コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














TURN-7 本当の覚悟


新総督奪還作戦から数日…。
今日もライは黒の騎士団所有の潜水艦にいた。
いや正確にはそれを隠しているタンカーの中にある会議室にいる。
その入り口付近でライは壁に背を預け、腕を組んで正面を見据えている。
奪う標的であった新総督の就任挨拶が始まると聞き、ライだけでなく黒の騎士団の総員ほぼ全てが集まっていた。
ライやみんなの視線の先は大型スクリーン。
そして映っているのはライがよく知っている少女。
しかし、彼女の方はライの事を覚えていない。

『皆さん、初めまして。私はブリタニア皇位継承権第87位、ナナリー・ヴィ・ブリタニアです』

その少女ーーーーーナナリー・ヴィ・ブリタニアは純粋な花を思わせるような風貌をしている。
ナナリーの可憐な声が響く。

『先日亡くなられたカラレス公爵に代わり、この度エリア11の総督に任じられました』

ナナリーには元々威厳はなかったが、それでもゆっくりと、はきはきと口上を述べる。
そこには微かだが、ブリタニア皇族が持つ強さがライには見えた。

『私は見ることも歩く事もできません。ですから皆さんに色々と力をお借りする事となります。その時はどうかよろしくお願いします』

「お願いしますって…」

「調子狂うな…」

そんな彼女を見ていた黒の騎士団の一同は驚きよりも困惑の色が大きかった。
無理もない。
彼女は今までエリア11の総督になった皇族の中でも可愛らしく、そして弱々しく見えるのだ。
さらに言うならユーフェミアと同様ナンバーズに対しての差別意識が微塵も感じられない。
元々ナナリーはナンバーズであるスザクと仲良くし、決して誰かを差別した事はないから当然なのだが。
ブラックリベリオンを経験した黒の騎士団は“ブリタニア皇族=敵”の方式が成り立っているのだが、彼女にそれをあてはめるのはいささか不適合に思えるの だ。

「ナナリー、君がやはり総督になるのか…」

ライは映像に映るナナリーを見て呟いた。
やはりあの時ルルーシュが手こずったのはナナリーの存在だろう。
しかし、おそらくそれだけが原因ではないはず。
ライは何かあると踏んでいた。

『早々ですが、皆さんに協力して頂きたい事があります』

ライの眉が微かに動いた。
もしかすると、これが…。

『私は行政特区日本を再建したいと考えております』

「!?」

さすがのライも驚いた。
何かあると予想していたとはいえ、まさかナナリーがこんな事を考えていたとは。
だとすればルルーシュがナナリーを連れ去る事ができなかったのもこれが原因だろう。
ナナリーの爆弾発言に黒の騎士団の皆は怒気を込めてそれぞれ口を開く。

「行政特区……!?」

「日本…!?」

「何寝言言ってやがる……!!」

「今更……!」

驚いていたライはその時既に平静を取り戻していた。
そして、僅かに激情が湧き上がる。
ナナリーの演説が続く中、ライは憤りを感じていた。

(不幸な行き違いか……。簡単に言うな、ナナリー)

『黒の騎士団の皆さんもどうか特区日本に参加してください』

(無理に決まっている……!)

『互いに過ちを認めていれば、きっとやり直せる。私は、そう信じています』

ナナリーの声明にライの憤りは膨れ上がった。

「そんな簡単に言って、済むほど世界は単純じゃない…!」

そもそも過ちというのはどういう定義で成り立つのか。
それはそれぞれの国家が定めている法律、いやここは正義と言っておこうか、それによって違う。
どこか一部でも共通すらしないのではそれは成立すらしない。

ライは呟くと、会議室を出て行った。
























ライはあの後、ラクシャータと整備班と共に崩月の調整をしていた。
ナイトオブラウンズとの戦いでライは崩月を実戦でいきなり全力で使い倒したため、チェックが入念にされていた。
それとその戦闘データの反映をするのを踏まえ、調整しているのだった。

「それにしてもまさかナイトオブラウンズ二人相手にあそこまで戦えるなんてね〜」

整備中にラクシャータが感嘆の声と共にライに声をかけてきた。

「すみません、出来たばかりの新型をいきなり本気で使い倒してしまって」

ライの謝罪にラクシャータは笑った。

「いいのよ〜別に。私としてはこの子の性能を100%活かせるパイロットがいればそれだけで助かるからね〜。実際色々とデータが取れて助かるし。それにナ イトオブラウンズ二人相手にあそこまで戦えるパイロットがこの子を操っているなんて私も鼻が高いわ〜」

「はは、そう言ってもらえるとありがたいです。ただ、僕はまだこいつの性能はまだまだ先があると思ってます。アレも使ってませんからね」

「そうねぇ。ま、いつでもあんたが使えるように最高の状態で仕上げておくよ」

「お願いします。では、僕はこれで上がらせてもらいます」

「はいは〜い、お疲れ〜」

ラクシャータの気楽な態度にライは微笑しながら格納庫を去った。
そして、自分の部屋に向かう。
すぐに部屋の前に着くと、扉を開けた。

「C.C.…いたのか」

「何だ?私がいたら悪いのか?」

「いや…そんな事はないが……」

ライはそんな彼女に答えてから椅子に座った。
その前の机には様々な資料があった。
一口に言うと、これからの事を計画した資料がまとめられていた。
新しく届く物資や新しく増える団員の人事等やるべき事は山済みだ。
以前から藤堂や扇が戻ってきてくれた事でライの仕事は随分と減った。
しかし、ゼロの判断が必要な案件はゼロがいない場合全て司令補佐であるライに回ってきていた。
その肝心のゼロであるルルーシュには既に何度か連絡を取ったが、全く連絡がつかなかった。
どうやら総督奪還作戦でナナリーと会った時に先の特区再建の事も含めて何かあったらしい。

「ルルーシュは一体何をしているんだ?」

「さぁな。だがお前のする事は変わらないぞ」

「わかっている」

そうC.C.に返事しながらライは未処理の資料に目を通している。

「ところでC.C.、前から聞きたかったんだが…」

「何だ?」

C.C.はちなみに部屋に入った時からライのベッドでピザを頬張っていた。

「何で僕の部屋に君の私物が紛れ込んでいる?しかもあの人形が増えてるような……」

「チーズ君だ。よく気づいたな。こっちのが普通バージョン、笑いバージョン……」

「そこまで聞いてない、全く…。いつどこで仕入れたんだ?」

「さぁ、いつだろうな」

微笑みながら答えるC.C.。
それにライはため息をつくしかなかった。

















ライは当面の仕事をとりあえず終えて艦内を散歩していたら、私服姿のカレンを見かけた。
どこかに出かけるのだろうか。

「カレン!」

「ライ?」

カレンはこっちに振り向くと、駆け寄ってきた。

「仕事は?もういいの?」

「ああ。当面のはもう済ませてきた」

ライはそう答えて自分が声をかけた本来の理由を尋ねる。

「それよりカレンは何をしてるんだ?どこかに出かけるみたいだったが…」

カレンは一瞬表情を暗くしたが、すぐに表情を戻して答える。

「……ゼロを、ルルーシュの様子を見に行こうと思って……。場所には心当たりがあるから…」

「……僕も行っていいか?」

「構わないけど、どうして?」

カレンの問いかけにライは低い声で答える。

「どうやら彼の…ルルーシュの覚悟をもう一度知る必要があるみたいだからな」

そう言うライの表情は厳しかった。














ライはカレンに案内されてある場所に来ていた。
途中で新宿再開発地区と掲げられた看板があった。
それを裏付けるように周りの建物の所々に骨組みだけのものや明らかに建設途中のものがある。
既に日も暮れて夜に差し掛かろうという時間にライとカレンはシンジュクゲットーの再開発地区に来ていたのだ。
時間だろうか周りに人影や気配はなく、微かな風の音が聞こえるだけだ。

「一つ聞いていい?」

「何かな」

歩いている途中カレンがライに尋ねてきた。

「どうしてあなたはゼロを……ルルーシュをそこまで心配するの?」

ライはその質問に内心ちょっと驚いた。
あまり表に出しているつもりはなかったが、普段の行動に出ていたらしい。
カレンはそんなライをよく見ていたからこんな事を聞いたのだろう。
事実なので、特にライは否定しなかった。

「僕とルルーシュが似ている……から、かな」

「似ている?」

「ああ。昔の僕にね……。だからほおっておけないんだろうな」

(そして、昔の僕にならないためにも……ね)

後半はライは口にしなかったが、心の中で呟いた。
自分に言い聞かせるように。
カレンにはそう言うライの表情がひどく寂しそうに見えた。

「ところで本当にここにルルーシュが?」

「多分。このシンジュクゲットーでゼロは生まれたの……だから…」

そうして並んで進んでいると、左右に分かれ道があり、どちらの曲がり角にも人の姿はない。

「そろそろ日も落ちる。分かれて捜そう。僕はこっち、カレンは向こうを頼む」

「分かったわ。見つけたら連絡してね」

ライは右の道を、カレンは左の道を行く。
ライはその後建設途中の複雑な道を通ってルルーシュを捜した。
そして、しばらくして彼を、ルルーシュを見つけた。
黙って座っている彼にライは口を開いた。

「まさか本当にここにいるとはね」

ライはカレンの事を疑っていた訳ではなかったが、正直本当にいるかどうかは五分五分だと考えていた。
こちらに振り向くルルーシュにライは歩み寄る。

「カレンに聞いたけど、ここはゼロが、君が始まった場所だったんだな」

ライは言うと、表情を鋭いものに変えた。

「ルルーシュ、君に聞きたい事が……」

そう言いながら歩み寄ったライはぎょっとした。
ルルーシュが注射器のような物を持っていた。
それが何なのかライにはすぐにわかった。
それを察したのかルルーシュが自嘲気味な声で言う。

「リフレイン。ライも知ってるだろ?懐かしい過去に帰れる……」

それで自分の腕に注射器を当てようとするルルーシュ。
その行動に、態度にライはカッとなった。

「ふざけるな!」

「!」

ライはルルーシュに詰め寄り、リフレインを彼の手からひったくって投げ捨てた。
地面に叩き付けられた注射器が粉々に割れる。

「一度ぐらいの失敗でそれか!?また作戦を立てて取り返せばいいだろう!?それとも君はこの程度の奴だったのか!?」

ライは座っていたルルーシュの胸倉を掴んで無理やり立たせると、彼に問いただした。
今のライは完全に激情に支配されている。

「しっかりしろ、ルルーシュ!今の君はゼロだ!ナナリーと何があったのかは知らないが、これはもう君だけの私闘じゃない!みんなの戦争だ!カレンや 黒の騎士団、日本人に夢を見せた責任がある!その責任を放棄するな!……それとも君の覚悟はこの程度のものだったのか?」

「ライ……俺は…」

ライは無気力なルルーシュの胸倉から手を離して歩き去ろうとする。
だがライはその途中で止まって呟いた。

「もう一度君の覚悟を僕に示してくれ。それができるなら僕は君にこのまま協力する。だが、できないのなら僕が君の代わりを務める」

そう言ってライは顔だけルルーシュに向ける。

「僕は君の友達で共犯者だ。僕は君を守る。それが彼女が望んだ事で僕が目覚めさせられた理由なんだからな…」

ライは言ってその場を立ち去った。



















「帰ったか」

あの後ライはカレンと共に隠れ家である潜水艦に戻ってきた。
カレンに事情は既に説明してある。
ライが部屋に戻ると、先刻部屋を出た時と同じようにC.C.がベッドに座っていた。
そんなC.C.の隣にライは座る。

「ルルーシュの奴に発破をかけてきたのか?」

「ああ、ルルーシュはナナリーに甘いからね」

「それはおまえもじゃないのか?」

C.C.が言っているのは2人とも妹に甘いという意味だった。

「そうだな。でもルルーシュはナナリーに甘すぎる…。それが原因で悩んでいるみたいだったからな」

「そうだろうな……。…おまえはあいつに自分を見たのか?」

「……そうかもしれない。ルルーシュは僕に似ている。でも彼はまだ終わってない。全てを取り戻せない僕とは違うんだ。ルルーシュには守るべきものがまだた くさんあって、大切な人たちが残っている」

昔の事を思い出しながら素直に言う。
そう、まだ彼は自分とは違うのだ。
まだ彼は孤独ではない。

「ルルーシュには僕のようになってほしくないからな」

「…そうか。だが、おまえにも失くせないものはあるだろう?」

「……そうだな」

ライはそう言ってくれたC.C.の方に微笑んだ。

















ライは部屋で休憩を取った後、C.C.と共にゼロの部屋に向かって歩いていた。
程なくして部屋に着いて、扉を開けるとそこにはゼロの仮面を手に取って見つめているカレンがいた。

「重いぞ、その仮面は」

C.C.の言葉にカレンははっとして振り向いた。
その間にC.C.とライは部屋に入る。

「日本人だけではない。世界を背負う覚悟がなければ…」

「でも誰かが」

やらないと、と言いかけたカレンだったが、突然かかってきた通信に遮られた。

『こちらはブリタニア軍である。貴船の所属、航路は申告と違っている。停船せよ。これより強行立件を行う!』

それを聞いていたライはカレンと共に潜水艦の操舵室に駆け込んでいた。

「見つかったんですか!?」

「恐らくな」

カレンの問いかけに藤堂がそう答えた。

『10分待つ。その間に乗組員は武装解除し、甲板上に並べ』

どうやら声からすると、指揮を取っているのはスザクのようだ。
ライはすばやく状況分析すると、指示を出し始めた。

「10分か…。とりあえず団員の皆はすぐにこの艦に乗艦するように言って」

「わかりました」

ライは通信士に指示を出した後、ラクシャータに通信を繋げる。

「ラクシャータさん、念のため僕の崩月の準備を。僕の崩月なら水中での戦闘も可能ですから」

『でも、相手はかなりの数よ。それに恐らく敵が出してくるのは水中戦用のナイトメア。いくら崩月でも…』

「それはわかっています。ただ、出来るのに無理だからと言ってそのままにはいかないでしょう。お願いします」

『……しょうがないわね〜。まあ、5分で仕上げておくよ』

「頼みます」

そして、潜水艦内の黒の騎士団は慌しく動き始めた。





















「また皆で花火をあげよう」

学園に戻ってきていたルルーシュは前にいたミレイ、シャーリー、リヴァルに言った。
この三人はてっきり修学旅行に行っていったと思っていたのだが、学園に残っていた。
静かな学園に花火が上がったので、驚いたルルーシュが屋上に行くとこの三人が花火を上げていたのだ。
そして、三人から話を聞いている内にある事に気づかされた。

(俺の求めていたものはここだったのか……)

そして、ルルーシュの求める優しい世界もこんな近くに存在する事に。
三人の並んでいる所にも今はいない人達が見えたような気がした。
ナナリー、スザク、カレン、ニーナ、そしてライが。

「絶対に…絶対にもう一度……みんなで……」

ルルーシュが今求めていたものがはっきりわかった。
自分の本当の願いはナナリーが、ライが、自分の大切な人たちが笑って暮らせる世界。

(そう、俺の戦いはもうナナリーだけのものじゃ……)

この時ルルーシュの覚悟は新たに決まった。



















一方、潜水艦にいる黒の騎士団は何とか攻撃時間までに全員潜水艦内に搭乗し、できる準備は済ませられた。
そして、開始時刻間近になった所でタンカーから何か飛び出した。
ブリタニア軍はそう思っただろう。
飛び出したのは崩月と紅蓮だった。
二機とも可翔式でブリタニア軍の艦隊に向け突撃する。
それに対してブリタニア軍も迎撃に出た。
艦隊の半分を崩月と紅蓮の迎撃に。
残り半分をタンカーに向けて攻撃させる。
ライの考えた作戦はとりあえず崩月と紅蓮が敵艦隊に突撃、その隙に潜水艦を逃がすというものだった。
もちろん、それでは心許ないからあわよくば崩月と紅蓮が艦隊の戦力を削る。
攻撃時間直前に急発進したのは指揮を取っているであろうスザクのランスロットの出撃時間を遅らせるためのものだった。
そして、潜水艦が逃げ切れた後は崩月と紅蓮が別ルートで機会を見計らって撤退するというものだった。
作戦としてはいまいちかもしれないが、今はそれが打てる最善の手だった。

崩月と紅蓮が敵艦隊の砲火を掻い潜って輻射波動砲弾を海上艦に向けてそれぞれ放つ。
避けることすらできず、直撃した海上艦は次々と爆発していく。
しかし、速攻で6隻ほど落としたところでスザクのランスロットが発進してきた。
それを見たライとカレンは一旦標的を変更し、スザクのランスロットを迎撃する。
二対一の戦闘で、ライがスザクとの戦闘をこなしながら器用に海上艦を輻射波動砲を撃ってたまに沈めていく。
スザクのランスロットが避けたら海上艦に当たるように標準を調整しているのだ。
もちろん、それを誘導するカレンも大したものだ。
しかし、海上艦は数が多く見た目程減ったようには見えない。
そして、ライとカレンがスザクと激闘を繰り広げているうちにも潜水艦への攻撃は続けられる。

(狙いはあてずっぽうだが、このままではまずい…)

『ライ、どうするの!?このままじゃ扇さん達が!』

「わかってる!でも僕達がこうするしかないんだ」

ライは指示を仰いできたカレンにそう返す。
もちろん戦闘中にも何か打開策がないかと頭はフル回転状態だ。
しかし、上手い案が浮かばない。

(せめてこの辺りの海図があれば何とかなるかもしれないんだが…!)

歯噛みするライに突然通信が入った。

『Q1、聞こえるかQ1』

「!…この声…!」

『ゼロ!』

『ダウントリム50度。ポイントL40に向け急速潜行しろ』

どうやらゼロは海中の潜水艦に指示を出してくれているようだ。
ライは彼が戻ってきた事にフッと笑う。
すると、少しして潜水艦への指示を終えたゼロからライ達に指示が来た。

『ライ、カレン、お前達はブリタニア軍の海上艦が転覆するまでランスロットの足止めを頼む』

『え?転覆?』

カレンはゼロの言葉でおかしい部分だけもう一回言った。
だがライはゼロがそれは確実な予測で指示を出している事に気づいていた。

「カレン、ここはゼロの言うとおりにしよう」

『え、でも』

「彼を信じるほかにないだろ?それに僕達の目標は変わらない」

ライの言い分を納得したのか、ランスロットに向けて突っ込んだライの後にカレンも続いた。
ランスロットの足止めをしていると、眼下の海に異変が起きたのに気づいた。

『泡?』

「そうか…!メタンハイドレート…!」

浮き上がってきた大量の泡に舵を取られた海上艦が次々と転覆していく。
おそらく先ほど出撃した水中型ナイトメアも戦闘不能か撃墜されているだろう。

「さすがだ…」

ライはそう呟いてゼロに感心したが、直後警告音がコクピットに響いた。
レーダーが示す方向を見ると、そこにはトリスタンとモルドレッドが来ていた。

「援軍か…!」

だが戦況は逆転した。
ナイトオブラウンズが援軍に2人来たとしても決して不利ではない。
身構えるライとカレンだったが、後ろから新たな機影が迫っているのに気づいた。
それはゼロを手のひらに乗せた金色のヴィンセントだった。

『これがお前の答えなのか!?』

ランスロットがヴァリスをヴィンセントに向けた。
それを遮るように崩月と紅蓮が立ちはだかる。
そこでゼロの声が聞こえた。

『撃つな!撃てば君命に逆らう事になるぞ』

『何?』

『私はナナリー総督の申し出を受けよう。そう、特区日本だよ』

『そんな…!』

カレンはこれにはさすがに驚いた。
無論ライも少なからず驚いている。

『ゼロが命じる!黒の騎士団は全員、特区日本に参加せよ!』

これがゼロが特区日本参加を宣言した瞬間であった。
























ゼロの特区日本参加宣言から一日が過ぎた。
ルルーシュはあれからゼロとして団員にある事を説明した後、学園に戻っていた。

「まさかあんな作戦を持ち出すとはね」

ライはゼロの持ち出した作戦を思い出してつい笑ってしまう。

「まるでトンチだな。一休さんか」

「だが確かにあれならどうにかなるだろう」

ライの部屋にはC.C.、カレンが来て今後の話をしていた。

「まあ、相手がスザクだから通用する作戦だけどね」

「どういう事?」

ライはしばらく沈黙すると、困ったように言った。

「説明するのは難しいな。こういうのは相手の事をよく知っていないと成立しないから」

要するに行動派のカレンには理解しにくいという事だった。
それが何となくわかったカレンはそれ以上追及はしなかった。

「それで私達はどうするの?」

「アレが出来るまでは待機だ。それに予定日はできるだけ伸ばさないと…」

「そうだな。アレを作るのには時間がかかる…。何せ百万人だからな」

「ああ。……ただ、一つ問題がある」

「「?…問題って?」」

ライの深刻そうな顔にカレンとC.C.は思わず聞き返す。
ライは少し沈黙すると、口を開いた。

「……またあの格好をしないといけない、ということだ」

ため息交じりに言うライをC.C.とカレンは思わずポカンとして見てしまう。
そして、すぐにC.C.とカレンはおかしそうに笑い、それを見たライは不服そうにしていた。























そして無事にゼロの国外追放は成功した。
経緯を簡単に説明すると、ゼロが極秘に司法取引で国外追放を取り付けた。
それが当日採用されたとわかると、百万人にあらかじめ準備させておいたゼロの衣装を煙幕を出させてその間に着させた。
無論仮面も。
そして、それから一騒動あったが、スザクの判断でゼロに扮した全員国外追放に決まったのだ。
ライは思い出のあるこの地を離れる事に少し悲しくなったが、それだけだった。
自分はもう覚悟を決めたのだ。
なら後は突き進むだけ。
そうすれば、この地に戻る事もあるだろう。
その時にはみんなの距離が縮まっている事を信じて。
それが実はライのもう一つの願いであった。
目指すは新天地…。
















あとがき

一ヶ月程ご無沙汰でしたが、第7話をお送りしました。
今の所一ヶ月くらいの更新スペースですが、できればこのくらいの調子で続けていこうと思います。
今回はアニメで7話と8話に当たりますね。

では今回の話の解説をしていきます。
と言ってもする所あまりないんですけどね…(汗)
さて、原作ではカレンがルルーシュを叱り飛ばしたり、引っ叩いたりしてましたが、この作品ではライ君にその役をしてもらいました。
落ち込んで、もとより腑抜けになりかけているルルーシュに発破をかける……。
これでルルーシュとライとの絆と覚悟を再認識するという意味合いでこの話を書きました。
だから7話のタイトルもそれにちなんだものになっている訳なんですけどね。

そして、ブリタニア軍に見つかった時の黒の騎士団の対応なんですけど…正直悩みました(苦笑)
色々と案はあったんですが、何もしないのはさすがにないかな…ということで色々と悩んだ結果こういう対応に落ち着きました。
ライ君の作戦にしてはいまいちかな…って感じなんですが、あまりにも効果的にするとルルーシュ=ゼロの見せ場がなくなる訳で…。
それで良すぎず悪すぎずっていう感じでいきました。
作者である自分的に、ですけど(笑)

という感じで解説しました。
案の定いつもより短い…(汗)
しかも8話にあたるとか言っておきながらそこに当たる所はほとんど書いてない…(滝汗)
最初はそこに当たる所も書こうかな…と考えてたんですが、これほとんどルルーシュの話じゃねえかという事で結局あまり書かない事にしました。
あくまでこの作品は主人公のライ視点が中心の作品ですし、書いたとしたらほぼまんまじゃねえかという話で捻りも何もないのでやめておこうという結論に至り ました。
内容的には結構薄いと感じている今回ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。

次回は中華連邦でライ君が色々とがんばるお話です。
主に祝賀会で……。
いや、この場合はゼロかな?
とにかく続きは次回で。
乞うご期待ください。

WEB拍手及び感想をくれた方々、ありがとうございました。
前回は燃えたという感想が多かったですね。
思惑通り燃えてくださって嬉しかったです。
書きがいがこれでこそあるって感じです。
アドバイスをくれた方もありがとうございました。
基本的に作る作品は台詞が多いんですが、戦闘になるとどうも台詞が少なくなる傾向があるんですよね……。
某ガンダム作品みたいに通信も繋がっていないのに会話が成立するというのは何か現実的じゃねぇ〜って感じでするのを避けてるんですよね。
まあ演出って事もあるのでこれから戦闘中に台詞を増やせるように努力してきたいと思います。
これからもこの作品をよろしくお願いします!

今回は意外と短いあとがきでした。
次回の更新もいつも通り未定ですが、がんばりますのでこれからも応援よろしくお願いします!
では、また次回に。
ありがとうございました〜。







改訂版 修正箇所

ライのセリフ
その他文一部



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

<<前話 目次 次話>>

作家さんの感想は感想掲示板にどうぞ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.