ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

ロスト・メモリー 第二章  『疑われる男』
作者:13   2011/06/30(木) 21:50公開   ID:JHZjjd6HxsM



 まぁ、早いうちに切り上げて申請を出しておくか。
 何かを思い出したようにケータイを取り出した。

『シロガネ』

 今はそう名乗っておこう。
 ポケットから紙を取り出し書いてある番号にかける。

「あ、もしもしオレだ……はいはいじゃあそちらに向かう。ついでにジャンヌの手伝いに行ってくる、なーに戦に飢えてるだけだ」
 
 パタンとケータイを閉じ、シロガネは立ち上がると、目的地に向かった。
 シロガネの後ろには十人程の男たちが山積みになっていた。
 決して殺したわけではない、全員気絶、または催眠ガスで眠らしているだけ、殺すのはいろいろ面倒だ。
 彼らは『武装検事』危ない奴『公安0課』よくわかんない雑魚という日本屈指の仕事人らしい。

 くすっと笑いその場を後にした。

「腹減ったなおい」

 こっちの世界に来てもう半年は何も食べてないな。


 ―――――――――――――――――――――― 


 朝、遠山 キンジはアリアには「だらしがない、それでも武偵なの」とか罵られつつ、見送り。
 意識も朦朧とし流石にやばいと思い自分のベットにこもった。
 
 昼になり目が覚めたら枕元に特濃葛根湯があるのに気付いた。
 白雪か、あいつにこの薬の話したっけ、アリアにはあるけどあいつから聞いたのか。相変わらず気の利くやつだな。
 葛根湯を一気に飲み干し、瓶を台所のゴミ箱に入れてベット戻ろうとすると。

 ピンポーン。

 誰かが来たようだ、だるそうに扉を開けるとそこには蒼がいた。

「お加減はいかがですか?」

 蒼は大荷物を持ちながら野菜の入った袋を持ち上げた。


 ブクブクと音がキッチンから聞こえた。
 キンジはベットで静かに休んでいると蒼が。

「出来ましたよ、味の保証はしませんが」

 どうやらお粥のようだ、味の保証は無いというがいい匂いがする。

「蒼さんは、なんでもできますね」

「いえいえ、記憶を無くしてから、何もできないのを記憶せいにしたくなかったしおまけに腕がこれですから、身の回りの家事は一通り出来るようにしたんです。まぁ、本当は洋食の方が得意なんですが」

 と謙遜する、この人は本当に何でも出来るなきっと勉強も……

「まぁ家事はできても、勉強は、最近になってやっと掛け算九九を覚えた程度ですよ」

 そういえばこの人記憶喪失だったんだ。

「そうですよね、記憶が無いんですよね」

 お粥を口に運ぶ、おいこれ……

「……お口に合いませんでしたか?」

 心配そうに蒼は聞いた。

「いや、美味しいです、なんというか和風のリゾットみたいで、ちゃんと野菜が入ってますし」

 これは、白雪には追いつかないが、ひょっとするなら洋食はこれ以上か、こんなのどこで覚えたんだよ。

「それはよかった」

 相変わらず蒼はにこにこと笑っている。

「でもこれ、結構お金かかったんじゃないんですか?」

「大丈夫です、先ほど仕事が出来ましたし」

「そうなんですか、よかったじゃないですか、どんな仕事なんですか?」

「非常勤講師というやつです。先ほどテストして見事合格しました」

 珍しく蒼は自慢げに言っているようだ。どっかの誰かさんもこのくらいの慎ましさで自慢することを見習ってほしい。

「どこの非常勤講師ですか?」

「武偵校です」

 うそだろ、この人、あの教職試験を合格したのかよ。

「そ、そうなんですか」

 ほんとになんでもできるんだな。無計画なところはあるけど。

「ええ、明後日から配属になるので、この部屋ともお別れです」

「なにもできなくて申し訳ない蒼さん」

「さて、病人はもう寝てください私も昨日は夜更かししてしまい眠いので私もお昼寝します」

 それから眠った蒼とキンジは朝になるまで目が覚めなかった。



 翌朝、風邪もすっかり良くなり普段通り学校に行くとなにやら学校がにぎやかだった。

「そういえばアンタ、風邪はもう大丈夫なの?」

 アリアが顔を上げて聞くと。

「ああ、もう大丈夫だ、白雪が特濃葛根湯をくれたおかげでこのとおりだ」

「え、ああ、そうなの、まぁいいわ貴族は自分の手柄を自慢しないわ」

「なに言ってんだ?」

 そう聞いた途端、アリアは犬歯をくいっと上げ睨み付けた。

「別になんでもないわよ!!」

「どうした急に怒鳴りだして」

 なんだよ、さっきからわけのわかんねーこと言いやがって。

「なんだっていいでしょ!! そんなに白雪がいいならいっそ結婚しちゃえば!!」

「なんだよその言い方!! 白雪は関係ないだろ、だいたいお前はそうやって――」

「そうやってなによ!! 言ってみなさい!!」

 もの凄い剣幕でキンジを睨み付ける。

「お前は、そうやっていつも直感だのなんだのと言って。だいたい、本当に魔剣なんてあるのかよ!!」

「魔剣はあるわ絶対に!!」

「だったら証明してみろよ論理的に!!」

 そう言い放つとアリアはうつむいた。

「アンタ、覚えてないの、なんのために家に連れ込んだと思ってるのよ……」

 小言でなにか言っているアリアを見て言った。

「いいか、お前は冤罪にかけられたかなえさんを助けようしたいあまり、魔剣がいるかもしれないが妄想で魔剣がいるっていう風に思い込んでるんだ。気持ちはわかるが――」

「アンタになにがわかるのよ!! 魔剣はいるし白雪は狙われているのよ!! この分からず屋のバカキンジ!! アンタそれでも探偵科なの!?」

 二丁拳銃を取り出し乱射。
 防弾制服だったから大丈夫だったものの、

「もういい、お前は少し頭を冷やせ、話はそれからだ!!」

「勝手にしなさい!!」

 ダンダン!!


 ため息をつきながら屋上に行くと蒼がのんびり座っていた。 

「おや、キンジさんじゃないですか」

「あれ、たしか明日配属になるんじゃ?」

 蒼は胸にくっ付けてあるネームプレートを指差した。

「認証カードとか書類のサインなどに来たんでついでに」

 ああ、そっか、命の危険のある仕事だからなそう言った書類がたんまりあるもんな。

「そういえば、試験ってどんなことをしたんですか?」

「そうですね、私の場合はこれを使って」

 右手から一本の刀を取り出す、前にもアリアとの一戦で使った刀だな。
 刃は曇りのない銀色で峰の部分がオレンジ色という異彩な刀。
 切っ先が示す方向には……アノ手の本が落ちていた。
 やばいヒスる。

 ドクンッと心臓が波打つ。
  
 思考が一気に回転する。

 ん、刀? 
 なにかが引っ掛かる、あれ待てよ、たしか魔剣は文字通り剣……ああ、そういう事だったんだなアリア。

「蒼さん、ちょっと急用を思い出した」

「そうですか、ではまた」

 そういって階段を下った。


 ケータイでアリアに電話を掛ける。

『なによ、バカキンジ!』

 一発目に怒鳴り声を上げる。

「今、どこにいる」

『え、教室だけど?』

 豆鉄砲を喰らったような声を上げると。

「白雪もいるか?」

『いるけどどうかしたの?』

「ちょっと白雪と科学室に来てくれ」

 ぱたんとケ−タイを閉じた


「で、なんの用なの。大した用でもないなら帰る」

「キンちゃんここに呼んでどうしたの?」

「蒼さんが魔剣の可能性がある」

 緊張感が一気に高まった。

「やっと気づいたの鈍いわね、だから私は蒼をわざわざ部屋まで入れたのよ」

「キンちゃんどういうことなの?」

 白雪が恐る恐る聞く。

「昨日いた蒼さんは一回アリアとバトルしているんだ、そのとき変わった刀を使っていたんだ、ひょっとするとだけど蒼が魔剣じゃないかと思うんだ。ホテルがないと言って白雪に接触を図る予定だったんだ」

「つまり、蒼が魔剣なら願ったり叶ったりの状況なの正直油断していたわ」

 アリアが悔しそうに言った。
 この推測が本当なら、間違いなくアドシアードに乗って白雪を誘い出すはずだ。その時捕まえれば、かなえさんの無罪を晴らせるかもしれない。

「こうなると、蒼はアドシアードに白雪を呼び出すはずだ、それまでの間は安全だろう」

「なんで、そう言い切れるの?」

「確証はないが、蒼さんは非常勤講師としてこの学校に勤務するんだ、教職が白雪を呼び出すときは、担当の綴が出てくるはずだ」

 つまり、蒼と白雪が二人きりになれる時間はほとんどない。

「わかったわ、白雪くれぐれも蒼と二人きりにならないように」

「うん分かったキンちゃん」

 そう言って白雪は教室に戻っていった。

「アリア、少しいいか?」

「ん、どうしたの?」

 アリアは身をひるがえして答えた。

「さっきは悪かったな……」

 アリアはくすっと笑い、

「何してるの白雪の護衛するわよ」

「そうだな」

「あ、そうそう蒼なんだけど……なにかが引っ掛かるのよね」

「イ・ウー関連か?」

「それとは違うのよねなんだっけまぁいいわ」


 ―――――――――――――――――――――― 


 さっきまで屋上でのんきに昼寝をしていた。
 という事はこれは夢?

 そこは木々が生い茂り、太陽が木の間から差し込んでいた。

 だれかの声が聞こえる。振り返ると女の子が居た。ただ、顔が思い出せない。

 あと少しで見えるんだ。

 あと少し。

 あと少しで。

 待ってくれ。


「頼む待ってくれ!! あれ? なんだ夢か」

 冷や汗を掻きながら目を覚ました。
 まわりを見ると夕方になっていた、立ち上がり階段を下った。

「変な夢ですね、さてとキンジさんのところに行きますか」

 欠伸をしながら立ち上がる。
 屋上を後にし階段を下っていると。

「おい、ちょっと待て」

 下を見ると綴がタバコをくわえていた。

「どうしました?」

「お前、教職試験のとき試験管に賄賂したな」

 蒼は片腕を挙げると、

「たしかにやりました、ですがここは武偵校ですよ情報操作なんて普遍なものでは?」

 綴の目つきが変わる。

「目的はなんだ?」

「金ですよ、あと銃撃の練習も兼ねて」

 確かに時期が時期なのだから怪しまれるのも無理はないかな。
 アリアさんを追いかけている時、美人さん名前は、カナだったかな?
 その人に進められて非常勤講師になった。

「たしか、担当は強襲科だったな、今のところはなにも隠してないようだな」

 タバコの煙を顔面にかけて綴はどこかに行った。

「さてと、帰りましょう」


 ―――――――――――――――――――――― 


 授業が終わり、白雪と家路についていた。

「ごめんね、キンちゃん」

「ん、気にしなくていい……そう言えば今日花火大会だっけ?」

 ぱっと浮かんだのがそれだった。異性との会話に慣れていないからな。

「そういえば、クラスの人が誘ってくれたの」

「行かなくていいのか?」

「うん、星伽の巫女は必要最低限の外出しか許されないの、武偵校に行くのにもすっごく反対された」

 お前、まだかごのとりだったのかよ。

「白雪、花火大会に行くぞ」

「え、で、でも……」

「いいから!!」

 白雪の手を強引にとって駅に向かった。


 ―――――――――――――――――――――― 


 蒼は軽く食事を済ませ、のんびりと帰り道をとことこ歩いていた 
 すっかり日は沈み、暗い夜道を一人で歩いて、ときどき通りかかる車に目がくらんだ。


 突然、背中がぞっとした。殺気か?
 振り向いてもだれも居ない。

「なんだ、気のせいか……」

 そう、呟きながら帰り道とはまったく関係ない道を選ぶ。
 曲がり角にさしかかると吐息をついた。

『シュラ・モード』

 一時的に身体能力を飛躍的に上げる能力のようなもの。

 だが残念なことにこの能力は五臓六腑四肢の変化によって大きく能力値が変ってしまう。五臓がのどれか一つでも欠けると、能力発動不可。六腑のどれかが欠けると能力が四分の一になり、痛覚神経の異常発達が起こり体中が激痛に襲われる。四肢がのどれかが欠けると、能力値が変化しないが欠けた部分を。どれも嫌な状態になる。
 ただ一つ例外があるが今はいいか。


  
 道を曲がった瞬間、体を前に倒し跳躍。

 電柱に足を着くと、ぽんぽんと次へ次へと電柱を渡っていく。
 
「もう、いいかな」

 地面に足を置き、能力を解除した。

「お前、こんなんでオレに逃げたつもりか蒼?」

 はっとして振り返ると白目と黒目が逆で、身長は170程度で白銀のびっくりするぐらいの長さの髪、腰の高さまであるだろう。


 バタンと壁に寄り掛かり頭を押さえる。

「おい、大丈夫か!?」

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



 頭の中で映像が再生される。


 それは、さっきの夢の女の子。

 それを両腕で上半身と下半身を掴み引き千切る、腹部からドロリと体液が噴き出す。

 もの凄い耳障りで心地の良い悲鳴が鼓膜をふるわせる。

 まるで子供のように歓喜の笑い声を上げる。

 鏡に映る姿は体中を紅く染め上げていた私

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

 止めてくれ、頼む、誰でもいいオレを殺してくれ。


 オレを殺してくれ。

 このオレを……


 え、オレ?


 ―――――――――――――――――――――― 


「き、キンちゃん、似合ってますか?」

 浴衣に着替えた白雪は、驚くほどキレイだった。
 髪は簪で止め、帯のセンスもいいな。

「よく似合ってる白雪、行くぞ花火終わっちまうからな」

 会話に困りつつ、妙な空気のなかで人口なぎさに到着した。
 時計を見ると花火はとっくに終わっていた。

「あ〜、すまん白雪、花火の時間調べておかなくて」

「いいの、こうして外に出られただけでも十分」
 
 ため息交じりに周りをみていると。
 お、海の家にいいものが売っているじゃないか。

「ちょっと待ってろ」

 海の家で買い物を済ませた俺は白雪のところに戻った。
 買ってきたのは家庭用手持ち花火


 パチパチと音を立てて綺麗な発色を見せ、海の心地よい音が聞こえる。


 そんな花火もあっという間に線香花火の最後一本。

「これで、最後か、白雪やれよ」

「これは、思い出にとっておきたいのだから火を着けないで」

「そ、そうか」

 大切そうに白雪は線香花火を小物入れにしまった。

「ねぇ、キンちゃん、火って好き?」

「火か〜、花火とかなら好きだけどでっかい炎みたなやつは怖いかな本能的に」

「そうだよね、怖いよね……」

 寂しそうな顔で白雪は言った。

「じゃあ、帰るか」




 翌朝、アドシアードはなんの変更もなく始まった

「キンジ、白雪の護衛ちゃんとするのよ」

「俺も受付があるから二十分だけ護衛できない時間がある。それまでにはチアのリハーサルを終わらせとおけよ」

「分かったわじゃあ、またねキンジ」

 そう言ってアリアは身を翻した。

 それから受付の交代までの間白雪の護衛をしていたが一向に魔剣の現れる気配はなかった。
 呆気なく俺は受付を交代しのんびり椅子に座りながらチケットを破っていると。

 血相を変えた綴が走って襟首をつかみ、びっくりした。

「遠山、星伽はどこだ!!」

「どこって、生徒会のテントじゃあ?」

「いないんだよ!! 神崎にも連絡したが遠山が受付の仕事が無いからのんびりリハしててもいいって言ってたぞ、しかも今日に限って黒髪が居ない」

 どういうことだ、俺はそんなこと言っていない。

「まさか、魔剣!!」

 ケータイを取り出しアリアに連絡を取る。

『キンジ、やられたわ魔剣に、さっき魔剣から連絡が来て地下倉庫に来いって』

「分かった今向かう!!」

 時間がない。

 間に合ってくれ白雪。

 俺は全速力で走り出した。


                第二話終わり


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ

 どうも13です。

 今回は最初の方でみんな大好きジャンヌさんがネタバレになっています。
 最初は、副の化け物と蒼くんが超次元バトルを予定したのですが、アニメでまだ出てきていないという噂を聞いたもので、ただでさえgdgdの文章が悪化しています、ご注意ください。 


 コメント返し


 ハナズオウ 殿

 というわけでアリアの世界にあの人たちを放り込んでみました。
 思ゐっきってやってみましたが悔いはありません。

 一応、蒼の敬語はロストコントロールの蒼か違う蒼かを曖昧にさせるという目論見です。

 簡単ですがこれで。
 
 お互い頑張りましょう。


 黒い鳩 殿

 どうも、またしても13です。
 今回はアリアの世界にダイブした蒼とかの話なんですが上手くいくように努力します!!
 
 人称視点の話ですが、
 
 今回は一人称でがんばります。ですが、三人称で書くという癖がまだ残っているのか上手くできないのが現実問題です。早く直したいです。

 最後にかみ合いの話なんですが……

 正直、蒼君に贔屓しすぎました反省しています。自分としては最初でしたし目立たせようと思ったのですが、かえって逆効果になってしまいました。気をつけます。
 次回もがんばります!!


 以上

追伸 2011 07 03 に誤字の修正をしました



テキストサイズ:11k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.