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NAGI! 第2風 〜私と風と、ところにより変な奴〜
作者:アマネコ  [Home]  2010/04/18(日) 20:20公開   ID:LQUwln8ub/Q


「ふぅ。いいお湯だったわ」
『あそこから風呂に入るたぁ、おめぇさんも大概に大物だな』

 4時32分。昼の激戦の疲れと汚れをシャワーにて一掃した私は、現在自室にて正体不明の変な奴と会話している。
 ちなみに部屋には私一人。頭がおかしくなったわけではない。たぶん。

「それよりもあんた何?」
『「何」ったぁ少々失礼だな。せめて、「誰」あたりにしてくれや』

 頭の中から聞こえてくる。正直言って、本当に訳が分からない。頭が痛い。少々下品なこも声は、生意気にも自分を人呼ばわりしてほしいらしい。

「しかたないわね。・・・・・・んじゃ、あんた誰? 何者?」

 声に問いかける。頭の中にいるせいか、何故だか天井を見つめてしまう。

『俺か? んー、名前というものは持ってねぇな。だがこうして話すのは初めてじゃないぜ』

 やはり軽い感じに話しかけてくる声に、私は眉を顰めた。

「はぁ? 何いってんのよ。私はあんたみたいな奴知らないわよ」

 抗議の声を、とりあえずは天井へと投げつける。

『そりゃないぜ。・・・・・・あー、まぁ気を失ってたからなお前さん』
「気を?」

 なんだかいやな予感がしてきた。心当たりが、ありすぎるほどにある気がする。

『昼ごろか。お前さんが人間には珍しい元気さでダイブ決め込んでたときだ』

 そして決定的な一言を声は口にした。

(ぎゃはっは!!おもしろい!!お前に決めたぞ、我が王よ!!)

「あぁーーーーー!!!!」

 記憶の欠片が、どんどんと修復される。空へと飛んだあのとき、そういえば確かに変な声を聞いた。

『思い出したか』
「あんた、あんときの変な声!?」

 ひとつ思い出すと次々と思い出されてきた。そう、確かに私は地面に叩きつける前にこいつと会話をしている。たしか――、

「たしか、助けてやるとかどうとか。んで、そう。私の身体がふわっと浮いて・・・・・・」

 そう。感覚的にも覚えている。私の身体が、なんだか風に包まれていくようなあの感じ。

『おぉ、だいたい思い出したみたいだな。んじゃ、助けてやるときになんて言ったか覚えているか?』

 ちょっと、ちょっと待て。記憶がどんどんと、頭の中から再生されてくる。そうだ、こいつは初めに、助けてほしいかと聞いてきて、

(よし! ならお前は今から俺の王になってもらう!!)

 ・・・・・・とかとんでもないことを口にしてた気がする。そんで、あろうことか私は―――、
(うん。いいよ)とか普通に返事してしまって―――。

『よし思い出したな。これにて契約完了だ』
「って、だからちょっと待てぇい! なんだ契約って―――」

 ごふぁあ!!!!

「って! なになになにぃ!?」

 部屋の中を、いきなり暴風が駆け巡る。小規模な台風のようなそれは、瞬く間に部屋の中を蹂躙していく。しかも、その中心はどうやら私みたいなようで。

「部屋がぁ!!」

 机やら教科書やら、宿題のプリントやらが宙を舞う。これらは別にどうでもいい。

「限定アルバムがぁ!!」

 大好きなバンドのライブで買った限定品が、思い切り壁にぶち当たる。ぱり〜ん。

「止めて! はやく止めなさいこれ!」
『あ〜?止めたかったらお前が止めればいいだろうが』

 生意気な声が、明らかに馬鹿にした声で言ってくる。

「はぁ!? できるわけないでしょうが! これあんたの仕業なんでしょ!?」
『できなきゃおかしい。お前は俺のなんだ?』

 さらに意味不明なことを言ってくる。そもそもこんなアンノーウン生物?の特別になった覚えはない。・・・・・・ないのだが。

「って、窓がぁ!! あーもう!! わかったわよ!! 王にでもなんでもなんでもなったげるから!!」

 すぅと息を吸い込む。あー、また壁に穴があいた!

「たくっ! いいかげんに、とまりなさ〜い!!!!!!!!」

 とまりなさ〜い、さ〜いさ〜い・・・・・。

「・・・・・・止まった?」
『ナイスだ。心配する必要はなかったようだな』

 あれほど荒れ狂っていた暴風は、もはやその爪跡のみを残して完全に消え去っていた。しかし、その爪あとこそが甚大なわけで。

「心配ってなによ。それよりあんたこれどうしてくれんのよ? てかどうなってんの?」

 わけが分からない。もう一回言ってもいい。わけが分からない。

『すまなかったな。一応、適性を試させてもらった』

 先ほどからとは違った、少し真剣味を帯びた声。
 その変化に少し戸惑って、天井を見つめる。声はさらに真摯に、しかしどこか、そうどこか楽しそうに呟いた。

『ここに契約は完了した。貴殿を我が王として迎え、己は貴殿に神の新生を授けることを約束しよう』

 なぜか、顔は見えないが理解する。彼は心の底から笑っていると。

「あんた、ほんとに何者なの?」

 見えない声に問いただす。そして声は、今度こそ心底楽しそうにこう言った。

『なぁに。これからよろしくってこった、相棒』


 そう。これが彼と交わした最初の会話。そして、私の奇妙な日々の始まりだった・・・・・・。



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■作者からのメッセージ
幾分か遅れてしまいましたが、第2話です。今後のためを思って大分改稿してたら遅くなりました。
読んでくれた方は薄々感づかれていると思いますが、このお話は中二病もいいところな設定になっております。あまり好きな言葉じゃありませんが、あえてこう言っておこう。
いいじゃないか、書いたって。――神・王・新生――。その他にも、今後はこう、読んでくれた方の背筋をぞくぞくさせるようなキーワードを、どんどん出していくつもりです。にやにやしながら読んでいただけると嬉しいです。

そうそう。二次創作は書かないと言いましたが、書いちゃいました。こちらの18禁掲示板のほうで、とある科学の超電磁砲の婚后さんのエロパロを書かせていただきました。小説の方はあまりないようで、正直需要があるかわかりません。コメントが付くようでしたら、こちらのほうも連載にしたいと思いますので、気になった方は読んでくれると嬉しいな。

あと、1話に感想ありがとうございました。オリジナルは色々と難しいようですが、なんとか頑張っていきたいです。
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