何だろう、この感覚は?
まるで実体のない幽霊か何かを相手取っているかのよう。
私の攻撃が一発も直撃しない、何発かのビームがシールドバリアーを
掠めはしたが、ほとんどはフワフワとした独特の挙動により躱されてしまった。
彼女は一体何者なの!? 
僅かに見える口元、その華奢な体型から察するに14、5歳…いやもうすこし若いかも。

襲撃者との交戦が始まってから既に十五分は経過したか。
私は後ろにピタリと張り付きエネルギー弾とビームを放ち続ける無機質な白のISに
未だ追い回されていた。
もちろんこっちだってただ逃げ回っていたわけじゃない。
さっきから振り向きざまにビームでの反撃を試みる。
でも、さっき言ったように当たらない。
私は彼女の行動を予測して攻撃してるのに、まるでそれら全てを読まれているかの
ような錯覚に陥る。
解せない……確かに彼女のIS乗りとしての腕前は大したものだとは思うが、それだけでは
説明がつかない不気味さが彼女にはある。
ISの性能に秘密があるのだろうか、とにかく言いように振り回されている今の状況を
改めて思い知り、自分の不甲斐なさに歯噛みする。

…解せない、といえばもう一つ。
さっきから彼女は私を追い回すばかりで、私を落とすための必殺の攻撃をしてこない。
大きな隙ができても無視する、彼女程の実力ならそれを見落とすはずがないのに。
交戦して早々に気付いた、彼女は私を落とす気はないということに。
なら目的は? 分かりきっている、時間稼ぎ。
銀の福音が織斑君たちの担当するエリアへ向かった。
あれから連絡は来ないけれど、きっと今頃彼らと福音が衝突しているのだろう。

でもそれが理由だとすると腑に落ちない。
何故なら織斑先生と戦っている大男は、先生を殺すつもりで攻撃しているのだから。
襲撃者の目的が私たちを福音から遠ざけここに釘づけにするというものだとしたら、
手加減などする必要がない。
むしろ突破されないよう全力で向かってくるはずだ…あの大男のように。
でも彼女はそれとは正反対だ。
いや、この消極的とも言える攻め手の甘さはもしかすると……。


「ねえ、貴女! もしかして攻撃を躊躇っているの!?」

「………………」


彼女は何も答えない、一言も返事を返さない。
機体も止めない、尚もこちらへ向かってくる。
でも放たれるビームの発射感覚が明らかに長くなる。
精度も大きく損なわれ、牽制の意味を成さなくなる。
無言の肯定、彼女は本心から私を害するつもりはない。
それを確信してさらに声を張り上げる。


「お願い、攻撃を止めて!
 今私の大切な生徒が福音に襲われている!
 私はどうなってもいい、でも彼らを危険な目に遭わせるわけにはいかないの!
 貴女はこんな事をするのに躊躇している!
 どんな理由があるのかは知らないけれど、貴女はそれを是とは考えていないはずよ!
 だから、もうこんな事は止めて! 
 せめて私の生徒たちに手を出すのだけは止めて! お願いだからっ!!」

「……………………………………」


私の必死の叫びにも彼女は反応しなかった。
依然攻撃の手は緩んだままだが、それを止めることはしなかった。
くっ……私の読み違いだったの?
突破口が開いたと思ったけど、ぬか喜びだったのかしら?
これ以上無為に時を浪費するわけにはいかない。
説得が失敗した今、もはや相討ち覚悟で接近するしか……。このまま追いかけっこを続けるより
はるかにマシだろう。
そう思い定め機体を反転させたところで、不意に彼女の攻撃が止まった。
不審に思い注視していると、彼女はどうやらチャネルを開いて誰かと会話しているようだった。
会話といっても彼女は無言で二、三回頷いているだけだったが。
と、彼女はチャネルを閉じたと思うと私についっと向き直った。


「…………………………」


ほんの二、三秒私を見つめた後、その純白の機体を翻し全速力で飛び去る。
撤退した……? でも彼女が消えた方角にすぐ思い至り、私も慌ててスラスターを全開にする。
この方角は、織斑先生が大男と交戦中の空域のはず! まさか合流するつもりじゃ!?


「くっ……待ちなさい!!」


彼女の後を最大加速で追う。
いくら織斑先生といえど、彼女まで相手取るなんて無理だ。やられてしまう。
その後ろ姿を見失うまいと必死に加速する。
すると程なくして私たちとは全く異質の、くすんだ黒のISとそれ以上に薄汚れた暗黒のISを視認する。


「織斑先生っ! 大丈夫ですかっ!?」

「ん……山田先生か。当たり前だ、私がそう簡単に落とされるものか」


いつもの彼女らしい厳たる口調に胸を撫で下ろす。
しかしそんな彼女も荒く息をつき、手に持っているブレードは半ばで折られている。
ここまで消耗した先生を見るのは初めて、ここで繰り広げられていた戦闘の凄まじさを容易に窺い知れた。


「山田先生こそ……なんだ、随分余裕そうじゃないか。
 これでは先輩としての立場がないな」

「何言ってるんです! 私にはあの男を相手取るのは無理ですし、織斑先生があの男を食い止めてくれていたお蔭で、
 私も自分の戦闘に集中できたんですよっ! …それより」

「ああ………」


私たちは視線を相対する二機へと向ける。
さっきから会話しながらも常に意識はそちらへ向けてはいたが、一向に彼らが動く気配はない。
どうしたのかと疑問に思っていると……。
今まで顔を伏せていた大男がけたたましい笑い声を上げた。
織斑先生のそれと同じように、刀身を半分失った大剣を私たちに見せつけながら。


「ぐっくく………はぁーーーーーーはっはぁ!!!
 素晴らしい、脱帽とはまさにこのこと!!
 まさか量産機の汎用な鉄塊如きに儂の『悪逆』が断ち斬られようとは!
 先の言葉は撤回しよう! やはり貴様は最高の獲物だブリュンヒルデよ!!」

「…貴様からの賛辞など嬉しくもない。
 しかしいきなり仲間を呼び寄せるとはどういうつもりだ。
 2vs2でもするつもりか」


織斑先生は油断なく折れたブレードを構え、大男を睨み付ける。
もちろん私も臨戦態勢。
あの少女だけでも手に余るのに大男の相手まで…。私の実力では、足手まといになるだけかもしれない。
でも今織斑先生の横にいるのは私、先生のパートナーとしてそれなりの覚悟を決めなければ。
そう心に決めて身構えると、私の決意を見透かしたように大男が嘲笑する。


「ぐはは………まあそう固くなるな、ひよっこ。
 儂も十分楽しんだし、目的も半分は完了した。
 これ以上貴様らと事を構えるつもりは、儂らにはないということだ。
 ほらだからこそこうして連れを呼び寄せたのではないか……二人とも」

「何………!?」


大男の「二人」という言葉に眉をひそめる私たちは、すぐに驚愕することになる。
突如背後から噴き出したプレッシャー、大男には劣るが凄まじい圧を直近に感じて咄嗟に振り向く。
五mも離れていないその場所に、またしても見慣れないISが停止していた。
基本色はダークネイビー、だが通常のそれよりも濃く、黒く塗装されている。
フルフェイスのバイザーやスラスター、脚部パーツの一部が暗いバレヌ・ブルーにカラーリングされている。
なでらかな流線型のフォルムに背面の枯れ枝のような枝分かれした翼。
やはり一般的なISとは違う、規格外の外装。
と、その操縦者は私たちを一瞥すると爆発的な速度で私たちの横をすり抜け、
まるで黒い閃光と化し、瞬き一つの間に大男の横に並んでいた。


「そんな……もう一人!? 今までどこに……!?」

「…………………」


狼狽える私とは対照的に、動じず襲撃者たちを見据える織斑先生。
その視線を真正面から受け止めた大男は、欠けた大剣を粒子に変え、豪快に高笑いした。


「ブリュンヒルデよ、今回はこのあたりで鞘に納めるとしようではないか。
 此度のような小細工の上に仕立てられた舞台の上ではなく、儂らが命を賭すに相応しい
 戦場で再び相まみえるその時まで、この勝負は預けておく」

「…さっきも言ったが私は貴様の享楽に付き合ってやるつもりはない。
 だが貴様らが今回のように私の大切なものに手をかけようというのなら、
 次こそは確実に息の根を止めてやる。ただそれだけだ」

「それならば次も極上の戦に興じることができそうだ。
 もうあの小僧に安息が訪れることはない。
 歯車は既に、動き出したのだから。
 では儂はその時を夢見てせいぜい牙を研いでおくとしよう。
 さらばだブリュンヒルデ、世界最強の女傑よ」


と、ISの警戒アラームが突如鳴りはじめる。
咄嗟に身構えるがその原因が表示されるよりも早く大男が指を鳴らし、同時に炎が猛烈な
勢いでこちらへ走ってくる。
その炎は直前で二手に分かれ、まるで私たちを取り囲むように広がり、そのまま大爆発を起こした。
あまりに強烈な炎に巻かれ、天地左右の判別がつかなくなる。
目の前を覆う紅蓮の壁に翻弄されながらも、それに必死に耐える。


「くあっ……!? これは……!?」

「ちっ!!」


織斑先生は舌打ち一つ、折れたブレードを素早く横に一閃。
それだけで巻き起こった風が炎を消し飛ばした。
だけれどもそれがおさまって目を開けた時には襲撃者たちの姿はどこにもなかった。


「そ、そんな……!? ハイパーセンサーで探しても反応がないなんて…!?」

「さっきの炎で一瞬センサーがイカれた……ジャミングの効果も兼ねていたのかもしれん。
 それにおそらく奴らのISには我々のステルス機能よりも高性能なそれが搭載されているのだろう。
 突如我々の前に現れたことといい、現時点ではそれくらいしか推察できん。
 そちらの方は帰投してから詳しく調べるとして…すぐに織斑たちの救援に向かわねば。
 早乙女先生! 状況はどうなっている、織斑たちは無事なのか!?」


あ…そうだった! 織斑くんたちがまだ福音と戦っているかもしれないのに忘れるなんて!
私は自分を叱責しつつ現れたチャネルを見るけれど…。
画面の向こうの早乙女先生は何とも複雑な顔で口を開いた。


『あ……織斑先生、山田先生……ええ、織斑クンたちは無事です。
 福音も既に機能を停止し、操縦者のナターシャ・ファイルスも命に別状はありません。
 ……ですが……』


開口一番の台詞に私たちは揃って目を丸める。
福音が停止!? 私たちでさえ手を焼くほどの相手を織斑くんたちだけで討ったというの!?
いや、彼らの元へ他の先生たちが駆けつけて加勢したのかもしれない。
何にせよ今の報告が確かならまさに上々の首尾ではないか。
なのに何故早乙女先生はそんな煮え切らない態度なのだろう?
それを早乙女先生に尋ねると、さらに眉間に皺を寄せ、一つ長い溜息を吐いた。


『それは後ほど…とにかくご報告することが多すぎて……。
 私も混乱したままなのですが、まずは一刻も早く帰投して下さい』


それっきりチャネルは閉じられてしまった。
状況は漠然としたままだけど、とりあえず厄介な問題が山積しているのは分かった。
私は織斑先生と頷きあい、機体を反転させる。

正直、私自身大分混乱している。
銀の福音の突然の暴走、それと機を同じくして現れた襲撃者、新たな男性IS操縦者、
意味深な言動の数々、考えたくもないけれど……。
とにかく、今は大切な私の生徒が無事だったことを素直に喜ぼう。
難しいことは学園でゆっくり考えればいいのだから。

…そういえばアスカ君はどうなったのだろう?
謹慎を破って織斑くんたちを助けに向かったと聞いた。
彼らしいと言えばそれまでだけど、とても心配だ。
私は逸る気持ちを抑えながら日の傾きかけた真紅の大空を駆け抜けた。
































…あれ、ここどこだ?
何もない……周りを見回しても、建物も雑草一本すら生えていない。
空を見上げる、まるで全てが雲で覆われているように真っ白だった。
地面に目を落とす、まるで全てが新雪にでも覆われているように真っ白だった。
完全な白の世界、いやむしろ虚無とも呼べる空間に俺はただ一人立っていた。
まだ覚醒しきっていない漠然とした頭のまま左右を見回し、当てもなく歩いてみる。

このふわふわとした足元がおぼつかない感覚。
でも不思議なことにそうして歩いていると意識が鮮明に甦ってくる。
こんな超自然的な光景の中でも妙に現実感を感じてしまっている自分がいる。
ふと気づく、この感覚は俺がずっと以前から感じているもの。
夢…………そう、夢なんだ…………。
これは、俺の見ている夢。毎晩強制的に繰り返される、悪夢。
でもおかしい。ここには底なしの闇や瓦礫の街やそれを焼く劫火もない。
そして何より、「アイツ」がいない。
かといって安らぎに満ちたうららかな花畑があるわけでもない。
誰もいない、何もない、喜びも愛しさも希望も、何一つない。
完全な、寒々とした空虚な世界。

これが……俺の夢……?
毎晩永遠にリピートされる悪夢に比べると、ここは一見マシに思える。
でも俺にはそれとは別の、得体の知れない不気味さが蔓延しているように思えた。
誰かいないのか、俺の心の中には何もないのか。
妙な焦燥に駆られた俺はあらん限りの声を張り上げて叫ぶが、その声は真白の空間に吸い込まれて消える。
いよいよ判然としない不安に押しつぶされそうになったその時、それは聞こえた。


― ……シン…… ―


っ! 悪夢の中ではいつも聞こえていたそのあどけなさを残した声。
こうして普通に名前を呼ばれることが、とても久しぶりに新鮮に感じる。
俺は一度は再びこうして面と向かって話せなくなると覚悟した少女へと向き直る。


「ステラ………」

― シン、良かった…最後にもう一度だけ逢えた……。
  でも、時間、ない。もうすぐステラ、いなくなる……ここから…… ―


いなく、なる……?
その言葉に反射的に手を伸ばす。
でもその手はステラの体をすり抜け、俺は彼女の後ろへと通り抜けてしまう。
触れることすらできなかった。


「ステラ、いきなりどうしたんだよ?
 時間がないってどういうこと?
 いなくなるって、どういうことなんだよ……?
 これ以上どうやっていなくなるっていうんだよ……ねえ、ステラ……?」

― シン……そんな疲れ切った顔、しないで? 
  「アイツ」、封印された。「ここ」よりもずっと深いところに、押し込められた。
  …でもそれ、ステラも同じ。ステラも一緒にもっともっと深いところに行かなくちゃ。
  ステラと「アイツ」は…繋がっていたから。
  だけど、その前に、最後にシンに逢えた……ステラ、嬉しい ―


封印って……どういう……くそっ!
意識ははっきりしてるのに、頭には霞がかかったように不明瞭で。
やっとステラに逢えたのに、彼女はまたしても暗い闇の中に捕えられるというのか!?
ステラはもう、そんな事になっちゃいけないのに! どうして運命はステラを穏やかに眠らせないんだ!?
どうしようもない思いに歯噛みしていると、ステラはおもむろに両手を俺の前に差し出してきた。
そこにちょこんと乗っている一粒の赤い種。
梅干しの種……? でもそれにしては皺も少ないし形も良いし……。


― 梅干しの種、違う。これはシンの種、シンの心の……花の、種。
  ステラ、いなくなる。皆も、いなくなる。
  真っ黒で汚いモノも全部、いなくなる。
  でもシンの心……空っぽになる。
  シン、いつまで経っても、笑えない……。
  だからステラ、花植える。シンの心、花で一杯になるように、植える。
  そのためにシンの種、ステラが持っていく。
  ステラ、シンの種大事に大事に守る。あっためる。
  いつか花が咲いて、ステラも深いところから抜け出して、シンと一緒に花、植える。
  きっとシン、喜ぶ。心から、笑える……… ―


悲しげな表情から一変、ニコニコしながら体を揺らすステラに苦笑する。
だけどその言葉を反芻して、複雑な気分になる。
確かにステラが言った通り、この世界は空っぽだ。
だけどそれは厳密に言えば、違う。
この世界にないのは「アイツ」と、暖かな感情だけ。
ずっとくすぶっていた怒り、悲しみ、憎しみは今もこの世界に充満している……薄れてはいない。
でも心にヘドロのように溜まっていた臭気を発する狂気が感じられない。
「押し込められた」ということなのか、ずっと重かった心が、妙に軽い。
だから、「空っぽ」。そして、花を植える。俺の心が、花で一杯に………。


― ……シン? どうしたの? 花で一杯………嫌? ―


ステラが不安そうに顔を覗き込んでくる。
表情に出ていたのだろうか?
慌てて身振り手振りを交えながら言い繕う。


「そんな事ないよ、ステラ。ステラがそう言ってくれるのすごく嬉しいし、俺も花畑は好きだから。
 …………でも」

― ……? でも…………なに………? ―


ステラが小首を傾げて続きを促す。
うぅ……口下手な俺としてはどう説明しようか頭を悩ませる。
そもそもこんな薬にも毒にもならない下らないことを口に出していいものなのか……。
…でもここは俺の夢、いるのはステラだけだ。
言ってみてもいいかもしれない…ステラになら。


「…分からないんだよ、俺の中に花畑なんてあっていいものか。
 ステラも感じてるだろう? 「アイツ」がいなくなったにも関わらずこの空虚な世界を
 覆い尽くしている怒りを、憎しみを、絶望を。
 そんな俺の中に花なんて植えても、すぐに散ってしまうだけなんじゃないかって。
 結局さ、どんなに綺麗な花が咲いても俺は……人は吹き飛ばしてしまうんだから」


それは俺の中でずっと払拭できずにいる想い。
戦争なんて、戦いなんてなくなればいい。
そう声高に叫んでも争うことを止められない人間。
元の世界でも同じ、戦いを止められない俺。
今まで何度も自分の心を裏切り剣を取って戦ってきた。皆を守る為だと、他者を斬り倒し粉砕して。
この世界に来ても結局俺は剣を取り、今回は俺のせいで皆を危険に晒して。
そんな俺の心に、どうして花なんて育てられるのか。
今までずっと守るべき花を吹き飛ばしてきたのに、俺にその資格なんてないのに。
剣を、銃を手に取った時点でその資格もまた、吹き飛んでしまったというのに。

ステラをチラリと窺う。
彼女は俺の言葉をよく咀嚼するように目を伏せて。
赤い種を両手で優しく包んで、ゆっくり口を開く。


― ……花、すぐ散っちゃう。ステラも、そう思う。
  でも散っちゃったらまた植えればいい。
  吹き飛ばされても、また咲かせられる。シンなら、それできる ―


また植えればいい。一度吹き飛ばされても、何度でも。
それは俺にとってやけに心地よい言葉で、無条件に受け入れたいもので。
だけど俺の心は、それに諾々とは従えない。しっくりとこないんだ。


「でも新しい花を植えても、俺が守りたかった花はもう戻ってこない。
 新しいそれに縋って、守れなかった過去から目を背けているだけじゃないのか?
 それって結局現実逃避っていうか、逃げてるだけなんじゃないのか?」

― ……散った花は戻らない。ステラも散っちゃったから、もう戻らない。
  でもステラ、思う。
  シン、新しい花植える。その花はステラじゃないけど、シンの守りたかったっていう気持ち、
  過去を想う気持ちは、その花が受け継いでくれる。
  それ、きっと意味がある。だってその花が咲いていることで、シンはステラのこと、
  忘れないでいてくれる。
  ステラがここにいたことに意味があったんだって、皆に伝えてくれるから。
  だからきっと、逃げてるんじゃない。前に、進んでいるんだよ、シン ―


正直なところそれはただの綺麗事……いや詭弁とも呼べると思う。
でもそれだけじゃ片づけられない想いを、ステラの言葉から感じた。
散った人たちがそこにいたことを…。
でもそれは俺が言っていいものではない、伝えていいものではないはずだ。
例えどんな想いがそこにあったとしても、俺にその資格はない。

と、ふと視線を戻すとステラの姿が徐々に薄れていくのに気付く。
既に目を開けていたステラは、寂しそうに微笑んでいた。


― もう、時間。ステラ、行かなくちゃ…… ―

「ステラ……また逢えるよね?」


思わず尋ねてしまう。我ながら女々しい態度だと思う。
ステラの前だとどうしても上手い言葉が見つからない。
そんな俺をどう思ったのかは知らないが、ステラはいつもの柔らかな笑みを浮かべて言った。


― 逢える、逢えるよ…いつかきっと。 
  だってステラ、シンにこの花、見せてあげなくちゃいけないから。
  だからそれまで……待ってて。待っててね、シン…… ―


ステラは手に持った種を大事そうに握り締めながら、ゆっくり顔を伏せる。
消えていく、ステラの姿が。
その気配、その優しい心が、存在が、消えていく。
その間際、今までで一番のいっぱいの笑顔を浮かべながら、ステラは言った。



― シン、ステラは心配することないと思う。
  シンの中、暗くて悲しい想いで一杯。
  でもステラ、ちゃんといる。もう逢えないと思ってたけど、散らずに枯れずに、ここにいる。
  だから大丈夫。
  シンの種、強い。シンの花、強い。
  どんなに辛いことがあっても、悲しい目に遭って押しつぶされそうになったとしても。
  シンの花は枯れない、散らない、吹き飛ばない。
  優しいシン。ステラの為に、いっぱい泣いてくれたシン。
  ステラはそう、信じてる。誰よりも、信じてるから………… ―



その言葉を最後に、ステラは俺の前から消えた。
静寂、もう誰の気配も感じられない。
あるのは醜い負の感情だけ。感じるのは、ちっぽけな俺の存在だけ。
果てのない無窮の空間の真ん中に一人立ち尽くしながら、ただ一言だけ、口をついて出た。


「……やっぱり最後は、俺一人を置いていなくなっちまうんだな……」


いつかって、いつだよ。
俺はどれだけ待てば、またステラに逢えるんだよ。
どれだけ頑張れば、皆の所に行けるんだよ。
自殺なんて論外で、結局無為にこの世界であがき続けなければいけない虚しさを前に。
ここが夢であることをいいことに、俺は静かにむせび泣いた。





            ・




            ・




            ・




            ・




            ・




「っ!! シン、目が覚めた!? 私だシン、分かるか!?」

「ちょっ、篠ノ之さん! あんまり身を乗り出さないで! シンさん、私のこと分かりますか!?
 ああ、良かった……全然目を覚まさないからもう心がはち切れそうで……!」

「旦那様……やっと目を覚ましたな。もう、ずっと心配ばかりかけて………。
 どれだけ心配したと思ってるんだ……でも、本当に良かった……旦那様、旦那様ぁ……」

「シン……おはよう。僕よりもずっとお寝坊さんだったね。
 ……お疲れ様、本当にありがとうね。僕らのために、またこんなに傷ついて…。
 ごめんね…守ってあげられなくて……。ごめんね……ごめんね………シン…………」


…………………………ここは?
箒…セシリア……ラウラ……シャル………?
皆、何でそんな悲しそうに……………。
えっと……ここは………この天井は…………………ああ。
ここは、IS学園の医療施設。ずっとお世話になってたからすぐ分かった。

確か俺は銀の福音との戦いに飛び込んで、それで………。
そうだ、福音は確か箒が止めを刺したんだ……。
だけど俺はその直前に『最後の力』を使っていたせいで、体の負担が極限を超えて………。

……………………ああ、そうだ。
俺は、「アイツ」に取り込まれて……。
何とか体の支配を奪い返そうと幽閉されていた闇の底から這い出してきて……箒に助けられて……。
ああ……そうだ。「アイツ」に乗っ取られていたはいえ、俺は皆に、何てことを……。
全部、覚えている……俺はどれだけ皆に酷いことを、してしまったんだ…………。
何で俺は、いつもこう……。
皆を守りたい、守ろうと思っていたはずなのに、いつの間にか皆を傷つけて……。
どうして、俺は、俺は……………。


「っ……………シン………………。
 …なあ、シン。お前が今何を思っているのか、私には手に取るように分かるぞ。
 でも、それは全く的外れなんだ……分かるか?
 お前は私たちを助けてくれたんだ。
 あんなにボロボロの体で、またボロボロになってまで、私たちのために、戦ってくれたんだぞ。
 その後のことは、またゆっくり話してくれればいい。
 あれがお前の本心だったなんて、誰も信じていないんだから…」

「そうですわ、シンさん…。
 あの時はシンさんに明確に拒絶されて何が何だか分からなくなりましたが……。
 ごめんなさい、一瞬でも貴方を疑ってしまって……。
 だってあの時のシンさん、とっても苦しそうでしたもの、悲しそうでしたもの……」

「旦那様……あの時は混乱してしまっていたけど、もしかして旦那様も私と同じ……。
 いや、そんなことは今はいいんだ。
 すまなかった、旦那様が苦しいときに何もしてあげられなくて……。
 旦那様は私たちのために、ずっと泣いていたのに……」

「シン、皆の言う通りだよ。僕、あの時意識が朦朧としててあまり覚えてないんだけど…。
 でもシンが僕らのために戦う姿は、はっきりと覚えている。
 シンが福音を前にして叫んだその一字一句、胸に焼き付いて消えないんだ。
 皆、分かってるからさ。誰もシンを責めたりしないよ…責めるもんか。
 責める人がいたら、僕らがシンを守ってあげるから。だから……。
 そんなに泣かなくてもいいんだよ。まだ血を流す必要なんて、ないんだから……」


血………? 一体、なんの………?
と、シャルが俺の目元をそっと指で撫でて、見せてくれる。
赤い………血………? 俺の目から、出てるのかよ………。
俺は皆を見回す。皆俺と同じように顔を涙で濡らしながらも、優しげな笑みを浮かべていた。
こんな過ちを犯した俺を、暖かく包んで、赦してくれている。
それを見ていると急に胸から激情がこみ上げてきて、動かすのも辛い口をゆっくりと開いていた。


「………守れると、思ってたんだ…………」

「……ああ、何をだ? シン………」

「力を手に入れれば……それさえあれば……守れると思ったんだ……。
 一夏も……皆も………あの、福音でさえも………でも…………」

「でも………? どうしたんだ、シン…………?」

「…………あっさり…………すり抜けた……………」


思い出すのは、箒が福音に止めを刺した直後のこと。
ISが強制解除され海に落ちていく操縦者に手を伸ばした。
守れると思った、今度こそ離れていく手を掴み留めさせることができると、そう思った。
そして実際掴めたんだ、俺の手は、彼女の手を。
でも血で濡れた俺の手から彼女の手は、いとも簡単に、すり抜けていった。
そしてその手を掴んだのは、一夏だった。
ただ俺の手が血でベタベタだったから、それが理由なのは分かってる。
でも俺には、それ以外の理由があるんじゃないかと思えて仕方なかったんだ……。


「……どんなに足掻いても、守ろうと息巻いても……。
 俺の血まみれの手は大切なものは、掴めないのかも………」


震える手をゆっくりと顔の前まで持ってくる。
手袋も包帯もない、醜悪な肉の塊。
これが今の俺の姿なのか、こんな手で誰かを守るなんて、汚れきった俺が誰かを守るなんて、やはり無理なのか。
でも箒たちは俺の手を両手で包み、指でなぞってくる。


「そんな悲しいことを言うな…。お前の手は、こんなに綺麗なのだから」

「……綺麗? 俺の、手が……?」

「ああ、とても綺麗だ。この手が、いつも私たちを助けてくれたのだから。
 だれが醜いなどと思うものか……」


その言葉にふっと体が軽くなる感覚を覚えた俺は皆に微笑みかけて、ゆっくりと瞼を閉じる。
こんなに心地よい気だるさ、久しぶりだ。
皆の視線を感じる、見守られている感覚。
俺は皆の優しさに包まれながら、今だけは全ての苦痛を忘れて、意識を手放した。



この日を境に、俺は悪夢も、それ以外の夢も、一切の夢を見なくなった。































夏もそろそろ本番、日差しは容赦なく肌を焦がし、空気は乾きその熱気は肺を焼いていく。
IS学園の制服は通気性に優れた特別性で長袖でも快適だけど、それでも許容できないほどの猛暑。
汗が噴き出し服が張り付いて気持ちが悪い。
ハンカチで滴る汗を拭いながら足早に目的地へと急ぐ。

そこは学園の医療施設。
臨海学校が銀の福音事件により急きょ短縮となって学園に戻ってきてからもう一週間だ。
あの事件でISが強制解除されるまでダメージを受けたシャルロットとシンはここに仲良く入院することになった。
といってもシャルロットは既に回復して早々に退院した。
もともと外傷はそこまで酷くなかったし、ISのエネルギーが回復した今問題なく退院の運びとなった。

だが問題はシンの方だ。
福音によって腹に大穴を開けられたシンだがISのお蔭かそれは凄まじい速度で回復した。
だけど体力が戻らない。意識は戻ったのに起き上がることさえできないでいる。
毎日箒、セシリア、ラウラ、退院したシャルロットが見舞いに行っている。
もちろん俺も顔は出しているけど、俺は今シンと同じくらい気にかけている人がいる。
今日もシンには悪いが全く別の病室へ足を向けていた。

全五階の医療施設。
重篤の患者が入院する二階よりも比較的症状の軽い患者が入院する上の階層。
最上階は病院関係者の個室や面会室があるのでその一つ下の階層、長く伸びる廊下の一番奥。
人通りも少なく深閑としたそこにある病室に、彼女はいた。
ほんの少し逸る気を抑えて、控えめにノックする。
「どうぞ」と少し硬く緊張した声を聞き留め、ゆっくり病室へ足を踏み入れる。
ベッドから身を起こしてこちらを窺っていた金髪の女性は、俺の顔を確認するや
曇っていた表情をパっと明るく輝かせた。


「あっ……イチカ、さん……!」

「おはよう、ナターシャさん。調子はどうだ?」

「体はもう何ともない……頭のモヤモヤは相変わらずだけど。
 それよりイチカさん、私のことはナターシャって呼んでって言ったのに」


頬をぷくっと膨らませむくれるその姿はあどけない少女のよう。
だけど彼女の年齢は千冬姉と同じ二十代前半、俺よりも年上だ。

ナターシャ・ファイルス、先日猛威を振るった『銀の福音』の操縦者。
一週間前シン達と一緒にここへ担ぎ込まれた。
彼女の状態は幸いなことに目立った外傷もなく激しく衰弱していることを除けば
比較的軽微なものだった。
だけどそれが徐々に回復し意識を取り戻した時、新たな問題が浮上した。
それが今の彼女の状態というわけだ。

『銀の福音』の暴走によって意識を半強制的に押さえつけられている間、彼女の
精神、神経には多大な負荷が常にかかり続けていた。
ドクターはそれが原因だろうと言った。
一時的な記憶の混乱による記憶喪失、軽度の幼児退行。
でも「一時的」といってもそれがいつ元に戻るのかは分からない。
結局当面はできる限りストレスを感じさせないよう療養させて記憶の復元を待つことになった。
いきなり記憶復元のために刺激を与えるような治療は、彼女の精神上良くないという理由からだ。


「……イチカさん? さっきからボ〜ッとしてどうしたの?
 もしかしてナターシャのお話、面白くなかった?」

「ん……いや、そんな事ないさ。
 ちょっと疲れてたから意識が飛んじゃってただけで…。
 えっと、どこまで話してくれてたっけ?」

「イチカさん、疲れてるの?
 駄目だよゆっくり休まなきゃ……そうだ!
 ナターシャのベッドで一緒に寝ようよ! きっと疲れもすぐに消えちゃうよ!」


他意のない純粋な労りの念を向けられ動揺してしまう。
彼女にとっては言葉通りの意味なのだろうが、健全な男子高校生である俺からすれば、全く
別の意味で受け取ってしまう。
そうでなくとも彼女は千冬姉に比肩する程の絶世の美女なのだ。
緊張するなってのが無茶な話だ。


「い、いや俺は別に寝なくても大丈夫だよ。
 それに今から寝たら夜になっちゃうだろ?
 面会時間終わっちまうから駄目だよ」

「面会、時間……。イチカさん、今日も帰っちゃうの?
 ナターシャ、もっともっとイチカさんとお話してたい……」

「我が儘言うなって。他の患者さんの迷惑にもなるから、それはできないよ。
 まだ終了時間まであるし、明日も来るからさ」

「でも……ナターシャ、イチカさんと一緒にいると安心できるのに……」


うなだれる彼女を見つめ、考える。
俺がこうして毎日彼女の面会に来る理由はこれだ。
千冬姉と一緒に初めて彼女の病室を訪れたあの日、ドクターにも看護師にも、顔見知りであるはずの千冬姉
にさえ怯え震えていた彼女が、何故か俺にだけは恐怖心を抱かず普通に接してきた。
それに驚いたドクターからの要請で、こうやって彼女のメンタルのケアのために毎日ここへ足繁く通っているわけだけど…。


「なあナターシャ、何で他の人は怖くて、俺だけは平気なんだ?」

「え? う〜んとねぇ、ナターシャは黒くて紅い悪魔に酷いことされてるの。
 空を飛ぶための羽も奪われて、凄く怖い目でにらまれて。
 そいつの歪んだ笑みが今も忘れられない……怖い………。
 でもそんな時、天使の羽を持った白い鎧の騎士さんがナターシャを助けてくれたの。
 あの体中がポカポカするような暖かさ…イチカさんを見た時、騎士さんのことが頭に浮かんだの。
 ずっと騎士さんが傍にいてくれているような気になるの……って!
 これこの前も話したよ! もう忘れちゃったのイチカさん!?」

「あ、いや忘れてないよ。ただ再確認のつもりでさ、悪かったって」


ナターシャを宥めながら、思う。
今の話、ナターシャは断片的に夢に見る内容を話してるに過ぎないんだけど、福音との戦いに
その内容を重ねると孕む意味が浮き出てくる。
もしかしたらナターシャはあの時の記憶を故意に封印しているのかも、そんな事を考えてしまう。
彼女にとって『銀の福音』はかけがえのないパートナーなのだと千冬姉から聞いた。
それを俺たちに寄ってたかって破壊されて、そして最後は彼女の言うところの「紅い悪魔」に
動きを止められて……。
そう思うと彼女のことを不憫に思い、そして彼女から「紅い悪魔」と形容されるシンのことも
不憫に思った。
本当に、ままならないものだよな……。

結局それ以上その話には触れないまま、面会終了時間まで彼女と話していた。
終始楽しそうだった彼女も俺が席を立つと、まるで捨てられた子猫のような目で俺を見つめてきた。
正直背筋がゾワゾワしてくるけど、それに流されるわけにはいかない。
さっきも言ったが他人に迷惑をかけてはいけない。病院のルールを破るわけにはいかない。
人間として常識だ。


「じゃあナターシャ、また明日も来るから。明日もそんなしょげかえった顔だったら
 デコピンしちゃうからな」

「で、デコピンは嫌! 痛いから嫌! イチカさんに言われなくてもちゃんとしてるもんっ!
 ナースさんの言うこともちゃんと聞いてるし、検査だってちゃんと受けてるし、
 ご飯も残さず食べてるもんっ!」

「ははっ、なら大丈夫だな。良い子にしてたらドクターに許可貰って、甘いもんでも作ってきてやるよ」

「甘いものっ!? じゃあナターシャ、ケーキがいい!」


子供のようにはしゃぐ彼女を見ながら、俺は今まで感じたことのない想いに戸惑っていた。
俺は今まで誰かに守られてばかりだった。
千冬姉にずっと守ってもらって、この学園に来てからも結局全ての危機を脱せたのはシンのお蔭だ。
俺自身で解決したことなんて、何もないんじゃないかって。
そんな俺にとって彼女の存在は、とても新鮮なものだった。

頼られるのが、こんなに嬉しいなんて。
今までの「守れるようにならなければ」という焦燥感に支配されたそれとは違う。
「守ってあげたい」というこの感情が、これほど心地よいものだなんて。
まるで今まで知らなかった力が溢れ出してくるようで、毎日彼女に会うたびにその想いは強まっていって。
今の彼女には、俺が傍に居てあげなければならない。彼女には寄り添う人間が必要だ。
彼女の記憶を取り戻してあげたい、それまで俺が彼女の騎士となって護ってやる。
それを明確に意識するようになっていた。


「なあナターシャ、ケーキは持ってきてやるけど、それには一つ宿題をこなしてもらう必要がある」

「し、宿題!? ナターシャあんまり難しいこと分からないかなーって………」

「そんなに難しいことじゃないよ。明日までに俺のことは「イチカ」って呼び捨てできるように
 なっておくこと! また「イチカさん」なんて呼んだらデコピンしちゃうからな?」

「え……………ふぇぇ!!??」


頭から湯気が出るんじゃないかってくらいに顔を真っ赤にするナターシャを置いて、
俺も急いで部屋を出る。
そのまま一度だけ扉に向かって「また明日」と声をかけると足早にその場から離れた。
俺自身、自分が言ったことに対して凄く恥ずかしくて、ナターシャの顔をまともに見れなかったから。
でも、それでも心はフワフワとして、よく分からない嬉しさがこみ上げてきて。
俺は自分でも分かるくらいに気持ちを高揚させながら、医療施設から出ると一目散に
学園の寮へと全力疾走した。



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