―――猫と女は呼ばないときにやってくる。
よく言ったものだ。
ホント、どうしてお呼びでない時に限ってこうなるのか。
これも運命の皮肉というやつなのかもしれない。







SIDE:???


ふと目が覚めると、視界を綺麗な星空が覆った。
澄み切った空。
もう此処に来て結構たつのに、今更この空に気付いた。

本当に綺麗な夜空だ。
手を伸ばせば届きそう、というのはこういう事を指すのだろう。

そんな、私の憧憬は発せられた男のの声で吹っ飛んだ。

「目が、覚めたのか。」

「!」

咄嗟に体を動かそうとするが動けない。
何かに両手両足首が縛られている?

「悪いが拘束させて貰った。
暴れられる訳にもいかないからな。」

「お前は……。」

そこには、憎むべきブリタニアの兵士がいた。
服装から察するに、ナイトメアのパイロットだろう。

「私を、どうするつもりだ!」

「そうだな……。
俺も色々と情報が欲しくてね。
こんな時のセオリーとしては拷問がベストなんだが……。」

拷問!?
実際に受けた事はないが、される事くらい大まかな想像はつく。
………嫌だ。
こんな、ブリタニアの兵士なんかに良い様に甚振られるなんて……。

だけど絶対に表情には出してやらない。
こいつは、私が嫌がる所を見て楽しむ変態だ!
ブリキの兵隊の思い通りになんてなってやるものか!

「気丈なもんだ。
拷問と聞くと、少しは取り乱しそうなもんなんだが、
まあ拷問は冗談だから、そう構えるな。」

何を言っているんだ、こいつは?

「冗談だと…、ふざけるな!」

「別にふざけてなんかいない。
国際法で捕虜への拷問は禁止されてるだろう?
ほら、なんら可笑しな事はないじゃないか。」

「それがふざけていると言ったんだ!
国際法だって?
今更ブリタニアがそんなものを守るなんて信じられるか!」

「そうだな。
確かに、逆の立場なら信じないわな。
幾ら国際法で禁止されても、拷問は手っ取り早い手段だし……。
俺も最初はそうしようとしたしな。」

最初はそうしようとした、だって。

「まさか、私が女だからといって手心を加えたのか!!」

「……………………。」

「図星なんだな!
ふざけるな、私だってEUの軍人だ!
帝国主義者の犬に情けを掛けられる覚えはない!」

勢いに任せて、男の顔面を打ん殴ろうとする。
だが勿論、拘束された状態でそんな器用な動きをするなんて、サーカス団でもなければ出来る筈がない。
当然のことながら、サーカス団の一員でも化物並みに体が柔らかくもない私は、上手く動けず倒れてしまった。

「おいおい大丈夫か?」

「触れるな、変態!」

「変態って………」

あろうことか、ブリキ男はダメージを受けていた。
そんなに変態呼ばわりされたのがショックだったのか。
よし、もっと言ってやる……。

「そうだ、お前は変態だ!
どうせ私を助けたのだって、恩を感じた私をそのまま抱こうとでも考えたんだろう?」

「いやいや、確かに俺のタイプだけどそこまでは………。」

「やっぱりか!
やっぱりそういう考えだったんだな、このブリキ!」

「ブリキじゃない!
俺にはちゃんとレナードという名前がだな……。」

「どうして、私が変態野郎の名前を覚えなくちゃならない。」

「ひでえ。」

「ふん、ざまあみろ。」

「たっく、捕虜なのに気が強いな。
普通なら命乞いなりなんなりすると思うんだが。」

「誰がするか。
私はお前達のような卑劣漢とは違うんだ。」

「……話が進まないな。
それで、お前は如何してこんな場所に一人でいたんだ?
それも単機で。」

「それをお前に話す必要があるのか?」

「いや、ない。
だが勝手に推測する事は出来る。」

なんだと……。

「お前の乗っていたグラスゴーを見たが、結構な損傷があったな。
それも弾痕やらでやられたものじゃない。
例えば岩やら何やらにぶつかったような……。」

……………………
こいつ、

「そして極め付きは壊れていた通信機。
大方、あの作戦の混乱で本隊と別れ、通信も壊れ迷子になったと。
そんな具合だろう?」

認めたくはないが、図星だった。
コーネリアを確実に抹殺する為の作戦。
あの時、飛んで来たミサイルが故障かミスかで私のいる方向へと飛んできて、そしてそうこうする内に気付けば本隊とは離れ離れ。
通信しようにも通信機が壊れていたのだ。

「…………………」

「そう睨むな。………ふぁ〜あ。
何はともあれ、尋問は明日だな。
俺は寝るぞ。」

「おい、待て!
敵の前で寝るとは私を舐めているのか!」

「舐めてなんてない。
ただ眠いだけだ、休める時に休んでおくのも軍人の義務だ。」

そう言うと本当に寝てしまった。
どうにかしてこいつを、とも思ったが無理だろう。
武器は見当たらないし、なにより拘束されて思うように動けないのだ。

体を捻らせる事でどうにか移動は出来るけど、どうしても動く際に音が立ってしまう。
これじゃあ、近付く前に気付かれてしまうだろう。

まあいい。
寝るというならそれでもいいさ。
体力を温存しておけば、反撃の機会もある。

そう思い、私はそっと瞼を閉じた。





SIDE:レナード


「目が、覚めたのか。」

どうやら目覚めたらしい捕虜に声を掛ける。

「!」

驚いてこちらを向いた捕虜は、どうにかして動こうとするが無駄だ。
流石に捕虜にした敵兵を拘束もしないでいるほど、俺は抜けてない。

「悪いが拘束させて貰った。
暴れられる訳にもいかないからな。」

「お前は……。」

憎憎しげに俺を睨む。
無理はないか。
なんといったって、自分をこんな目に合わせた張本人だ。
笑顔を向けてきたほうが驚きだ。

「私を、どうするつもりだ!」

「そうだな……。
俺も色々と情報が欲しくてね。
こんな時のセオリーとしては拷問がベストなんだが……。」

ビクッ、と一回だけ肩を震わせたが表情は変わらない。
たぶん、我慢しているのだろう。

「気丈なもんだ。
拷問と聞くと、少しは取り乱しそうなもんなんだが、
まあ拷問は冗談だから、そう構えるな。」

「冗談だと…、ふざけるな!」

「別にふざけてなんかいない。
国際法で捕虜への拷問は禁止されてるだろう?
ほら、なんら可笑しな事はないじゃないか。」

「それがふざけていると言ったんだ!
国際法だって?
今更ブリタニアがそんなものを守るなんて信じられるか!」

「そうだな。
確かに、逆の立場なら信じないわな。
幾ら国際法で禁止されても、拷問は手っ取り早い手段だし……。
俺も最初はそうしようとしたしな。」

「まさか、私が女だからといって手心を加えたのか!!」

こいつ、心が読める能力でも持ってるのか?
そう、俺が拷問という手段をとらない理由は一つ、こいつが女だったからだ。
それも美少女、超のつく程の。
ぶっちぇけ、俺の好みに160キロストライクだ。

「……………………。」

「図星なんだな!
ふざけるな、私だってEUの軍人だ!
帝国主義者の犬に情けを掛けられる覚えはない!」

恐らく俺を殴ろうとでもしたのだろう。
手を動かそうとするが、当然拘束された手を動かす事は出来ない。

「おいおい大丈夫か?」

「触れるな、変態!」

「変態って………」

それは少し、いや、かなりショックだ。
俺も人並みの性欲もあるが、断じて変態ではない。
ぶっちゃけると、変態だなんて言われたのは人生で初めてだ。

「そうだ、お前は変態だ!
どうせ私を助けたのだって、恩を感じた私をそのまま抱こうとでも考えたんだろう?」

なんですと!
失敬な、流石にそんな下心丸出しな考えは持ってない。
大体、そんなに簡単に恩を感じられてたら、俺は今頃、宰相閣下だ。

「いやいや、確かに俺のタイプだけどそこまでは………。」

「やっぱりか!
やっぱりそういう考えだったんだな、このブリキ!」

憤慨する捕虜。

「ブリキじゃない!
俺にはちゃんとレナードという名前がだな……。」

「どうして、私が変態野郎の名前を覚えなくちゃならない。」

「ひでえ。」

「ふん、ざまあみろ。」

胸を張る捕虜。
その顔は正に「してやったり」といったものだ。

「たっく、捕虜なのに気が強いな。
普通なら命乞いなりなんなりすると思うんだが。」

「誰がするか。
私はお前達のような卑劣漢とは違うんだ。」

「……話が進まないな。
それで、お前は如何してこんな場所に一人でいたんだ?
それも単機で。」

「それをお前に話す必要があるのか?」

「いや、ない。
だが勝手に推測する事は出来る。」

一呼吸入れて俺の調べ上げた名推理を披露する。

「お前の乗っていたグラスゴーを見たが、結構な損傷があったな。
それも弾痕やらでやられたものじゃない。
例えば岩やら何やらにぶつかったような……。」

驚いてる、驚いてる。

「そして極め付きは壊れていた通信機。
大方、あの作戦の混乱で本隊と別れ、通信も壊れ迷子になったと。
そんな具合だろう?」

尤も気付いた理由は、俺が似たような状態だったのが主な理由なのだが。
通信機に関しても俺がEUのナイトメアの通信機なら本隊に連絡がとれるかも、と思い調べたからなのだし。

「…………………」

と、なんだか眠くなって来た。
そういえば朝から晩まで戦い尽くしだったな。

「そう睨むな。………ふぁ〜あ。
何はともあれ、尋問は明日だな。
俺は寝るぞ。」

「おい、待て!
敵の前で寝るとは私を舐めているのか!」

それは大丈夫だろう。
敵の前といっても、拘束されて動けないようになってるし、
念のため没収した銃の弾は抜いているし。

「舐めてなんてない。
ただ眠いだけだ、休める時に休んでおくのも軍人の義務だ。」

さて、寝よう。
冗談抜きで眠くなって来た。


そういや、名前、まだ聞いてなかったなと思いつつ、俺は眠りについた。



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