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ショコラ・ノワール レッドチェリーチョコレート 零の記憶
作者:ひいらぎ 由衣  [Home]  2011/09/26(月) 09:53公開   ID:/dRxfOtg52o
『お父さん、お父さんのチョコレート大好きよ・・・お父さんも大好きよ・・・』

私、哀川ショコラは、父の夢を見て、そこで目が覚めた。

ベッドから、起き上がると、黒猫のカカオが私の膝の上に乗った。

「カカオ・・・昔の夢を見てしまったわ・・・」

(私の父は非凡な才能に恵まれた。壮絶な人だった―――・・・)


10年前

「関東製菓コンクール優勝者は・・・哀川秀我さん!」

私の父は、私と同じ夕闇のような紫とブルーの瞳。

父は懸命な努力で、賞まで取るほどのショコラティエになった。

「お父さん、おめでとう!」

当時の私は、幼く、父と父の作るチョコレートが大好きだった。

「ショコラ!来てくれたのかッ」

父は私が来た事に大喜びしてくれた。

「おめでとう哀川くん」

父に話しかけたのは、白髪でひげを生やした老人で父にチョコレートの作り方を教えてくれた椎堂先生。

「師である私をおさえて、優勝するとは、成長したものだな」

ニッコリ笑ってくれる椎堂先生。

「えぇ!本当に簡単に勝てましたッだって、私以外のチョコレートは駄菓子みたいなものでしたから」

父のその言葉に、きつい眼差しの椎堂先生。

「ふ・・・はは、なかなか言うものだな。そうだな、私も、もっと努力しなくては」

そう笑ってくれていたが、父がいなくなると、顔を変えた。

「哀川め・・・若造がいい気になりおってッ」


数日後

「ウチには『クリオロ種』は入荷しない!?どういうことだ」

電話をする父、それは慌てていた。

「お父さん、どうしたの?」

「ショコラ・・・私のチョコレートの原点の幻のカカオ豆のクリオロ種が手に入らなくなった。あれがなきゃ、私のチョコは作れない」

私は、慌てて、カカオ豆を扱っている店へと走った。

「幻のカカオ豆?そんなものないよ、あっても、君の店には売れないんだ」

お店の人は、そう言って聞いてくれない。

「あの・・・このチョコレート食べてくださいッお父さんが最後のカカオ豆で作ったんですッ」

私は、粒状のチョコレートを渡し、お店の人が食べた。

「何て、濃厚なチョコレートだ!さすが、哀川秀我!
だが・・・君の店には売れない・・・」

どうやら、椎堂先生がウチの店にクリオロ種を売るなと言ってきたそうだ。

私は急いで家に帰った。

「お父さん大変!椎堂先生がお父さんの邪魔をしてるの!」

すると、父はチョコレートを手にニヤリと笑った。

「お父さんそのチョコレートどうやって作ったの!?」

私が父に尋ねた。

「他の二種類のカカオ豆をブレンドして作った・・・見ろ!このレシピ本を!
中にはカカオ豆のブレンド方法を書いた本もある。すべて、私が書いた本だ
これさえあれば、私は無敵だ‼」

部屋には無数の本があった。

(お父さん・・・何だか様子が変だわ・・・)

すると、椎堂先生が窓の外からそれを見ていた。

「チッしぶといな・・・でも、レシピを燃やしてしまえば・・・」


その夜、私達はあまりの熱さに起きると、家中が炎に包まれていた。

「冗談じゃないッ私のレシピが・・・‼うわぁぁぁあああ」

父は書斎へ行き、炎が顔に燃え移った。

「お父さん‼」


その後、父は顔に大火傷をし、フランス人の祖父が残した館に身を寄せた。

「これではダメだ‼こんなものただのチョコレートだ」

「お父さんッ寝てなきゃだめよ」

父は何度言っても、キッチンでチョコレートを作り始める。

このころから、父はどんどんおかしくなっていった。


そして、ある夜、私がランプを手に館を歩いていると。

父は、部屋でチョコレートを何かの形に床に塗り、ブツブツ言っている。

(何をやっているの!?あれは何?)

「さぁ、黒き闇の淵より出でよ・・・」

そういうと、銀色の髪に三日月色の瞳、チョコレート色をした服で、歳は二十歳前後の青年が現れた。

「俺を呼んだのはお前か」

青年が言う。

「あぁ、私に究極のチョコレートを作る力を与えよ・・・‼」

父は不気味な笑顔でそう言った。

「いいだろう、だが、そのためには生贄がいる」

(生贄・・・まさかあれは・・・悪魔!?)

私はランプを落としてしまい。それで父に見つかった。

「そうだ・・・ショコラお前がいい。お前の生き血をよこすんだ」

父は私に歩み寄り、私は逃げた。

書斎で机の下にもぐりこみ。

(ウソよ・・・あんなのお父さんじゃない。私を生贄にするなんて‼)

「見ィつけた」

父が私を覗き込んだ。

「きゃぁぁぁあああ!?いやよ・・・お父さんッ」

父は私を引きずり、キッチンで包丁を手に私の腕に近づけた。

「お父さん・・・私、お父さんが大好きよ・・・お父さんの作るチョコレートも大好きよ・・・」

私は泣き始め、父は我に返り。

「ショ・・・コラ・・・う・・・うぅぅ・・・うわぁぁぁあああ!?」

父は倒れ、ピクリとも動かなくなってしまった。

「お父さん‼お父さん‼お・・・おと・・・お父さあぁん!?」

私は父のもとで、泣き叫んだ。

「やっとくたばったか・・・」

椎堂先生が現れた。

「火事を起こしても何をやってもくたばらなかった・・・やっと・・・やっと死んでくれた・・・‼やっとこの危険な才能がこの世から消えた」

椎堂先生は笑った。

「まぁ、君も行くところがなければ、ウチの店へ来るといい。
君一人くらい私が養ってあげよう」

そういうと、館を出て行った。

「残念だかその必要はない・・・父が死んでのうが契約は変わらない
お前の魂を今ここで俺がいただく」

青年が、私に近寄る。

「いいわ・・・でもそのかわり、お父さんにあげるはずだったチョコレートを作る力・・・私にちょうだいッ私が父の遺志を継ぐわ・・・‼」

私は決めた。父のためにチョコレートを作ると。

「いいだろう、究極のチョコレートが出来た時、お前の魂をいただく」

青年は私に手をかざす。

「お前には人の心のエッセンスを抽出する力をやろう
嬉しい心、哀しい心、野心、欺瞞・・・人の心は無限の可能性がある
その心を調合する魔の力・・・お前は今から黒い魔女、ショコラ・ノワールだ」

私は白い光に包まれ、手を振り上げると小さな美しい光が父から出る。

「これが父の心・・・綺麗」

私はその小さな光を手にした。

「憎悪の心だ。自分をここまで陥れた者へのな・・・父の無念を晴らせたくば、その心を調合したチョコレートを作ればいい。それがお前の願いならば」


数年後

「クソッ憎き哀川をこえるチョコレートが作れない
あぁッ最高の美味なチョコレートに巡り合って見たいわ・・・ッ」

椎堂先生がそういうと。

「その願い私が叶えてあげましょう」

現れたのは、マントを着た人物。

「駆け出しのショコラティエです。先生のために食べた事のないチョコレートを作ってみたました」

差し出したのはトレーいっぱいのレッドチェリーをビターチョコレートの中に付け取り出し、冷やし固めたチョコレート。

「これは美しい・・・」

椎堂先生は、カリッとチョコレートを食べた。

「これだよ!私が食べたかったのは‼すばらしいショコラティエだよ、君は・・・
この喉を焼けつくすような甘さ・・・なッ」

椎堂先生の喉から炎が出る。

「アナタが食べたのは父の無念の入ったレッドチェリーチョコレート
心のエッセンスは何よりもおいしいでしょう?」

青年も現れ、マントの人物はマントを脱ぎ、現れたのは成長した私。

「私はショコラティエの哀川ショコラ・・・人を踏みつけ上に立つごうまんな者
黒き闇に堕ちて行きなさい」

「ぎゃぁぁぁあああ」

椎堂先生は気がつくと、炎は消え目の前には弟子がいた。

「あの・・・僕が作ったチョコレート・・・食べてくれませんか?」

弟子はチョコレートを差し出す。

「あ・・・あぁ・・・味がしない・・・」

椎堂先生は呆然とする。

「どうした事だ‼私の下はどうなったのだッまるで・・・砂を食しているようだ」

何度食べても同じだ。

「なぜ、何の味もしないんだぁぁあああ」

「いただいて行くわね・・・あなたのすぐれた味覚」

私の手には、別の小さな光があった。

「憎悪の心は美味いな・・・でもこれでは究極とは言えない
究極にふさわしい心がどこかにあるはず」

青年は、チョコレートを食べながら、ニヤリと笑う。

「私はそれを集めて見せるわ」

「お前を生かしておくのも面白そうだな・・・チョコレートの悪魔カカオが猫の姿をまとい、お前の行く先を見届けてやる」

青年は、黒猫の姿のなった。それは、カカオだった。


数年後

「ショコラ、これからも、美味いチョコを頼むぜ」

カカオは「ニャー」と鳴く。

「そうね・・・」

すると、店に誰かが入ってきた。

「あの・・・ここが願いの叶うチョコレート店ですか?」

そう尋ねる女性。

「いらっしゃい、どんなチョコレートをお望み・・・?」

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■作者からのメッセージ
13さん

チョコレートにトラウマですか・・・

私も、なぜかチョコを一口食べただけで、鼻血を出した事はあります(汗)

今回は、ショコラの謎が暴かれましたね

私は、頭がよくなるチョコレートが食べたいです

原作では、いつか出てきたと思うのですが・・・

次回もよろしくお願いします
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