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風来の闇  第八話 任務完了!
作者:霧露   2009/10/25(日) 09:45公開   ID:yE552F4UG.E
 目の前で不機嫌そうに立っている黒い少年――これは髪や服の色のことであって腹黒いとかいうことではない――を佐助は用心深く眺める。 それよりも声をかけられるまでこの少年に気がつかなかった自分を心の中でいさめる。少し油断していた……と唇を噛み締めた。
「……ねえ、君何者? この学校の生徒――じゃないよね? ――部外者は咬み殺す!」
「!!」
 素早く間を詰めてきた黒髪の少年に微かに瞠目する。 自分から聞いておいて相手が答える前に攻撃をしかけるとは何事か。もしも自分の主がこの場にいたら「貴っ様ぁ!! 名乗る前に攻撃するとは何事か! 同じ武士もののふとして許すまじ! うおおおぉ! お館さまぁっ!!」――と叫びだすことだろう。……まあ目の前の彼が武士なのかは知らないけど……と考える間にも、佐助は素早くクナイを取り出し繰り出された武器を弾き返した。 キインッ! と金属同士が当たる音が響き渡った。
「――へえ、君なかなかやるじゃない。僕の攻撃を防いだのは君が三人目だよ」
「ははっ、それはありがたき幸せ……っと!」
 ニヤリ、と嬉しそうな笑みを浮かべる少年が繰り出した攻撃を再び弾き返すと、それの勢いに乗って近くの木の幹に飛び乗った。
「――じゃ、俺様大事な用があるからさ。ここら辺で失礼させてもらうよ」
 ザァ……と闇が佐助の体を消す前に数本のクナイを少年に狙いを定めて投げつける。それを自らの得物で弾き返す間に佐助の姿は忽然と消えていた。 
 消えてしまった佐助を名残惜しむような表情で、佐助が消えた木の幹をジッと見つめていた。

「まったく……おっかねぇなぁ」
 忍術で一気に校舎の中に姿を移した佐助は、現在綱吉の教室を目指して走っていた。 ご丁寧にもリボーンから受け取った地図には、綱吉のクラスの位置も記されていた。――いや、それでも。
「こんな広かったらこれがどこの図なのか分かんないよ……」
 ハァ、と途方に暮れた溜息を漏らす。一応地図には教室の場所が書かれている――といえば書かれていたが、綱吉のクラス周辺の図しか乗っていなかったのだ。「もっと丁寧に書いてくれないとさー」……と小さな呟きを漏らす。
 実はこれも佐助の実力をはかるためのものだったのだが、そんなリボーンの意図は佐助に伝わるはずもなかった。
「――仕方ない。しらみつぶしに探し回りますか、っと」
 やれやれ……といつものように肩を竦めて、少し面倒くさそうに呟いた。
「やっぱりこんな格好じゃ目立つ……よなぁ。変装するか、面倒くさいけど」
 そう言いながら窓に写った自分の姿を見つめる。
 常日頃から”忍にしては目立ちすぎじゃない?”と言っているものの、支障は出なかったからこの個性的な服装を直そうとはしなかった。しかし、先程の少年は一発でこの学び舎に属する者ではないと見破っていた。ということは、この服装では任務に支障が出る、ということになる。
 変装するのは面倒くさいが、着実に任務を遂行するには面倒くさがってはいられない。 仕方なくこの学び舎に属する者が着ていた――綱吉や、迎えに来ていた獄寺、山本も同じものを着用していた――服を思い出しながら忍術でコピーする。顔の造形や体つきも念の為変えると、綱吉のいる場所の目印らしい、”一年A組”とやらを目指して歩き出した。

 歩き出して数十分。
 急に「キーンコーンカーンコーン」……と鐘の音が校舎内に響き渡った。何事かと身を構えると、建物内に一気に喧騒が広がった。
「――何かあったのか……? まさか俺様が侵入してるのがバレた、とか……?」
 本当はただ単に休み時間になっただけであって、佐助が侵入したことなど関係なかったが、感覚が戦国時代のものだけあって異常な反応を示す。 これはさっさと綱吉に届け物を届けて退散した方が良さそうだ――と考えをまとめ、すぐさま行動に移す。
 前を通過していく数人の女子おなご達に、危険を承知で”一年A組”とやらの場所を尋ねることにした。もしも自分に襲いかかってきたらその時は反撃するだけだ。
「ねぇ、ちょっといいかな? ”一年A組”とやらがどこにあるか知ってる?」
 佐助の問いに女子おなご達は顔を見合わせた。
「一年A組はこの角を曲がってすぐの教室ですけど……」
「そう。ありがとねー」
 ヒラヒラと手を振って教えてもらった場所へと歩いて行く佐助を、女子おなご達は「転校生かな?」などと囁きあいながら見つめていた。

「綱吉ーいる?」
 ようやく一年A組に辿りついた佐助は大きな声で目的の人物の名を呼ぶ。それにいち早く反応したのは、綱吉ではなくその(自称)右腕だった。
「おいてめぇ! 十代目に何の用なんだ!?」
 早歩きで近寄ってきた獄寺に、佐助は笑みを浮かべながらヒラヒラと手を振ってみせる。
「獄寺の旦那じゃん。昨日ぶりー」
「獄寺の旦那!?」
 獄寺が何か失礼なことをしないように――と、小走りで近寄ってきた綱吉が驚きの声をあげる。
「ま、まさか佐助さん……!?」
「佐助さん、じゃなくて佐助、ね」
 訂正を入れると持っていた弁当が入った袋を綱吉に差し出した。
「これ、忘れてったでしょ? まったく、駄目でしょー忘れ物したら。俺様ここまで来るのにだいぶ苦労したんだからねー?」
「あ! 弁当持ってくるの忘れてた! ――本当すみません……」
 ペコリと一礼してから袋を受け取る。「今度からは気をつけてよー」と軽い口調で綱吉に手渡すと、さて……帰るか。とばかりに踵を返す。
「お、お前まだ十代目の家にいんのか! 図々しいぞ!」
「何言ってんの。俺様は黄色の旦那に綱吉を護衛するかわりに居住地を貰ってんだからさ、別に図々しくもないでしょ。依頼料代わりなんだからさ」
 やれやれ、ともはや癖になりつつある肩を竦める動作に、獄寺がグゥ……と何も言い返せなくなる。しかし何とも八つ当たりしたくなる衝動にかられたのか、近くで成り行きを見守っていた何の罪もない一般生徒をギン! と鋭い眼光で睨みつけた。
「――じゃ、俺様もう行くね?」
 今度こそ踵を返して元来た道を帰って行った。
 後ろの方から聞こえてきた、「あの! ありがとうございます!!」という礼の言葉にヒラヒラと手を振った。


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■作者からのメッセージ
 八話目です。
 佐助は無事にお弁当を届けることができました。(パチパチ)
 雲雀さんと軽く打ちあったせいで中身が崩れてそうですが、佐助は忍なのでそこら辺は大丈夫です。……多分。Σ
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