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次元を超えし魔人 第12話『交錯する意志』
作者:193   2008/12/02(火) 02:59公開   ID:jQ0ObGiQzSA



「はあ……完全にしてやられちゃったね」

 アムラエルとD.S.は、時の庭園の大広間へと転送されていた。
 プレシアの狙いはアリサたちと、D.S.たち魔導師を引き離すことにあった。
 あの広範囲転送魔法の効果は単純だ。“魔力の低い者”を任意の場所に強制転送させる。
 強い魔導師ほど自分に害を成す魔法に抵抗力があるため、強制転送を試みたとしても座標にズレが生じる。
 D.S.たちの強さを逆手に取り、プレシアはその特性を上手く利用して、アリサたち一般人とD.S.たち魔導師を引き離した。

 アムラエルはプレシアの知謀に驚き、正直に感心していた。
 完全に裏をかかれた形になり、アリサたちとも引き離されたことに少なからず動揺していたからだ。

「このオレが……超絶美形(ハンサム)のD.S.さまが『うげっ』なんて下品な言葉をっ!!」
「……気にするところはそこなの?」

 アムラエルはそんなD.S.を見て呆れ返る。
 このくらいで慌てるD.S.ではないとアムラエルも思っていたが、完全に気にする論点がD.S.はズレていた。

「プレシアの狙いはアリサたちでしょうね。どうするの?」
「フンッ! んなの決まってんだろうが――」

 人差し指を上に向け、邪悪な笑みを浮かべながらD.S.はこう口にする。「ぶち殺すっ!」と――
 D.S.のそんな態度にアムラエルは呆れ、少なからずプレシアに同情した。
 基本的に女性には優しいD.S.だが、今回は狙った相手が悪かったとアムラエルは思う。
 アリサを人質などに取らなければ、まだ救いようもあったと思うが、アリサを狙った時点でプレシアの未来はない。
 人質なんて行為が、この外道のD.S.に通用するはずがないからだ。
 逆にどんな仕打ちがプレシアに待っているかと思うだけで、アムラエルは彼女の冥福を祈るばかりだった。

「――あなたちたちはっ!?」
「「――ん?」」

 その時だった。
 リンディと武装局員たちが、この先にいるプレシアを逮捕するために大広間に集まってきたのは――
 だが、D.S.とアムラエルはそんなリンディたちを無視して話を進めていく。

「それじゃアリサのことは任せるね。あれでも、フェイトの母親なんだから――
 あまりやり過ぎちゃうと、フェイト泣いちゃうよ」
「……あ〜、へいへい。とりあえず、せめてそこのゴミくれぇは――
 このD.S.さまの下僕らしく“華麗”に片付けて見せろよ?」

 挑発するようにニヤリと笑うD.S.にアムラエルは「当然っ」と返す。
 そのままD.S.はリンディたちを無視して、プレシアの待つ最深部へと向かっていった。
 それを見て、D.S.を追いかけようと走り出したリンディたちの前に立ち塞がったのはアムラエルだ。

「そこを退きなさいっ!! 公務執行妨害になりますよっ!?」
「クスッ――地球じゃないからって随分と強気じゃない“おばさん”」
「な――っ!!」

 おばさん呼ばわりされたリンディは顔を真っ赤にする。
 管理局でも「お若いですね」と言われている(お世辞と思うが)ほど、最近少しお肌の年齢を気にしているリンディにその一言は禁句だった。
 たしかに3●歳で一児の母ではあるが、子供と言えど赤の他人に「お姉さん」とは言われても、「おばさん」などと言われる筋合いはないとリンディは思う。

「子供のわたしから見たら、母親なんてみんな“おばさん”だよ?」
「そ、そうかしら? これでも“お肌”には“随分”と気をつかってるのよ!?」
「それに中間管理職ってのも気苦労多いんだろうし、最近寝不足なんじゃない?
 ほら、目の下にちょっとクマできてるし、肌にもツヤがないみたい」
「――!!」

 ――それはあなたちのせいでしょうがっ!!
 と叫びそうなほどの鬼の形相でアムラエルを睨みつけるリンディ。
 そのリンディの迫力に怖気づいた周囲の武装局員たちも、身の危険を感じ距離を取っていた。

「子供に構ってる暇はないわっ!! 早くプレシアを――」

 このまま乗ってしまってはアムラエルの思うままだ。リンディはそう考え、周囲の武装局員に号令をかけた――
 が、アムラエルを押し退けて進もうとした武装局員が数名、強い力で弾かれ壁に向かって吹き飛んだ。

「これ、正当防衛だよね? これだけの大人数でよってたかって“かよわい”女の子に向かって来るんだもん」
「あなた……」
「だから――わたしも“本気”を見せてあげる」

 アムラエルの背から光を放ち二枚の翼が顕現する。光り輝く翼――まさに幻想的な一コマだった。
 アムラエルの背後の翼から漏れ出した魔力の大きさに、リンディは先程までの怒りも忘れ、冷静さを取り戻していく。
 ユーノからの情報でアムラエルがD.S.の使い魔だと聞いていたことから、それなりの実力者ではあるとリンディは考えていた。
 しかし――その予想は大きく悪い方へと外れていた。
 使い魔だと言うことからも大きくてニアSランク、D.S.の普段の魔力値から考えてもSSには届かないと考えていたのだ。
 だが、翼を広げたアムラエルを前にしてリンディは悟った。
 彼らが自分たちの常識では量れない存在だと言うことを――

「あ……ああ……」

 武装局員たちは牙を向いたアムラエルを前にし、恐怖ですくみ上がっていた。
 天使と言う人類を遥かに超越した存在を目の前にして、恐怖から身体が硬直し息も満足に出来ない。
 強者と弱者、捕食するものと捕食されるもの、先程と完全に立場は逆転していた。
 その人数差からも、リンディと言う強力な魔導師が指揮を執っていれば“自分たちが負けるはずがない”と思っていたのだ。
 それは、指揮を執っていたリンディも同様だ。

「じゃあ、“遊ぼう”か」

 天使の微笑み。
 それは強者が弱者にかけた、これからはじまる“蹂躙”の合図だった。





次元を超えし魔人 第12話『交錯する意志』
作者 193





 駆動炉に程近い広間――
 なのはとフェイトは同じ場所に飛ばされていた。
 二人は自分たちの置かれている状況を確認し、D.S.たちと完全に引き離されたことを理解する。

「フェイトちゃん……」

 なのははフェイトのことが心配だった。
 母親に捨てられ、こんな結果になってフェイトはどんな気持ちだろうと――
 何か言葉をかけないとと思いながらも、その言葉がなのはには見つからない。

「なのは、大丈夫だよ。わたしにはダーシュも、それになのはたちもいる」

 D.S.やなのはに言ってもらった言葉だけでフェイトは満足だった。
 まだ、こんな自分でも“必要”だと言ってくる友達が、家族がいる。
 それを知ったことでフェイトは幾分か落ち着いていたからだ。
 だが、それでもやはりプレシアのことを忘れることはフェイトには出来そうもなかった。
 それが尾を引いているのだろう。
 あれだけ酷いことを言われても、まだプレシアを心のどこかで信じたいと思っている自分がいる。
 それをフェイトは理解していたから、だからこそどうすればいいか分からなくなっていたのだ。

「フェイトちゃん、お母さんに会いに行こう」
「……なのは?」
「まだ、フェイトちゃんは自分の口で何も言えてないでしょ?
 だから、伝えに行こう――フェイトちゃんの気持ちを」

 なのははフェイトの手を取り、笑顔でそう言った。

 フェイトは思う。

 ――どうしよう?
 ――どうしたらいい?

 ――と自分がいくら考えても出せない答えを、なのはは当たり前のように簡単に出してしまう。
 話を聞きたいと言ってくれた時も――
 友達になりたいと言ってくれた時も――
 いつもそんな、なのはの言葉に救われてきた。フェイトはそう感じていた。

 フェイトは、そんななのはを見て唐突に理解した。
 自分はまだ母親とも友達とも、本音で語り合ったことがなかったと――
 なのはやD.S.の言葉を信じ、そしてそんな二人に甘え、心の拠り所にして頼り切っている今の自分は、きっとプレシアの言いなりだった頃と何も変わっていないのだとフェイトは悟った。

「うん――母さんに、ちゃんとわたしの気持ちを伝えたい」

 だから、そんな自分を一歩前に進めたいとフェイトは思う。
 なのはの友達だと胸を張ってい言える自分になるために――

「――なのは!?」

 そんな二人の間に割って入ったのはユーノの声だった。
 リンディから駆動炉の停止を命じられたクロノとユーノは、なのはたちのいる広間の向こうにある駆動炉を目指し向かっていた。
 偶然ではあったが、なのはと鉢合わせしたユーノは気まずい顔をする。

「……だれ?」
「ぼくだよっ! ユーノだよっ!!」

 今のユーノの姿は人間の時のものだった。
 実は、そうなのだ。なのはは小動物に変身しているときのユーノしか知らなかった。
 はじめて出会ったときも、ジュエルシード集めをしていたときも、温泉に行ったときも、アリサの家にお泊りしていたときも――
 ずっと――ユーノは小動物の姿だった。

 本人もそれが自然になってしまい、先日アースラでクロノに指摘されるまで気付かなかったくらいだった。

 その事実に驚いたのは、言うまでもなく“なのは”だ。
 幸い温泉のときはアムラエルの配慮で回避出来たが、なのははユーノを動物だと思っていたので目の前で何度となく“着替え”をしていた。
 しかも、なのはの姉の美由希はユーノを可愛がっていたため、一緒に“お風呂”によく入っていた。
 それを思い出し、なのはは顔を赤くしてレイジングハートを持つ手を小刻みに震わせる。

「キミがフェイト・テスタロッサだな?
 キミにはプレシア・テスタロッサと同様、次元犯罪に加担、幇助した嫌疑がかけられている。
 悪いけど、一緒にアースラまで同行して事情を聞かせてもらうよ?」

 その場の空気を読めないクロノは、フェイトにデバイスを向け、任務を忠実にこなそうとする。
 だが、刹那――クロノの横を砲撃魔法がかすめ、真っ直ぐに隣にいたユーノへと放たれた。
 ギリギリのところで運良く回避に成功するユーノだったが、まさか砲撃魔法をなんの警告もなしに撃たれるとは予想してなかっただけに相当に焦った。

「――何を!?」

 そんな、なのはの行動に驚いたのはクロノだ。話に聞いていた限り、なのははユーノの友人だと思っていたからだった。
 困っていたユーノを心配し、ジュエルシード集めに協力してくれた民間人の心優しい少女。
 そんな説明を受けていただけに、敵対行動とも取れるこの行動にクロノは動揺を隠せない。

「ユーノくん、わたしを騙してたの?」

 なのはは真っ直ぐにユーノにレイジングハートを向け敵意を向ける――怒っていたのだ。
 人間だと言うことを黙っていたこともあるが、それだけではない。

「ちょっと待って、なのはっ!? それは誤解――」
「じゃあ、なんで“そこ”にいるの?」

 管理局のことは、なのはもユーノやアムラエルたちから話を聞き知っている。
 そして、どんな組織かと言うことも――だからアムラエルたちが危惧視していたことも知っていた。
 しかし、なのはは別に管理局がすべて悪いとは思ってはいない。
 アムラエルたちにも、管理局にもみんな立場があって、譲れない理由があると知っている。
 だから、対立があるのは当たり前のことだと理解していた。

 そのことで一時は、なのはも悩んだ。

 ――本当はどうすればいいのだろう?
 ――自分は何をするのが正しいのだろう?

 でも、アムラエルたちを見ていて気付いたのだ。

「わたしはフェイトちゃんの友達――それはアムちゃんもみんな一緒」
「なのは……」

 なのはの言葉を聞いて、フェイトは表情を和らげる。

 みんなの味方でいたい、全部を守りたいと言っても、それは甘い理想だと言うことに、なのはは気付いた。
 誰かにいい顔をすれば、また片方で傷つく人がいて、だからと言ってみんなに良い顔をすれば、それは裏切りと一緒だ。
 そんな偽善では何も結局守れないのだと、みんなが傷つく結果になるのだと、なのはは知った。

「なのは――本当にジュエルシードは危ないんだ!
 だから、ちゃんと管理局で保管してもらうのが正しいんだよっ!?
 ぼくは――だから、フェイトのことや今までのことを全部話して――」
「……そっか。それがユーノくんの“理由”なんだね」

 だから、フェイトの味方でいたい。大好きな友達を、大切な家族を守りたいと、なのはは思ったのだ。
 なのはの戦う理由――それは海鳴市をみんながいる街を、せめて大切な人たちを守りたいと言う意志。
 だけど、ユーノとは絶対的な気持ちのすれ違いがあることに、なのはは気付いた。

 ユーノは管理世界のためにと、自分の判断でそれが正しいことだと思ってやったのだろう。
 しかし、なのはたちにとって、ユーノの取った行動は軽率で明らかな裏切りだった。

「でも、わたしの想いを、みんなの気持ちをユーノくんは裏切った」
「なのは……?」

 なのははレイジングハートに魔力を込める。
 ユーノのことを友達だと仲間だと思っていたからこそ、なのはは今回のユーノの軽率な行動が許せなかった。
 事実、フェイトのことが知られ、クロノがフェイトを捕らえようとしている。

「だから……少し、頭冷やそうか」

 いつも明るく優しいなのはの面影は消えていた。
 酷い悲しみと怒りに心を支配され、ただ目の前の“敵”に、その矛先を向けた。






「キリがないな……」
「あ〜ん、D.S.はどこにいるのよ――っ!!」

 その頃、カイとシーンはプレシアの仕掛けた傀儡兵に囲まれていた。
 無人の魔導兵器だから遠慮はいらないとは言っても、それぞれがAランク程度の魔導師と同じ実力がある。
 数十体と言う傀儡兵に囲まれ、さすがに二人も苦戦を強いられていた。

「シーン、全員の位置は分からないのか?」
「ん〜、そこら中でなんか戦闘が繰り広げられてるみたいで……
 一番大きな魔力なら、ここからずっと下の方に感じられるんだけど……」

 呪符を片手に探索魔法で時の庭園内部を探るシーン。
 彼女も何もずっと遊んでいた訳ではない。なのはの特訓に付き合い、フェイトのミッドチルダ式の魔法を研究することで、簡単なバインドや探索魔法などの補助的な物限定だが、多少は行使できるようになっていた。
 元来、シーンは古代語魔術を行使できるほどの魔力をその身に秘めている。
 なのはやフェイトなど比べれば小さなものだが、それでも並みの魔導師に比べれば遥かに大きな魔力量だ。
 その上、彼女は魔法の操作技術が桁違いに高かった。古代語魔術は従来の魔法に比べかなり術式が難しいのだから、それを難なく行使できるシーンの実力は言うまでもない。

「そうか、ならばこんなところで手間取っている訳にはいかんな」

 愛剣を片手に笑みを浮かべるカイを見ながら、シーンは「はあ……」と溜息を吐きながら同意する。
 シーラの配下になってから、特にこの世界にきてからは大きな戦闘らしいものもなかった。
 だから、根っから武人(戦闘マニア)であるカイはストレスも溜まっていたのだろうと思う。
 それに加え、特命全権大使なんてものを引き受けてから、最近のカイは今まで以上に執務に追われ、最近はずっと遅くまで机に噛り付いていたことをシーンは知っていた。

「あまり、やり過ぎないでよ……」

 相手が傀儡兵と言えど、これからのことを思うと同情せざる得ないシーンだった。






 クロノとユーノは意外にも絶妙なコンビネーションを持っていた。相性の問題だろう。
 ユーノは“結界魔導師”と言われるほど補助魔法の扱いに長けている。
 Aクラスの魔導師であるとは言っても、ミッドチルダの魔法学院を卒業している彼は正規の魔導師としての教育を受けている分、魔法の運用技術、判断力ともにかなりのレベルだった。
 そしてクロノは、同じくミッドチルダの正規の魔法教育を受け、才能に驕らず努力で若干十四歳と言う年齢ながら執務官にまで登りつめた少年だ。
 二人の連携は同じミッド系の魔法を使い、同じく正規の教育を受けたものとして、かなり相性がよかった。
 なのはとフェイトに魔力など資質で劣るクロノを、ユーノが結界、捕縛と言った魔法でサポートし、自分たちに有利で相手が戦い難い状況を作っていく。
 なのはとフェイトはどちらもが戦闘型の魔導師だ。こうした絡め手はどうしても不得手だった。

「もらったっ! スナイプショット!!」
「――っ!!」

 その一言で、クロノが解き放った魔力光弾を加速させる。
 スティンガースナイプ――
 クロノが得意とする魔法の一つで、魔力光弾を高速で操ることで鞭がしなるように螺旋を描き対象へと迫る。
 フェイントを織り交ぜやすく、貫通力も高い。その代わり光弾を操作する技術が高く要求され、運用技術が高い熟練の魔導師にしか行使することは難しい魔法だ。
 元来、操作系の魔法が得意なクロノにとって、この魔法との相性はかなりよかった。
 一瞬の隙をつかれ、フェイトへと迫る魔力光弾――

「フェイトちゃんっ!!」

 なのはが助けに向かおうとするが、ユーノがその行く手に防御結界を張って上手くなのはを食い止める。

「ごめん、なのは……でも、本当にこれが正しいだっ!
 このままじゃ、あの子だって――っ!!」
「そこをどいて――っ!!」

 ユーノの防御結界目掛けて放たれるなのはの砲撃魔法。
 しかし、フェイトへの援護は間に合わない。クロノが放った光弾がバルディッシュを捕らえ、フェイトの手から弾き飛ばした。

「――ッ!!」
「これで終わりだ。デバイスもなしじゃ、たいした魔法も使えないだろ?
 大人しく降伏……」

 クロノが勝利を確信し、デバイスをフェイトに向けて降伏を迫る。
 しかし、フェイトは諦めていなかった。
 クロノの攻撃から逃げながらも、ずっと小声で詠唱を続けていたからだ。
 そう、大切な“あの人”から教わった魔法を――

「……闇の雷よ」
「な――っ!!」

 フェイトの身体から電撃が走る。クロノは完全に意表をつかれた。
 フェイトも同じミッド式の魔導師だと思っていただけに、デバイスもなしに強力な呪文を詠唱できるはずがない思っていたからだ。
 しかし、フェイトはミッド式の魔導師であると同時に、D.S.の弟子であり娘でもある。
 ミッド式の魔導師としては確かにクロノの方が完成されているのかも知れない。
 しかし、フェイトにはクロノも知らない――力がある。

「――バルヴォルドッ!!」
「ぐあああぁぁ――っ!!!」

 その魔法はD.S.とフェイトの確かな“絆”と言う魔法の力だった。

 フェイトのその手から放たれた雷撃がクロノに直撃する。
 電撃の魔法の中では低位ではあると言っても、人間に対して雷撃魔法は有効的な手段だ。
 BJは防刃、魔法防御に優れ、耐熱効果が高いとは言っても、そのすべてを防ぎきれるわけではない。
 当然、魔導師は生身の人間である以上、熱さも感じれば電気で痛みを感じる。
 特にBJは性質上、熱や冷気などの温度差には強いが、電撃などの耐性は僅かに劣っていた。

「くそ……っ! ――油断した」

 雷撃魔法の影響で運動中枢を麻痺されたクロノは苦い表情を浮かべる。
 得意の操作系の魔法も、運動中枢を傷つけられている状態では先程のような緻密な制御が出来ないからだ。

 だが、そんなクロノに追い討ちをかけるように四肢を繋ぐ枷がはめられた。

「バインド――ッ!?」
「――ぼくもっ!?」

 ユーノとクロノは、なのはの放ったバインドで四肢を固定され、完全に動きを止められていた。
 魔力が生来、なのはよりもずっと低いユーノは言うまでもなく、クロノも身体が麻痺しているために上手く魔法を行使出来ず、すぐにバインドを解いて逃げだそうにも逃げ出せない。
 その間にも二人に向けて巨大な魔方陣が展開され、レイジングハートの先に魔力が集束されていく。
 その目の前で集束されていく魔力の大きさに驚き、二人の表情が恐怖に歪んだ。

 それは、なのはも実戦ではじめて使う魔法だった。
 カイやアムラエルとの特訓で考えていたディバインバスターの可能性。
 なのはの魔力だけでなく戦闘で生じた周囲の魔力が、まるで“星の光”が流れ落ちるようにレイジングハートへと集まっていく。

「これがわたしの全力全開――」

 なのはの魔力がその瞬間燃え上がり、桜色の輝きを放った。

「スターライトブレイカ――――ッ!!!」

 まさに閃光――今までの砲撃魔法がすべて霞んで見えてしまうほどの巨大な砲撃魔法。
 その大きな魔力の放流がユーノとクロノ――二人を飲み込んだ。






 なのはの放った魔法の影響で、時の庭園が地鳴りを上げて揺さぶられる。
 パラパラと崩れ落ちた天井をアムラエルは見上げていた。
 最悪の場合はなのはたちを助けに行くかどうかを考え、その位置と状況を確認していたのだ。
 しかし、それが杞憂に終わったことを知り、アムラエルは笑みを浮かべていた。

「あっちも終わったようね。あのクロノって子も、二度も病院送りにされるなんてついてないね」
「まさか――クロノがっ!?」

 こちらよりは安全だと思っていた駆動炉に向かわせたはずのリンディだったが、アムラエルの一言で驚く。
 例えプレシアの伏せた傀儡兵などの伏兵が居たとしても、クロノならば十分に対応できると思っていたからだ。

「あの馬鹿魔力はなのはね――それで?
 もうお仲間は全滅みたいだけど、あなたはどうするの?」

 リンディが連れて来ていた武装局員はすべてアムラエルに倒されていた。
 正直、その場にいたリンディでさえ、恐怖を感じたほどの暴力と言う名の蹂躙だった。
 アムラエルは魔法を放った訳ではなく、ただその腕で薙ぎ払い、潰し、吹き飛ばしただけだった。

 正直に言えば、リンディは戦闘向きの魔導師ではない。
 オーバーSランクと言う高い魔導師ランクを持っているとは言え、大規模な出力魔法や高速戦闘は彼女の得意分野ではない。
 どちらかと言えばユーノと同様、結界や捕縛と言った魔法が得意な彼女の力は、部隊の“指揮”や“補助”と言ったところで力を発揮する。
 はっきりに言えば、リンディ個人の力ではアムラエルに対抗することは難しいのだ。

「でも、わたしもここで何もせず退く訳にはいかない。多少の抵抗はさせてもらいますよ?」

 だが、リンディにはここで退くには行かない理由があった。
 ここでプレシアの確保に失敗すれば、この事件に関して言えば管理局に後はないと考えていたからだ。
 先程からずっとアムラエルの巨大な魔力による力場の影響で、アースラからの現場の観測は難しい状態にあった。
 あとで公務執行妨害や捜査妨害などを訴えたところで、自分たちの証言からでは立証も難しい。
 そうなってしまえば、地球に逃げ込まれれば追求は難しいとリンディは思う。
 最低でも自分たちに有利な条件を引き出すためにも、プレシアの身柄を確保するか、何か証拠になる物証を見つけなくてはいけないとリンディは考えた。

「あなたたちだけが“切り札”を持っていると思わないことです」

 そうリンディが言うと、彼女を中心に魔方陣が展開され、背後に四枚の妖精のような羽が現れる。
 それを見たアムラエルの顔つきが変わった。リンディに注ぎ込まれている魔力の大きさに気付いたからだ。
 羽を中心に光輝く粒子、それが魔力素だと言うことはアムラエルにもすぐに分かった。
 しかし、個人が保持できる魔力量を遥かに超えているそれに、アムラエルはどこから来ているのかを考える。

「すごい魔力ね……それがあなたの本気?」
「さあ? でも――」

 アムラエルを中心にリンディの放った魔方陣が展開され、光の環が瞬時にアムラエルを拘束した。
 突然、なんの前触れもなく展開されたバインドにアムラエルの表情が驚愕に歪む。

「く――っ!! このっ!!」
「無駄です。それはそう簡単に解けませんよ?」

 ディストーションシールド――
 その四枚の羽は、アースラの駆動炉から魔力供給を受けたリンディが、余剰魔力を蓄積しておくために用いられる。
 リンディの秘策とはその膨大な魔力を使用してのアムラエルの拘束にあった。
 フープバインドと呼ばれる、通常のバインドよりも拘束能力に優れた魔法を使いアムラエルを捕らえる。
 拘束力は確かに高いが問題は魔力消費量が大きく、個人では長く継続することが難しいことにあった。
 対象の魔力と自分の魔力の差、それに術者の技量が拘束時間に多分に影響されるため、長時間の拘束は通常であれば不可能。
 しかし、リンディにはアースラからの魔力供給と言う秘策がある。

「…………」

 しかし、リンディは正直驚いていた。通常、高位の魔導師を拘束するのにも、こんな大袈裟なことはしない。
 だが、アムラエルを拘束するためだけに今も大量の魔力を注ぎ込まなければいけない状況にあった。
 アースラの駆動炉の魔力を使って、やっと全力のアムラエルを一時的に抑えることが限界と言う事実に、リンディは驚きを隠せない。

「しばらく、あなたにはここに居てもらいます」

 だが、それは好機だった。アムラエルが油断してくれていたとは言え、拘束できたことは確か。
 今のうちにプレシアを確保するか、証拠を押さえようとアムラエルを無視して奥へとリンディは走っていく。

「あ〜! もう、くそっ!! オバサン待ちなさいよ――っ!!」
「…………」

 背後から聞こえるアムラエルの罵詈雑言に眉間をひくつかせるリンディ。
 しかし、乗ってしまったら負けだと、そんなアムラエルを無視してリンディは、プレシアの待つ最深部へと向かっていった。






 その頃、D.S.はプレシアの待つ最深部へと辿り着き、二人の間には重苦しい緊張感が漂っていた。

「ようこそ、待っていたわよ」
「フン――テメエ、覚悟は出来てやがるんだろうな!?」

 鼻で笑うD.S.を前に余裕を崩さないプレシア。
 彼女が指を「パチンッ」と鳴らすと、そのすぐそばにアリサたちを閉じ込めた檻が現れた。
 それを見て、D.S.が僅かに反応を見せる。
 それに気付いたのかプレシアはそんなD.S.の態度を見て、笑みを浮かべていた。

「これで分かったでしょ? あなたはわたしとの“取り引き”に応じなくてはいけないと言うことが」

 D.S.がアリサたちのことを特別視していることは、プレシアにはお見通しだった。
 だから、彼女たちを最初から交渉の材料として使うつもりだったのだ。
 正直、たった六個のジュエルシードでは、アルハザードに辿り着ける可能性はほとんどない。
 規定の数を揃えたとしても、それでも五分に届くかどうかだとプレシアは考えていた。
 だが、D.S.ほどの強力な魔力を持つ魔導師の強力があれば、それも現実味を帯びてくる。
 D.S.とあの世界を調べていくうちに、メタリオンの存在に興味を持ったプレシアはそのことを確信した。

 次元断層に巻き込まれ、虚数空間に埋没したはずの世界。
 ――にも関わらず虚数空間内でも効力を失わず大陸全土を覆う強力な魔法結界。
 通常であれば、虚数空間内での魔法の効果は打ち消されるはずなのだ。
 にもかかわらず、その常識を無視して大陸全土を覆いつくす結界などプレシアは知らない。
 あの世界の存在自体がロストロギアではないのか? ――とプレシアに思わせるほどの異常な現象だった。

 だが、目の前のD.S.を見ればそれは自ずと分かる気がした。
 あの世界の魔導師が行使する魔法には、自分ですら知らない魔法の“神秘”が隠されているのだとプレシアは確信したのだ。
 その魔導師の協力があれば、アルハザードに辿り着ける可能性が高くなると考えていた。

「ルーシェ……」
「ルーシェくん……」

 自分たちが人質に取られていることでD.S.が満足に動けないのだと思ったアリサとすずかは、表情を曇らせD.S.の心配をする。
 いつもより真面目な表情でプレシアに対峙するD.S.を見て、二人もその様子から心配をしたのだが――

「クックックッ……人質に交換材料だあ?」
「……何がおかしいの?」
「このD.S.さまが、人質くれーで『許してください』と頭を下げるとでも思ったか!?」
「……冗談じゃないのよ?」

 近づいてくるD.S.を警戒し、アリサたちに杖を向けて見せるプレシア。
 だが、それでもD.S.の歩みは止まらない。

「やってみろよ?」
「く――っ!!」

 人質を取って有利なはずのプレシアの方が焦っていた。
 D.S.は仲間には甘いと考えていたからだ。それに、とくにアリサを人質に取れば確実に交渉には持っていけると考えていた。

 だが、本当に人質のことはどうでもいいのか? 

 ――と思わせる余裕を見せ、プレシアの脅迫に屈することなく歩みを止めないD.S.にプレシアも焦りを隠せない。

「――なら、そこで後悔なさい!!」

 あと数歩と言うところまでD.Sが迫った時だった。プレシアが放った魔力光弾が、アリサたちに迫る。
 迫る光弾を目にし、目を瞑るアリサとすずか――
 だが――そんなプレシアの行動を嘲笑うかのようにD.S.が笑みをこぼした。

「な――っ!?」

 プレシアは驚いた。魔力も何もない――
 ただの一般人だと思っていたアリサの目の前で、自分の放った魔法が弾かれたのだ。

「アリサちゃん……胸のところで何か光ってる」
「これ……」

 すずかに言われ、胸元を見るアリサ。そこにはアムラエルからもらった天使の羽が入っていた。
 それを見て、アリサは思い出す。

 ――絶対に失くさないよう、肌身離さず持ってて!

 そう言ったアムラエルの言葉を信じ、アリサはずっと肌身離さずその羽を持ち続けていた。
 アムラエルの羽の効果。それは、持ち主の生命を守る天使の加護。
 光の壁となり、持ち主を命の危機から守る――それがアムラエルがアリサに渡した羽の効果だった。

「アム……ありがとう」

 保持していた力を使い切り、輝きを失い消えていくアムラエルの羽。

「そんな……」
「クックックッ!! ――お仕置きタイムだ!!」
「――!?」
「アーク・エネミ――ッ!!」

 D.S.はその隙をつき、一気にプレシアの眼前へと距離を詰めていた。
 そのまま、プレシアの防御結界の上から魔力を込めた炎の拳を打ちつける。
 その衝撃に耐え切れずプレシアの防御結界が飛散、彼女はその勢いで後ろの壁へと弾き飛ばされた。

「――ぐはっ!!」

 壁に叩きつけられた衝撃と想像以上の魔法の威力に血を吐き膝をつくプレシア。
 だが、そんなプレシアをD.S.は見下し嘲笑う。

「テメエは女だからな、手加減はしてやったぜ」
「くっ!!」
「だが、しかしっ!! この“オレの女”どもを人質に取ったばかりか、傷つけよーとしたことは許せねえ!!」

 D.S.の自分の女発言に、アリサだけでなくすずかも顔を真っ赤にしていた。
 そしてようやく事態に気がついたのか、D.S.の下品な笑い声で目を覚ましたメイドたちも何故か顔を赤く染めていた。

 バニングス家執事の鮫島と、男の使用人たちだけがその状況についていけない。

「何を――!?」

 小柄なD.S.のその胸に引き寄せられ、なすがまま胸やアソコやその他色々と好きなように弄繰り回されるプレシア。

「ちょ――やめ――アアッ!!」
「すずか!! アンタは見ちゃダメ!!」
「え、ええ!! アレ、何? アリサちゃん――そんなあんなとこに指がっ!!」

 目の前で繰り広げられるR指定真っ青な出来事にアリサとすずかは顔を赤くし、メイドたちは何やら頬を染めてモジモジとしていた。
 執事の鮫島だけは冷静にアリサにその光景を見せまいと、二人の少女の壁になり必死にその猥褻シーンを隠そうと奮闘する。
 だが、少女たちは目を見開いてしっかりと見ていた。プレシアが絶頂の声を上げ、倒れるその瞬間まで――

「ハアハア……もう、ダメ……」

 予想だにしなかったD.S.の猥褻攻撃に、プレシアは身体をぐったりとして倒れこむ。
 そんなプレシアからドサクサに紛れてジュエルシードを六個奪い取ったD.S.は、いつになく邪悪な笑みを浮かべていた。
 そのD.S.の笑い顔を見て、アリサは思った。

 まずい……絶対にまた“よからぬこと”を企んでいると――

「プレシア、テメエは邪悪で狡賢く、尚且つ歳はちょっと食ってるが“美女”でもある。
 オレさま好みの良いもん(身体)持ってる殺すには少々惜しい女だ。
 だから、生きるチャンスをやろう――」

 そう言って蝙蝠の羽を懐から取り出したD.S.は、それを触媒に詠唱を唱え始めた。
 すると、その詠唱に呼応するように、D.S.の右手の人差し指のツメが青色へと変色していく。

「この魔法はその昔、このオレに敗れたヤツに“絶対の服従”を強制するために用いてた、とびっきり邪悪な太古の呪いだ」
「――そんなっ!?」
「この青いツメは呪文と共にオマエの身体に食い込み一部となる。
 オマエがこのオレへの服従を拒んだとき、またはツメを切り離そうとしたとき――
 こいつは青から青紫を経て赤へと変化する」

 D.S.は恐怖に歪むプレシアの表情を見て楽しみながら、呪いの効果をプレシアに説明していく。
 大魔導師とまで言われ、目的のために人であることすら捨て、狂気に走ったプレシアが、目の前の“D.S.”と言う男の残忍さに魅せられ身を震わせ恐怖していた。

「このツメが真紅に染まったとき、オマエの身体は粉々に砕かれ、別の生き物に再構成される――
 そう、知性も品性もない――ただのヒキガエルになっ!!」

 大口を開けて笑うD.S.を見て、アリサは先程まで捕らえられていたことも忘れ、プレシアに同情した。
 おそらく、これからプレシアは一生D.S.に頭が上がらず、あの身勝手な男に振り回され続けるのだろうと――
 アリサはプレシアの未来を想像し、同情せざる得なかったのだ。
 これではどちらが悪党か分からないとアリサは思う。

「――アキューズド!!」

 アキューズド――その呪いがプレシアの身体と心を、D.S.と言う“悪の魔法使い”に縛り付けた瞬間だった。
 フェイトと母子揃って、D.S.から逃れることが出来ない運命になるとは、なんと不憫なことか。
 プレシアは先程までの自信を打ち砕かれ、そして呪いとも言える狂気もD.S.の残忍さを前に恐怖で塗りつぶされてしまっていた。
 その上、アルハザードに達すると言う夢も打ち砕かれ、アリシアの復活が叶わぬと悟った彼女は完全に目的を見失った。
 しかし、まだ目の前の水槽に漂うアリシアを見ると、その未練を残してプレシアは死ぬに死ねない。

「どうして……何故、わたしを殺さなかったの?」
「あん? 殺す殺さないはオレの自由だ。テメエはすでにオレのもんだろ?
 オレさまの許可なく勝手に死ぬことは許さねえ、オレのためだけに生きろ」
「でも……わたしにはアリシアが……」

 アルハザードに達することが出来ない以上、アリシアが生き返ることはない。
 そう考えていたプレシアの心は、絶望に支配されていた。
 それにこんな呪いなどなくても、自分に残された命はそれほど長くないと彼女は思っている。
 アリシアを生き返らせると言う願いが叶わないくらいなら、こんな呪いではなく何故一思いに殺してくれないのかと思う。

「死ぬことで満足するのはテメエだけだ」

 D.S.はそう言って、プレシアの願いを切り捨てる。
 そのまま抜け殻のようになったプレシアを無視し、アリシアの入った水槽まで歩いていくとD.S.はその手で「コンコン」と水槽を叩き始めた。
 何かを探るように水槽の周囲を回りアリシアの様子を観察するD.S.を、プレシアは訝しむような表情で見る。

「……テメエの一生と、こいつで対価にしてやる。
 この“心優しい”D.S.さまに感謝しやがれ」
「……ココロヤサシイ?」
「えっと、アリサちゃん……そんな可哀想な人を見るような目でルーシェくんを見なくても……」

 手にした六個のジュエルシードをプレシアに見せ、それを対価と言うD.S.にプレシアは意味が分からないと言った顔をする。

 それに反応したのはアリサとすずかだ。
 傀儡兵を片付け、追いついてきたカイとシーンに救出されたアリサは、そんなD.S.に白い目を向けていた。
 あれだけのことをプレシアにしておいて、心優しいなど言われても説得力がないと言った顔をアリサはする。

「そっちも終わったようだな」
「D.S.――寂しかったよ! 怖かったよ!!」
「こら、やめろ処女!! てか――それ、ぜってー嘘だろ!!」

 笑顔で怖かったと言いながら抱きつくシーンに抗議するD.S.を見て、カイは「やれやれ」と呆れるしかなかった。
 そして周囲から置いてけぼりを食らっていたプレシアもまた呆気に取られてしまう。
 先程まで敵対していた相手の目の前で、何故こんなに明るく振舞えるのか分からないと言った顔をする。

「ちょっと! そう言えば、ルーシェ!! わたしが檻の中で手が出せないと思って――
 弱ったプレシアにあんなことやこんなこと――」

 さっきのD.S.の猥褻行為を思い出し、顔を真っ赤にするアリサ。

「教育――っ!!」
「ぬわあああぁぁっ!! 許して、しませんからっ!!」

 アリサにゲシゲシと蹴られ、殴られ、泣いて謝るD.S.を見て、プレシアは驚きを隠せない。
 プレシアは自分の裏をかき圧倒した魔導師を足蹴にするアリサを見て、何か凄い生き物でも見つけたかのような目をしていた。
 正直、プレシアは理解が追いついていなかった。
 何から何まで自分の常識外の存在であるD.S.たちを目の前にして――

「D.S.――これが」
「ああ……アリシアだ」

 水槽に浮かぶアリシアに目をやるカイに、いつもより少し真剣な表情でD.S.は淡々と答える。
 アリシア・テスタロッサ――プレシアの最愛の娘であり、フェイトの姉妹と言える少女。

 また一人、少女の運命は“悪の魔法使い”に委ねられた。






 ……TO BE CONTINUED





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■作者からのメッセージ
 193です。
 たくさんの感想ありがとうございます^^
 それだけ見て下さってる方がたくさんいると言うことで感謝します。
 次回でいよいよ無印編も最終回です。
 管理局との決着や、その後のプレシアとアリシアの運命は?
 そして、A's編に向けての伏線も――用意されていますw
 では、次回の更新でお会いしましょう。

 ※ちょっと感想多いので返事は出来るだけ短くまとめさせて頂きます。



 >あびさん
 管理局とのちゃんとした取り決めは、A's編までもつれ込むでしょうねw
 リンディさんもアムを出し抜き頑張ってます。フェイトには幸せになって欲しいですしね。
 ご心配お掛けします。正直、寝不足たたっててやばいです(オイ
 まあ、無印終わったら、少し間を空けてゆっくりとしたいと思います。



 >rinさん
 確かに某国ぽいですよねw 日本のアニメってそう言う傾向が多々見られる気もしますが;
 リンディさんのお肌が心配です。
 グレアム提督をお待ちのあなた――次回をお楽し(エ



 >ルファイト
 ユーノくん、頭冷やせフラグでクロノと一緒に退場願いました(オイ
 でも、わたしは幼女だけでなく人妻も好きなんで、プレシアを飼いならしたい鬼畜だったり――(エ
 管理局との交渉は次回、一時的な決着を見ます。どうなるかは次回をお楽しみに――
 管理局所属云々は、このままだとさせるの難しい気もしますけどねw



 >ぬこさん
 交渉の一部と言うより、リンディさんすら意図してないことです。
 ちなみに多少アンチぽいですが、わたしにその気がないのでヘイトにはならんと思いますw
 STSまでの構想はあるので、管理局に潰れられるのも困りますしね……



 >うるるさん
 ユーノくん、頭冷やせフラグきましたがw 出番は……ありますよ?(多分
 リンディさんのお肌はやはり心配ですね; プレシアさんは化粧落とせば頑張れそうです(ちょ
 今回でシーンが少しミッド系魔法使ってましたが、徐々にどちらも使えるようになっていくと思います。
 時間停止は分かってるんですが、やってしまうとそれこそ大変なことになりそうなので、あえて触れないようにしてますw
 まあ、機会があれば……そのうち



 >ボンドさん
 こちらこそ、いつも長文感想ありがとうございます。
 管理局は大きくなりすぎて組織内でも上手く噛みあってないと言うことですね。少し横暴にしたのは、そう言う意図もあります。
 リンディさんみたいに理性的な人も管理局には多くいるでしょうし。今後の交渉次第でしょう。
 なのはに仕置き受けたので、この辺りで許してやって下さいw
 プレシアも色々と考えたのでしょうが、相手が悪かったですね。
 しかし、一部とは言え、ユーノ戦のSLBを当てるとはさすがですw
 フェイト、プレシア、そして……テスタロッサ家は全部餌食になってもらいます(オイ
 アリシアの魂説ですが、ちょこっと考えがあります。アリシアのことは当初から決めていたことがあるので――
 しかし、ジュエルシードみたいな次元干渉型だと、確かに複数あればチャンネル開くかも知れませんね。



 >吹風さん
 多くの管理世界を管理しようと思えば、ある程度の強硬策も当然でしょうが、文書送りつけるだけってのは問題でしょうなw
 管理局は肥大化した絶対的な組織と言うものを象徴しているような気がしますので、当然噛み合わない部分、腐敗してくる場所があるでしょうし(脳味噌とか)
 リンディさんのお肌の心配をしてあげて下さい。出来れば、肌によい健康法を――
 D.S.の頭の中には最初から「全世界の二分の一はオレのもの」って理論が展開されてますからねw
 そりゃ、無駄ですw リンディさんも当然、前述のとおり、D.S.のもの?でしょうね



 >T.Cさん
 早い分、わたしのカラータイマーはすでに点滅しております。@1話乗り切らないと(現在半分ほど執筆中
 ユーノは無自覚だったのでしょうが裏切り行為ですからね。なのはにお仕置きされたとは言え、アムが黙ってるかどうか……
 そもそも、子供にそうした仕事させることが問題と思うんですけどねw 大人でも問題多い人一杯いるのに(私を含め)
 管理局も多くの世界を管理し、そして人材不足に苦しんでいる以上、本来は全面戦争などしたくはないとは思いますけどね。
 単純に要望書送りつけた管轄が問題です。リンディさん涙目でしょう。
 予想的中おもでとうございますw アキューズドくらいしないと、彼女の心は折れないでしょうしね。
 目的が目的ですから。
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