「ねぇ、エイミィ。興味深いと思わない? 異能者が術を使えるなんて」
「まぁ……そうですかね。管理局の資料で見た限りですけど、全部暴走してるとかしかなかったですから」
「この世界が特別なのか、管理外世界がそうなのか……おもしろいわね」

 異能者が暴走していないなんてありえない。戦闘が続けばいつかは必ず……っと思いつつ、エイミィは、そうですねぇ……っとエイミィは答えつつ、戦闘が開始されたモニターを凝視する。

 モニターに写る戦闘は、ミドルレンジにてお互いの攻撃を繰り出し続けている。
 お互いに防御しようという考えが欠如しているのか、移動のみで避けている。
 異能者如きに負ける事はおろかてこずる事すら恥……っとクロノは空中移動と魔法弾3発のみの初歩的な戦闘術で戦闘に挑む。
 2人とも厳しい表情を崩さず、意識を戦闘にのみ集中させ、空中に取り残され、ただ浮かんでいるなのはを思考の一端にも留めない。

 クロノは美守が空を飛べないのを攻め、美守が避けた魔法弾の最後には足場にされていた結界を破壊している。
 結界が美守の力によって形成されているからには、上限がある……。人が持つ力は有限である、魔道師も異能者も。

 美守は、多角的に攻めてくるクロノの魔法弾を結界をトランポリンのようにバネにして飛び上がったり、新たに結界を作りそこに移動し避けたりと空中を駆けていく。
 力の消耗を最小限にするため、結界は立てるギリギリの大きさに形成している。そして隙を見て、クロノを覆う結界を張ろうと試みる。
 まだ術が未熟な美守は形成速度がまだまだ遅く常にランダムで移動しているクロノを捕らえる事が困難で、何回も不発を作り出している。

 そんな2人の戦闘を見ていたアースラ局員はクロノの優勢を疑わず、安心した表情でモニターを眺めている。
 初めはお互いに拮抗した戦闘を繰り広げていたが、徐々にではあるがクロノの攻勢の時間が長くなってきている。クロノも余裕の表情で多角的に魔法弾を繰り出しつつ、冷静に美守の意識が行き届かない死角を割り出しており、そこを悟られないように攻めていく。

「あらあら……もう勝敗が見えたわね」
「えっ、どうしてですか? けっこういい勝負してると思うんですけど……」
「あの結界、あれがあの娘の異能でしょう。それで囲えない……通用しない、なら後は近接戦闘に持ち込むかってところだけど、戦闘訓練を受けているクロノに通用するか……ほら」

 リンディの余裕を含ませた解説の後、リンディの予言通り、美守はクロノに近接戦闘を仕掛けようと動きを変えた。
 高速で動くクロノの動きを視線で追うために、最小限の動きで“円の中心を意識した立ち回りをしていた。それが近接を仕掛けようとした瞬間から、最短でクロノが通るであろう地点を目指して飛び上がっている。”
 始めは美守が目指した地点とクロノの場所が大きくズレていたが、数回のトライを超えると頑張れば手が届きそうな地点まで迫る事ができるようになっている。
 それを見ていたリンディは、美守が持つ天性のセンスにゾクリっと背中に寒気を走らせつつ、含んだ笑みをこぼす。

 しかし、体術を学んでいるクロノとズブの素人である美守。
 美守が振りかぶった右ストレートにピッタリとタイミングを合わせるクロノ。
 テンプルにあて、一撃で終わらせようと、殺さないように調節してデバイスS2Uを振る。
 危険を本能で察知した美守は首を回して避けようとするも、避けきれずS2Uの突起が瞼の上をかすり、パックリと開き血をダラダラと流す。
 空を飛ぶ力のない美守は重力に囚われ海へと落ちていく。それを寸前で結界を作り落下を防ぐ。

『片目を失ったな……もう正確な距離感は得られないだろう? 君の負けだ』

 クロノの声は既に勝利を確信し、余裕そのもの。

「うわぁ……クロノ君容赦ないなぁ。異能者が嫌いって言ってもさすがにやりすぎだね」
「でも、殺す気はないみたいね。全て美守ちゃんの意識を削ぐ事に集中しているように見えるわ」

 あれ? っとどこか違和感に襲われながらも、エイミィはモニタに写るクロノを見る。





魔法少女リリカルなのは×結界師
―ふたつの大樹は世界を揺らす―
第12話 「海上の喧嘩」
作者 まぁ





「片目を失ったな……もう正確な距離感は得られないだろう? 君の負けだ」

 うるさい、その余裕を振りかざした感じがむかつくんだよ……そう訴えるような目を向ける美守の気概は一向に衰える事はない。それどころか闘争心は膨れ上がっている。
 美守が試しに左目をゆっくりと開けてみると、目尻から血が流れ込んで激しい痛みと異物感にすぐに左目を閉じる。

 ただでさえ、クロノのスピードに対応できないでいるのに距離感を失うなんて……。私は強い、いや……強くあらないとだめなんだ! そうじゃないと、何も守れない。

 っと思いつつ、ギリッと歯噛みして美守は必死に挽回の策に思慮を回す。
 しかし、その挽回の策が考え付くまで待ってくれるほどクロノは甘くはない。
 3発の魔法弾で威嚇するように美守にかするかどうかの軌道を取る。

「降参しろ……十分すぎるくらい待ってやった……異能者なら即命を奪われてもおかしくは」
「だからなんだ! 庭を荒らしてるお前もそうなんだよ……」

 美守は結界の上を走り、立ち止まることなくクロノに美守がやられているように的を絞らせない。っが戦闘経験の違いか、異能者と魔道師の違いか、美守も結界で攻撃に移るも一切クロノを捕らえきれず、逆にクロノは的確に美守に魔法弾を当てていく。
 一撃一撃が重い魔法弾、防護服など身に着けていない美守は直にダメージをくらい、動きを止められていく。

 ガクガクと膝が笑い、否応なしに足が止まる。
 避けれないなら結界で防ぐしかないと、片目を必死に動かし魔法弾を視界に捕らえていく。
 しかし、囲む事もできない。

 ……ゾクリッ。視線を、体全体を動かし視界をカバーしていた美守の左脇に感じた言葉に出来ない痺れるような感覚。が美守の意識にほんの少し感じられたすぐ後に、魔法弾が左脇の痺れを感じた場所と寸分違わない場所に直撃する。

 なに……いまさっきの微かな痺れた感覚……? 痛みより、驚愕に包まれている美守は動く事を忘れたかのように立ち止まってしまう。
 絶好の的となった美守にクロノは急所を外して、太もも、脇、左腕に計3発撃ち込む。

 なんだこいつ? 闘争心は伝わってくるが、なぜ避けようとしない? 依然衰えない美守の闘争心を感じながらも、無抵抗な美守に困惑するクロノ。

 やっぱり気のせいじゃない……。感じる、痺れるような感覚を。
 美守は痛みを忘れたかのように、被弾に対するリアクションを取れず、頭の中で確信を得る。押さえようとしてもこぼれてくる口元の笑みが苦痛に歪んでいた美守の顔を明るく染める。


 何笑ってんだ! 一撃で終わらせてやる……。これで意識を刈り取る! 
 美守の口元の笑みが見えた瞬間、クロノはカッと一瞬だけ頭に血が昇り、既に発射した魔法弾の内の一発を美守の右後頭部へと向けて軌道を変える。


 ゾクリ……。 後頭部に感じた痺れるような感覚を感じた瞬間、美守は振り返りつつ体を反らして避けようと背を伸ばす。
 しかし、蓄積した体のダメージが体を反らす事を拒否し、不十分な反らしのまま美守は魔法弾を迎え撃つこととなる。
 パァァン! 甲高い音と共に、爆ぜるように吹き飛んだ美守。魔法弾を右顔面上部に受け、脳を揺さぶられ足の力がゴッソリと抜け、糸が切れた操り人形のように結界に崩れ落ちる。
 あまりの痛みに悶え苦しみ、起き上がれずにいると、クロノの魔法弾が美守の足場の結界へと魔法弾を数発撃ち込んで破壊する。
 抵抗できない美守は海にポチャン……っと沈む。



 海に落ちた美守。光にピカピカと光る海面を求めながら、頭を冷やしていた。
 友達(フェイト)を攻撃された事で頭に血が上りすぎて、力任せにいきすぎた……。
 片目は血が入って開かない、もう一方は腫れて開かない。ハハハ、私って弱いな。でも、やらなきゃ。進まなきゃ、何も手に入れられない!


 ――あれやってみよう。いつだったかはやてとお爺様と見たTVのあれ……



 海面に出た美守は結界を足場にし、海上に再び立つ。
 両目を封じられ、視界がまったくない状況、視界を使わないでも対象を探知する結界を持っていない。

 海に落ちて頭が冷えたのか、美守は先程までのような怒気を纏った闘争心満々の姿勢から、落ち着いた構えに変わる。
 右手で結界を張るための集中する御呪いのような印、人差し指と中指を立てて他を握る構えをし、その上に左手を優しく包みこむ。

 まるでその姿は神に祈りを捧げているかのようだった。

「はやて……皆、私もう少し頑張ってみるからね」

 ボソリっと呟いた美守を見下ろしていたクロノは確かに感じた……美守の纏う気が変わったことを。









「なぁ良兄。いっつも思う寝んけど、いいんかいな? うちがここおって」
「別に気にすることないだろう、はやてもココの学生なんだからさ」
「せやけどさ。みも姉も帰ってきてないのに……」
「ぁあ、あいつなら知り合いの家で寝てるとさ。……言うの忘れてたわ」

 っな!? っと勢いよく振り返るはやて。はやてと良守は聖祥大付属の中等部棟の美術準備室兼良守の個室にて背中合わせの会話をしていた。
 美守が脱走した昨夜以降、はやてが無茶をしないように見張りをつけようとなったのだが、幸か不幸か良守以外空いている人間がいなかったのだ。
 父の修史は東京へと小説の打ち合わせへと行っており。祖父の繁守と時子は町内会旅行。正守は結局帰って来るどころか連絡すら取れない。美希は夜行の業務処理に終われ夜が明ける前に本拠地へと向かった。
 ちょうど受け持ちの授業が少ない日だった事もあり、良守がはやてを一日見る事となったのだ。

 過去何度か良守の職場で過ごす事があったはやては慣れた様子でお絵描きに勤しみつつ、良守と何気ない会話をしている。
 美守がどこかへ出て行った事が心配でないというわけではないが、慌てて探しに行った良守が落ち着いた感じで帰って来るのを見て、特に大事ではないのかなっと思うと同時に、直感で美守の無事を確信していたからさほど慌てる様子は見せはしない。

「ひっどぉぉ!! なんでうちにそういう大切なこと言わんかなぁ!」
「わりぃって。……時間か、お絵描きの時間は終わりだぞ、はやて」

 まるで子供のような無邪気な笑顔ではやてに告げる良守。美守の行方を追及したい衝動に駆られるも、就業のチャイムが鳴り響く。
 無邪気な笑顔と勢いに押されたはやては、笑顔でため息をつきつつ、鉛筆を机に置く。
 はやては良守に車椅子を押されつつ美術準備室を出て、女子中学生が待つ美術室へと入っていく。はやてはこの後すぐ息を呑むことになるとは露ほども思っていない……女子中学生の怒涛の質問攻めがまっていようとは。

 美術室に入った瞬間に女子中学生の怒涛の質問攻めにあったはやてはたじろぐ。はやてを守るように体を割り込ませ、女子中学生を下がらせ席に着かせる。不満そうに席に戻っていく女子中学生達。
 良守は生徒達を静かにさせ授業を開始する。

「先生〜、その女の子誰なんですかぁ?」
「あ〜、俺の妹のはやてだ。この学校の初等部に籍置いてるけど、休学しててな。今日は誰も家にいないからな……つれてきた。他の先生に言うなよ〜。まぁ、はやては静かに勉強させてるからお前らは課題やれよ〜」
「「「「えぇぇ!!」」」」
「はやてちゃんとお話したいでぇす」

 キャッキャキャッキャっと騒ぎ始める女生徒達を収めるのはきついな……っと思い、手招きされているはやてに言っていいぞ。っと許しを出して、作業に移らせる。
 始めは戸惑い気味のはやてだったが、優しく話してくれる年上達に次第に緊張もほぐれて笑顔が戻ってくる。
 おしゃべりが盛り上がりすぎると、良守がはやてを連れ去り、別の机へと運んでいく。
 先程までおしゃべりしていた女生徒は、笑顔で手を振ってはやてを送り出す。
 別の机でも同様に優しく接してもらい、はやては楽しい授業を受けることとなる。

 和気藹々と進んだ授業は、終業のチャイムにより終わりとなる。しかし、そんなもの関係ないとばかりにはやてを取り囲むように女生徒は集まりワイワイと騒ぎになっていく。
 はぁあ……っと良守は呆れたようなため息をつきつつ、休み時間が過ぎるのを待つ。

「おぉい、お前ら〜。次の授業いけよー」
「先生!! はやてちゃん連れてっていいですか!?」
「駄目だ! ほらっ! 早くいけよ」

 良守は有無を言わさず、女生徒達を手でシッシっと追い払うようにしながらはやての元へと歩いていく。
 いつの間にか女生徒側についており、一緒に不満そうな表情で抗議の声を上げている。

 抗議の声を、はいはぁいっと軽く無視しつつ、良守ははやての車椅子を押して準備室へと入っていく。
 諦めた女生徒達は、またねぇっとはやてに別れを告げ、美術室から去り次の授業へと向かっていった。

「あぁ〜、おもろかったぁ。こんなんなら毎日ココ来たいわぁ」
「それはダメェ。はやてが毎日ココにいるとなったら、美守が来るだろ……だから駄目だ。復学を楽しみにしてな」
「ブーブー! 足が動かん理由わからんのにどうやったらええねん……」

「違うだろ……。はやてが復学出来ない理由はそれじゃないだろう?」
「っう……」
「まぁ、たまには連れてきてやるよ。もちろん、美守には秘密にしてな」

 美守には厳しい良守の不器用さがわかっているはやては、小さく震えるように笑いをこらえる。
 はやての震えるような笑いに照れくさくなったのか、良守は優しく、けれども乱暴にはやての頭をなでる。
 整っていたはやての頭が寝癖のように乱れ、はやてはあわわっと手櫛で直す。

 良守は準備室に設置している小さな冷蔵庫から缶ジュースを渡すと、キャンパスに向かい作業を開始する。
 はやても書きかけのお絵描きに戻り、真剣に取り組みつつ背中合わせの会話を再開させる。

「そういえばさ、最近みも姉一人で夜の見回り任務行ってない?」
「そうだな……雪村の当番の日には後をつけてるらしいけどな」
「危なないん? みも姉まだ9つやで?」
「俺もその頃は一人で行ってたよ」
「時音お姉ちゃんと一緒やったくせに」

 うっと言葉に詰まりつつ、良守は語り始める。

「まぁ、アイツは最近強くなり始めてるから心配するほどの事はねぇさ」
「そうなん? 9つやで?」
「9つの俺よりは強いさ……。アイツは守るモノを自覚してるからな。それにそれが最近広がってきたからな。去年まではさ、アイツの守りたいものってのははやて“だけ”だったんだよ。5歳のあのときも……それが強く願ったから、助かったはずなんだ。

 それがな、今年に入って友達が出来て守りたいモノが増えたんだよ。

 結界師はな……揺ぎ無い思いで、守りたいって思いで強くなるんだよ。俺の時もそうだった」

「へぇ〜。でも一つ違ってるで、良兄。

――みも姉はな、“皆を”守りたいってずっと言ってる。お爺ちゃんも時子お婆ちゃんも、パパもママも静江おばちゃんも正兄も美希さんも利兄も時音お姉ちゃんも……もちろん、良兄も含めて皆。

 みも姉が友達作ろうとせんかったのは、守れる自信がなかったからやと思うで……。でも、もうすずかちゃんはもちろんアリサちゃんもなのはちゃんも友達やから、ちょっと無理してるかもやで」

「そっか……。さすがは“双子の妹”だ。よくお姉ちゃんの事わかってんじゃないか」

 良守は嬉しそうに笑うと、ご機嫌に鼻歌混じりに作業を進める。








 信じろ……自分を、自分の感じたものを……迷えば直撃、一発KOだ。


 美守は念じるように唱え続け、集中力を極限まで高める。右目に魔法弾を受ける直前に感じたヒリヒリとした言葉にならない感覚。通常の状態、環境なら見落としていた感覚。
 美守はその感覚を研ぎ澄ませるため、身動きせずに息すらも小さくなっていく。

 視覚からの情報を遮断され、聴覚からの情報を無視し、美守は肌で感じる感覚のみを信じて動き出す。
 美守の動きの変化は些細で、その変化に気づいたのは、モニターで観戦していたリンディのみ……。
 魔法弾を避け切れてはいない事には変わりないが、確実にクリーンヒットがなくなっている。

 魔法弾で美守を攻撃していたクロノは目に見えて変化した美守の動きに気づかず、攻撃を続ける。
 だんだんとダメージで弱っていく美守を見て、ここで止めようか……これ以上は……っと躊躇いの表情を浮かべる。それは戦闘中には見せてはいけない表情……。しかし、今の美守には届きはしない。


 美守は必死だった。
 自分を守るように張った結界は、魔法弾を1発2発防げればいいところ……。クロノの操る3発の魔法弾で攻撃してくる攻撃を防ぎきれない。
 それに視覚を失い、クロノの居場所が特定できず攻撃に移れない。その上攻撃を避けることすらできない。
 肌が感じる迫ってくる何かの気配を必死に察知し、感じた瞬間に体を動かし避けようと試みる。

 初めのほうはほぼクリーンヒットしていたが、徐々にではあるがクリーンヒットされなくなっていく。
 このままいけば、この戦闘を五分五分に持ち込めるかとも思えたが、しかし時既に遅し……。

 この戦闘が始まってからずっと蓄積されてきたダメージにより、美守が重力に囚われるように膝が落ちる。

「もう……タイミングとか言ってられないか……」

 膝が足場に落ち、体が動くことを拒否するように激しい痛みが美守を襲う。
 そして、溜めに溜めた力を半分開放し、海中に大型の結界を張り、すぐさま全力を持って滅する。まるで爆弾を海中で爆発させたかのように大きな水しぶきを上げて、辺り一面に水を飛び散らせる。クロノ、美守共に水しぶきを受け、水が滴るほどびしょ濡れになる。

 弱った美守は口元を少し上げ、水しぶきがあがった事に対して少し喜び、最小限に小さくしていた足場から新たに、何十人も寛げそうなほど広い足場を作り出す。そして、両手を足場に着き、感覚を研ぎ澄ます。

「降参……そんなわけはないな」

 クロノの言葉、声の方向に美守は思わず口元を大きく上げ、笑みをこぼす。感覚を研ぎ澄ました美守にとってクロノの声は、どのあたりにクロノがいるのかを探る貴重な情報となる。


 ポチャン……ポチャン……。

 広域に張った美守の足場用の結界に落ちる水滴。その波紋は結界を伝い美守の体へと波を伝える。
 伝わってくる波をイメージしようと頭の中で映像を作り出そうと想像を膨らませると……、

 見える? いや、目から受ける映像じゃない……。イメージが見えるんだ……!
 ならその源を辿れれば、

 ――(アイツ)を囲めるっ!


 そして、美守は大きな確信とともに、結界形成のプロセスを踏んでいく。

「方位、定礎(じょうそ)……結っ!!」

 激しい痛みに表情を歪ませながら、美守は右腕を大きく上げて結界を張る。
 美守が張った結界は、成人男性1人がようやく納まるくらいの大きさであったが、その中にクロノがスッポリと囲まれてしまっていた。
 目が見えているならまだしも、視覚を失い、探知用結界がない美守の所業にその戦闘を見ていた誰もが驚愕に包まれる……、囲まれてしまったクロノでさえ。

「滅っ!!」

 込めれるだけだけ込めた全力を爆発させるように、叫びながら美守は上げた右腕を勢いよく振り下ろす。それと同時に結界は大きな音と煙を上げながら破裂する。
 しかし、美守が吐ききった息を吸鋳込む前に、今までが遅すぎると思えるほどの速度と破壊力を持った魔法弾が美守の腹へと一直線に襲い来る。反応すら出来なかった美守は見事にクリーンヒットし、後ろに大きく吹き飛ばされ、意識を完全に刈り取られる。

「…………水、キリノタチ。オウヨウ……ガ、タ」

 意識があるのかないのか、最後に呟くとともに、美守から力が抜け成すがままに重力に囚われるように崩れ落ちる。
 美守の失神と共に、海の上に張られていた結界全てが溶けるように消え、美守は海へと無常にも落ちていく。

 煙の中から現れたクロノは、全力で魔法弾を撃ち込んだ事、異能者如きに手こずった事に対しての不満を表情と体全体で表す。
 それを悟られないようにと繕うも、隠し切れずに目線をやったなのはがビクッと反応する。

「……話は艦内で聞かせて貰うから、黙ってついてきてくれ」
「は、はい!……」

 なのはは何度も戦闘を止めようと機会を伺っていたが、介入の機会を見つけ出すことは出来なかった。美守が海に落ちた瞬間に、助け出そうと動き出したものの、その間にクロノが音もなくやってきて止められて、美守を海から救い出せない。

「異能者は放っておけばいい。今はジュエルシードの事が優先だ」
「でも! 友達なんです!」

『その娘の言うとおりです。クロノ執務官、美守ちゃんを丁重にアースラへ運んでちょうだい。治療します』

 でも……! っと文句を言おうとしたが、リンディの文句は受け付けないっと言わんばかりの目線に渋々と従う。

 海岸公園に張られた広域結界内にいた、クロノ、美守、なのは、ユーノは時空航行艦アースラへと転送され、姿を消す。


「こういうのもまた一興ってところね」

 少し上機嫌な声を出すリンディは、司令室を出て転送ポートへと向かって鼻歌交じりに歩いていく。









 ――TO BE CONTINUED




  あとがき



 どうも、まぁです。

 拍手にコメントが寄せられていて、テンション上がりまくりで、書いちゃいましたw
 投稿初期は、拍手と感想コメントがこんなにも起爆材料になるとは想像もしてませんでした……。ただただ毎日書いて書いてしてて、以前削除してもらった『異能と魔道』を書いてました。
 読み返してみると、恥ずかしすぎて恥ずかしすぎてw 

 他の作家さんの作品を読んだり、アドバイスをいただいたり、教えていただいたりとしながら、書いているのが今のこの作品です。
 まだまだ文章が固すぎて、それを解消するために必死になっている次第ですw

 10話の時に2つ拍手を頂いて、半端じゃないくらいテンションが上がって、11話を早く書こうとしていたのですが、何分リアルが忙しくて、碌にPCを触る暇がなくて……また間が空いてしまいました……orz 
 忙しいのも一段落したので、これからはそこそこのペースで頑張っていきたいと思います。

 まぁ、私の話はこれくらいにしておいて、拍手コメント返しいきまぁす!




>[2]投稿日:2010年09月10日20:10:39
>久々の更新おつかれさま。また期待してます


 ありがとうございます。返信が遅れて申し訳ないです。これからも精進し続けていきますので、何卒よろしくです。。



>[3]投稿日:2010年09月10日22:52:37
>更新お待ちしていました!
>結界師となのはのクロス作品というのは珍しいので期待しています。ただ、文章は読みやすいのですが、少し句読点の打ち方が気になりました。
>今朝美守の兄正守に連れられて
>などの部分は、
>今朝、美守の兄『正守』に連れられて
>などにされた方が読みやすいかと。
>内容自体は良く出来ていると思いますし期待していますので、これからも頑張って下さい。



 まずは、返信送れてすみませんでした。ご指摘、ありがとうございます。文章もまだまだこれから頑張ってよりよいものにしていきたいと思っています。管理局も出てきましたので、これから徐々にではありますが裏会も登場していきますよ〜。。


>[4]投稿日:2010年12月18日3:43:49
>いつの間にか更新されてた。
>管理局、そしてクロノくんが登場しましたね。
>次回はクロノと美守のバトル。何やら因縁がある様子ですが?



 コメントありがとうございます。ついに登場しました、管理局。これでようやく裏会も出しやすくなるというものです! 
 正直、今結界師でやってる裏会崩壊騒動などを、リリカルなのは一期では無理でも、二期かその後ぐらいには本格的にしたいところですから、そこに至るまでどれくらいかかるかはわかりませんが、楽しみにしておいてください。
 


 このような感じですかね……。。

 それではまた次回、お会いしましょう!


   まぁ!



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