外伝その333『プリキュアと英雄たち』


――歴代プリキュアが集合しつつあるが、それだけでは決定打にはならない。既にスペックはあらかた把握されているため、通常の手段では対抗しようがない昭和ライダーと違い、プリキュアの基礎能力値は『超人が更に鍛え上げれば、比較的容易に追いつける』水準であるのもあり、苦戦を余儀なくされていた。確かにその登場そのものは特筆すべき事項だが、歴代組織の怪人らへの身体能力差はなく、特に、クライシス帝国が送り込む強力な怪魔獣人や怪魔ロボット達には『正面から戦えはするが、怪人の装甲をぶち破れる決定打を持たない』事から、マリバロンやボスガンなどの幹部達からも『小賢しい小娘共』と軽んじられ気味であった。当時、クライシス帝国は怪魔界が滅びに向かい、なんとしても新天地を欲していた。だが、クライシス帝国の臣民はコスモリバースシステムで復活した地球の環境にさえ適合出来ないほどに虚弱体質であり、そこがクライシス帝国の難点であり続けた。更なる障害たる、バダンによる攻撃で更に追い詰められつつあったクライシス帝国はもはや進退窮まりつつあった――





――いずも型護衛艦――

「RXとバダンの攻撃でクライシス帝国はいよいよ進退窮まりつつあるか。こりゃ、クライシス帝国はRX打倒のためだけにバダンの軍門に下るか、絶望的な戦いを続けるか。その二つだな」

「昭和ライダーの最後の敵だったっていう、あの?」

「そうだ。メロディ、マーメイド、ハッピー、スカーレット、ミューズが一戦を交えたが、歴代昭和ライダーの加勢で倒せるくらいだったと報告を受けてる。浄化技が多いピーチ以降のプリキュアじゃ苦戦して当たり前だ」

『フレッシュプリキュア!』以降は純粋な攻撃エネルギーを放つ技を持つプリキュアは減っているため、『やるか、やられるか』の戦闘ではクライシス帝国の軍勢には決定打に欠けてしまい、歴代の昭和ライダーの助勢が必須な局面が多い。陸の戦線に救援に向かった5人のプリキュアだが、技が決定打にならずに苦戦し、歴代昭和ライダーらの援護で退けた事をドリームとピーチに伝える。クライシス帝国はパワーアップし終えた後の仮面ライダーBLACKを凌駕する戦闘レベルの軍隊を誇っており、光太郎がBLACKのままでは太刀打ち出来なかったとされる。そのレベルの攻防速の怪人を送り出すため、メロディが輻射波動の力、スカーレットが王剣を持ち出すことで、ようやくまともな戦いになる始末であった。昭和ライダー達が援護に駆けつけ、その鍛えられた技で倒したため、正面戦闘向けのプリキュアか、そうでないプリキュアをふるいにかける必要性を武子は訴えている。

「武子は『戦闘向けのプリキュア』を選抜しろってさ。あいつは戦闘に関しては合理主義なところあるから」

「でも先輩。純粋に戦闘向きってくくりじゃ、スイートの後のプリキュアが…」

「それだ。その理屈だと、スイートの後のプリキュアの多くが使えん。武子は、俺とまっつぁんで説得する。あいつは心配性だからな」

「頼みます」

「ものは使いようだ。あいつはデスクワークが多くなって、戦いのカンが鈍ってやがるからな」

「身体能力面じゃ、歴代で差はないはずですけどねぇ。パラメータの割り振りが違うだけなんですよ、本当」

「お前らは初代と傾向が同じだからいいが、アラモードや魔法つかい、プリンセスの連中はどうするんだ、的な話になるしな。ハピネスチャージは個人の傾向も大きいし。初代とスプラッシュスターの傾向を純粋に継ぐのは、実質はメロディの代が最後のはずだしな」

「隊長は何を考えてるんですか?」

「ハッピー以降の代を戦力外通告するんですか?」

「そう怒るな。奴は合理的に判断しただけだ。お前らを怒らせるつもりはないと思うぜ」 

ドリームとピーチは武子からの通達に不満を滲ませる。黒江は武子を説得すると約束すると同時に、プリキュアに関しても博識であることを明確にする。

「だが、歴代の仮面ライダー達に比べれば、お前達は力不足なのは事実だ。RXと互角に渡り合うクライシス帝国から軽んじられるのは無理はねぇよ」

「昭和ライダーはライダーマン以外はサイボーグじゃないですかー!」

「全員が戦闘用のサイボーグじゃないし、スカイさんは助命目的で改造されて、特訓で強くなっていったんだ。スーパー1に至っちゃ宇宙開発用だぞ。何事も特訓だ」

「特訓かぁ…」

「お前らは経験を引き継いだが、経験則だけじゃ勝てん戦だ。対人戦は百戦錬磨の仮面ライダーのほうが上だからな。それに殺す気でかかってくる敵にゃ、アラモードや魔法つかいの連中は不向きなのは変わりないからな。お前らが前面に出る必要がある。はーちゃんはV3やZXと同じで、ミラクルとマジカルを殺された直後は復讐を強く望んでたが、のび太が20年かけて落ち着かせて、特訓させたから、ストナーサンシャイン撃てるんだしな」

「問題は技かぁ」

「シャインスパークやストナーサンシャインは決め技として覚えろ。ドワォ兵器だが、威力は満点だ。後は歴代の単独技を使いこなせ。それだけでも戦術は広がるぞ。それとライダーキックを撃てるようにしとけ。ドリルキックを覚えれば、相手の首を跳ね飛ばせる」

「できるんですか」

「覚えた。シンフォギア世界にいた時に一回、立花響を撃退する切り札で使った」

黒江は技のラーニングも得意分野で、仮面ライダーストロンガーの『超電子ドリルキック』をシンフォギア世界で使った事があると明言した。響は悪く言えば、跳躍からのジャッキアップパンチを得意技かつ『鉾』にしているため、動きを読めば、容易く対策は立てられる。厳密に言えば、響のガングニールの絶対性に疑問符を(模擬戦でない、『装者』への本気の一撃を防いたという意味で)つけたのは自分が最初だという。

「先輩、あの格好でよくできましたね」

「ものは慣れようだ。それに着の身着のままでマリア達から逃げてきたから、あの格好のままでバイトして稼いでた。聖闘士でもあるし、俺が使う分には特段の問題はなかったしな。お前らが変身したままでバイトするようなもんだ」

「それ、クリスちゃんや風鳴翼ちゃんがめっちゃ愚痴ってましたよ?模擬戦した時に」

「あいつらは現地の法律に縛られてるしな。俺みたいな自由人な振る舞いは出来ん。のび太んちに行って、俺と同じ気分味わってみろって言ってるんだがね」

雪音クリスや風鳴翼は、黒江と共闘に至った後はその奔放な振る舞いに面食らい、黒江の行いを聞き、大いに困惑していた。適合率の高い彼女達であれば、理論上は装着時間に制限はないが、エルフナインがギアのメンテナンス上の観点から反対している。(黒江が持ち出したシュルシャガナを加入後に調査し、イグナイトモジュール改修のために修理したところ、他のギアより自然に聖遺物の力が勃起していたことがわかり、驚愕している。また、聖遺物の霊格を宿す身ということは錬金術や現代科学では説明不能なので、これもエルフナインが悩む問題である。)

「りんちゃんから聞きましたよ、はーちゃんをコミケでサークルの売り子にしてるんですって?」

「2016年からな。ちょうど、のび太の世界で放映中の時間軸になったしな。のび太の倅を助けたのはそれ以降だから、話題になったんだ」

「でも、マーチをよく連れ出せましたね?」

「箒の世界に転生してたしな。ラウラ・ボーデヴィッヒとして。それと、キュアビートと連絡が取れた。ゼントラーディに転生してたが、地球に向かったって連絡が入った」

「えーと、今はクラン・クランって名前なんだっけ?」

「そうだ。だが、エレンの姿で来ると思うよ。クラン・クランとしては、マイクローン化すると遺伝子異常で幼児化する体質だったし、エレンの見かけはミドルティーンだろ?すっごく喜んでた。元からメル友でな。フロンティア船団にいた時に共闘もした」

クラン・クラン。最初に地球側についたゼントラーディの一族の出で、S.M.Sでは凄腕で鳴らすエースパイロットである。ゼントラーディとしては19歳で『大人』であるが、マイクローン化処理すると、幼児化するという遺伝子異常を保有する身である。黒江とは、黒江が研修でフロンティア船団に滞在していた頃からの友人である。黒川エレン/キュアビートとしての自我の覚醒が起こり、黒川エレンの姿を得たため、マイクローン化した後の見かけがローティーンからミドルティーンに『改善』した事に大喜びであり、プリキュアとしての自覚も芽生えたため、黒川エレン名義での活動を始めたという。それはシャーリーとアストルフォには通達されている。

「アストルフォとシャーリーには伝えてある。あいつは覚醒前の時点で、ゼントラーディでそれなりに鳴らすエースパイロットだったから、バルキリーとか動かせる。最も、今はフロンティア船団の入植した星から向かってるから、色々な兼ね合いで時間がかかるそうだ」

「兼ね合い?」

「フロンティア星の星系の近くには、小さいフォールド断層があるんだよ。ワープしようにも、その星系、運悪く、ボラー連邦の勢力圏の近くのところなんだよ」

「つまるところ、国境近く?」

「そうだ。地球に行くには迂回路取らないといけないから、時間がなぁ。間に合うかどうか」

バジュラ星は便宜的に『フロンティア星』と公的には呼称される。自転周期は地球とほぼ同じで、イルミダスの台頭後の時代は地球のイルミダスへの反抗拠点にもなっている。(ゲッターエンペラーがイルミダスを滅ぼす前に立ち寄った星でもある)23世紀の頃は地球連邦、ボラー連邦、ガルマン・ガミラスの三つ巴が興り始めた時代であり、イルミダスはその頃はまだ、銀河系には勢力が及んでいなかった。地球連邦本星をデザリアムに続いて、制圧する国家の名誉は得たが、地球人への弾圧の嘆きの声に呼応して目覚めたゲッターエンペラーに為す術もなく、瞬く間に本国まで蹂躙されていく事となるのであった。









――2019年の日本。歴代プリキュアが歴代仮面ライダーやスーパー戦隊と轡を並べて、共に戦う姿が話題となり、バダンが文字通りに『ナチスの生き残りが組織した残党組織』である事も明確に示された。70年代から80年代にかけて、彼らによるテロリズムに遭ってきた日本国は法に縛られ、自衛隊も満足に動かせずにいたため、仮面ライダーとその他のヒーローの活動や国連のスーパー戦隊結成を容認することでしか具体的対応が取れなかった。2010年代にもなると、多少なりとも状況が変わり、若者たちが老年層がウィッチ世界に引き起こした混乱の責任を問う動きを見せ、世代間対立の様相を呈し始めた。だが、扶桑の社会に混乱を引き起こしたことへ老年層が後ろめたさを持っていないわけではなく、自衛隊の派遣を最終的に容認したり、人手不足への対応策という名目で黒江達の『特権』を認めたりするなど、一定の良識と配慮は見せている。零部隊(大日本帝国陸軍の本土決戦の切り札)の存在が明るみになったため、ウィッチを軽視するわけにもいかなくなり、日本で素養が認められた若者を扶桑に送り込む施策を始めてもいる。この時に送り込まれた若者達が扶桑の太平洋戦争で従軍した若手ウィッチの六割を占める事になる。――


――ススキヶ原――

ここ、ススキヶ原も2019年になると、地主の代替わりで再開発が進み、駅舎も駅ビルに変わっており、裏山の頂上には、22世紀終盤まで営業する事になるという『ヒルトップホテル』という中規模のホテルが開業している。(23世紀には移転した)そんな再開発が進むススキヶ原の駅前のタワーマンションのワンフロア丸ごとを住まいにした野比家。マンションの運営そのものをG機関が行う関係で、住民はG機関の関係者だけで、近所にはつづれ屋ホテルも存在する。そんなススキヶ原に送り込まれたハピネスチャージプリキュアの生き残りである二人。『修行の一環だ、変身した姿で過ごすように』とキュアマーチから言いつけがあったため、愛乃めぐみと氷川いおなの二人は他のプリキュアと違い、ノーマル形態で飛行能力を有するという便利な点もあり、プリキュア姿で過ごすようになっていた。

「まさか、ドリームやメロディが世話になったとは言え、その家の息子さんの送り迎えをするとは……」

「仕方あるまい。のび太氏の奥方は日本政府の依頼があって、裏世界で働いている。息子さんの面倒を隠居したご父母にさせるわけにもいかんだろう」

ノビスケを幼稚園に送り届けたキュアマーチとキュアフォーチュン。マーチの口から、日本国内での扶桑皇国への不満分子の燻り出しと『処理』に静香が関わっている事、その関係で家を留守にしているため、夫妻の息子のノビスケの幼稚園への送迎や遊び相手をしなくてはならないと説く。

「でも、いいんですか、マーチ」

「なに、構わんさ。私は子供は好きだ、前世で兄弟が多かったからかもしれんな」

マーチの口調は前世と違い、ラウラ・ボーデヴィッヒとしての固めの中性的なものであるため、フォーチュンを驚かせている。プリキュアの姿で子供の遊び相手や家事をする事に抵抗があるフォーチュンと違い、前世で下の兄弟が多かったためか、マーチは子煩悩な一面を見せる。

「この近くに、馴染みの喫茶店がある。私が奢るから、パフェと珈琲でも食っていこう。買い物はラブリーに任せてある」

「は、はぁ。この姿で、ですか?」

「この街はドラえもん氏のおかげで、たいていの事には驚かんようになってるからな。私達が変身して、町をうろつこうが、問題にならん。お前のいた町より進んでいると言えるな」

キュアマーチは、あくまでも『ラウラ・ボーデヴィッヒが変化した姿である』という括りに収まっているため、生前と振る舞いに差がある。プリキュア出身者ではあるが、現在は軍人であるキュアマーチ、キュアメロディ、キュアドリーム、民間軍事会社の傭兵であるキュアビートは軍事面で、他のプリキュアを教導する立場にあると言える。

「お前らをこれから鍛えなくてはならんが、時間がかかる。お前らを『炎が舞い、空が割れる』戦場で生き残れるようにしてやる。仲間のためにも、強くなるんだ」

「あ、あんなロボットが跳梁跋扈する戦場に?」

「あれは極端にすぎるものだが、改造人間のみならず、色々な化物が世の中にはいる。それらに対抗できる力を得る必要があるのだ」

マジンカイザーやマジンエンペラーGは極端な例だが、フェリーチェはミラクルとマジカルの仇討ちを願い続けた結果、ゲッターエネルギーと光子力の制御に至った。姿は変化していないが、特訓の末に二つの力を制御した結果、マジンカイザー、マジンエンペラーG、真ゲッターロボ、真ゲッタードラゴンの力を得た。20年の歳月が成し得た奇跡である。

「フェリーチェはマジンガーとゲッター、『神と悪魔の力を持つ』スーパーロボットの力を特訓と願いで得た。20年かけたと言っていたがな」

「に、二十年!?」

「フェリーチェは元々、元いた世界の大地母神の後継者だ。マジンガーZEROに世界を滅ぼされた後、その権能が攻撃的な意味で表れたのだろう。だが、考えようによっては哀しいものだ。温厚なはーちゃんが、二人の復讐を心の奥底で願い続けるのだぞ?よほど、ものすごく残酷かつ、猟奇的な殺し方をしたのだろうな、敵は。幸い、大地母神の後継者だった事で『老化』はない。それを利用して、はーちゃんは20年をかけて強くなったのだ」

キュアマーチは喫茶店に行く道中、フェリーチェが20年の歳月をかけて強くなった理由をフォーチュンに説明した。フェリーチェはゲッターエネルギーもZEROとの戦闘の際に浴びた事でゲッターロボの力も手中に収め、ストナーサンシャインを撃てるようになっている。光子力とゲッター線の力を得、攻撃魔法を使えない弱点を補ったと言えるが、ストナーサンシャインやカイザーノヴァはあまりに強力なため、むやみに撃っていいものではないので、ミッドチルダ式やベルカ式の魔法を覚えさせたいと、黒江は言っている。

「しかし、それはみらいとリコの願いに反するのでは?」

「あの二人は超技術で肉体の蘇生の最中だ。黄泉の国から魂を呼び戻し、肉体を復活させる。宗教的には禁忌だが、はーちゃんのためならばな。そして、あの二人はプリキュアだ。理不尽に殺されたままでいさせるわけにはいかない。プリキュアに敗北は許されんのだ」

「敗北は許されない……、か」

「お前らは自分の世界でファントムに負けてきた経緯があるが、オールスターズ全体の問題として、負けるわけにはいかんのだ。諦める事もな。諦めたら、昭和の時代に地球を守っていた、仮面ライダーというヒーロー達に顔向けできん」

「仮面ライダー……」

「プリキュアだけが世界を守る戦士ではない。古くは仮面の忍者赤影、快傑ライオン丸、風雲ライオン丸、変身忍者嵐というヒーロー達が、昭和の時代には、10人の仮面ライダーたちがいる。他にも数多くの戦士達が人知れずに世界を守ってきた。私達などは、長い歴史で見れば、青二才の新参者にすぎんよ」

キュアマーチは数多くの英雄達がいて、プリキュアが存在しない世界を人知れずに守護してきた事、自分達は英雄の歴史の観点から見れば、ぽっと出の新参者である事を話す。その中でも代表的かつ、比較的近い『昭和の時代』に10人の仮面ライダーが活躍していた事を引き合いに出した。ラウラ・ボーデヴィッヒとしては『表に出すのを控えていた』論理だが、後輩のキュアフォーチュンに『これからの心構え』を説くには必要な論理である。特に、仮面ライダーの中でも、『始まりの7人』と平成ライダーに伝説視される『栄光の七人ライダー』は黒江達が素直に慕うほどの尊厳を獲得している。のび太ははーちゃんにとっての『兄であり、父親代わりでもある』し、レイブンズにとっての『最上の友』なら、精神的意味での親代わりは七人の仮面ライダー達である。

「私達は彼らと轡を並べて戦うには、まだまだ青臭い。ドリームとピーチ、メロディ、ハッピーの四代のピンクが、戦場で彼ら……、11人の仮面ライダーの背中を追っている。野比のび太氏はその彼らと共に戦える強さを持つ。精神的意味でもだ。物理的強さは特訓でどうにでもなる。だが、心の強さはそうやすやすと鍛えられん。挫折、敗北。別れ。何かを失った時の怖さ。それらを呑み込んでいかなければならん。フォーチュンよ、仲間を失って、悩んでいるのはお前だけではない。あのドリームもその後の人生で挫折し、残酷な出来事に打ちのめされても、最終的にはそれらの苦しみや悲しみを呑み込み、新たな人生を生きる決意を固めたのだぞ」

「嘘…、あのキュアドリームが…」

驚くフォーチュン。ドリームの印象は『戦場での凛々しいリーダーシップと、歴代随一の突破力』だったからだろう。フォーチュンも同じく、プリキュアであった姉の仇討ちに固執し、孤独を自ら招いていた過去があるため、歴代プリキュアのサブリーダー格(仮面ライダーでいうところのV3/風見志郎のポジション)で鳴らしていたドリームが私生活で挫折し、その心の傷を最終的に呑み込んで、新たな人生を始めた事は衝撃だったようだ。キュアマーチは、ラウラ・ボーデヴィッヒとして培ってきた人心掌握術をフル活用し、フォーチュンに心構えを説く。

「お前が逸る気持ちはわかる。だが、それだけでは単なる猪武者も同然だ。ドリームのみならず、技巧者で鳴らしていたピーチでさえ、スペックでのゴリ押しが効かないのだぞ」

「……先輩方が言うのはわかります。ですが、私は……!」

「キュアテンダーがそう簡単にやられるか?姉を信じてやれ。こちらもツテを頼り、探させている。だが、ドリーム達はプリキュアの看板をブラックやホワイト、ルミナス、ブルーム、イーグレットの五人に代わって背負っているも同然だ。ドリーム達の助けになりたいのだ、私は。伝説化してしまったあの五人の代理的な立場を強いられている以上はプレッシャーも相当なものだ。後輩の私達に出来る事は何だ?彼女たちを支える事だ。正面で戦うだけが『戦い』ではないのだぞ、フォーチュン」

「マーチ……あなたは…」

「生まれ変わって、軍人なんて商売をしているとな、正面きって戦うこと以外の仕事の重要性を思い知らされるのだ。自分達を支える人々の苦労を想え、彼らあっての自分達だとな。フォーチュン、お前にこれから、支える事の大変さをレクチャーしてやる。戦士たるもの、腹が減っては戦は出来ぬというだろう?」

転生後に軍人として生きてきて、生計を立ててきたキュアマーチ。そのため、兵站などの後方業務の重要性を理解している。プリキュアの看板をリーダー格として背負う宿命のピンクチームの助けになりたいと言う事で、血気に逸るキュアフォーチュンを諌め、誰かを支える事の重要さを考えさせる。その辺りは、伊達にラウラ・ボーデヴィッヒとして、少佐にまで登りつめたたわけではないところだろう。優秀な将校というのは戦闘力のみならず、人心掌握術や折衝能力の有無も人事評価の判断基準に入るが、流石にドイツ軍が多額の予算をかけて英才教育を施したわけではなく、ラウラ・ボーデヴィッヒ、即ちキュアマーチは紛れもなく、『ドイツ軍の俊英』であった。



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