「俺、茉莉香の事が好きだ」
裕也に思いを伝えられずにフラれた私。
そして、SHOWさんの言葉に驚く。
一体どういうことか?SHOWさんが何を言っているかすら分からない。
私は、地面に膝をつけたまま、呆然とする。
すると、SHOWさんは、それに気付いたのか、そう切り出した。
「返事はいつでもいい。くれなくても、別にかまわない」
そう言っている時の目は私をしっかり見ている。
裕也は、さっきの目は何も映そうとしていたなった。
ついこの間まで、気に入られてなかったのに・・・嫌われてたのに・・・。
「家まで送る・・・ほら、立て」
SHOWさんは私に手を差し伸べ、私はその手をギュッと握りしめ、SHOWさんの力も加わった状態で立った。
SHOWさんは帰り道、何も話さなかった。
わざとか、気まずいからなのかは分からないが、ただ無言のままだった。
SHOWさんに、告げられた瞬間、私は頭の中は混乱し始めた。
裕也の事は忘れ、SHOWさんの気持ちを受け入れるか・・・。
(SHOWさんと付き合えたら、楽しいだろうな。ケンカも多いだろうけど、でも、優しい所もある)
揺れ動く、私の心。
その夜は、その事で頭がいっぱいだった。
翌日
「茉莉香ちゃん、どうかした?また元気ないけど・・・」
この日も休みで、メンバーで裕也の姪の愛蘭と街をブラブラしていた。
愛蘭は、心配そうな表情で私を見る。
「何でもない・・・」
そう答えた。愛蘭にこれ以上心配はかけられない。
「その顔・・・さては、叔父さんと何かあったな」
見抜いたような顔で、言う愛蘭。
(やはり、愛蘭にはウソはつけないな・・・)
そう確信し、私は昨日あった事をすべて話した。
裕也の事、そして、SHOWさんの告白・・・。
「へぇ、それは大変だったね」
一気にテンションが下がる愛蘭。
「で?どうしたいの、茉莉香ちゃんは・・・」
「分からない。いろいろありすぎて、頭がパンクしそう・・・」
うつろな目をする私。
愛蘭は、それを見てか、こう言った。
「そっか・・・まぁ、ゆっくり考えればいい。茉莉香ちゃんは、どれだけ叔父さんが好きだった?」
愛蘭は、妙な疑問を投げかけてきた。
「どれだけって・・・」
すごく好きだ。言葉には表せる事が出来ないほど・・・。
数年前、裕也にもらったお守りは今でも、愛用のバッグに付けている。
いつも笑ってくれる、助けてくれる・・・。優しい・・・。
「本当に好きなら、ちゃんと、面と向っていいなよ」
私は、今まで、混乱していた頭の中が整理された。
やっぱり、裕也が好きだ。SHOWさんは、尊敬する先輩として好き。
だから・・・。
「ありがとう、また背中押されたな」
私は、愛蘭に笑ってみせると、愛蘭は安心した表情になった。
数日後、事務所へ行くと、まずSHOWさんに会った。
「茉莉香?どうしたんだよっ」
いつもと変わらないSHOWさん。あんな事があったなんて思わせない態度。
「SHOWさん、この間の事なんだけどね・・・私、考えたの・・・
私・・・やっぱり、裕也が好きです。だから・・・」
そう言うと、SHOWさんは壁を両手でバンッと叩いた。
そして、深呼吸をして、私に背を向け、こう言った。
「あーぁ、バカみてぇだな。俺
こうなる事くらい分かってたくせに・・・自信ありげに・・・カッコ悪りぃな」
おチャラけた口調で言うが、その背中は泣いているようにも見えた。
「カッコ悪く何か・・・ありません
私、SHOWさんのおかげで、救われた・・・ありがとうございます」
見えてはいないが、私は満面の笑みを浮かべ、お辞儀をした。
SHOWさんは、それに答えるかのように振り返り。
「お前、あのバカに今度こそ言えなかったら、承知しねぇからなっ」
わざと意地悪な顔をするSHOWさん、私にとっては嬉しかった。
1時間後、SHOWさんと別れ、裕也が私の前を通った。
「裕也・・・あの・・・」
私は声をかけたが、無視をする裕也。
「待ってッ!どうして避けるの!?」
私は、そう言ったが、やはり立ち止らない。
だが、私はめげずにこう言った。
「私の事嫌いなら、どうして、優しくするの?特別扱いするの!?こっちだって勘違いするじゃんッ、あのお守りだって・・・私」
すると、反応したのか、裕也が足を止めた。
だが、無言のまま振り返ってくれない。
「好きになるじゃん・・・裕也の事・・・好きになっちゃうじゃんッ!?」
私は今まで心のうちに秘めてきた事をすべて言った。
目の奥が熱くなり、手が震えだす。
裕也も、ようやく振り向いてくれた。その目には涙が・・・。
「裕也?」
意外な反応に驚く私。
「・・・ッ俺、姉さんを殺した・・・」
突然、そんな事を言い出す裕也。
(どういう意味?お姉さん・・・)
「16年前、姉は愛蘭を産んですぐ死んだ
理由は、出産だった。姉は病弱で、何度か入院をしていた・・・
なのに、俺は『産みなよ』って言ってしまった。産むか悩んでいる姉に・・・」
頬に零れおちる涙を手で拭いながら、少し鼻声で話す裕也。
私は、号泣しているのだと、察知した。
「裕也のせいじゃないッ!それに、愛蘭が生まれてなかったら、私は・・・
周りの人だって、未来が変わってたッ、お姉さんも後悔してた・・・だから」
必死に、慰めようとする私。同情なんかじゃない。
「茉莉香・・・俺は、幸せにはなれない。誰かを不幸にするだけと、思っていた。
そんな時に、茉莉香が現れて・・・小さくて暖かくて、無邪気で・・・
今は、すごく綺麗になっていたッ、大人になっていた・・・だから、俺は・・・」
その先は、泣きすぎて、言えない状態。
でも、分かる、何となく・・・裕也の気持ちが・・・。
「裕也・・・ありがとう・・・私、嬉しい」
私達は、数分間、ずっと泣き続けていた。