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ロスト・メモリー 第三章 『六道七罪の男』
作者:13   2011/07/07(木) 21:38公開   ID:JHZjjd6HxsM

「キンジここよ、白雪が連れ去れたのはさっき白雪を見たっていう証言もあるし間違いないわ」

 抜かりないな、よくやった。

 そう言ってやって来たのは装備科の倉庫だった。

 ただでさえ広いのに排水口の設備まである。

「開けるぞ……」

 ベレッタを手に取り、扉を開ける。

 一歩づつ音を立てずに移動する。

 中は倉庫なだけあって広かった。暗いのは仕方ない。

「キンジあれ見て」

 アリアが視線を送った先に白雪が居た。
 
「白雪大丈夫か!!」

 白雪の元に行くと鎖に縛られていた。どうやら眠っているらしい。

「起きろ白雪!!」

 アリアが周りを警戒しながらついてくる。

「うう、キンちゃん?」

「誰に襲われた!!」

「蒼さんが来いって……」 

 やっぱり、蒼の仕業か。

 カン、カンと一歩づつ足音が聞こえる。

 白雪を含めた全員が硬直する。


「お前たちかオレの腕を奪ったのは?」


 意を決して体を反転させる。

 やっぱり、そこに居たのは蒼だった。


「なんで、こんなことを――」

「おい、星伽、大丈夫か?」

 白雪にづけづけと歩みより鎖を掴む。
 
 バチリッと鎖が飛び散る。 

「な、なんで助けたんですか、鎖につないだのは蒼さんじゃあ?」

「何言ってんだ、オレは今ここに来たばっかりですよ」

「どういこと、白雪はアンタに襲われたって言ってるわよ!!」

「オレはさっきまで校内をグルグル回っていました?」

 なにかが違う、なんというかいつもの蒼さんじゃない。

「そう言えば蒼さん、風邪ひいたときラーメン作ってくれてありがとうございます」

「それはどうもこちらこそ」

 やっぱりな、蒼さんはラーメンじゃなくて和風リゾットのようなお粥を作ったはずだ。
 ベレッタを構え、銃口を蒼、いいや魔剣に向ける。

「どういうつもりですか?」

「アリア、この人は蒼さんじゃない、魔剣だ!!」

 アリアはそれを耳にした瞬間二丁拳銃を構えバックステップする 

「もう、遅い!!」

 白雪を抱きかかえ魔剣は闇の中に消えて行った。

「待ちなさい魔剣!!」

  
 魔剣を追いかけ倉庫の地下、排水溝に着いた。


 太いパイプのところに白雪は厳重に鍵穴がみっつの南京錠と鎖に繋がれていた。

 ピッキングの器具はあるが時間がかかるな。

 排水口からは魔剣の仕業か水が流れ出していた。

 かなり勢いよく出ててきているな。もって十分か?


「アリア、お前は魔剣を追え」

「で、でもキンジが」

「俺は大丈夫だ、だから早く魔剣を、かなえさんの冤罪を晴らすためにも」

「分かったわまた会いましょう」


 ―――――――――― 蒼 ―――――――――――


 目が覚めた時オレは少しだけ記憶を取り戻した。
 
「オレは黒髪 蒼それは間違いないそういうことか?」

「そうだ、今のお前に知識はいらない必要なのは力だ」

 腰の高さまで伸びた髪を蒼の天龍でバッサリ切り落とし短髪になったシロガネはそう言った。

 話によるとどうやらオレはこの人の弟になるらしい。

 詳しい説明はオレも受けていないからなんとも言えないな。

「そこでこいつを使う」

 ブスッ!!

 なんか刺さったぞ痛て〜。

「何すんだよ!!」

「今のはアドレナリンに似た成分の注射だ普通ならやばい量だがお前なら大丈夫だろう」

 ドックン、ドックン

 身体が脈打つ。

 今なら自分でも分かる、戦いたいと。

 無性に殴りたい、てかイライラしてきた。

 
「……………………………」

「お〜い、大丈夫か?」

「最悪の気分だな――」

 シロガネはニヤリとあくどいを笑みを漏らした 。

 身体を翻しついて来いと手で指示した。


 ―――――――――― キンジ ―――――――――――


 くそ、もう体の半分は浸かり始めてきてるぞ。それなのにまだ一つ目の鍵も解けていない。

「キンちゃん、私はいいから早く逃げて」

 
 カチッ。


 やっとひとつ目が解けたところか。だがこのままだとやばいな……。

 内部が複雑すぎてさっぱり分からない。

「大丈夫だ白雪」

 とは言ってみるものの水位が胸の高さまで来ている。

 クソ、ここまでか。

 こうなったら、仕方ない。

「ごめん白雪」

「え、キンちゃ――!!」

 唇と唇が触れ合う。

 ドクンッ、

 と心臓が高鳴る。

 ドクン、ドクン、ドクン。

 来たか、

 
 ヒステリア・モードが


 深呼吸をしピッキングの金具を残り二つの鍵穴に差し込む。

 ふん、ヒステリア・モードの今の俺なら鍵穴から伝わるかすかな感触で構造が手に取るように分かる。

 三十秒もかからず鍵を解いた。
 
 楽勝だな。こんなの朝飯いや、ベットから起き上がるくらい簡単だ。


「白雪、大丈夫か?」

「うん、大丈夫だけど水が」

 確かにもう首のあたりまで来ているな。
 
 これは急がないと不味いな。

「泳いで、梯子のところまで行くぞ」

「う、うんわかった」


 増え続ける水の中ぎりぎりのところでなんとか、脱出できた。

 間一髪といったところかな。
 

 ―――――――――― 蒼 ―――――――――――


「ここでいいのかシロガネ?」

「まぁな、情報が正しければな」

 シロガネと来たところは武偵校の倉庫だ。いや予感がする。

「じゃあ、行くとするか」


 中に入るとやけに寒かった。

 まるで氷の世界に身を投げたような気分だ。

 そんなことはどうでもいい、今は好戦的な気分だ。

「ところでここになにがいるんだ?」

「ここで、ジャンヌダルクが星伽 白雪をオレたちイ・ウーに向かい入れるべく邪魔な奴を排除しているその手伝いだ」

 星伽、待てよ確かキンジさんが護衛していたのも星伽だったな。


 ……おいおい、こいつはまさかな。


 天龍を片腕で構え臨戦態勢に入る。

「どういうつもりだ蒼?」

 シロガネは目つきを変えてどすの利いた声で聞く。

「悪いな、その子はオレの生徒なんだ、教え子を渡すわけにはいかねぇな」

 それを嘲笑するかのようにシロガネは笑った。

「来いよ、片腕でなにが出来る?」


 『シュラ・モード』


 地面を蹴りシロガネとの距離を一気に縮め天龍の刃を首筋に向ける。


「あめぇぇよ蒼!!」

 
 シロガネは影を使い手に装甲のようなものを構築させ天龍の刃を受け止める。

 そのままシロガネはオレの腕をつかみ腹部に蹴りを三発打ち込み、そのまま投げ倒す。

「ぐっ!!」

 地面に体中を打ち付け鈍い痛みが走る。


 ウソだろ、シュラ・モードで一般人の三倍の力に反応しきれているだと。


 身体を起き上がらせそのまま距離をとる。

「少し舐めたてたな」

 身体の意識を集中させる。


『アシュラ・モード』


 天龍の持ち直し、深呼吸をする。

 そのまま体を前に倒す、

 バキリとシロガネの影の盾が砕ける。
 
 突破されるとは予想にしていなかったシロガネは額に天龍の刃が掠った。

 身体を後ろに倒しバックステップをしながら影を体に纏わりつかせた。

「オレも少し舐めてたな」

「影を似た、質量のないエネルギーを操る能力か……正直驚いた」

「まだまだ、これからだぜ」

 両手を前にだしシロガネは意識を集中させる。
 
 手の先端から黒い液体が零れ落ちる。

 
 その液体が何かの巨大なものを構築し始めた


 オレはそれが剣であることに気づいたのには時間がかかった。

 なぜなら、

 それはあまりに大きく、

 それはあまりに錆びていてボロボロで、

 それはあまりに大雑把な造りで、

 それはあまりに剣というのにかけ離れ、まるで切れ味の落ちたギロチンようでありノコギリでもある。

 それだけでしか説明しようがない。

「この剣の銘は天獄」

 シロガネは五メートルはある天獄を構え射程圏内まで距離を縮めた。

 
 バキリとあまりの大きさに剣が倉庫に立てかけてあった鉄骨に引っ掛かった。


 シロガネとの距離を詰め天龍で斬りかかる。


 ガツンッ!!

 
 と影で攻撃をガードし盾にしていた影を槍状にし突いてきた。

 身体を反り間一髪っていうところか。

 シロガネの腕を蹴り反動で宙返りしながら距離をとる。

 不味い、天獄の攻撃圏内だ。

 天龍を構え天獄の刃を受け止めの体勢をとる。


 バキグチャ!!


 天龍もろとも腕が衝撃で折れる。

 幸い、天龍は無事だった。


「腕が折れてちゃ、勝ち目はないな!!」


 振りかぶり天獄の一撃が放たれる。


 ドクン!!


 それ刹那の事だった。


 ドクン!!


 身体が、いや本能が警笛を上げている。


 ドクン!!


 それは、人間も獣も思うこと。


 ドクン!!


 生きろと


『チクショウ・モード』


 ガンッ!!


 天獄の刃が右に逸れる。

「一体なんだ!?」

 意識が薄れる。

 まるで限界まで息を止めているようだ。

 足先に力を込める。

 一瞬でシロガネとの距離を縮め、右足で腹部を蹴りあげる。

「ヴァァオォォォォン!!」

 オオカミのように遠吠えを上げる。

 自分の身体をみると手足はオオカミのようになり、歯は全部、牙のように鋭くなり、左目はおそらくタカの目になっていた。

「ウソだろ、まさかこんなと時に能力変化だと。ふっ、まあこの世界に来て四年目のお前だ進化していて当然だろうな。もともとそのためにお前を呼んだんだ」

 シロガネは天獄を両手で持つと。深呼吸した。

「これであと四つだ。二段階目のテストご苦労さん!!」

  
 グチャリ!!


 瞬き程度の時間だった。腕に天獄の刃が突き刺さり右腕が落ちた。

 それを刃を伝わせてシロガネがキャッチすると顔面を殴った。


 ―――――――――― シロガネ ―――――――――――


 蒼の腕を斬り落としたわけじゃねえ、この天獄は時空を超越した能力があるそのおかげで腕を取り外すことができる。そんな能力も皇帝前じゃあ無に等しかったがな。

 左腕を斬ったのもオレだ。それが教授との契約、まぁ蒼の能力進化にも役立つだろうと思っただけだ。

 記憶を無くしているのが、左腕は蒼にちゃんと許可を取っている。

 その左腕を輸送していたら事故が起きた。

「ブラド、いつかぶっ殺す」

 奴が奇襲をかけ蒼の頭にあの鉄柱のような金棒をぶつけ、たしかそいつの娘だったのか、ヒルダとかいう奴にオレは電気ショックを喰らい体中麻痺だ。

 そんなわけで立場的にイ・ウーに居られなくなると困るオレは蒼の腕を切り落としたと。まぁ、不意打ちの予定だったんだがな。結果オーライと言いてぇ――


「やめておけ、ジャンヌダルク。命がもったいない」


 振り向くとそこには銀色の髪にブルーの瞳、そして魔剣と思われる剣を携えた美人。ジャンヌダルク。

「なにしにここに来たかの『黒狼のシロガネ』ともあろう人が?」

 黒狼のシロガネか、名前の由縁はおそらく天獄を憑依させたときに四足歩行の黒い狼のような形になるからだろう。

「弟の途中経過とテストといったところだ」

 転がってる蒼を指差した。

 それを見たジャンヌは驚いたと同時に顔をしかめた。

「まさかここに『六道七罪の蒼』がいるとはな。まぁ、その状態じゃ身動きは取れないだろう」

「あと、そろそろ来るぜ」

 そこには低い身長にピンクの髪、カメリアの瞳、たしか神崎・H・アリアだったな。なんだよせっかくかっこよく決めたのに。

 その隣に遠山なんとかと星伽 白雪か。

「動くな!! 全員手を挙げて投降しなさい」

 たしかこの子の母さんが重罪人の冤罪をかけられたたんだっけかな。

「いや、なんでもない。オレはただのイ・ウーのメンバーだ」

「イ・ウーですって!!」

 おいおい、銃なんか向けんなよ怖い怖い(笑い)でもつけておくか。

 遠山は、あ〜、ヒステリア状態かめんどいなおい。

「すまないな、そこにいるジャンヌダルクはともかく、オレは君の母さんの冤罪を軽くすることも晴らすこともできない。あとそこに転がってる蒼はオレの弟だ両腕無いがまだコイツは君よりずっと強い」

「イ・ウーならどんなに下っ端でも罪の一部は償えるはずよ覚悟しなさい!!」

「そうだ!! 実際に調べてみなきゃ分からないだろ!!」

 調べても、戸籍、出身、能力、武器までもが謎だぞ。

 疑う気持ちも分かるがな。

「あ〜もうわかった、ジャンヌ、こいつらの味方してやれ、または捕まれ、じゃないと相手にならない」

「ふん、お前が殺せる時が来るとはな、不本意だが遠山 キンジ、アリア、星伽 白雪この黒狼のシロガネを捕まえるチャンスだ乗るか、乗らないか」

 おいおい、どんだけ嫌われてんだよ。

「アリア、黒狼のシロガネってなんだ?」

「イギリスで超偵四人で束になっても逃げた、男よ」

「てことは、ここはこのジャンヌとかいう奴と協力した方が良さそうだな」

 そう来なくっちゃな。

「話はまとまったか?」

 全員がオレに剣なり銃なり刀なりを向けてきた。

「そうだな、よしこうしようオレの頭になんでもいいから当てたらそこにいるジャンヌに罪の一部を晴らさせるっていうのはどうだ? もしジャンヌが背いたらそんときは」

 親指を下に向けてニヤリと笑った。


「Beginn der Partei」


 と言って先ほど奪った蒼の腕から天龍を取り出す。

 峰打ちにしとくか。

 ふん、銃弾を踊るように避けるなんざ簡単なことだ。

 スッと距離を縮めジャンヌの首元に一撃を加える。まず一人っと。

 
 ダンダン!!


 バク転して銃弾を回避っと。

 その調子で天龍の柄の部分で白雪をゴフッと決める。

 とどめに隣に居たアリアの喉元に刃を当てる。

「なんだ、超偵も大したことないなこれでオレの――」


 ブシュウゥゥ

 
 防火用のスプリンクラーが作動し頭の先から足の先までビチャビチャになった。

「……オレの負けだ。約束どおりジャンヌ身柄はお前に渡す、一応これも渡しておく」

 ポケットから薄い五センチ角の金属板をアリアの胸ポケに入れる。もともとその予定だしな。

「こいつは、無線のようなものだ困ったことがあったら念じるんだな。じゃ帰る」

 
 影に潜りその倉庫を後にした。


 ケータイの着信が鳴る。


「もしもし? わかったよ教授、いやホームズ君オレたちをイ・ウーに入れたのは――」


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■作者からのメッセージ

 先に報告しておきます。

 次回より一人称から三人称で小説を書かせてもらいます。どうも一人称は上手くできないので、慣れている方でやらせてもらいます。
 そして投稿頻度を私情により週一回から二週に一回にさせてもらいます。

 身勝手なことですがご理解をよろしくお願いします。

 大変申し訳ございません。
 
 さて、今回は六巻のネタをほんのわずかに含んでいます。そのほかにも、ネタバレなどもあります。そういうのが苦手な方は回覧をオススメしません。

 そして、強引なところが多々ありますがご了承を。

 コメ返し

 武装 ネコ 殿

 初めまして13と申します以後お見知りおきを。
 今回の話では小説で二巻部分に当たります。

 といいましても随分と内容が変わってしまいましたが一応そこら辺です。

 あと、魔剣は小説からですが蒼とシロガネはオリジナルキャラです。

 お互い頑張りましょう!!


 ハナズオウ 殿

 誤字脱字の指摘ありがとうございました。うっかりミスしてしまいました。
 本編からはかなり脱線し始めてきましたので元ネタのフォローは出来る限りやってみます。

 自分のペースを保って頑張りましょう!!

 
 黒い鳩 殿

 投稿頻度の話をした矢先にこの結果になってしまいました。
 時間が足りなくなってしまいこのままだと質がおちてしまうので……

 キンジにつきましてはルートに入れられるように努力します。
 蒼はまだ少し独走気味でしたか、次回よりも少し押さえてみます。
 まだダブルキャスト、クロスに慣れていないのかなんといいますか……


 あと実は恥ずかしながら、ヘイト作品の境界を知らないのでクロスにしているのですが、ヘイトに近いなら修正を加えようと思います。

 小説に好き嫌いはあるので仕方ないですが。

 次回も頑張ります!!

以上
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