ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

黒の異邦人は龍の保護者 # 14 “Star goes up the sky again. ―― 星は再び空へ ―― ” 『死神の涙』編 L
作者:ハナズオウ   2012/01/31(火) 01:26公開   ID:CfeceSS.6PE



 『李 舜生リ シェンシュン』が死ぬ前日。

 鏑木家にドラゴンキッド・黄 宝鈴ホァン パオリンが倒れ込んだ翌日。

 鏑木虎徹の母安寿は晴天の空の下、嬉しそうに微笑みながら畑仕事に勤しんでいた。

 綺麗に赤く実ったトマトなどの野菜を大切そうに世話している。

 軍手をはめた手は泥にまみれ、頬を爽やかな汗が滴る。

 家庭菜園に熱中する安寿の元に、宅配便を持った配達員が笑顔と共にやってくる。

 軽くサインを済ませ、配達物を受け取る。

 誰からだろうかと安寿が伝票を見ると、そこには『恋のキューピットちゃん! アンバーちゃん!』と書かれていた。

 安寿が今は亡き夫との馴れ初めに関わってきた少女の名前がそこには記されている。

 “恋のキューピット”と書かれている辺り、安寿が思い浮かべた人物だと確信させる。

 “ちゃん”づけを見た安寿はフフフっとアンバーの陽気さに笑う。

 梱包を解くと、中には大きな白い風呂敷とその上に一通の手紙が入っていた。


『鏑木 安寿へ

 久しぶりだね。美味しそうなトマトが庭に実ってるね。

 私トマトだーい好きなんだ。

 他の野菜も美味しそう。

 アナタは野菜育てるの上手だね。

 2人の息子も大きくなったし孫娘ちゃんも可愛いし幸せだね。

 恋のキューピットをした甲斐があったみたい。

 一緒に入ってた荷物は預かってほしくて送ったの。

 数日中にやってくる“男の子な男性”に渡してあげて。

 彼はすごぉく一杯食べるから一杯買い物してるといいよ

 これからちょっと人がやってくるけどお願いね。


 追伸 二枚目は貴方の家に匿っているハヴォックに渡してあげて

 アンバーより』


 手紙を読み終えた安寿は、ニッコリと笑い手紙をたたむ。

 手紙に書かれていた“ハヴォック”なる者が誰なのか、安寿にはわからない。

 しかし、アンバーがおふざけで書いたのかな? っとフフフと笑って流す。

 荷物を縁側に移動させると、再び農作業に戻る。

 しばらくすると、再び安寿の元に来訪者がやってくる。

 先程手紙に書かれていたハヴォックである。

 ボロボロの赤いワンピースを着た骨と皮だけのやせ細った身体をしている。

 裸足の足には泥まみれで、青白い肌に真っ赤な筋が体中に無数に走っている。

 まるで山の中を何日もさ迷ったように傷も汚れも着いている。

 生気が抜けた顔をしたハヴォックは薄らと笑みを浮かべ安寿を見ている。

 安寿は数日前に軒先で少し話したハヴォックを見て、あらあらと笑顔になる。

「あら、あなたたしか……この前喋る猫ちゃんと一緒に来た……」

「ハヴォックだ。先日は突然押しかけてすまなかった」

「そんな事ないさ。今日はどうしたんだい?」

「ちょっと……人と話したい気分なんだ」

「そうかい……宝鈴ちゃんも今家にいるんだよ。会っていってあげてよ」

「そうだな」

 フフフっと安寿はニッコリと笑ってハヴォックを縁側に誘う。

 縁側に用意していた安寿の休憩用のお茶を2つに分ける。

 ハヴォックは誘われるままに縁側に座る隣に座り、お茶を受け取る。

「のどかだな……争いとは無縁だな。街から少し離れただけでこんなに変わるんだな」

「そうだねぇ。緑も豊かでいいところだよ。息子達も孫娘も皆すくすく育ってるよ」

「子供か……私にもいたんだよ。

 血も繋がっていない子達だったけどな」

「その子達はどうしたんだい?」

「殺され……たんだ。多分」

「そう……かい。辛かったね」

「辛かった、のかな……? 覚えていないんだ、あの子達の顔を。

 罰だと思ってたんだ。これまで多くの人を殺して、子供の生き血を啜ってきた私に対する罰だとな。

 安らかな日常なぞ与えない罰だと……。

 かつての力を失い、記憶も弄られ……空っぽなんだ。

 そんな私を世界はまた争いに巻き込もうとしているらしい」

「そう……かい。

 あぁ、アンバーちゃんから手紙だよ」

 震え始めていたハヴォックの手に安寿はアンバーからの手紙を渡す。

 ハヴォックは震える手で手紙を開き、視線を手紙に落とす。

 手紙を読むと恐れから来ていた震えが笑いから来る震えに変わってくる。

 小さく笑う声が漏れてきたハヴォック。

 ぎこちなく、寂れた機械のようなどこかギクシャクした笑い声を上げるハヴォック。

 安寿はハヴォックの変化に驚きつつ、笑った事に安心して笑みを零す。

「ハハハ……アンバーらしい。こっちの思いも関係ない。

 なんでこうもアンバーの言葉は陽気なんだろうな」

「どんな事が書いてたんだい?」

「笑ってしまうぞ?


『頑張って。

 変われるよ。契約者もNEXTのように。

 信じて、自分の可能性と絆を信じて

 アナタも変われるよ。

 あーあ、貴方のぎこちなくない笑い見たかったのにな』


 だとさ。本当に……こちらの思いなんて屁とも思っていないな」

「ハハハ。それがアンバーちゃんのいいところだね」

「そうだな」

 それから2人はのんびりとお日様を浴びながら他愛の無い話をしていく。

 2人はすぐに打ち解けて、話が弾んでいく。

 日が空の頂上へと届きそうになる時間になり、ようやく2人は話し込んでいることに気づく。

「そろそろお昼の時間だねぇ。

 どうだい? 一緒に食べないかい?」

「いいのか? こんな見ず知らずの浮浪者を招いて?」

「いいさ。息子が食べに来る事になってるけど、それでいいならね」

「そうか……お邪魔するとしよう」

 なら手伝っておくれっと安寿は笑顔でハヴォックを誘い、畑へと向かう。

 昼ご飯に必要な野菜を2人で取ると、家の中に入っていく。

 2人が両手に抱えた野菜をキッチンに置くと、2人は申し合わせたように視線を合わせて頷く。

 そして、2人はそれぞれ料理を始める。

 お互い話はしないが、2人とも楽しそうに笑っている。

 2人とも慣れた手付きで料理を進めていく。

 テキパキと進められた料理は程なくして終わり、テーブルには溢れんばかりの料理が並ぶ。

 安寿は少女のような笑みを浮かべてハヴォックを見る。

 見られたハヴォックは、少し困ったように口元が緩む。

 安寿は小さく両手を上げてハヴォックに笑みをさらに深くする。

 ハヴォックは緩んでいた口元がポカンと開き、少し困った視線を安寿へと向ける。

 安寿は小さく挙げた手を少し揺らし、“手を合わせて”っと視線を送る。

 視線の意味がわかったハヴォックは、少し恥ずかしそうに口を締め、恐る恐る手を合わせる。

 初老の女性とガリガリに痩せてボロボロの赤のワンピースを着た女性のハイタッチ。

 それを家に入って目の当たりにした安寿の長男村正はあまりの事態に固まる。

「なに……してるんだ? お袋」

「あら村正、来てたのかい。

 お昼出来てるよ」

「いや、まずそちらは誰だ?」

「私の友達のハヴォックさんだよ」

 安寿の“友達”という単語にはっ? っと安寿を見つめるハヴォック。

 安寿はフフフっと笑い、ハヴォックの手を両手で優しく抱きしめる。

 歳が歳ならば、眼福な光景にも見れただろう。

 それから3人はつつがなく昼飯を済ませ、村正は業務へと帰っていく。

「ねぇハヴォック……これから宝鈴ちゃんのご飯の時間なんだけど、食べさせてあげてくれるかい?」

「……ああ」

 安寿から黄の昼ご飯と小さく砕かれた氷を受け取ったハヴォックは、部屋まで案内される。

 広めの客間にポツンと敷かれた布団。

 その中には、熱に魘されている黄 宝鈴が短く息を吐きながら眠っていた。

 おデコに乗せられた濡れタオルがズレ落ち、汗が大量に浮かんでいる。

ヘイ……黒……

 ――いっちゃやだよ。

 一人は嫌だ……よ怖いよ……黒」

「そう……か。

 黒が恋しいか」

 ハヴォックは少し目を瞑り、決意したように瞼を開ける。

 感情がなかった瞳の奥底に小さな篝火が燃えている。

 ハヴォックは枕元まで行くと、優しく黄の汗を拭う。

 少しヒンヤリとした感触に、黄は薄らと目を覚ます。

 意識が混濁して、目の前にいるのが誰かも判断がついていない。

「目を覚ましたか……。お腹はすいているか?

 すいていなくても少しお腹に入れておくといい」

 ハヴォックは、手を黄の頭の下に入れて優しく黄を起こす。

 ハヴォックは枕元まで移動し、力なく再び倒れようとしている黄を受け止める。

 汗でベッチャリと濡れた黄の背中がハヴォックのワンピースを濡らす。

 ハヴォックを背もたれにした黄は背中に温もりをぼんやりとながら感じて少し微笑む。

『グルル……グュギュグウウウウウウウウウウ!!』

 ホッとしたのか、黄の腹の虫は栄養を求めて訴えるように鳴る。

 フッとハヴォックは口元を緩ませ、黄の口へとお粥を冷まして運ぶ。

 朦朧とした意識ながら、黄はパクパクとお粥を口に入れていく。

 瞬く間にお粥は全て黄の胃へと消えていった。

 高熱に魘されているにも関わらず、衰えるどころか増幅している黄の食欲に、ハヴォックは苦笑を洩らす。

 ハヴォックは、汗でビッショリの黄のシャツを脱がせる。

 1gも無駄な肉のない綺麗に締まった黄の肉体。女性のシンボルはしっかりと育っており、綺麗な山を二つ作り出している。

 ハヴォックは自分のやせ細った身体と見比べ、なんとはなしに黄の身体をプニプニと触る。

 柔らかく弾力のある黄の身体を触るのを止めれない。

 いい加減身体を吹いてあげないとダメだな……っとハヴォックは、優しく丁寧に黄の身体を濡れ手拭いで拭っていく。

「お前は覚えていないかもしれないが……お前は私の身体を拭いてくれたな。

 全てを失ったあの時の私は絶望のどん底だったんだ。

 それがな……お前に身体を拭ってもらい終えた時、少し救われた気がしたんだ。

 お前は気にしないだろうが……借りは必ず返すぞ」

 静かに語りかけれたハヴォックは、未だ意識がはっきりしない黄の頭を優しく撫でる。

 拭い終えたハヴォックは近くに置かれている着替えに着替えさせ、布団の中に寝かせる。

 寝転がると同時に再び眠りについた黄は、少し安らかな寝息を立てて眠る。

 ハヴォックは愛おしそうに寝息を立てる黄の頬を撫でる。

 少し名残惜しさを残しハヴォックは空になった食器を持って、部屋を後にする。

 食器を安寿に渡すとハヴォックも静かに玄関へと向かう。

 安寿は赤く熟れたトマトを一つ、ハヴォックに渡す。

「私にはアナタに何が起こっているかはわからないからね。

 この言葉しかアナタにあげれないよ。

 『またいらっしゃい』」

「……フフ、ありがとう。

 必ず……来るよ」





―――――――





TIGER&BUNNY × Darker Than Black


黒の異邦人は龍の保護者


  # 14 “Star goes up the sky again. ―― 星は再び空へ ―― ”


『死神の涙』編 L


作者;ハナズオウ






―――――――






 星の煌めくシュテルンビルトの夜。

 トレーニングセンターへと襲撃をかけて6日が経った日の夜。

 パーセルは製薬会社パンドラの屋上に立っている。

 空間転移能力を使い、トレーニングセンターにいたヒーロー四人とHERO TVのプロデューサーの五人の記憶を弄る為に攫った。

 MEで李 舜生に関する全ての記憶を消し去り、黒の死神への敵意を植え込んだ。

 植え込んだ方は三日もすれば抜け落ちてしまうが、明日残りのヒーローにMEで記憶を弄る。

 なんとも糞な仕事だ……っとパーセルはムシャクシャを抑えることが出来ない。

「なぁチャンプ……俺はなんの為に生きてんだろうな……」

 パーセルは空を見上げながら、ここにはいない“友達”の名前を呼んだ。

 返ってくるはずもない答えを待ち、パーセルはしばらく黙っている。

 返ってくるはずもないか……っと苦笑を漏らし、パーセルは力なく倒れる。


 ゲート内で死んだはずが、パーセルはこちらの世界に生きていた。

 死ぬ前の記憶全てを無くし、自分が何者かもわからずにただ生き延びてきた。

 パンドラに拾われ“覚醒物質”を打たれ、パーセルは記憶と能力を取り戻した。

 空間転移能力という有用な能力により、パンドラに使われてきた。

 契約者らしく組織に使われ、生きる為に文句も言わずに仕事をこなしてきた。

 嫌な仕事をパーセルがこなせたのは、以前の世界での友達“チャンプ”との何気ない記憶があればこそだった。

 家族の温もりも忘れ、人との繋がりがなかったパーセルには輝いた記憶である。


 記憶に頼りに生きてきたパーセルが、人の記憶を弄る為に攫ってきている。

 嫌な仕事をこなし、腹の底が煮えたぎるように燃えている。

 パンドラから逃げ出せない自分。仕事を拒否できない自分。生きれるなら……っと嫌々ながら納得してしまう自分。

 考え込めば込むほど、怒りの炎は更に大きく燃え上がる。

 どこにも逃がしようのない怒りを発散するように、思いっきり拳を床へと全力で叩きつける。

 拳から伝わる痛みも、怒りを沈めることは出来ず、何度も何度も床を叩き続ける。

 叩きつけていた拳は真っ赤にそまり、皮膚は破れ血を流す。

「あああああああああああ!!!!!

 くそそぉおおおおおおおお!!!!」

 何度も何度も、言葉にならない怒りを叫び、床を叩く。

『グリャリ……』

 拳から伝わった感触と音にも、パーセルは止まらない。

 いつしか瞳は涙を貯めている。

 肩で息をし始めたパーセルは再び仰向けになって天を見上げる。

 自虐するほど怒っているのに、行動には一切動けない自分は根っからの契約者だな……っと皮肉げに口の端を上げる。

 パーセルの息遣いだけが聞こえる静寂な屋上。

 静寂に包まれた空間を破り、女性の歌声が響いてくる。

 その声は優しさに包まれ、怒りの炎に身を焼かれていたパーセルがその事を忘れてしまうほどに、その声は優しかった。

 優しい歌声の出処へと顔を動かす。

 そこには、戦闘員用にパンドラが作ったスーツに身を包んだ柏木舞が無表情で歌っている。

 両手を広げ、天に向かって優しい歌声で歌っている。

 パーセルは何度か舞と任務に着いた事があり、舞が対価で歌う事も知っている。

 つまり今歌っているのは、任務を終えて歌っているという事か……っとパーセルはどこか冷めた視線を投げる。

「殺した後にこんな優しい声で歌えるんだな……っけ!

 結局はお前も契約者か……」

 何曲も歌った舞は、満足したようにフゥっと一息付く。

 屋上から去ろうと歩きだした舞が振り返ると、パーセルと目が合う。

 お互い冷めた視線をぶつける2人。

 舞は何か気づいたのか、足早にパーセルの元へと駆け寄る。

 表情1つ変えず、パーセルの元へと来た舞は、お尻の上に装備しているポシェットから手拭いと傷薬を取り出す。

 そして何も言わず、眉1つ動かさずに舞はパーセルの血を流す拳を治療していく。

「何……してんだよ?」

「痛いの、ダメ」

「相変わらず幼稚な言葉使いだな」

「……パパが言ってた」

「そう……かよ。お前も任務か?」

「ううん。歌ってたの。歌ってたらきっとパパが見つけてくれるもん」

 対価で歌う事を強いられていると思っていたが、違ったらしい。

 歌う事でいもしない“パパ”に見つけてもらおうとしている。

 舞という契約者は、見た目とは違って中身は子供だった。

 エリック西島曰く、契約者になった経緯が特殊だからその影響かもしれない。

 どこか自分より年齢が上なのに幼い舞になぜか笑いが込み上げてくる。

「パーセル怒ってた?」

「ちょっとな……ニヒヒっ!」

「に……ひひ」

 口の両端を上げ笑うパーセルに、マネして無感情な声で“にひひ”と言う舞。

 こうやるんだぜ? っとパーセルは両手の人差し指を舞の口元に当てて優しく上へと釣り上げる。

 パーセルによって口元だけ笑った舞は再び“にひひ”っと無表情で笑う。

「笑うときは腹から笑うものだぜ……っま、契約者には縁のない話かもな……俺だって笑ってるのかわからねぇけどな。

 なぁ舞……お前はなんでパンドラになんているんだ?」

「パパが……いい子にしてたらパパが迎えにきてくれるの」

 そんなわけねぇじゃんか……っと思いつつも、パーセルは何も言わずに、舞から手を離す。

 舞は手を離され、口の両端がもとに戻ったのが嫌だったのか、自分で釣り上げる。

 パーセルが目を瞑ったのを見て、舞はパーセルに膝枕して、パーセルの柔らかい頬を撫でる。

 突然の出来事に瞑っていた目を開いたパーセル。
 舞は両手で口元を釣り上げて、笑っているのを表していた。

 舞は優しく歌声で子守唄を歌い始める。

 パーセルは優しい歌声に包まれ、眠りへと落ちていく。

「チャン……プ」

 パーセルは一筋の涙を流し、眠る。

 舞は、感情が抜け落ちた瞳で一筋の涙を流したパーセルを見つめる。

 綺麗に瞬く星空の下、舞の子守唄はしばらく続いた。





―――――――





 シュテルンビルトの再開発地区の廃墟と廃墟の間の狭い路地。

 蘇芳達のトレーニングセンター襲撃から1週間が経った日の夕方。

 ヒーロー達が黒を取り逃がして数時間が経った後。

 ハヴォックは背中をビッショリと濡らしたまま、地べたに座っている。

 ハヴォックは少ししぼみ始めた熟れたトマトを大事そうに持っている。

 トマトは安寿が別れ際に“友達”としてプレゼントしてくれたものだ。

 ハヴォックはその“友達”にプレゼントされたトマトを食べる事が出来ずにいた。

 愛おしそうに大切に眺めている。


 ハヴォックは生まれてこの方、家族の温もりや友達の温かさを言葉でしか知らなかった。

 生まれてから記憶にあるのは生きるためにどうするかっという事。

 親も頼れる者もそばに居なかったハヴォックに残された道は身体を金に変えることだけ。

 娼婦になり、愛も恋もないままに生きてきた。

 生まれてから“笑う”という事もなく、ただただ生きてきた。

 娼婦となっていくら経っただろうか。ハヴォックは契約者となった。

 感情の起伏がなくなり、合理的な思考がハヴォックを動かした。

 生きるために身体を売り、感情を抱く事もなく生きてきたハヴォックには特に変わりがあったように思えなかった。

 両親の顔も、友達という存在もなく、ハヴォックは兵器として生き始めた。

 “喪失者”――契約者の能力だけを失った存在――となったハヴォックは、何処ともしれない田舎にいた。

 どこにでもいそうな家族に拾われ、その時初めてハヴォックは人の温かさに触れた。

 そこで初めて“笑う”という事を知った。

 生まれて20年、初めて笑うという感情に触れたハヴォックはぎこちないながら笑おうとした。

 油の切れた機械のようにぎこちない笑いを浮かべるハヴォックは、自然に笑おうとした。

 拾ってくれた家族ローラが料理を教わり、子供達に料理を作り始めた。

 家族の温かさに触れたハヴォックはゆっくりと変わり始めた。

 それも“力”を利用しようとした人間に壊された。

 そして無常にも力を取り戻しながらも死んだ。


 そんなハヴォックはこの世界に来て初めて出来た“友達”に思いを馳せる。

 胸がポカポカとして自然と口が緩む。

 指で愛おしそうに熟れたトマトを動かしながら熱い視線を注いでいる。

 そこに突然、黒く光を拒絶した闇に染まった2m大の球体が何もない空間に出現する。

 そんな異常現象が近くで起ころうとも、ハヴォックはトマトから視線を外さない。

 球体からは14歳程の黒髪の少女パーセルが現れる。

 大きなボタンが可愛らしい白のロングジャケットを着ている。

 その下に黒のホットパンツを履いているが、ジャケットに隠れて、下に何も履いていないようにも見える。

 頭の上にはゴーグルを掛け、猫耳がついたカチューシャをしている。

 どこかイタイ格好をした少女は、ニヒヒっと笑ってハヴォックを見ている。

「なにニヤニヤしてんだ? 史上最悪の契約者と恐れられたあんたがさ」

「……笑っているか? 私は」

「何百も何千も人を殺してきた奴には見えないぜ?」

「そう……か。なにか用か?」

 トマトから視線を外すと同時に、ハヴォックの表情は感情が抜け落ちる。

 その変わり様にパーセルは少し、おうっと驚きながら一歩さがる。

 ハヴォックは瞼を卸し、決心を固める。

 ゆっくりと瞼を開いたハヴォックの瞳の奥底に決意の炎が燃えている。

「一週間前にやり残した“仕事”をしにきたんだよ」

「なんだ……諦めたのかと思っていたよ」

「あの時は蘇芳の補助が優先だっただけだよ。てか、お前あれからどこにいた?

 ジュライにも、観測霊達にもお前見つけられなかったんだけど?」

「そう……か。なら正解だったようだな。

 山の中で生き延びていたよ。電線とガラスさえなければ逃げ切れるかと思ってたが……そうだったようだな」

「っち……見つかったら終わりなのに街に帰ってこなければよかったのにな。

 まぁいいや、一緒に来てもらうぜ?」

「行ったらどうなる?」

「記憶弄って、“覚醒物質”打って契約者になってもらうぜ」

 ハヴォックは小さく『嫌だ』っと言って、視線をパーセルからトマトに移す。

 まるで『便所行こうぜ?』っという誘いを断るように、パーセルは軽く拒否を示す。

 あまりに意外な対応にパーセルは、はぁ? っとポカンとしてしまう。

 すぐさま与えられた仕事を思い出し、表情を戻す。

「いやだって言っても連れてくけどな。

 アンタは今力ねぇしな」

 パーセルは手を横に広げ、黒く2m大の球体を作り出す。

 ハヴォックは立ち上がり、安寿から貰ったトマトをパーセルに差し出す。

 思わぬハヴォックの行動に、パーセルは球体を消滅させる。

「それで見逃せってか? そんなもんなんの足しにもならねーぜ!」

「賭けをしないか?」

「っはぁ!?

 お前が何か言える立場かよ! こっちは契約能力があるんだぜ!?

 それにこっちには『未来の記憶』があるんだぜ?

 ――今日BK-201がどこにいたのかも何してたのかも知ってる。

 BK-201の味方だったヒーロー達の記憶も弄ってこっち側だぜ?

 圧倒的優位なんだぜ? 俺達パンドラはさ」

「『未来の記憶』……か。

 “アイツ”はそこにいるわけか。

 一つ聞きたいのは、“お前はパンドラの一員なのか?”」

「はぁぁあああ!? そうじゃなかったら“こんな糞みてぇな仕事”しねぇよ!!」

「糞みたいな仕事……か」

「生きるためだよ!!!

 俺ら契約者が生きていくには組織に……」

「飼われる……か?

 空間転移能力という稀有な能力を持っているのに、やることは下っ端仕事。パシリ……か」

 ハヴォックのらしくない挑発に、目に見えて表情を変えるパーセル。

 激昂したパーセルはダッと走り出し勢いをつけてハヴォックの顔をぶん殴り、吹き飛ばす。

 ズザザッ!! っと地面を滑ったハヴォックは濡れた背中から擦り傷ができ、青白い肌から赤い筋が何筋も垂れる。

 パーセルは倒れたハヴォックにマウントを決め、ボロボロのワンピースの胸ぐらを掴む。

 骨と皮だけのハヴォックの胸元に、ゴリゴリとパーセルの手が押し込まれていく。

「生きるためだ! 俺達契約者が生きる為にやってんだ!! 何が悪い!!

 俺は俺を守って死んだ”チャンプ”の為にも生きるんだよ!

 有能な限り捨てられる事はないんだよ!」

「有能……か。

 それは“生きているのか?”」

「っく……!」

「賭けをしよう……。

 賞品はお互いの身柄。っと、そうだな……お前が勝てば黒の身柄も付けよう」

「はあ? クソ魏が殺したって歓喜してたぞ? 死んでる奴の身柄って」

「生きているよ。お前たちの観測霊が探そうとしても見つからないところにな……賭けはそれを使う。

 パンドラ側に立っているヒーローを黒の元に連れていって拘束されるかどうか……というのはどうだ?

 黒がヒーロー達に連れて行かれたらお前の勝ちでいい」

「なんだそれ……俺の勝ちじゃん」

「1分は私の勝つ目はあるさ」

「いいぜやってやる!

 だが、やるなら今からだ」

「あぁ……」



 突如始まったお互いの身柄を賭けた勝負。

 決まり事は

・黒の元へと導くヒーローは3人以上。
・ヒーロー達を黒の元に導いてから、ハヴォックはその場にいる誰にも身体的接触を図ってはならない。
・ハヴォックは『重火器』や『刃物』で威嚇ないし攻撃をしてはいけない。
・黒はヒーロー達が退くまで元いた地点からヒーローによって20m以上移動したらハヴォックの負け。


 ハヴォックの勝利条件:ヒーローが黒を拘束せずにその場を後にする。

 パーセルの勝利条件:ヒーローによって黒が20m以上移動させられる。……黒がヒーローに拘束される。


 苦肉の策とはいえ、ハヴォックは勝ちの薄い賭けに全てを賭ける。

 その存在も、未来も……。





―――――――





 黒を取り逃がした虎徹とアントニオは、行きつけのバーへと飲みに来ている。

 じゃんけんで負けたアントニオは酒が飲めず、コーラで我慢している。

 勝った虎徹はなんの気兼ねもなく酒を飲んでいる。

 負けたアントニオが虎徹を送り届けることになったので、虎徹は気兼ねをしない。

 既に虎徹は顔が赤くなっている。

 2人とも接触して捕まえられるチャンスがあったにも関わらず取り逃がした悔しさに2人は飲んで悔しさを晴らしていた。

 バーのステージではカリーナがピアノ演奏をしているが、2人の耳には届かない。

 演奏を無事終えたカリーナは拍手に応えながら、少し寂しそうな表情のままバックヤードへと入っていった。

 カリーナはバックヤードでどこか何か欠けているような感覚に首を傾げ、休憩用の椅子に座る。

 首を傾けているカリーナを見つけたバーのオーナーは、少し微笑みながら水を渡す。

「どうしたの? カリーナちゃん。三日前の出番の時は落ち込んでたのに、今度は悩み事?」

「あ、オーナー。お疲れ様です。

 なんていうか……なんか忘れてしまったような、変な感じなんですよ」

「そっか……仲良しの李君もやめちゃったし、カリーナちゃんには一週間で色々あったし仕方ないかもね」

「え? 李……? 誰ですか?」

「何言ってるのよ、カリーナちゃんのデビューから仲が良かったじゃない」

 オーナーの言葉に出てきた“李”が誰なのか、カリーナにはわからない。

 李に関する記憶全てを消されたのだから……。

 オーナーの言葉にカリーナは少し険しい表情をして考え込む。

 李と喧嘩でもしちゃったのかな? っとオーナーはそれ以上何も言わず去っていく。

 何かを忘れているような感覚について考えていると、胸の奥にモヤモヤが大きくなって胸の奥に住み着くのを感じる。

 それでもカリーナは深く考えていると、ふと昼間にあった黒の死神の仮面が思い浮かぶ。

 突如浮かんだ黒の死神の仮面。

 敵対して対峙したはずが、最後には助けられていた。

 その後に接触したワイルドタイガーとバーナビーと戦い、行方がわからなくなったそうだ。

 少しの間捜索したが、見つけることは出来なかった。

 黒の死神が落ちたドブ川には大量の血が流れていたが、その姿はなかった。

 今まで対峙したどの犯罪者ともどこか違った存在に、カリーナは更に表情を険しくさせる。

 彼はなぜ捕まえようとしていた自分を助けたのか?
 なぜ自分が傷つくのを厭わずに庇ったのか?

 結果的に見ればドラゴンキッドと折紙サイクロンを抜いた全てのヒーロー達の手から逃れた。

 “契約者”と呼ばれる最近現れたNEXTとは少し違う存在であるという事は後後に他のヒーローから知らされた。

 能力を使用すれば対価と呼ばれる行動をしなければならないらしい。

 何よりの違いは思考が合理的になっており、感情の起伏がないことだろう。

 そんな存在がなぜ自分の為にならない事をしたのだろう……?

 カリーナはしばらく考えたが答えなんて出ない。

 ただモヤモヤするだけだ。

 一人で悩んでても仕方ないか……っとカリーナは再び表へと出ていく。

 バーのテーブル席には、少しイライラしたような素振りを見せる虎徹とアントニオがいる。

 カリーナはオーナーから貰ったミネラルウォーターを持って2人のテーブルに相席する。

「あれ? 珍しいな、お前がこっち来るなんてな」

「そうだな……最後は、えっと……あぁ、そうだ! 黒の死神が初めて現れてドラゴンキッド助けた時辺りじゃねぇか?

 そうなるとなんでその時逃がしたんだっけか?」

「そういえばそうだな……あんときは指名手配されてなかったしな」

「ドラゴンキッドも……“助けられた”のよね……

 私もなの。彼一体何したいんだろう?」

 カリーナが悩ましげな表情で投げかけてきた疑問。

 アントニオも虎徹もその問いに答えるだけのモノがない。

 それも当然。実の所、ヒーロー達は犯罪者に関する情報が得られるのは限りなく少ない。

 どのような犯罪をしたのか。容姿はどういったものか。武装は何があるのか。

 そのようなモノしかヒーロー達は得られない。

 だから2人にカリーナの問いに答えることは出来ない。

 数少ない情報からなんとか答えを導き出そうとしていた虎徹はふと思い出す。

 黒の死神を追い詰めた時に巻き込まれた不思議空間での出来事を。

「ぁあ!! そういえば多分なんだけどさ。あいつ多分女の子を守ろうとしてああなったぽいのよ」

 はぁ? っとアントニオとカリーナは声を合わせて言う。

 虎徹は必死にないものが突然出てきたり、出てきたものがないものとなる理解不能な空間にて起こった事について話し始めた。

 要領をえない虎徹の説明に必死に理解しようとする2人。

「だ・か・ら! 突然出てきたりいなくなったりしたの!」

「そうは言ってもな……」

「ねぇ……」

 2人は困った顔をして、顔を見合わせる。

 そんな盛り上がってるのか盛り下がってるのかよくわからないテーブルにペタペタと近づいてくる女性がいた。

 もちろん3人は気づくこともなく、話し込んでいる。

 バーにいた客は逆にその女性に釘付けになる。

 跳ねた赤い髪でボロボロのワンピースに包まれている体は皮と骨だけと思えるくらいやせ細っている。

 それだけなら、あぁ痩せすぎだなっとすぐに視線を反らしたはずだ。

 彼女の体は至るところに小さな切り傷があり、頬は殴られてプックリと膨れている。

 ペタペタと迷わず女性は虎徹達のテーブルへと近づいていく。

「黒の死神はどこ行ったんだろうな……

 もうシュテルンビルトから逃げたかもしれないぞ?」

「だけどさ、あいつはここ一週間の犯罪を早期に潰してきた。

 どうもシュテルンビルトを去ったとは思えないんだよな。何がしたいかはわからないけどさ」

「きっとあの人全身に傷を負ってるわ。数日は出てこないんじゃない?」

「となると潜伏先を探さないといけないか……」

「ならば連れていってやろう。

 ついでになぜアイツが人を殺してきたかも教えてやろう」

 話し込む三人の会話に突如割って入ってきた女性の声。

 3人の視線が女性に集まると、カリーナが立ち上がって叫ぶようにその女性の名前を言う。

「ハヴォック!? なんで? 黄の家からいなくなったって……」

「あぁ……あそこに居座れば私は今の私ではなくなっていた。

 まぁ、その事についても道中で話してやろう。

 どうだ? お前たちの探している“黒の死神”の元へと導いてやるぞ?

 ちょうど一人は酒を飲んでいないしちょうどいい」

 感情が失われた瞳で3人を見下ろす。

 鼓動はドキドキと平常よりも早く打っている。

 突如現れたハヴォックによる突然の提案。

 3人は言葉を出さず、視線だけで相談する。

 答えは即決で決まった。

「「「行く」」」

 3人のヒーローの息のあった答えに、ハヴォックは小さく深呼吸する。



 こうして……ハヴォックの将来の全てを賭けた無血決戦の幕があがった。





―――――――







......TO BE CONTINUED




■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
こんばんわー、ハナズオウです!

なぜが今週はやる気がオーバードライブして、新しい話を出せましたw
とりあえず今回の話は、黒 vs ヒーロー達の戦いを基準に時間が前後する話となりました。

今回は黒が一切出てこない話で読者様は拍子抜けしたかもしれません。
その点は申し訳ないです。

今回は1週間前から行方知れずだったハヴォックが中心です。
心理戦(?)というか、戦わない戦いを書こうと思い、ハナズオウがあまりない頭をフル回転しておりますw

お楽しみください!

本当に久しぶりに、小説投稿板の作家さん以外の読者さんから感想をいただけて、やる気がオーバードライブするスイッチになりましたw
もしよろしければ、読者の皆様、簡単な一言でも構いませんし、批判などでも大歓迎ですので、気軽に感想をくれると嬉しい限りです!


では、ここより感想返しとさせていただきます。

  13 さん

 いつも感想ありがとうございます。
 お褒めいただき嬉しい限りです。

 黒はもうボロボロですねーwww
 もうゾクゾクしておりますww(オイ

 感想にありました、楓の能力についてですが、
 断言しておきます! 今はまだ開花しておりません!
 虎徹の能力が減衰したんじゃね? っと疑っているでしょうが、そんなことありません!
 あれはアンバーの黒への数少ない手助けですw

 え? でもあれ……本体じゃないのに……?

 っとお思いかもしれませんが、目を瞑ってくだせぇww

 時系列的には、ルナティック初登場の少し前ですので、そのネタは大分後になりますねw

 お互い完結に向けて頑張りましょう!


  >黒い鳩 さん

 いつも感想ありがとうございます!

 前回の話は、いかんせん容量が大きくなりすぎました……。
 分割しようかとも思ったのですが、多くの話を分割にしているのでそのままやっちゃいましたww
 あまり本編に関係ない戦闘は軽く流せたらよかったんですが……
 次回から頑張っていこうと思います。
 書く優先順位を決めてやらないといけませんね。
 頑張ります!

 安寿の表現についてなのですが……読み返してマジに間違っていましたwww
 また修正しようと思います。

 ハヴォックについては今回と次の話の主題になりますので、楽しみにしておいてください。


  >蒼無 さん

 はじめまして、感想ありがとうございます!

 楽しんでいただけて嬉しいです!

 銀の登場は連載開始時はもう登場は一切ない予定だったんです。
 色々とありまして、登場させることになりました。
 変更は大成功な気がしますw
 ちゃんとこれだけでは終わりませんよw銀は!

 黒の超感覚については、やはり漆黒の花で初だったはずですね。
 外伝という事もあり、知らない人がほとんどですので、出す度に描写するようにしています。
 パーセルも黒いタンポポ、覚醒物質、亡霊“ファントム”も外伝のキャラや用語ですからね……
 結構外伝の要素を入れてたりしますw

 確かに黒は超感覚がないと、ヒーローと戦う事は不可能ですねw
 ですので、前とその前の話は大活躍でしたw

 ちなみに、黒の弟子であるドラゴンキッドの黄 宝鈴も超感覚で強化されていたりもしますw
 あまり強調はできていませんがww

>>最後にですが、もしかして黒が来てしまった世界ってDTBを全話見ていると分かりやすかったりするんですかねw

 そうですね。
 謎解きの前提条件として、DTB2期のラストを知っている事ですね。

 蘇芳関係で見てみるとわかりやすかったりします。

 ネイサンが得た情報と、DTB2期開始時の違いとかだと……おっと、言いすぎましたねw

 まぁ、ちゃんと筋の通ったなるようには必死に考えたつもりです。

 一応、謎解きに必要な情報はほとんど出したつもりです。
 謎解きの方はオマケ程度ですので、わかったらニヤニヤしてくださいw

 またよかったら感想とあとがきでお話しましょうw


 では、感想返しは以上です。
 しかし、私のテンションが安定しませんねーw 
 こんな私ですが、一つよろしくお願いしますw

 では、また次の話しのあとがきでお会いしましょう!
テキストサイズ:24k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.