ここは全年齢対応の小説投稿掲示板です。小説以外の書き込みはご遠慮ください。

美味しい紅茶の入れ方 『戦場の時間、蘇る記憶』
作者:13   2012/02/17(金) 18:06公開   ID:JHZjjd6HxsM

 戦争というものは簡単に始まるものだ。平穏を裂き、時代を終わらせる負の遺産であり、正義を背負い勝つものが勝者となる。単純な話だ。


 目を覚ましても、外は暗かった。

 時計の針は動き続け、午前十時を指している。

 昨日のこと思い返すと自分が情けなく感じるが、いつまでもめそめそしている場合ではない。とりあえず一服することにした。

「日が……昇らない?」

 白銀の髪揺らし、両手に包帯を巻いた目つきの悪い男はバルコニーに向かった。

 廊下は蝋燭が灯され、柔らかい炎が揺らぎながら静かに光を放っている。

 男の名前は、本人さえ分からない、ただシロガネと呼ばれていた。

 バルコニーに着くと空を見上げる。


 空は常闇に染まり、湖は静けさを増し、本来、太陽が昇るはずのところは――

「異変は始まっているのか……」


 獄炎燃える人里を見てシロガネは確信した。


 幻想郷は、ルール無き戦場に化すと。



「おはようございます? こんばんは、に変えた方がよろしいですか?」

 振り向くと、銀色の髪にサイドには三つ編みで束ねた髪、メイド服にスカートの下には恐ろしいほどの量のナイフが仕込まれている。

「咲夜さん、一体どうしたんだこりゃ?」

 シロガネはタバコをくわえながら言った。

「詳しいことはわかりませんが、とりあえず、お嬢様が直々に人里の方へ参られました。私もお供に参ると言ったのですが、昨日のドラゴンの一軒で負傷者が出たものですから、そちらに専念しろとお達しが」

 咲夜はムッとした表情で言った。どうやらレミリアと一緒に行けなかったのが腑に落ちないのだろう。表情からしてそれだけでは無いらしいが。

「クロガネの容体は?」

 シロガネは咲夜とは目を合わせず手すりに寄り掛かり煙を吐きながら言った。

「それが居なくなりました」

 シロガネは咲夜のイライラの原因が分かり頭を押さえた。

「とりあえず、探しに行くか……」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「ちょ、ちょっとクロガネさん、いいのですか、まだ怪我治っていないのに!!」

 一見すればただの女の子にも見えるが、背中には大きな翼が生えた、うつほは前をあるくクロガネに何度も言っている。

「大丈夫だ、ぶっ倒れたら運んでくれゲホッゲホッ!!」

 血を少し吐きだしながらクロガネは足を持ち上げる。

 クロガネはそう言うとまた道を走り出す。



 向かっている場所は人里。もう間もなくして到着する。


 クロガネは胸を押さえる。まるで体内を焼かれているような痛み、胸から波のように迫っては引きを繰り返す。

 クロガネは息を荒げ、人里の入口に立つ。


「ゲホッゲホッ!!」

 むせ返り、口を押える。

「――!!」

 人里見ると、すでに焼野原になっていた。辺りは燃え盛り、逃げ遅れた人間は炭になっていた。

「酷い、一体だれがこんなことを!!」

「……奴らは突然ここに現れ、一週間でここを乗っ取り、支配した正体は分からない。巫女も全力でなんとかしているだろう」

 クロガネはタバコを取り出し口にくわえ火を点けた。

「お前だけには教えておく、オレとシロガネは、異世界の住人じゃない、幻想郷で生まれた。
 
 ただ、あと数百年後に生まれるというだけだ」

「未来?」

 うつほは微妙な表情になる。

 クロガネは燃え盛る家屋を眺めながら言った。すでに里の人間は避難しており、上空では豆粒ほど大きさだが巫女が戦闘を始めているのが見えた。

「そうだ、オレたちはこの軍勢を完全に殺し切るべく未来から来た、だからあの時、さとりの能力が一発で分かった。シロガネは敵に能力を事前に知られ前に記憶を厳重に封印しているからその事実にまだ気づいていない。そして一応言っておく、シロガネの本当の能力は――」

 目の前に悪魔のような翼が生えた女が表れクロガネを襲う。

 クロガネはその女の攻撃を見切ると。

翼を掴み、毟り取る。ぎちぎちと音を立て、体の肉ごと引き千切られる。

「ここもあぶねえ……さっさと仕事を終わらすか……お前は主のところに行って始まったと伝えて来い」

 クロガネは何かを言おうとしたが、息を吐きタバコを放り捨て、うつほに背中を見せる。

「あ、あの!!」

「なんだ?」

 背中を向けたまま、クロガネは立ち止まる。

「生きて帰ってきてください!!」

 クロガネは返事をすることもなく、火の海に消えて行った。




 クロガネは悲しげな表情になりながら、道の真ん中を走る。

(おんなじことを、言いやがって……まぁ、今回は死なねぇか)


 淡々と足を進める。



 クロガネは里の反対側の出口に着くと、敵と思われる、悪魔のようなもの、ドラゴンのようなものがごった返していた。

(ここに今、あれを打ち込めば、半分は消し飛ばせる!!)

 クロガネは地面に四つん這いになり、意識を集中させる。

 体内を巡るドラゴンの力を限界まで引き出す。

 激痛と共に力が沸き立つ。

「ゲホッゲホッ――!!」

 大量の血液を口から流すが、構うことは無く力を引き出す。


 ドラゴン、もっとも象徴的な力、それは炎。

 ドラゴンの炎に自分の炎を掛け合わせる

 クロガネは目を見開き白い炎を発生させる。



「行くぞ、クズども……」
 

 クロガネはそっと目を閉じ、静かに笑った。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 人里の方から、轟音が鳴り響く。

 人の声にも似た、おぞましい音。

 シロガネの背中に悪寒が走る、森の中を駆け抜け、シロガネと咲夜が人里に向かう。

「今の音は一体!?」

「分からない!! だが何か嫌な予感がする」

 シロガネは焦りながら歩みを早める。


 森の中は未だ、戦火は届いていないが、人里はほとんど焼け落ちているだろう。

 これがクロガネの言っていた異変、咲夜が言うには、たったの一時間で人里がこうなったらしい。

 おそらく巫女も苦戦してるのだろう。



 咲夜とクロガネは人里に到着する。


 辺りは炎に包まれている。

「二手に分かれよう」

 シロガネは咲夜に提案する。

「いえ、このまま二人で行動して生存確率を上げましょう。命あってものだねです」

 呆気なく反対されるが、シロガネは頷いた。


 シロガネは歩きながら周りを見回す、空には翼の生えた女が大量に飛んでいる。

 地面は燃え盛り、焼け焦げる臭いが鼻を突く。煙のせいで遠くを見回せない。

 シロガネを捜索するが、一向に見つからない。見つかったのは翼を引き千切られた女の死体だけだった。

「こいつは酷いな……」

 シロガネは死体を見て顔を引き攣らせた。

 視線を逸らすとタバコの吸い殻を見つける。

 拾い上げるとそれはクロガネが吸っているものだと分かった。

「行先は血痕から見るに、反対側の出口でしょうか?」

 咲夜が冷静に考察する。死体を見たぐらいで驚きはしないのだろう。

「行こう……」

 シロガネは立ち上がり先を急いだ、まだ上空の奴らはシロガネに気づいていない。



 里の反対側の出口に着くとシロガネと咲夜はその場から動けなくなった。

 木々は灰となり周りは更地になって、その上から先ほどと同じ悪魔の翼が生えた女の死体が山となっていた。

 その中心に君臨するは、黒髪に青い瞳をしている男だった。

 片目はくり抜かれ、右腕は肩からなくなっており、上着は着ておらず、鍛え抜かれた体は傷だらけだった。

「クロ……ガネ?」

 シロガネはそう呟いた。


 クロガネはありとあらゆるところから血を流している。人間なら立っていることも不思議な量だった。


 バキリッ!!


 シロガネの頭に激痛が走り倒れこむ。

「がぁあああああああ!!!」

 朦朧とした意識のなかで身の危険を感じるが、激痛で動くことも出来ない。


 ザシュッ!!


 骨を断ち、肉を切る音だけが激痛の中で聞こえる。


 痛みの中でそっと目を開く。


 そこに居たのは――


 黒い髪に青い瞳、左腕には白い炎が灯されている。

 ただ、右目はなく左腕もない、胴体はには剣が刺さりシロガネの盾になるように立っていた。

 シロガネの顔に深紅の体液が飛び散る。

 既に痛みは無く、ただただ、頭の中に走馬灯が走る。


 ――それは戦火

 ――それは虐殺

 ――それは悪魔

 ――それは……



 それは絶望だった。



 シロガネは自分の過去を巡る。

 螺旋のように肉体に馴染む本当の能力。



 塗り替えられる人格。




 腹の底から湧きあがる、憎悪。




(そうか……オレは偽りの能力に、偽りの記憶をわざとねじ込み、本質を変えていたのか。奴らに本当の能力を最初から気づかれないようにするため……)

 シロガネは立ち上がり、クロガネを抱えた。

「咲夜、こいつを頼む、息はしている、急げ」

 目の色はまるで激昂の一色、表情は憎悪そのものだった

 いつもとは雰囲気が全く違うシロガネに驚いた咲夜は生唾を呑んだ。


 一瞬にして咲夜が消える。おそらく能力を使ったのだろう。


「さてと、お前ら、死ぬ覚悟はあるか?」


 シロガネは片手に剣を作り出し空を飛ぶ女どもに言った。


「オレはシロガネと呼ばれている、そして能力は“武器に魂を込める能力”ではなく『魂を武器に変える能力』だ。まぁ、武器に魂を込めるのもあながち間違いじゃないがな。」

 シロガネは目を閉じる。

今まで作ってきた武器が形を維持できず崩壊をはじめ、粒子になって体から流れ出る。

 シロガネの能力は決して強くない。どちらかと言えば弱い分類に入る。

 だがシロガネは自分が強くなれる方法を知っている。


 それは大きく分けて二つ、一つは意志の力、人間に生まれた以上それは一生ついて回るだろう。思いはそのまま力となる。


 シロガネは地面を蹴り悪魔のような翼の生えた女を一体地面に引きずり下ろすと。

「どうした? 怖いか? 悪魔?」

 先ほどから女と表現されている者たちは、皆、サキュバスと呼ばれる悪魔だ。

 サキュバスはなにかを言おうとするが口を押えられて口を開くことが出来ない。

「まぁいい、そういえばオレ今日朝から何も食ってないんだよな?」

 シロガネは平然とそう言い放つ。

「ん!?ぐぅぅぅ!!」

 必死に仲間に助けを求めるがシロガネのあまりの異質さに誰も助けようともしない。

 シロガネは口を押えていた手を離した。

 するりとサキュバスの体が地面に落ちる。死を感じたサキュバスは、逃げようとするが、立ち上がろうとしたときに、剣で右足を刺す。

 激痛に悲鳴を上げる、サキュバスが、仲間の耳に入る。

シロガネは剣を展開させ、左足、右手右足にも展開した剣を刺す。


殺すこともなく、悲鳴だけがこだまする。

仲間の悲鳴に耐えきれなかった別なサキュバスがシロガネを襲う。


流れるように頭を掴まれ地面に叩き落とされ、剣で四肢を貫かれる。


「おいおい、これじゃあミイラ取りがミイラだろ?」

 シロガネはしゃがんでサキュバスに言う。

いっそ殺せと言わんばかりの目でシロガネを見る。

「殺せって? 安心しろ、弟を刺した剣を持ってる隊長的なやつをぶっ殺したら殺してやるよ!」

 そう言って、シロガネは地面を蹴りあげ、剣を展開し投げる

 空を裂く剣は空に群れるサキュバスに突き刺さる。

「まぁ、弟も弟だ、無茶しやがって。ドラゴンを狩るしかできなねぇのに、悪魔を殺すなんてな、どちらにせよ、オレはお前たちを絶対に許さない。あの人を奪い、オレたちからすべてを奪ったお前たちを絶対に許さない」

 シロガネは顔を憎悪に染め上げる。

 周りは焼け落ち開けていて、シロガネは丸見えだがサキュバスはシロガネと交戦するのをためらっていた。


 シロガネは、眼を閉じイメージを膨らませる。

「フレームはしなやかな金属、両端を湾曲させワイヤーを張る……」

 魂を武器に変える能力、もちろん構造が複雑になればなるほど展開に時間がかかる、逆に造りの簡単な、槍や剣、弓などにかかる時間は短い。

 シロガネの能力の欠点のひとつである、強い武器ほど弱くなり弱い武器ほど強い。分かりやすく言えばそうなる。

「その張ったワイヤーを使って矢を打ち出すもの」

 シロガネの手に弓が展開される。

 矢を展開させ、ワイヤーに引っかけぐっと引っ張る。



 息を吸う間もなく指を離す。



――矢は真っ直ぐ直進し、剣を持った隊長格の悪魔の頭を弾き飛ばす。

 
 もともとサキュバスはそこまで強くない悪魔だ。シロガネでもそこまで手を焼かないが。数が異常に多いため、危険なのは変わりない。


(クロガネ……お前は何と闘っていた?)


 サキュバスは体勢を立て直すためかすでに敗走の一途だった。

 シロガネは剣で四肢を貫いていた二体のサキュバスの頭を掴みずるずると引きずっていった。


 その姿は、孤独と憎しみに満ち溢れていた。

(あいつを殺した奴らは一人残らず殺す……)





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「それは今となっては未来のことだが、語り部がいるから話をする」

 病室でクロガネは包帯に巻かれながら口を開いた。

 永琳によって傷を手当されてすでに死の淵から生還している。

 だが傷は重いものだった。しばらくはベットの上だろう。

「なんですかいきなり?」

 咲夜が椅子に座りながら聞く。

「いや、あれだけ死亡フラグを醸し出していたのに、生き残ってなんか癪だから、こう、死に向かう人らしくしてみようかと」

 クロガネは滑稽だろと言わんばかりに笑う。

「まさか、直前に殺したドラゴンの特性が、かのジークフリートを追い詰めたあのドラゴンと同じ系統のドラゴンだったとはな、誤算だった、どうやら神はまだオレに虐殺を命じているようだ」

 クロガネは自分の消えた左腕を見て笑う。

「さて、今頃クソ兄貴ことシロガネは最後の能力を開いたところか」

「最後の能力とは?」

 咲夜が不思議に思う。

 シロガネの能力は武器に魂、即ち能力を付加する程度の能力である。

「あいつの本当の能力はそんな優れたものじゃない。武器を構築する能力だ。ここの言葉で言うなら“魂を武器に変える能力”とでも言っておく」

「魂を武器にする?」

 咲夜はおもむろにナイフ取り出す。

 ナイフ使いである咲夜の武器、その手入れの行き届いたナイフは一種の芸術にも見える。

「シロガネがなんであそこまであいまいで不確定に能力がころころ変わるか分かるか?」

 しばらく沈黙が走る。

「それは、シロガネの肉体が異質で出来ているからよ。今はだいぶ安定し始めてあの能力に目覚めたけどね」

 病室のドアの前に永琳が立っていた。

「そうだ、あいつは父親が……皇帝と謳われた、地上最強にてあらゆる人間の頂点に君臨していた、母親は魔女と呼ばれていた化け物じみた奴らから生まれた」

「それだけじゃないわ、血液を調べてみたけど、あなたとシロガネの血液は同じ血液で構成されているわ。つまり、遺伝子はその皇帝と魔女かもしれないけど産んだ母親は全く違う人間ということよ」

 咲夜は点で話が分からなくなり頭を掻く。

「あの、もう少しわかりやすくお願いします」

「簡単に言うと、いろいろおかしい身体の持ち主でめんどくさいから省くけど、

最近まで能力に目覚めていなかったの、武器に能力を加える能力、それは実をいうと魔術の一種なの。 

魔術師は代々系統が深くなればなるほど魔術に関する潜在的能力が上がるというのがあるの。パチュリーを見れば分かるわよね?」

 永琳が人差し指を立てながら説明する。

 シロガネの母親は魔女である。系統の深い魔女であることは確かだ、シロガネが魔術を使う事も無理な話ではない。

「ですが、パチュリー様見て分かるのですが魔力の供給源はなんですか。あれだけ大掛かりな魔術なら一回に使う膨大な魔力が必要では?」

「寿命だ。いや正確には奪った命だ、蓬莱の姫君の寿命を拝借したが、ここへ来るのにそれは使い切った。

 まぁ、時間軸をぶち壊し、過去の人間の記憶を書き換え、自分の能力を封印してその他もろもろをやってここまで来ているんだ、永遠の寿命も底を尽きちまうわけだ。 

永遠といっても体に収まる限界量の魔力に過ぎないがな」

 クロガネの話を聞く限りの話ではそういう事になる。

 つまりシロガネは、省エネ状態で今までを過ごしており、武器の能力行使も本能的に控えていたことになる。

「それではあの時……今のシロガネさんは一体――」

 咲夜がシロガネの存在そのものに疑念を抱き始める。

「そうだな……ひとことで言うなら、殺戮マシーンってところか。安心しろ“今のあいつ”は雑魚を倒すのが精々だろう。どうあがいてもあんたより弱い」

 シロガネは咲夜に視線を向ける。だがクロガネの目は安堵に溢れていなかった、むしろその逆、いつ追い抜かされるか分からないぞという警告の意図の方が強かった。

 クロガネはおもむろに腰から銃のホルスターを咲夜に差し出す。二丁入るようにしてあるホルスターには大口径のハンドガン、グリフォン&ケルベロスが収まっていた。

「お前にやる、オレはもうこれを使えない」

 咲夜はホルスターを受け取るが気づいたように言った。

「この銃は確か人間用に設計されていないはずです。私には持て余します」

 クロガネは鼻で笑った。

「大丈夫だ、弾に細工をした、人間でも撃てる。オレの寝ていたベットの下に弾はある」

「ですが私にはナイフが――」

「そのナイフは、吸血鬼を殺せるナイフか?

 ワーウルフを殺せるか? 

 オレのように炎を操れるのか?」


 咲夜は顔が青ざめる。

 それは、この後の戦いにて、吸血鬼やワーウルフが出てくるという事、もしくは主のレミリアを殺す可能性があるという事。どちらの理由にしても銀製の武器は必要になることを物語っている。

「どういうつもりですか?」

 咲夜は剣幕を深くする。

「そうかっかするな、この後の戦争、レミリアの同種と一戦交えることになるぞ、そのナイフでは殺せない、もうわかったな、オレの寝ていた部屋のベットにお前用の装備を作っておいた。やっつけ仕事だ、あとはシロガネに任せろ」


 咲夜は立ち上がり、瞬時に消えて行った。

「あいつがオレたちの希望か……本当にあいつに似ている」


 クロガネはドラゴンの力を使い体を回復させる。それでもクロガネの受けた傷はあまりに大きい。


 クロガネの目と腕を奪ったのが奴ら。


「吸血鬼とワーウルフか」


 咲夜への言葉が自分に刺さる。

「なぁ、オレは後どのぐらいで治る?」

「そうねぇ……少なくとも今日は動けないわね、腕と眼はどうしようもないし、あと胸の傷かしら? それ以外の傷は完治に近いわ」

「そうか」

 クロガネは目を瞑りあの時の記憶を思い出す。

 苦虫を噛み潰すような顔になり腕の喪失の痛手を重く感じた。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「さて、ここなら邪魔されないな?」


 シロガネは茂みの奥に先ほど捕まえた二体のサキュバスを引きずる。

 一体を放り投げると剣を展開させ四肢を貫く。

 シロガネの剣には展開できる時間が決まっている、時間を迎えると自動的に消滅する。

 サキュバスは痛みで声にならない声を上げる。

 シロガネはもう一体のサキュバスの顔を自分の顔に近づける。


 グチャ――


 グチャ――

 肉の千切れる音が木霊する。

「不本意だが、魔力を供給するにはこれが一番効率がいいのでな」

 グチャグチャをという音だけが響く。


 サキュバスは喉を喰いちぎられ、血を流すがかすかに意識と呼吸は残る。


「ここからは、俗にいうグロテスク注意ってやつか」


 シロガネは口を開き、サキュバスの右の目玉に喰いつく、咀嚼しまた飲み込む。サキュバスの顔は原型を留めておらず、喰い千切られた後だけが残る。喉を喰いちぎられ、呼吸は出来るが言葉を発することの出来ないサキュバスは残った左目で何かを訴える。

 それを無視するようにシロガネは淡々とサキュバスに食らいつく。

 目玉

 胴体

 腹

 下半身

 内臓に骨、全てに至る部分を口の中に押し込む。

 シロガネも最初は抵抗があり、なかなか口にできなかった時もあったが、いつからだろうか、なにも抵抗を感じず食べられるようになっていた。

 シロガネの能力は決して強いわけではない。剣を展開するのにも微量だが魔力を消耗する。肉体の補助、弓を使った時も無意識のうちに視力を魔力で強化しピンポイントに射撃できた。

 気味の悪い咀嚼の音と肉の千切れる音が響く。

 骨ごとサキュバスを一体食い終わると、剣の展開を中止して、もう一体のサキュバスの足を掴む。


 魔力の供給、悪魔は人や獣に憑りつくまで魔力で行動している、それの体液または肉を摂取すればその分だけ魔力を供給できる。外部から受け取った魔力を自分の魔力に変換することが出来なければ無理である、当然、シロガネの体にもかなりの負担がかかる。


 シロガネは咀嚼をしながら暗い空を眺めた。

「……力が欲しい」

                         八杯目終わり


■作家さんに感想を送る
■作者からのメッセージ
 
 注意事項があります。

 今回から終戦までの間にシロガネさんが敵を捕食する描写があります。グロテスクな表現が含まれており耐性のない方は飛ばしてもらっても構いません。

 一応、グロ以外の場面でグロ時にあった補足は入れますのでたぶん大丈夫だと思います。わからないところがあればコメントの方でじゃんじゃんお願いします。


 以上


 テスト期間にオレはなにをしてるのだ……

 これは国語の勉強これは国語の勉強。


 気にしない!!


 というわけでコメント返し



 黒い鳩 殿

 コメントありがとうございます。

 描写のサボりが目立ってきました、細かい描写を安定して書けるようにしたいです。

 能力の面白い使い方シリーズは後程、おそらく強い敵に遭遇したら別な形で使おうと思っています。

 まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。



 ハナズオウ 殿


 コメントありがとうございます

 とりあえず、出てくる主力キャラは大体決まっております。さすがに全員は無理なので。
 登場するキャラクターも楽しみにしていてください。





以上13より
 
テキストサイズ:16k

■作品一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集
Anthologys v2.5e Script by YASUU!!− −Ver.Mini Arrange by ZERO− −Designed by SILUFENIA
Copyright(c)2012 SILUFENIA別館 All rights reserved.