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ショコラ・ノワール フォンダンショコラ 情念の炎
作者:ひいらぎ 由衣  [Home]  2011/09/20(火) 11:39公開   ID:k1thGKoNjk6
2月14日 バレンタイン

私、富永ミオは、雪がサンサンと振る中、親友の藤田マキと模試の奥にある噂の願いの叶うチョコレート屋を探した。

地図にも載っていないため、探すのに1時間以上もかかってしまった。

私は、プロのスケート選手で、いつも茶髪の髪をサイドで結び今日は肌寒いのでコートを着て、スケートシューズ型のリュックを背負っていた。

「ついたぁ!ここよ、ショコラ・ノワール!」

ようやく見つけ、店はチョコレート色の屋根にお城のような古い洋館。

店に入ろうとしたが、門に不思議な文字でクローズド、閉店と言う看板がかかっていた。

「ウソーッしまってる!なんとか入れないかなッ」

私は、門をガチャガチャいじりはじめた。

「やめなよ、ミオー」

マキは、私と同じ、スケート選手で、ストレートの髪を下ろし、マフラーをしてコートを着てる。
私と、似たようなスケート型のバッグを持っていた。
マキは大人しく、優しい。

「信じられないッバレンタインなのに、閉まってるなんてッ」

私は、少しイライラした。

「ここって噂のチョコレート屋でしょ?」

マキは私に尋ねた。

「知ってる?ここのチョコって食べると何でも願いがかなうんだよ!」

私は、誰かにあげるんじゃなくて、自分のために買うために来た。

「それって、何か怪しくない?」

あまり、噂とかを信じないマキは不思議そうな顔をする。

「えー、楽しいじゃんッマキも享さんとの仲願っちゃいなよッ」

マキは、同じ男子スケート選手の稲場享さんの事が好き。

私は、少しからかうように言った。

「えッ私はいいよ」

マキは、頬を赤らめ、首を横に振った。

私達は、店が閉まっているため、楽しく話しながら帰っていった。

すると、店の中で、チョコレート色のレース状の上着に寝間着を着た
美しい少女が、窓から私達事を覗いていた。

「15人目・・・今日来たお客の数よ・・・カカオ」

少女は、足元にいる三日月色の瞳をした黒猫に話しかけた。

「誰かと両想いになりたい。そんな同じような願いばかり、あまりにつまらないからバレンタインは店を閉めることにしているの」

深くため息をつく少女。

「でも・・・彼女達は面白いものを持っていそうね―――・・・」

少女は、帰って行く私達を見るなり、フフッと笑った。


翌朝、私はスケートリンクでアクセルの練習をしていた。

だが、タイミングが合わないのか、どうしてもコケてしまう。

すると、コーチに呼ばれ、行って見ると・・・。

「ミオ、今のシーズン、享とペアを組みなさい
お前は今、伸び盛りだから、男子トップの享と組めばもっと良くなるぞ」

享さんは、黒い少し長髪で、キリっとした整った顔立ちをしている。

私は享さんとアイスダンスでペアを組むことにした。

だが、マキの事が気にかかった。

「私がペア組んじゃってゴメンね」

私は、少し申し訳なさそうにマキに言った。

「謝ることないよ・・・そうだ!私、ミオのマネージャーやるわッ」

マキはポンと手を叩くと、そう言ってくれた。

「これからミオの練習は全部つきあうわッ」

私は、嬉しかった。マキは本当にいい子だ。

私は享さんと、アクセルの練習をした。だが、どうも上手くいかない。

「回転数は足りてんだ。俺と練習してりゃ飛べるようになる!」

その享さんの言葉に勇気づけられた。

「ミオお疲れ」

マキがニッコリ笑ってくれた。

「享さんとすべるとやる気もらえちゃうッ」

そう口をこぼすと、マキは一瞬恐ろしい形相をした。

「そうだ、今日残って練習しよッ」

そう提案してくれた。マキは本当にいい子だなと思った。

夜、残ってアクセルの練習をしていると、転倒し、足首を変な方向に曲げた。

だが、マキは何ともないと、言った。

その後も、1週間同じようにアクセルの練習をしていると、ひねった足首がはれ始めた。

「さッ今日も頑張ろう」

マキが、言った。

「今日は・・・いいよ。足痛いし」

私はそう言うが、マキは大丈夫と言い、私は今日も練習をした。

何回も何回もし続け、もう足に感覚は残っていない。

「さぁミオ、もう1回」

今まで成功した事はない。マキのためにも頑張れなくては・・・。

そう思い、回転をすると、着地に成功した。

「―――ッあ、ぁぁああ!?」

しかし、足に激痛が走り、私はその場でうずくまった。

救急車で運ばれ、診断は疲労骨折だった。

「無茶な練習のしすぎだッ一体誰がこんな練習を・・・」

医師は、当分はスケートをするなと言われた。

「ミオ・・・大丈夫?しばらくスケート出来ないんだって・・・?」

私は悲しみのあまり、マキに泣きついた。

「わぁぁぁあああ、マキ―――ッッ」

すると、マキはクスクス笑い始めた。

「よかった、やっとケガしてくれて・・・私、ミオにケガしてほしくて、練習させてたの・・・」

私は意味が分からなかった、すると、マキはケガした方の足を蹴った。
私は痛みで倒れた。

「あんたなんか大嫌い、享さんとペアを組みなんて絶対に許さない」

マキは、今まで見た事のない顔つきで帰っていった。

すると、享さんが病院に駆けつけてくれた。

「ミオ!!」

(あんなにいい子だと思ってたのに・・・許せない、マキにも同じ目にあわせてやる・・・ッそうしないと気が治まらない・・・ッ)

私はふと、あのチョコレート屋を思い出した。

「享さん・・・連れて行ってもらいたいところがあるの・・・」

私は享さんと一緒にあの店に行った。

「今日は・・・開いてる」

門があいていた。

「ミオ・・・なんなんだ。この店・・・」

不思議そうな顔をする享さん。

「ここは願いの叶うチョコレート屋・・・いらっしゃい。私はショコラティエの哀川ショコラ」

店の中には、ダークチョコレート色をしたショートドレスと着ていて、
レースや飾りがたくさんついている裾の広がったドレス。
例えるとしたらフランス人形だ。腰まである紫色の髪は夕闇のようで美しい。
ふし目がちの瞳は、夜のようなブルーでとても神秘的。
長いまつげが陶器のような白い肌に影を通す。
歳は私より、2つ3つは若いが、とても落ち着いた雰囲気を漂わせる。

中には、真ん中に大きなテーブル。壁沿いには高い棚が一面に並んでいる。
どの棚にも、たくさんの種類のチョコレートが飾ってある。
「さぁ・・・あなたはどんあチョコレートをお望み?」

少女は、不気味な笑顔で私に問いかける。

「憎い相手がいるの・・・」

私の願いは決まっていた。

「ミオ!?」

享さんは、気付いたのか、慌てた顔をした。

「だって、マキの事が許せないんだもの!?」

「では、この情念のフォンダンショコラはいかが?
マグマのようなショコラが憎い相手を不幸へ突き落すわ」

差し出したのは、柔らかそうな生地に暖かそうなチョコレートが零れる、チョコレートケーキ。

「私のチョコは高いわよ。ただし、代償として、あなたの大切なものをいただくわ」

少女は、私にそう言った。

「私は、マキに復讐してやるんだから!!!」



1年後、私はリンクに戻っていた。

私は、享さんとペアでショーをすることになっていた。

だが、1年もスケートが出来なかったため、アクセルは出来なかった。

だけど、享さんは笑顔で、私を滑ってくれた。

私は、その笑顔に答えるとように最後まで笑顔で踊った。

その頃マキは、森の奥にいた。

「憎い・・・あの子が憎い・・・きっとあの店のチョコを食べたんだわ」

涙をこぼしながら、あの店に足を踏み入れた。

「いらっしゃい」

あの少女はマキを迎え入れた。

「チョコを・・・チョコをください。ミオが食べたのと同じチョコを・・・」

マキはこわれたかのようにそう繰り返す。

嫉妬と執念がマキを狂わせる。

「ミオさんと同じチョコレートでいいのね・・・」

少女は二ヤリと笑うと、マキにフォンダンショコラを渡した。

マキは、貪り食うように手で食べ始めた。

「あいつを不幸にしてやる・・・憎いあいつから享さんを奪ってやる」

ガツガツ店の隅で食べるマキの背後から少女は。

「嫉妬にくるう卑しい者・・・黒き闇に堕ちて行きなさい・・・」

少女は高く手を振り上げた。



ショーの会場でマキと私は遭遇した。

「あんたから享さんを奪ってやるわ・・・すべて私の思うままにしてやる」

マキはそう言うと、ニヤニヤ笑いながらリンクへ向かった。

今回は、マキも享さんとペアを組んでいた。

途中まで観客の歓声に包まれ、ミスなく進めていったが、突然、マキの足が変な動きをし始めた。

「何これ・・・足が勝手に・・・止まらない!!止まらないわ!!」

すると、観客席であの少女がクスクス笑っていた。

実は、1年前

「どうなってもかまわない!!」

私は泣きながらチョコを食べようとしたが、享さんが止めた。

「いいのか?お前は練習中大変だったけどいきいきしてた
お前、スゲェ輝いてた。これ以上、俺の好きなミオをおとしめるなよ」

享さんの言葉に落ち着き、享さんの胸で泣いた。

私は結局、チョコは食べていない。



「誰か・・・誰か助けて!享さん助けてッ足が止まらないの・・・」

勝手に体がリンクを動きまわるマキは泣き叫び。

「いやぁぁぁあああ!!」

少女は、青緑色のガラス製の小瓶を手にし。

「お代にいただいて行くわね・・・あなたの自由な体・・・」

少女は、クスクス笑いながら会場を去っていった。


数ヵ月後、私達は練習中の休憩に話していた。

「マキ・・・もうリンクに戻ってこないのかな?」

私が享さんにそう訊ねた。

「この間のショーで数人がかりで押さえつけたらしぃよ」

この日の練習で私はアクセルに成功し、享さんと笑顔でハイタッチをした。

『尽きる事のない欲望の炎、満たされない心の闇をチョコレートが甘く惑わす』

あのチョコレート屋の少女がどこかでまた微笑む。

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ハウズオウさん

感想ありがとうございます

今回は、主人公の描写もしてみました

今回は、主人公はチョコを食べていません・・・。

女の執念は怖いものですね・・・

描写もこれでも、結構増えました(?)

店の描写も増やして見ました

前回登場したスティックチョコレートは、原作者によると

道に迷った時に棒を倒して決めたりするから棒状のこのチョコレートにしたとか

サクッとした触感は、中に棒状のビスケットが入っているからだそうです

次回も、頑張りますのでよろしくおねがいします
テキストサイズ:7704

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