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長き刻を生きる 第七話『激戦・現実と理想』
作者:大空   2008/12/04(木) 01:45公開   ID:W9I47WKImNc

 進軍してくる黄巾族二万五千の先鋒の大部隊。
 天の龍を見返す為に、蟻(あり)の大群へと挑む白い蝶。

「あの男……偉大な太公望の名を語っているだけはあったな」

 古来中国に徹底した『能力主義』を縫い付けたとされる太公望の存在は、各地の女傑や身分の低い者にとって信仰の対象でもある。
 無論、そこまで信仰されている訳では無い、あくまで「まぁ都合の良い世にしてくれた」程度の認識。
 そんな英傑の名を語っている以上、実力はあると思っていた蝶は、自身の予想を遥かに超える存在を見た。

「だが……この私が将の名に相応しい事を見せ付けてやろう!!」

 万の足並みが地を微かに揺らし、風の音色を掻き消していく。
 されど蝶に恐怖はない……むしろ高揚感と決意が固まっていく。

 黒い蟻の群れは、黄色の色を帯びていく。

 止められぬ進撃は、美しき『獲物』を見つけて止まる。

 そして僅かに心を侵食する蝶が放つ覇気の風。


「この趙子龍! 今より『歴史』に向かい、この名を高らかに名乗り上げて見せよう!!」


 白い蝶……名は趙雲子龍。

 『予約済みの活躍』を舞う蝶。

 全てが……『道標』の手の平の上の喜劇と知らず。


「ふっ……たった一人を相手に怯みを見せるか、やはり所詮は匪賊、群れていてもクズはクズだな」


 銀色の矛先を宿す戦友が、弱い蟻を薙ぎ払う。
 狙うは急所と一撃で確実に絶命させれる場所のみ。


『達人の振るう凡百(ぼんひゃく)の刀、百を斬りて刃こぼれを知らず
  剣筋を知らぬ素人の振るう無二の名刀、一を斬りて刃こぼれを嘆く』


 少し難しく書いているが、要約すると


『達人が振るうなら、ナマクラ刀でも百人を斬り捨てれる
  だが素人の振るう名刀は一人を斬り捨てて刃こぼれに泣く』


 日本における刀は『積み上げた死体を一気に何体斬れるか?』で、その刀としての位を決定する。
 かの最上業物に分類される刀は『三体』斬っただけで、最高の称号を与えられるのだ。


「美を解さぬ下衆共が! 我が槍にひれ伏し! 蒼穹を汚した罪を詫びるがよい!」


 趙雲が振るう戦友は、その担い手の実力と合わさり、次々と敵を死へと導いていく。
 挑発に乗り、冷静さを欠いた状態では、殺されに行くようなものであり、目の前の武人は優しくない。
 将としての能力は未熟だとしても、一個人……それこそ武人としての能力は、高らかに戦えるだけの力量を持つ。

 ―――的確に急所を貫き切り裂く正確さ。

 ―――斬り捨てる者を見分ける判断力。

 ―――武技を理解してそれに合わせて戦う知識。

 ―――圧倒的な数を前に震え上がらぬ根性。



「常山が昇り竜、趙子龍! 悪逆無道の匪賊より困窮する庶人を守るために貴様達を討つ! 悪行重ねる下衆どもよ! 我が槍を正義の鉄槌と心得よ!」




 赤い鮮血が、戦意を加速させていく。
 紅い戦意が、より速く・強く身体を動かしいく。
 垢い戦友が、その白色の身体を染め上げていく。

 高らかな名乗り。

 それを掻き消す事すら出来ない蟻がまた一匹、その槍の餌食となる。
 もはや戦場に慣れた彼女を”今現在”討てる者は存在しない。
 向う者は、己が最後を冥土で誇れ『美しい蝶に討たれた』と。

 ―――煌きを失う戦友


「―――まだ早い……ぞ」


 ―――軽やかさを失う蝶

 積み上げる死体が、功績の証たる存在が、彼女を脅かし始める。
 振るう戦友が重くなり、軽やかな舞いは最小限の動きだけに留まっていた。
 足場に広がる血が些細な踏み込みに無作為に割り込み、躊躇いを生む。
 隠せなくなる疲労の色、それを見て息を吹き返し始める賊徒の剣。

(成程―――確かにこれは……私の失策だな)

 どれ程、努力を重ねようと限界の前には無力・非力な事には変わらない。
 高揚感の喪失と浴び過ぎてしまった返り血と蔓延する歪んだ戦意の空気。
 知らず知らずに『群』の力が『個』を蝕み喰らっていたのだ。


(将が護るのではなく……護られていたのは……)


 自身の愚かしさに微笑む。
 それは眼前に迫りつつある明確な死への恐怖ではなく、天龍の真意に気付いた自身への自責の笑み。
 『個』の『プライドに固執』していた事に気付けなかった己の愚かさ、そしてもっと早く気付くべきだった事。



「駆けろ戦人よ! 我等は加護篤き天兵! 太公望の名に恥じぬ戦を今ここに!」



 趙雲の薄れ掛けた意識が覚醒し、眼前に迫っていた錆びた剣の矛先を逸らす。
 そしてその剣の持ち主の喉を裂く、戦友もまた煌きを取り戻す。

「全軍突撃――――――!!」

 開けた視界に映る黒い戦乙女の勇姿。
 聞き惚れる…猛々しくも美しい声が、身体の芯にまで響く。
 それに続くかのように響く戦人と呼ばれた兵の雄叫び。

 突然の援軍は慌てふためく賊軍を叩くには充分すぎた。

「かかっ!?」

 「かかれ!」と号令を出す間もなく、その賊徒は頸を刎ね飛ばされ絶命する。
 趙雲へと襲い掛かる敵に立ちはだかり、堅牢な城壁と化して次々と死体が積み上げられていく。
 蟻が隙間ない城壁を破る術はない、無様に押し返されるか、その堅牢さの前に諦るかだ。

「将としては共感出来ない突撃だな」

「―――まったくだ」

 まるで平時のような会話。
 割り込もうとした賊徒の身体を5:5の割合で横に切り裂くは、太公望が左腕たる女傑の将、愛紗。
 息を吹き返し、再び舞い始めるは、公孫賛軍が客将にして女傑、趙雲。

「その青龍刀……お主、もしや武勇の誉れ高き関雲長殿か?」

「いかにも、主の求めに応じ、貴方をお助けするために来たが、共闘願えるか?」

 返答は既にお互いの敵を斬り捨てた時点で決まっている。

「うむ…ならば暫く戦った後、我等と共に退いてもらいたい」

 互いに背中合わせになって戦闘体勢に入る二人。
 その周囲を固める兵士は折らず、全てが左慈と共に賊徒を『釣り』に掛かっている。

「敵先陣を釣る……面白い」

「周囲の兵の動きを見ただけで理解するか」

「将を名乗るならば尚更の事」

「今の貴公ならば、我等が主も認めるだろう」

 左慈と愛紗が視線を合わせると、左慈指揮の下で兵が集結し始める。
 そして敵と真っ向からブツカルのが、愛紗と趙雲の二人となる。

「ほう……あの仙人殿は中々人を起てるな?」

「我が軍一の体術と徒手の使い手だ、甘く見ると痛い目ではすまんぞ?」

 実質先頭の二人に次々と襲い掛かる賊徒の暴力。

「面白い! 手合わせする為にも今は!」

 息吹を灯した戦友の矛先が賊徒の頭蓋骨を砕き貫く。
 それはまるで瞬雷の槍、眼を瞬く間に命を奪う天の声の化身。
 蟻が避けれる確証は『運』の一言であろう。

「今一度! この武を示すとしよう!」

 自身にも勝るとも劣らぬ武人との背中合わせの戦いに、既に高揚していた。
 巨大な薙刀を軽々と振るい薙ぎ払うその姿は、まさに暴風雨の化身。
 出会った時点で、その死は確実にして絶望的な生還率の低さ。

 ―――愚者の賊徒が取る『攻撃』の選択は『死』そのもの。

 ―――賢者の賊徒が取る『逃亡』の選択は『生』そのもの。

 されど悲しむべきは、賢者の少なさであった。

 積み上げられる死体。
 功績の証は、武人の誇りと変わる。
 強者の証が、二人の強さを物語る。


====================


ピュヒィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!



 「合図だ!」

 鏑矢の音に賊徒の動きが止まる。
 逃げ延びてきた仲間から聞いた『包囲殲滅』の鏑矢。
 蛮族による無慈悲な『包囲殲滅』の音色が動きを止める。

 それすら裏で暗躍する軍師の策とも知らずに妄信してしまった。

 止まった隙を逃さず後退する二人に、軍馬が差し出され、二人はそれに乗って部隊と共に後退していく。

「逃げる!?」
「追え! 追え―――――!!」

 撤退する者を追う者、その先に君臨する本隊の存在を忘れて。
 自分達の本隊の存在を過信したかのような突撃と追撃命令。
 
 策は開花した。


====================


「来ます!!」


 かの太公望が直属の鷹の目が叫ぶ。
 その声に一斉に武具を構える兵。
 弓兵と弩(ど)を構え、放つ時を待つ。


「―――今です!」

「放てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 朱里の合図と共に弓兵と弩兵の一斉射撃が、空を遮り矢の雨を降らせる。
 更に太公望の風によって放たれた矢は味方に当たる事無く降り注ぎ、追撃してきた賊徒に降り注ぐ。
 速く、敵にしか当たらない矢の姿が、待機し戦いの時を待っていた兵の士気を爆発的に高める。


「幽州の民よ! 今こそ賊徒の恐怖を完膚なきまでに叩き潰し! この地に平穏と安息をもたらせ!」


 「すぅ」と大きく息を吸い込む。


「皆さん! 突撃です!!!」


 勇気を振り絞って全兵士に号令をかける。

 ―――走り出し、遊撃を開始する騎馬

 ―――全戦力の半包囲による『U』字状の戦い

 追撃に躍起になりすぎた先陣は、矢の雨によって大半が壊滅。
 唯でさえ『先鋒で少ない戦力』の少なさに拍車を掛けられたのだ。
 その混乱に牙を立てるのが……


「突撃! 皆、頑張るのだ!」

「お前等! あんな子供に負けるなよ!」

「この青龍に続け!」


 左翼で次々と敵を薙ぎ払う小さな存在は、半包囲を脱しようとする者を端から叩きのめす。
 小さな子供が居る等と安易な発想から退路を見出した賊徒の未来は、脱出出来ずに死ぬのみ。
 その脇を固める将兵の錬度も高く、単騎の強さと弱さを上手く補佐していたのも幸いした。

 右翼で確実に敵を潰すのが、異様な服装と言う事に気付き進軍を懸念する者は多かった。
 だからこそ、そこに付け入る容赦なさが光り、右翼の賊徒が左翼を目指して移動するだけで同士討ちが起きる。
 統率者なき現状が招く哀れな戦線の崩壊も確実に合流しつつある『本隊』が合流しきるまでの勝負でしかない。

 中央で正面突破を試みる、もっとも傷の大きな賊徒は、その傷故に士気が高かった。
 だがそれすら、先程まで自分達の仲間を叩き潰してくれた存在によって、あたかもなかった事にされてしまう。
 正面に立ち塞がる青龍と返り血に塗れた蝶の姿が、戦う者の戦意を挫き後退させるには充分な素材。


「鏑矢! 『撹乱せよ』をお願いします!」


 次第に本隊と合流によって息を吹き返し始める賊軍相手に、朱里は的確に指示の鏑矢を放たせていた。
 戦場の中心を駆けて遊撃を行っている騎馬隊への命令と、各方面の部隊への鼓舞も含めていた。
 放たれる鏑矢と、還ってくる『健在』の鏑矢に安堵しつつも、護られながら軍師としての役目を果たす。


====================


(まだかの……公孫賛)


 もっとも戦場から離れている太公望は、呪詛を紡いでいる。
 絶えず兵達が淀んだ戦意に当てられないように、血や肉の臭いを逸らしていた。
 無論、賊軍の後方から接近しつつある公孫賛軍の行軍の音を気付かせない為に、風で音を操っているのだ。
 それも長くは続かない、太公望の体力よりも早く兵の統制が崩れてしまうのだから。

「このままじゃ……」

 朱里の眼にも判る。
 各隊の連戦の疲労のツケが今ここに来てやって来ている事に。
 それによる各隊の動きの鈍りと、弱体化の兆し。
 このままではこちらの戦線が突破されてしまう。


「後方に軍馬! ―――公孫賛軍です!!」


「『全軍反転』と『全軍突撃』を放て! ワシ等も攻勢に出るぞ!!」


「我等が主、太公望様が出るぞ! 全員死ぬ気で護れぇぇぇぇぇ!!」

 放たれる反撃の音、太公望軍が一斉に攻勢に移った事で、賊徒は一斉に残されていた退路に逃げていく。
 視界に映る白馬の騎馬隊とその御旗、それに連なる正規の洗礼された精兵部隊 の姿が絶望を生む。
 そして太公望軍は援軍の到着に高らかに吼え、崩壊した黄巾族を叩きのめす……完膚なきまでに叩きのめす。
 慈悲も赦しもなく、生き残る術は『逃亡』の一つに強制され、戦いは殲滅と逃亡によって終幕した。


====================


 戦いは終幕した。
 転がる死体は黄巾族のモノが『大多数』を占めていたが、それでも太公望軍の損害は無傷ではない。
 勝利に沸きあがる多くの兵士達を背に、太公望は虚ろな瞳で死して逝った仲間達を見ていた。
 その背に声を最初に掛けたのは、趙雲であった。

「……勝利を喜ばないのか?」

「この損害で何を喜ぶと?」

 本来ならば愛紗達が声を掛けるべきなのだが、本人達が兵士にまで指示して今、こうさせている。
 これがきっと必要な事だと、その場にいた多くの将兵が気付いていたからなのかも知れない。

「お主は庶民を助ける為に将になったと吼えたのぅ……
  その庶民が兵士である事を忘れて、己の満足の為だけに戦うのか?
  己の武に溺れ、窮地に陥り、ワシ等の兵士が助ける為に何人死んだ?
  護るべき者を忘れ、護られている事すら忘れた将など、将とは呼ばん」

 理想論を述べる太公望あの時のように、冷たい。
 殺気はなくとも、とても冷たい人間だった。

「―――確かにそうだな、今の私は公孫賛を馬鹿にする事は許されないだろう
  だが戦である以上! 無血の勝利などありえない! 兵士であるなら死を覚悟すべきだ!」

 趙雲の反抗と反論……決して間違ったことは言っていない。
 無血の勝利と言う夢に縋って、一度堕ちた太公望には良く分かる事だ。

 だが、だからこそ認めてはいけない。

 今の立場として、認める訳にはいかない。

「戦う者全てが志願者ではない! 強制徴収や、今のように力が無くとも立たねばならぬ者もおる!
  その者達の死すら、戦だったの一言でお主は済ますつもりか! 主は良くてもワシは赦されん!
  ワシは任された者としての責務がある! その責務を果たせぬのなら、ワシは何故ここにおる!」

 それは少しでも死者を少なくする事。
 どれ程、体面は取り付くっても心の奥底で遺族は太公望や、殺した者の事を憎む。
 やがてそれがどんな大きな牙となって、仲間達に襲い掛かるかわからないのだ。
 遅かったでは済まされない現実が存在する。

「結果として十の死で、万の民が生かされるなら! それは正しいのではないか!
  かの大軍師、太公望とは聞いて呆れる! ただの臆病な宗教扇動家ではないか!」

 結果論に縋れるならどれだけ楽だろうか。
 師を亡くし、親友を亡くし、仲間を死なせた勝利。
 周囲が勝利と猛々しく叫んだとしても、彼にとっては勝利ではない。
 それでは敗北と何一つ変わらない現実だから。

 そして宗教扇動家と言われれば、反論は出来ない。

 太公望が太公望たる証や証拠は存在しないのだから。


「ならばワシは何をすれば太公望として認められる!? 何を持てば太公望と見られる!?
  この名を背負った以上! この名として生きる道を選んだ以上! ワシはワシを貫かねばならぬ!」


 理想は『限り無く無血に近い勝利』

 現実は『流血の勝利』


「ならば私はどうすれば貴公に将として認められるのだ! 私は何をすれば将として見られるのだ!
  私が私の武を高めるのが罪と言うならば! この武一つで生きてきた私はどう生きれば良い!」


 理想は『自らが認める者の最高の将』

 現実は『見つからぬ苛立ちの日々』


 言い争いが膠着に陥り、兵士が仲裁に入ろうとした矢先だった。


「ふっ」
「ふふ」


「「ふはははははははははははははははははははッ!」」


 何故か二人から微かな笑いが零れる。
 それに頸を傾げた将兵を無視して、二人は大笑いし始める。

「まったく……ご主人様も人が悪い」
「まったくだ、何もあそこまでしなくてもなぁ」

 二人して腕を組んで、勝手に理解している愛紗と左慈。
 鈴々は一人だけ理解できておらず。

「二人して何言ってるのだ?」

「用は、二人して適当な演技して互いの本心聞き合ってただけって事だよ」

 今だ大笑いしている二人を尻目に、左慈が説明する。
 鈴々もその説明が意味が判ったらしく、ほっと胸を撫で下ろした。

 ただ一人

(……ご主人様がご主人様たる証拠)

 一人の軍師の心に疑心を残し

(でも趙雲さん! ご主人様は渡しません!)

 そして強烈なライバル心を朱里は持つ事となる。

「ワシの下に来るか?」

「魅力的なのだが……貴公に本当の将と認められるように、少し一人で努力をしようと思う」

「ならばワシは、ワシが太公望であり、上に立つ者として相応しい者になるとしよう」

 まるで馴染みが戯れに話すかのような会話。
 周囲、特に合流している公孫賛軍では「殿の怨敵となるか」などと、既に重臣達で敵と認識されていた。
 また愛紗達からも、恋敵として認識されてしまい、その会話に割り込まれる。

「ご主人様、伯珪殿がお呼びです」

「そうか、わざわざスマヌ」

 打ち切られる会話。
 愛紗の眼は(ご主人様命)をマザマザと語っていた。
 その視線に臆する事無く趙雲は大胆な行動をとった。


「――――――太公望殿」


 振り返った太公望の唇を趙雲の唇が塞いでいた。
 愛紗や朱里、公孫賛軍重臣と遅いので自ら呼びに来た公孫賛自身が固まてしまう。
 そして耳元で

「我が真名は星(せい)……また逢いましょう」

 囁き離れた後


「次に逢う時は! 必ずや貴方に認められる将になっておきましょう『我が主』よ!!」


 軍馬の一つをクスネテ、趙雲こと星は颯爽(さっそう)と駆けて行った。
 太公望自身は、溜め息を一つ零しながらも決して悪い気分ではなかった。


 自身の後ろに溢れている脅威的な殺気さえなければ……


「ご主人様」
「……お兄ちゃん」
「……ご主人様」
「オノレ趙子龍……殿の敵となるか」
「子龍の奴……なんて羨ましい事を」


 恐ろしい殺気で面々を直視できない太公望は、左慈に救いを求めるが。

(無理だ、諦めろ)

 逸らされた瞳がそう物語っていた。
 もし干吉がいたのなら、もっと面白い事になっていただろう。
 太公望の精神的疲労を引き換えだが……


「まて! ワシは不可抗力……」


 太公望の断末魔が、勝鬨代わりとなる。

 『予約された活躍』の一つが終わった。

 そして次なる『約束された事件』が起きるまで。

 僅かな休息の時が訪れるのだった。


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■作者からのメッセージ
兎月様
初めまして、感想ありがとうございます
違和感無く読めてなによりです
太公望のあのキャラは時々再現しづらい部分があるので大変です
これからも応援よろしくお願いします

ソウシ様
再び感想を下さってありがとうございます
実は作者は正義の味方より悪党の方にトキメキを覚えた人間です
特にフェイトの士郎より、言峰とかギルの兄貴の方が好きです
この世界と呼ばれた太公望と女禍は、実はちょっとした誤差があります
その誤差故に他の人達は現れません……
と言うか、あまりあの人達出しちゃうと戦闘時とか大変になりますから
ただソックリさん系の登場はありますから、それで辛抱を……
ご期待してくださってありがとうございます
これからもよろしくお願いします

TINゴット様
再び感想を下さってありがとうございます
やっぱり太公望はサボってこそですよね
シリアスな彼は似合いません! 作者は好きですけど!
でもそのサボり行動などがしっかりとした策なのにはビックリです
もしかしたらあの物語の全てが彼の手の平なのかもしれませんね
ご期待してくださってありがとうございます
これからもよろしくお願いします
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