サイド2より進出してきた連邦艦隊は、ア・バオア・クーに対して核攻撃を行った。
既に、ジオン公国により何度も核攻撃を受けていたのだから当然報復核が飛ぶ。
原作で連邦が核を撃たなかったのは南極条約を律儀に守っていたからだ。
実際の所、原作においても先にマ・クベが核攻撃をしていたので南極条約は有名無実でしかなかったのだが。
兎も角、現状連邦が核を撃たない理由はなかった。
その結果、艦隊が枯渇しつつあったア・バオア・クーはわずか1時間ほどで陥落。
更に、隕石落としを行ってきた別動隊を排除したレビル中将率いる艦隊が合流する。
そして、その勢いをかってサイド3に向けて進軍していった。
同時期、クラナダに到達したグリーン・ワイアット中将の艦隊はクラナダに核による絨毯爆撃を行った。
先に警告は行ったものの、クラナダ指揮官のキシリアが粘ったため決行される事となった。
結果として、クラナダの重要施設はほぼ吹き飛び、ジオニック社が入っていた工廠も丸ごと消え去った。
これによりMS技術が10年は後退したと言われている。
その後、レビル中将に呼応するようにワイアット中将の艦隊もサイド3へと向かう事となる。
機動戦士ガンダム〜転生者のコロニー戦記〜
第三十六話 プロパガンダ
コロンブスの格納庫の一部を改装したスタジオに俺は今いる。
何故なのかと言えば、この宇宙世紀というガンダム世界において、一番必要な事をするためだ。
幸いミノフスキー粒子による妨害はほぼなくなりつつある。
ここから、全てのコロニー、月、地球の各地に届くようにヤシマグループの総力を使って整えてもらった。
さあ始めよう。
「初めまして、地球圏の皆さん。
私の名は八島 臨(やしまのぞむ)、一般的にはノゾム・ヤシマ連邦宇宙軍少将となる。
先ずジオン公国と呼ばれる勢力との戦いの趨勢が決した事をお知らせする」
決着がついたというにはまだ早い、報復攻撃が今サイド3に向かっている事だろう。
サイド2艦隊が既に核攻撃によってア・バオア・クーを攻略しサイド3に向かった事が知らされている。
原作と違い南極条約もなく後顧の憂いが無いため、艦隊をサイド3に向けられるという事だ。
「現状戦争経緯について連邦政府の方から公式見解等が出されていない、これは大変申し訳ない。
そのせいでジオン側からの一方的なプロパガンダのみが世間に流布されているものと思う。
正確な情報が無い事については、政府の怠慢であると言わざるを得ず今後の見直しを促したい。
しかし、現状においてはそれもままならないため私の方から変わって伝える事にしようと思う」
そう、連邦政府はジオンに言われっぱなしだった、これがまずおかしい。
これに関しては、初代どころか現在に至るまで連邦側のプロパガンダ等が示されたのを俺は知らない。
なんなら多数ある漫画ですらそういった連邦側の主張は見られない。
ジオン側はあれだけ連邦に恨み節をぶつけるのに対してあまりにも薄い、せいぜい個人で恨みを言うくらいだ。
これは戦後日本政府のイメージがそのまま連邦につけられていたのかもしれないと考えている。
アメリカ等の第二次世界大戦の戦勝国なら悪し様にジオンを罵っただろう事は言うまでもない。
「ジオン公国という国は元より存在しない、そもそも地球連邦は地球圏全ての人類が所属している国家である。
よって彼らは、武装勢力でありテロリストに過ぎない。
これは戦争ではなくテロの鎮圧である」
これまた事実である。
ジオンにとっては建国戦争なのだから相手からすればテロリストとなる。
レジスタンスは抵抗運動であるため、ニュアンスが微妙に違うしな。
あえて言うなら、ジオン公国はイスラム国のようなものだ。
原作においてはその辺のくくりがいまいち決められていなかった。
だから、ジオンの姫だとか言われる人間が出るのだ、はっきり言って姫なんて血筋ではない。
まだしも連邦の政治家として古い血筋だろうジオン・ダイクンの血筋ならともかく、ザビ家はポット出なのは明らかだ。
何せ彼らが言っていたのだスペースノイドは棄民だと。
「また、サイド3がジオン公国と名乗る前から彼らは不正を行ってきた。
本来コロニー公社が専属で行う事業であるコロニー建設だが、その資源はアステロイドベルトに依存している。
当然アステロイドベルトの資源採掘は許可制となっており、勝手に採掘する事は出来ない。
しかしこの度、ジオン公国と名乗る勢力は資源衛星を複数展開し要塞として使ってきた。
更には地球へ落そうという暴挙に出たのだ。
これらが地球に落ちれば地球は人の住めない星になっていただろう。
その暴挙は当然許してはならないが、それらは全てジオンが採掘してきたアステロイドの小惑星であるという事だ。
つまり、何十年も前から彼らは地球連邦の法を破ってきたという事になる」
正直彼ら小惑星所持しすぎなのだ、普通に考えてそんな事を連邦が許可している訳もない。
そもそもコロニーを増やさなければいけないのだ、まだ人類を宇宙に上げている途中なのだから。
金持ちは地球から出ないにしても、アフリカやシベリア、中央アジア等の生活し辛い環境にいる人間がまだまだいる。
コロニーの建設もサイド7が始まったところである点も大きい。
原作においては、戦後人口が半減したためサイド7は数がほとんど増えてなかったが、戦争が無ければ増えただろう。
「また、彼らは核を使ったテロ行為によりコロニーを壊滅させ、その残骸もまた地球に落とそうとした。
その際に、民間人が約6000万人死亡している。
先ほど言った隕石落とし、地球での核攻撃等という民間人を積極的に巻き込む無差別攻撃ばかりを行ってきた。
もしこれらの攻撃が成功していたならば、地球圏の人口は半分以下になっていただろう」
いうまでもなく、原作知識による予測ではあるが、恐らくさほど間違ってはいないだろう。
というか、原作においてはギレンは人類を半分にしておきながらまだ多いという様な事を言っていた。
地球に住む人間はだいたい殺すつもりだったのかもしれない。
「彼らはサイド3に住む人間以外は全て人間だと考えていないという事だろう。
決して許されてはならない、何より彼らにより思考を誘導されテロリストと化した者たちを再教育しなければならない。
自らの罪が理解できず、英雄とでも思ったまま死ぬ等許される事ではない!」
事実ジオン公国の国民は全てジオンこそが正義であると教え込まれてある。
これは最終的に公国になってからの思想誘導ではあるが、ジオン・ダイクンが唱えたコントリズムが元となっている。
正直言って彼がやった事は平時に乱を起こす事そのものであったと言える。
「彼らが唱える連邦の圧制とはなんであろうか?
それは大きく分けて2つに集約される。
一つはコロニー税と空気税等に代表される追加税であろう。
これによりコロニーの住民は重税を課されていると感じているだろう。
しかし、これには理由がある。
空気税に関してはコロニーの代表者の意向によるものであるのでその額は調査が必要だろう。
しかし、コロニー税はそもそもコロニー建造の際にかかった莫大な費用を政府に返すのが目的である。
何故なら、その費用を出したのは大手企業や資産家等の高額納税者であるからだ。
地上にいたころの君達の祖先は資金的に困難な人達であったし、その環境も大変な場所である事が多かった。
故に税等も払っていない人達が多かったのだ。
それ故、コロニー建造に関しては出資金と言う形で大企業や資産家が中心になって出す事になった。
そのしわ寄せがコロニー税となっているという事なのだ。
納得できるかは別にしても理由がある税であるのだという事は理解してほしい」
正直言って、コロニー税や空気税に関してはどの程度現地コロニー政府による中抜きがあるのか不明なのだが。
それの対応は可能な限り早急にしなければならないだろう。
Zガンダム以後の流れに直結する問題だからな。
「もう一つはコロニー市民に投票権が無い事だ。
これは、当時の政府が借金の返済が終わるまでと言う形で設定したものであり返済がコロニー税と言う事になる。
しかし、投票権が無いという事は人権の侵害である。
これに対しては政府の代表ではないため、私の謝罪に価値は無いが、申し訳ない。
政府に対して働きかけを、先日立ち上げたアルテイシア殿とブレックス氏によるリベラル政党で行って行こうと思う」
これに関しては正直何故こうなったという風に思う、二等市民とかそういう形はどっちかというとちょび髭氏のやり方だろ。
そう、地球連邦って実は案外ナチっぽい部分が見え隠れしている。
それも大抵、悪い部分である。
ジオンが先ではあるが、G3ガスもナチからだろうしな。
「すぐさま解決する事は難しいが、既に月の市民は投票権を持つためコロニーに広げる事はそれほど時間はかからないだろう。
我慢しろとは言わない、政府に対して抗議活動をする事も権利の一つだ。
しかし暴動や民間人への危害を加えるのは自らの首を絞める事になる。
デモ活動等はきちんと申請して、ルールを守りつつ活動してほしい」
戦争で死ぬ人間を減らした結果、現状まだ地球圏には100億人くらいの人間がいる。
だからこそ、コロニーをどんどん作って人を入れていかないといけない。
地球の人類の数も今の半分以下にしないといけない訳だから、結局の所10年行かない間に人口は宇宙の方が圧倒する事となる。
そうすると、経済の中心地も移動するわけで、投票権が無いままにしておくと地球を経済圏から除外するかもしれない。
それだけで地球は干上がる事になるだろう、だから政府もコロニーに投票権を与えない訳ないはいかないのだ。
何せ宇宙には金属も土も水も存在している、空気も作りだせる、地球からの物資が無くてもコロニーを作れるのだから。
「連邦の圧制と言われているものは、解決可能な案件でしかない。
何故ならこれからも地球からコロニーへの移住は続くからだ。
そして、人口比は今丁度地球と宇宙がほぼ同じになっている。
これからは地球よりコロニーの方が人口が多くなるだろう、そうなれば力関係は宇宙に傾く。
そうすれば10年以内にはそれらの問題には一定の解決を見るだろう」
つまり、戦争をしない方がコロニー側に有利であるという事だ。
どのみち、地球という揺り籠には人数制限があり環境破壊が進んで人口50億でもギリギリなのだ。
となればどんどんコロニー作って宇宙に移住していくしかない。
放っておいても地球側が取り残される事となる。
だからこそ、原作の矛盾がよくわかる。
気に入らないからと虐殺を続けた結果、地球はよりボロボロになり、宇宙も酷い状況になっていた。
特にジオン残党に至ってはただ連邦の人間を虐殺するだけの組織と化しているため毎度何千万何億の死人を出していた。
そんな奴らより連邦が悪いという人も結構いたのだからもう意味不明だ。
「だが、もしも圧制があったとしても、それで民間人ばかりのコロニーを破壊していい事になるのか?
地球に隕石を落として億単位の殺しをしてもいい事になるのか?
否! 断じて否である! 何千万という民間人の虐殺を行ったジオン公国に言う資格はない!
前代未聞の凶行を行った組織が、正義を語る等言語道断!!」
そう、ジオンの矛盾はこれだ。
圧制からの解放の名のもとに、本来味方として取り込むべきスペースノイドすら虐殺している。
時間が無かった訳じゃない、ジオンダイクンが政権を取ったのは宇宙世紀0058年。
そしてザビ家が公国を作ったのは宇宙世紀0068年である。
原作的には戦争しなければお話にならなかったから仕方ないが、ここは現実。
戦争なんてのは最終手段なのだから、穏便に進めた方が出費的にも人的資源からも敗北のリスクも含め低コストで済む。
独立して無駄に嫌われるより連携を組んで連邦政府から権利や利権をもぎ取って行けばよかったのだ。
「よって、サイド3に進軍し無条件降伏を迫るものとする。
取得した情報によると既に隕石を迎撃していた艦隊がサイド1と2から攻撃をかけている。
サイド2より第一艦隊 艦隊指揮官はヨハン・イブラヒム・レビル中将。
サイド1より第二艦隊 艦隊指揮官はグリーン・ワイアット中将。
既に宇宙要塞ア・バオア・クー及びグラナダを攻略し、サイド3は丸裸だ。
抵抗は不可能である」
こんなに早い展開になっているのは、元々隕石迎撃だけが目的ではなかったという事だろう。
流石はゴップ大将出来る人だな。
さて、まとめに入るとしよう。
「我ら地球連邦軍は元より防衛のための組織である、地球圏全てである地球連邦の軍は他国に攻める事はない。
あくまで防衛戦である、だからこそサイド3を取り戻さねばならない。
この戦争が人類最後の戦争となる事を祈ってやまない」
色々回り道をしたが、地球圏に向けて語りたい事は語り終わった。
後は、地球の環境写真等を映す事とした。
地球の環境が過酷なものを含む事を知らせなければならない。
戦争が終わったらすべて解決なんていう事は無いため、今後のためにも布石を打っていく必要があるのだ。
ジャブロー宇宙戦艦建造用ドック。
ノゾム・ヤシマ少将の演説はここでも聞こえていた。
そう、追い詰められたギレン・ザビも聞く羽目になったのだ。
「馬鹿な! 我らが虐殺を行った証拠等無い! 全て連邦の欺瞞である!」
ともすれば士気が落ちて降伏しそうになる兵士を鼓舞せねばならず、もうギレンは能動的な行動が出来る状態にはなかった。
何せ、彼らの部隊は続々現れる連邦軍により包囲されつつあり、敗北が目前である事は誰の目にも明らかだ。
核の起爆用として持って来たザクの核融合炉を暴走させてその隙に逃げるという手も望み薄だろう。
「まだ手はある! 希望を捨てるな! 我らはっ!?」
ズキューンという銃にしては大きな音が鳴ったと思うとギレンは吹き飛ばされていた。
その瞬間、己の下半身と泣き別れとなった事が理解できた、しかしギレンはもうその次の瞬間には何も感じなくなっていた。
「10年前の父の死もお前の仕業だったんだろう? 復讐させてもらったよ」
小型のMSと言えるATスコープドック、その中で青い髪の男がつぶやく。
もっとも、これはラル中佐に拾われた時にカモフラージュとしてつけたものだ。
現在の名はキリコ・キュービィしかし、少し前まではシャア・アズナブルと名乗っていた。
「どうやら私はニュータイプの才能は無いらしい」
彼は、妹の様に強力な感応力を持ってはいなかった。
原作においてはフラナガン博士と繋がりを持つ事で開発され、ララァの死と共に開花したのだが。
この世界においてはどちらとも関わっておらず、せいぜい腕のいいパイロットに過ぎなかった。
そのためだろう、ギレンのサイコミュ兵器を食らっても気絶まではいかなかった。
だから地上への追撃部隊に参加したのだ。
「だがお陰で、敵を討つことが出来た。欲を言えばデキン・ゾト・ザビも仕留めたかったが……。
奴はどのみち処刑されるだろうからな、生き残るのは坊ちゃんくらいか」
彼はキシリアが既に討たれた事も知っていた。
だからだろうか、憑き物が落ちたように見えた。
あとがき
最初エピローグもまとめて最終話にしようと思っていたんですが、次回に持ち越す事にします。
ともあれ、本編はこれにて終了。
愚痴の集大成も終わりました(汗
ジオンファンの人たちからすると曲解しすぎだろうって言われそうですが。
ノゾムの言っている事は現にそこで生きているなら、そうなるよなと言う話になるはずです。
例えばジオンの隕石コロニーですが、ソロモン、ア・バオア・クー、アクシズ、ペズンとネームドだけでも4つはあります。
ザクの量産や艦隊の製造と言ったものをみるに、明らかにアステロイドまで取りに行ってたんでしょう。
連邦の許可については私の勝手な妄想ではありますが、同時に普通に考えればそうなるだろうという話です。
戦略物資でありコロニーの材料でもある隕石や小惑星を勝手に取っていいのか?
普通の政府なら許可は出ないでしょう。
後、一年戦争の話でジオンより連邦政府が腐っているのが悪いという人がいます。
たしか、アニメだから物語的に重要なのはどちらかと言う話になっているんですがメタ視点すぎる。
それを中心に据えるとお話が成立しなくなります。
例として言えば、日本で北海道が独立するとか言い出して、関東一円を核で焼き払ったとします。
その上で日本の政治腐敗が悪いって言ったとして、関東の人が全滅しててもそれより優先されますかね?
人類が半分になるってつまりそういう事のはずなんですが。
とまあ、こういった愚痴の集大成を行ったわけなのですが。
なんというか、すっきりしました。
ガンダムに対して持っていた鬱屈が晴れる思いですね。
その代わり見てくれた人はごく一部かと思いますが。
流石に主張が先鋭化しすぎた(汗
見てくれる人が残っている事にむしろ驚きです。
ありがとうございますね。
エピローグは、こういう愚痴は残っていないと思いますので安心してください。
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