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ショコラ・ノワール チョコレートマカロン 凍てついた時間
作者:ひいらぎ 由衣  [Home]  2011/10/06(木) 17:39公開   ID:/dRxfOtg52o
夏の暑い日だった。

「クーベルチュールチョコレートを細かく刻み、温度調節を丁寧に・・・
そして、心のエッセンスを一滴・・・これで、願いの叶うチョコレートの完成」

とある、チョコレート屋で、美しいショコラティエがチョコレートを作っていた。

すると、カランと店のドアが開き、ショコラティエがそれに気付いた。

「あら、お客様がいらっしゃったようね―――・・・」


「ねぇご存じ?森の奥には、願いの叶うチョコレート屋があるんですって
ねぇあやめさんも気になりますよねッ」

友人が、そう私に問いかける。私はいじっていた携帯を置き、こう答えた。

「私には、必要ないわ。だって、私には願いなんてないもの」

私は、英あやめ。私が通う学園の理事長の一人娘。

私は、教室の椅子に座り、足を組み、サラッと腰まである長髪を靡かせ、父親譲りのつりあがったキレ目で、皆を見た。

私に逆らう人などいない。だって、私はこの学園の女王だから・・・。

「あっ、亮一!」

教室から出て行く、一人の男子生徒、名前は亮一で、私の恋人。

顔は、りりしく美しい。少し長めの黒髪が特徴的だ。

「亮一、今日、ショッピングつきあってよ」

「悪ぃ、今日バイト」

笑顔で、ゴメンと言う亮一。この頃バイトばかりで、なかなか遊べない。

「欲しい物があるんだ、じゃなッ」

そう言って、手を振り、去っていく。

(顔がいいから、付き合ってるけど、退屈でしょうがないわ)


放課後、私は、学園の生徒会長もしている。林間学校の会議が行われた。

「委員会を始めます、まずは、来週の林間学校についてですが・・・」

仕切るのは、クラスメイトの美樹。茶髪のおかっぱ頭で、顔は可愛らしい。

だが、気が弱いから、よく私は、美樹の事をいじめている。

「あっ、もしもしケンジ?今?平気よ、すぐ行くから、荷物持ってよね」

電話で、男友達と話し、会議室を出ようとした。

「あ、あの会長、会議は・・・きゃッ」

私は、そんな事を言う美樹に本を投げつけた。

「うるさいわねっ、あとはあんたらで決めなさいよ」

そういい、私は会議室を出た。

「うっげー、なんだあれ、女王様かよッしょっちゅう違う男と遊び歩いてるし」

男子が、不機嫌そうな顔で、私に聞こえないように悪口を叩く。

「亮一君、かわいそう・・・」

美樹がボソッと呟くと。

「えっ美樹ってば、亮一君の事・・・」

私は、髪留めがないのに気付き、取りに戻ってきた。

すると、会議室のドア越しから、こんな声が聞こえた。

「でも実際、亮一と会長は不釣り合いだよッ
美樹の方が可愛いし、優しいから、お似合いだよッ」

私はその言葉に、怒りがこみ上げてきた。

(何よそれッ私が亮一と付き合ってるのよッ)



私は、帰り道、亮一と美樹が二人で帰っているのを見つけた。

それは、すごく楽しそうで、亮一は私に見せない顔をしていた。

(何で、あの二人が一緒にいるの・・・!?)


「あやめッ今何時だと、思ってる!」

大きく綺麗な、自分の家に着くと、厳格な父が怒鳴った。時計は、夜の8時を差していた。

「買い物してただけよ」

「毎日ほっつき歩いて・・・しばらく外で反省してろ!」

私は、外に出された。すると、後ろから、聞き覚えのある男の声がした。

「あやめ?まーた、親父さんとケンカか?」

バイト帰りなのか、疲れた顔をする亮一がいた。

「あんなには関係ないッッ」

私は、恥ずかしさで、つい怒鳴ってしまった。だが、亮一は、怯むことなく笑顔だった。

「そーいや、俺が告ったのも今日みたいに親父さんにしかられた日だったな
すげぇ泣きそうな顔しててさ、思わず、告っちまった」

懐かしそうに語る亮一。

「そんな昔の事忘れたわ。それよりどこにいたのよ」

「バイト帰り、美樹にあって家まで送ってたんだ。すげぇいい子だよな美樹って」

私はその言葉に、頭に血が上り、地面の雑草を亮一に投げつけた。

「うわっ!?」

「涼しい顔して、よくも私をコケにしたわね!アンタの顔なんか見たくもない!」


林間学校当日、はんごうの準備をしている中、私は森の中を歩いていた。

後ろには、無言で亮一が付いてくる。

「何付いてきてんのよ!」

「だって、心配だし・・・あのさぁ、昨日から何怒ってんだよ」

私は、美樹の事を言おうとした時。

「亮一君ッ、どこに行くのー、このサボり」

美樹が現れた。美樹はベタベタと亮一にボディータッチを繰り返す。

(私の亮一に・・・うっとうしいこの女)

私は足元を見ると、小さな崖になっていて、落ちれば、骨の一本や二本は簡単に折れる。

(そうだ・・・この女、ここから突き落としてやる。私がフラれるなんて、そんな屈辱許さない!)

すると、私は何もしていないのに、美樹が崖から落ちた。

「きゃああっ」

「美樹ッ!」

亮一は美樹を庇い、二人で落ちた。

「大丈夫か?美樹ッ」

美樹は嬉しそうな顔をしている。

(この女・・・っわざと落ちたのね・・・!)

私はそう確信した。

「亮一ッその女わざと落ちたのよッ絶対そうだわ!」

「ち、違います・・・」

「違わない!」

すると、亮一がこう言った。

「やめろよっ、美樹は関係ないだろ?」

その言葉に私は、怒りに身を任せ、森の奥へと走って行った。

(何よッ私の彼氏のくせに、あんな女の味方をするなんて・・・)

「ふざけんな!あいつら・・・帰ったら、ただじゃおかないわ・・・」

すると、私はある事に気がついた。

「あら・・・ここ・・・どこよ・・・!」

見渡す限り、同じ様な木は並んでいる。どこから来たなんて分からない。

すると、目の前に、チョコレート色をした屋根の洋館を発見した。

「何ここ洋館?・・・じゃないわ店?」

不思議な雰囲気を漂わせる洋館に引き寄せられていく。

「いらっしゃい、願いの叶うチョコレート屋
ショコラ・ノワールへようこそ・・・私はショコラティエの哀川ショコラ」

振り返ると、ダ―クチョコレートのような色のショートドレスで、飾りがたくさんついている。紫色の長い髪で、ブルーの瞳、顔立ちはとても美しく。
歳は自分と、差ほど変わらない少女。

「暑かったでしょう、どうぞ、店内へ・・・」

中へ入ると、外とは違い、ひんやりと涼しい。チョコレートの香りが食欲をそそる。中は棚や大きなテーブルに、チョコレートがたくさんある。

「ずいぶん、空調がきいているのね」

「湿度20度を保たないと、チョコレートはダメになるの」

だが、天井を見ると、クーラーが一つもない。不思議に思っていると。

「さぁ、あなたの願いは?」

「特にないわ・・・お金もあるし、不自由はない・・・でも、今日の一日は屈辱的だったわ・・・あの二人にコケにされるなんてッ」

そうブツブツ言っていると。

「今日の時間を取り戻してあげましょうか?」

少女は、ニヤリと笑う。

「では、時間を戻す。チョコレートマカロンをどうぞ・・・
ただし、お代にあなたの一番大切な物をいただくわ。私のチョコは高いわよ」

タワーのような、オブジェに付けられ、チョコレートのメレンゲでチョコレートクリームをサンドしたマカロン。

「ずいぶん偉そうな態度ね・・・そうね、私の大切なものは携帯ぐらいかしら?」

携帯を差しだすと、少女は、不機嫌そうな顔をする。

「これでは、お代にならないわ。あなたの一番¢蜷リな物じゃないもの」

私はその態度に腹を立て、強引にマカロンをタワーから奪った。

その瞬間タワーは倒れ、足元にいた黒猫が私を威嚇する。

「1個いただいて行くわ、携帯はあげるわよ」

私が去った後、少女は笑いながらこう言った。

「愚かな人間・・・この間やってきたお客様が言っていたのは、きっと彼女ね
時をかけるごうまんな者・・・黒き闇に堕ちて行きなさい」

私は、マカロンを食べると、視界が不思議な空間になり、体がバラバラになる。

(な・・・にこれ・・・)


「あやめ・・・おいあやめ!いつまで寝てんだよ、バス付いたぜ」

目の前には亮一がいた。バスを降りると、みんなはんごうの準備をしている。

(時間が・・・戻ってる―――!?)

だが、その後、先ほどと同じ様に、森の中を歩き、美樹に遭遇する。

(やっぱり、あの二人にコケになされる結果には変わりないんじゃない!
冗談じゃないわ・・・あんな未来と同じにしてたまるもんですか!)

私は、ふと思いついた。自分があの小さな崖から落ちれば、亮一は助けてくれるはず・・・。

「きゃあッ」

私はわざと、崖から落ちた。

「あやめッ!」

思惑通り、亮一は私をかばい、落ちた。

「亮一・・・ありがと・・・亮一・・・?」

すると、手に生温かい感触がした。見ると、血だった。

亮一は、太めの木の枝に右胸を差されている。

「亮一!亮一しっかりしなさいよ!」

苦しそうにうずくまる亮一。

「あやめ・・・無事か?ゴメン・・・こんなことになるんだったら、もっと、お前といるんだった・・・」

亮一は、壊れた携帯を私に差し出す。

「これを買うためにバイトしてたんだ・・・でも、壊れちまったな・・・
携帯持ってなかったから、買ったら、もっと、繋がっていられるっても思ったのに・・・」

(このためにバイトを・・・)

亮一に告白された日の事を思い出した。

『あやめが好きだ。あやめのナイフみたいな辛い思い・・・全部俺が受け止めてやるよ―――』

なぜ、忘れていたのかを後悔した。

「ゴメン・・・亮一・・・ゴメンなさい・・・」

泣きじゃくる私を、遠くからあのチョコレート屋の少女が見ている。

「とにかく、今助けを呼ぶからッ」

携帯を取ろうとしたが、あの店に置いてきてしまっていた。

「私が助けを呼びますッ」

崖から滑り降りる美樹。美樹は携帯で、先生に連絡をする。

「もしもし?大変なんです。あやめさんが・・・!」

(え!?)

「あやめさんが、亮一君を崖から突き落として・・・亮一君を大けがさせたんですッ私、見たんです」

ニヤリと笑い、電話を切る美樹。

「何デタラメ言ってるのよ!携帯かしなさいよッ」

携帯を奪い取ろうとすると。

「やぁよ、バァカ、もうあんたの言う事何か聞かないわ
あんたなんか死ねばいいってずっと思ってた。いつもごうまんで人を踏みにじって」

「美樹・・・あんた亮一の事好きなんでしょ?」

「な訳ないじゃん、利用しただけ、どうすればアンタが一番傷つくか考えたの
先生にここの場所は言ってないから、すぐに助けは来ない。その間いたぶってやるわ」

今まで見た事のない恐ろしい顔をする美樹。

「いいから早く携帯かしなさいよッ!」

すると、美樹は笑いながらこう言った。

「貸してほしけりゃ土下座しろ」

私は、涙目で、膝をついた。

「お願い・・・助けを呼んで・・・」

美樹は私の後頭部を踏みつけた。

「あははは、あんたが土下座するなんてね。超いい気味・・・でも、いやーよ」

美樹は携帯を川に投げ捨て、笑いながら、去っていく。

「この・・・最低女!」

チョコレート屋の少女は、その姿に少しがっかりした様子。

「亮一、しっかして・・・今助けを呼びに行くから・・・」

私はがけを登り、森の中を走った。森の木々の枝が私の行く手を阻む。

(亮一だけは・・・優しい人なの・・・絶対に死なせたくない!)


その頃、美樹はあの少女と話していた。

「あんたのおかげで大嫌いな奴を陥れる事が出来たわ、少し先の未来が見えるチョコレートエクレール・・・これで、あやめ行動が全部分かったわ」

あの時、来た客は美樹だったのだ。

「でも足りないッもっと苦しめてやりたい・・・だから、チョコを売って!」

「出来ないわ、未来視の力を得たなら分かるはず、私がチョコレートを売る事はないと、お帰りなさい美樹さん」

だが、美樹は少女にすがり付く。

「いや・・・いやよ・・・チョコレートが欲しいの・・・っチョコを売ってよ!」


数ヵ月後

「亮一君をけがさせたのって、あやめさんなんですって、最低ね」

皆、私の事を罵る。あの少女が言っていた代償は私の地位。

だけど、そんなものいらない。亮一がいてくれるのなら・・・。

亮一は、奇跡的に命を取り留めた。

「あやめ・・・」

亮一は私に優しく笑ってくれる。


その頃、チョコレート屋では、あの少女がいた。

「珍しい事もあるんだな・・・お前が2番目に大切な物を貰うなんて・・・」

黒猫が少女に語りかける。

「あやめさんは、成長した。だから、2番目のものをいただいたわ
でも、美樹さんから、気弱な心をいただいてあんな結果になるなんて・・・」

少し落ち込むようすの少女。

「私もまだまだね、チョコレートは簡単にあなどってはいけないものなのに・・・」

『チョコレートが導く先にある未来がそれを決めるのはすべてあなた次第―――』



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■作者からのメッセージ
13さん

今回も感想ありがとうございます

描写も、少しずつ増やしています。

今回は、ちょっと、いっぱいいっぱいです・・・

今回は、善人と悪人が入れ替わるようなお話でした。

どんな人でも、偽善者から始まり、善人と悪人に分かれるような話ですね

時間が戻せるのなら、私は、いろいろいっぱいやり直したい事が山ほどあります(汗
テキストサイズ:9968

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