外伝その336『プリキュアと英雄たち4』


――さて、歴代プリキュアが出入りするようになった野比家。隠居したのび太の両親は元の家に近い位置のアパートに住まいを移しており、のび太夫婦とは別居している。これは老境に達し、タワマン暮らしから脱却したがった玉子の意向で、スネ夫の計らいで元の家の近くの位置にある安普請のアパートで隠居生活を送っている。のび太としても、夫婦の裏稼業を隠したかったため、別居という形になった。これはしずかも同様であった。のび太が30代を迎える頃には、のび助と玉子夫婦は50代後半。21世紀基準ではまだまだ隠居生活には早いはずだが、のび助の定年退職が近づき、玉子が60代に入りつつあったという事情もあった。(のび太が独り立ちしたからか、玉子はそれまでが嘘のように、老いを見せ始めており、髪も白髪になりつつある)のび太が新たな家庭を築いた事で、『役目を終えた』と感じ取ったのだろう。しずかが30代に入りつつあるのに、未だ10代で通じる若々しさを保っているのとは対照的で、のび太壮年期の頃にはすっかり老けこんでしまっている。玉子は静かな余生を送り、少なくとも80代まで存命であるらしいが、のび太の少年期の頃とは性格が変わっており、嘘のように孫に甘い老婦人になっている。この頃には既にその性格で、のび太青年曰く、『憑き物が取れた』とのこと――


――2019年――

「のび太さんのご両親に挨拶もしてきたし、帰ろう」

キュアラブリー/愛乃めぐみはキュアマーチの命でのび太の両親の様子を確認し、居候一同からの差し入れを手渡し、自前の飛行能力で帰路についていた。ハピネスチャージプリキュアの生き残りの一人であり、フォーチュンと共に、しばしの精神的療養と修行も兼ねて、野比家に居候している。また、声と歌唱力がランカ・リーに似ている偶然から、サウンドエナジーシステムの被験者に選ばれている。ピンクチームのプリキュアの中では後発組に入るが、戦闘力は歴代のかなり上位に君臨し、接近戦ではドリームとピーチに並ぶほどのポテンシャルを誇る。更に歴代のピンクでも珍しい『剣使い』で、日本刀状のエネルギー刃を振り回していた経験すら持つ武闘派であったりする。自衛隊では、『第二次オールスターズのピンクでは最強?』と噂されている。そんなラブリーだが、フェリーチェが破滅した元の世界から、魔法つかいプリキュアの妖精とミラクルとマジカルの変身アイテムを兼ねる役割を果たしていたクマのぬいぐるみ『モフルン』(ミラクルとマジカルが倒された際の戦闘で、残るフェリーチェを守るために力を使ってしまい、元のぬいぐるみに戻ってしまっている)を連れ出し、野比家の自室の机に安置しているという話を聞き、号泣するなど、歴代ピンクの例に漏れずの感情豊かな面もある。(元々、モフルンは魔法つかいプリキュアの世界の魔法界と人間界を繋ぐ事を担うために選ばれた存在ではないか?と、ディケイドや鎧武に予測されており、ミラクルとマジカルが『戦死』し、残るフェリーチェを守るために『妖精化』を維持する力を使い果たしてしまったのでは?という推測がなされた。それもフェリーチェが20年もの療養を必要とした理由であろう)

「はーちゃんを泣かせたバダン……、マジンガーZERO…!このキュアラブリーが許さないんだから!」

ラブリーは後輩の仇討ちに燃えていた。ことはを絶望させ、三人の後輩の故郷を破滅させた者たちへの雪辱を誓う。ラブリーも二人の仲間を倒された身であるため、戦線への志願をしたが、技量不足とされている。その関係でフェリーチェに代わり、野比家の守護につき、仮面ライダースーパー1やスカイライダーにコーチングされる日々に入っている。戦線での主役は七人ライダーであるため、スカイライダー、スーパー1は比較的に予定に余裕があり、プリキュアのコーチングをやらされていたからだが、ラブリーはマイペース気味だ。ラブリーは野比家の入るタワマンの非常階段の踊り場に着陸し、そのまま非常口から入り、先に帰っていたフォーチュンとマーチに報告する。

「買い物終わったよ。それと、のび太さんのご両親に挨拶して、差し入れを渡してきた」

「ご苦労。しばらく休んでおけ。夕方頃に筑波さんが見えられる」

「押忍!」

「ラブリー、これは部活じゃないのよ?」

「分かってるって。気合い入れのためでもあるんだよ、フォーチュン」

「私の友人(セシリアとシャル)が学園都市の遺産の調査に出ているからと、羽目を外すなよ、お前ら」

「分かってるって、マーチ」

「お前、どこから入った?」

「え?非常階段からだよ」

「開けてやるから、今度は玄関から入れ。あまり非常階段を使うと、近所に誤解される」

「わかった」

キュアラブリーが野比家に来てから二週間。マーチ(ラウラ/なお)の紹介でセシリアとシャルと知己を得た。『ラウラの前世での後輩』とことで関係が固まり、ラブリーはマーチの友人であるという、セシリアとシャルには敬語を使っている。(これはフォーチュンも同じ)。フォーチュンは空手道場の跡継ぎである事から、ある程度は沖一也と渡り合えるが、赤心少林拳『梅花の型』にフォーチュン・スターバーストを受け流され、その直後に諸手打ちでノックアウトされている。もちろん、一也は道着姿だ。ハピネスチャージプリキュアは空中戦ができるプリキュアであることから、筑波洋は自分の領分の空中戦を教えており、『竹とんぼシュート』、『三点ドロップ』などをかけて、二人のプリキュアをしごいている。(自分がさんざ、7人の先輩にしごかれたからか、する側になると、鬼コーチになるらしい)スーパー1とスカイライダーの課す特訓は苛烈で、ある意味では、立花藤兵衛の監督下にあった七人を超える。二人にとっての『おやっさん』と言える谷源次郎は立花藤兵衛ほどはアグレッシブな気質でなく、籐兵衛が特訓の監督もこなしていたのに対し、彼は精神的意味でのおやっさんとしては立花藤兵衛を継承したが、特訓の監督役はしなかったため、スカイライダーより、スーパー1のほうがトレーニングの限度を知っている。スーパー1は科学者であるが、それ以前に武道家でもあるからだ。

「マーチ、はーちゃんの部屋の掃除はどうします?」

「私がしておく。モフルンが安置してあるから、それには触るなと友人にも言ってある」

モフルンはフェリーチェを守るために命を賭して、マジンガーZEROの光子力ビームを防いだ。その代償に元のぬいぐるみに戻ってしまい、フェリーチェはあまりの残酷さに嗚咽し、絶望した。そこにディケイドと鎧武が駆けつけたわけだ。ぬいぐるみに戻ったモフルンを抱きかかえ、ディケイドと共にドラえもん世界に転移した。ZEROとバダンの足止めを鎧武が引き受けて、だ。その経緯故か、リボンに一部だが、焼け焦げた跡が残っている。力を使い果たす瞬間、『フェリーチェ……、はーちゃんだけでも助けるモフ…!』との一言を残しており、その際にフェリーチェは激しく動揺し、固まるほどの衝撃であり、目の瞳孔が大きく開くほどであったという。モフルンが光に包まれながら、フェリーチェをZEROの光子力ビームから庇った瞬間、フェリーチェはモフルンの名を絶叫している。号泣しながら、その姿はZEROも『アッパレナヤツヨ…』と認めるほどであったという。完全消滅を覚悟の上での行為で、フェリーチェはこの時、足が恐怖で竦んで動けなくなっており、それもあって、庇ったのだ。フェリーチェはこの時、『やめて、やめてよ!!モフルン――ッ!』と叫ぶことしかできなかった。その絶望の光景がその後の彼女を変えたのは事実だった。モフルンのリボンに焼け焦げた跡があるのはそのせいで、20年間の経年劣化で、ぬいぐるみとして古ぼけてきている様子が見られる。元々、朝日奈みらいが幼少期から持っていたため、製造から既に30年を超えていることにもなるためだ。ただし、しずかが手入れをしているため、見かけはそれほど傷んでいない。リボンはしずかが中学生時代に変えるのを提案したのだが、リボンを変えるのをはーちゃんが激しく拒絶したため、そのままになっている。(はーちゃんもその後の精神的成長で『わがまま』とは分かっているが、みらいやリコとの絆の象徴を失いたくなかったからだと、ドラえもん達も理解した。)また、フェリーチェの姿をしばし解除できなかった影響で、精神的成長が促されたこともあり、2019年の時点ではデフォルトの言葉づかいもフェリーチェ時のそれになっているが、みらいとリコの蘇生に、当初、地球連邦の医療機関が難色を示した時はすがりつくような声で泣いており、黒江が当局を説得する材料に使っている。それがモフルンが安置されている理由だ。幸いにも二人の遺体は鎧武により、綺麗な状態で(変身した状態であったため、解除後も目立った損傷は無かった)回収されており、肉体の再構築と魂魄の黄泉がえりが為された。その作業が最終シークエンスに入ったとのび太に知らされており、そのことが、のび太が扶桑に残った最大の理由であった。



――それから数日後の扶桑本土 国防総省 メディカルルーム――

「間もなく、最終シークエンスが完了します」

医務官がそう告げると、プロトカルチャー、ガトランティスの複合技術で造られた『再生カプセル』が電子音声と共に開く。カプセルが開くと、14歳当時の姿で再生されし二人のプリキュア…、朝日奈みらいと十六夜リコが起き上がる。

「こ、ここは……?」

「君達がはーちゃんの言ってた子達だね?」

「貴方はもしかして?」

「今、はーちゃんの保護者をしてる、野比のび太という者さ」

二人はカプセルの中で服も再構築されたため、現役時代の魔法学校の制服姿である。ただし、肉体は大学生から中学生当時に戻っているが。

「貴方が……はーちゃんを…。ちゃんと会ったのは初めてですよね」

「ああ。意識単位では会っても、肉体を持っては初めてだね、みらいちゃん。はーちゃんが喜ぶよ」

「はーちゃん……あ!も、モフルンは!?」

「はーちゃんが僕の家まで持ってきてるから、安心してくれ」

「貴方がはーちゃんを見てくれてたんですよね、ありがとうございます。お、お礼は…」

「いいさ、リコちゃん。僕としても楽しく過ごさせてもらったよ。これで、モフルンも20年ぶりに目覚めるだろう。君達が目の前にくれば、ね」

「あの時…私達が微力なばかりに、マホウ界もナシマホウ界も…。他の、他のプリキュアは無事なんですか!?」

「無事…とはいい難いね、みらい、リコ」

どこでもドアでミューズがやってきた。スーパーバルカンベースから来たので、応急処置を受けた姿である。ただし、生前と違い、あざとさ全開かつ、男言葉であるため、二人を唖然とさせる。その腕には…。

「ほら、連れてきたよ。モフルンを」

ミューズがモフルンを抱いている。どうやら、野比家にタイムマシンでワープ(次元間ワープ)をして、野比家に立ち寄ってから、戻ってきたらしい。モフルンはしずかによって手入れされている姿であるが、意識のみの状態の時にモフルンの命がけの行為を見ており、みらいはミューズから受け取ると、涙を流す。

「モフルン、頑張ったんだね……」

その一言とともに流れた涙が呼び水となり、モフルンが復活する。モフルンは普通の朝の目覚めのように、『甘い匂いがするモフ…』と目をこすっており、みらいとリコは号泣し、ミューズも感動で目が潤んでいる。

「ほら、先輩なんだろ?」

「ぼ、ボク…こんな場面に弱いんだよぉ」

「ジャイアンじゃあるまいし」

「ミューズ達がモフルンをずっと大事にしてくれてたのは知ってるモフ。ありがとうモフ」

「のび太、ハンカチ…」

「ほい」

ミューズの人格がコミカル気味に変わっていることはスルーされているようだ。モフルンの復活という重大イベントの前には。一通りの感動し終えた後、みらいがようやく指摘した。

「あ、あれ。そう言えば、ミューズってそういうキャラだっけ?おちゃらけてるっていうか…」

「もー、人がせっかく感動してるってのに〜。ボクにもね、色々と事情があんの!」

「ぼ、ぼく!?」

一人称が変わり、纏う雰囲気もなんとなくおちゃらけキャラを思わせるものなため、みらいとリコは固まる。言葉づかいも男性的で、妙にあざとい。

「う〜、なんて説明すればいいんだろう」

「って、なにそのドア!それに、妙にあざといような気が?」

「そんなにあざといかな、のび太」

「うん。狙い過ぎで滑ってるよ、アストルフォちゃん」

「え?」

「ま、実はというと、今のボクさ……こんな姿がデフォルトなのよね」

「え!?な、なにそれ――!」

変身を解除し、素の姿をサービスするアストルフォ。肉体は女になっているが、大まかには元と変わっていないため、槍を持つ騎士の体裁は保っているが、あざとい。ポーズのせいか、それとも素で中性的な容姿だったからか。

「君たちは知らないと思うけど、こう見えても、騎士だよ、騎士!」

「前世は王女だから、ランクダウンしてるけどね」

「んもー!せっかくのサービスが!」

のび太にツッコミ役されるほどのアストルフォ。理性はぶっ飛んでいるが、のび太と軽妙なトークが出来る程度はあるらしい。これは扶桑本土でちょうどアストルフォの理性が宿る時間だからだろう。

「アコちゃん、その姿がデフォルトなの?」

「今はね。はーちゃんにはボクから伝えておくよ、のび太」

「分かった。」

「スカーレットが怒るから、そろそろボクは戻るね。レッツプレイ・プリキュア・モジュレーション!」

再度、ミューズに変身する。ただし、背丈は生前の現役時より伸びている。キュアメロディより多少低い程度だ。

「え?ど、どういう事!」

「悪いね、リコ。今は調辺アコじゃないんだよね、ボク。別の存在になってるから」

「じ、じゃ、何になったって…。」

「アストルフォ。シャルルマーニュ十二騎士が一人、俗にいう英霊さ。みらいならわかるかもね」

「あれ、それってたしか、フランスの…?」

「ボクはイギリスの王の血も入ってるけど、フランスの英雄だよ、みらい」

「ち、ちょっと待って!今のミューズは…」

「後でゆっくり話そう。またね〜。のび太、どこでもドア、借りとくね」

「修理の時はドラえもんにいいな〜。」

「おっけい〜」

「ミューズ、ありがとうモフ〜」

「な〜に、お安い御用さ」

最後に笑顔を見せ、ミューズはスーパーバルカンベースに戻っていった。こうして、二人の蘇生とモフルンの復活は成ったわけだが、感動の再会どころでないのも前線であった。




――前線――

「なんだって、自分たちの目的地じゃねぇ世界に手ぇ伸ばした!クライシス、ぜってー許さねぇ!」

仮面ライダー鎧武/葛葉紘汰を思わせる台詞回しを用いるキュアドリーム。頭に血が登ると、錦としての荒い側面が強く出る事が明確になりつつある。レッドファルコンから借り受けた予備のファルコンセイバーを使い、クライシス帝国の査察官『ダスマダー』(見かけは中性的な若い軍人だが、その実は皇帝の分身)と剣で戦う。

「小娘めが、いい気になりおって!」

「ハッ、そういう態度が小物だっての!」

錦としてのガサツな態度は戦闘中に表れるようで、プリキュアになっている事を考えると、ものすごいギャップである。そこは生前と根本的に異なる点だろう。

『ファルコンブレイク!!』

ファルコンセイバーにエネルギーを注入し、レーザーブレード状態にして、ダスマダーを斬る。ダスマダーの僅かな隙を突いての一閃であった。プリキュア本来の攻撃ではないため、技の発声などはレッドファルコンと同じである。ダスマダーは存在の性質上、通常の攻撃では倒れないため、一時的に撃退しただけではあるが、RXと渡り合えるダスマダーの隙を狙えるくらいには腕がある証明ではある。素体になった中島錦の技能レベルが黒江達ほどでないにしろ、それ以降の代の中では、坂本とほぼ同レベルと、扶桑の中では、既に廃れつつあった剣術の使い手であったからだろう。

「錦の力が役に立った…、ダスマダーめ、傲慢だから、剣に隙が生まれんだよ」

と、言いながらも決めポーズを決める。そんなキュアドリームの上空を飛ぶ烈風改。陣風との武装、エンジンの共通化により性能アップを遂げた機体で、本来は局地戦闘機としての開発が進められていたものを陳腐化が懸念された烈風のモデルチェンジに転用した。史実の烈風三速に相当する計画を途中で艦上機へ転用したため、局地戦闘機として造られていた機体を艦上機に再設計したと言っていい手間がかかった。少数機が出回っているにすぎないが、露と消えたはずの日本軍の艦上戦闘機の系譜のポテンシャルの証明と言える。

「烈風か。曽根技師と堀越技師、この世界だとハッピーのお父さんの理想の結晶なんだよな」

逆ガル翼に陽光が反射する真新しい機体。それを見上げ、そう独白する。本来なら終戦で泡と消えたはずの烈風。ウィッチ世界では、紫電改や陣風の影に隠れたとは言え、零式艦上戦闘機の正統後継機として約束されていたはずの機体である。日本からは散々な言われようだが、操縦系統の改良や火力増強、防弾の強化で45年当時の第一線機の水準に飛躍しており、シーフューリーにも劣らない。(それどころか勝る)そのために生産がされたが、一線機の近い将来のジェット機への移行を促す日本の意向もあり、生産機数はごく少数に留まっており、前線では依然として、零戦が現役である。だが、現地の状況がわかると、早期のジェット機への機種変更は不可能であるとわかり、日本側もついに折れ、従来型の生産が再開された。しかし、従来型の生産中止期間が長かったため、既存機のニコイチ整備や共食い整備も慢性化しつつあった。緊急対策として、生産工場からガルダに運んで積み込み、運ぶ選択肢が取られ、義勇兵の海軍出身のエースパイロット達に配備され始めた。日本主導の生産機絞り込みが完全に裏目に出た格好で、扶桑の苦情、現地の状況を鑑み、レシプロ機の生産は一週間前に再開されたが、機種は当時の第一線機に絞られてしまったため、戦闘機、爆撃機、攻撃機、偵察機。全ての機種で既存機のパーツ不足は完全には解消されなかった。日本が博物館に飾るために本土配備機を無理に持っていった物も多く、艦上機のいくつかの機種は退役した軽空母から陸揚げされた物を解体してパーツを得ることも行われ、各戦線で取り合いになり、前線は苦しいやり取りを未だに強いられていた。そんな状況を打破する切り札が彼女たちであった。

「クライシス……、なりふり構わないことしやがって。何度でも来やがれってんだ。オレが倒してやる…!」

錦としての男勝りかつ粗野な口調と、のぞみとしての高めの声色のアンバランスさは自衛隊からはギャップ萌えの対象と見られている。戦闘で昂揚したり、激怒すると口調が変化するのは、のぞみと融合した錦の置き土産であろう。一人称が『俺』になったり、以前と比較して(現役時代の最盛期と比較しても)高カロリーの食事を好むようになってもいる。中島錦の好戦性とガサツさは、のぞみが後半生で失ってしまったガッツ、プリキュア戦士としての『闘争心』を補完し、現役時代よりも遥かに苛烈な戦闘に身を置くためには必要だったのかもしれない。











――戸籍上は『野比ことは』として、20年間を生きてきたはーちゃん。みらいたちの蘇生が完了した事をキュアミューズ/アストルフォから知らされると、感極まって号泣。しかし、野比家に居場所を作ってしまったため、過去のような関係には戻れないと、再会を躊躇したが、英霊の立場を得ていたキュアミューズに『家族は家族だろ?のび太なら、全部を受け止めてくれるよ』と後押ししてもらい、のび太が野比家でハピネスチャージプリキュアと共に暮らすように取り計らうだろうとと伝えた。のび太は青年時代以降は『戦うことも多いが、栄光の7人ライダーにとっての立花藤兵衛のようなトレーナーのような役目も『裏方に回るのも面白いもんさ』といい、次元世界間の折衝を仲介する役目も実質的に引き受けており、正面戦闘目的以外でも、地球連邦の『戦力』に数えられていた。広義の意味での戦力では、のび太はすっかり『無くてはならない』存在であった。戦闘面でのサポート中心の活躍もさる事ながら、プリキュア達を受け入れ、実質的に『次元漂流者』である者も等しく受け入れる器の大きさ、それでいて、アストルフォとの軽妙なトークを28歳になっても、明るくこなせる『ウィットに富んだ』性格に成長した(世に知られる、大長編ドラえもんモードが常態化して成長した)姿はのび太がその高潔さを維持して青年になった証拠。のび太は子供の頃は学業面で落ちこぼれとされていたが、成長後に非凡さを発揮しているのは周知の通り。

「のび太は忙しいんだ。色々とね!それでいて、子孫は地球連邦政府を家名だけで動かせる力を持つ数少ない存在だよ。正面での働きだけを手柄にするのは日本人の悪癖だね。のび太は扶桑で叙爵候補なんだよ?華族になるってこと!」

これは部内の批判者への一言であるが、キュアミューズ/アストルフォはトレーナー/指導者としてののび太の手腕を高く評価し、裏稼業をこなす一方、プリキュア達の指導者/トレーナーも自然に引き受けていくのび太をアストルフォは『優しすぎだよ、君は』と当初は評していたが、朝日奈みらいと十六夜リコの蘇生に尽力し、はーちゃんやのぞみを精神面で支える姿を見て評価を改め、現在はいい友人関係にあるため、スーパーバルカンベースに押しかける日本のメディア群にプリキュア代表で答えた。言葉を一部、日本向けに変えて。

『のび太は忙しいんだ。色々とね!それでいて、超文明(21世紀向けの地球連邦政府を指す造語)を家名だけで動かせる力を持つ存在だよ。見えるところでの働きだけを『手柄』にするのは日本人の悪癖だね。のび太は扶桑で叙爵候補なんだよ?わかる?華族になるってことだよ、君たち!』

キュアミューズとして、日本の視線では『東京オリンピックの射撃競技の候補とされる若手の一官僚である』のび太が扶桑での『多大な功績から、扶桑の昭和天皇が叙爵を検討していること』を敢えて公にしたアストルフォ。裏世界での名声だけで、表世界のどんな権威(ローマ法王よりも)よりも畏れられるにまで成長した『ゴルゴ13』と対照的的に、表世界でも一定の名声(成功)を得ていながら、裏世界でも『銃撃の権威』として鳴らすのび太は極めて異例な事例である。のび太は戦士の領分を有したまま、立花藤兵衛や丹下段平のようなトレーナー役も青年時代以降、なし崩し的に引き受けていく。はーちゃん(ことは)を戦士として立ち直らせ、20年の間に戦闘の仕方を仕込んだ事がきっかけだが、『のび太学校』という名で野比家が地球連邦政府に『ロンド・ベルに送る次元漂流者の育成場』と見なされる事になる初期の事例であると同時に、のび太の子孫『ノビ少尉』が23世紀に若年で当主を継承する際の理由づけにもなるのであった。



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