外伝その335『プリキュアと英雄たち3』


――日本の一部勢力の政治干渉の代償は大きかった。黒江も前々から憂慮していたが、海軍航空隊は組織として大きく弱体化してしまい、海軍そのものの組織も大きく揺らいだ。海援隊が分担していたはずの『海上護衛』任務が主任務の一つになったからで、前線の兵力がシーレーン防衛に割かれ、結果的に弱体化してしまったという本末転倒の有様を招いた。外征海軍の扶桑は連合軍には必須の戦力であるが、日本が自国領のシーレーン防衛重視と外征戦力の縮小路線を押し切った(国内の政治事情が絡んだ)ため、ウィッチ世界の各戦線は混乱を来し、特に戦力が引き抜かれた紅海戦線は崩壊寸前であった。それを立て直したのが秘密戦隊ゴレンジャーとジャッカー電撃隊、バトルフィーバーJであった。スーパー戦隊がいなければ、ティターンズは紅海を抑えていたのは間違いなく、日本はウィッチ世界の非難を浴びる羽目になった。(逆に言えば、スーパー戦隊さえいれば、戦線の一つや二つはいくらでも再構築できるという楽観論が一部の背広組にあったためでもある)バリドリーン、スカイエース、バトルシャークが紅海戦線で撃沈した艦艇は巡洋艦が20、駆逐艦が30、軽空母が6、護衛空母が10、正規空母が4。リベリオン海軍の一個艦隊プラスα相当と、当時の空母機動部隊としては大規模で、扶桑以外に対抗できる機動艦隊はない。この損害も半年で元に建て直す観測が出た事から、戦線から戦力を引き上げさせた日本に非難が集中した。日本は『戦力の近代化改修の真っ只中であり……』と戦艦や空母を中心に改修を受けている事をウィッチ世界の各列強への言い訳に利用した。実際、大和型戦艦は第三次近代化改修でミサイル装備やレーダー装備を積み込んでいる最中で、主砲も60口径化されていたので、日本はそれを言い訳にしたのだ。実際は艦艇の世代交代を促進させるためと、新型機運用に耐えぬ軽空母の民間への売却のためであったが、扶桑国内にさえ反対論が大きいため、一部が主導して、強引に行ったのが正解だった。その目玉のはずの飛鷹型航空母艦は結局、空母化が細部に及んだ事による再改装の手間がかかりすぎる事と、ウィッチ空母としては使い勝手がいいことでの現場の猛反対から、日本による買収は断念された。また、艦種種別の再編が日本の都合で行われたために混乱が生じた。新造空母の運用費捻出を名目に、軽空母の除籍がなされた兼ね合いであったのも事実だが、艦種種別の統一の意図もあった。史実翔鶴型航空母艦の規模で作られた蒼龍型と後続の翔鶴型航空母艦が分けられ、同型艦がない大鳳が翔鶴型航空母艦に分類し直されるわ、赤城型航空母艦は天城型航空母艦に直されるなど、てんやわんやが起こった。そのため、新造空母は作られずじまいの信濃型航空母艦の代替品と位置づけられ、65000トン級に計画が修正されたという。その影響は陸軍にも及んだ。大型・大口径化が進んだ自衛隊のMBT群を目の当たりにした事で、機甲本部が持っていた認識を根底から覆され、インフラに至るまでの設備を新設する必要に迫られている。それらがダイ・アナザー・デイで完全な解決が出来なかった処問題であり、兵力の不足分をヒーローとヒロインで補うのは当然の成り行きであった――






――64Fと関係が深い超獣戦隊ライブマンのリーダー『天宮勇介』。彼はレッドファルコンとして、64F内に現われたプリキュア達に教えを授ける立場にあった。ライブマンは民間人が結成した戦隊であるが、極秘に『イーグル』(国連内に存在した地球守備隊の上位組織)の援助を受けていた。後世においては『12番目のスーパー戦隊』とされる。彼らは怪人へ決定打がなく、苦戦するプリキュアを戦場で援護する事も増えており、メロディ率いる混合チームを『バイモーションバスター』で火力支援したり、ファルコン個人で参陣し、ファルコンブレイクを一閃し、怪人を倒すことも多い。バルイーグルと並び、個人単位での参陣が多いレッドであった――

――スーパーバルカンベース――

「君の仲間の武器だが、修理が終わったよ」

「おお!ありがとう、勇介さん!」

スーパーバルカンベースに収容されたメロディ達。個人技が浄化技主体になっている世代のプリキュアでは、浄化エネルギーを破壊力に転化する過程でエネルギーのロスが発生してしまうため、威力は落ちる。そのためにクライシス帝国の怪魔獣人やロボットなどには効果が薄く、メロディが輻射波動を、スカーレットが宝具である王剣を使うことでようやくまともに戦える有様で、有効打を放つことのできる二人が突出せざるを得なくなっていた。坂本が自室に戻っていた事が確認された直後に戦場に駆り出された五人だが、クライシス帝国に苦戦した。そこをレッドファルコン、スペードエースらに救われ、スーパーバルカンベースに収容され、治療を受けていた。メロディは左腕を打撲していて、スカーレットは額を割られているなど、負傷していた。正体はお互いに知っているため、メロディ達は変身したままだ。

「強引に攻めすぎだぜ、シャーリーちゃん」

「丈さん」

「輻射波動はワイドレンジで撃つと、威力が拡散する。だから、装甲が厚いクライシス帝国の怪人には接射しかないのは分かるけど、腕を強打される危険もあるんだぜ」

イエローライオン/大原丈がやってきた。ライブマンの面々は現役の頃、もしくは現役を退いてからそれほど経たない頃からやってきているため、現役時代の頃の若々しい姿である。まさに時を超えた邂逅と言える。

「まさか、顔をわしづかみされてるのに、攻撃できる余裕があるなんて…」

「それが戦闘さ。向こうも必死なんだ。仮面ライダー達だって、ライダーキックは相手がグロッキーになってる時に撃ってるだろ?」

「言われてみれば〜…」

肩を落とすメロディ。丈の言うことは確かである。輻射波動を接射で撃つために肉薄したが、相手が怪魔ロボットだったために反撃され、負傷したのは予想外であった。そのため、岬めぐみ/ブルードルフィンに応急処置をしてもらっている。

「スカーレットは?」

「めぐみが処置しているよ」

「ブラックとグリーンさんは?見ないっすけど」

「あいつらは、コロンと一緒にパトロールさ」

スーパーバルカンベースは歴代のスーパー戦隊や仮面ライダー達の待機所として機能しており、医療設備も23世紀から見てさえもオーバーテクノロジーである。これは数多くのオーバーテクノロジーの大元の一つがスーパー戦隊だからで、医療分野では、23世紀の医療水準をも凌駕するものである。

「でも、予想以上にエネルギーのロスが大きいのが分かったのも事実だよ、メロディ。こりゃ攻撃技を考えないとねぇ」

「参ったぜこりゃ…」

キュアハッピーとキュアメロディの関係は生前と違い、ほぼ対等の間柄である。ハッピーの自我が『角谷杏』色の強い飄々としたものである事、メロディの自我も『紅月カレン』などの複数の人物のそれが入り混じったものになっているからか、先輩後輩関係がハッキリしていた生前と違う関係に変化していた。メロディの口調も男言葉を多く使うものであるあたり、シャーリー個人としての自我と紅月カレンとしての自我が主体になってできた新たな自我を固めつつあるのが分かる。

「君たちは代が下るにつれ、物理的破壊力よりも、相手の浄化を主目的としたメンバーが多くなっている。かつてと同じ感覚で戦闘を行う事は、火中の栗を拾うようなものだ」

勇介が言う。歴代のプリキュアをスーパー戦隊が分析した結果、代が下ると浄化が主目的になっていくため、技の純粋な破壊力は下がる傾向があると。ライブマンは初期メンバーが科学者であるため、ビックワンこと、番場壮吉からの依頼でプリキュアの科学的分析も行っており、その結果を伝える。

「初期の世代の皆さんは物理的破壊力も高い。私達の三代前からの『第二次オールスターズ』からは徐々に物理的破壊よりも、敵の浄化がメインになりました。それが今となっては足かせになるとは…」

悩む様子のキュアマーメイド。ここで非公式だが、初期の三人からスイートまでの六代を『第一次プリキュアオールスターズ』、七代目のスマイルからを『第二次プリキュアオールスターズ』と分類している様子が窺えた。これは中隊長の一人でもある黒江が、あまりの数の多さにげんなりし、『お前ら、ウル○ラ戦士かよぉ!』と愚痴ったため、64F内部で、プリキュアの映画シリーズの区分で便宜的に設けられしものである。また、武子の要請もあり、簡潔にまとめられし区分である。

「仕方がない。昭和の時代に生きる俺達と違い、君らの時代は敵を単純に倒すことが求められない。そう考えれば、自然の成り行きだ」

「確かに」

一同はプリキュアとしては、平成の時代の人間であったため、一同はライブマンの面々の言葉に同意する。昭和の末期頃と平成の時代、その次の令和の時代とでは、価値感も大きく変わった。もっとも、昭和戦前と戦後で人々の価値観が大転換した事ほど、お互いに齟齬があるものもない。国際貢献=血の献身である認識の扶桑と、経済援助も国際貢献であると考える日本とで衝突が絶えないのもそこにある。

「君達の生きた平成や令和と、俺達の生きる昭和の終わりとでは、価値観がまるで違う。君達のこの世界もそうだ。21世紀の日本の人々に振り回され、もっと未来の23世紀の人間達に救いを求める。なんとも複雑だが、戦後の日本には、自分達さえ平和なら、他国はどうでもいいという考えの者がいる。経済が最高潮だった俺達の時代は特にそうだったと言えるな」

「土地ころがしの成金多いしな、俺達の頃は」

勇介や丈はバブル全盛期に若者だった世代の人間であるため、日本人がバブル全盛期に金の力で自分の身の安全まで買えると錯覚していた様子の当事者である。そこから何程も経たない内に経済が崩壊し、徐々に経済力を落としていく日本のその後を知った故か、寂しそうであった。(勇介は『日本の前途は前途洋々である』と誰もが思っていた最後の時代に生きるためでもある)

「日本のごく一部の政治勢力はトラブルメーカーって事だな、いつの時代も。2019年っていったら、俺達もいいおっさんになってる頃だけど、そんな頃になるまで、俺達の時代のおっさん達の考えを他人に、それもよく似た世界の過去の日本にまで押し付けるのかよ…。やってらんないぜ」

大原丈も嘆息だが、80年代末期は日本人の海外旅行も一般化し、戦後日本の守旧的な価値観に疑義が呈され始めた最初の時代である。2019年になっても、国防重視の中道右派政権が生まれると、左派が反射的に反発するという法則が維持されたままである事に呆れている。

「日本はそうする事で国の世論バランスを取っていたんだろうが、時代が変われば、それは通用しなくなる。特にネットワーク社会化している時代では、従来のメディアの力は薄れる」

ライブマンの初期メンバーは科学者であるため、21世紀のネットワーク社会の到来を予期していたようだ。丈の言う通りだが、80年代の時点で当時の壮年達が抱く考えに、当時の若者達は反発していたことがわかる。どんな世の流れでも、けして変わらぬ法則だ。その当時の若者達が老境に差し掛かる時代になっても、日本のみならず、世界全体で、一部の声が大きい者が場を混乱させるだけである事に失望したらしい勇介。

「ネットワーク時代のいいところは、考えが何であれ、若者達も気軽に声を挙げやすくなったことですよ、皆さん」

キュアハッピーが一応のフォローを入れた。暗いことが目立つバブル崩壊後の日本だが、ネットワーク社会の進展で、若者の情報発信が比較的に容易になった事はバブル期に漠然と信じられていた『明るい未来』の具現化であると。戦乱期の23世紀でも、ある程度は維持され、銀河ネットワークという形で存続しているインターネット。それはライブマンの二人にとって、安堵する未来であるようだった。

「皆さんはどうして、『先輩』たちと関係を?」

「勇介がお武ちゃんを助けてから縁ができてね。ビックワンからの要請もあって、話を引き受けた。勇介の奴、好かれててね」

マーメイドに丈が言う。武子が天宮勇介に好意を持っていて、勇介が連絡先を教えていた事、黒江がそれを知り、天宮勇介が超獣戦隊ライブマンのリーダーであった事を突き止め、ビックワンに頼んで、話を通してもらったのだ。


「ここでの44年のことだよ。その時にリベリオン艦隊を撃退したんだが、その時に出逢ったんだ。それから半年後に綾ちゃんがビックワンと一緒にグラントータス(ライブマンの海底基地)に来てね。それで引き受けた」

「黒江さん、よく突き止められましたね」

「自衛隊はイーグルにも、21世紀になっても、連絡人員を置いてるから、その線で俺達を調べたんだろう。現役時代はイーグルの支援を受けていたしな」

「ターボレンジャーとはどういう縁で?」

「俺たちの次の代だったんだ、力たちは。一年違いだから、声がかけやすかった」

スーパー戦隊は官の組織した戦隊よりも、民間で結成された戦隊のほうが多い。ライブマンやターボレンジャー、ファイブマンはその典型である。ちなみに地球戦隊ファイブマンはキュアピーチ/桃園ラブが子供の頃にファンだったらしく、黒江の計らいで、星川レミ/ファイブイエローにサインを送ってもらい、『幸せゲットできたぁ〜!プリキュアしてて良かった〜!』と大喜びだという。ちなみに、地球戦隊ファイブマンの現役時代は1990年。ラブの生まれる数年前のはずで、ラブはリアルタイム世代ではないので、黒江に指摘されているが、『子供の頃、レンタルビデオ屋で借りてたから…』と返している。しかし、ファイブマンはマイナーであるため、黒江は更に問い詰めた。『ビデオん時は総集編しか無かったような…?』と。ラブは『動画のオフィシャル配信で見ましたよ!』と涙目で返している。ちなみに、サインには『プリキュアの活動、頑張ってね』という添え書きがあり、ラブは額縁に入れて、宝物としている。その時、黒江に『マックスマグマ、おもちゃが売れ残りまくったやん』とからかわれたが、ラブは『スーパーターボビルダーよりカッコいいじゃないですかー!』と涙目で返しており、かなりのファンらしい。黒江はサインに続き、年月の関係で当時の玩具が手に入らない事から、なのはにファイブマンのメカの模型をフルスクラッチさせ、プレゼントしたという。(ファイブマンからのメッセージカードも添えて。ファイブマンのメンバーも、後の時代にヒロインになった少女がファンを公言するとは思ってみなかったようで、驚いたとの事)

「それと、綾ちゃんに渡してくれるかい?ファイブマンのメンバーからのメッセージカードだ。ファイブマンは学校の先生でね。中々スケジュールが空けられないそうでね」

「ラブちゃん――キュアピーチ――がファイブマンのファンなんですよ。なんでだかわからないけど」

ハッピーはスーパー戦隊の事になると、オタクスイッチの入るキュアピーチを微笑ましく見ていた。なのはがジャガーバルカンの模型を製作しているのを目撃すると、馬鹿に食いつきが良く、なのはを唖然とさせている。そこから黒江に報告され、黒江を大笑させている。ドリームがファルコンからセイバーを借りたことがわかると、『アタシにもなにか借りてきてよ〜!』と言い、ドリームを閉口させている。

「そうか、ピーチがねぇ。音楽にしか興味ねぇと思ったけど、意外にメカ好きなのか…」

「うん。この前、なのはがジャガーバルカン作ってると、食いつきが良くて、なのはの奴、開いた口が塞がらなかったそうでね…」

メロディとハッピーの掛け合いは以前より関係が対等になった証でもある。ラブはダンスに打ち込んでいた一方、スーパー戦隊の隠れマニアだった。黒江は爆笑し、ラブは恥ずかしさのあまり、頭から湯気が出たという。

「参りましたわ…」

「お、スカーレット。どうだ、気分は」

「まさか、額を割られるとは…。変身していても切るとは思いませんでしたわ」

額に包帯が巻かれる珍しい姿のスカーレット。持ち技が隙の大きいもの(鳳凰が舞うので、見栄えはいいが…)であるので、王剣を使ったが、敵に頭突きをされ、額に傷を受け、流血した。

「でも、お前はいいやん?モードレッドと共存してるおかげで王剣が使えて」

「許可は得ましたわ。本来の持ち主に」

「アルトリアか?」

「ええ。持ち主は卿ではないので」

王剣の所有権は本来、アルトリアのもの(それを勝手にモードレッドが持ち出した)であるため、アルトリアに断りを入れ、使用していると注釈を入れるスカーレット。モードレッドとしての剣の才能と騎乗スキルが反映されているため、生前より強くなっている。英霊の属性も加わっている状態だ。クライシスのボスガンとも互角に渡り合い、『小賢しい小娘めが!』とボスガンから罵られている。スカーレットはボスガンの自分の爵位を傘にして、周囲を見下し、RXの目潰しなどの姑息な手段を取る行為を嫌悪しており、スカーレットとして勝負に勝つ事を目標にしている。

「あの男、今度こそは…!」

「熱り立つな。ボスガンはRXに負けが込んでて、ジャーク将軍にも呆れられてる小物なんだ。機会はいくらでもあるさ。」

スカーレットにしては珍しく、熱り立つ。勇介に諌められる。ボスガンの剣技はクライシスでも随一とされるが、実際は剣技を実戦で鍛えたRXのみならず、仮面ライダーZXにも負ける程度であり、RXは『貴様のような卑劣な奴は剣士でも貴族でもない!!俺が打ち倒してやる!』と啖呵を切って、バイオブレードで圧倒しているため、ボスガンは剣の力に溺れがちであるのが明白であった。

「それに、奴は剣の力に頼っている。剣は己を鍛えれば、いくらでも切れ味を増す。たとえ剣が折れても、また作ればいい。俺は現役時代にソードからセイバーに変えているからね」

勇介のこぼれ話だが、レッドファルコンとして、剣技は相当鍛えたほうである。二代目バルイーグルやチェンジドラゴン、ダイナレッドには及ばないと謙遜しているものの、ボスガンを軽く圧倒できる。

「それに、折れた場合のことも考えておくべきだね。あのエクスカリバーもエアには通じないのだから」

「…ええ。わかってますわ」

「お前にしては殊勝だな?」

「モードレッド卿よりは自分を客観的に見れるつもりですわ、メロディ」

ペリーヌとしても、モードレッドとしても、見え隠れしていた高慢な態度は消え、キュアスカーレットとしての真摯なノブリス・オブリージュの意識があるため、(また、元敵幹部であった故の贖罪意識もある)別人格になったモードレッドよりも高潔な雰囲気をまとう。スカーレットは本当に王女であったため、その点はペリーヌ本来の姿、円卓の騎士であるモードレッドにもない『プリンセス』としての高潔さを持つことが出来る。モードレッドは荒くれ者の騎士といった体裁から抜け出せなかったが、キュアスカーレットとしては王女であるためのノブリス・オブリージュの意識、『トワ』としての贖罪意識も持つため、最も高潔な振る舞いが可能である。ペリーヌとしてよりも自然に、王侯貴族としての振る舞いができるため、ペリーヌとしても助かっている。

「お前、その姿でガリアの社交界に出ろよ。下手なブルボン王朝やロマノフ王朝、ハプスブルク家の連中より王侯貴族してるぜ」

「領主の出なので、旧侯爵や公爵に見下されていますから、考えてますわ」

「フランスも、裏で昔の身分が生きてるしなぁ」

メロディはガリアが共和制を名乗りつつ、その理念が守られた期間は短いことも含めての皮肉を言った。フランスの血みどろの歴史を鑑みてのもので、スカーレットもそれは知っているため、苦笑いした。フランスの血みどろの歴史は言うまでもないが、政争の連続である。

「私が担当になりそうでして。モードレッド卿は『俺、めんどくせーのやだ!』と仰るし、ペリーヌは政界を…」

「お前、ややこしすぎ。脳内会議が見てぇよ」

呆れるメロディだが、脳内会議がすごいことになっている様を想像した一同の笑いを誘った。ペリーヌは3つの人格を保有し、使い分ける事になるが、その中で一番に粗野で男勝り、なおかつひねくれ者がモードレッドなのは黒江に大笑いされていた。モードレッドの時に黒江にやたらつっかかるのは、エクスカリバーを持っていて、しかもアレンジしていたから、という子供じみた理由である。モードレッドと紅城トワ。ペリーヌはこの二つの別人格と共存し、多重人格に成りゆきでなってしまったGウィッチとして生きていくのであった。



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