外伝その123『日本の事情』


――日本政府は、扶桑皇国との連合国家化で少子高齢社会の解決を図ろうとしていた。これは行き詰った経済、歯止めの効かない少子高齢社会の進展の解決を『活力に溢れる』扶桑との連合国家化で解決しようと考えたからだ。日本は第二次大戦の敗北で打ち込まれた楔を、学園都市の統制強化という名目のもとに打ち砕かんとしていた。奇しくも、扶桑が朝鮮半島を無力化し、その強大な軍事力を見せつけた事から、日本が連合国家化し、大日本帝国時代の力を完全に取り戻すことを恐れた米中はそれぞれの方向から圧力をかけた。アメリカは日本を拠点とし続けるため、中国は日本が再び軍事的強大化し始め、自分達に軍事的に仇なすことでの政治的・経済的デメリットから、圧力を加えた。日本は左派の行う『内政干渉』を扶桑に取り締ませる大義名分を与えるために二重国家化を考え始めたが、ロシアから賠償で得たウラジオストクを統治するには現有の政府能力では不可能であったことがアイデアのきっかけだった。扶桑はウラジオストクを数百年領有しているため、その意味でも、扶桑の力を借りるのは自然な流れであった。日本はこの時に、扶桑からの猛抗議で、左派の内政干渉の状況を知らされ、青ざめた。旧軍高級将校や政治家、官僚の多くを同位体の罪というだけで罵倒し、あらゆる手で失脚させて『総括』させていたのが判明したからだ。そのため、軍事的『要請』をあまり強く言えなくなってしまった。陸軍の機械化と引き換えの規模縮小と海軍陸戦隊の海兵隊化はその状況で言えるだけの最大限の要請だった。日本は『他国に脅威を与えないでほしいが、怪異との戦闘が外地であるのなら、その範囲内での必要最低限で忍んで欲しい』と陸軍の規模縮小を遠回しに要請したこれは陸自丸ごとををプラスするから、防衛には必要十分と見込んでいたからだろう。だが、これにウィッチ世界の連合国が待ったをかけた。ド・ゴール、チャーチル、アイゼンハワーと言った三大元首達がいっぺんに来日して、日本に物申したのだ。これは日本に衝撃を与えた。既に亡くなって久しい『歴史上の元首』達が専用機で続々と飛来したから、さあ大変。史実と違ってアイゼンハワーは現役軍人のままで亡命政権大統領の職についていることもあり、軍服姿で羽田空港に降り立った事がまず話題となった。(本国側にとっては一大将扱いのままであるなど)トルーマン救出がトルーマンの廃人化で潰え、新たな指導者を必要とした事から、本来はあり得ないのだが、連合軍最高司令官であったのとの兼ね合いで、軍人の身分のまま臨時大総統となった。そこはド・ゴールと共通している――


『ご覧ください。ドワイト・アイゼンハワー元……いえ、亡命リベリオン大統領です。彼は我々の知る彼自身と異なり、現役軍人のままで臨時大総統となった模様です……』

アイゼンハワーは亡命政権をまとめるため、現役軍人のままで臨時大総統となった。いや、そうならざるを得ない事情があった。有力者と目された、彼の元・上官『ダグラス・マッカーサー』が脱出失敗組に入っていたため、大統領の器足り得る者が彼しかいなかったので、彼が運命の因果で大統領に就任し、そのまま連合軍最高司令官を兼任した。バーナード・モントゴメリーを連合国陸軍司令官に任命するのが内定したが、未来人が難色を示した。マーケット・ガーデン作戦の失敗が問題視されたのだ。最も、モントゴメリーがウィッチ世界でも、何度か軍事的失敗を犯しているのも事実ではあった。日本や連邦は『グデーリアンか、ジューコフか、マンネルヘイムあたりを添えたら?』と提言した。いずれも後世に有能との評価を得た軍人達だが、グデーリアンは当時、カールスラント装甲兵総監の職にあり、カールスラントから『ロンメルがいるだろ、ロンメルが!』と反対された。連邦と日本は『ロンメルは前線指揮官でしか無い!せめてケッセルリンクかハーゼ、あるいはパウルスを…』と次なる提言をした。これは皇帝のお気に入りであるロンメルの才覚が『前線司令官』でしかない事は未来では周知の事実である事、ケッセルリンクなどが推されたのは、防衛戦で活躍していたからだ。いずれも各方面におり、引き抜けない要職にいた。また、皇帝顧問官の『ゲルト・フォン・ルントシュテット』元帥(この時期のカールスラント軍長老)を添える案はカールスラント皇帝の反対で潰えている。この事項が正式に決められるのは、1946年の事となる。これは結局、モントゴメリーを就かせるしか無く、その補助に誰を添えるかで揉めたからだ。


――始まった首脳会談では、2015年当時の日本保守政権の首相が、思い切り緊張しながら会談に臨んだ。自分の祖父母にあたるような世代の『偉大な政治家』達と思いもがけず会談したのだ。ド・ゴール、アイゼンハワー、チャーチルと向かい合って会談する首相の姿は、センセーショナル的に報道された。本来なら、首相が幼少の頃には既に隠居している歳であったり、大統領だったような世代の人間が三人なのだ。しかも、歴史に名を刻んだ『宰相』。。否応なく緊張を強いられた。チャーチルなどは首相の祖父が政治家として台頭する前の世代に属する。いずれも老獪で、吉田茂でようやく釣り合うくらいの大物。彼の年上に当たる『タロー』氏の祖父の世代の人物なため、首相は慎重に事を運んだ。チャーチルは『年齢や時代は関係無く、互いに国家の長として率直に話し合おう』と切り出し、日本の左派の扶桑への内政干渉の酷さを告げた。チャーチルは『東條氏や松岡氏、それと大島氏らの同位体がやらかした事は、確かに国家のミスリードで、国家を破滅させた。だが、その罪は君の国の彼らの罪であり、扶桑にいる彼らには罪はない』と言った。これは昭和天皇の忠臣であったと有名な東條は、扶桑海の失敗で既に失脚していたのにも関わず、未来勢力が蟄居させるように圧力をかけ、彼の軍籍も剥奪させて謹慎させていたのを、昭和天皇が同情の言葉をチャーチルに漏らしたからだった。日本と連邦は、東條の『敵対者には、息子や娘婿にさえサディズムの権化になる』極端な性質を嫌悪しており、扶桑での復権を恐れ、軍籍を剥奪させた。息子達が要職につくのと対照的に、当人は同位体の罪を背負う事を決意し、バード星に妻共々移住し、銀河連邦の一官僚として余生を送ったという。対照的に、東條の息子達は要職に就き、次男は宮菱重工業の社長になったほか、三男は空軍少将になったという。――



――また、扶桑では起こっていない事を指摘され、パニックになる例も告げられた。羽柴家の末裔が『お前の先祖は駒姫を無慈悲に殺した』と観光客に罵倒され、その人物が鬱病になった事がその一例だろう。羽柴秀吉はウィッチ世界では太閤を名乗ったものの、史実のような耄碌した際の醜態は晒さずに死んでいき、壮年期までの人懐っこい性格を保ったため、史実のような懐疑心もない。史実のような孤独な支配者でもない『一家老』として死んでいった。従って、甥の秀次にまつわる不幸な事件は、事前に秀吉の実弟『秀長』が諌めたために事なきを得ている。その罵倒された張本人の羽柴家当主は、その事件の被害者であるはずの秀次の系統の末裔であり、羽柴宗家の名籍を継いだだけの者だった。これは大問題となった。当主は鬱病から立ち直り、『秀吉様とは直接つながる縁者ではありまへ んので、どうこう言う資格も、言われる責任もあらへんですがな』と声明を発表している。彼の存在こそが、彼の事件が起きず、その血脈が20世紀まで続いた証。秀吉と直接繋がる縁者でもない。ただ、羽柴の血を持つ縁戚であったので、いつしか絶えた宗家の名籍を彼が継いだだけだった。その事が報じられると、未来人らは潮が引くように批判を止めていった。未来人らが狼狽えたのは、未来世界の過去の記録で起きたとされる出来事も、ウィッチ世界では一部は起こっていないことだ。白虎隊の悲劇もない。新撰組は存在はしたが、史実ほど特筆すべき実績はないなどの多岐にわたる違い、扶桑が大航海時代以来、外征型軍隊で名を馳せた事。その事が日本へ衝撃を与えた。判明したのは、『左派の主張は的外れである』事だ。ロシアとの戦争に学園都市が勝利した事も重なり、彼らは扶桑に非戦の考えを広げようと躍起になった。それが彼らの最後にして、最大の抵抗だった。彼らは扶桑に作った新学校で『英才教育』を施し、その英才教育を施した若者らに反体制テロを起こさせ、太平洋戦争中の国内の混乱を助長させた。これが彼らが最後に行った抵抗にして、最悪の置き土産である。太平洋戦争で新学校により迫害され、絶えたウィッチの名家はかなりで、戦後に成人した武子の娘も『迫害』を恐れ、自衛隊に入隊したほど、新学校という置き土産は多大に悪影響を残した。日本が太平洋戦争で21世紀の技術をほぼ無償で提供した背景には、このような背景があった。――


――また、運動に加担した若者らからもウィッチの覚醒は起こるため、少なからずが太平洋戦争直後の第二次扶桑海事変に従軍し、体制側を支える戦士に転化していった者も多い。反社会的なテロリストと化した彼らが扶桑社会への影響力を有するのは、三輪の台頭と権勢と重なる。レイブンズがそれぞれの理由で扶桑から姿を消していたのも、この時期だ。今回は『計算のうち』の行動であり、早い内に帰還し、芳佳とリーネに自衛隊を作らせた。自衛隊の設立も早まり、54年ごろには三自衛隊が活動を開始し、軍退役後のリーネは自衛隊の幹部として活動する。レイブンズも同じ時期に扶桑に帰還し、しばしは閑職に甘んじつつ、第二次事変ではちゃっかりと輝しい戦果を残している。レイブンズは立て続けに国家的危機を救ったため、この功績で子爵に昇格した。三輪の権勢に陰りが見え始めるのも10年早まったわけである。それはこの45年に考えていたことを実行したからでもあった――


――黒江は陸戦で戦果を上げる一方、空中戦も忘れておらず、空挺部隊を始末した後、ギアを一部変形させ、(脚部を可動部の少ない円筒型から、通常の脚部に変形させた)格納庫に行って、キ100(戦闘機。64Fの部隊マーク入り)を動かして、空中戦を敢行した。しかも耐Gスーツ代わりにシュルシャガナを纏ったままで。これは黒江の『戦闘機乗り』としての性分を満たすためと、『紫電改のマキ』がいる世界に遊びに行く予定を立てており、その前の予行演習も兼ねていた。黒江は前史で同世界を楽しんでおり、今回はフェイトにくっついて、石神女子高校に編入するつもりだった。(女子高ライフを楽しみたいという女子らしい願望も一応は持っていたため)今回は、同世界の石神新撰組ににいた二名のスケバン女子高生『風神/雷神』(矢島風子、北島雷奈の二名。愛機はキ44)を、同機のテストパイロットかつ、運用試験部隊のエースパイロットとしてギャフンと言わせたいらしく、審査部で埃を被っていた『キ44V』(疾風のプロトタイプになった型)を取り寄せ、持ち込む腹づもりだった。飛行47Fのエースパイロットであり、第一次現役時代の末期はキ44使いであった都合、二人の鍾馗の扱い方にイライラしていたためでもあるので、負けず嫌いの側面もある。


「さて、翼を狙って…っと」

黒江は戦闘機に乗っても一流の腕を持つ稀有なウィッチである。智子の代までは舟型が新人教習で使われていた都合、元から航空機操縦技能を持つ。黒江はそれを死に技能にせずに強化したため、このような芸当をしてのける。また、坂本が夜間飛行をしようと、零式戦闘機(五二型)で出ようとしたら、ミーナが心配して止めたため、黒江が戦闘機で邀撃したわけである。

『いやあ、スマンな。五二型で出ようとしたら、ミーナに止められてな』

『お前、夜間飛行技能あるだろ、今は?』

『そーなんだが、ミーナが折れてくれなくてなぁ』

夕暮れ時に差し掛かる時刻になり、夜間飛行技能があると自己申告した坂本。ストライカーでなく、零式五二型で出ようとしたため、飛行服に着替えていたのだが、ミーナがすごい剣幕で止めた。

『零式で出る!?あんなまともな防弾のないワンショットライターででるなんて、あなた正気!?』

これだ。坂本は流石に眉を顰めた。それは零式の前世代型の話。五二型は『翼内燃料タンクに自動消火装置を装備していて、55mm防弾ガラスを追加している』。あくまで対人用の防弾なので、怪異戦では身軽な二一型が好まれたが、動乱を戦う部隊の要請で、五二型系統が量産された経緯がある。

『あんまりな事言うもんだから、言ってやった。それは二号の話だ、私の五号や三号はもともと防弾装備あるし、未来技術で自己診断装置積んでるから早々落ちんよって。顔真っ赤にしてたぞ』

『まぁ、史実じゃ焼け石に水だったが」

『近接信管と、地獄猫達の12ミリのシャワー相手じゃあな。あれは落しにくいよ。コルセアはよっぽど落しやすいがな』

『地獄猫はまだいい。その次の熊猫はうちらのどんなレシプロでも勝てん。震電でもな。だから、熊猫はジェットに片付けさせろ』

ベアキャットは後期型では、時速700キロを凌駕し、零式を上回る旋回速度を誇る『化物』である。最強のレシプロ艦上戦闘機である同機を抑えるにはジェット機が必須であった。黒江も同機とは、『レシプロでやりたくねぇ相手』としており、黒江の技量を以ても、五分で戦うのは無理である。選択肢はベアキャット装備の空母そのものを潰すか、更なる高性能のジェットで抑えるかの二択である。当時、震電はジェット化に切り替えられ、レシプロでは紫電改と烈風が最高峰だった都合、旭光と栄光で抑えるベターな選択肢を坂本はとった。

『そうさせている。旭光を回してもらいたいが、あれはFJ-3のように艦上戦闘機ではないしな。取りに行くから、今、ヘリを用意させてるところだ』

『ミーナはなんて?』

『心配だからって、ついていくと』

『私達と違って、セイバーや三菱鉛筆に乗れんだろ、あのバカ』

『そうなんだが……あいつ、私にアレだから、今となってはちょっと面倒だよ』

ため息をつく坂本。坂本は転生しているため、F-35であろうと、ハリアーであろうとも乗りこなせるが、ミーナは転生していないため、前史の技能を有していない。そこが面倒だ。

『ミサイルとハイドラ積んで後ろに乗せて出るかなぁ…。あいつは前史での技能は引き継いではおらんからな』

『お前、ヘリの操縦はできるのか?』

『ま、前史で自家用免許は持っていたからな。ミーナがウチの国の機体の防弾を心配するから、瑞雲で出れんのでな。全く、瑞雲は水上機としては世界最高水準なんだが」

『あいつは防弾を気にしすぎだ。当たらなければどうということはないと、赤い彗星も言ってただろうにな』

『日本の武士道は西洋の騎士道とは違うからな。それじゃ、お前も旭光か栄光に乗り換えてくれ』

『おい、待て。前史ではお前、ハリアー出る前に退役してなかったか?』

『ああ、退役した後、リーネに頼まれて、そのツテで乗った事があってな』

坂本は軍や自衛隊と退役後は縁が切れたわけでもなく、娘が縁を切る晩年まで、交流そのものはあり、ハリアーの操縦経験があった。そのため、黒江の知らないところでハリアーに乗っていたことがあるのだ。


『いつ乗ったんだ?』

『フォークランド紛争が起きるちょっと前のことだったよ。当時はまだ今の容姿を保ててたしな』

『ホーカー・シドレーのテストでも参加したのかよ?』

『リーネが息子の乗る機体を不安がってな。ほら、ハリアーはあれだったろ』

『あれか』

黒江は会話しつつも、敵機と巴戦を行う。卓越した技能と頭脳のなせる技だ。しかもギアを展開した上での事なので、相当にマルチタスクを鍛えたのかが分かる。

『お前、キ100を上手く扱ってるな。自分の本来の姿ではないだろう?』

『姿は変わっても、私は私さ。他人の体を使うわけでもなくて、自分の体を他人の姿に組み立て直したようなもんだからな。ハリウッドの特殊メイクのよく出来たもんだと思えばいい』

『お前、ミーナが見たらまた腰抜かすぞ?それに、本来の持ち主も来てるんだろ?その姿の」

『なーに、タカオやコンゴウ、イオナの本来の姿を思えば、どうって事ない。ケイだって、女子高の制服着て、斬に乗り込んだろ?』

圭子は『紫電改のマキ』こと、羽衣マキに容姿がよく似ている。名前は石神新撰組の実質的リーダーで、西日本四天王の一角『古嵐蛍』と『ケイ』、『飛燕』繋がりで縁があり、『あの子の飛燕を分捕ってみようかしら』と冗談交じりに言っている。

『あのセーラー服だが、どこの学校のだ?』

『あれは次元世界の一つにある『石神女子高等学校』の制服だよ。あいつとよく似た奴がその学校にいてなー』

圭子はマキが自分に似ている事にとても喜んでいて、前史では、マキが風邪で不在の時を見計らって、マキの紫電改を動かした事がある。その時に限って、西日本四天王の一角『田村 "エクスペルテン" 香矢』と相対する事態になったのだが、圭子は若返っている事もあり、外見はマキと同程度であり、容姿も似ていた事からマキと勘違いされ、『ヒヨッコ』扱いされた。その際には『へぇ。ガキンチョに教えてやるとしますか。ノモンハン事件相当の戦いでトップ張った実力を!』と吠え、件の彼女を巴戦で圧倒してのけた。圭子は扶桑海事変で間違いなくトップに君臨した撃墜王であり、いくら『西日本四天王』と言っても、飛行時間がその時の時点で一桁以上違い、実戦を飛んでいる圭子から見れば、田村 "エクスペルテン" 香矢も単なる『若造』だった。紫電改はハイオクガソリンと21世紀のプラグやパッキンなどのエンジン周りを考慮に入れて、時速689キロ。対する、田村 "エクスペルテン" 香矢はレシプロ最高峰の一角とされた『フォッケウルフ Ta152』を使用していたが、飛行高度が中高度であった都合、同機のポテンシャルを引き出せているか疑わしい状況での空戦であった事、紫電改が空戦フラップを併用した場合、トップレベルの機動性を見せる事も重なり、圭子は香矢を撃退した。その時の決め台詞は『Ta152の性能特性くらい把握してから、巴戦を挑みなさい』というものだった。

『そいつと会いたいからって、ダイ・アナザー・デイ作戦が終わってすぐに『芳佳ー!紫電改操縦出来る? 出来るなら教えてー!』って聞いて、で、宮藤が『私より、菅野さんか雁渕さんに聞いた方が良いかも知れませんね、聞いてみましょう』って返してさ、二人で雁渕に聞いてた。菅野じゃさんこーにならねーしな。あいつ、突撃馬鹿だし』

孝美は紫電/紫電改のテストパイロットであり、その性能を把握している。坂本後の世代には珍しく、飛行機の操縦技術もあるため、テストパイロットに向いている。圭子と芳佳の質問にもすぐに対応し、気を効かせたのか、黒江が作った模型も使って、詳細に説明した。

『で、あいつ、私が作ったプラモも使って、ケイと宮藤に説明したわけ。あいつ、そっちの才能もあると思うぜ』

『菅野は突撃馬鹿だしな。孫もそうなんだって?』

『ああ。双子なんだが、あいつと違って、戦ってる時の菅野の性格が地でな。振る舞いが粗暴なんだよ。それであいつ自身も困ってる』

菅野の孫娘は直枝の戦闘時の性格が地であり、困った事に、直枝も困るほどに荒くれ者であり、黒江の義娘『翼』の頭痛の種と告げられている。直枝の性格は『演じている』ものなので、TPOを弁えた振る舞いもこなせるが、二人の孫娘達は『粗暴』の言葉が似合うほど『海賊』じみた振る舞いであり、直枝自身が引いてしまうほどのものだ。

『あいつが困るほどの奴か。気になるな』

『だろ。おし、今から飛行場に向かう。10分くらいで着くと思う』

『こっちも今から出る。ヘリだから、時間は25分くらいだと思う。待っててくれ』

『了解』

黒江は機を旭光と栄光が配備されている飛行場へ向ける。喋りながら敵を撃退してのけるという主人公属性を身に着けたのに苦笑しつつ、本人が別個に戦っているのを知りつつも、調の姿とギアを借り、戦いを続けるのだった。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.