ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

長き刻を生きる 第二十六話『激戦・鳳は戦場を飛翔して……』
作者:大空   2009/02/18(水) 23:36公開   ID:TrqzIlIPjzk

 強国【魏】と連合軍【幽呉同盟】の死力を尽くした戦は、まさに互角の様相である。
 的確な矢が雨霰と降り注ぎ、雄叫びが剣戟と共に振るわれ、屍を作り上げていく。

「関羽! いざ勝負!」

「望むところ!」

 右翼で激突しているのは愛紗と夏侯惇、その刃は既に交わっていた。
 大剣の一撃を真っ向から受け止め、双方が全力を賭けて押し合う。

 ―――双方同時に引いて即座に構えて、再度地を蹴る。

 雄叫びと共に交わっては離れあう二つの刃。
 双方の兵士の死力とも呼べる雄叫びが支配する戦場でも、その音は響き渡るほど。

 幽・魏の両軍が抱える最高の将の鬩ぎ合いは、もはや何人も入り込めぬ一騎打ちの領域。

 乱戦の最中でも放たれる矢が夏侯惇の頬を掠るが、気に止めずにその大剣を愛紗目掛けて振るう。

 地を砕き、空を薙ぎ、覇を穿つ巨大な剣をまるで手足の如く軽々しく振る姿はまさに戦鬼。


「この戦を持って華琳様を天下へと!」


 根元に存在する行動理念が、全身を鋭く俊敏に動かす。
 振り下ろしによって剣が地面にめり込み、僅かな隙を作り出してしまう。


「それはこちらとて同じだ!」


 愛紗が青龍刀の刃で夏侯惇の頸を薙ぎはらわんと振るう。
 周囲の兵士が双方の勝負の結末を予想した。

 ―――されど武人としての直感が…本能が愛紗の身体を咄嗟に後退させた。 

 まさに後退していなった位置に素早く赤いの閃光が駆け抜けた。
 夏侯惇の大剣を振るってきた経験が辿り着いた完全な虚と無欠の反撃。

「外した!?」

 真贋入り乱れる虚という隙が、愛紗の攻勢に躊躇いと足踏みを与えている。
 回避して体勢を即座に立て直した視界に直撃する軌道を描く矢が一矢。

 キンッ! と乾いた音が一つした。

「くっ! 気に入っていたが命には代えられない」

 その一矢が愛紗の髪留めを砕いてしまった。
 本来の愛紗ならば避けれる所だが、咄嗟の回避と目の前の強敵への集中で避けきれなかった。
 一歩間違えば死に直結していた一撃を髪留めが身代わりとなったのだ。
 普段束ねてある黒い髪がバラケてしまうが、その程度で命があるならば安い対価。


「敵将夏侯惇! この陳到がその目玉貰う!」


 両者の間に入り込む太公望軍の鷹である陳到。
 白き愛馬と共に駆け抜けると同時に夏侯惇に対して鋭い一閃を放つ。 

「小癪な鳳(おおとり)が、この目玉はやれんぞ!」

 刀身を盾にして陳到の騎乗時専用とも思える刀身の長い剣の一撃を弾き飛ばす。
 火花が散り咲き、夏侯惇の舌打ちなど無視して陳到は乱戦の真っ只中へ再度消える。
 白い愛馬と彼が槍の海を飛び抜け、飛来する矢を避け、襲い掛かってくる剣を弾き飛ばす。

「敵将陳到覚悟ォ!」

 黒い馬に跨り真正面からその槍を構えて突撃してくる女兵士の一人。
 気概は充分だが……鳳相手には実力があまりにも不足していた。


「失せろ雑魚が!」


 槍の突きが放たれるよりも早く陳到の愛馬が主の思惑を汲み取って一気に加速。
 突然の加速に不意を突かれて反応が遅れたのが運の尽き。
 双方がすれ違う時に馬の頭諸共、身体を横に一刀両断されてしまう。

 上半身は舞い飛び、下半身は馬と共に地面に崩れ落ちる。

 倒した相手の事など目もくれず、次の敵を見つけてはすれ違い様に斬り捨てる。

 中には斬れずに済んでしまう敵も居たが、大抵の敵は落馬して動きの止まった所を討たれる。

(くそ…今の斬馬は無理があったか!)

 元々刀身の長い剣で重心が従来の剣とは少し違う為、慣れた今も手に感じる重さは”重い”ままだった。
 更に長い刀身が災いして無闇やたらに剣を振れない、地面を削ぎ・味方に当たり・自らの愛馬に当たりかねない。
 騎乗戦でも充分に使用出来る槍のような長さの剣は…激戦によって確実に陳到の体力を奪いつつある。

 体力が低下すれば反応も鈍ったりする。

 更に眼を酷使する立場にある陳到は少しずつ大きくなる眼の痛みに耐えていた。

 ―――気付いた時には横から敵騎兵の槍が迫っていた。

 愛馬も反応しきれていない…この乱戦で馬も擦り切れている。


「苦しいならば下がれ」


 その騎兵の喉を装飾が少々豪華な槍が突き、即座に引き抜かれる。
 血が一気に溢れ出し、騎手を失った馬は冷静さに欠いたのかその場に崩れ落ちた。

「星さんか、助かった」
「無理せずに下がれ…倒れられでもしたらマズイですしな!」

 既に白い衣服を返り血で染め上げている星に襲い掛かる兵士はいる。
 陳到の馬と並列し、星が左側・陳到が右側を担当して目に付く兵士を薙ぎ払い、反撃を弾き飛ばす。
 避け・弾き戦場を駆ける様はまさに龍、可憐な蝶の姿をした龍そのもの。

「借り一つ、秘蔵のメンマでどうだ?」

 星の眼が戦場にも関わらず子供のように輝く。
 実は星は大のメンマ好きであり…もはやメンマに溺死しても満足してしまいそうなほど。
 それも酒の肴の一つとして良く買われているメンマの個人の秘蔵品には勝てない。

「ふっ…ならば貸し一つとして聞いておこう」


 ―――万が一の場合は右翼全軍の指揮権を愛紗さんに譲渡される事を伝えておいて欲しい


 星が激昂して叱るよりも早く、陳到のふざけてなどいない真剣な眼が星を射抜く。
 ましてや太公望軍の要の一人として君臨している人間の万が一など軍人として考えたくない。

「……戦死の報は聞かぬぞ鳳」

「死ぬ気などない、太公望様の描く太平の大空を羽ばたくまで」

 そうして陳到は星と別れ、乱戦の真っ只中に再度消えていく。
 鷹を超え、諸国から【鳳】と称えられる太公望軍屈指の名将陳到。


 既に彼は……翼の最後を予期していたのかも知れない。


 龍は鳳と別れ、仲間の下へと馳せ参じる。
 今生の別れとも知らずに、己が役目を果たす為に。

 ―――右翼は僅かながらに押されていた。



================================================



 逆方向の左翼では、壮絶な矢の撃ち合いが形成されていた。

「流石は夏侯淵…良い弓の使い手ね」

 太公望軍の弓将として君臨している紫苑の眼は、敵将夏侯淵の姿を見つけていた。
 だがそれは敵である夏侯淵も同じ事である。

「黄忠殿…開幕は奪われたが、太公望の加護なしではこちらが上である事を教えよう」


 それは双方の激突……戦の開幕であった。



『残念だが……既にこちらの射程だ!』

 前進を開始した太公望軍が自分達の弓の射程に入った瞬間に、数万の矢が空を覆い尽くす。
 だが太公望軍の兵士達は誰一人回避行動を取る兆しもなく、魏軍を騒然とさせた。

 幾等騎馬中心の編成と言っても、数万の矢が当たらないとは限らない。

 されど魏軍は忘れていた。


 ―――太公望の持つ宝貝の力は【風を自在に操る力】


 不可視の防壁が飛来してきた矢の全てを拒絶してしまう。
 数万の矢全てを弾き飛ばす風壁に驚愕するのも束の間、反撃とばかりに太公望軍の矢が風を切り裂く。

 魏軍の先鋒を軽傷ないし重傷に追い込み、多くの戦死者を作り出した開幕の大失態。

 そこに太公望軍ご自慢の戦車隊を始めとした騎馬隊が一斉に先陣に喰らい突き、大暴れ。
 だが魏軍の統率は失われず、個々では今だ優勢を崩さない魏の精兵達と将官の力量。



 現在太公望は中央で本隊の陣頭指揮を執っており、左翼には不在。
 大きく延び広げられてしまった戦場全体に風を吹かせれる程の力量はないと。
 そう信じて夏侯淵は矢を放てば、予想通り第二射に風の暴挙はあらわれなかった。

「このチビ張飛! さっさとやられろよ!」

「チビはそっちなのだ! ペタペタペッタンコ!」

 頭上を多くの矢が飛び交う夏侯淵と黄忠両部隊の前線を担う怪力自慢同士の決闘。
 魏軍でも屈指の怪力を持ち、巨大な鉄球を軽々と扱っては周囲を薙ぎ払う許緒。
 チビチビ! ペタンコ(貧乳の意)! とドングリの背比べを鈴々言い合っている。

 だが許緒の武器の鉄球は純粋な質量武器としてはある種の最強の位置に君臨している。

 鈴々の振るう蛇棒も重量はかなりのモノであり、それを振るう腕力も負けてはいない。
 されど質量差は現実的に言わせれば金属バット一本でトラックを受け止めるようなモノ。
 幾等鈴々と言えど真っ向勝負や直撃を受ければ間違いなく潰されてしまう。

「はっ! 雑魚にも少しは歯応えがあるみたいだな!」

 左の肋骨を一撃で全て蹴り砕くほどの烈蹴が、また一人と兵士を黙らせていく。
 干吉ご執着の顔は無傷ではなく、既に幾つモノ掠り傷を作ってしまっている。
 だがそれでも怯むどころか更に左慈の戦意は加速していき、動きが更に俊敏になっていく。

 一度に多くの兵士が倒せる訳では無い。

 一兵卒同士の力量が負けている今、一人でも多くの敵精鋭を叩き潰す必要がある。
 軍人としての冷静な判断力がそう告げ、自分の後ろにいる仲間の存在を再度実感させていく。

(随分と俺も甘ちゃんになったな)

 本来ならばこの場に居る人間全てを”消去”する立場の自分が、今は護る側に廻っている。
 そんな現状に何故か笑みが零れつつも、腕を振り払って敵の首をへし折る。
 飛来する矢を避け、四方八方から襲い掛かってくる槍や剣の群れを捌き、また一人と潰していく。

 戦場の大乱戦の真っ只中でも正確無比に狙撃しあう双方の弓将。

 距離はかけ離れている筈なのに、視線は交わり居場所を突き止めている。
 運悪く射線の立ったが最後…その矢は息の根を奪う使者と化して飛来するのだ。
 左慈の頬の傷も夏侯淵が僅かな隙を見出して射った矢の一つが掠ったモノであり、まさに矢の脅威。
 左翼の兵士達は双方が抱え込む最高の弓兵達の矢にも気を掛けながら目の前の敵も捌かねばならないのだ。

「良いか! 悪運の強そうな奴に続け…矢からそれてくれるぞ!」

 現在は左翼の部隊を援護している白蓮の白馬隊。
 敵陣を縦横無尽に駆け巡り、その体勢や陣形を突き崩すのがこの騎馬隊の仕事。


「黄忠隊の矢もある! 恐れるな! 目指すは敵弓将夏侯淵ただ一人!」


 乱戦によって馬避けの柵や槍による馬の突撃を防ぐ生きた壁も崩れている。
 更に魏の前線である許緒は鈴々とほぼ一騎打ち状態に、部隊は左慈が押さえ込んでいる。
 白蓮の白馬隊が夏侯淵の弓兵隊を全員が一丸の槍となって貫き、弓撃の手を止めさせた。

 ―――左翼崩壊の時は近かった。



================================================



 最前線であり戦場の中心に、総大将は君臨している。
 自慢の部隊の突撃で、中央は完全に太公望軍の精鋭が押し込んでいた。

「流石は魏やな! 雑魚でもちぃと手強いで!」

「だが私達の武には及ばん!」

 戦場の中心地点は三人の猛将と三人の軍師の統率を持って怒涛の攻撃を展開している。
 主力の将官である三人が左・右翼に展開している事と、対抗馬になりうる将の不在。
 騎馬と戦車が轢き殺し、槍が貫き、剣が引き裂く。
 霞と椛の二人が統率する前線部隊が敵を瞬く間に数人を死へと導く様に敵は震え上がる。
 また彼らの前に立ち続けその武を振るう姿に兵士達は心を震わす。

 ―――将軍を死なせるな!

 ―――将軍に続け!


「弱い」


 最前線で敵を虫けらの如く薙ぎ払い戦果の屍の山を築き上げていく赤い戟矛。
 返り血によって赤い髪は更に紅く染め上げられ、振るわれる武が次々と敵を討つ。 


 ―――今だ人中の呂布と称えられる最強の武人の真価発揮である。


 そこに存在し、ただその比類なき武を振るうだけで士気が高まっていく。
 味方を奮い立たせ、敵を恐怖の底へと導く万夫不当の武勇がただ振るわれる。
 引き裂かれた死体と飛び散った血の池の真ん中に恋はただ次に向ってくる敵を薙ぎ払うのみ。

「……流石は恋だな」

「でも全然敵さんは崩れん…ちとキツイかな」

 幾等匹夫の勇を持つ者達でも戦が長丁場になれば体力の限界は訪れるもの。
 一気に突き崩せれば楽なのだが、それを許すほど敵の兵士達も死んではいない。
 自分達が退く事が祖国に対してどんな影響をもたらすかを自覚しているからこそ。
 彼らは崩れる事無く懸命に猛将達の猛攻に耐え切っていた。


「敵大将太公望! 覚悟ォ!」


 最前線に立つという行為は常に危険と隣合せ。
 ましてや総大将たる太公望が最前線の乱戦の真っ只中に立っているのは千載一遇の好機。
 太公望を運良く討てたならばその時点で勝利が確定するが…敵は仙人。

 風が吹いたと思えば向ってきていた敵兵の首が落ちている。


「張遼隊は右翼の援護に往き、華雄隊は呂布を死なせるな!」


 最前線に臆する事無く立ち、次々と指揮を執りながら襲い掛かる敵を討つ払う。
 飛来する矢が肩を掠り、手馴れの兵士の槍の奇襲によって衣服の一部は切り落とされいる。
 無傷での君臨ではない、だが戦傷を負っている事が周囲の護衛兵の士気を大きく高める役割を担う。

 ―――警戒が甘いぞ!

 ―――敵を盟主様に近づけさせるな!


「臆するな! 敵も人間! 崩落せぬ訳が無い……ここが正念場よ!」


 兵士達を鼓舞する総大将の号令。
 その言葉が兵士達の心を更に焚きつけ、火事場の底力を引き出す。
 どれほど傷付こうと下がる所か前線に留まり続け鼓舞し指揮を執り続ける。

 これほどのお方を護っている事。

 まさに精神の支柱そのものとも言える雄雄しい姿。

 兵士達の…将達の背中を押して力を引き出す要因。

「えぇ…出払うのウチか?」
「文句を言うな! あまり右翼の戦況が良くないんだからな!」

 太公望の傍を離れて右翼に廻る事に少し納得していない様子の霞を、椛が諭す。

「まぁ窮地をウチに任せてくれるのは嬉しいけどなぁ……」

 まだ何処か納得しかねている霞に、伝令の兵士が現れ。


「……追申…しっかりと右翼を立て直した暁には休暇丸一日相手するとの」


 その言葉に即座に馬を翻し、部隊を率いて右翼へと向う霞。

「んじゃ行って来るわ! もたもたする奴は捨てときな!」

 扱い慣れていると言うべきか、兵士達も慣れていると言うべきか。
 霞はすぐさま兵を率いて戦場を横断し、右翼の部隊の援護へと廻る。
 その様子に不機嫌となった椛と恋の八つ当たりとばかりに更に武は振るわれていく。

 ―――中央の優勢は覆らない



================================================



 後方の本陣では双方の軍師の読みあい。

「伝令! 中央より右翼へ張遼隊が移動! 右翼の支援に廻るとの事!」
「続いて森に潜んでいた敵伏兵を張袷将軍が看破! 現在伏兵二万と交戦中!」
「報告! 涼州奪還部隊が無事涼州の奪還に成功しました!」

 本陣の天幕内に伝令と報告が飛び交う。
 木製の机の上に広げられている地図の上に並べられた駒を詠が動かしていく。

「ここに残ってる騎馬二千と重歩兵三千を右翼に廻して、それから呉の援軍はまだ?」

 地図と言う盤上に並べられた駒を動かしながら、戦場の様子を作り出している。
 呉の兵士達の駒が今だ戦場に並ばない……右翼の戦局は芳しくない。
 決して将官や兵士の質は負けていないのに、一行に良い報告が聞けないのが心配事。

 交戦を開始した袁紹隊は本人含めて五人の将官と五万の兵士達で構成された奇襲部隊の筈だった。

 だが現在の報告通りならば突破は時間の問題だとしても足止めには変わらない。
 早く敵陣を奇襲して貰わねば戦局の流れをこちらに傾けれない。
 むしろ万が一にでも右翼が崩れれば一気に戦局は魏に傾き、敗走を余儀なくされてしまう。

「あと少しで到着の模様! 左翼奇襲予定との事!」

 左翼の勝利は揺ぎ無い筈。

 だが太公望軍の右翼が崩れるのが先かも知れない。

「……詠さん、中央の華雄さんも右翼に廻しましょう」

 朱里は左翼の戦局を予測して、更に右翼への援軍を考える。
 既に左翼崩壊への道筋は書きあがっているが、右翼は敗北の方が色濃い状態。
 だからこちらの右翼が崩れるよりも早く、敵の左翼を崩せれば一気に右翼の戦局も傾く。

 傾かざる天秤を動かす策を懸命に捻り出す。

「そんな事したら中央の負担が大きくなりすぎるわ!」
「考えたくなんてありませんけど、右翼が危険なのは事実なんです!」

 それは本陣に残っている…激戦過ぎて太公望のように前線に出られない苦痛故の考え。
 一見出来ても遠すぎ、最前線で陣頭を指揮をしている太公望のような指揮を下せる訳では無い。

 今の二人にはとにかく諜報部隊から送られてくる情報を頼りに戦局を思い描く他ないのだ。

「判ったわ、華雄隊も右翼に廻るように伝えて!」

 干吉が育て上げた暗部の者や伝令専門の兵士達が命令を携えて本陣より出陣する。
 全員が無事に着く保障も、帰ってこれる保証もない。

 ―――現に伝令部隊の何人かは戦死の報が告げられているのだから。

 二人は次々と飛び交う報告に耳を傾けながら、盤上に駒を並べていく。
 それが今の二人に出来る唯一無二の仕事なのだから。


================================================


 魏の軍師荀ケもまた本陣で懸命に持てる全てを振るっていた。
 次々と来る報告に耳を傾け、戦局を分析していく。

「確認されている旗に【馬】【錦】【劉】【皇】【朱】はありません!」

 【幽州連合】の主力である馬騰軍と劉虞軍の不在に、荀ケは少し怯えていた。
 何故【幽州連合】の最大戦力とも言える両軍が不在で、太公望軍一軍だけが向ってきているのか。
 袁紹・孫呉の今だ姿を見せない事には、魏を支える軍師としての能力が答えをはじき出している。

(おそらく袁と呉は奇襲部隊…でも馬騰と劉虞は一体何処に?)

「伏兵隊が敵袁紹隊と遭遇! 苦戦中との事!」
「呉はまだ確認出来ないの!?」

 ―――見えてません!

 荀ケは理解できていなかった。
 どうして呉軍の足取りが掴めないのか、何故出陣の報告は聞えど居場所を突き止められないのか。
 更に袁紹と袁四武将と呼ばれる四人組みの猛攻に虎の子の一つである伏兵隊が見つかってしまった事。

 彼女は軍師としては優秀だが……裏方の仕事に秀でている訳では無い。

 呉軍の動向を探っている諜報員が皆殺しにあっている事を知らない。
 太公望軍の暗部である干吉とその手塩に掛けて育て上げた暗部の活躍の陰を知らない。
 伏兵の看破も無論暗部の能力あっての功績だが、四武将の一人である張袷の能力もある。

 史実で張袷が蜀に恐れられた最大の理由はただの百戦錬磨ではない。

 生まれながらか、変化の法則に強く、地理・地形掌握に群を抜いて秀でていた事。
 そこに経験則と実はかなりの勉学者の能力を組み合わせて尽く陣営を統率した。
 夏侯淵が黄忠に討たれた際にも代理の指揮者に抜擢されて混乱を即座に収めた程。
 これこそが彼が蜀をもっとも恐れさせた要因であり、この外史でもその能力を発揮した結果だった。


「涼州より早馬! 馬騰・劉虞軍の猛攻によって涼州が陥落しました!!」


「何ですって!?」


 軍師としての読み損ねてはいけない一点を読み損ねてしまった。
 馬騰軍は元々涼州奪還に燃えている兵士も多く、馬騰と太公望はとある戦術を敢行した。

 今更だが袁紹の押さえていた并州(へいしゅう)と言う土地と幽州が草原に接している事を利用した戦術。

 馬騰軍の兵士を少しずつ時間を掛けて草原に移動させ、涼州をいつでも奇襲できるように配置させたのだ。
 彼らは故郷の地理にはそこで生きた時間分の有利さを持つ、抜け道の一つや二つ訳などなく知っている。
 後は現地に残った仲間や潜入部隊の手引きによって侵入する手段を考案し、時を待つばかりとなっていた。

 そして今この時に、その緻密な積み重ねが開花して故郷奪還に燃え上がる馬騰軍が吼えあがったのだ。

「冗談じゃないわ! 涼州を押さえられる事は私達の首筋に剣が添えられたようなものよ!!」

 それは魏の真後ろと言っても過言ではない位置に土地がある事が災いと化す。
 瞬く間の陥落は魏の主戦力が今この戦場に集結している事に他ならない。
 馬騰の元には馬超を始めとした馬一族に劉虞軍と言う強力な同盟軍が居るのも要因の一つ。
 無論、決して無能と呼ばれる人材に任せていた訳ではなかったが、この二軍相手には賭けすら成立しない。

 馬騰軍は故郷の地理を知り尽くし、現地民の積極な協力も見込まれている。

 劉虞軍は眼と鼻の先にあると言える洛陽に歓喜しているだろう。
 
 洛陽と長安は漢王朝跡地……その名将の生き残りである皇甫嵩と朱俊にとって其処は特別な場所。
 劉虞が王朝の血筋である事を理由に彼を皇帝として即位させれば、文武に優れる彼を認める者も少なくは無い筈。
 民衆が認めてしまえばそれは立派な皇帝であり、優れたる人物が皇帝になればそれに付従う者達も現れる。
 ましてやこの一戦で魏を押さえて大陸の半分以上を掌握すれば周囲を強引だが武によって黙らせれもする。

 軍略面では背後・政治面では一種の敗北に等しい場所に直結してしまっている場を押さえられた。


「孫権率いる呉軍の奇襲! 左翼が崩壊しました!」


 左翼の崩落が意味するのは…夏侯淵と許緒の二名の戦死ないし捕縛を意味するだけではない。
 魏軍のこの戦の敗北を決定付け、更には太公望軍と呉軍の一斉追撃と進軍を許してしまう。
 荀ケは個人的だが無二の主であり心中している曹操こと真名華琳には手を煩わせたくなかった。

 だが結果は崩壊を始める魏軍を少しでも多くの無事に撤退させて次に備える必要がある。


「全軍に通達! 本隊の下まで撤退する、一人でも多く無事に撤退するように!」


 荀ケの口の中に血の味が広がる。
 完璧なまでにこの一戦で軍師としての誇りを砕かれてしまった事に対する怒り。
 主力に甚大な被害を与えてしまった自らの采配と自分達を追い込んでいる采配を下した敵軍師に対しての怒り。

 なによりも無二の主君の手を煩わせてしまう結果を作ってしまった自分に対しての怒り。

 同じ軍師として、自分より太公望の方が認められているような言動を見せられた事に対して彼女は躍起になってしまった。
 そして華琳抜きでの一戦を考えて、承諾を何とか頂いて来たにもかかわらず敗北してしまった。
 嫉妬が軍に、主君に泥を塗ってしまった事に対して……彼女は苦しむ事となった。



================================================



 左翼に対する呉軍数万の奇襲は、【幽呉同盟】の勝利を揺ぎ無いモノとする。
 ”呉に鈴の甘寧あり”とまで謳われる武人甘寧と彼女直属の百人の精鋭部隊の猛攻。
 更に白蓮の白馬隊の突撃の成功もあり、左翼は敗北し結果として魏軍は撤退を開始する。

「季衣(きい)は姉者を護って後退しろ!」
「僕だけ逃げるなんて出来ません!」
「命令だ! 皆を率いて下がるんだ! そして姉者を…華琳様を頼んだぞ!」

 夏侯淵の直属の部隊二万の部隊が殿として残り、敵軍の追撃を塞き止める事となった。
 無論これは夏侯淵の独断による殿であり、騎馬が主力の敵軍を止めるには最低でも半刻は足止めの必要がある。
 そんな情勢を直感として悟った夏侯淵は許緒こと真名季衣に命令して、強引に撤退させた。


「……敵将夏侯淵だな?」

「無論だ」

「悪いがここで捕まって貰うぞ」

「殺さぬのか? ……腰抜けが」


 夏侯淵を見下している白蓮の眼は武人としての眼。
 だがそれは夏侯淵も同じ事であり、双方武人としての眼が睨み合う。

「望が”主力の者達ならば捕らえれば必ず曹操は交渉に応じる”と言っててな」

「そうか…ならばここで華琳様の為に散るのも悪くはないな」

 返答とばかりに矢を放つが、白蓮は容易に避ける。
 武技の訓練の中には将官同士の一騎打ちもあり、その一つで紫苑とも手合わせをした。
 その際に弓将に挑む際の心意気などを徹底して叩き込まれ、身体が素早く反応してくれる。

 ―――最悪自害しかねない状況に白蓮は冷汗をかく

 特に夏侯淵ほどの将となれば主君の不利になると判れば本気で自害しかねない。
 ましてや夏侯淵は死ぬ気……自分の後ろにある者達の為に死ぬ覚悟がついている。

 そんな人間ほど恐ろしく厄介なのだ。

「悪いが眠ってもらうぞ!」

 白馬が騎手の命令で前進し、夏侯淵の真横を走り抜けていく。
 剣を振るい、それを避ける為に体勢を崩したのが運の尽きであった。

「張飛!」

「判ったのだ!」

 夏侯淵がこの発言の意に気付いた時には時既に遅し。
 真後ろから鈴々が来ており、蛇棒の柄が加減されているとは言え背中を直撃する。

「馬鹿! 強すぎだ!」
「そんな難しい事出来ないのだ!」

 激痛と衝撃によって地面に押し倒される夏侯淵を素早く左慈が取り押さえる。
 舌を噛み切って自決しようとするよりも早く左慈の加減された手刀が首筋を捕らえた。

「か…りん……さま……」

 気絶した夏侯淵相手にホッとしたのも束の間だった。


「伝令! 右翼から【導】の軍旗を掲げた三万の兵が現れ右翼が崩れました!」


 それは左翼全軍に……否、太公望軍全軍に衝撃を与える事態を与える。

「愛紗が! 姉者が……お姉ちゃんが!!」

「夏侯淵を本陣に移送しろ! 自決させないように気をつけてな!」

 取り乱す鈴々を宥め、負傷兵を後方へと下げ、動ける兵を急ぎ掻き集める。
 後方へと後退する兵と左翼へと一気に走り始める生き残りの兵士達。

 もしもっと彼らが…中央の者達も速ければ…… 



================================================



「怯むなぁ! 崩れるなぁ!」

 息を切らし、肩も呼吸の度に上下するほど疲労している陳到が叫ぶ。
 だが現実は無惨にも太公望軍の右翼崩壊を告げ、もっとも右側にいた陳到隊は壊滅状態。
 愛紗・星・霞・椛隊は夏侯惇の追撃に前進して……陳到隊は本来は後退する手筈だったのだ。
 そして愛紗・星・霞・椛隊が一気に前進、陳到隊が後方に下がってかなりの距離が出来てしまった時。

 それを待っていたとばかりに横からの突然の奇襲に、陳到隊は瞬く間に壊滅。

 本陣でも突然の奇襲に…そんな部隊は”知らない”と叫ぶ声が。
 暗部の者達は「そんな位置に人影など元々なかった!」と叫ぶ。

「くそっ! 砂色の老人……袁の扇動者に白装束か……」

 陳到の愛馬は既に事切れ、陳到隊は彼を含めて百人も生き残っていない。

「諸悪の根源に組する愚か者に神罰を!」
「死すべき者に死を!」
「天命の化身たる『道標』様の意のままに!」

 ―――死をまったく恐れていない勇み足の突撃

 ―――疲労困憊の兵への奇襲 

 ―――勝利を確信しての緊張のホツレ

 ―――計算し尽された奇襲になす術もなく打ち倒されていく兵士達

「将軍! お逃げくださッ!」

 配下の一人が盾となって死ぬ。
 四方八方から聞える兵士達の死ぬ際の断末魔。

「すまないな陳到よ……この一戦で死ぬ記録なのだよ」

「冗談じゃない…私には……俺は…あのお方の描く天下を羽ばたく鳳だ!」

 赤黒い剣を片手に仙人の能力をまざまざと見せてつける南華老仙。
 疲労困憊の陳到が辛うじて捌ける程度の攻撃を”わざと”出す。
 南華老仙は遊んでいる……ここで死ぬ定めを持った人間を相手に。

 乾いた音と共に刀身が中程で叩き折られる。

 長かった刀身は従来の剣の刀身よりも短くなり、間合いの優位が消えた。

「鳳? 飛べもしない雛鳥が囀(さえず)るな」

 かすむ視界に突然現れる何本もの槍。
 疲労困憊の陳到に避けれるモノではなく、鈍い音が数回。

 突き刺さった槍の柄を、残った力を振り絞って切り落とす。

 傷口から少しずつ血が流れ出しているが…内臓を数個やられている。

 ―――助からない

「何が記録だ……死ぬには…まだ早い……皆の笑顔を」

 再度数本の槍が突き刺さるが、それも斬り捨てる。
 亡霊の如く一歩…また一歩と老仙に近づいていく。

「死に…たくない……死ぬ訳には…」

 槍を一斉に突いている白装束達が退く。
 目の前に君臨している亡霊に…強すぎる想いが動いている人間だった者に。

 ―――恐怖を思い出させていく

 そしてそれは南華老仙もまた、目の前の死すべき存在に対しての恐怖を抱かせた。


「――― 来るなぁ!」


 老仙の赤黒い剣の刃が陳到の心臓を貫く。
 だがそれは陳到の間合いに老仙が入っている事を意味する。

 亡霊、最後の一太刀。

 それは老仙の胸を袈裟に掛けて切り裂く。


「馬鹿な!? 式神を斬った筈の太刀傷が私の本体に!?」


 身体を真っ二つに両断された式神の老仙の傷が…避けた筈の本体にも傷を付けた。
 血は出ていない…あくまで傷跡をつけただけだが、それでも斬られたのには変わらない。

「皆の者引くぞ! 神罰は下された!」

 陳到が倒れ、夕焼けに染まる大空を見上げる。
 本来ならば確実に止めを刺さねばならないが、太公望達の接近によって撤退を余儀なくされてしまう。

「探せ! 何者かは知らないが探せぇ!!」
「負傷兵の救助急げ! 手遅れになるぞ!」
 
 僅かに生き残った陳到隊の生き残りは……僅か二桁ほど。
 太公望軍の要として一万の直属を率いていた鳳は―――今、最後の時を迎えようとしている。
 将軍達全員が集まり、その最後を見届けんとしていた。

「死ぬな陳到! ワシの思い描く太平の大空を羽ばたくのではないのか! 我が決意と共に居るのではないのか!?」

「嘘だ! 陳到兄ちゃんが死ぬ訳ない! 絶対にないのだ!」

「陳到殿、死ぬな…貴方の誇り高き翼はまだ堕ちてはいけない!」

「おい陳到……勝手に逝くつもりか」

「……最後には………間に合いましたか」

 太公望軍がまだ小さな義勇軍であった頃からの血を流し合った戦友達の言葉。
 もう視力すら残っていない陳到は残った力を懸命に振り絞って、泣きじゃくっている鈴々の頭に血だらけの手を置く。

 擦る力すら残っていないが…その暖かさは失われていない。

「砂色…導……袁…の」

「砂色? そうか敵は袁を崩壊へと導いた者なのだな」

 口元が僅かに微笑む。
 少しずつ冷たくなっていく手を鈴々が力強く握り締める。
 だがそんな事をしても、もう彼の手が暖かさを取り戻す訳では無い。

「死ぬな陳到…ワシを敗者にするな……眼を開けよ」

 微笑んだまま顔はもう変わらない。
 眼を開いたとしても、陳到と言う鳳の眼に光り輝く世界は写らない。

「貴方の…夢…なし……遂げて……」

 周囲には静寂が支配している。
 微かだが最後の言葉が聞こえる。


「…あと…は……任せ…まし―――」


 鈴々の両手から手が滑り落ちる。
 心臓は止まった……剣が刺さったままの状態で良くここまで持った。
 全身を文字通り何本もの槍によって貫かれている状態で、良く生きた。

 夕闇に静まり行く夜空を、一際大きな流れ星が流れ落ちる。

 英雄陳到の宿星が夜空を流れ落ちて夜空から消え去る光。



「……あぁ……そうか―――逝ったのか」



 太公望の口から零れ落ちた言葉に、僅かな生き残りや太公望軍の兵士達が一斉に泣き崩れていく。

「陳到お兄ちゃんが…陳到…おにい……」

「大丈夫だ…我慢しなくていい」

 鈴々を抱きしめてあげる愛紗の胸で涙を流し泣きじゃくる鈴々。


「陳到殿…戦死の報は聞かぬと、言ったではないか」


 夕闇に沈む大空を見上げながら、ポツリと星は言葉を零した。

「陳到将軍が……戦死しました」

「そんな…嘘ですよね? 陳到さんが死ぬなんて?」

 間に合わなかった朱里と詠は、伝令の兵士からの言葉に耳を疑った。
 だが目の前で泣き崩れている兵士達の姿に現実を知る。

「嘘よ! あの馴れ馴れしい馬鹿眼鏡が死ぬ訳ない! アイツは馬鹿だけど私達の中でも強い奴なんだ!」

「諸葛亮様、華賈様……現実を…」

 朱里が泣き崩れ、詠の頬にたった一粒だが涙が流れ落ちる。


「皮肉よな…眼鏡は無事とは……」


 太公望軍全軍が悲しみに暮れる中、太公望は陳到の鎧の内側に入れられていた眼鏡を抜き取る。
 なんの不運か―――主は死したと言うのに眼鏡はまったくの無傷でいるのだから。
 その眼鏡を自らの懐に納め、遺体から一本一本丁寧に刺さっていた槍を引き抜き、刺されたままのあの剣も引き抜く。
 
 陳到と言う英雄の血を吸って一層に赤黒く染まった刀身を夕日に照らされてより一層赤黒さを際立たせる。

 ―――これは復讐の刃


「皆の者聞け! 鳳の陳到は死んだ! 【導】の軍旗を掲げた者達の…砂色の老人の手によって!」


 砂色の老人…郭図と岨授を唆して袁を遠隔的に滅ぼした元凶の者。

 泣き崩れていた兵士達にとって復讐するべき相手が判る事は…幸いなのかも知れない

 ―――今日この日…太公望軍は初めての敗北を経験した

 ―――重鎮たる陳到の戦死

 ―――戦死者一万を超え


「ワシ等は負けた! この敗北を忘れるな! この胸の苦しみを忘れるな!」


 ―――太公望にとってそれは敗北そのもの

 ―――たとえ敵の重鎮を捕らえたとしても

 ―――敵軍を負かしたとしても


「奮い立て! 挫けるな! 我等の友の死を無駄にせぬ為にも!」


 双方退いての引き分けとなった開戦。

 だが太公望軍は重鎮たる陳到を失った。

 鳳の失った痛みは……忘れることの出来ない傷となる。

 そして心の奥底で怒りを滾らせている事を誰一人悟らせず。

 神はその口の中を血の味で満たす。


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 ソウシ様
 孫権はフラグが立ちましたが、甘寧はまだですね
 人数を絞るですか……頑張ってみます
 太史慈は”あくまで”見掛けが似ているだけであり、本人ではありません
 しかし鞭とかシスコンですか…いや良い方に似ているとは思いますけど
 国よりも仲間を重んずる所とか…忠節心とか

 ボンド様
 太公望は絶対にモテル人ですよ!
 気遣いとか出来る人だし、こう…相手に心配掛けない所とか
 しかも原作では女性にはほとんど手を挙げてません
 攻撃はしましたが殺してませんし、騙し討ちでさっさと勝負つけようとしたり
 今回は金髪のお方には出番なしで、軍師同士の真っ向勝負で軍配は引き分け
 横槍を加えながら…老仙と道標は確実に計画を遂行していってます
 しかし本当に中国系は名前が難しいですよね……
 こういうのが小説で一番の邪魔になるんですよね!


 初めて何度も視点変更しました
 難しいですね…場所を混乱させない事とか
 巧く出来たか少々心配な所です
テキストサイズ:25k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.