ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

ショコラ・ノワール 最終章 チョコレートヌガー 静謐な呪い part1
作者:ひいらぎ 由衣  [Home]  2011/10/10(月) 15:12公開   ID:/dRxfOtg52o
朝の日差しが、家に差し込み、小鳥の鳴き声が聞こえる。

「ねぇ、お母さんッ森の奥に願いの叶うチョコレート屋があるんだってッ」

私、枝野伊織は、母親とそんな話をしていた。

「そんなの噂でしょ?あったとしてもインチキよきっと」

母は、食器を洗いながら、呆れた顔で、そう答える。

「まぁ、伊織だって、そんな夢の一つや二つあったっていいじゃないか
それに、素敵な話だろう?願いがかなうだなんて」

父親は、新聞を読みながら、笑顔でそう言った。

「もうッそんなこと言ってないで、早くしないと学校遅れるわよッ」

お弁当を母から、受け取り、私は急いで、玄関へと走った。

「行ってきまぁすッ!」

元気よく、走りだし、朝の日差しが清々しい。

通学路には、登校をする、小学生や中学生がいる。

携帯で話しながら、慌てるサラリーマンやOLも見かける。


私は、学校の教室へと入った。

「皆ぁッおはよう!」

私は、よく暑苦しいほど明るいと言われる。まぁ理由は分かる。

元気よく挨拶すると、気持ちがいいからやめられない。

「おはよう、伊織ッ」

私とは正反対で、大人しめの品のある少女。

肩まである黒髪で、可愛らしいくりくりした目をする親友の池田久美。

「久美おはようッ数学の宿題、超難しかったよねぇ」

他愛もない会話をする、それが私の日常だった。


だが、ある日、私は教室で先生に衝撃的な一言を言われた。

「枝野、実は、先ほど、ご両親が乗っていたバスが、事故にあい
お父さんが亡くなった。お母さんも、意識不明の重体らしい」

いつもは明るい先生が、深刻そうな顔をする。私はその一言の意味が分からなかった。

(お父さんが死んだ?お母さんも、意識不明って・・・)

全身の血が逆流するかのように、私は固まってしまった。


私は急いで、母が入院する病院へ走った。

病室へ行くと、母は人口呼吸器が取り付けられ、ピクリとも動かない。

すると、白衣の若い医師が、伊織にこう告げた。

「お嬢さんですか?お父様は、ほぼ即死で、お母様も目覚めるかどうか・・・」

そう告げると、後ろにいた若く薄いピンクの服を着た看護師が前へ出、書類を渡してきた。

「入院手続きの資料です。それと、死亡届です」

死亡届には、父の名前の枝野忠志と書かれていた。

(夢だよね?こんなの悪い夢だ・・・お願い目を覚ましてッ夢なんでしょう?)

目に涙があふれ、書類に雫が1滴2滴と落ちる。

私は、病院の帰り道、自分はこれからどうなるのかと、混乱状態でいた。

私は、知らず知らずのうちに、森の奥へと足を踏み入れていた。

(もうどうでもいい、このまま死にたい・・・生きてる意味なんてないんだッ)

すると、甘い香りが鼻へ入り、我に返った。

「何この香り・・・チョコレート?」

目の前に古びた洋館があった。チョコレート色の屋根で、中央の塔は一回に大きなガラス窓がある。
ガラスの向こうには店舗なのか、チョコレートが陳列されている。
門には、アーチ状の看板が掲げられている。

「願いの叶うチョコレート屋、ショコラ・ノワール・・・?」

看板の先が丸まった不思議な事態でそう書かれている。

私は門を抜け、大きな板チョコのような扉を開ける。

中は、広いロビーで、天井は高く、二階に続く階段がある。
正面と左右に他の部屋へ続く扉。
中へ入ると店舗になっている。真ん中の大きなテーブルや壁沿いには、私より高い棚が一面に並んでいる。どの棚にも、おいしそうなチョコレートが並ぶ。

「すごい、どれも綺麗・・・」

ウソを隠せるシェルチョコレート
時を戻すマカロン
歌姫の美声を閉じ込めたガトーオペラ
決断のスティックチョコレート

商品名と一緒に効能めいた事も書いてある。

「ようこそ、ショコラ・ノワールへ」

振り返ると、店主らしき少女か立っている。

裾の広がっていて、レースや飾りの多いショートドレスを着ている。
ダークチョコレートを使ったような色。
顔立ちは美しく、ブルーの瞳に、腰まである紫の髪。
フランス人形のようで、異世界の住人のような風貌。

「私はショコラティエの哀川ショコラ。あなたの願いは?」

見る限り、自分と同じくらいの年なのに、遥かに年上のような雰囲気。

(願い・・・私の今の願い・・・)

「まだ、自分の願いが分かっていないようね」

見抜いたような、口調で言われ、ドキッとなった。

「私、父を亡くして、母も意識不明で・・・
母を助けたいんですッそn願いを叶えてくれないでしょうか?」

無理な願いかもしれない、だけど、母だけは・・・。

少女は、不機嫌そうな顔をする。すると、奥から黒猫がやってきた。

少女は、その黒猫の鳴き声に耳を傾け、ため息をつきこう言った。

「ここは、何でも願いがな叶うわ、でも、そのチョコを差し上げるには、まだ早いようね。少しの間だけ、その店の手伝いをしてちょうだい。そしたら、チョコを上げるわ」

私は、その言葉に安心した。

「ありがとうございますッ」

(どうせ、家には誰もいない。ここにいる方がよっぽどマシだ)


翌朝、眩しい光で目が覚めた。誰かがカーテンを開く音がする。

「いつまで、寝ているの?手伝って」

勢いよくシーツを捲られ、私はベッドから落ちた。

(痛いッ何するのお母さんッ)

そこにいたのは、母ではなくこの屋敷の主のショコラだった。

「下にいるから、そこにある服に着替えて下りてきなさい」

少女はそういうと、下へと下りて行った。

部屋は、大きな天蓋付きのベッドが場所を占め、それと、小さなドレッサーが置いてある。
壁紙は、一階とは違い、緑をベースにしたバラの花柄。一つしかない窓には、レースのカーテンがかかっている。

ドレッサーの小さな時計は、六時をさしている。

(まだ、六時・・・早すぎ!)

あくびをしながら、ベッドサイドに置いてある服を着る。

シンプルな黒のワンピース。レースの付いたエプロンもある。

(メイド服?こんなの着た事ないよ!)

ドレッサーを見ると、肩まである茶髪の髪に、可愛らしいメイド服。
小柄な自分には、ぴったりだ。

下へ下りると、銀食器を磨くように言われた。

いつも、少女が磨いているのか、一点の曇りもない。

新しく買ったと言う銀食器の方が、まだこの家になじまず、黒ずんでいる。

私は、ピカピカに磨くと、鏡のように自分が映る。

次は、廊下の板張りの床を掃除する。床にはカーペットが敷かれている。

モップがけのようだ。掃除機はないのかと言う疑問も自分の中にはあった。

学校のプールよりも広い廊下を掃除するのは一苦労。

(どうして、ショコラさんは、すぐにチョコをくれないんだろう?)

「もう、お店を開ける時間だから、続きは朝食のあとでいいわ」

二階の奥にある食堂へと招き入れられた。

中は、八人がけの長テーブルがあり、テーブルには白いクロスがかけてあり、蝋燭の台が中央に並べられている。
一番奥の席には、焼きたてのクロワッサンと、フルーツ、ハーブティーがある。

私は、クロワッサンを食べるとサクッと軽い音がして、バターの香りが鼻を抜けていく。
上質なバターの香りは濃厚でしつこくない。

「美味しいッこれってもしかして、アナタが作ったんですか?」

食べながら聞くと、少女はハーブティーを片手にこう言った。

「えぇ、全部私が作ったものよ」

当たり前のように言う少女。

(すごい人なんだな、チョコレートも美味しいんだろうな)

朝食を終えると、廊下をほうきで掃除をする。

店舗には、スーツを着た男性や身なりのいい老婆。私と同じくらいの中学生の少女。老若男女、さまざまな人が訪ねてくる。

(私には、くれないのに他に人には、すぐに渡すんだな)

皆、願いが叶ったように喜んで帰る人や、絶望的な顔をする人。

中には、来たのに帰る姿がない人もいる。

(何で、皆いろんな顔をするの?この店って一体何!?)


夜、やっと、仕事が終わった。私はお風呂を借りることにした。

お風呂は二階の、私が借りている部屋のすぐ横にある。

中はタイル張りの空間が広がる。広くはないがこじんまりとした棚が置かれてあり。
清潔に手入れされたリネン類が並んでいる。
奥は可愛い猫の足のバスタブが置かれている。
タイルには草木を文字に変えたような見た事のない模様が描かれている。
バスタブには金色のシャワーが備え付けられている。

花形の蛇口を回すと熱いお湯が体に降り注ぐ。

一日の疲れを洗い流す。泡風呂につかり、ホッと言一息つきながら、家の事を考える。

(久美どうしてるかな?私がいなくなって、心配してる?)

お風呂から出て、用意してもらった服に着替える。

レールの付いた真っ白なワンピース型のナイトウエア。

袖は、ごく薄の布で出来て、腕が透けて見える。

(可愛い、どこで売っているんだろう?)

お風呂場から出ると、あの黒猫が通った。

(可愛い猫だな、名前はなんて言うんだろう?ショコラさんが飼っているの?)

部屋へ入ると、ランプの置いてあるベッドサイドの棚の上には、洗いたての制服が畳んでおいてある。

(ショコラさんって、そんなに悪い人じゃないのかも・・・)

ベッドに寝そべり、ランプの明かりを消し、私は安心したように瞳を閉じた。

■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
ハウズオウさん

感想感謝ですッ

今回は、原作をもとに自分で若干オリジナルで書いて見ました(シリーズを真似した部分もあります・・・)

シリーズに出てきたチョコレートを使っています

最終章と言う事で、ショコラ・ノワールを全体的に紹介しました。

描写も、なかなかよくなってきているとは、自分的に思います(笑

今回はめずらしく、ショコラがなかなかチョコを渡しません。

理由は、最終回で分かるかも?(汗

伊織に渡すチョコは、一体何なのかは、最終回でご紹介させていただきますッ
テキストサイズ:7224

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.