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僕が時の冬に願ったら 〜あなたは誰を選び袂をわかつ〜
作者:ひーさん   2011/02/16(水) 23:40公開   ID:ehlEiC0vTxA
第一章
雷(らい)帝(てい)たる暴走!?
何か色々あったが、休みも終わり、俺達は学校に出席しなくてはいけなくなった、はぁこのまま学校に行って平和な日が続けばいいのに……

「……。」
「どうした立花?いきなり呼び出したりして」
「シン…お嬢様とデートに行くそうだな」
「あぁ、なんか無理矢理行かせられそうだな、それがどうかしたか?」
「あのな…その…」

立花は何かもじもじしながら、ある袋を渡してきた、何かチケットが入っているようだが……

「何だ、このチケット?」
「そっ、そのな…」
「???」
「ぐっぐうぜん二枚取れてなっ!!」
「そうか、んでどうしたんだ?冬蘭と行ってくればいいじゃないか」
「……鈍い奴だな!お前と行くためにこうして呼んだのではないか!!」
「…だよな、すまん…」
「それでだ、行ってくれるか…?」
「慶光院は大丈夫なのか?」
「おっお嬢様からは私から説明する、理解いただけぬ場合の措置も考えてある」
「そうか…(逆らわない方がいいな)」
「わかった行くよ、コサインは誘うかい?」
「シン!!」
「ははは、冗談だよ(コサインに後ろから撃たれないように気をつけなくては…)」
「よかった……なら安心だ!!」

立花は、ニヤニヤしながら去っていった、立花もあんな顔をするんだな……

「シーーーン?」
「コッッコサイン!?」
「いいなー立花さんとでぇと?」
「ははは…」
「モテるねー?さらに前俺言ったよねー立花さんに告白してモノにして見せるって」
「あー言っていたねー」
「それなのに休日のプランを邪魔するが如くデート?」
「はははは…」
「…。」
「ん?どうしたコサイン?」
「うっ」
「う?」
「裏切りもの!!私を散々弄んでいたのね!!もう知らないっ!!」

 コサインはハンカチをイーッて噛み、去っていった

「女を求め過ぎてとうとうおかまになったかあいつ……」

「冷静な判断をするのは構わないが、いつまでこんな所にいるのかな?そろそろ、授業だぞシン!!」
「あ、すいません夏蘭先生」
「わかればよろしい」
俺は急ぎ足で教室に入っていった…、え?なんで夏蘭が先生としているのかって?あの後、夏蘭は地域の戦闘を鎮圧するためにスパイとして潜り込んで内部から情報操作をしたんだけどね、なんか居心地がいいって言って入り浸っているらしい、まぁ見た目は美人だし元軍人ってあってか、周りは大喜びしているみたいだからいいんじゃないかな?

「遅かったなシン」
「あら?カマは治ったのか?コサイン」
「カマ?何の事だ??」
「まぁ覚えてないならいいのだが……」
「…先生が来る」
「あっ…ごめん」
「…あのシン?」
「なに?先生来るぞ?」
「彼女…たしかこないだいた人だよね?」
「こないだ?」
「あの、冬蘭さんのお友達の」
「何を言っているんだ??冬蘭って誰?きみだれぇ?あはははは…」
「…あの〜?シン?」

コサインは首元を探すと吹き矢が刺さっていた

「情報操作は完璧…」
「あのさ、シンにはしなくていいじゃないの?一緒に戦う仲間だしさ……」
「……情報は何時漏れ出すか分からない…感づかれる前に抹消」
「いや平気にそんな暗殺もどきをしなくてもさ!?」
「あんまり言うと…一遍死んで見る?」

美晴はニコッと笑うと右手の甲の裏に隠してあるアイスピックを光らせた

「アイスピックは勘弁だね」
「なら前向く」

その時、前の席にいるシンがガタンっ!と音をたてて崩れ落ちた

「おい!?なんか麻痺しているぞ!?」
「…撃ち込む薬間違えた」
「せんせぇ!!せんせぇ!!」
「何だね、騒がしい」
「シンが倒れたんで、早急かつ迅速に保健室に連れて行って良いですかっ!!」
「はははっは、大げさだね、ただの寝ぶそ…」

シンは泡を吹いて倒れていた…

「うむ…なんかよくわからんが泡吹いているな食当たりか…?」
「でしょう!!だから連れて行きます!!いや連れて行かせて下さい!!」


コサインは、急いで応急措置をし、シンは奇跡的に復活した

「はぁはぁ…なんか天がバク転していた」
「大丈夫か?」
「実は昨日、聞いたんだ…美晴の事は忘れようこのままだと殺されかねん」
「だな…」
「…それ位で動揺しているなんて弱い」
「み美晴さん!?」
「ハルでいい…」
「んでハル」
「…何?」
「なんで俺の教室に潜入している」
「…暇つぶし」
「え?」
「だから暇つぶし…飯田との花屋…暇」
「暇つぶしで人の学校に潜入すな…」
「私は…一般人、正体は…知られたくない情報…漏れるの……困る」

ハルはアイスピックを構えると……

「だから漏洩しそうな時…抹殺…する…殺された奴…ご愁傷様、運が悪い」

 ハルは低い背丈をうぅんと言って伸ばすと帰っていった……

「なんて物騒な子だ、たく〜親の顔を見てみたいよ」
「暗殺者が何を言う」
「元ね、今はフリーだよ?」
「じゃぁもう暗殺はやらないのか?」
「あんまりにシンがイチャイチャしていたらするかも」
「ははははは……警告と指摘として聞いておくよ」
「そこまでじゃないけどね、さて!!行こうか!!」
「何しに?」
「魅惑の立花さんの保健室へ!!」
「やっぱりそれ目的か…」
「あーたりまえさ!!」
「はぁ、立花さんの事が本当に好きなんだな…コサインは」
「自慢じゃないけど、あの人の事は隅々まで調べたよ!!実家の住所から、スリーサイズまでバッチリさ!!」
「それって巷じゃストーカーって呼ぶんだぞ?」
「ストーカーから始まる愛もある!!」
「ないわっ!!気持ち悪い!!」
「まぁ、ここで言い合っても何もならんからレッツゴー♪」
 
第二章
血痕は結婚の少ない証
「この仕事が一番楽とは聞いていたが…暇だ…私の顔を見たさに来る生徒しかいないし…」

 その時、保健室の扉が開き…ある者が入ってきた、見慣れていたが、あんまり会いたくない人間の様だが。

「おい、何をしてい…お嬢様?」
「しっ、静かに頼みますわ」
「なんで生徒会長でもある、お嬢様がこんなとこに転がり込んでくるのですか?」
「今、ちょっと追われていますから、匿って下さいまし」
「別に構わないですが…」

 その戸棚に隠れた慶光院のすぐあとに、教頭が入ってきた……

「立花君!!」
「なんです?」
「ここに慶光院君が来なかったかね?」
「いや、来ませんでしたが」
「そうか…私の気のせいか…ところで君は何をしているのかね?会議にも出ていなかったし…」
「この頃、生傷が絶えない生徒が多くなりましてその為…手が離せないだけです」
「そうか…」

 立花はその場を適当にいいつくろって教頭を帰らせ、戸田の慶光院を呼んだ

「お嬢様?何があったのですか?」
「ちょっと、捜査に失敗しただけですわ」
「そうですか…あまり無理はやめて下さいよ」
「これもシン様の為、頑張っていかないと」
「それについて、伝えなくてはいけない事があるのですがいいですか?」
「なんですの?」

そこから立花の長い…長い説得が始まったのだが、省略するとする…しかし、立花の必死の説得のおかげか、慶光院はしぶしぶデートを認めてくれた。
「ところで、立花さん…あなた…もっと露骨な治療はやめてほしいと女子生徒の方から生徒会に来ているのですが…」
「露骨?よく理解が出来ないのですが?」
「噂で聞くと、風貌のよさそうな男の子を見つけると、キズの治療と共に、ふっ不埒な行為まで行っているそうではないですか!?」
「不埒とは…甚だしいですね…お嬢様、私は向こうの性的な望みを叶える為にただギブアンドテイクで治療を行っているだけですよ?」
「だからと言って…性欲盛んな男の子を襲ってはだめですわっ!!」
「えーっ、ちょっとぐらい…」
「……。(ん?ちょっとタイミングまずったかな?)」
「とにかく、そういうのは、学校ではなく…人気のない所で行いなさいな…」
「まぁ考えておきます」
「(大丈夫だった)怪我したんで来ましたーっ」
「おやシン様にコサインさん」
「慶光院さん?なんでいるんですか珍しい…さらにコスプ…ぐばぁ!?」

言いきる前にシンの両腰を掴んで…慶光院のパワールドライバーっ!!シンはそのまま地面に刺さってしまってしまった…

「誰がコスプレですか!?私はれっきとした19ですわ!!」
「…意外に若いんだ」
「歳はさほど取ってないですわ!!」
「ごめん…」

慶光院は鼻を鳴らして、威張ったようにして、シンに指さして言った

「わかればよろしい、今度から気を付けてほしいですわ」
「あのさ…出来ればいいんだけど、抜いてくれないかな?このまま地面に刺さりぱなしはきつい」
「自業自得ですわ!!でも、立花?」
「わかっていますよ、抜いておきます」
「結構、物分かりがいいですわ!!」
さて、そんな事を言っている間に学校の授業も終わり放課後になった…ついでにデートは四日後なので、それまではひたすら勉強だ…でも、立花は元々少年兵である、普通のデートなのか心配ではあるが…
一方、シンの家の隣のラティ宅では、とある研究が行われていた…

「……何時になったら取れるの?この兵器」
「そんなに騒ぐんじゃないよ、大体いきなり呼び出されたと思ったらこんな雑用させられて…」
「つべこべ言わない!!あんたは私が生き倒れているのを拾ってあげたんだから手伝ってよ」
「あなたには感謝しているけどさ…私は人探しをしているんだ…これが終わったら探しに行くよ」
「えーっ、もっといてもいいのに」
「あなたは私をパシリにしか使わないよね…」
「ばれた?」
「この頃の買い物はすべて私だけどね…」
「だって、この頃シンにも会えないし…」
「シン?ふむ…」

 その男は、首をかしげると…

「どこかで聞いたはずなのだけど…まぁいいや」
「???」
「とにかくこの武装を外さないとね…」

その男はドリルで武装を外し始めた…

「いたたたたたたっ!!」
「すっすまん、足に直結しているから痛むのか…たく…無理やり一般人を巻き込むとは…スプリングめ…」
「スプリングを知っているの?」

その男は、当たり前の様に…

「知っているも何も、私は同僚だよ?私のコードネームはオータムさ」
「…なんで普通にいるのよ」
「いや、助けてくれたのだからお礼をしないと」
「風変わりな人ねぇ…いたいっ!!」

ラティは痛さのあまりに蹴りをしたのでそれが当たってしまった

「あうっ!?じっとしていてね、こっちは君より痛いから」
「ごめん大丈夫?」
「うぅ…鼻血が出てきたよ」
「ところでさ、ウィン君」
「そこはオー君とかじゃ…」
「あんたなんかウィンみたいな顔つきだから」
「どんな理由ですか…まぁいいですが…ところで用はなんです?」

丁度、最後の武装を外し終えると、ラティはそれを机に並べて…

「これ全部、武器にしてくれない?」
「武器ですか…?」
「そう!!武器!!なんかすごい兵器なんでしょ?これで戦ったら恰好良いじゃないっ!!」
「かっこ…いいですか…(立花探しに来たんだが…まだ時間かかりそうだよ……トホホ)」
「何よその目〜今日のご飯抜きにするわよ!?」
「作っているの私ですがね…」
「大体なんで外秋仲禁止なのよ!!ぶーぶー!」
「私に言われても…」
「とにかく暇だからあんたには奉仕してもらうわよ、わかった!?」
「はいはい…(逆らっていい思い出ないし…この家からいつ出られるんだろ…)」
「物分かりよし!!(いい使用人ゲットだわ!!弱みも握って、もっとこき使ってあげよっと!!ウシシッ♪)」


さて、ここからが本題なのである。願わくば、永久の平和を皆様に与えん事を――
 
第三章
天空の雷光
私が初めてシンに出会ったのは、まだ御父上、つまりニクロス殿が生きている頃だった、初めはとんでもない話だと思ったものだ。煌々と夜空を彩る綺羅星を見上げながら、赤髪の少女はしみじみと在りし日を振り返る。
父から唐突に会った事もない相手と婚約を告げられた。
雷鳴を司る任を与えられた家系に生まれた娘、家督を継ぐ長子として、いずれかは婿を取らなくてはならないと承知していた。が、あまりに頭ごなしな決定に、怒りが先に湧き出てゆく。
『いくら父上といえど…私に人生まで決める権限はないはず!!』
『うーむ、会う前からその様に嫌うものではないぞ、立花よその様に目を曇らせていては、相手を正しく知ることすら叶わないよ』
『知る必要などない!!』
 どれほど怒りを露わに訴えてもにこやかにはぐらかす父上に、不信を募らせもした。
 初めてのあいての男――彼を見かけたのは、戦場だった。まだ若い彼はニクロスの隊にいたが、逃げ回っているばかりの若像であった。一歩的に上司から怒られ、言い返しもせずに頭を下げていた。
 情けない――率直な感想を抱く。その後ニクロスの隊は、別に移転し別れた。
その後…彼は現れた我が友の冬蘭に連れられて、ホイホイと付いてゆき、ますます悪い印象を与えてくれもした。
『脆弱な輩が……っ』
吐きこぼした呟きには、かつての父への苛立ちと、決定に抗うすべのない己に対する無力感とがにじんでいて。
(どうして私があの様なものと……っ)
 父は戦死した為、叔父である水郷に幾度となく婚約の解消を願い出た。しかし叔父は『彼に勝負を挑んで負けたら、彼と付き合ってもらうよ』とだけ言っていなくなった。――今思えば、生来の生真面目さを逆手に取った洗脳であったのかもしれない。
人影のない廊下で首から下げた、ペンダントを見ていた。
亡き母からの贈り物。そして雷鳴家最高順位たる立花の称号を持つ者としての証。
(私の全てだったのだ……)
小さなころからの夢だった。幼き日に憧れた父の背中に準する物だった。しかしまだ父には及ばない。だからもっと鍛錬し、世界にでたかった。その為平和な日本で結婚などしている暇ではないのだと、誰にも理解されぬ気持ちに焦りを感じていた。
(思えばその気持ちを初めて汲んでくれた。応援もすると言ってくれたのもシンだったな……)
 不思議とシンにはなんにでも話せる気がして、どこまでも気が許せてしまう。目線を合わせただけで胸の高鳴りが収まらなくなり、彼が口元をほこばらせただけで浮足立つほど、気持ちが高揚する。
本だけでは分からない、自分は女であるという事を痛感する唯一の時間となった。
「……。」
「はっ!?ふっ冬蘭?」
「あのー?いつまでその話続くの?」
「この先ずっとだ、ここから先はデートに入るからな、書く奴も命を張るそうだ」
「書く奴って…」
「まぉ大人の都合というやつだ気にはしなくていいだろう……私達は人形なのだ、すべては神たる『サクシャ』に委ねられたな……」
「はぁ…」

見上げた夜空のきらめきに目を細める。かつて平和だった頃に見た満天の星空を同じように今の世で見る事は出来るのだろうか?
それでも今は愛しき人との時間を大切にしていたい。そう思うようになった自分がいる事も事実だ。極東の国、日本、雷鳴家の最高地位、立花。その123代目たる少女は思いを馳せる。
(願わくは、この日本に、シンに永久の平和がもたらされん事を――)


 
―――数分後
「たちばなぁ〜」
湯船に肩までつかり、湯浴み着一枚で物思いに耽っていた、立花を現実へと引き戻したのは、黒髪の見目美しい友人の呼びかけだった。

「どうしたのだ?冬蘭」
彼女の名前は冬蘭、私が記憶を失い、助け出されたときに救ってくれた英雄の娘であり、彼女も話を聞くと、孤児だったらしい。
「たっちゃんの話長い〜」
何か飲んで…あっ、こんな所に焼酎が…
「飲んだ…のか?」
「なんかけーこーいんがーのめっていうから〜〜」
お嬢様…はぁ…お嬢様の重りにもほとほとと疲れてきたがあまり言ってはならないので無視をしておこう。さて、年の変わり目があと数刻と押し迫った、師走の夜。友人であり、仲間でもある冬蘭の誘いで、近くの銭湯。縁とは異なもので、方々のスケジュールが見事に噛み合ってしまい、総勢6人の湯治となってしまったのだった。
「こうやって、私達の先祖も見上げていたのでしょうか」
星空を見上げて、慶光院が漏らす。その碧眼は、遠くかつての父を思う己のそれにとても似ていて――いつも、立花は引き込まれてしまう。
「きっと。私達の先祖も見上げていましたよ」
世界中の人の頭上に、平等に星の輝きは振り注ぐ。
「さぁて、そろそろ温まってきたし、魅惑の身体検査タイムですわ!!」
「えっ!?あっだれもいない!?さては冬蘭っ、逃げたなっ!?」
逃げたのではなく、転げ落ちたの間違いだったのは聞かなかった事にしてほしい。
「そしてあなたはどこを触って…!?きゃぁぁぁぁっぁ!?」

気まぐれな猫の様なお嬢の行動に自然と私達は微笑がこぼれてゆく。夜空を彩る星々に負けず劣らず艶やかな響きが寒風に乗って流れて行った。



「あちらはずいぶんと賑やかな様だなぁ…」
女性陣のかしましい笑い声が、風に乗って漏れ伝わる。女湯と、積み上げられた岩壁で隔てられた男湯で。肩を並べ岩陰に持たせかけ、歳を同じくしているが半世紀ほど経験の違う男が二人。タオル一枚腰に巻いて肩まで浸かる湯の暖かみの、その中に疲労を溶かしながら、気の抜けた声を掛け合っていた。
「お。何やら艶めかしい声が。なんか女の子トークでもしたり、あらぬ所を触ったりしてんのかな…!?」
「コサイン、そういう発言は慎んだ方がいいぞ、……あいつらの耳に入ったら生死彷徨うぞ?」
「おいおい…さっきから興味なさげだが…ん?何しげしげと見つめているの?まさか友のからだ…それも裸体に興味があるのか?まさかそっち方面だったのか!?」
「…本気で言っているのか?」
「無論冗談だよ…?でもさ、お前、いつになったら立花に告白するんだ?」
「それは…それは…」
そんな事を考えているうちにコサインの声が、やけに遠く感じる。自分のたてた波音が、くらくらする脳裏にうるさく響いた。
(やばい…っ、ぁ…)
バシャァッ――。
物思いに耽りすぎたのか――。自らの迂闊さを悔やみながら、俺は意識を断ち切られ、波間に沈んだ。
この後の事はもう緊張しすぎてほとんど覚えていない。デートの事も、その時なんといったかも。しかしゆういつ覚えているのは……。
『立花…好きだ』「」
このセリフだけであった。『彼女は顔を真っ赤にして何を言っているこのバッカmmmっ者!?』といったけな…もう、何が何だか覚えていない。
 
第四章
魔界の息吹・闇よりの使者
あの日、あの時…君に出会ってなければ、こんなに人生がつまらなくなることはなかっただろう。でも、会ってなければ、もっとつまらない人生だっだろう。
『立花…好きだ』
俺は勇気を振り絞っていった台詞は、立花の心にはたして届いたのだろうか、今日も、悩みながら俺は、学校に通う。たとえ伝わらなくてもいい。自分は彼女が好きなのだ…
「はぁ…」
「朝から暗いため息はやめてくれよ、こっちまで暗くなる」
「いいよな、コサインは明るくて」
出来れば、彼のような強靭な心が欲しい。この不安で苛まれるような気持ちに堪えれるような…

「そういえば、今日は立花さん休みらしいぞ、なにかあったのかな?」
「寝坊はいつもさ、彼女らしいよ」
俺はその理由を知っている。彼女は、闇の力によって、命を削られているのだ。それを俺以外の奴は知らない。しかし…予想は大きく外れ



「…子供できたらしいぞ」
「…はい?」
「立花さん、子供が出来たらしい」
とうとう、自分はやってしまった。多分、子供が出来たのならば、自分の子供だろう。
「…シン、まさかだとは思うが…」
「…。」
何も俺は言えない。既成事実を作ったし、俺は彼女が好きである。別に愛の結晶が出来ただけではないか。なにを慌てる。


それから、次の冬も終わりに近づいた、ある日。
「さて、遅くなったが立花と結ばれたのを祝おうではないか」
冬蘭は、次の冬休みをかねて、シン宅で、パーティーを開催した。自分の上等といわれる部屋ではなく、俺の部屋と言うのはすこし癪だが、開催してくれている時点で、昔より見直してくれているのだろう。
「しかし、シン」
「なんだ?」
「たっちゃんはどこなのだ?見当たらないが」
「立花なら、ちょっと買い物に出掛けたぞ、満のオツムを買いに行くらしい」
「たっちゃんは、まめだねぇ産まれる前に買いに行くとは…、いい主婦になるよ」
「シンはわるい夫にならないことを祈るよ」
サラはニタニタと笑い、皿を並べ唯一の得意料理であるチャーハンを盛っていた
「よせやい、俺は立花とちゃん役割も両立してやっているんだ」
「ならいいけどさ…」

その時…その団欒を切り裂くように鳴り響く、電話。
「電話だぞ」
「あぁ、わかってい…」
俺はかけてきた主を見て絶句した。それは、警察からだった。警察からかかってくるのは二つしかない…事故か事件だ。



俺は取りたくなかった。とったらこの幸せになりつつある団欒が夢であり、卑劣な現実へと行きそうであったから…





ガチャ
「…はい」
「立花さんのご家族の方でしょうか?」
「…はい、立花がどうかされたんですか?」
「…ご愁傷様な話をさせていただきます」


ご愁傷様な話だと?立花が人を襲ったのか?まさか…そんなはずは…

「…とにかく、酒見病院(さかみ)にいらしてください」
俺は返事をしなくていけないのだが躊躇った。このまま、これはうそであってほしかった。ドッキリとか、いたずらであってほしかった。

「…はい」


ガチャ



「どうした?誰だったんだ?」
「…すまない、病院に行かなくてはならなくなった」
「病院?なんで?」
「…すまない」

俺はそういうと、家をでていった。俺はその時は、彼等にまで悲しい現実を見せたくはなかったのかもしれない。



その病室にいく道のことは覚えていない。病院につくと、病室は静まり返っていた…。
「…。」

そこには、白いベットがひとつ。
「…。」
見たくなかった。そんな姿、見たくなかった。うそだろ?なんで皆黙っているんだ?ドッキリだろ?パーティーの出し物とかだろ?起きろよ、起きてなんかいえよ。

「…。」
そういいたかった、しかし言えなかった。立花の上には白い布がかけてあり。まるで子供のように微笑みを浮かべたまま寝ていた…。
「…立…花?」
やっと俺は声を出すことが出来た。しかし、状況は理解できない。

「先生…どうゆうことなんですか!?」
「道端にいた立花さんに…飲酒運転のトラックが突っ込んだ…即死だ」

そこには夏蘭がたっていた。

「いや、飲酒運転という名目だが、殺しにかかられたのだ、その運転手は、引きにげたあとに、自害していた。」


俺にはその台詞は聞こえなかった。いや、聞きたくなかった。それはわかっていた。飲酒運転なのにこんな的確に立花だけを引いていくはずはない。その時は色々な人がいたはずである。
「…俺は、俺は…」

いつかは来ると思っていた。立花は元々敵だったのだ。こちらの味方をしている以上、警察も法律も、なにもかもが裏切る可能性はあるのだ。わかっていた、わかっていたのに…
俺は、頭を地面にたたき付けると…
「…立花…すまない…本当に…本当に…」

その日も、かつてお寺で初めて立花とあった時のように、雪と雷が鳴り響く、天気だった…まるで、立花の死を偲ぶ気持ちさえ切り裂くような爆音と共に。



あの悲劇的な事故から四日たった、コサイン達には、急に産気付いたとうそをつき、家に帰らせた。
「…立花、もしやもうすでに知っていたのか?こうなることを…」
シンは立花を継ぐ者が入るというの墓の墓石に向かって、しゃべりかける…
「…シン」
そこにとある客がきた。そういえば、彼女は知っているのだったな
「夏蘭か、なぁ…立花というのはこんな非業な運命なのか?」
「いや、立花というものは…」
彼女は珍しく口を濁らせた…なにか知っているのだろうか?
「なにか知っているのか…立花とはいったいなんなの?」
こうなったのなら仕方ない…立花の仇を伐たねばならない。仇は誰だ…誰なんだ?
「シン…」
すごく気まずそうに夏蘭は答えた、何か伝えることを拒むかのように
「…立花とは、お前を暗殺する為に作られた兵士だ」
「…俺を?」
何を言っている?立花は、家柄なのではないのか?
「私のように戦場で、使えそうな子供は立花・毛利・張子という施設に送られてな、暗殺兵士として記憶をいじくられ、体を改造されるんだ立花とは、肉体と精神の担当施設だな…」
「…知っていたのか?」
「知っているも何も…それを救いだしたのは水郷だ」
「…。」
水郷は敵ではなかったのか?じゃなんで?敵になったのだ?
「水郷はスパイであり過ぎたのだ、スパイである事を隠すために敵にならざるを得なかったのだ、彼は…体に精神操作薬を200もやられたが精神を持ち続け…」
あの時、水郷は俺らに…殺される為に…
「それが正しいのか?それが正義なのかよ…それが…それが!?」
「シン…お前の気持ちもわかるが…いまは堪えるしかないのだ、たとえ…先日のように仲間を惨殺されようとな…」
見ると、夏蘭は手を握りしめていた…手から血が流れているにもかかわらず…

「まさか…」
「あぁ…私の不徳だ…いきなりだった、襲撃されて…」
聞く話によると、夏蘭は、仲間の助けで逃げ延びたらしい。そのかわり、田中さんたちは、自爆特攻をし…
「私は、馬鹿だ…何が隊長だ…部下に助けられて…」
「夏蘭…」
何も言えなかった…何もかける言葉がなかったのである
「シン、ラティを冬蘭を頼むぞ…」
「まさか…」
「あぁ…けじめはつけなくてならんからな、隊長として、夏蘭としてな」
「やめろっ!?お前が死んでどうする!?」
「私は生きていては…部下に…」
俺はしかたなくあるものを撃ち込んだ…
「…なにを…」
「夏蘭…お前は寝ていてくれ」
冬蘭から借りていた麻酔薬だ…夏蘭が特攻しないために借りたのである…今こそ使うべきだろう…



それから、三週間後、目覚めの春が来た。しかし、目覚めどころか、シン達には弔いの春であった…
「シン…」
コサインには事情を伝え、ついて来て貰った。彼等二人は、立花の弔い合戦を考えていた。しかし、彼等だけでは、合戦どころか、自殺しに行くようなものである。
「…どうすればいい、くそっ…」
「シン、すまん…力になれんでな」
コサインでも、無理か…しかし、このまま、立花を失ったことに、クヨクヨしていては、立花に申し訳がたたない。大体、立花なら『――これくらいで落ち込んで、貴様はや 
はり愚の骨頂だな!!雷鳴家を継ぐものがそんなのとは…絶句したぞっ』とでも言うだろう。落ち込んでいる暇ではないのだ、立たねばならない。ひとまず、二手に別れ、作戦を考えることにした。
 
第五章
勝利の神(じん)雷(らい)を君に
そんなある日のことだった、俺は仲間たちと別れ、所々で解散して行き帰途についている頃であった。
「…し…ん…」

一人になったその時、地面から立花の幻聴が…そんなはずはない。彼女は体半分ごとトラックと合体するほどぐちゃぐちゃになったのだ、生きている訳もない
「シン」
今度ははっきり聞こえた。お化けか!?
「…そう身構えるな、私だ」
後ろからヌルッとなんか舐められた…だ…れ…?
「ふっふっふ…」
そこには、立花に似た人がいた
「立…花…じゃないな、誰だ?」
「私は、本物の立花だ…お前が恋したのは単なる、私の影武者だ」

そういい放つ女性は確かに立花に似ている。しかし、なにか足りない
「…立花」
「なんだ?」

そのまま、シンは刀を抜くと、突き刺した。立花はその刀を避けもしないで、受け入れた。
「なるほど、立花…お前は…」
「そうだ、私は…死なん、いや死ねない、立花という証を持つものはこの呪いを受け入れるしかないのだ」

「…何しに戻ってきた」

彼女は立花であるが立花ではない。なぜなら立花は死んでも、また過去の立花がシンを殺し、そして
自分が生き、また過去のが現れ…と輪廻をくりかえしているのだ。
「…私の呪いを解くには、この輪廻を解く必要がある。しかしだ…この輪廻はもう解くには遅い」
「…」

そう彼女は、タブーを侵してしまった。彼女は、シンに恋をしてしまったのだ。これで、理解が出来た。あのひき逃げは、過去の立花が現代の立花を殺し、過去の立花がいまここに殺し来る為の布石だったのだ。
「なるほど、ならば殺せ」
これが輪廻ならば仕方ないのではないのだろうか、さぁまた輪廻はまわりだす。そして、世界は混沌たる輪廻をまわりだすのだ。
「…」
立花はシンの刀を奪い、シンにむかって、走り込んできた
「シンっ覚悟ぉっ!!」

ガキンッ!!

「え?」
立花は吹き飛ばされた、まるで、爆風に飛ばされたかのように…
「…なぜだ?なぜ斬れない!?」

「…イヤダ」
「なっ!?」
「イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ…」
いきなり、立花はそうつぶやきはじめると、頭を抱え、苦しみはじめた
「イヤイヤ…なに…が…くっ、わた…しは…ころ…しは…イヤダ…さなくては…やめろっ!?ぐっああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

そう叫ぶと、口の中から、紫の煙を吐き出した…
「はぁ…はぁ…収まった、これで貴様を…殺せる」
立花はいきなり、煙を吐き出したあと、刀をシンに構え切り掛かってきた
「死ねぇ!?シン!!」
「くっ!?よけられなっ…」


「…無拍子」

その瞬間になにが起きたか覚えてはいない。ただ、目に映ったのは、自分も立花も凄まじい雷に吹き飛ばされ、自分は川に落ち、立花は消し飛んだ姿だけであった…




「シン」
誰か呼ぶ声がする
「…シン」
誰が呼んでいる?

スパァン!?
「いたぁっ!?」
いきなりのビンタ、しかも、すごくいたいっ!!
「起きたか!?」
そこには、知らない女性がたっていた。


「よかった…本当に…」
誰なんだろう。なんでないているの?
「シン…シンのお陰だ…」
「え?」
なにをいっているのかわからない、一体この人は誰なのだろうか?自分は会った記憶はない。
「…。」

「どうした?」
「あなた…誰」

スパァン!?
「まさか記憶喪失!?大丈夫か!?」
痛いです。記憶喪失はしてないと思いますが、あなたのビンタでしそうです。
「私は雷鳴咲(らいめい さき)だ、立花の呪いを解いてくれてありがとう…本当に…」

それから、咲さんに状況を説明してもらった。
「なるほど…立花になると同時に、記憶を消され、2百人の影武者を製造されたのか」
「そして、ぺンダントから指令を与えられ、それを真っ当しなければ、他の影武者に殺される…」
そして、立花はシンを殺し輪廻は収まるはずだった。しかし、2780回目に誤作動が起きた。立花が恋をしてしまったのだ。ペンダントはしかたなく何回も殺そうと、指令を送ったが幾度も、失敗し、やっと三日前に殺し、輪廻を収まろうとしたが…一つが誤作動したなら他のものにも影響を与えていた。これが、今回の全てだ。


「さて、帰ろうかシン」
「帰るって?」
「結婚祝いだろう?私達が行かなくてどうする?」
そうだったな、結局うやむやで、なくなったのだったな…
「あぁ、盛大に祝おう、俺達の門出な…」

こうして、今回の出来事は完結を迎えた。しかし…平和は続いていくものではないのである…。


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