外伝2『太平洋戦争編』
行間『異・太平洋戦争inJAP』


――連邦軍の介入と、日本との交流は、扶桑皇国はじめ、ウィッチ世界の各国に恩恵を与えたものの、多くの人の運命を固定してしまったり、多くの兵器が生まれなかったりしたり、日本が指摘した事は連邦軍が矯正した、あるいは矯正中であった事も多かった。そのため、日本側が腰を抜かす事例も多かった。

――ケース1 レシプロ戦闘機の場合

「誉エンジンはいかがなものか……」

「ウチでは、ハ43が主力エンジンとなったので、ご心配なく。改良して2400馬力まで行きまして」

扶桑の軍需産業は、繰り返しなされる『誉』エンジンへの批判に飽き飽きで、ハ43に主力を決定し、紫電改・疾風はそれを積んだこと、更にターボプロップエンジンを積みつつあると繰り返し説明する。日本側は自分達が苦しんだ分野である大馬力レシプロエンジンの実物を見るまで安心できず、実際に飛行した紫電改を見ても、『91オクタンで飛ばしてるんでしょ?100オクタンなんて手に入らないし』と、扶桑の良好な燃料事情を考慮しない発言も多かったという。また、1600馬力エンジンとなった金星系統最終型を積む五式戦を絶賛し、三式戦のハ40が貶される事も多かった。また、元日本軍人だった老人達が、若かりし頃の思い出を追体験する場として、扶桑軍が一線から下げた零戦、隼、初期型紫電改、疾風を操縦するツアーも行われた。これは扶桑の第一線機は1947年では、次世代のジェット戦闘機になりつつあり、レシプロ戦闘機を第一線で大量運用する必要が薄れたためだ。




――ケース2 ジェット戦闘機の場合。

「黒江一尉!」

「ああ、なんだ。お前か。ここでは私は佐官だぞ」

「失礼しました」

「まあ、いい。どうだ?ドラケンの試乗は」

「日本でドラケンというのが信じがたいですが」

黒江は自衛隊との交流の窓口にされており、空自から選抜された人員が、64へ研修に来た事もある。当時、自衛隊では姿を消していた『F-104J』、『F-86』を懐かしがり、乗る高官も多かった。最も驚かれたのが、震電の末裔である『震電改二』や、扶桑が局地戦闘機の後継機として導入した『ドラケン』である。ドラケンに関しては、作ったサーブ社自身が腰を抜かし、知れ渡った翌日には、サーブ社の幹部が視察に訪れたほどだった。64戦隊の運用方法は、サーブ社とスウェーデン空軍が推奨した条件をバッチリ満たしており、スウェーデン空軍も『日本がこれほどまでに上手く運用できるとは……』と舌を巻いた。ドラケンの相手が主に爆撃機であった事や、日本列島や南洋島各地の基地の局地戦闘機や夜間戦闘機部隊が改編された防空部隊に分散配備され、爆撃機の究極と言える米系超重爆に戦いを挑むという光景に涙を流すスウェーデン空軍関係者もいたという。

「震電の後継機もあるんだ、乗っていけばどうだ?」

「ありがとうございます。それでは失礼します」

と、彼と話した後、黒江は自分用に確保していたF-15Jで出撃したりし、自衛隊関係者からは『第二世代相手じゃ、ファントムで釣りが来るんだし、わざわざイーグルを持ち出すなよ?』と言われたとか。黒江は『バーロー、ファントムじゃ一人で行けねーよ』と返したという。見学にきていた空自の高官は、64の格納庫に並べられた空自の歴代主力機に深い感慨を抱き、『マルヨンでB-52落とせる?』と、幹部の黒江と武子に問い、黒江は『余裕のよっちゃんだぜ』、武子も『レシプロでB-17と戦うより、よほど楽な仕事です』と返したとか。






――ケース3 陸上兵器の場合

陸上兵器に関しては、陸自に扶桑軍が泣きつく立場であり、陸自がレストアし、表向きスクラップ処理として、74式戦車を極秘裏に引き渡す一方、62式機関銃のライセンス生産については、陸自の制服組から逆に『悪いこと言わないから、素直に旧軍式機関銃の発展で……』と止められた。これは62式の現場での評判の悪さ、当時も現役で運用されている『九二式重機関銃』が意外と評価されている事から来ていたが、自衛隊との間で、その派生型で、改良されていた『74式車載7.62mm機関銃』を提供する事で折り合いをつけつつ、減産に入っていた九二式重機関銃が再び増産されたという。また、扶桑が独自運用していた『砲戦車』カテゴリーについても、陸自第7師団から運用指導が行われ、砲戦車は火消しとしての役割を本格的に担う事になり、74式の扶桑での生産開始後も、74式を超える火力を活かし、要所で守護神、破城槌として活躍したという。そのため、砲戦車カテゴリーは扶桑における『自走砲』のカテゴライズとして定着し、太平洋戦争末期には、『99式自走155mmりゅう弾砲』の基本設計を用いた重装甲を持つ砲戦車が登場し、敵を恐れさせたという。






――ケース4 海上・海中兵器

海上兵器に関しては大規模に近代兵器が導入されているものの、運用経験は浅いため、やはり、海上自衛隊が運用指導を行い、ダメージコントロール術もレクチャーした。そのため、太平洋戦争が中期に入る頃から現れた新鋭艦の生存率は高く、モンタナ級とアイオワ級のSHSの直撃を受けて、各部に大ダメージを負った改大和型戦艦『三河』が母港に帰り着くほどの生存性を獲得した。そのノウハウで船体設計が何度も改定された次期戦艦、即ち超大和型戦艦は、突貫工事で1949年に起工順の二番艦『播磨』が竣工。高い攻撃力と異常な防御力を両立した同艦は、戦列に加わるのが遅れた起工順の一番艦『越後』(本来は三河となった大和型戦艦の艦名として予定されたもの)の不在を物ともしない活躍を見せる。

『見ろ!モンタナ級が、まるでゴミのようだ!!』

と、言わんばかりの51cm速射砲の超火力。投射重量では三笠型に及ばないが、大和型戦艦を余裕で廃艦にできるほどの投射重量を短時間で目標へ投射可能な攻撃力、ミサイルを物ともしない高い防御力は、扶桑が日本の軍事的外交の代行を務める際にも発揮され、日本の21世紀の外交が上手くいく要因となった。また、潜水艦に関しては、海上自衛隊の潜水艦を請け負う造船会社が受注生産を行い、納入していったとの事。





――ケース5 人型機動兵器の場合

これについては、日本の考えが及ぶものではなく、連邦軍からの貸与名目で保有しているため、自衛隊へ見せる格納庫とは別の格納庫に置かれている。



「ここは、見られたら大事になりますからね」

「当たり前だ。連邦軍のZ系バリエーション、リ・ガズィのバックウエポンシステム装備まであるんだぞ?いくら未来のあいつらが作るって言っても、刺激がでかすぎるぜ」

「リ・ガズィなんて、どうしてもらってきたんです?中途半端で嫌いだって」

「プルトニウスの抱き合わせセットだったんだよ、宮藤……」

「なんですか、その、クソゲーを抱き合わせさせてたファミコンソフトみたいなの……」

すっかり、ものの例えが現在ナイズされている芳佳。ファミコンソフトという単語が普通に出てくるところも凄いのだが。

「ここにいたのかね、一尉」

「あー〜!しまった、おっちゃんの案内がまだあったんだっけ!?」

「何やってるんですか、黒江さん!もう誤魔化せませんよ!」

「えーい、こうなったらヤケだヤケ!おっちゃん、私の部下たちを連れてきてくれ。ただし、ここで見るものはオフレコで」

こうして、黒江は空自での同僚達に、『実際に兵器として使われるZガンダムの血統』を成り行きで見せる事になった。そのため、漫画の設定では『ごく少数生産に終わった』とされる機体も実際では、運用成果により量産されていたりする。リ・ガズィは半可変機としてはダメダメの判定だが、Z系としては高い強度が見直され、『Z系のフレームを持つ上位機種なMS』と割り切り、BWSを使わない部隊もある。この時に目の当たりにした自衛官の子孫が、Zガンダムの設計に携わったエンジニアの一人であるという、歴史的予定調和も起こっていた。黒江は言い訳として、『「異世界からの輸入機」とした。「ブラックボックスだから詳しい事は解らん。世界的危機のある世界じゃなければ提供しないそうだ」と、説明するが、黒江の自衛隊での同僚達はアニメオタクだらけであり、その正体はバレバレであった。黒江は自衛隊での勤務中、自衛隊での同僚から『PGのZを作っておくれ』と頼まれ、なのはに丸投げし、なのはにはバイト代を請求されたという。そのなのはも、成人後は空自に就職したので、それぞれの世界の空自で、お互いに似た立ち位置にいる。なのはの時代はF-35が配備されだしているため、そこで黒江に電話で自慢し、大いに悔しがらせたとか。



――1948年に入ると、次元震の余震が頻発するようになり、ある時に菅野は驚くべきモノをみる。

「嘘だろ……今度は俺かよ!?」

菅野の目に映るは自分自身。だが、細かい違いがあり、背丈が小さかったり、声が多少幼い感じであるなどの違いがあった。

「!俺に気づいたな……っておいおい!?」

「ネウロイめ、今度はこのオレに化けやがって!!化けの皮を剥がしてやる!!」

「マジかよ、なんで自分自身とドッグファイトしなけりゃならねんだー!?」

菅野は自分自身とドンパチする羽目に陥ったものの、やがて経験値の差が表れる。

「へっ!しゃーねー、気絶させて運ぶちゃねーな!」

「テメェ、オレの口調を真似するな!」

と、二人の菅野は撃ち合いになるが、菅野Aのほうが優位に立つ。二人の間に横たわる実践経験値がAのほうが上だからだが、ここで菅野はある事に気づく。

「何ぃ、字が違う!……やっぱりこいつは……!」

名字に一文字だけ違いがあった。菅野となるところの菅が管となっているのが、チラッと見えた。そして、菅野は別の自分が拳を突き立てて急降下してくるのを視認し、咄嗟に彗星拳を放った。意外に、流星拳や彗星拳は闘技の基本形であるため、身近に聖闘士がいると習得しやすい。それを管野は拳で迎撃しようとしたが、当然ながら、菅野の固有魔法と小宇宙を組み合わせた彗星拳は管野のシールドで覆った拳を弾く。その余波で、管野のストライカーの電気系統が逝かれる。彗星拳の余波がストライカーに多大なダメージを与えたのだ。

「ユニットが!?うあっ!?」

「ったく、メンドーかけんじゃねーぞ、バカヤロウ!」

菅野は、別の自分を回収するが、14歳相当の自分を他人目線で見ると、妙な感じである。とにかく、基地に戻り、幹部達に事情を説明する。すると。

「お前までスライムになったのか。どーすんだ、こいつ……」

と、黒江が言う。

「人をスライムみたいに言うんじゃねー!」

と、憤慨する菅野。しかし、管野が現れたので、またもややこしい事態となり、進展を見せる。

「うーん……だ、誰だテメエら!?」

「管野……少尉か?」

「いかにも、オレは管野だけど?あんた、見た顔だ。そうだ、陸軍の元エースの……」

「老いぼれ扱いは止めて欲しいな、少尉。西沢中尉に言いつけるぞ」

黒江は遊んでいた。口調もわざとらしくしているあたりは役者である。菅野は呆れる。

「姉御を知ってるのか、アンタ」

「リバウ三羽烏とは古い付き合いでな」

嘘と本当を織り交ぜ、管野から上手く話を引き出す。

(あ〜、今のぜってぇカチーンときたよ。黒江さん、ロートル扱いされんの嫌いだしな)

「後で事情を話してもらう。それまでその場で待機していろ。私は上に報告しに行ってくる」

と、部屋を出る。出た途端……。


「おい菅野!あんだよ、あの態度はよ!」

「俺じゃねーし!?つーか出ていきなり切れんなよ!」

「私はまだ現役だっつーの!ったく、あのガキャ……」

これである。黒江は本来ならば、エクスウィッチであるので、元と言われるのは当然なのだが、自分の年を気にしているのが分かる。

「あの俺の事を調べるのに、どのくらいかかる?」

「坂本Bに裏を取ってもらう。一日か二日で充分だろう。ついでにラル少佐やロスマン少尉、サーシャ大尉にも連絡を取る。原隊のブレイブウィッチーズに連絡とろうとしたら、説明が面倒だしな」

「参ったな、あの俺、ちょっとガキッぽいんだもの」

「オメーだって、初めて会った時はあれに近かったろうがw」

「そ、それをいうなよ!」

「ほれ、コーラ」

「ん〜!」

この頃になると、黒江と菅野は添い寝同盟というべき関係を確立しており、菅野の『姉御』である西沢が黒江の配下にいる事もあり、菅野は黒江の妹分のような関係にあった。そのため、芳佳&智子&圭子を加えた『五バカ』と、当時の上層部は見ていた。これは黒江が宮藤家に下宿しており、菅野と芳佳を使い走りにしていたため、一括りに見ていたからだ。当時の上層部は明治生まれの者たちが多数派だったので、自由奔放なスリーレイブンズの素行を快く思わない者も多かった。が、岡田啓介や竹井元少将などの長老格からの受けは良かった。これは伝統を築いた者とそうでない世代の者の差で、明治中〜末期生まれの者達の苦言を、明治初期生まれの長老達が窘める事も多かった。『すべき事をこなし、人に対しては洒落っ気を忘れない、それが軍人というものだろう?』と。長老達の後援もあり、扶桑軍の空気は戦前より爽やかになったという。『俺みたいに賭場荒らしとかしたわけじゃねぇし、ガタガタ言うなよ(笑)』とは、山本五十六の言だ。


――管野への事情聴取はこの2日後に行われたのだが、『502になんで連絡させてくれねぇんだ!!俺をこんなところで軟禁するんじゃねぇ!』と吠えまくった。それを見かねた菅野がポカリと殴った。

『テメー、ギャーギャー喚くんじゃねーぞバカヤロウ!』と。

「あー!テメー、俺の偽者!」

「偽者じゃねぇ!飛行64戦隊第一中隊『新撰組』、菅野直枝様だ!!お前は別次元に来ちまってるんだよコノヤロウ!」

「おい、菅野。もうちょい穏やかにできねーのかよ。つまりだ。こいつはお前自身なわけだ。時間軸と立場が違う、な。と、言っても、ここはお前のいた世界とは違う『世界』であって……」

「つまりテメェは……18歳のオレ、なのか?」

「平たく言えばそうなる。お前とは辿った道が全然違うがな」

「違うってどういうことだよ?」

「遣欧艦隊から本土に呼び戻されて、本土防空部隊の343空の分隊長してたんだよ、俺様は。だから、階級が大尉なんだよ。502には確かに参加したが、すぐに501に吸収されたしな」

この世界でも、502は確かに結成されているものの、菅野は『大尉』として参加し、周囲との衝突もそれほど起こしていない。隊長の職責に慣れていたので、周囲への接し方を心得ていたからだ。

「つまりお前は、指揮官の資格を持ってるのか?」

「そういうこった。俺のストライカーの写真だが、塗装見てみろ」

「何ぃ!?指揮官機のストライプ模様がある!?」

菅野はこう見えても空中指揮官であるので、指揮官識別の塗装が成されている。『新撰組』の鉄砲玉を自負するため、芳佳がエレメントを組むことが必須である。静夏を芳佳をバックアップする三番機にする事も検討されているが、静夏の練度未熟なため、転属間もない雁渕姉妹と共に第3中隊『極天隊』で錬成中だ。

「どうだ?」

「……わかったよ!で、お前のスコアは?」

「共同込みで72機だけど?」

「……俺より多いじゃねーか!?」

「しゃーねーだろ。お前より激戦地にいたんだし」

菅野は501時代にスコアを稼ぎ、この時期には70機超えを果たしていた。ジェット戦闘機がその内の20機を占めているのもあり、この時期に入隊してきた世代の憧れになっている。

「ぐぬぬ……んじゃ、孝美はどうなったんだよ?」

「ああ、雁渕か。あいつは第三中隊で錬成中だ。移籍が遅れたしな」

「ん?なんで孝美を名字で呼んでんだよ?」

「同期だったけど、343空で会うまでは面識無かったからな。そのせいか」

「なぁ!?ど、同期!?」

「そっちじゃなんか、違いそうだな。異世界ってのは、ややこしいぜ」

「菅野、親父さんに報告を頼む。私はこいつの調書をまとめてくる」

「おう、ご苦労さん」

管野は訳が分からなかったが、この日より、64戦隊預かりとなった。ここが別世界である事や、別の自分の存在を認めざるを得ない状況と、西沢の存在もあり、割と大人しかった。その管野の事を源田に報告した菅野。源田は大笑し、こう言った。

「ガハハ、そうか。ついに現れおったか」

「笑い事じゃねーって、親父。姉様やお兄ちゃんになんて言えばいいんだよぉ〜」

「俺の妹です、とか言えばいいだろう(笑)」

「あ、あのなぁ……」

「管野はとりあえず、B側の裏付けが取れ次第、B側と行動を共にさせる。場合によれば、雁渕と組ませて出す」

「いいんですか?」

「これは未確認情報だが、菅野、パラサイト・ファイターを知っているな?」

「えーと、未来世界の冷戦の初期の頃に試行錯誤された手法だっけ?」

「敵はそれをウィッチに置き換えて、実験を開始したらしい」

「パラサイト・ファイターじゃなく、パラサイトウィッチィ!?」

「そうだ。敵も未来情報を持っている。後世のジェット機を作ることで、パラサイト・ファイター計画を立てる必要は消えたが、今度はウィッチのジェットストライカーの行動時間が短く、爆撃機の護衛に向いていない事、こっちがドラケンやマルヨンで迎撃するので、ウィッチ閥から提言があったそうだ」

リベリオン本国は本国で、超重爆の護衛を務められる戦闘機が不足していた。ティターンズの技術援助で、セイバーなどの第一世代が空軍に出回り、第二世代機が防空集団に配備され始めたのだが、海軍に比して航空機の更新は遅れがちであり、第二次大戦型レシプロ機も第一線に多数が残置していた。ましてや、超重爆を護衛できる戦闘機はレシプロ機しかなく、扶桑空軍の誇る第二世代ジェット機の敵では無かった。そこでウィッチを爆弾倉に搭乗させ、超重爆の援護を行わせる『パラサイトウィッチ』計画が立案された。これは扶桑も予想外で、飛行隊に思わぬ損害が出たのだ。

「どうするんだよ?」

「幸い、こっちのほうが技術は進んでいる。空中給油で迎撃機編隊にウィッチを随伴させ、パラサイトウィッチに対処させる。あるいは要撃機にウィッチを載せ、空中で展開させる案も出ている。黒江や加東のように、戦闘機でウィッチを落とせるものは稀だしな」

「あの人達がバケモンだってば」

「加藤と黒江には通達してある。準備しておけ」

「了解」

「陸は、戦車がダメだから、もっぱら黒江の弟子たちに火消しをしてもらってるそうだ」

「あいつら、30万くらい後送させたとか言ってますけど、数減らないそうですよ」

フェイトと箒は闘技でどんどん陸軍を撤退に追い込んでいるが、それを上回る勢いで補充されるので、戦況の火消しにしかならなかった。ウィッチの数は少ないので、遭遇率は低いが、むしろ『インベーダーみたいに、湧いて出てくる』通常兵科の兵士のほうが怖いとの事。

「ウィッチはどうだ?」

「リベリオンはウィッチそんなにいないけど、陸戦ユニットに性能差があるから、会ったウィッチ部隊はもれなく大損害だって。だから、フェイト達が頑張ってるんだけど、うんざりしてるぜ」

「こちらはパワードスーツ装備部隊があるので、それで戦車部隊の体たらくを補っているからな。五式改シリーズでは、防御力が追いついていないからな。74の配備がもっと進めば……」

ミッド動乱で活躍した五式中戦車改シリーズだが、より強力な戦車であるM48には、防御力が及ばず、撃破台数も1948年ではかなりの台数に上っていた。そこで、74式戦車のコピーが急務とされたが、当然ながら、必要技術レベルが更に高いため、コピーは難航。自衛隊から74式そのものをスクラップ名目で供与してもらう有様だった。その74式は本土でまず教導部隊に配備され、前線には、99式自走155ミリ榴弾砲と共に、ミッド動乱を経験した部隊の損耗補充を兼ねて送られ始めていた。74式戦車は61式戦車相当の五式改の大半の生産車より格段の高性能であり、パットン戦車を正面から撃破可能な火力と90ミリ砲程度なら有に弾く装甲を有し、更に自衛隊が『次期戦車用装甲の実験』と称し、扶桑向けにパワーアップキットを送ってくれたため、士気は大いに高揚した。航空戦力の優位を得ている扶桑陸軍は、74式戦車、99式自走榴弾砲、MLRSなどの装備を得る事で戦況の好転に成功し始める。それが、ティターンズ率いるリベリオン陸軍の攻勢の初の戦略的失敗となった『イオウジマ作戦』に繋がるのだった。



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