IS〜インフィニット・ストラトス〜
自由の戦士と永遠の歌姫

第十三話
「フランスから来た貴公子?」



 キラが所属するIS学園1年1組、今日そこに転校生が二人来た。
 片方はドイツから、もう片方がフランスから、二人ともそれぞれの国の代表候補生であるのだが、問題はフランスから来た転校生だ。何故なら・・・・・・。

「うそ・・・男?」
「綺麗な髪・・・」
「美形・・・」

 そう、フランスから来た転校生が着ている制服はキラや一夏と同じ男子用の制服だったのだ。

「シャルル・デュノアです、フランスから来ました。みなさん、どうぞよろしくお願いします」

 見た目は女顔のブロンド髪を後ろで縛った美形男子、背はそんなに高くないので、女子から見れば守ってあげたくなるタイプの男の娘だ。

「きゃあああああ!! 男の子よ! 男の子!!」
「しかも! 織斑君やヤマト君とは別の守ってあげたくなる系!!」
「えっと・・・こちらに僕と同じ境遇の方が二人いると聞いたんですけど・・・・・・」

 誰も聞いていない。寧ろ男にしては妙に高い声が更に歓声を呼んでしまう結果になってしまった。
 それから、もう一人、ドイツから来た転校生はと言うと・・・。

「・・・・・・」
「ラウラ、挨拶しろ」
「はい、教官・・・・・・ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 千冬に言われて漸く自己紹介をしたが、非常に簡素。更に、千冬とは顔見知りらしいのだが・・・、以前に束が言っていた千冬がドイツで教官をしていた時の教え子なのだろう。
 そのラウラが驚くべき事を仕出かした。クラスの男子の中から一夏を探し、その目の前まで移動すると、突然引っ叩いたのだ。

「な、何をする!?」
「・・・認めない、貴様が教官の弟だなんて、絶対に認めてなるものか!」
「な・・・っ」

 何を持って一夏を認めないと言うのか、それは判らないが、これは調べる必要性がありそうだ。
 突然ラウラが一夏を引っ叩いたことで教室が騒がしくなったが、それもすぐに千冬の一喝で収まった。

「静かにせんか! 次の授業は実習だ、全員着替えてグラウンドに集合しろ! 遅刻した者はグラウンド10周だ!」

 そう言い残して真耶と共に教室を出て行った千冬。残された生徒達は皆一様に急いで着替える準備に入った。

「デュノアさん、急いで更衣室に行くよ? 遅刻したら不味いから」
「あ、えっと、ヤマト君だよね? その・・・」
「ほらキラとデュノア! 急ぐぞ!!」

 如何したものかと迷っていたシャルルをキラが急かし、更にその二人を一夏が急かした。千冬の授業を遅刻したら最後、地獄が待っているのはクラスの誰もが知っている。
 何より、このままこの場に残っていたら女子の着替えを見てしまう事になるのだ。

「それと僕はキラで良いよ」
「俺も、一夏でいいぜ」
「あ、それじゃあ僕の事はシャルルで良いよ」

 教室を出て、急ぎ足で更衣室に向かう途中に自己紹介を済ませ、シャルルの呼び方、シャルルからキラと一夏を呼ぶ時の呼び方を決めた。
 そして、このまま更衣室に無事に辿り着くのかと思えば、シャルルの存在をどこで聞きつけたのか他のクラスの女子生徒が廊下に出てきて三人を見つけると大騒ぎを始めたのだ。

「見て! ヤマト君と織斑君よ!!」
「転校生の男の子もいるわ!!」
「きゃぁあああ!! こうして三人並ぶと絵になる〜!!!」

 女子生徒が皆、三人を追いかけてきた。流石に相手をしていると遅刻してしまうので、別の道から逃げる為にキラはシャルルの手を取り、一夏にも急ぐよう声を掛けてスピードを上げる。
 キラと一夏だとキラの方が身体能力が上なので、当然だが走るスピードもキラの方が上、シャルルは見た感じだと二人より足は遅いだろうから、キラが引っ張る事にしたのだ。

「あ、あああああの!? き、キラぁ!?」
「ごめん、でも急がないと遅刻するから」

 結局、シャルルは更衣室に着くまでキラに手を握られ、何故かその頬を薄く赤らめていたのだが、その理由は定かではない。


 更衣室に着いて直ぐにキラと一夏は自分達のロッカーを開け、制服の上着を脱いで着替えを始めた。
 シャルルも着替えを始めようとしたのだが、上半身裸のキラと一夏の姿が目に入り、顔全体を真っ赤に染め上げる。

「? シャルル?」
「どうしたんだよシャルル?」
「え!? い、いや! 何でも!?」

 如何も様子がおかしいのだが、今はそれ所ではない。二人はシャルルから目を離し、下も脱ぐとISスーツに着替える。

「って、シャルル早えぇ! もう着替えちまったのか!?」

 確か、キラと一夏が上を脱いだときにはまだ制服を着ていた筈のシャルルが、もう一度目を向けるとISスーツに着替え終わっていたのだ。

「う、うん、まぁね・・・」
「早いね、まるで制服の下にISスーツを予め着込んでいたみたいだ」
「っ! ま、まさかぁ! あ、あははは・・・」

 本当に妖しい。少なくとも、一夏は騙せてもキラは騙しきれる筈がない。シャルルの様子、仕草、随分と怪しすぎた。

「(これは後で調べる必要があるかな)まあ、兎に角急ごう? もうすぐ授業開始時間だ」
「おう! 遅刻したら洒落にならん」
「う、うん!」

 シャルルの事は後で調べるとして、今は授業の方が大事だ。三人とも駆け足でグラウンドに向い、何とか授業には間に合う事が出来たのだった。


 グラウンドには合同授業の為、1組と2組の生徒が集まって整列していた。

「よし、今日は実際にISに乗ってもらう事にする! その前にISの実戦演習をしてもらう」

 生徒達の前に立ち、千冬が本日の実習内容を述べた。真耶は何処に行ったのだろうか。

「あの、織斑先生・・・実戦演習って言っても相手は誰が?」
「鳳か、それなら既に用意してある。実戦演習の相手を務めるのは・・・」

 そこまで言った所で空からISの駆動音が聞こえてきた。同時に、女性と思しき悲鳴も。

「きゃあああああ!? どいてくださ〜い!!」

 見てみれば簡単、ラファール・リヴァイヴに乗った真耶が回転しながら落ちてきているのだ。それも生徒達が密集している中に向って。
 他の生徒達が慌てて離れていく中、キラは咄嗟にストライクフリーダムを起動、一瞬でVPS(ヴァリアブルフェイズシフト)装甲を展開して飛び上がると、回転しているラファール・リヴァイヴの腕をキャッチ、慣性によって少しストライクフリーダムも回転してしまったが、キラは冷静に制御しながら着地するのだった。

「あ、ありがとうございます、ヤマト君」
「いえ、山田先生は大丈夫ですか?」
「あ、はい! それは勿論!」

 なら問題なし、キラはストライクフリーダムを解除してラクスの隣・・・シャルルの隣でもあるが、そちらに移動した。

「すまんなヤマト。それで、実戦演習の相手は山田先生が務める・・・鳳、オルコット、二人で相手をしろ」
「わ、私たち二人でですの!?」
「いやぁ、いくらなんでも2対1じゃ、ねぇ?」
「安心しろ・・・今のお前たちではすぐ負ける」

 不敵な笑みを浮かべながらした千冬の宣言、それが二人のプライドに火を点けた。セシリアも鈴音もそれぞれのISを起動させると、若干の怒りを滲ませた表情で戦う意欲を見せ、それを見た千冬が薄らとだが黒い笑みを浮かべた・・・気がする。

「そこまで言われるのでしたら仕方ありませんわ!」
「言っておくけど、手加減なんてしないからね!」
「お手柔らかにお願いしますね?」

 千冬の合図と共に空へ飛び上がった三人を眺めながら、キラはとある情報を思い出していた。

「そう言えば山田先生って、元代表候補生だったんだよね・・・日本の」
「それも代表に選ばれはしなかったものの、実力的には代表と言って程…ヴァルキリー級の実力者だったらしいですわね」

 それを隣で聞いていたシャルルと一夏、箒は表情を引きつらせる。元とは言え、それだけの実力者だったのなら、今でも実力に若干の衰えはあろうと、セシリアと鈴音では相手にならないのではないか、と・・・。

「デュノア、山田先生が使っているISについて説明してみろ」
「は、はい! えっと、山田先生のISはデュノア社製ラファール・リヴァイヴです、第二世代開発最後機ですが、そのスペックは初代第三世代にも劣らないものです。現在配備されてる量産ISの中では最後発でありながら世界第三位のシェアを持ち、装備によって格闘、射撃、防御といった全タイプに変更可能です」

 流石はデュノア社社長の息子、自分の父親の会社が作ったISの事はよく知っている。
 丁度シャルルが説明を終えた時、上空では決着が着いたのか、一際大きな煙の中からブルーティアーズと甲龍が纏めて落下してきた。

「ま、まさかこの私が・・・」
「あ、あんたねぇ! なに面白いように回避先読まれてるのよ!」
「鈴さんこそ! 無駄にバカスカ撃つからいけないのですわ!!」

 ISを纏ったまま手足が絡まっている二人は中々動く事が出来ないみたいだが、そもそも解除すれば簡単なのに、何故それに気付かないのだろうか。

「これで諸君にも、教員の実力は理解出来ただろう。以後は敬意を持って接する様に」

 最も、例外としてキラは教員ですら相手にならない実力を持っているのだが、元々キラ自身は目上の者に対する敬意は持ち合わせているので、特に問題は無い。

「次に、グループになって実習を行う。リーダーは専用機持ちがやる事、では分かれろ!」

 専用機持ちはキラ、セシリア、鈴音、シャルル、ラウラ、一夏の6人だ。
 キラのグループにはラクスを含めた女子数人が、一夏のグループには箒を含めた女子数人、シャルルにも同じ位で、セシリアと鈴音が少しすくない位、ラウラのグループには誰も来なかった。

「馬鹿者、それぞれのグループから何人かボーデヴィッヒのグループに移動しろ」

 渋々だが女子の何人かがラウラのグループに移動して、それぞれのグループに学園の量産機が宛がわれる。
 一夏と鈴音、ラウラの所は純日本製の打鉄、キラとセシリア、シャルルのグループにはフランスのデュノア社製ラファール・リヴァイヴだ。

「それじゃあ、先ずは実際に装着してみようか・・・順番は出席番号順でね」

 この後、授業は特に問題なく進み、一夏も珍しく授業中だというのに千冬に怒られる事なく終わるのだった。




あとがき
一日三話更新になってます。頑張ってます。



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