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Chance 第九話「茉莉香の歌への思い」
作者:ひいらぎ 由衣  [Home]  2011/09/10(土) 17:52公開   ID:k1thGKoNjk6
(私の歌が最低・・・?)

私は昨日、SHOWに言われた事を思い返していた

「な、なぁ、SHOWって人・・・そんなに有名な人?」

私は、メンバーの愛蘭に尋ねた

「うん、SHOWさんは、Planetって言うバンドのボーカルでね
ルックスと美声でファンも多いし、何度もいろいろな賞を取ってるんだ」

私より2つも年下なのに、物知りな愛蘭は、笑顔でペラペラと説明をしてくれた

(でも、私の歌のどこがいけないんだ?)

私はそれをずっと、考えている

だが、答えはでない

私は1人で考え込んでいると、優しく透き通るような声でこう聞こえた

「茉莉香?何してるの、そんなところで」

振り返ると、優しそうで落ち着いた表情を見せる裕也がいた

「裕也・・・嫌、昨日SHOWさんに言われた事がどういう意味か分からなくて・・・」

そう言うと、裕也はフッと、目をうつろにしてこう答えた

「茉莉香は、数年前に俺がお守りをあげた日は、歌に対してどういう気持ちだった?」

(あの日・・・私が裕也を初めて好きになった日、あの日は・・・)

『歌が好き、ただそれだけが取り柄だった』

(あ・・・)

私は思い出した

「今は、どう?歌に対してどういう気持ち?」

裕也は厳しいが、優しい眼差しで、そう問いかけた

「私、今は前より歌の事何か、気にしてなかった・・・ただ」

(ただ、歌ってただけだ)

私はやっと気がついた。デビューする前の気持ちに・・・

「よし、偉いっ」

裕也は、私の頭を優しくなでると、満面の笑みを見せてくれた

「ありがとうっ、裕也。私・・・もう1度、やり直してみる」

(あの日のように、楽しく、笑顔で歌えるように)


数日後、とある歌番組に出演することになった

「あぁ!この間の・・・」

兄貴の真斗が指差す先には、SHOWさんと、同じ様な格好をした3人の男がいた

私とすれ違う瞬間、耳元でこう囁かれた

「お前の歌・・・聞く気にもならねぇよ」

嫌味っぽい言い方だったが、私は耐えた

「何だアイツ・・・茉莉香?」

兄貴が心配そうに言うが、私はギュッと抑えた

「ねぇ、トップバッターでPlanetが歌うらしいよ」

愛蘭がポンポンと私の肩をたたき、そう告げてくれた

私は、舞台裏で聞いてみると、それはロックな曲ですごく迫力があった

(すごい、これがSHOWさんの歌・・・)

私は魅せられたのか、その歌にくぎ付けになった

歌が終わり、舞台裏でSHOWが私に近付き

「どうだ?お前よりも遥かに上手いだろ?」

私は、嫌みだったが、そうには聞こえず

「はい、とっても上手でした」

素直に笑顔で褒めると、SHOWさんはカァッと顔を赤くした

私達の出番になり、スタンバイしていると

「どうせ・・・心のない歌だろう」

そんな事をこぼすSHOWさんだったが

曲が始まり、私は小さい頃のように楽しみながら歌った

「!?」

驚く表情を見せるSHOWさん

(歌は、実力だけじゃない。歌が好きという気持ちが多ければ多いほど、人は魅了する。だがら私は・・・歌が好き!)

曲が終わると、客席から大きな歓声が沸いた

舞台裏で、SHOWさんに会うと

「まぁ、俺ほどではないが、よくなったんじゃねぇの?」

素直ではないが、顔を真っ赤にしてそんな事を言ってくれた

「私の事・・・認めてくれますか!?」

身を乗り出し、そう聞くと

「あぁ・・・いいだろう」

小声で、そう言ってくれた

私は飛び上がるように喜んだ

歌う事は簡単な事じゃない。でも、歌が好きという気持ちは、皆一緒だからっ


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■作者からのメッセージ
やっと、認めてくれましたね
SHOWは、すごく頑固者ですが・・・
歌手さんも、大変なのですねっ
テキストサイズ:2700

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