう血筋のものを見つけるのも難しい有様だ。


戦争で肥え太る者達がいる以上、この戦争は終わらないだろう。

ラインハルトが皇帝になるか現政権を叩き壊さない限り。

もちろん、ラインハルト皇帝を生み出すのは不利益だから徹底的に妨害するつもりでいるが。


宗教の状況はやはり、同盟内において隆盛している各宗教もフェザーンにおいては存在しているのが奇跡なレベルだ。

むしろある事にびっくりした、たかだか6年程でよくぞここまでと思わなくもない。

ともあれ、フェザーンにおいては勢力争いに入れるようなレベルではない。

フェザーンにおいてはほぼ地球教徒か無神論者かのどちらかしかいない。

表立ってはほとんどのものが地球教徒であることになっている。

理由は聞くまでもない、ここが地球教の第二聖地とされているからだ。


地球はそもそも人が住める状況とは言えないものらしい、もとに戻すために大掛かりなテラフォーミングが必要になるだろう。

そんな中でも地球を宇宙の盟主に戻したい輩が地球教の幹部達と言える。

まあ、俺も問題がないのならそれでもいいのだが、問題が山積している以上手を組む目はない。

一つ、同盟、帝国を食い物にしていること。

一つ、サイオキシン麻薬がメインの資金源であること。

一つ、テロリスト集団であること。

そういった痛い要素をどうにかしない限り地球教を支持することなど出来はしない。


そうそう、俺がここ一年近くやってきた事だが。

フェザーンでの顔つなぎといった要素が強い。

それと、フェザーンの高等弁務官、つまり同盟の外交官にあたる人物だが。

ヘンスローではなかった。

いや、当然なんだが。

原作開始より18年は前だしな今、さらに言えばユリアンがここに来るのはその数年後だ。

で、現在の弁務官は誰かというと……。



「やあ、ジュージ暇はあるかい?」

「弁務官事務所にいる限りはね」

「はっはっは、それだと週の半分以上が暇って事だね!」



そう、我らがヨブ・トリューニヒト閣下である。

というのは嘘で、弁務官補佐だそうだ、弁務官はヴィクトランという男で少し髭面がきつい。


知らなかったがトリューニヒトは現在24歳俺の3つ年上だ。

大学を出て政治を志した彼は国防省に合格、同盟には外務省がないため国防省の中にある外交部に勤めているらしい。

いやはや、気さくな上に話し上手な彼は話しているとこいつ悪い人じゃないんじゃないか?

と思わせてくれる、いや悪い人なのかどうかは微妙なラインなんだが自己保身の塊みたいな人というだけで。

ただまあ、彼もまだ24歳、今はまだ政治に希望を持っているような様子も見かける。


因みに、弁務官補佐殿が来たのはほんの一週間ほど前だ。

それまでは別の人がしていた、名前も思い出せない、というか一年で数回しか会ったことがない。

そんな前の人の印象が一瞬で吹っ飛んだのはまあ、彼の性格を考えればよく分かるはず。



「で、閣下は今度何をしに来たのかな?」

「閣下はよしてくれよ、漫画王様。ヨブで良いって言ったろ?」

「一週間でそれは馴れ馴れし過ぎる気がするが」



そう、この男は俺が漫画王と呼ばれている事を知って近づいてきたのだ。

鼻がいいのは昔からってことだな。

それからは、腹の探り合いをしている。

それ以外の情報が漏れてないか、トリューニヒトの反応から探る事になる。

向こうもこちらが探りを入れてきているのは知っているだろう。

その上であの態度、流石としか言いようがない。



「直ぐにとは言わないよ、でもその間私も漫画王と呼ぶからね?」

「あんまり広めないで欲しいものだが」

「所でジュージ、君に見てもらいたいものがあってね?」

「ん?」

「これなんだが」



既にもとに戻ってるが蒸し返すのも面倒なので、話に乗る事にする。

これ、と言われて差し出されたのは最近実写映画化して論議を呼んでいるワンパース。

もちろん海賊王のパチもんである。

だが、はっきり言おうこの世界実写は俺達の世界の比じゃない。

セットも3D技術もその気になれば21世紀を超える技術力で補う事が出来る。

部屋の中に海を再現する事だって、金さえかければ可能なのだ。

後は役者次第である。



「ネタバレして欲しいんですか?」

「そんな訳ないだろ! だってチケットももう取ってあるしね」

「チケット、ああそう言えば。ここでもするんですね」

「自分の作品だろ、ちょっとは気にしろよ」

「あくまで原案だけですので、作品は基本的に漫画家さんに任せてるんですよ」



そう、元となる大筋のシナリオと何話かの話を俺が作り、後は漫画家任せというのが今のやり方である。

カット割り等は俺が指導した編集さん任せだし、漫画家も厳選させている。

原作が凄まじく売れた何本かはそうして作ってもらっている。

それ以外は、大筋のシナリオだけ渡してお願いする場合もある。

俺自身の作品という意識が薄いのは仕方ない話でもあるのだ。



「なら余計に見てみるべきだよ。この主役の役者、知り合いでね」

「そうなんですか。許可が出たなら行ってもいいですが」

「大丈夫、明日なら既に許可をもらってあるから」

「流石ですね閣下」



こういう仕込みの旨さは俺より上かもしれない。

だからこそ、用心だけは怠らないようにしよう。

翌日、俺はオーダーメイドの服を着て出かける事にした。



「お待たせ、彼女達はキャシーとダーナ、一緒に行ってもいいかね?」

「は〜い♪」

「貴方がジュージ? 可愛いわね♪」



オープンカーを走らせてきたのはトリューニヒト閣下。

流石というしか無い、後部座席に金髪美女2人を連れてこれだけ似合う男はそういないだろう。

俺を助手席に誘っているが、なんとも居心地悪そうな……しかも、行くのがパチものの実写だからな……。



「すまないね、丁度彼女らとも約束しててさ」

「いや良いさ、それでどっちが閣下の彼女だい?」

「おいおい、これでもワイフがいる身だ。勘弁してくれよ」

「え〜そうだったの?」

「狙ってたのに〜」

「はっはっは、まあ兎に角、一度映画を見てくれよ。フェザーン初公開だから関係者も来るしね」

「そうなの、すご〜い」

「楽しみ!」



試写会なのか、そういうのに飛び入りを参加させられるって事は相応に顔が効くという事だ。

この頃から既にフェザーンに顔が効いたという事は地球教とも?

わからないが、あの2人は何故連れてきたのだろう?

それを考えて話題を振ったつもりだが、どうやらそういう意味ではない様子。



「それじゃ、会場へ行こうか」

「ああ」

「ご〜ご〜♪」

「どんなのかな〜」



まー一応原作は知っているが、あくまでパチもの。

俺の知る事を伝えたからと、漫画家の人の考えと同じとは限らない。

オリジナリティが挟まることで全く別のものになる事もよくあった。

特に酷かったのがシルバースピリッツ。

あれである○魂、そう、金になるとヤバイがネタだったあれである。

しかし、よくよく考えると江戸時代を知る人がいない。

そしてステレオタイプな異星人というものが理解できない。

そうなると、幾ら元ネタを作ってもとても見れたレベルにはならなかった。

だがファンキーさが受けた様で、もう俺の手を離れ電波系として結構売れている。



「ここが会場だよ」

「ここが……」



確かに大型の映画劇場のようだが、どうもただの劇場ではない。

多目的に使える大型会場と言った感じだ、それも社交を兼ねるようなドレスコードがありそうな場所。

よく見れば、派手ではあるがトリューニヒトはスーツ仕立てだし、後ろの2人もドレスと言えなくもない。

ぱっと見お水系な奴らにしか見えないが、コードは通りそうだった。

対して俺は同盟軍士官服はまずいかと思い、私服である。

一応背広に見えなくもないが、ドレスコードを通るかどうかは微妙なところだ。



「予約は入れてあるんだ。堂々としたまえ」

「流石閣下、頭が下がりますよ」

「ヨブっち、閣下って呼ばれてるんだ〜」

「何おもしろ〜い♪」



彼が言うのだから、ドレスコードがないかあっても通るんだろう。

この顔の広さ、元々彼は上流階級の出身か。

案外元々フェザーンにいたのかもしれない。

どちらにしろ、詮索するのは後だ、怪しまれる様な行動をするくらいならいっそ楽しんでしまうのが吉だろう。



「しかし、実写版のワンパースか。どうなってるやら」

「きっと満足は出来ないだろうね。君はクリエイターだから」

「まあ、どこまでクリエイターなのやら分からないですがね」

「ふっ」



まー、銀河英雄伝説の三悪人の中では一番マシと言えなくもないのが彼だ。

状況が悪い時は保身に身が入りすぎて政治らしい事が出来なくなってしまっただけとも取れる。

彼は言わば神輿であって、彼自身に能力を期待してはいけない。

ただし、彼を上手く乗せれば同盟をまともにする事が出来る可能性もある。

そのためには、彼を上手く使いこなす必要が出てくるが、それが出来る自信は全く無い。

そう、そこがトリューニヒト閣下の恐ろしい所だ。


絶対にいけないのは彼に夢を見る事だろう、彼は夢を見せる事は天才的だが、実現する力はない。

それ故、力の象徴として憂国騎士団なんてーのを作ったとも言える。

彼が最も欲していたのは自分の力だったんだろう。

一度はヤンを取り込もうとして拒絶されるや徹底的に排除の方向に触れたのもそのせい。


逆に考えるなら、今はそれが俺なのかもしれない。

だとすれば俺の対応はなかなか難しい選択となるな……。



「お知り合いの役者って主役の人ですか?」

「いや、あの剣を使ってるほうさ」

「あー、彼ですか。なるほど、いい動きしてますね」

「ああ、なんでも彼、本当に剣術とか言うのを長い間伝えてきた家系らしいよ」

「凄いですね、それは」



まさか三刀流なんてアホな真似で格好をつけられる役者が本当にいるとは。

一応チェックしておこう、関係者っぽく行けば仲良くなれるかも。

とはいえ、彼の関係者というのは引っかかるが。



「凄いねー、海ってこんな色いろあるの?」

「嘘だ〜」

「案外あるのかも知れないよ、色んな星があるからねぇ」

「まあ、別に現実のお話じゃないですから。

 ただまあ宇宙に行く時代だからあまり馴染みがないと思っていたんですが案外受けるもんですね」

「そりゃ、海原を見たことがある人間なら誰だって船を浮かべてどこまでも行ってみたいと思うものさ」



確かに、海のある星は多い、テラフォーミング前から星にあった氷が熱せられて海になるからだ。

重力も地球に近い様に調整される、これもまた重力を調整する装置があるのだ。

駆逐艦にさえ積んでいるんだからそのサイズは自在である。

イゼルローンのような要塞だって、重力を調整していなければ中心に向けて落ちる事になるだろう。

あんな迷路のような構造はちょっとありえない。

ともあれ、海を知る人間はそれなりに多いという事だ。



「君の手はもうここまで届いているのだね」

「……なるほど、そういう意味ですか」

「ああ」



流石はトリューニヒト閣下、ここで実写とはいえこれが公開される意味を理解しているようだ。

だからこそ、俺を誘ったんだろう。

そう、ここには既に十字教の手が及んでいる。

とはいえそりゃ地球教に対して正面切ってどうこうというのではないが。

ただ、新興宗教も含め多数の同盟の宗教達が手を組んでフェザーンシティの一部を借り上げたのだ。

結果として宗教の緩衝地帯というような場所となっている。

この劇場そのものは知らないが、この区画がそうであることは知っている。

そして、その事をトリューニヒトが知っているという事はつまり俺が十字教の実質的指導者だと思っているという事だ。



「それで、閣下は一体俺に何を求めているんです?」

「君の力を私に貸してほしい」

「ふむ……」



いつの間にか、トリューニヒトの連れていた女性達がいなくなっていた。

何か合図があったようだから、恐らくは元々本格的な話には参加させないつもりだったんだろう。

彼がほしいものは想像がつく。



「票の取りまとめでもしろと?」

「身も蓋もないね、だがまあその通りだ」

「地球教との繋がりはどうするんです?」

「……流石だね、よく調べている。私のようなペーペーの事を知っているとは」



俺は確かに彼の事を薔薇の蕾を通じて調べていた。

しかし、確かに今の彼は議員でもない、単なる有能かもしれないがただの国防省の役人にすぎない。

俺がマークしていたのを不思議に思っても仕方ないだろう。



「同盟の議員とフェザーンの資産家の間に生まれた閣下の事を調べるのはおかしいですか?」

「……それは即ち、仮想敵としてかね?」

「有り体に言えば」

「そこまで調べられていたか。

 とはいえ、議員と言っても地方議員にすぎないし、資産家と言っても君とは比べるべくもない小金持ちだ」



そう、ヨブ・トリューニヒトの両親の話なんて聞いた人もいないだろう。

彼が元々エリートだったのか、それとも全くの凡庸な家の出か。

だが彼を調べた結果、実家は名士ではあるものの同盟そのものに関わる程のものではなかった。

中途半端に思えたが、今は分からなくもない。

彼は彼なりにその格差に挑んだのだろう。



「それで、俺がそれを知っている前提で聞きます。何故手を組もうと?」

「そうだね、フェザーンと地球教の力で同盟で成り上がる事を考えていたのは嘘ではないよ。

 だが、君という存在を知ってからは少し考えが変わったんだ」

「というと?」



トリューニヒト閣下の考えが変わった?

一体どういう意味で言っているのだろう?



「君は凄い。何が凄いって、君は一般市民、それもハイネセンの出でもない。

 なのに、漫画、アニメ、映画にゲームと色々なメディアを通じてあっという間に躍り出た!

 そして極めつけは宗教だ、地球教を削り取って自分を崇拝する宗教を作り出してしまった!

 君はその気になれば同盟最高評議会に登ることも可能だろう、違うかね?」

「まー一応、一人くらいなら放り込めるだけの組織票を作れなくもない」

「それだけでも凄まじい事だ。恐らくだが私が地球教と組んでも10年は地盤固めが必要だろう」



地球教は表だってかなり削られた表に出ているのは五千万人前後と言われている。

それに、裏でつながっているつまりフェザーンを通じての地球教協力者も相当数いるはず。

一億人を超える関係者がいるはずだが、それでもか……。

まあ、地球教にしてもフェザーンにしても縦割りというわけにも行かないか。



「それに君は今軍にいる、それはつまり直接政治に上がる事は出来ないという事だろ?」

「否定はしませんが」

「変わりの神輿がいるんじゃないかい?」

「流石は閣下、しかし、貴方はそう簡単に担がれてくれますか?」

「もちろんだとも、君より良い条件の担ぎ手が現れなければね」



珍しく率直な意見だ、なるほど確かに彼の考えらしい。

政治主張そのものが方便であり、自分が欲しいのは権力と栄光という事か。



「だがね、一つだけ言っておくよ。フェザーンや地球教を利用しようとしていたのは事実だが。

 私はあくまで共和政治の支持者だ、決して王や法王になりたいわけじゃない」

「ですが権力と栄光は好物でしょう?」

「身も蓋もないね。

 そう、金には困ったことはない、君ほどじゃないが個人でそこそこ稼いでいたしね。

 私がほしいのは偉業をなしたという栄光であり、支持者達の尊敬の目なんだよ。

 そして、そのためには自分の派閥を作り上げる必要もある、権力は当然必要になる」



確銀河英雄伝説においても金満や贅沢は多少はあったかもしれないが、自分を良く見せる事に全力投球だった。

しかし、彼とパートナーになるのはリスクが高すぎるのも事実だ。

まず間違いなく、現状彼は地球教と俺とを天秤にかけている。

とりあえず俺と契約し、俺が失態を犯したらそれを口実に地球教に取り入るくらいはするだろう。



「分かりました、提案に乗りましょう。ただし条件があります」

「うん、いいね。どんな条件だい?」

「閣下が俺と組んでやる場合、十字教を勉強してもらいます」

「ほう」

「まあ、別に難しい事ではないです。

 ある程度票の取りまとめをするにしても支持基盤にサービスするのは政治家の基本でしょう?」

「うん、そうだね」



理解はしているはずだが、トリューニヒト閣下の顔が少しこわばる。

今回のもまともに見ていると言えない彼だ、恐らくパンフでだいたい内容は知っているだろうが。

彼は興味のない事でも票につながるなら頑張るはずだ。

しかし、全くの新しいジャンルとなる、さてどうなるか少し楽しみだ。



「ええ、支持基盤を知るのが先という事です。問題ありませんか?」

「わかった。降参するよ」



まあ、これくらいはやってもらわないとな。

確かに政治の場においての役者としては、閣下の知り合いというゾ○役の人よりずっと上手だろう。

だが、彼は信用なんて全く出来ない人間だ。

俺がそれを知っている事を前提に話しているんだから気違いと言っても良い。

だが、応じる俺も問題外。

そんな関係なのだから結果がどうなるかは全くわからない。


だが、同時に彼以上の神輿はそういない。

何より彼はある意味において最もリベラル(自由)だ、なにせ政治的主張なんて持ってないのだから。

彼が求めているのは名声、そして地球教より俺を選ぶ理由は、俺なら同盟を勝たせる様に動くだろうからだ。

ただし、地球教に限らず俺より条件のいい担ぎ役が現れたら逃げ出すのも直ぐだ。

つまり、俺は閣下にとって最高の担ぎ手でなければならない。

閣下を同盟を勝利に導いた議長に仕立て上げる事、それこそが閣下にとって最高の担ぎ手だ。

その可能性は近々示してみせねばならないだろうな。



「まあ、次はハイネセンに帰ってからにしましょう。ここで出来ることは少ない」

「そうだね。それにこれからは君に担がれるわけだから手土産も用意しておくよ」

「手土産?」

「それはハイネセンで会った時のお楽しみという事で」

「なるほど、了解です」



彼の言う手土産がただの土産物な訳もない、恐らく政治的な何かだろう。

覚悟だけはしておく必要があるな、閣下と組む以上リスクは高くなる。

薔薇の蕾に監視をさせるのは当然だが……閣下の手札も出来うる限り調べておいたほうが良さそうだ。



ともあれ、成果はあったんだフェザーンに来た甲斐もあるというもの。

ある程度フェザーンの宗教事情を知れたのも良かったしな。

俺は後一月もすれば駐在武官の任期が終わる、対して閣下の任期は2年あるらしい。

俺は生き残る事を第一に出世を目指して右往左往する日々に戻る事にしよう。









あとがき


今回はヨブ回となってしまいましたw

いやいやまあ、彼の様な人間は政治の世界では割と普通にいます。

ヨブ・トリューニヒトは銀河英雄伝説においては三悪人の一人とされるほど悪人ですが。

現実を見れば、某金星人の元政治家の方のほうがよっぽどひどい。

トリューニヒト氏はまだしも役者としては一流でしたし生き残るためならどの派閥でだって上手くやる人です。


しかし、某金星人以後もどこぞの政党では政治運営そのものが出来ない人ばかりだったというオチまでついています。

おかげで実は大したことない政権与党ですが比べる野党が酷すぎて一択になってしまっていたりします。

対してトリューニヒト氏は有能です。

彼が権力と金を求めているのは事実ですが、それでも手抜き政治だったわけではないと思います。

彼にないのは政治センスのほうだったのではないかと思います。

ヤン達に三流と評されたのにも関わってきますが。

そう、彼はどうやれば自分が出世するかという難題は得意なのですが。

どうやれば同盟が豊かになり、帝国に対して優位に立つのかという事を理解出来ませんでした。

国民感情の操作は得意でも、どう操作すれば同盟が良くなるかは考えない。

有り体に言えば彼が殺された理由そのものと同じことです。



因みにリベラルについてウィキで調べました。
どうも、一般に日本で使われているリベラルとは違うような……。
不思議ですねー。

自由主義(じゆうしゅぎ、英: liberalism、リベラリズム)とは、
国家や集団や権威などによる統制に対し、
個人などが自由に判断し決定する事が可能であり自己決定権を持つとする思想・体制・傾向などを指す用語。



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