ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

進化の龍よ蒼き航路を超えて 第2話「来るべき変人」
作者:地獄の釜   2022/10/10(月) 22:07公開   ID:mc.YSvMBfS.

「ゲッターロボ、宇宙放射線”ゲッター線”を動力とするゲッター炉心によって駆動する特殊戦闘機であるゲットマシンが3種類の合体パターンで状況に合わせて運用する特級人型機動兵器…………だめ、基本構造の3割も全く理解できないわ」


 レッドアクシズの鉄血寮の一室にて酷い隈を浮き上がらせながらパソコンに保存された計測データを調べているKAN-SENがいた。周りには既に処理した書類などが山積みになっており目の前のデータ――ゲッターロボアークの基礎データ――を前に鉄血の指導者であるKAN-SEN”ビスマルク”は崩れ落ちる様に突っ伏した。常識の範囲を超えたゲッター線技術の産物はこの世界の常識をある程度超えたセイレーン技術を優先的に取り込み最先端を行く技術者でもあるビスマルクでさえ音を上げてしまっていた。


「えーっと、まあゲッターロボの基本外装構造の3割を理解出来てるなら上出来ですよ」

「貴方の世界の科学者が末恐ろしいわ…………って!?」


 背後から聞こえた声の主、山岸獏は水筒と白米のおにぎりと軽めのおかずを入れた弁当箱を机の上に置きながら部屋の換気を行っていた。部屋の鍵を閉めてなかったのを思い出しながら食事を摂ってなかったのも思い出した。時刻は既に13時を回っている。


「ゲッターの研究をするのもいいんだけどよ、妹さんを心配させないでやってくれよ?」

「……ティルピッツね。ごめんなさい、貴方は客人なのに仕事をさせちゃったわね」

「住まわせて貰ってる身ですから気にしないで下さいよ、それよりも何でアークの解析をしてるんだ?」


 獏の発言で妹である戦艦ティルピッツを心配させてしまったことを知り、後で謝罪をすることを決めたビスマルクはアークの解析を行う理由について聞かれた。


「……ゲッターロボのデータを解析すれば対セイレーン用の新装備や、民間でも使える新技術が開発出来るかも知れなかったからよ。欲をかけば━━━━━。」

「ゲッターロボ、若しくはそれに準ずる人型機動兵器や作業ロボットの開発を進めようとしたってか」


 世界の敵であるセイレーンに対抗する為の新型兵器、艤装や固定兵装に至り理想を語るなら人型機動兵器の開発をしたいという仲間や力無き一般の民を守りたいという果てなき思いである事を獏は理解した。


「けど…動力源は別の物で作るとしても、肝心の機体の骨格フレームの構造や外部装甲が訳分からない仕組みになってるから進まないのよ」

「ゲッターロボの骨格フレームや装甲は全部【ゲッター合金】が必要だしな…そりゃあ無理だ。まあ簡単な構造にして置けば作業ロボット位は行けるな?じゃあ【アレ】が使えるな」


 獏は懐にしまっておいたこの世界の電子端末からデータを送信、送られたデータを見たビスマルクが見たのは黒くより人に近い構造をしたロボットと平たく黄色いロボットだった。


「ええと【ステルバーα04】と【ビィートT23】……これは?」


 貰った軽食と茶を食べ終え、眠気を覚えたビスマルクは保存されていたデータには存在しない機体の情報を見て驚きを持った。


「いざという時に交渉で使えると思って隠しておいたんすよ。しかし流石に意地悪しすぎたな……いきなりゲッターに類似したやつを作ることを目標にしちまったとはな」


 獏の発言にビスマルクは違和感を覚えた。ゲッターを作ることを目標にしちまったとはという発言に引っかかっりを覚えたのだ。まるでゲッターを作ることがまずいみたいに言ってるようで……。


「コックピットは理解したからある程度の技術で補えるから大丈夫と思ったのだけれど?」

「まあコックピット自体は問題ないんだ、問題は作ったところで『KAN-SENも含めてパイロットが務まるやつが居ない』事だ」


 獏の発言に対し意味がわらかなくて、脳の処理の限界を超えたビスマルクは眠気にも負け崩れるように眠りについた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「はははは!!拓馬よ君はなかなかユーモアだな、このリットリオを変人と呼ぶとは!」

「高笑いしながら全速力で追いかけてくる女は変人じゃないならなんだって言うんだよォ!?」


 昼食を食堂で済ませた拓馬は、食器を返却した途端背後に高笑いをあげる高身長で薄緑色の長髪のKAN-SENにじっと背後に立たれた。まあそういうイタズラと思い気にせずトイレに向かおうとしたが一向に離れずピッタリと背後に高笑いを上げながら存在を出張するそのKAN-SENに冷や汗をかきながら全力で走り出していた。危うくトイレにも入ってたんじゃね?と思った拓馬は今までにないHENTAIの存在を認知したのだった。


「うぉおおお!?何なんだアンタはーーー!」

「お初にお目にかかる、私は地中海最強を誇る戦艦が1隻ヴィットリオ・ヴェネト級の2番艦のリットリオ。君に興味を覚えたKAN-SENだ!!」


 地中海を領域とする【アズールレーン】構成国家がひとつ【サディア帝国】の最高戦力が1隻にしてナンパ師にしてナルシスト、そして地中海最強を誇る戦艦…それがリットリオというKAN-SENである。


「ヴィットリオ・ヴェネト級……って一緒に昼飯食べたヴィットリオさんの妹さんでインペロの姉ちゃんかよ!?」


 実は昼食の時に他のヴィットリオ・ヴェネト級と一緒に食事を取り友好的関係になった。心配性なヴィットリオとやる事はやるがだらんとしたインペロは拓馬にとっても初めて見る女性ではあったが話しやすいし交流を深めるのには問題はなかった。その際遠くから妙に穏やかな視線を感じていた。


「ヴィットリオは直ぐに仲良くなれると思っていた
が、あのインペロが初対面の相手にあそこまで心を開いたのは驚いたよ。だから……私とお茶を飲まないか!!」

「圧が、圧が強い!!」


 うぉおおおと叫び声を上げながらサディア帝国最高戦力のKAN-SENから全力疾走し逃走する人間の青年、あらゆる勢力のKAN-SENがそれを見た途端度肝を抜かし誰もが思った。

 指揮官と同じ事が出来るやつがいたとはと。





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「ん?何処じゃここは……綺麗な海じゃわい」


  母港の片隅、マーシィドッグのそばに微かな光ゲッター線を微かに纏った老年の男が身を起こしていた。右目は完全に真っ白になり見えてるどうかも怪しく、さらに右目を中心とした周りは古傷とかしており頭の中央だけ禿げておりつつも左目に宿る狂気やその体格からして不思議と若さを醸し出していた。


「しかし儂は【タワー】と共に自爆した筈、これもゲッター線のなせる技か?まあ良い、個々の責任者に会ってみるとするかの!」


 全く、とんだ奇跡もあったもんだわい。彼奴らも何時かゲッター線を、ゴウの生まれた意味も、進化とは何かを理解出来るはずだ。本当に……


「ああ、愉快じゃ…なあ…早乙女?」


 ゲッター線に導かれまた因果は紡がれた。

■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
次回、「その名は敷島」
テキストサイズ:5537

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.