外伝その445『綱渡り9』


――ダイ・アナザー・デイ時点で言われていることだが、ダイ・アナザー・デイの兵力すら、リベリオンの動員限界ではない。ウィッチ世界で最高の医療体制を備え、世界最強の生産能力(造船でボイコットが起きようと)を持つ(人口そのものは21世紀の日本より数千万ほど多いだけだが)ため、兵器の損害は数年で埋めてしまうと見込まれた。人的損害を与えに与え、三年前後の安全を確保する。連合軍が組織体制の一元化を済ませられるだけの時間を得るために。五輪や万博もカモフラージュとして利用して。だが、それらは上手くいったわけではなく、軍部のクーデターや内乱が起こり、連合軍の兵力は結果的に激減の憂き目に遭い、一握りの超人や超兵器に頼らざるを得なくなっていく。ウィッチ・クーデターはその中でも『大罪』と見做され、首謀者らの家族が『責任を取る』という遺書を残し、集団自殺を起こすほどの事件となった。このクーデターの結果、軍の縮小とリストラが進んだことが太平洋戦争の苦戦を招く事になるのである。民間軍事会社が多く発生するのもこの時期だが、日本が法的規制を強めたこともあり、結局は海援隊系の下請け業者のみが存続を許されることになる。日本には諜報のノウハウはないからだ。ダイ・アナザー・デイの逆転の鍵を握る、64Fはダイ・アナザー・デイの重大局面である『地上空母』の撃破のため、中継拠点となる『戦闘空母』に着艦した――











――戦闘空母――

「こんなの見ちまえば、さすがの坂本少佐も迎撃戦闘機に理解示すだろうな」

「あの人は、話せばわかる人さ。昔気質だっただけで、今回は雷電の生産を促進させてる。B公の脅威が差し迫ってきてるからね。反対してるのは横空(横須賀航空隊)の実戦を知らない連中だけさ」

飛行甲板に並ぶ、即応状態のVFとコスモタイガー。坂本は前世では『制空戦闘機至上主義』と揶揄されたが、今回は真逆の振る舞いを見せ、雷電と紫電改などの生産促進を促した。坂本曰く『昔の苦い経験で学んだだけだ』とのこと。ちなみに、局地戦闘機・雷電は史実通り、横須賀航空隊の反対で生産中止に追い込まれようとしたが、紫電改が制空戦闘機用途で運用される事から、(局地戦闘機カテゴリの軽視と言われることが癪に障ったこともあり)結局は超重爆対策で生産され、迎撃部隊を中心に配備された。ダイ・アナザー・デイ後半の時点で、全生産機が欧州で使用されている。史実では少数生産で終わったが、ウィッチ世界では『ターボプロップ機化された個体』を含めて、意外に長期間の間、使用されることになる。のび太にさえ『実戦を知らない連中』と揶揄されるほど、横空は制空戦闘機至上主義の姿勢を疑問視されている。

「あそこ、どうするんだろうな」

「史実のメタ情報で、失態がわかった以上は組織改編は避けられないだろうね。たぶん、きな臭くなる」

「クーデターか」

「ああ。それは覚悟しといたほうがいいだろうね」

シャーリー(キュアメロディ)、青年のび太、ドラえもん、黒江はダイ・アナザー・デイの時点で、数年後の横須賀航空隊の叛乱をある程度は予測できていた。この叛乱で、同隊の人員の少なからずは懲罰的に前線に配置されたり、不名誉除隊の憂き目に合うのだ。この頃は竹井(キュアマーメイド)から『未然に芽を摘むべきでは?』という意見が出ていたが、坂本は『暴発させたほうが、潰す大義名分を得られる』と押し通す。だが、これで芳佳に(史実通りの諸元での)震電ストライカーが渡る可能性が潰えるのである。

「一応は手を打っといた。震電の別の個体をメーカーに戻すように手配するように言っといたよ。いざという時に備えて…ね」

「焼かれる危険が?」

「うん。日本系の軍隊は、戦に負けた時に武器も焼くのがお好きだからね。それと、英米系の機材への切り替えも具申してある」

「ドイツ連邦の?」

「あそこの生産中止指令が出ても、迅速に機材のとっかえができるようにね。高射砲とかはドイツ系の機材が多いっていうし」

連合軍は兵器の大まかな部品規格と用語は統一したものの、高射砲などは研究の進んでいたドイツ系(カールスラント)の機材が多かった。だが、ここより連合軍の主導権が扶武同盟(史実における日英同盟)母体の共同体に移行しだしたためと、未来科学の使用により、高射砲は米国系の機材が主となった。これはミサイル装備が思ったよりも高額な装備であり、短期間での多量調達が不可能であったこと、高射砲製造工場の当座の雇用維持のためでもあった。

「そいや、そうだ。未来科学の武器は強力だけど、大勢に大きい影響をすぐに出せるほどの数はないもんな」

「だから、時代相応〜多少進んでる時代の兵器を作らせてんのさ。MSとかの時代でもなきゃ、一騎当千の強者が戦術で戦略を覆す真似はできないからな。最も、俺たちがそれをやっちまったから、誤解が広まったがな…」

「あんたらは『特別』だかんな。怪異相手とはいえ」

「ああ。国家総力戦ってのは、本来、一年戦争やグリプス戦役みたいな単純な戦じゃないからな。大義名分がある分、気持ちは楽だと思うがね、兵隊達は」

コスモタイガーの入念な整備と補給中の合間、四人は転生者としての立場も加味しての会話を交わした。のび太とドラえもんも佐官待遇で遇されているので、実は上級士官用の個室が用意されていた。

「で、手筈は?」

「イベリア半島の山間部を潜り抜け、地上空母に強行着艦。ドンパチして制圧する。そのためだ。お前らを選んだのは。それと、ある程度は空戦に慣れてる必要があったからだ」

「だからって、衛星軌道の空母から急降下かよ」

「レーダーや敵の索敵魔法を誤魔化すためだ。コスモタイガーは外宇宙での運用が本当の用途だから、大気圏内じゃ、扱いにコツがいる。ブラックタイガーがまだ残ってるのは、そういうことだ」

「まぁ、主翼の形的に、大気圏内の機動性はあまりよくなさそうだもんな」

「高機動バーニアで補えるけど、熟練者でないと、使いどころがむずいしね」

「この時代の自動空戦フラップみたいなもんか?」

「あれに近いな。言っとくが、ドラえもんとのび太はベテランだからな?」

「まぁ、昔の冒険の時に宇宙戦は経験してるからね。一度は戦車だったけど」

「お前ら、空戦した事が?」

「うん。何度かね。漂流船団の時が一番に本格的だったね。ピリカ星の時は戦車だったし、スネ夫としずかちゃんの見せ場だし」

ドラえもんとのび太は大冒険の際に空中戦を経験し、普段の生活でも、空中戦ごっこ遊びをした事がある。そのため、意外と空戦は慣れていた。

「それ、のぞみが見たとかはしゃいでたぞ?」

「僕も、君のサーフボード時代とナイトメアフレーム時代を知ってるから、のぞみちゃんとイーブンになるね」

「それ、ずりぃぞー!!あたし、おぼろげになってんとこ多いんだぞ」

「プリキュアの姿で拗ねないの」

「ちくしょう、バルクホルンには見せたくねーからな?笑われそうだ」

「むしろ、自衛隊の皆さんのほうを心配しなって。君の相棒だったキュアリズムの言うとおりだねぇ」

「奏も転生したのか!?」

「地球連邦軍のZ乗りにね。ビートを通じて、連絡が取れたよ」

「Z乗りだと!?昔は運動神経あんまりいいほうじゃなかったくせに、Z系だって!?」

「食いつきいいね、君」

呆れるドラえもん。とはいえ、正式にキュアリズムこと、南野奏の転生が確認できてから日が浅く、シャーリーに通達する暇がなかったのであるが

「だ、だってお前……」

「君だって、ナイトメアフレームの最高峰の一つを乗り回してたじゃないの。派手に。Z系なんて可愛い方さ」

「あいつの転生先での氏名とかわかるか?」

「エレンちゃんが調べた。地球連邦軍のはぐれゼントラーディ討伐の機動部隊に厄介払いされてた『クレア・ヒースロー』大尉。エゥーゴ時代からの叩き上げだって」

「エゥーゴからの……だと」

「今は外宇宙用のZU系に乗ってるとか。はぐれゼントラーディ討伐の部隊は寄港の時に機材更新はするから」

「エレンちゃんが羨ましがられてたってさ。曰く、クァドランの最新型とか、VFの新世代機に乗れるからって」

「そこかよ」

「まー、エレンちゃんがぼやいてたけど、クラン・クランとしちゃ、動きにくいもの。顔も割れてるし、恋愛関係も自衛隊バレしてんだよ?それよりはいいと思うよ」

「あー、それな。エレンの奴、そこはツッコむなってよ。フロンティア船団に残してきたし、クラン・クランとしてのあれこれ知られるから…」

「バレてるよ」

「……マジ?」

「だから、前に変な要請があったろ。ギアナ高地に自衛隊のある部隊から要請がな…」

「うっわ。あいつも災難だな」

「君だって、ルルーシュはぶん殴るとかぼやいてたじゃん?」

「く、くく…」

「まぁ、君だって、それ以外の世界でも、バトルものの主役してたようだしね」

「どれだよ!?多すぎてわっかんね…」

「えーと、舞-乙HIMEとかゆー作品だったかな」

「昔過ぎて、今の若いやつは分かんないだろー!!やめてくれよ、まったく。おまけにそれだと、C.C.と縁がなぁ…」

「どの内、ほのかちゃんが先輩なんだから、その事は諦めたほーがいいよ?」

「うわぁ〜!!それゆーなよ!確かにそーだけど!」

シャーリーはキュアメロディ状態で悶える。あまりにショックなためだ。メタ的だが、ドラえもんとのび太はそういう発言をしまくる質である。

「のぞみちゃんとだって、正確には、サーフボードの世界で会ってんじゃん、君」

「その時は野郎だったけどな……あいつ」

「レントン・サーストン。その男の子があの子の前世の一つだね」

「さすが、チェックしてんな」

「まーね。大学で苦労して見たのさ」

のぞみとシャーリーは前世以前からの繋がりがあるらしい事は既にドラえもん達の知るところ。そのため、メタ発言全開で、黒江は関心する。

「でもよ、なんで、はーちゃんがお前んとこにいるんだよ」

ここで、やっとツッコミを入れられたシャーリー。

「ディケイドさんが連れて来たんだよ。事情を聞いて、一人にしておけないから、住まわせたのが始まり。親父たちも流石に驚いてたけどね。ガキの頃は困ったよ。フェリーチェの姿は保ってても、精神的ショックで、寝ぼけてると、素の幼さが出てね。気がついたら、僕の布団に潜り込まれてたことも」

「フェリーチェの姿で、か?」

「参ったよ。プリキュアの力でだいしゅきほーるどしてくるから、動けなくてね」

「はーちゃんも恥ずかしムーヴだな…」

「珍しいのは撮れたがな」

黒江はニヤニヤする。ちょうどその日、のび太の両親に調の学費の支払いなどのために泊まっていたからだ。もちろん、目覚めた後、大慌てのフェリーチェの張り手がのび太にクリーンヒットしてしまい、ものの見事に昏倒。やはり遅刻する羽目になった。

「その日は遅刻しちゃったけどね」

「しどろもどろに慌てふためく、フェリーチェは見ものだったぜ。で、その後も何回かあったから、親父さんが養子にっていい出したんだっけ?」

「ドラえもんに切り出してもらってね。それで、学費は綾香さんやG機関がなんとかするからってさ…」

「知ってんの?お前のご両親」

「G機関は表向き、国連関係の何かの機関ってことにしてるからね。閣下も親父たちに会われてるよ」

「大胆だなぁ」

「確かな身元は必要だろ?俺も自衛官になって、公的な信用ができてたしな。世話になったドイツ人って感じで紹介したよ」

「親父、外国語ダメダメだから、ブルってたよね」

「パパ、商社マンのくせに、外国語弱い世代だからねぇ」

のび太とドラえもん曰く、ことはの養子縁組はアドルフィーネ・ガランドが手助けしたこと、のび太の両親には『国連のとある部署の人間』ということにしていた事、実際に退役後はドイツ領邦連邦の特別大使という役職で顔出しをしているので、半分は嘘ではない。のび太とことはの関係は意外に長いのだ。

「ドラミへの説明は楽だったよ。22世紀にあの子の記録があるからね。ただ、のび太君がデレデレしないかで、やけにジト目されたね」

「ぼくだって、健全な男子だからね。そりゃ気になる子はいつもけっこういたさ」

「まっさかぁ」

「それに、今だから時効だけど、幼稚園の頃は隣に住んでたハーフの子といい仲だったこともあるよ」

のび太は意外に、子供の頃から恋多き男であった。その女の子『ノンちゃん』がアメリカへ引っ越していってしまった後に、しずかとの関係が始まったわけだ。のび太が異性に優しいのは、その頃の体験がもとになったためで、以後、小学生以降は男らしさを両親に求められていくわけだ。のび太は男らしさを志向されつつも、本人は超おっとり型の性格なので、両親の心配のタネだった。そこに調とことはが来たので、渡りに船というのが本当のところ。

「お前、女にモテねぇと思ってたぜ…」

「まー、僕がガキの頃は、ジャイアンや出木杉くんみたいなタイプがモテたからねぇ。あ、綾香さん。持ってる?」

「あー、転移してた時に持ってたラジカセだろー?」

「ラジカセ?」

「飛ばされてた時、逃げるために、ジャイアンのガキの頃の歌を流した事があるんだ」

「え……あんた。あいつらに、あの怪音波を?」

「ああ。それも、ジャイアンがとびっきり気合い入れて歌った時の奴だ。よく壊れなかったもんだと。あいつらのシンフォギアが機能異常起こして、しばらく解除できなくなったらしい」

「らしい?」

「後で聞いたんだ」

ジャイアンの歌は10歳前後〜変声期直前の時間軸がもっとも高威力だったため、ドラえもんは洗脳解除などの手段としてテープを持っており、黒江にも渡していた。歌をエネルギーとするシンフォギアに機能異常を起こさせ、戦闘力をほとんど無くさせてしまうほどの効果であったらしく、聞かされた装者のギアが『ブランク状態』というべき状態に陥り、行動不能になったという。

「ジャイアンの歌は魔界の怪物が死にかけたくらいの音波だからね。そりゃ、シンフォギアも機能不全に陥るよねぇ」

「すごいのは、歌が流れただけで、ギアから色彩がみるみる失われて、その場から動けなくなっていったことだ。耐性ありの俺でも、脳がムズムズすんからな…」

ジャイアンの歌(変声期以前)は耐性がある場合でも『発熱し、卒倒する』可能性は消えないため、スイートプリキュアからは『音楽と言えない超音波』と評され、シンフォギア装者から恐れられている。しかも、テープの音声で、ある。のび太は子供時代に『音痴の怪獣が化けて出たような』と表現し、ドラえもんとスネ夫は『公害の一種』と表現していたが、TVの音声だけで、TVを壊し、人を長時間卒倒させた『実績』もある。これを解析しようとしたのが未来デパートであり、同じ原理の音波で害虫駆除をしようと製品化までしている。変声期後は無害化が進み、『下手だけど、聞けなくはない』レベルに落ち着いたため、ドラえもんはジャイアンの歌が兵器利用できるレベルだった時代の歌声を『お守り』代わりに持っているのだ。

「あいつの怪音波はすげえ…。今でも?」

「いや、どうも、変声期前のだみ声だから起こり得た『奇跡』らしくてな。今は普通より下手程度に落ち着いた」

とのことだが、成人後も『意識すれば』、当時に近いだみ声を出せるらしい。

「そーだ。のび太。お前、パイロットの免許は?いつ取ったんだよ」

「日本じゃ高いし、手間かかるからね。アメリカに仕事でいった時に取ったよ。25、6の頃だったかな」

のび太は成人後に米国で操縦士免許を取得(25歳前後)したため、家族サービス用にセスナ機を保有しているという届け出をしているが、実際は戦闘機を武装状態で秘匿していたりする。
「でもよ、ミーナ隊長、元の人格だったら、裁可しないだろうな、こんな作戦」

「大規模な対艦攻撃自体、ウィッチでやるものじゃないからな。」

「しかも、強行着艦してから、空母の制圧だろ?宇宙戦艦ヤマトくらいだろ。こんなのしたの」

「ガトランティスの時な。8割方を戦死させたから、艦長代理は戦後に叩かれたらしいがな」

宇宙戦艦ヤマトはガトランティス戦役で初代乗組員の8割方が戦死しているため、次のデザリアム戦役(イスカンダル救援含む)までに多くが新世代に入れ替わっている。だが、この強行制圧は地球連邦軍の最終手段として、その後も採用され続けていく。現に、64Fも採用している。

「整備班長、コスモタイガーの補給と再整備は?」

「あと一時間あまりで完了致します」

「ご苦労。…今のうちに軽食をとっとこう。それどころでなくなるかんな」

強行作戦であるため、整備は入念になされる。M粒子散布下では、機体の僅かな反応速度の差が生死に直結するからだ。その間に、一同は食堂でハンバーガーなどの軽食を済ませるのだった。







――目標の地上空母とは、如何なものか?それに改めて触れよう。第二次世界大戦の頃、ナチス・ドイツのある科学者が構想していた兵器とされる。第二次世界大戦の後、冷戦時代に米ソも検討したが、その当時の技術レベルでは机上の空論であり、これも放棄。22世紀の後半になり、ティターンズが製造施設を有していた『クローラー・トランスポーター』を転用(宇宙船の打ち上げにマスドライバーなどが使われるようになったため、不要になっていた)し、改造を重ねて、ウィッチ世界で完成させたもの。MSなどの搭載可能なように、設計が強化されていたものの、試験艦故か、アングルドデッキ構造をしていない。第二次世界大戦中の小型〜中型空母に近い規模の大きさであるが、これはクローラーがベースである故に、足回りが履帯であることでの限界であった。昔から構想はあったものの、最終的な実現に数百年を要した点では『飛行機』と似ている。それがイベリア半島に陣取り、睨みを効かせているため、それを撃破、もしくは拿捕するのが目的である。同時に、海でも、他のプリキュアらが戦艦を援護しつつ、進撃。敵艦隊にトドメを刺そうとする。だが、敵もさるもの。組織がティターンズに提供した大戦艦『プロイセン』(ヒンデンブルク級二番艦)が連合艦隊を迎え撃つべく、回航されてきていた。大和型戦艦の系譜を継ぐ戦艦群を『戦艦ビスマルクの後継者』が迎え撃つという皮肉な構図が出現することになった。





――旧来的な意味でのウィッチたちの需要は国家総力戦において低下していくことになってしまったが、陸戦ウィッチはそれなりの奮戦を見せている。しかしながら、空戦ウィッチはストライカーの性能限界を通常兵器が超えてしまったこと、個々のテクニックの差が顕著に現れるため、アニメのような三次元的な機動をこなせる者が少数派である事もあり、ティターンズが強化人間をも動員して編成した『ウィッチ・ハンティング班』に為す術もなく『狩られる』事例が続出した。(怪異がビーム攻撃をするようになったため)シールドに防御を頼り切る風潮があり、ストライカーの防弾板を外して運用する事が常態化していた事の弊害により、アサルトライフル程度の銃弾に燃料に引火させられ、ストライカーを爆発させられていったのだ。――



――戦艦「富士」CIC――

「長官、付近の航空ウィッチ隊は沈黙させられた模様です」

「思ったより脆いな」

「ハッ。敵は高射砲や高射機関砲の弾丸に、洗礼を受けた純鉄を使うものを混ぜてきています。通常のウィッチでは防ぎようがありません」

「魔導殺しの弾丸か…残っている部隊は?」

「陸上に展開していた部隊は狩られていますので、まともに動ける部隊はおりません」

「彼女ら(64F)に頼りきるしかないか…。ウィッチ部門の責任者の怠慢だな」

「仕方ありません。このようなことは初めてですから」

「彼女たちしか、まともに戦ってくれんとは…。我が国のウィッチもたるんどるものだ」

小沢治三郎(当時の連合艦隊司令長官)は、自軍のウィッチ部隊が『ごく短時間で』殆どが壊滅し、再編のために後送されたことに憤慨していた。それをたしなめる矢野志加三参謀長。

「ですか、これで彼奴らも64Fへの嫌がらせを止めるでしょう。クラスター爆弾、ナパーム弾、地中貫通爆弾が躊躇なく投入される、情け容赦ない破壊が渦巻く場を戦い抜くというのは、並大抵のことではありません」

「だと、いいが。」

「長官、ラ號より入電です」

「読め」

「ハッ。敵泊地へヒンデンブルク級戦艦の姉妹艦が回航された模様と」

「やはりな。敵も本艦が怖いのだろう。カールスラントの連中には夢のような話だろうな、アレは」

小沢治三郎はヒンデンブルクの姉妹艦の登場を予測していたようである。量産されたモンタナが予想外に役に立たないことで、組織が提供したのだろう。

「名はわからんか」

「通信の傍受によれば、プロイセンと」

「プロイセン、か。皮肉なものだ。彼の国が欲しがった弩級戦艦が我らに牙を抜くとは」

「レーダー元帥は血の涙を流すだろうな、参謀長」

「ですな…」

ヒンデンブルク。M動乱以来の連合艦隊の仮想敵である。その同型艦ということは強敵である事が推察される。

「それと、イベリア半島の敵制圧部に『ドーラ』列車砲が」

「何!!」

小沢も流石に顔色を変える。ドーラ列車砲は本来、旧502担当の地域の反攻作戦のために輸送途中に奪取され、行方不明になっていたからだ。

「長官」

「ドーラの破壊の是非を参謀本部に問い合わせるしかあるまい」

小沢はすぐに参謀本部に問い合わせるように命令を発する。ドーラ列車砲は重要な資産だからだ。こうして、戦略の練り直しを強いられる連合艦隊。カールスラント海軍の夢見た大戦艦が敵として現れるのは、彼らには涙なしには語れぬ悪夢であろう。


――空と海から反攻を試みる連合軍。その戦力の中枢が一部の超人であることは、ウィッチを集団戦に適応させようとしていた者たちにとっては何よりの皮肉な事実であった。これに抗おうとした一人が、ウルスラ・ハルトマンであった。だが、ウルスラ・ハルトマンの努力をよそに、高町なのはやフェイト・テスタロッサ・ハラオウンなど、一騎当千の超人たちが『物量を質で蹂躙する』事例が後を絶たなかった。彼女が普及させようとしていたジェットストライカーも、敵味方全体でミサイル兵器が使われることで、ジェットストライカーの想定であった『一撃離脱戦法』が通じなくなっており、求められるのは『機動性』。結局、ウルスラは転生者の割に、時流に乗れずに『出世には縁遠い』日々が続くのである。融通がきかない技術屋であった事が仇になったわけだ。とはいえ、見る目がないわけではなく、『段階を踏む』ことに固執しただけで、技術発展そのものに反対ではないのだ。そこは後に、Gウィッチと関係を持つ存在『ウマ娘』にして、研究者気質、チートを是とするという『アグネスタキオン』と対照的であった。最も、ウルスラ自身もその片棒をかついでいるようなものだが――










――この頃には、ティターンズの背後に『ネオ・ジオン』が控えている事は見抜かれており、ネオ・ジオンと戦いになる事は覚悟するように、と、通達がされていた。曲がりなりにも、プリキュア達は地球連邦政府の側に立つからだ。のび太は自分の一族に、一年戦争からの戦禍に倒れた者が大勢いた事、妻のしずかがジオンを嫌っていることもあり、反ジオンの姿勢である。スペースノイドは総じて、地球を聖地化したいあまりに、却って環境破壊をするため、自分達の環境保護の努力を否定した形のジオンをしずかが嫌うのは当然の流れであった。天上人に対し、環境保護の試みが始まっていると力説していた経験を持つため、却って地球環境を悪化させた張本人たるジオンを嫌うのは当然の流れであった。最も、彼等に言わせれば、『コスモリバースシステムとかゆーチートで元に戻してんじゃん。オペラハウスを吹き飛ばしたって?アデレードにレプリカ置けばよくね?』とのことで、アースノイドの歴史に無頓着な側面がある。実際はマ・クベのように『文化財に敬意を払う』者もいたし、ギレン・ザビも『日本文化に傾倒していた』とされるので、実際は過激な『スペースノイド至上主義者』のやることが派手過ぎただけであったが。(ハマーン・カーンも地球の文化財を保護しているという体裁は取るつもりだったというが)むしろ、あるジオン軍高官は『ザビ家は20世紀以降の大量生産・大量消費型のライフスタイルを否定したかったのだ』と述べている。(最も、ジオンの辿った道は近代以降の負ける側の軍隊そのものだったが)――




――続々と、各地の怪異を巣ごとねじ伏せた後、イベリア半島へ向かうスーパーロボット軍団、武子の要請で、突入メンバーの加勢に向かうスーパーヒーロー達の内の一団。地上空母の猛威とは何か?ヒンデンブルク号の姉妹艦『プロイセン号』とは?敵も空・海で態勢の立て直しを図っているのである。そのプロイセン号の護衛で輸送され、組み立てが始まったものこそ『ティターンズ』が示威を意図して、投入が検討されている『ガンダム・インレ』であった。ガンダムTR-6[インレ]が正式名だが、GP03D『デンドロビウム』以上に肥大化した故、最新鋭とされていたグリプス戦役当時でも、有効性には疑義がある。所詮は技術的には『連邦系モビルアーマーの粋を出ない』代物であるので、上位のスーパーロボットと戦えるか疑問視されていた――



――64F ダイ・アナザー・デイでの駐屯地――

「ガンダム・インレ。グリプス戦役の忘れ形見…。グリプス戦役であれば、強力な機体だったでしょう」

「うむ。だが、今はザンスカール戦争もとうに終わっているし、真ゲッターがある以上はさほど深刻に考えんでいい。號はいい素質を持っているからな」

神隼人は一文字號のゲッターとの親和性を高く評価しているようである。マジンカイザー級のマシンがあれば、『グリプス戦役の頃の決戦兵器』などは物の数ではないと言いたいらしい。

「真ゲッターロボはが強力なのは認めるが、あれのフルポテンシャルを、君のところの若者たちが扱えるのか、神くん」

そう言うのは秘密戦隊ゴレンジャーのリーダーである海城剛。つまりはアカレンジャーである。スーパー戦隊の元祖レッドであるため、スーパー戦隊の元締め的ポジションである。(ゴレンジャーは元々、国連軍の秘密部署『イーグル』の精鋭部隊である。そのリーダーであるので、将官待遇である)

「號の奴は阿呆ですが、動物的カンに関しては、私の戦友である流竜馬にも劣りません。あなた方の懸念は吹き飛びますよ」

號を強く信頼しているらしい隼人。伊達に自分が選び抜いただけではないと言いたいのだろう。配下の死にも動じない彼にしては珍しいが、正統な二代目ゲッターチームとして選び抜いたという自負があるらしい。

「海城さん、バリドリーンの調整は」

「完了している。君の要請があれば、新命がいつでも出撃させる」

「お願いします」

「分かった。電話を借りる」

海城剛は武子のデスクにある電話を借り、連絡を取る。それを受けて、スタンバイしていた新命明/アオレンジャー、その相棒である大岩大太/キレンジャー(初代。本来は二代目キレンジャーの熊野大五郎がいたのだが、戦死してしまった)がスーパーバルカンベースで整備を終えていた空中要塞『バリドリーン』が号令一下、出撃していく。

『ゴーーー!!』

アオレンジャーこと、新命明(風見志郎のそっくりさんその一かつ、志郎と親交が深い一人。服装を取り替えることも多い)のかけ声とともに、バリドリーンの推進力となるプロペラが回転しだす。バリドリーンは孔雀を模したデザインを持つため、目立つことこの上ないが、『秘密戦隊ゴレンジャーの登場』を印象付けるアイコン』という役目も持つため、武子はそれを印象付けるためもあり、出撃を要請した。要するに前線の士気高揚策だが、海城剛も、新命明もそれは承知の上で出撃させるのだ。

『バリドリーン、発進!!』


――海上に浮上したスーパーバルカンべースのハッチが開き、バリドリーンがヘリコプターのように現れる。一定高度まで浮かび上がった後、推進プロペラがフル回転し、プロペラ推進としては高速(おそらくはターボプロップエンジンと思われる)を発揮して、威容を示すかのように飛翔していった。往時に無敵を謳われ、『不死鳥』と形容されたこともあるが、デザインモチーフは『孔雀』である。ゴレンジャーの登場を戦列に印象付けるため、その様子はダイ・アナザー・デイの様子が報じられる年代の21世紀日本で大々的に報じられた――

――バリドリーン号、颯爽登場す!!――

大仰な言葉でTVニュースとして報じられる、バリドリーンの登場。ゴレンジャーは黒十字軍の壊滅後の時代には、一般に存在を知られているため、その参戦は大いに人々を沸かせる。1970年代当時の設計ながら、超技術により、その戦闘力は下手なジェット戦闘機が霞むほど。故に富嶽爆撃機がとうとう成し得なかった『空中戦艦』の異名を持つのだ。21世紀の人々はこのニュースで、『21世紀でも、秘密戦隊ゴレンジャーは存続している』ことを知ったのである。なお、TVのコメンテーターの中には、しょうもない指摘をする者も多かった。いくつかを抜粋しよう。



・秘密戦隊ゴレンジャーの登場は嬉しいですが、彼等が活躍していたのは、半世紀ほど前の1970年代半ばですから…。

・ゴレンジャーの装備は多くが1970年代に製作された代物です。果たして、現代戦に適応できるのでしょうか

と、いうもの。確かに、ゴレンジャーの装備とメカニックは現役時代に開発されていたものだが、性能は後発の戦隊に劣らない。自衛隊にしても、2020年代まで『初飛行が1950年代末のジェット戦闘機をだましだまし使い続けていた』ので、的外れ感は否めない。また、21世紀の日本に仔細は明かされていないが、ゴレンジャーは『結成時の五人が往時の姿で参戦している』のである。これは『2020年代には、ゴレンジャーのメンバーは確実に老人になっているはずだから』という理由もあるが、国連が日本政府の正式な承諾無しに『直属の軍事力を1970年代から整備していた』という事実を明るみにしないためでもあり、意外に政治的な背景があったのである。



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