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機動戦艦ナデシコ 火星奪還作戦<ルビコン> V 軍神の膝元
作者:カムナビ   2009/03/10(火) 04:42公開   ID:JhNSOrMmCE2
〜Cauntion!〜

今回、後書きに多少の男色要素を含みます。
それが苦手な方はあとがきを読む前にブラウザの戻るを押していただいたほうがよろしいかと思います。
それでもよろしい方のみ先へお進みください








陸戦の王者は戦車である。

だが真の強者は歩兵である。

〜連合宇宙軍空間騎兵隊教範の序文より〜







機動戦艦ナデシコ 火星奪還作戦<ルビコン>V
〜軍神の膝元〜








2199年 1月18日 火星地表 木連軍 旧エリシウム空軍基地
エリシウム高原の一角に広大な敷地を誇ったエリシウム基地。

だがそれはすでに過去の栄光となりつつあった。

断続した鈍い音。ガトリング砲の音だ。

撃っているのはバッタ。ミサイル代わりに12.7mmのガトリング砲を2門搭載する火力支援型。

それに引き寄せられるように一台のバッタが飛び込んだ複数のミサイルで被弾する。

DFを展開。

だが…

「クソったれ!! 空間歪曲場が紙みたいに!!」

「なんだよあのミサイルは!!」

「馬鹿野郎!! 前を見て狙って撃て!! 相手も人間だぞ!!」

爆散するバッタに対して悪態をつく木連軍兵士。

だが、それもすぐやんだ。

「・・・あ?」

頬にかかる赤色の赤い液体。

見るとバディを組んでいた男の首からまるでイオの火山のような噴火が発生していた。

「お、おい。なんで・・・」

彼の言葉はそこで途切れた。

周囲を見渡す。死体だらけ・・・?

「な、なんだよ!?なんだんだよ!!」

だが、質問に答えるものはいない。
それはそうだ、これは彼の精神の均衡を取り戻すために必要なものだからだ。

しかし・・・

「え?」

首に腕が回される。
誰か生きていたのか?
彼の最後の意識的行動は振り返ろうとすることだった。

彼は最後まで気付かなかった。
そのスモッグが、木連では採用をされていないものだということに。

若い木連兵士の命を奪った男はすっと立ち上がり、ぼそりと独り言。それを骨伝導マイクが拾う。

「こちら、サイレント1。 目標制圧を完了」

『…トーラー1、制圧を確認した。 捕虜は?』

「必要だったか?」

骨伝導マイクの先で息を呑む気配。多少時間があく。

『…いや、いないならいいんだ。 いないならば前進する、君も次の任務地へ向かいたまえ』

「了解した。 健闘を祈る」

彼はそれで通信を切った。

そして再び宵闇に隠れ…消え去った。



『本当に一人も生存者がいませんよ…』

先行したエステバリスと90式LACV(Light Armoured Combat Vehicle、軽量装甲戦闘車)からの報告を90式CCV(Command Control Vehicle)で受け取りつつ、エリシウム基地攻略戦に参加する第21空間騎兵大隊の指揮を任されている男、キリシマ少佐はその報告に頭を抱えつつも口元に笑みが浮かぶのを抑え切れなかった。

「サイレント・アーミー、殺しすぎる…。だが有効だな、奴らには」

有効ならば割り切る程度の思考をもっており、その身に戦争の狂気を内包した軍神の申し子、キリシマ・シュウ少佐。

彼は後に陸戦の鬼とも言われ、様々な教範に『兵士とはかくあるべし』という評価をされる人物であるが…

まぁ、実際にはこのような男であったのだ。

「大隊各車に通達、エステとLACVを前面に押し出せ。…残りを磨り潰すぞ。」

はっ!!と狭い車内の中で部下が敬礼を返す。

さあ、楽しい楽しいピクニックの時間だ。




…エリシウム基地が完全に陥落したのは、その2日後であった。




2199年 1月26日 10:13 火星地表 連合宇宙軍 空間騎兵隊臨時駐屯地<サジタリウスα> 司令室
サイレント・アーミーとは何か。

それをあらわす言葉は多く存在する。
体制に多少批判的な一般人曰く、『都市伝説から飛び出てきたような殺人鬼』

軍事評論家曰く、『現代の戦争では役には立ちそうもない近接戦闘特化の兵士』

皮肉好きの政治家曰く、『使いにくい手駒の代表格』

そのどれもが正しく、間違っている。

真実なのは彼ら/彼女らも人間だ。
ほんの少し、違うだけの。



そのサイレント・アーミー、ダテ少尉は召集を受けてこの基地へ赴いた。

目の前の扉の中にいるのは彼を呼んだ人物だ。

「連合宇宙軍SOF第9大隊所属、ダテ・タカヒロ少尉入室します。」

書類上の所属部隊を上げて入室する。

「来たな、ワンマンアーミー。待っていたぞ!!」

キリシマ少佐は彼を満面の笑みで迎え入れた。

彼は思わず渋面。ワンマン・アーミーはちまたで噂されるサイレント・アーミーの俗称の一つだ。

「あまり大声で言うのは傍聴上、問題がないですか」

「細かいことを気にするな、木星の連中はヒューミント苦手だからな」

その代わりシギントは割りと得意なようだが、とあとにつけて彼は座れと目で示した。

「…いえ、任務上の理由により…」

辞退しますと言おうとして、彼は動いた。

目標は壁、目的は・・・

その時ガラスを裂いて飛来した小銃弾が彼の立っていた場所を直撃。

小さな弾痕を生成する。

その場が凍りつく。

「やっぱりシギントがうまいみた…」

「…説明をいただけますでしょうか?少佐」

キリシマの言葉を途中でとめる。

「さて、なんのことやら…」

「小銃弾飛来の際、動揺がなく、その後も伏せようとしませんでした…テストにしては舐められている、と思いますが」

その言葉を聴いて、キリシマの口元がつりあがる。

悪魔の形相に。

「合格だ、さすがは誉れ高いサイレント・アーミーの一員。…テストしてしまってすまんかったね」

改めて、座りたまえと言う。

彼はそれに従うように見せて…腰の拳銃を抜いて一発発砲した。

壁に向かって。

金属同士のぶつかり合う音、バチバチという紫電が空を走る音とともに何もなかった虚空から出現したのは・・・メタル・ストーム。

20〜21世紀に旧オーストラリアで開発された特殊な火器。電子発火式で、数百万発/分での『弾幕結界』を展開可能な兵器。

現在は確か、クリムゾン・グローバル・アームメントがその改良発展型を発売してるはずだ。

「…これで終わりですか?」

「ん、その通りだ」

しれっとして、キリシマ少佐が言う。何事もなかったかのように。

『タヌキ』という単語が頭に浮かぶが、声にも、顔にも出さない。

「さて、任務だ」

「受領いたします」

渡された任務内容を記した文書を開封。さっと目を通す。

ムチャだ、という言葉が頭によぎる。だが、それを言葉に出すことは彼には許されない。
しかし、何よりも…対象に惹かれる。

「…拝命いたしました。ダテ・タカヒロ少尉、これより長距離挺身任務へとつきます」

「連合宇宙軍・第21空間騎兵大隊司令、キリシマ・シュウ少佐確認した。
装備についてはここの装備課を当たれ、最優先にしておいてやる。
…健闘を祈る、そして戦場でしか得られぬ経験とノウハウを持ち帰って生還したまえ」

「努力します」

敬礼に敬礼で応え、軽く会釈して部屋から退室した。

頭の中には、任務内容の達成のための道筋、必要装備等しか浮かんでいない。



部屋に残されたキリシマはおおむね満足した。

「…選んだだけはあるということだな」

サイレント・アーミー。
任務遂行のために、全身への補助臓器の移植及びに義体化、神経線維の光ファイバーへの変更、薬物・催眠暗示等による殺人への抵抗感の軽減を行った人間。

多くは借金や家族への生活補助を目当てで行われることの多いが、例外的に『自ら望んで』それを行う人間がいる。

ダテ・タカヒロ少尉はその『例外』であった。

もっとも…理由は存在する。

デスクに装備されたブラウザウィンドーを展開、彼の言葉を認識し、該当情報を表示。

ダテ・タカヒロ、出身・・・極東・日本管区カワサキ市。

「ゆくがいい、サイレント・アーミー。 お前の妄執、それが果たせる機会をくれてやる」

彼の配偶者欄には2197.12.24死亡の文字が躍っていた。

もっとも…

「お前は『協定』において必要な配役だ、生きて帰ってこないと困る。 …手は打たせてもらうぞ?」

彼はとある番号をダイヤルした。




再び出現した『協定』という言葉

そして、双方の陣営において存在する『協定』の意味とは…




同 10:31 <サジタリウスα>基地 中央格納庫
道を聞くべきだったな。

彼は若干の後悔とともに中央格納庫へと入っていく。

何せ臨時の仮設基地、案内板のような存在はない。

とりあえず格納庫にあることまではわかったからいいものの。

「時間を無駄にしたか」

まぁいい、後は受け取るだけだ。

整備中のエステバリスを横目に見つつ、粗末な仮設階段を介して2階へ。

装備課…あった。

「失礼…」

そこで言葉と行動が凝結した。
サイレント・アーミーとしての心得として行ってはいけない、と知っていながらだ。

乱雑に散らされた資料。
軍用のレーション(人気の高いフランス・イタリア製)の食いかす。
さらに大音量で流れる音楽。

思わず、扉を閉めて確認する。

『Equipment Office』
間違いない、ここが目的地だ。

改めて入室を試みる。…が、開かない。
怪訝に思って再び、あけようとこころみるが…やはり開かない。

「…失礼する」

『だが断る、というかお願いですからしばらく待ってください…!!』

声が聞こえてきた。

「別に構わんのだが…あまり長くはかからないと助かる。しばらく時間を潰してくる」

『すいません…さあ、課長!!さっさと片付けないと!!』

『しかし、別に構わんといっているのだろうからねェ』

『…黙れ、おっさん。やらねえと、玉潰すぞ!?』

『ひイ!?』

漫才らしきものが聞こえてくる。それを尻目に格納庫を眺める。

エステバリスに、90式ファミリー、後は…

「あれは…」




遠くから見えたが、近くで見ると改めて大きい。
人型機動兵器、エステバリス。
自分も適性試験を受けたことがある。結果は平凡であったが…機動力はなかなかのものだったと記憶している。
だがこいつは彼の乗ったことがある標準的な機体ではない。

「片腕のマニュピレーターは近接仕様のクロー、実験機か?」

背部の重力波アンテナも大型で統合化されたものが2つのみ、頭部も違う。

「おい、兄ちゃん。なにやってんだ?」

背後からかけられた声に振り向く。
サングラスをかけたやせた壮年の男性。肩に整備班長の文字。

…ちょうどいいし、聞いてみるか。

「あなたは?」

「おりゃあ、ここの整備班長やっとるサコンってもんだ。・・・おまえさん、補充兵か?」

「…似たようなものです。装備課に用事がありまして」

それで納得がいったというように彼はにやりと笑ってみせる。

「ああ、あいつらか…じゃあ30分はおわらねェぜ?」

30分か、まぁ暇つぶしにはちょうどいいか。

「お時間がよろしければ、この機体について聞いてもよろしいですかね」

背後に控える件の機体を指し示す。

「あ?ああ、こいつか…俺も詳しくは知らんが、ネルガルの新型の試作機らしいな」

サコン班長曰く、名称はプロト・アリストロメリア。

近接戦闘に欠点のあったエステバリスの近距離戦闘能力を向上を中心に図った新型機・・・の雛形らしい。
本来は火力増強もかねて携行式レールガンを装備する予定らしいが…間に合っていない。

「んで俺たちで適当な武装探してみっけたのが…」

「アスカSL03−SUBARU、ネルガルSM01−TIAMAT」

お?と彼が多少驚いた姿を見せる。

「重量バランスも考えると悪くないチョイスですね。 エネルギー効率もエステの電池容量考えると省電力中心が一番ですから」

「こいつは驚いた、兄ちゃん…」

ダテです、と言葉を遮って伝える。

「兄ちゃんはこの手の装備詳しいのか?めったにわかるやつはいないんだが」

まぁ、と応える。
サイレント・アーミーでの訓練で使用したことあるとは話せんな…

その時、横合いから声が聞こえた。



見るとおかっぱ頭の女性。

「お、お待たせしました。」

「…誰だ?」

「ああ、装備課の受付やってるミスミ嬢だ」

思わず口に出た疑問に、サコン班長が答える。

言われてみれば、なるほど先ほどの会話した声と似ている。

「掃除はおわったのか?」

え、ええと彼女が伝える。

「班長、この話はまたいずれ…」

「おう、またな。ダテ少尉」

多分二度と会うこともないであろうが、あえてそう伝えた。

腕のいい整備屋と知り合っておくことは重要であると同時に、彼の人柄には好意を抱いたからだ。

…言っておくが衆道的な意味ではない。



同 11:10 <サジタリウスα>基地 整備課 待合室

気まずい。

目の前にいるのは先ほどの男性。

椅子に座り、お茶請けの菓子とお茶にも手を出さずそのまま腕を組み、目もつぶっている。

あの、クソ親父。どこに逃げやがった・・・!!



横で般若の形相をしかけているおかっぱ娘、ミスミ嬢を軽く見つつ彼は再び作戦書の内容を思い起こす。

―――ジャンプ研究施設襲撃

なんでも火星のオリンポス周辺に木連のジャンプ関係施設があるらしい。

だが、警備状況に不明点が多いのでそれを探って来いということ、らしい。



ジャンプ。

よせ、思い出すな。

連想。火。瓦礫。・・・人の、腕。



「やあやあ、お待たせしま…ヒッ!?」

横合いから声の反応。顔を向ける。
恐怖に引きつった中年男性の顔。
それがそのまま、後ろへ・・・そしてドスンという音とともにカーペットに転がった。

しまった、そのままの顔だったか。

「すまない…あなたがここの責任者か?」

彼に手を差し出す。
しばらく躊躇していたが、目の前の彼は手を取り立ち上がる。

「あ、ああ、ここの課長をしているロッドマンだ。…ダテ少尉でいいのか?」

その言葉にうなづく。

「それで、欲しいものは…」

「糧秣を1週間分、AK−299アサルトライフル1丁、マガジンは4つもあればいい。対物ライフルは何がある?」

「ミスミくん」

「バレットとアキュラシーのショートストックがあったはずです」

「ではアキュラシーを」

他にも、各種グレネードや拳銃、近接用のマチェットなどの装備を順調に決めていく。

事務の手腕は高いな、目の前の人物とずいぶんと童顔な女性の手際を見て、そう判断する。

これなら早く終わりそうだ。

だが…

「エアバイクも、90式も空きがない…?」

「す、すまんなぁ。なにぶん少佐の推薦とはいえ整備予定や前線配備のはいやおう無しに出て行って…」

ちょうどよく残ってないのだという。

最悪だ…。

思わず顔をしかめる。

「エステなら出せなくもないんだが…無理だよねェ?一週間も」

エステの燃費を考えると、いくら節約しても一週間機動させるのは難しいものがある。

素直に待つしかないか…?
その際に発生しうる要因を頭の中で考え始める。
しかし、そこで救いの糸がたらされる。

「課長、確かプロトなら…」

「あ? ああ、そういえばアレはユニットオプションで動力炉のっけられたね」

「なにか手段があるのならそれで構いません」

藁にもすがる思いでそれに手を伸ばす。



よく考えれば…、彼は後にこう思ったという。
このプロト・アリストロメリアを目に留めたときから嵌められていたのかもしれない、と。






2199年 1月31日 未明 木連軍 オリュンポス周辺 マジンコクピット
その設備の名称は存在しない。

ジャンプ研究は連合・木連双方にとって重要な研究であり、その技術流出には極めて神経を尖らせている。

だからこそ、俺がこの場にいるのだろうな。

マジンのコクピット内で、月臣元一朗は軽く嘆息した。

連合との戦争開始から4年、双方の戦線はこう着状態。

だが…

「長引けば、こちらは白旗をあげざるえない…か」

別に彼が常時、熱血云々を叫んでいるわけではない。

優人部隊は、敵の経済・文化などにも任務上詳しくならざる得ないのだ。

その際の比較対象は、木連しかない。

そして決まってでる結論は…

『長期戦に陥れば木連は確実に敗退する』

考えれば考えるほど頭痛がする。

「もっとも頭痛がするのはそれだけではないが…な」

優人部隊、木連の若きエリート部隊、『火消し』の優人といわれれば気分がよくならないわけではないが
…悪くいえばていのいい跳躍実験体で構成された部隊。

跳躍はどちらの陣営においても実験段階だ。

それゆえ、『栄光ある犠牲』がいやおうなく容認される。

「この頭痛もその『栄光ある犠牲』の一端というわけだ…」

もっとも、先輩方のころには全身出血でいきなり死亡したり、跳躍したきり『消滅』したりしたこともあった…といういくつかの真実を確実に含んでいるであろう噂話がまことしやかに話題にあがっている。

そこではたと正気に戻った。

いかんいかん、今は任務中。木連男児たるもの、この程度の任務で呆けていては…。

「ん?」

視線の隅に何か光ったような……ッ!!

「ええい、間に合え!!」

省略された音声入力の代わりに彼はIFSを通して愛機、マジンに伝える。

それに答え、宵闇より暗い光がマジンの胸より放射された。



2199年 1月31日 未明 オリュンポス周辺 ダテ機(プロト・アリストロメリア)コクピット
空中での爆発の花に続いて、地上を嘗め回す黒い光―グラビティ・ブラスト、それが更なる爆発を引き起こす。

畜生!!

「1日かけて配置した装備がだいなしだ!!」

何もかもうまくいくわけじゃないか…っ!!

IFSを介して、スナイパーライフル、ミサイル他装備の残存状況をモニターに最優先展開

動力炉パージ、後方でのその爆発音を響かせつつ、一気にスラスターを展開、加速させる。

幸い自動防衛システムの類は先に流したウィルスによって機能はしていない。

排除するのは前方のマジンのみ…!!

一気に片付ける!!

打倒の意思を込めたミサイルが左右の肩のランチャーから1発ずつ、計2発飛び出す。

当然のことながら迎撃されるが…



同 月臣機コクピット
「く、電子妨害か!!」

チャフナノマシンによるアクティブECM、すぐに風で拡散するだろうが…

「目を封じられたのは痛いか!!」

跳躍、という手段も思い浮かぶが…

「…これが狙いか!! 灰被り!!」

背後の設備の護衛である以上、行動選択肢は極めて限られる。

ゆえに睨む。
自ら灰被りシンデレラと名づけた敵機を。
(ダテ機はグレイと青のラインに塗られていた)

「武士道とは…死ぬことにみつけたり!!」

跳躍ユニットを始めとするパーツをパージ。

「南無三…!!」

DFを最大まで展開し、突撃体勢へ移行する。

これぞ、木連本流…!!

「ゲキガンフレアァァァーーー!!」



同 ダテ機コクピット
「時代錯誤の突撃馬鹿がッ!!」

スピーカーで大声で叫ぶとか何を考えてるんだ、と思いつつも状況想定をやり直す。

スナイパーライフルで引き撃ちを行いながら、徐々に後退する。

だが厄介な状況なのは確かだった。

バッテリー残量に目をやる。

まだ余裕はあるが…

帰りの往復を考えるならば出来る限り節約したい。

GB警報、EAS起動。すさまじい横Gとともに回避行動。

「節約できる相手じゃない…か」

覚悟を決めて、近距離戦闘を…
はたと、考えてやめる。

「何を馬鹿なことを…」

ゲキガンフレアー、DFアタックを再びかけてきた敵機を回避する。

確かに相手よりは小回りが利くが、こちらの近接装備は胡乱な新装備を搭載したクロー腕のみ。

そんなものに命賭けるほど…

「って賭けざるえないか!!」

スナイパーライフル、玉切れ。ミサイルは後双方残り1発ずつのみ。

その彼に決断を促すかのように、マジンが迫る。



同 月臣機コクピット
「沈め、灰被り!!」

今必殺のゲキガンフレアー、それをその身に受けて…!!

だが、彼のほんの少しの期待とその他大部分の確信を持って放たれた一撃は

「な・・・にイ!?」

彼が灰被りと呼んだ機体の片腕によってDFを切り裂かれたことで防がれた。



同 ダテ機コクピット
勝利の美酒に酔う時間も余裕も彼は持ち合わせていなかった。

「落ちろ…っ!!」

すれ違いざまに残りのミサイルを相転移エンジンの排気口とGB放射口に叩き込む。

命中。小爆発が響き、マジンがそのまま落ちていく。

「…まぁ相転移爆発はおこさんだろ」

言葉に出すだけでも、多少心が痛むその言葉をひねり出したあと彼は施設のほうを見やり…

「…任務、完了!!」

月臣により迎撃された以外の設置ミサイル群が一斉に起爆スイッチを押され、施設へ向け殺到した。

彼はそれを一瞥して、離脱行動に移った。

爆発の火をその身に写しながら。



同 月臣機コクピット
だんっと思い切りコクピットのタームに拳を叩きつける。

血がタームに滲んでいく、だがそれでも構わない。

「何たる屈辱…!!」

打ちもらした上、情けをかけられるなど!!
ダテに言わせれば結果的にそうなっただけ、としかいえないだろうが彼はそう取らない。

「灰被り…ッ!! いずれ、この礼をさせてもらうぞ!!」

彼はそのままコクピットの中で緊急を伝える通信が来るまでその場で慙愧の念にとらわれ続けた。






2199年 2月2日 11:32 <サジタリウスα>基地 司令室
「…どうゆうことでしょうか?」

彼は帰還後すぐに機体を預け、着替えもせずに司令室へ急いだ。

そして今に至る。

「少々匂うな、前線では香ばしい匂いではあるが…」

「ごまかさないでください」

差し出したのは電子上に残った作戦経過ログ。

系統は全域系、つまり連合宇宙軍全体の作戦経過についてものだ。

「戦域γ−17において、木連軍研究施設を軌道降下師団が攻略…時期と座標を考えるならあの施設以外考えられません」

「偶然、ではないかな? 軌道降下師団の作戦目標が同じだった。

仮に、私がそれを指示したのならばどうするんだ?」

これ以上の追求はできない、そんな空気が漂う。
もちろん、『兵士よ問うことなかれNeed to Know』を出されてしまえばお終いだ。

だが、これだけは言っておかねばならない。

「使われるのは構いません、『騙して悪いが…』なんていうのも覚悟はしてますから。…ですが状況や情報を隠されてだしに使われるのはごめんだってことです」

「うん、私も君のような優秀な兵士を失うのが嫌だからな。 出来うる限りの『支援』は今後も行うつもりだ」

今後も、ね。

「それだけ聞ければ十分です、失礼します」

「ん。…ああ、待ちたまえ。辞令を与えにゃならん。」

辞令?と怪訝な顔をする自分に、キリシマ少佐は満面の笑みを浮かべて(出合ったときと同じように!)それを言い放った。



後の彼の述懐の中にキリシマ少佐への印象がある。
冷徹かつ陰謀家、部下を倒れる限界まで行使することにまったく躊躇いを持たない冷血人間。

それだけならまだましだが(消された後、罵詈雑言と推測)

…畜生、いつか殺してやる。



『2199年 2月2日 発:連合宇宙軍 特殊戦群(SOF)司令部
             宛:連合宇宙軍 空間騎兵隊火星方面軍第21大隊司令部

内容概略)当方より出張しているダテ・タカヒロ少尉を中尉に臨時昇進の後、そちらに貸し出します。どうとでもお使いください、以上』







キャラ紹介
連合宇宙軍side
ダテ・タカヒロ少尉 26歳 男性
主人公、一応は。

元連合宇宙軍根拠地陸戦隊所属、現連合宇宙軍SOF第9大隊に所属していることとなっているが、実際は極めて機密度の高い特殊部隊<サイレント・アーミー>に所属。

出身は極東・日本管区・カワサキ市。
配偶者がいた模様だが…


キリシマ・シュウ少佐 34歳 男性
連合宇宙軍空間騎兵隊・第21空間騎兵大隊指揮官。

陸戦の鬼と呼ばれるほどの優秀な前線陸戦指揮官であるが、性格は冷徹かつ策謀家。

『協定』について知る人物。


サコン・イエヤス特務中尉 58歳 男性
<サジタリウスα>基地の整備班を統括する人物。

整備一本40年。

ほぼすべての現用装備についての整備知識と技能を兼ね備え、整備には厳しいが人柄の良さから「おやっさん」と呼ばれている。


ミスミ・ユーティライネン一等兵 22歳 女性
軍属で、装備課で事務手続きを担当。

元々は通信会社でオペレーターをしていたとのこと。

普段の清楚な様子からは信じられない激情家な一面をもつ。


ハロルド・ロッドマン曹長 47歳 男性
装備課の課長。

何の因果か、書類手続きの間違い(実際はキリシマの引き抜きによる)で地球での後方任務が前線での補給任務を担当することなった。

小物じみた性格をしているが、調整能力・事務処理能力は高い。

ただし、文中から理解できるように人間的な能力は低いらしく、バツ1で一人娘がいる。



木連side
月臣源一郎 24歳 男性
いわずと知れた原作キャラ。木連軍、優人部隊所属。

主人公のライバル役として今後も活躍予定。

*年齢は公式設定ではありません。こんなもんだろうと捏造したものです。



メカニカル&簡易設定
空間騎兵隊とは?
空間騎兵隊とは、連合宇宙軍における陸戦を担当する統合陸戦部隊を指す単語である。

旧海兵隊のような働きをすることから、スペースマリーンの異名を持つ彼らは軌道からの降下からの早急な戦力展開、さらに工兵部隊による基地・陣地設営までをこなし、軍事作戦における『鏃』としての役割を持っている。

この火星において投入された空間騎兵隊は約6個師団。地球残存の予備部隊も含めれば10個師団となり、約3個半軍団規模の投入が決定されていた。

*やっぱり最初の乗り入れるのならば海兵隊でしょう。
空間騎兵隊のネーミングは宇宙戦艦ヤマトシリーズからです。



メタルストーム
現実に存在する兵器である。
オーストラリアのマイク・オドマイヤー氏は弾道学関係特許を60近くもつ人物で、同氏が設立したメタルストーム社は電子制御された兵器開発を行う開発会社である。
会社名にもなっているメタルストームは文中に説明したとおり極めて高い発射速度と電子着火式の信管をもつため極めて安全性が高いとされており、採用にオーストラリア軍および米軍が興味を示している。

作中のメタルストームはこれの改良型という設定。

*みりゃわかりますが、ゲテモノこの上ない装備なんですが…未来においてはこうゆうのも主力になるのかもしれませんね。
ちなみにDFには多分効果薄そうです。



プロト・アリストロメリア
ネルガルの次世代機動兵器、アリストロメリアの試作デモンストレーター。
基本的には非可変型クロー腕に搭載、背部の統合型重力波アンテナと頭部の換装以外はエステのコンポーネントを流用することで開発経費・時間短縮を図っている。
一応新装備に外部動力型のレールガンを装備も予定されているが、本機には間に合っておらず明日香インダストリーが開発した低重力環境向けのスナイパーライフルSL03−SUBARUとネルガル製のバッタミサイルを参考に開発された自律思考ミサイルの発射機SM01−TIAMATを装備している。
また行動期間の延長を目的に重力波アンテナの間に小型の動力炉を搭載することもできるが、搭載した場合極めて機動性は悪くなる。

*実際のナデシコでのアリストロメリアとは開発経緯が異なります(あちらはサレナのデータをフィードバックしたもの、こちらは純粋なエステ発展系統)
あと装備はインテリオル・ユニオン風ネーミング(謎
クロー碗よりとっつきがほしいなぁ…



90式ファミリー
同じ車体シャーシを使用し、調達単価を低減させたファミリータイプの装甲車両。
LACVは155mm電磁加速砲、20mm単装砲などを装備した最前線で使用される戦車タイプ。
CCVは自衛装備以外を装備しないが、前線での指揮・管制のための機材を積み込んだ指揮車両タイプ。
他にも自走砲、対空戦闘車、多連装ロケット砲、歩兵戦闘車、兵員輸送車、回収車、医務後送車などの様々な車両が存在する。

*米軍が現在進めているFCS計画をもろぱくった代物です。
オリジナルにはないのも加えてますが。



AK−299アサルトライフル
頑丈さと動作の確実性がとりえのライフル。精度はいまいち。

*いわずとしれたAKファミリーが22世紀まで生き残った結果です。



バレット、アキュラシー
どちらも銃器会社。
前者は米国のバレット・ファイアーアームズ、いろいろ有名なバレット対物ライフルシリーズの開発元。
後者は英国のアキュラシー・インターナショナル、アークティクウォーフェア(AW)シリーズは頑丈で環境に強いと好評らしいです。

*あー、趣味はしりすぎですかね?特に後者のチョイスは…


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
あとがき
こんなところか。

読むか?

感想をまっている。




へい、3作目お待ち!!

カムナビさんですよー、相変わらずシェアの少ない作品を書くことを生きがいにしてるカムナビさんですよー?

…毎度毎度、趣味に走って申し訳ない。

だが私はあやまら(ry

ごめんなさい、ごめんなさい、石をなげないで!? (脱兎



            , 'i´ヽ  ゙i'、
              i:::ヽ,:l__,l,.ノi
              |::::ヾ,| !|ソ:|
              |::::ヾ,|.:V:|ソ:|     遅かったじゃないか・・・
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            /ト、_::::|::  :|;イ、
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    /    ∨     l   |!  |   `> |  i
    /     |`二^>  l.  |  | <__,|  |
  _|      |.|-<    \ i / ,イ____!/ \
    .|     {.|  ` - 、 ,.---ァ^! |    | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
  __{   _|└―ー/  ̄´ |ヽ |_ノ____________|
    }/ -= ヽ__ - 'ヽ   -‐ ,r'゙   l                  |
  __f゙// ̄ ̄     _ -'     |_____ ,. -  ̄ \____|
    | |  -  ̄   /   |     _ | ̄ ̄ ̄ ̄ /       \  ̄|



は!?あんた、ジャック…アッーーー!?




お後がよろしいようで、では次が第4話にてお会いしましょう
(AAについて問題がありましたら削除いたしますBy作者)


修正記録
09・03・10投稿、細かい調整中
テキストサイズ:22k

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