外伝その247『露の衰退と日の中興』


――日本(21世紀)は元・極東ロシアを新領土に加え、望まぬにしろ、広大な大陸領を得てしまった。元来の自衛隊の規模ではまるで『広大な領土の防衛の必要最低限』にも達していないため、力を失った学園都市が抱えていた私兵や扶桑軍系部隊をフル活用しなくてはならない。自衛隊の合憲化こそなったが、元々の三自衛隊は日本列島を守る事に特化しすぎていたため、外征装備を持つ元学園都市系の部隊や扶桑軍系の部隊を『外地』に置くことで、元・極東ロシア地域の治安維持を図った。また、現地に居住していたロシア人は欧州ロシアへ逃げた者も多いが、日本の福祉を期待し、敢えて現地に残留した者もかなりに登った。帝政時代〜ソ連時代に費やされた莫大な開発費と労力の成果を日本の圧倒的武力にまんまと掠め取られたという、日露戦争以来の屈辱はやがて、統合戦争という形で噴出するのである。それはそれとして、日本としても、棚からぼた餅の要領で得てしまった領地の統治と防衛をせねばならぬため、野党が何と言おうと、自衛隊の規模拡大と、扶桑系部隊の活用は急務であった。(そもそも学園都市が極東ロシアにいた軍や警察を綺麗さっぱり駆逐してしまった事は野党も想定外であり、日米安保条約の改正、あるいは縮小を喚いていた立場として、在日米軍の規模を今更、拡大するのを提言するわけにも行かなかった)。扶桑軍の元・大陸方面軍を機械化して配置させるのが適当とするしか、日本としての選択肢がなかった。日本領となった極東ロシア各地のロシア人達の処遇もまだ決まっていなかったとは言え、残された空軍や陸軍、海軍施設の活用も重要事であり、その全ては日本連邦軍の管轄下に置かれた。また、現地インフラと行政が日本のものとなるため、ウラジオストクなどは日本語の看板を増やさないとならないなどの問題も生じている。ロシアはなんとも敗戦後の極東ロシア地域のロシア人に冷淡であり、それも日本の左派が余計に立場を悪くした理由であった。左派はオラーシャ革命の首謀者が新左翼系アナーキストの残党だったり、膨大な核兵器を持つはずのロシアが学園都市にあっさりと屈した事で国内向けの言い訳すら覚束ない有様であり、日本連邦樹立後は『民主主義を体現していると見せるためのお飾り』とすら揶揄されているが、依然として左派的風潮が一定の影響力を残していた――


――日本の国会 2019年――

五月に改元を控えたこの年、日本の国会の注目事は旧・極東ロシア地域の統治を国連から託されたということで開始するに当たり、大陸領の都市名を漢字の当て字にするか否か、である。戦争世代を中心に反対も出ており、結局、カタカナ表記が使われるというのが有力であった。軍事に関することはもはや、自らの大失態で、扶桑との合議制となり、手を出せなくなった左派。東二号作戦の頓挫が最終的なトドメとなった。黒江の負担による慰労金があまりに高額となった事が問題になったためだ。

「黒江綾香統括官の慰労金の金額はあまりにもおかしいのでは?」

「貴方方が騒ぎにしたものだから、統括官の負担が大きく増しているのです。現地が派遣させていた交代要員をUターンさせた事で前線は大きく混乱している。ブラック企業宛らの勤務時間になっているのですが。見てください。この勤務表を」

黒江の勤務時間は参謀職も兼務する事もあり、もはやブラック企業もかくやのレベルであり、公務員の勤務時間のレベルでは無くなっていた。しかも、常人であれば過労死ラインに有に達している。いくら軍隊とは言え、ここまでの勤務時間は目を覆うばかりのものだ。

「……これは何かの間違いでは?」

「貴方方が参謀達を心療内科送りにした結果ですよ。現地で働く参謀は数人ですよ、数人!」

専門色の強い連合艦隊参謀を除けば、現地で任務を果たす参謀はたった数人。また、扶桑皇国軍の参謀は8割が心療内科行きであり、勤務に耐えられる者は2割行けばいいほうであった。それ故に参謀経験があるGウィッチ、とりわけ、黒江があちらこちらに駆り出される理由であった。

「統括官は本来、パイロットですよ。現地で参謀が不足しているために、ついには連合艦隊参謀までも兼務している!」

「温室でぬくぬくとしてる連中が立てる作戦なんぞ兵隊を駒としか見ていないではないか」

「本来、参謀というのは司令官に助言をする役職であって、全部が前線で戦うなど、戦国時代でさえありませんよ!」

旧日本軍の参謀の失敗は情報軽視と兵站軽視が重なって起こった事であり、参謀のシステム自体はプロイセンが発祥である由緒あるものだ。日本は指揮官先頭の風潮が根強く、その考えがバイアスのかかった軍批判に使われてる感が否めない。いくら逸脱した行為を働いた辻政信や石原莞爾などの例があるとは言え、八原博通や堀栄三などの有能な者もいたのも事実だ。

「旧日本軍の失敗は参謀の権限の明確化がされない事で参謀達が己が立場を弁えなくなった事でもありますが、その記憶を使って、貴方方は扶桑軍を機能不全にした!統括官が仮面ライダーや宇宙刑事にコネが無ければ、この作戦は打つ手がありませんでしたよ!」

ここで、仮面ライダーの例としての写真として出されたのは、ある世代の議員には紛れもなくスーパーヒーローであった栄光の七人ライダーである。仮面ライダー一号からストロンガーの活躍は、2019年当時に中堅、もしくはベテランに入り始めた年代の層の議員には強烈に記憶されている。二号の仮面の塗装が一号と違い、ダークグリーンであるのも、栄光の7人の復活を印象づけている。人知れず戦ってきたはずの彼らが何故、全員で公に姿を現し、連合軍を助けてくれているのか。しかも、往時と変わらぬ姿で。それが元・少年仮面ライダー隊出身で、かの立花藤兵衛を知る防衛族議員達の感涙を呼んでいた。仮面ライダー達が名声を馳せた時代からほぼ半世紀近くが経ち、当時の子供達も老境に差し掛かる年代になった時代、昭和時代のような正義のヒーローは陳腐化した嫌いがあった。そんな時代にそれに真っ向から反抗するかのような存在が栄光の七人ライダーであり、既にある種の崇拝の対象として見られていた。黒江がどうやって彼らと連絡手段を確立したのかは追求されなかったが、仮面ライダーの中でも、最古参である七人が参陣していた事が日本にこうやって知れ渡った。

「彼らが来てくれた事は誠に僥倖であり、これは統括官の功績であります。従って、相応の慰労金を出すのは当然であります」

栄光の七人ライダーが先陣を切って怪人軍団に立ち向かい、英霊より目立ちまくりである映像も流される。一号が改造サイクロン号を使っているののも、ネオショッカー戦役を彷彿とさせる。また、ストロンガーを差し置いて、一号がセンターポジションなのは、1975年のクリスマスの時期の『栄光の七人ライダーの凱旋!』という号外記事を思い出させる。この時は11人全員が揃っているが、RXは存在を知られていない仮面ライダー(RXのみは23世紀における現代人)なので、映されていない。また、レイブンズやのび太には教えられているが、実はサイクロン号(三種)、ハリケーンには予備車が二台づつ存在している。本郷と一文字が語ったところによれば、旧サイクロンを使わなくなったのは、ベース車両が貧弱かつオンロード用だったのが関係していたと話し、それでモトクロス戦が盛んになると踏んだ立花藤兵衛が試しに保管していたオフロード車にサイクロン号のエンジンと部品を移植して改造サイクロン号が生まれたと。しかし改造サイクロン号も、度重なるモトクロス戦で足回りが傷んだため、新サイクロン号の設計を行い、その改良がV3のハリケーンにあたる。プロトタイプ自体は新サイクロン号よりも早く完成していた。欧州遠征最末期に完成しており、その際にショッカー欧州支部からは『ネオサイクロン』と呼ばれ、恐れられたという。しかし、当時の桜島一号としての本郷の身体スペックではハリケーンのフルスペックは扱いかねるものであり、変身した状態にもかかわらず、パワーを制御しきれず、無様にコケた事もあったという。再改造され、新一号に変貌した事でハリケーンの性能を調整したタイプを新サイクロン号として製造し、これは乗りこなしている。本郷が後に知ったことだが、ハリケーンの素案はショッカーが『次世代ホッパータイプ用ビークル』として考えていたものであり、それを元にした事が判明している。その次世代型ホッパーこそ、バージョンV3、仮面ライダーV3の元になった基礎設計である。ゲルショッカーが活動していた当時の時点で、ホッパータイプ改造人間は二通りの設計案があり、完全新規設計の案がショウリョウバッタの力を持つバージョンV3と呼称されていたV3の基礎設計だ。それが大首領ジュドに認可され、風見志郎を素体に生まれるように仕組まれていたのがライダーV3だ。その経緯故に、26の秘密を仕組んでいたダブルライダー。ジュドもV3サンダーなどは知っていたため、一部はデストロンに漏洩していたと言えるが、弱点は完全には知られていない。ただし、ダブルタイフーンが片方でも停止すれば、戦闘能力に支障を来す事はバレていたりする。また、トンボもモチーフなためか、パワー特化タイプは苦手、フライディングマフラーの機能が不完全(グライディングマフラーとも。機構としては、スカイライダーのセイリングジャンプのプロトタイプだが、重力制御がV3の設計当時には不完全であった)なことから、空中戦も結局はガンダムと同じような跳躍前提であり、不完全である。ハリケーンを整備している時、風見は幾度か飛行怪人の前に一敗地に塗れた事があると自嘲した。

――ある時の城茂のオートバイショップ――

「風見さん、飛行怪人に負けた時、26の秘密使えば良かったんじゃ」

「知っていたさ。だが、俺のマフラーでは洋みたいな芸当はできん」

「え?」

「洋が自由に飛べるのは重力制御があるからだ。先輩が言っていたが、俺が改造された頃の技術水準では、重力低減装置が小型化できなかったそうだ。それに秘密って言ったって、実は実装予定ってのも混じってるしな」

「え〜!」

「全国の良い子のみんなには内緒だぞ、これは。俺は救命で改造されたしな、そもそも」

「んじゃ、実際に備わってるのは半分以下ぁ?」

「君をがっかりさせるようだが、26個全部は稼働していないってことさ。火柱キックは実装されているが」

風見はかなりはっちゃけているが、26の秘密の全部が実際に備わっているとは限らないとしつつ、ハッタリで公言しつつげていたと告白する。実際、かつての闘いで使用したのはその半分以下である。

「俺の体は次世代のホッパータイプの雛形として、ゲルショッカー時代から設計されていたからな。色々と能力が想定されていたんだ」

V3の能力は多種多様で、後の後輩達の雛形になった能力も含まれている。ストロンガーの雛形と思われるV3サンダーは100万Vの電圧であるとの事。

「でも、なんで使わなかったんです?」

「能力に頼る闘い方では、組織の連中と同じだ。俺なりに『大自然の使者』としての誇りもあるしな」

仮面ライダーは大自然の使者を公言することがままある。古くは一文字が『貴様らのような歪んだ文明の破壊者だ!』と続ける形で宣言したのが起源とされる。その矜持が他のライダーにも伝わり、7人ライダーは立花藤兵衛という共通の師を持つこともあって、大自然の使者と公言することがあった。

「まぁ、俺は能力は多いが、攻撃に使える機能が数えるほどだったってのもあるさ。敬介のライドル、茂の電気みたいにな」

実質的に封印されている火柱キックを除くと、原子炉とダイナモに負担がかかる攻撃機能が多いのもV3の器用貧乏さであった。プリセットされた技を除くと、フリーザーショット、V3サンダーが代表的な攻撃機能だが、試作段階の機能であったのも多く、ダブルタイフーンの暴走の危険も伴うという。

「でも、絶対零度光線なんて、オーロラエクスキューションを人工的に撃ってるのと同じですって」

「ダブルタイフーンが凍りつく欠点があるんだ、あれ。連発不可能な一発屋だ。極限環境で使える技ではないさ」

風見はそう言って苦笑する。

「そう言えば、風見さんのハリケーンって、いつ造られたんです?」

「おやっさんが存命だった頃に聞いたが、本郷先輩が欧州でショッカーと戦っていた時期にプロトタイプを作り、それを調整して、完成したのが俺が使ってる個体だそうだ。旧サイクロンと改造サイクロン号ではエンジンのパワーにフレームが負けてたというし」

「一般には全くの新規製造と触れ込みがありますけど?」

「あれはおやっさんが考えたマスコミ向けの情報だ。ライダーカードとか向けのね。いくらなんでも、悪の組織からぶんどった部品を使ったなんて、しまりが悪いだろとか言ってな」

「あれ?おやっさんってさ、神さんの現役ん時に喫茶店してただろ?」

「ああ。すぐに潰れたがね。アポロガイストとかが殺人事件とか起こしまくったせいだそうだ。おかげで自分の子供には『転職の鬼』とか言われてたらしいがな」

茂も話に混ざってきた。立花藤兵衛は本郷達が現役時代には意外にもまだ壮年で、子供もまだ小さかった。そんな時期、組織のおかげで幾度となく転職を余儀なくされていたことは茂も知っていた。

「お、そうだ。風見さん。おやっさんが本郷さんに最後のマシンを遺していて、今、組み立ててるんだけども、見るかい?」

「おやっさんの最後の遺産?」

「ああ」

茂がこの時に見せたものこそ、後に『ネオサイクロン』と呼ばれしマシーンであった。これまでになく重厚なフォルムを持っていた。立花藤兵衛が改造サイクロン号を更に強化したマシーンになるはずであったが、彼が90年代半ばに谷源次郎と共に亡くなり、仮面ライダー達に渡す機会が無いままに部品単位で眠っていたのを23世紀に生きる立花藤兵衛の遺族が発見し、正式に仮面ライダー達に譲渡された。因みにこの時、同席していた黒江は元の容姿では、23世紀でも動きにくくなっていたため、調の容姿をシンフォギア込みで使っていたので、調を多少成長させた(目測、17歳前後)容姿になっていた。(よく見てみると、瞳の色が違うので、二人の見分けは比較的容易である)



――ガレージ――

「今は組み立て途中なんだが、こんなのだ」」

「ずいぶんとゴツいな。ベース車両はなんだ?」

「わかんねぇが、かなりの排気量のバイクをベースにしていたらしい。俺がもらった時には途中まで組み立てられてた」

「しかし。よく200年近く、良好な状態で保存されていたな」

「組織の技術を使った地下ガレージに置かれていたんだ。俺が見つけて、封印を解いた。その中に置かれていたんだ。うっかり真空状態にあったのを開けようとしたんで、やばかったけどな」

「お前という奴は…。エンジンは?」

「新サイクロンの予備エンジンをチューンナップしたものを積んだ。本郷さんが選んだよ」

「そうか…。旧サイクロンに似てるな?」

「カウルとかは新規製造らしい。改造サイクロン号までの流れに沿ってる基本デザインだ」

「組み立てはどこまで?」

「外装をあといくつかつければ、試運転できるよ。一応、本郷さんにバランスを確認してもらうための写メ撮るから、外に出そう」

三人で外に運ばれるネオサイクロン。既存のライダーマシンより重厚な姿であり、立花藤兵衛は最晩年、より戦闘用に強化したマシンの必要を感じていたのがよく分かる。

「あれ?このベース車、もしかしたら?」

「綾香、覚えあんのか?」

「もしかしたら、これ、比較的大排気量のホ○ダ車じゃないかなぁ…」

「おやっさんが?ホ○ダ??時代的にありえるな」

立花藤兵衛が亡くなる時代には、7人ライダーの現役時に入手していたス○キのバイクよりも、ベース車両が手に入りやすいホ○ダを使い始めていた事が推測された。立花藤兵衛の亡くなった時代、性能が初代サイクロンに近くなったとされるハヤブサはまだ影も形も無いためと、想定用途の都合でフレームが頑丈な車種を選んだのであろう事は想像できた。また、本郷も人間のままであれば、90年代には壮年になっている年代であるのを考慮し、重厚な外見にしたとも言える。

「でも珍しいな。おやっさんにしては」

「ああ。本郷さんの話じゃ、本郷さんの親父さんが生きてた現役ん時は愛好クラグに入ってたほどの入れ込みようだったとかいうし」

立花藤兵衛はオートレーサーとして現役の頃はス○キ車をこよなく愛する事で鳴らしていたほどだったという。実際、組織にもス○キ自動車のオートバイ愛好者がいたのか、初代サイクロンのベースもス○キの車種だ。そのため、極めて異例の選択である。

「そう言えば、歴代のマシンもほとんど」

「ジャングラー含めて、ベース車両はお約束だよ」

「うーん。珍しいですね。そうなると」

「綾ちゃん。気づいたんだが、調ちゃんの姿を借りていたのか」

「風見さんが白のタキシード来たら、番場さんと見分けつかないのと同じです」

黒江は見分けのため、自分で姿を借りれるようになった後には、背丈を高くし、瞳の色を変えるようになっていた。風見と新命明、番場壮吉とほぼ同じ理由だ。シンフォギアについては同じ形状であるので、それしか見分けポイントがない。

「向こう側に断り入れたのかい?」

「一応。ガキ共にはブーブー言われましたけどね」

「まあ、変身できること自体が向こうには想定外なんだ。仕方あるまい」

黒江が容姿を変えている事を通告したのは、使えるようになってしばらくしてからであったため、切歌と響に文句を言われたらしい。しかもシンフォギア込みで使うことから、当時の切歌の嫉妬を買い、私事にシンフォギアを使うことに翼から文句が来たのも事実だ。特に、当時は師弟で普段から纏うのを修行としていたため、現地の法律の縛りでシンフォギアを有事と訓練でしか使えない翼や、LINKERの都合でギアの展開時間が有限の切歌にとっては羨ましいことこの上ない事実だ。

「いいじゃん〜!オレ、そこの世界の住人じゃねぇし、マジな闘いには鎧擬亜や聖衣使うわい」

「先方にしてみれば、戦うための力を、君が普段着代わりに使うのが琴線に触れるんだろう。君の力を目の当たりにすれば、それを纏う意義はないからな。例えるなら、自家用飛行機が武装したF-15や16のような感覚だ」

風見の言う通り、黒江の力はシンフォギアを用途特化させずとも、用途特化変化後のそれを纏う他の装者を寄せ付けない。また、彼女たちの得意とするレンジでの戦闘で、黒江には銃弾の一発も、剣と鎌、拳の一発も当てられない。邪神と対等に渡り合ったという事実もあり、格差を感じていたのだろう。

「21世紀の人間にとってのWWU戦闘機みたいな感覚なんだよな、聖闘士にとっては。鎧戦士にもなったし、余計にそう思う」

「君と智ちゃんは彼女たちにしてみれば、とんでもない怪物なんだろう。おまけに君と感応したあの子も同じ領域だ」

「智子は水瓶座のくせに、鎧戦士としては烈火と輝煌帝なんすよ」

「間違ってはいない。水瓶座が水属性とは決まっていないはずだ」

「翼の奴が聞いたら、一本挑むだろうな。オリンポス十二神に仕えてるのに、東洋の儒教的な力にも目覚めてるなんて」

「ずいぶんお硬いな?そのガキ」

「慕ってた奴が死んでから、口調も態度も中二病かかったっていうガキなのよ、そいつ。向こうにいた時、オリンポス十二神に使えてると分かった後、ずいぶんと絡まれたもんだ」

風鳴翼の事を黒江は『武士道をなんか勘違いしてる、中二病に遅れて目覚めた子供』と認識していた。翼としては、オリンポス十二神に仕えておきながら、武士道にも通じる黒江が気に入らなかったのか、それとも対抗心からか、味方になった時期は模擬戦を事あるごとに挑んだ。しかし、黒江にはまともに相手にされないほうが多く、リディアンの制服姿でシンフォギアの必殺技をこともなげに弾かれる事もあった。その時期の出来事を思いだして苦笑いの黒江。

「こっちは悪いけど、あの時にはナインセンシズに届いてんから、ガキ共の動きなんて止まって見えるんだよなー。あいつらの自信をもうちょい砕いておくべきだったかな」

「程々にしとけ。お前が本気出しゃ、太陽神軍も一蹴できんだろ」

「そりゃそうなんだけど。ガキの一人がタフでさ。彗星拳からのローリングクラッシュでも起き上がってきたんだよ。あんまタフ過ぎて不気味だから、ハイドロブレイザー・ギガバーストでギアを強制解除させたわ」

「よくそいつ、心折れなかったもんだぜ」

響は元々の歪んだ心情と心の支え、聖遺物との融合状態だった事の相乗効果で、反応できなかったとは言え、彗星拳からのローリングクラッシュでも完全には4ダウンせず、食い下がろうとし、黒江にハイドロブレイザー・ギガバーストを打ち込まれた事がある。それでもなお、起き上がろうとするガッツがあるため、後にそれをあっさり折ったなのはの手法のエグさが分かるだろう。逆に、常温核融合級の高エネルギーを受け止められるはずのシンフォギアの許容ダメージを超える一撃を繰り出せる黒江が、第三勢力として見られた当時には双方に警戒されたのだ。

「まーね」

――話はまだまだ続く。これが黒江が自発的に調の姿を使った最初期のエピソードであり、黒江と仮面ライダー達の深い関係を示すエピソードでもあるのだ(続く)。――



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